特許第6282292号(P6282292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282292
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20180208BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   H02P29/00
   H02P27/06
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-557663(P2015-557663)
(86)(22)【出願日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2014050884
(87)【国際公開番号】WO2015107685
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】井堀 敏
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和茂
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 祐介
(72)【発明者】
【氏名】馬場 繁之
(72)【発明者】
【氏名】田中 良
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦彦
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/032571(WO,A1)
【文献】 特開2009−106092(JP,A)
【文献】 特開2002−034284(JP,A)
【文献】 特開2005−041171(JP,A)
【文献】 特開2009−019561(JP,A)
【文献】 特開平08−331894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06,29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の交流電圧を整流して直流電圧に変換する順変換器と、
前記順変換器にて変換された直流電圧を平滑する平滑コンデンサを有する直流中間回路と、
前記直流中間回路の(+)電位側に接続された上アーム側の半導体素子と前記直流中間回路の(−)電位側に接続された下アーム側の半導体素子とを備え、前記直流中間回路にて平滑された直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と、
前記逆変換器に流れる電流を検出する電流検出器と、
を備え、永久磁石同期電動機を可変速制御する電力変換装置において、
前記電力変換装置から前記永久磁石同期電動機への電力の出力を停止した後、前記上アーム側の半導体素子または前記下アーム側の半導体素子のうち、一方のアーム側の半導体素子の一個以上をオンし、かつ、他方のアーム側の半導体素子を全てオフとする制御をして、前記電流検出器において所定の電流を検出した場合に、前記永久磁石同期電動機が回転中であることを示す信号を出力する制御回路を備え
前記一方のアーム側の半導体素子は、予め設定された時間Tdの周期でオンとなり、
前記時間Tdは、前記電流検出器にて検出された電流に応じて可変となることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記電流検出器は、該電力変換装置から出力される電流または該電力変換装置の前記上アーム側または前記下アーム側の半導体素子の電流を検出することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記制御回路は、前記電流検出器にて検出された電流が予め定めた値を超えた場合に、前記永久磁石同期電動機が回転中であること示す信号を表示器に発して表示する制御を行い、前記電流検出器にて検出された電流が予め定めた値以下の場合に、前記永久磁石同期電動機が停止中であることを示す信号を表示器に発して表示する制御を行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記制御回路は、前記電流検出器にて検出された電流が過電流レベルに達し前記電力変換装置がトリップした場合に、そのトリップ状態を自動解除することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項に記載の電力変換装置であって、
前記制御回路は、前記電流検出器にて検出された電流が過電流レベルに達し前記電力変換装置がトリップした場合、次回の前記時間Tdは前回の前記時間Tdよりも長くする制御を行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記制御回路は、前記電流検出器にて検出された電流が予め定めた値より小さくなった場合は、前記上アーム側の半導体素子または前記下アーム側の半導体素子のうち、一方のアーム側の半導体素子の一個以上をオンし、かつ、他方のアーム側の半導体素子を全てオフとする制御を中止することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の電力変換装置において、
前記電力変換装置の運転条件を設定する操作パネルを備え、
前記制御回路が、前記永久磁石同期電動機が回転中あるいは停止中であると判断した場合、回転中あるいは停止中であることを前記操作パネルに表示するように制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の電力変換装置において、
前記電力変換装置の運転条件を設定する上位装置を備え、
前記制御回路が、前記永久磁石同期電動機が回転中あるいは停止中であると判断した場合、回転中あるいは停止中であることを前記上位装置に表示するように制御することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石同期電動機を駆動する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の段落[0008]には、「直流電源と、インバータ装置と、前記直流電源と前記インバータ装置の間に接続されたフィルタコンデンサとを備え、前記インバータ装置により少なくとも1台以上の同期電動機を駆動し、惰行時に前記同期電動機の誘起電圧が第1の基準値以上になった場合、前記インバータ装置の直流側の電圧が前記誘起電圧に基づいて設定される第2の基準値以上になるように前記直流電源を動作させるものである。」と開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−154661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久磁石同期電動機は、磁石により磁束Φが生成されているため、同期電動機に電源が供給されなくても惰性回転している場合には、その回転数に比例した正弦波状の速度起電力が同期電動機の端子に発生する。
