特許第6282304号(P6282304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282304
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】同位体比測定のための流れ低減システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20180208BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20180208BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20180208BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G01N1/00 101R
   G01N27/62 F
   G01N21/3504
   G01N21/05
【請求項の数】27
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-90330(P2016-90330)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-212101(P2016-212101A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】1507440.4
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルゲン シュルター
(72)【発明者】
【氏名】エリク ワペルホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ニルス ストブナー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルグ ヨスト
(72)【発明者】
【氏名】ティム ストルトマン
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−531677(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/170179(WO,A1)
【文献】 特開平04−109542(JP,A)
【文献】 特開昭60−073336(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102928554(CN,A)
【文献】 特開平11−337525(JP,A)
【文献】 PROSSER, S. J. 外3名,Rapid, Automated Analysis of 13C and 18O of CO2 in Gas Samples by Continuous-flow, Isotope Ratio Mass Spectrometry,BIOLOGICAL MASS SPECTROMETRY,1991年,Vol.20, No.11,P.724-730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/26
G01N 21/00 − 21/61
G01N 27/60 − 27/70
G01N 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続流れ同位体比分析器において分析物ガス流を制御するためのシステムであって、
分析物ガス流をそれぞれ受け取る及び放出するための入口ならびに出口を有する測定セルと、
前記入口に流体接続されたガス入口ラインと、
前記出口に流体接続されたガス出口ラインと、
前記同位体比分析器の中への分析物ガス流を選択的に制御するための、前記ガス入口ライン上の少なくとも1つの切り換え可能な流れ制限部と、を備え、
前記切り換え可能な流れ制限部が、第1のバイパス接合部及び第2のバイパス接合部において前記ガス入口ラインに接続されたバイパスガスラインと、前記第1のバイパス接合部と前記第2のバイパス接合部との間において前記ガス入口ライン上に配設された流れ制限部と、によって提供され、
前記システムが、少なくとも第1及び第2の弁位置を有する、前記バイパスガスライン及び/または前記ガス入口ラインにおけるガス流を制御するための少なくとも1つの弁を更に備え、第1の位置において、ガスが、第1のゼロ以外の流量で、前記バイパスライン及び前記同位体比分析器を通って流れるように誘導され、かつ第2の位置において、ガスが、前記第1のゼロ以外の流量とは異なる第2のゼロ以外の流量で、前記ガス入口ライン上の前記流れ制限部を通って前記同位体比分析器の中に流れるように誘導される、システム。
【請求項2】
前記第2のゼロ以外の流量が、好ましくは前記第2の流量が前記第1の流量の約1/2〜約1/20であるように、前記第1のゼロ以外の流量よりも少ない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流れ制限部が、固定流れ制限部、質量流量制御器、または比例弁によって提供される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの弁が、前記バイパスガスラインに沿って前記第1