【0005】
しかし、何らかの要因で電力変換装置が出力を停止した際、同期電動機が惰性回転している状態では、電動機端子に速度起電力が常時発生している点については、製品の取扱説明書などに記載しているが、電動機端子に電圧(起電力)が常時発生しているという観念がユーザにないのが一般的である。
【0006】
このため、電力変換装置と永久磁石同期電動機の配線長が長い場合に、電力変換装置の設置場所で同期電動機が回転していることが分からず、電力変換装置の出力を遮断したため大丈夫と誤認し、電力変換装置の出力端子に不用意に触れる危険性がある。
【0007】
本発明は、電力変換装置の操作中においてもユーザに注意喚起する電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的と達成するために、例えば、本発明では、交流電源の交流電圧を整流して直流電圧に変換する順変換器と、前記順変換器にて変換された直流電圧を平滑する平滑コンデンサを有する直流中間回路と、前記直流中間回路の(+)電位側に接続された上アーム側の半導体素子と前記直流中間回路の(−)電位側に接続された下アーム側の半導体素子とを備え、前記直流中間回路にて平滑された直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と、前記逆変換器に流れる電流を検出する電流検出器と、を備え、永久磁石同期電動機を可変速制御する電力変換装置において、前記電力変換装置から前記永久磁石同期電動機への電力の出力を停止した後、前記上アーム側の半導体素子または前記下アーム側の半導体素子のうち、一方のアーム側の半導体素子の一個以上をオンし、かつ、他方のアーム側の半導体素子を全てオフとする制御をして、前記電流検出器において所定の電流を検出した場合に、前記永久磁石同期電動機が回転中であることを示す信号を出力する制御回路を備える構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザの注意を促すことにより安全性を高めた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る電力変換装置の構成図の一例である。
図2】実施例に係る電力変換装置の他の構成図の一例である。
図3】実施例に係るシステムの単線結線図の一例である。
図4】実施例に係る電圧検出回路の一例である。
図5】誘導電動機と永久磁石同期電動機の簡易等価回路である。
図6】実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図とタイムチャート図の一例である。
図7】実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図とタイムチャート図である。
図8】実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図である。
図9】実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図の他の一例である。
図10】実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図の他の一例である。
図11】実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出タイムチャート図の他の一例である。
図12】実施例に係るデジタル操作パネルの表示例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下図面を用いて本実施例1について説明する。なお、各図における共通の構成については同一の参照番号を付してある。また、本実施例1は図示例に限定されるものではない。実施例1における電力変換装置の形態を以下に図を用いて説明する。図1は、実施例1に係る電力変換装置の構成図の一例である。
【0012】
図1の電力変換装置10は、負荷装置11に直結されたPMモータ(以下、永久磁石同期電動機と呼ぶ)に電力を供給するための順変換器1、平滑用コンデンサ2、逆変換器3、制御演算装置4、制御回路5、冷却ファン6、デジタル操作パネル7、ドライブ回路8、直流電圧検出回路9、スイッチングレギュレータ回路13、電圧検出回路14を備えて構成される。図1では、任意の入力電源として交流電源を用いた場合を示す。順変換器1は、交流電力を直流電力に変換する。平滑用コンデンサ2は、直流中間回路に備えられている。
【0013】
逆変換器3は、直流電力を任意の周波数の交流電力に変換する。逆変換器3は、スイッチング素子と該スイッチング素子に並列に接続されたダイオードからなる半導体素子で構成されている。逆変換器3内には、代表的なスイッチング素子として例えばIGBTが搭載されている。ここで、スイッチング素子としてはIGBTに限定されるものではなく、スイッチング素子としての形態を有するものであれば良い。例えば、シリコン(Si)の物性値限界を乗り越える性能を有したワイドバンドギャップ半導体素子であるSiC(シリコンカーバイト)やGaN(ガリュームナイトライド)などでもよい。
【0014】
冷却ファン6は、順変換器1及び逆変換器3内のパワーモジュールを冷却する。デジタル操作パネル7は、電力変換装置の各種制御データを設定、変更、異常状態及びモニタ表示を行う。操作パネル7には異常表示が可能な表示部が設けられており、電力変換装置における異常が検出されると当該表示部に表示される。本実施例の操作パネル7としては、特に種類が限定されるものではないが、デジタル操作パネルとして装置使用者の操作性を考慮して表示部の表示を見ながら操作が行えるように構成している。
【0015】
なお、表示部は必ずしも操作パネル7と一体に構成する必要はないが、操作パネル7の操作者が、表示を見ながら操作できるように一体構成とすることが望ましい。操作パネル7から入力された電力変換装置の各種制御データは図示しない記憶部に格納される。
【0016】
制御回路5は、デジタル操作パネル7によって入力される各種の制御データに基づいて逆変換器3のスイッチング素子を制御すると共に、電力変換装置10全体の制御を司る働きをするもので、制御演算装置4(例えば、マイコンなど)が搭載されており、デジタル操作パネル7から入力される各種の制御データに応じて必要な制御処理が行なえるように構成されている。また、上位装置12(例えば、通信装置や無線装置や指令装置)から入力される各種の制御データに応じて必要な制御処理も行なえるように構成されている。
【0017】
Sig1は、永久磁石同期電動機が回転しているか停止しているかを知らせる警報出力信号である。もちろんこの警報信号を上位装置12に送信してもよい。
【0018】
内部構成は省略するが、各種の制御データが格納された記憶部の記憶データからの情報に基づいて制御演算装置4(例えば、マイコンなど)が演算を行う。
【0019】
電流検出器CTは、永久磁石同期電動機のU相、W相の線電流を検出する。V相の線電流は、交流条件(iu+iv+iw=0)から、iv=−(iu+iw)として求められる。図1ではCTを2個用いる例を示したが、CTを3個使用し、各U相、V相、W相の線電流を検出してもよい。
【0020】
ドライブ回路8は、制御回路5からの指令に基づいて逆変換器3のスイッチング素子を駆動する。ドライブ回路8内にはスイッチングレギュレータ回路(DC/DCコンバータ)13が搭載されており、電力変換装置の運転に必要な各直流電圧を生成し、これらを各構成に対して供給する。
【0021】
14は、電力変換装置の出力端子の電圧を検出する回路である。電力変換装置の出力が遮断されている場合に、永久磁石同期電動機の速度起電力を検出する。
【0022】
R1端子とT1端子は、スイッチングレギュレータ回路13の電源端子である。直流電圧検出回路9は、直流中間回路を構成する平滑用コンデンサ2の電圧を検出する。また、任意の入力電源として交流電源ではなく、直流電源を供給する場合には、直流中間回路の(+)電位側に直流電源の+側を接続し、直流中間回路の(−)電位側に直流電源の−側を接続すればよい。さらには、交流端子RとSとTを接続し、この接続点に直流電源の+側を接続し、直流中間回路の(−)電位側に直流電源の−側を接続してもよいし、逆に、直流中間回路の(+)電位側に直流電源の+側を接続し、交流端子RとSとTを接続し、この接続点に直流電源の−側を接続してもよい。
【0023】
図2は、実施例に係る電力変換装置の他の構成図の一例である。図1と共通の構成および同一の機能については、同一の参照番号を付してある。図1と異なるのは、電流検出器の検出位置である。
【0024】
SH1、SHi、SHdは電流検出用のシャント抵抗電流検出器であり、SH1は直流中間回路の(−)側の電流を検出し、SHiは逆変換器3を構成する直流中間回路の(−)電位側に接続された下アームの各スイッチング素子であるU相とV相とW相のIGBTに接続され、SHdは各スイッチング素子であるIGBTに並列に接続されたダイオードに接続されている。
【0025】
すなわち、電力変換装置の直流母線側に設けられたシャント抵抗電流検出器SHiは、各IGBTに流れる電流を検出する電流検出器であり、シャント抵抗電流検出器SHdは各IGBTに並列に接続されたダイオードに流れる電流を検出する電流検出器である。
【0026】
電力変換装置の直流母線側に設けられたシャント抵抗電流検出器で永久磁石同期電動機に流れる電流を検出できる。また、シャント抵抗電流検出器SHi、SHdは、逆変換器3を構成する直流中間回路の(−)電位側に接続された下アームのIGBTとダイオードからなる半導体素子に接続されているが、逆変換器3を構成する直流中間回路の(+)電位側に接続された上アームのIGBTとダイオードからなる半導体素子に接続して電流を検出してもよい。
【0027】
図3は、実施例に係るシステムの単線結線図の一例である。NFBはノーヒューズブレーカで、MCは電磁接触器で、R1端子とT1端子は、スイッチングレギュレータ回路13の電源端子である。電力変換装置が何らかの異常で破壊した場合、破壊部品によっては、異常をリセットし再度始動すると電力変換装置を二次的に破壊し、破壊の度合いが拡大するため、これを防止する目的から、電力変換装置の異常時には主電源である電力変換装置の入力R、S、T各端子への給電を電磁接触器MCで遮断し、ノーヒューズブレーカNFBの出力側からR1端子とT1端子を通してスイッチングレギュレータ回路13を動作させる。このようにR1端子とT1端子をノーヒューズブレーカNFBの出力側から供給する構成の場合、電力変換装置の主電源がなくても、電力変換装置内部の電源(例えば、マイコンなどのデジタル系の電源、スイッチング素子のドライブ電源、アナログ系の電源など)を動作させることができるため、電力変換装置が何らかの異常で停止し、上位の電磁接触器MCを遮断しても、電力変換装置内部の電源により、マイコンを含む制御回路やドライブ回路を通してスイッチング素子をオン・オフすることが可能となる。このため、例えば、永久磁石同期電動機の速度起電力Esが残留していれば、下アームのスイッチング素子UNのみのゲート電圧をオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)にした際に必ず電流が流れ、速度起電力Esが残留していなければ電流は流れない。つまり、電流が流れれば同期電動機が回転中であり、流れなければ停止中であることが電力変換装置の主電源がなくても判別できる。異常の表示などを操作者が確認し正確に対応を検討することができる。
【0028】
電力変換装置10で永久磁石同期電動機を駆動している場合、何らかの異常(例えば、過電流、過電圧、不足電圧、瞬時停電など)で電力変換装置が出力を遮断(出力停止)すると永久磁石同期電動機は惰性回転することになる。永久磁石同期電動機は、磁石により磁束Φが生成されているため、同期電動機に電源が供給されなくても惰性回転している場合には、その回転数に比例した正弦波状の速度起電力が同期電動機の端子に常に発生している。永久磁石同期電動機の速度起電力については、図5の(c)と(d)で説明する。
【0029】
しかし、電力変換装置と同期電動機の配線長LLが長い場合、同期電動機から遠方にある電力変換装置の設置場所では操作者には同期電動機が回転しているのか停止しているのかが分からない。
【0030】
この場合、回転している同期電動機を再始動しようとすれば、同期電動機の磁極位置が不明のため、同期電動機の磁極位置と電力変換装置の出力位相が異なり、同期電動機特有の脱調現象により制御不能となる。
【0031】
また、何らかの要因で電力変換装置が破壊し電力変換装置が出力を停止したため、電力変換装置の電源を遮断した後、同期電動機が惰性回転している状態では、電動機端子に速度起電力が常時発生しているという観念がないため、電力変換装置の出力を遮断したため大丈夫と誤認したり、あるいは、同期電動機が停止しているものと誤認し、電力変換装置を交換するため出力端子U、V、Wの動力線を外そうとした際に、出力端子U、V、W端子に触れた瞬間に同期電動機の速度起電力により感電する危険性がある。
【0032】
この場合、R1端子とT1端子によりスイッチングレギュレータ回路13が動作していれば、同期電動機が回転しているか停止しているかを表示できるため、同期電動機が停止していることを確認してから保守をすれば不容易に感電することを防止できる。
【0033】
図4は、実施例に係る電圧検出回路の一例である。デジタル操作パネル7により、予め同期電動機の「惰性回転検出モード」を選択すると、電力変換装置の出力が遮断されている場合に、永久磁石同期電動機の速度起電力を検出する。永久磁石同期電動機は、磁石により磁束Φが生成されているため、電源が供給されなくても惰性回転している場合には、その回転数に比例した正弦波状の速度起電力Esが同期電動機の端子に発生する。
【0034】
図4(a)は、電力変換装置の出力端子VW間の速度起電力Vvw(=Es)を半波整流回路により電圧Vd1に変換し、比較器で基準電圧Vr1と比較し、パルス電圧Vo1に変換する。この信号が図示しないマイコンに入力され、パルスをカウントすることにより同期電動機の回転の有無を検出する。実施例では、速度起電力に比例したパルスをカウントするため、同期電動機の回転数を判別できる点にある。すなわち、回転数Nr(∝1/fr)が分かるため、同期電動機の回転の有無を正確に判別できる。パルスをカウントし予め定めた値を超えた場合に、永久磁石同期電動機が回転中であることを示す信号を出力し、予め定めた値以下の場合に、前記永久磁石同期電動機が停止中であることを示す信号を出力するように制御してもよい。もちろん、半波整流回路や比較器を限定するものではない。
【0035】
図4(b)は、電力変換装置の出力端子VW間の速度起電力Vvw(=Es)を全波整流回路により電圧Vd2に変換し、平滑回路で波形整形して比較器で基準電圧Vr2と比較し、電圧Vo2に変換する。この信号が図示しないマイコンに入力され、電圧の有無を検出することにより同期電動機の回転の有無を検出する。
【0036】
もちろん、速度起電力としてVuvを用いてもVwuを用いても、電力変換装置の(−)電位側を基準として相電圧Vu-、Vv-、Vw-を用いてもよいし、さらには、速度起電力VuvとVvwとVwuを三相全波整流して、速度起電力から同期電動機の回転の有無を検出しても本実施例の意図は変わらない。(a)と(b)は、一例に過ぎない。
【0037】
警報出力信号Sig1においては、例えば、同期電動機が回転している場合には警報出力信号は‘H’を、同期電動機が停止している場合には警報出力信号は‘L’を出力すれば、警報出力信号を用いて警報ランプを点灯させユーザに注意喚起することができる。
【0038】
図5は、誘導電動機と永久磁石同期電動機の簡易等価回路である。永久磁石同期電動機と比較する意味で、誘導電動機の速度起電力(残留電圧)について説明する。
【0039】
図5(a)は誘導電動機の等価回路であり、一次電圧V1、一次抵抗R1、一次漏れインダクタンスL1、一次電流I1、二次抵抗R2、二次漏れインダクタンスL2、二次電流I2、励磁インダクタンスM(磁束Φm)、励磁電流Imで構成され、一次電圧の周波数値と電圧値を可変することにより速度制御する。
【0040】
誘導電動機の速度起電力(残留電圧)の減衰特性は、例えば、商用電源で駆動されている状態から商用電源を遮断した場合、電動機には電源遮断時に回転していた速度に比例した正弦波状の速度起電力が発生する。電力変換装置が出力を遮断した場合においても商用電源同様に電動機には電源遮断時に回転していた速度に比例した正弦波状の速度起電力が発生する。
【0041】
この速度起電力V1(残留電圧)は、接続された負荷特性により減衰挙動が異なる。残留電圧V1は、下式で表される。
V1(t)=M(−1/τ+jωr)*I20*e(−t/τ)*e(jωrt) --- 数(1)
ここで、
I20:二次電流の第二種初期値
M:一次と二次間の相互インダクタンス
τ:電動機の回路時定数(L/R)
ωr:電動機の回転角周波数(ωr=2π*fr)
t:時間
電源遮断後の誘導電動機残留電圧の減衰挙動については、電力変換装置で駆動した場合においても商用電源駆動時と同様である。
【0042】
図5(b)は、誘導電動機への供給電源が遮断された後の残留電圧の挙動を示した図である。時刻toは電力変換装置からの供給電源を遮断した時点であり、to後における誘導電動機の残留電圧V1は、数(1)に従った挙動を示す。
【0043】
ここで、数(1)より、回転子角速度ωrが急激に下降しないという条件下(例えば、換気ファン:負荷が小さく、慣性モーメントGDが大きい)では、数(1)は数(2)となる。この時の残留電圧の周期は、時定数τに大きく依存しほぼ等周期で減衰してゆく。
V1(t)∝Vdo*e(−t/τ) -------------------------------- 数(2)
一方、回転子角速度が急激に下降するという条件下(例えば、ポンプ:粘性が大きく、慣性モーメントGDが小さい)のもとでは、数(1)は数(3)となる。この場合、残留電圧の周期も振幅も急激に減衰変化する。
V1(t)∝Vd(ωr)*e(jωrt) -------------------------- 数(3)
すなわち、誘導電動機残留電圧V1は、負荷条件に大きく依存し、電動機の回転角周波数ωr(=2πfr)と誘導電動機の回路時定数τに従って減衰する特性を有し、比較的短時間に数V程度まで減衰する。このため、誘導電動機の場合には、電動機への供給電源が遮断され、その後に電動機端子に触れても感電する危険性はない。
【0044】
図5(c)は、永久磁石同期電動機の等価回路であり、電機子電圧(一次電圧)Va、電機子抵抗Ra、電機子インダクタンスLa、電機子電流Ia、速度起電力Es、永久磁石の磁束Φmで構成され、電機子電圧の周波数値と電圧値を可変することにより速度制御する。
【0045】
永久磁石同期電動機の速度起電力(残留電圧)は、例えば、商用電源で駆動されている状態から商用電源を遮断した場合、同期電動機には電源遮断時に回転していた速度に比例した正弦波状の速度起電力が発生する。電力変換装置が出力を遮断した場合においても商用電源同様に同期電動機には電源遮断時に回転していた速度に比例した正弦波状の速度起電力が発生する。この速度起電力は、装着された永久磁石により生成される磁束の作用により、同期電動機が回転している間中その回転数に比例した非減衰電圧が発生する。
【0046】
永久磁石同期電動機の速度起電力Vaは、下式で表される。
Va=Es=ke*Φm*ωr∝fr ------------------------- 数(4)
ここで、
ke:定数
Φm:磁束
ωr:同期電動機の回転子角速度(ωr=2π*fr)
電源遮断後の永久磁石同期電動機残留電圧の挙動については、電力変換装置で駆動した場合においても商用電源駆動時と同様である。
【0047】
図5(d)は、永久磁石同期電動機への供給電源が遮断された後の速度起電力(残留電圧)の挙動を示した図である。時刻toは電力変換装置からの供給電源を遮断した時点であり、to後における永久磁石同期電動機の残留電圧Vaは、数(4)に従った挙動を示す。すなわち、残留電圧Vaは、同期電動機の回転角周波数ωr(=2πfr)に従った特性を有し、装着された永久磁石により生成される磁束Φmの作用により、同期電動機が回転している間中その回転数に比例した非減衰電圧が発生する。
【0048】
誘導電動機の速度起電力(残留電圧)V1が減衰挙動するのに対し、永久磁石同期電動機の速度起電力(残留電圧)Vaは、回転数に比例した非減衰挙動を示す点が大きな相違点である。
【0049】
このため、永久磁石同期電動機の場合には、同期電動機への供給電源が遮断されても、その後も速度起電力(残留電圧)が発生し続けるため、同期電動機端子あるいは電力変換装置の出力端子に触れると感電する危険性を内在している。
【0050】
図6は、実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図とタイムチャート図の一例である。図6(a)に示すように逆変換器3は、直流中間回路の(+)電位側に接続された上アーム側のUP、VP、WPのスイッチング素子と直流中間回路の(−)電位側に接続された下アーム側のUN、VN、WNのスイッチング素子で構成される。
【0051】
実施例である(a)の回路構成において、下アームのスイッチング素子UNのみがオン動作した際にスイッチング素子と永久磁石同期電動機に流れる電流IauとIavとIawのルートを示したものである。この際に同期電動機のU相には、速度起電力Esを同期動機のインピーダンスで割った電流Iauが流れる。
【0052】
実施例では、デジタル操作パネル7により、予め同期電動機の「惰性回転検出モード」を選択すると、電力変換装置が永久磁石同期電動機を駆動している最中に、電力変換装置が何らかの異常で停止(逆変換器3を構成する全素子UP、VP、WP、UN、VN、WNをオフ)した後、逆変換器3を構成する素子の中で下アームのスイッチング素子UNのみをオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)にし、永久磁石同期電動機の速度起電力Esによる電流IauとIawを電流検出器CTで検出する。電流Iavについては、Iav=−(Iau+Iaw)として求めることができる。
【0053】
ここで、電力変換装置に発生した何らかの異常とは、例えば、電力変換装置に供給する電源の瞬時停電や不足電圧、あるいは、電力変換装置の逆変換器を構成するスイッチング素子を保護するための過電流や過電圧、あるいは、上位装置から指令された緊急遮断やフリーラン停止などであり、同期電動機を駆動している最中に同期電動機への電力供給を遮断するものである。
【0054】
永久磁石同期電動機の速度起電力Esが残留していれば、下アームのスイッチング素子UNのみをオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)にした際に必ず電流が流れ、速度起電力Esが残留していなければ電流は流れない。つまり、電流が流れれば同期電動機が回転中であり、流れなければ停止中であることが分かる。
【0055】
ここで、スイッチング素子UNをオンとは、スイッチング素子UNのゲートGに“H”レベルの電圧信号を与えスイッチング素子UNを導通させることである。
【0056】
また、下アーム側の1個のスイッチング素子(例えば、UN)のみをオン(UP、VP、WP、VN、WNをオフ)動作させても、下アーム側の2個のスイッチング素子(例えば、UNとVN)のみをオン(UP、VP、WP、WNをオフ)動作させても、下アーム側の3個のスイッチング素子(例えば、UNとVNとWN)のみをオン(UP、VP、WPをオフ)動作させても同様の効果が得られる。
【0057】
図6(b)は、タイムチャート図の一例である。電力変換装置が何らかの異常で停止(逆変換器3を構成する全素子UP、VP、WP、UN、VN、WNをオフ)した後、tsの期間に下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、電流検出器CTで流れる電流を検出し、予め定めた電流値を超えた場合には、制御回路5がデジタル操作パネル7に信号を発し、同期電動機が回転中であることを表示器に表示する。そして、予め設定された時間Td毎に下アームのスイッチング素子UNのみをオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)にし、電流検出器CTで電流検出を繰り返し、予め定めた電流値を超えた場合に同期電動機が回転中であることを、予め定めた電流値以下の場合に同期電動機が停止中であること制御回路5がデジタル操作パネル7に信号を発し表示器に表示する。
【0058】
本実施例では、例えば、Td=5秒毎に電流を検出し、同期電動機が回転しているのか停止しているのかを電流を検出して判断するためである。つまり、比較的長い時間Td毎に電流を検出すれば十分であるといえる。
【0059】
ここで、予め定めた電流値は、0アンペアでもそれ以上の値でもよく、電流値を限定するものではない。また、予め設定された時間Tdは、デジタル操作パネル7で操作者が任意に設定できるようにしてもよい。
【0060】
また、電力変換装置の出力が遮断されている場合に、上位装置12からの信号により、図4の実施例に記載した永久磁石同期電動機の速度起電力を検出したり、図6から図10の実施例に記載した下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし電流検出器CTで流れる電流を検出したり、逆変換器を構成する半導体素子の電流をシャント抵抗電流検出器で検出したりすることにより、検出した電流値に応じて同期電動機の回転有無を判断し、回転中か停止中かを表示器に表示する。
【実施例2】
【0061】
図7は、実施例2に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図とタイムチャート図である。実施例1における図6と共通の構成および同一の機能については、同一の参照番号を付してある。
【0062】
図7(a)に示すように逆変換器3は、直流中間回路の(+)電位側に接続された上アーム側のUP、VP、WPのスイッチング素子と直流中間回路の(−)電位側に接続された下アーム側のUN、VN、WNのスイッチング素子と各下アーム側のUN、VN、WNのスイッチング素子の電流を検出するシャント抵抗電流検出器SHix、SHiy、SHizとUN、VN、WNのスイッチング素子に並列に接続されたダイオード素子の電流を検出するシャント抵抗電流検出器SHdx、SHdy、SHdzとで構成される。
【0063】
実施例である(a)の回路構成において、下アームのスイッチング素子UNのみがオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)動作した際にスイッチング素子と永久磁石同期電動機に流れる電流IauとIavとIawのルートを示したものである。この際に同期電動機のU相には、速度起電力Esを同期動機のインピーダンスで割った電流Iauが流れる。
【0064】
実施例では、デジタル操作パネル7により、予め同期電動機の「惰性回転検出モード」を選択すると、電力変換装置が永久磁石同期電動機を駆動している最中に、電力変換装置が何らかの異常で停止(逆変換器3を構成する全素子UP、VP、WP、UN、VN、WNをオフ)した後、逆変換器3を構成する素子の中で下アームのスイッチング素子UNのみをオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)にし、永久磁石同期電動機の速度起電力Esによる電流IauとIavとIawをシャント抵抗電流検出器SHixとSHiyとSHdzで検出する。
【0065】
永久磁石同期電動機の速度起電力Esが残留していれば、下アームのスイッチング素子UNのみをオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)にした際に必ず電流が流れ、速度起電力Esが残留していなければ電流は流れない。つまり、シャント抵抗電流検出器SHixでの電圧VSHixあるいはSHdyでの電圧VSHdyあるいはシャント抵抗電流検出器SHizでの電圧VSHizが検出されれば同期電動機が回転中であり、検出されなければ停止中であることが分かる。
【0066】
また、下アーム側の1個のスイッチング素子(例えば、UN)のみをオン(UP、VP、WP、VN、WNをオフ)動作させても、下アーム側の2個のスイッチング素子(例えば、UNとVN)のみをオン(UP、VP、WP、WNをオフ)動作させても、下アーム側の3個のスイッチング素子(例えば、UNとVNとWN)のみをオン(UP、VP、WPをオフ)動作させても同様の効果が得られる。
【0067】
図7(b)は、タイムチャート図の一例である。電力変換装置が何らかの異常で停止(逆変換器3を構成する全素子UP、VP、WP、UN、VN、WNをオフ)した後、tsの期間に下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、シャント抵抗電流検出器で流れる電流に相当する電圧を検出し、予め定めた電流値に相当する電圧を超えた場合に同期電動機が回転中であることを表示器に表示する。そして、予め設定された時間Td毎に下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、シャント抵抗電流検出器で流れる電流に相当する電圧検出を繰り返し、予め定めた電流値に相当する電圧を超えた場合に同期電動機が回転中であることを、予め定めた電流値に相当する電圧以下の場合に同期電動機が停止中であることを表示器に表示する。
【0068】
ここで、予め設定された時間Tdは一定ではなく、シャント抵抗電流検出器で流れる電流に相当する電圧検出値に応じて繰り返し時間をTd1、Td2、-----、Tdnと可変した場合の例である。
【0069】
予め設定された一定ではない時間Td毎に特定のスイッチング素子をオン、オフするのは、例えば、Td=5秒毎に実行し、検出した電流が前回検出値より小さい場合には、速度起電力が小さくなった、すなわち回転数が小さくなったとして次回の時間をTd=3秒毎にするということであり、同期電動機が回転しているのか停止しているのかを電流値を検出して判断するためである。もちろん、予め設定された時間Tdは、デジタル操作パネル7で操作者が任意に設定できるようにしてもよい。
【実施例3】
【0070】
図8は、実施例3に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図である。実施例1における図6および図7と共通の構成および同一の機能については、同一の参照番号を付してある。
【0071】
図8(a)に示すように逆変換器3は、直流中間回路の(+)電位側に接続された上アーム側のUP、VP、WPのスイッチング素子と直流中間回路の(−)電位側に接続された下アーム側のUN、VN、WNのスイッチング素子で構成される。
【0072】
実施例である(a)の回路構成において、下アームのスイッチング素子UNとVNのみがオン(UP、VP、WP、WNをオフ)動作した際にスイッチング素子と永久磁石同期電動機に流れる電流IauとIavとIawのルートを示したものである。
【0073】
電流Iavについては、Iav=−(Iau+Iaw)として求めることができる。
【0074】
図からもわかるようにV相とW相のスイッチング素子VNとWNをオンしてもV相とW相スイッチング素子には電流は流れず、V相とW相のスイッチング素子VNとWNに並列に接続されたダイオードに流れるため、図6と同様の効果が得られる。
【0075】
永久磁石同期電動機の速度起電力Esによる電流IauとIawを電流検出器CTで検出し、電流が流れれば同期電動機が回転中であり、流れなければ停止中であることが分かる。
【0076】
また、図8(b)は、下アーム側の全素子UN、VN、WNをオンにした一例であるが、図からもわかるようにV相とW相のスイッチング素子VNとWNをオンしてもV相とW相スイッチング素子には電流は流れず、V相とW相のスイッチング素子VNとWNに並列に接続されたダイオードに流れるため、図6と同様の効果が得られる。
【0077】
すなわち、下アーム側の1個のスイッチング素子(例えば、UN)のみをオン(UP、VP、WP、VN、WNをオフ)動作させても、下アーム側の2個のスイッチング素子(例えば、UNとVN)のみをオン(UP、VP、WP、WNをオフ)動作させても、下アーム側の3個のスイッチング素子(例えば、UNとVNとWN)のみをオン(UP、VP、WPをオフ)動作させても同様の効果が得られる。
【0078】
図9は、実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図の他の一例である。図9(a)に示すように逆変換器3は、直流中間回路の(+)電位側に接続された上アーム側のUP、VP、WPのスイッチング素子と直流中間回路の(−)電位側に接続された下アーム側のUN、VN、WNのスイッチング素子と各下アーム側のUN、VN、WNのスイッチング素子の電流を検出するシャント抵抗電流検出器SHix、SHiy、SHizとUN、VN、WNのスイッチング素子に並列に接続されたダイオード素子の電流を検出するシャント抵抗電流検出器SHdx、SHdy、SHdzとで構成される。
【0079】
実施例である図9(b)の回路構成において、上アームのスイッチング素子VPとWPのみがオン(UP、UN、VN、WNをオフ)動作した際にスイッチング素子と永久磁石同期電動機に流れる電流IauとIawのルートを示したものである。
【0080】
図からもわかるようにU相のスイッチング素子UPをオンしてもU相のスイッチング素子には電流は流れず、U相のスイッチング素子UPに並列に接続されたダイオードに流れるため、図7と同様の効果が得られる。
【0081】
シャント抵抗電流検出器SHduでの電圧VSHduあるいはSHivでの電圧VSHivあるいはSHiwでの電圧VSHiwが検出されれば同期電動機が回転中であり、検出されなければ停止中であることが分かる。
【0082】
また、図9(b)は、上アーム側の全素子UP、VP、WPをオンにした一例であるが、図からもわかるようにU相のスイッチング素子UPをオンしてもU相のスイッチング素子には電流は流れず、U相のスイッチング素子UPに並列に接続されたダイオードに流れるため、図7と同様の効果が得られる。
【0083】
すなわち、上アーム側の1個のスイッチング素子(例えば、UP)のみをオン(VP、WP、UN、VN、WNをオフ)動作させても、上アーム側の2個のスイッチング素子(例えば、UPとVP)のみをオン(WP、UN、VN、WNをオフ)動作させても、上アーム側の3個のスイッチング素子(例えば、UPとVPとWP)のみをオン(UN、VN、WNをオフ)動作させても同様の効果が得られる。
【0084】
図10は、実施例に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出動作モード図の他の一例である。図10(a)の構成図において、図7(a)と共通の構成および同一の機能については、同一の参照番号を付してある。図7(a)と異なるのは、スイッチング素子としてSiC−MOSFETで構成した点である。
【0085】
SiC−MOSFETは、ゲート電圧を印加している順バイアス状態では、ドレインからソース(正方向)へ、あるいは、ソースからドレイン(負方向)に電流を流すことができる。すなわち、正方向および負方向に電流を流すことができるSiC−MOSFETの特性を利用して、SiC−MOSFETに並列に接続されるダイオードを削除した例である。
【0086】
このため、スイッチング素子の電流を検出するシャント抵抗電流検出器SHix、SHiy、SHizのみ(SHdx、SHdy、SHdzは不要)でスイッチング素子SiC−MOSFETに流れる正および負の電流を検出することができる。デッドタイムの期間は、図示しないボディーダイオード(寄生ダイオード)に電流が流れるが、シャント抵抗電流検出器で検出できる。このため、図10(a)の構成においても図7(a)と同様の制御が可能で、図7(b)と同様の効果が得られる。
【0087】
また、図10(b)の構成図において、図9(a)と共通の構成および同一の機能については、同一の参照番号を付してある。図9(a)と異なるのは、スイッチング素子としてSiC−MOSFETで構成した点である。正方向および負方向に電流を流すことができるSiC−MOSFETの特性を利用して、SiC−MOSFETに並列に接続されるダイオードを削除した例である。
【0088】
このため、スイッチング素子の電流を検出するシャント抵抗電流検出器SHiu、SHiv、SHiwのみ(SHdu、SHdv、SHdwは不要)でスイッチング素子SiC−MOSFETに流れる正および負の電流を検出することができる。もちろん、デッドタイムの期間は、図示しないボディーダイオード(寄生ダイオード)に電流が流れるが、シャント抵抗電流検出器で検出できる。このため、やはり図10(b)の構成においても図9(a)と同様の制御が可能で、図9(b)と同様の効果が得られる。
【実施例4】
【0089】
図11は、実施例4に係る永久磁石同期電動機の回転状態検出タイムチャート図の他の一例である。図6の実施例と同様に、tsの期間に下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、電流検出器CTで流れる電流を検出し、予め定めた電流値を超えた場合に同期電動機が回転中であることを表示器に表示する例である。電力変換装置が何らかの異常で停止(逆変換器3を構成する全素子UP、VP、WP、UN、VN、WNをオフ)した後、下アームのスイッチング素子UNのみをオンにするが、同期電動機の回転数が高い場合には大きな電流が流れ、電流検出器にて検出された電流が過電流レベルIoc(逆変換器を構成するスイッチング素子を保護するために予め設けられた電流レベル)に達し、電力変換装置が過電流トリップする。このため、通常は、ts期間スイッチング素子UNのみをオンにするがts1後に過電流レベルIocに達したため、この時点で電力変換装置を遮断(UNパルスをオフ)する。その後は、このトリップ異常を自動リセットするが、このリセットのタイミングは、同期電動機の回転の有無を表示するまでに実施すればよい。もちろん、トリップ異常をラッチしていなければリセットする必要はない。
【0090】
実施例4では、同期電動機の回転数が高いため、過電流トリップが3回発生した例である。時刻t0で、下アームのスイッチング素子UNのみをオンにするが、同期電動機の回転数が高いため大きな電流が流れ、検出電流が過電流レベルIocに達し、ts=ts1(時刻t1)で電力変換装置を遮断(UNパルスをオフ)し、過電流トリップする。ラッチされたこの過電流Iocトリップを自動リセットする。
【0091】
そして、次の時刻t2(時刻t1からTd=Td1経過)まで「モータ回転中」を表示し、時刻t2で再度下アームのスイッチング素子UNのみをオンにするが、同期電動機の回転数が未だ高いため大きな電流が流れ、検出電流が再び過電流レベルIocに達し、ts=ts1(時刻t3)で電力変換装置を遮断(UNパルスをオフ)し、過電流トリップする。ラッチされたこの過電流Iocトリップを自動リセットする。
【0092】
次の時刻t4(時刻t3からTd=Td2経過)まで「モータ回転中」を表示し、時刻t4で再度下アームのスイッチング素子UNのみをオンにするが、同期電動機の回転数が未だ高いため大きな電流が流れ、検出電流が再び過電流レベルIocに達し、ts=ts1(時刻t5)で電力変換装置を遮断(UNパルスをオフ)し、過電流トリップする。ラッチされたこの過電流Iocトリップを自動リセットする。
【0093】
もちろん、デジタル操作パネル7により、予め同期電動機の「惰性回転検出モード」を選択すれば、過電流トリップが発生した場合には自動的に過電流トリップをリセットし、再度下アームのスイッチング素子UNのみオンを可能にし、過電流トリップが続く限り自動リセットが動作する。もちろん、同期電動機の「惰性回転検出モード」を選択した場合には、この過電流レベルに達してもラッチしない構成にすれば自動リセットを実行する必要はない。過電流レベルIocに達した場合には、電力変換装置を一旦遮断(UNパルスをオフ)し、再度下アームのスイッチング素子UNのみオンにし、この過電流レベルIocに達する限り下アームのスイッチング素子UNのみオンを繰り返す。
【0094】
さらに、次の時刻t6(時刻t5からTd=Td3経過)まで「モータ回転中」を表示し、時刻t6で再度下アームのスイッチング素子UNのみをオンにするが、同期電動機の回転数が低くなり、検出電流が予め定めたIocとIad3の範囲内となったため、ts後(時刻t7)に電力変換装置を遮断(UNパルスをオフ)する。
【0095】
実施例4では、過電流レベルIoc(逆変換器を構成するスイッチング素子を保護するために予め設けられた電流レベル:ラッチ)を判断基準にしているが、このレベル値に限定したものではなく、過電流レベルIocよりも低い「惰性回転検出モード」専用の予め定めた第一の電流設定レベルIad0であっても実施例の意図は変わらない。この場合においても、この第一の電流設定レベルIad0に達した場合には、電力変換装置を一旦遮断(UNパルスをオフ)し、再度下アームのスイッチング素子UNのみオンにし、この電流値Iad0に達する限り下アームのスイッチング素子UNのみオンを繰り返す。
【0096】
ここで、時間Td1からTd3の間には、Td1<Td2<Td3の相関関係が予め設定されている。すなわち、検出電流が過電流レベルIocに達するということは、同期電動機の惰性回転数が高いことを意味しており、この過電流レベルを回避するためには、次回の下アームのスイッチング素子UNのみをオンにするタイミングを前回より長くすることが望ましい。長くすれば、同期電動機が惰性回転している時間も長くなるため、回転数も低下する。このため、Td1よりも次回のTd2の方が長く、さらにTd2よりも次回のTd3の方が長く設定してある。
【0097】
ここで、時刻t6で再度下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、時刻t7で検出電流が予め定めたIocとIad3の範囲内となったため、同期電動機の回転数が低下したと判断し、次の時刻t7から時刻t8(時刻t7からTd=Td4経過)までの時間を前回のTd3より短くするが、Td2より短くしてもより。
【0098】
そして、次の時刻t8(時刻t7からTd=Td4経過)まで「モータ回転中」を表示し、時刻t8で再度下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、同期電動機の回転数がさらに低くなり、検出電流が予め定めたIad2とIad3の範囲内となったため、ts後(時刻t9)に電力変換装置を遮断(UNパルスをオフ)する。
【0099】
次の時刻t10(時刻t9からTd=Td5経過)まで「モータ回転中」を表示し、時刻t10で再度下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、同期電動機の回転数がさらに低くなり、検出電流が予め定めたIad1とIad2の範囲内となったため、ts後(時刻t11)に電力変換装置を遮断(UNパルスをオフ)する。
【0100】
以上の動作を繰り返し、時刻t12(Td=Td7経過)で、再度下アームのスイッチング素子UNのみをオンにし、時刻t13での検出電流が予め定めたIad1以下で殆ど0となったため、時刻t13以降は「モータ停止中」と表示する。
【0101】
そして、電力変換装置に運転信号が入力されるまで、下アームのスイッチング素子UNのみをオンを繰り返し、同期電動機の回転の有無を検出継続してもよい。もちろん、同期電動機が停止したと判断できたため、時刻t13以後は、下アームのスイッチング素子UNのみをオンにする制御を中止してもよい。
【0102】
ここで、時間Td4からTdnの間には、Td4>Td5>Td6>Td7の相関関係が予め設定されている。すなわち、予め定めた電流値がIad1とIad2とIad3の3レベルが設けられており、これらのレベルと予め定めた繰り返し時間Tdとの相関が下記のように決めてある。
・Iad3≦Iau<Iocの場合、Td=Td4
・Iad2≦Iau<Iad3の場合、Td=Td5
・Iad1≦Iau<Iad2の場合、Td=Td6
・Iau<Iad1の場合、Td=Td7
これは、数(4)からも分かるように同期電動機に流れる電流値(検出電流値)が小さくなることは、速度起電力が小さくなった、すなわち回転数が低くなったことを意味する。

このため、検出電流値が小さくなれば、同期電動機の回転数が低くなったことを意味するため、同期電動機が停止するまでの時間が短くなるため、次回の返し時間Tdも前回より短くして電流を検出測定すれば、同期電動機の停止状態の把握時間を短くできる。
【0103】
このように予め相関を決めておけば、電流検出器にて検出された電流値に応じて自動的に繰り返し時間Tdが可変されるため、操作者が繰り返し時間Tdを設定する必要がないというメリットがある。
【0104】
実施例4では、予め定めた電流値がIad1とIad2とIad3の3個のレベルを設け、これらのレベルと予め定めた繰り返し時間Tdとの相関を決めてあるが、予め定めた電流値設定レベルの個数に制限を与えるものではなく、3個のレベルに限らずn個の電流値設定レベル(Iad1、------、Iadn)を設け、この電流値設定レベルに応じて自動的に繰り返し時間Tdを可変してもよい。
【実施例5】
【0105】
図12は、実施例4に係るデジタル操作パネルの表示例である。電力変換装置10の表面に搭載されたデジタル操作パネル7の表示部Aに永久磁石同期電動機の回転状態の有無を表示する。(a)は、永久磁石同期電動機が回転していることが検出された場合に「モータ回転中」と表示部Aへ表示した例である。(b)は、永久磁石同期電動機が停止していることが検出された場合に「モータ停止中」と表示部Aへ表示した例である。
【0106】
また、表示内容も「モータ回転中」あるいは「モータ停止中」に限定するものではなく、
実際の「回転数」(例えば、「1000(r/m)」、「0(r/m)」あるいは、「1000」、「0」)を表示してもよい。あるいは、「電圧発生有」、「電圧発生無」でも「電圧危険」でもよい。すなわち、「モータが回転している」あるいは「モータが停止している」ことが操作者に分かればよく、表示内容を限定したものではない。もちろん、当該表示内容を上位装置12に表示することができる。
【0107】
以上の実施例で示したように、例えば、電力変換装置に異常が発生しその出力が停止した後、永久磁石同期電動機の回転数に応じた速度起電力あるいは同期電動機に流れる電流の有無を検出し、同期電動機が回転しているか、あるいは停止しているかを表示器に表示するため、ユーザが目視で認識できるように注意喚起することが可能であり、電力変換装置の出力端子に不用意に触れる危険性を排除することができる。
【0108】
また、例えば、換気ファンなどの用途の場合、電力変換装置で同期電動機を正常に停止し、ファンも一旦停止しても外気である空気により再度ファンが回され、同期電動機が惰性回転されることがある。このような用途においても、同期電動機の回転有無を表示器に表示したり、警報出力信号Sig1を用いて警報ランプを点灯させることによりユーザに注意喚起することができる。
【符号の説明】
【0109】
1…順変換器、2…平滑用コンデンサ、3…逆変換器、4…制御演算装置、5…制御回路、6…冷却ファン、7…デジタル操作パネル、8…ドライブ回路、9…電圧検出回路、10…電力変換装置、11…負荷装置、12…上位装置、13…スイッチングレギュレータ回路、14…電圧検出回路、CT…電流検出器、SH1,SHi,SHd…シャント抵抗電流検出器、PMモータ…永久磁石同期電動機、NFB…ノーヒューズブレーカ、MC…電磁接触器、Ioc…過電流レベル、Iad1,Iad2,Iad3…予め定めた電流値設定レベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12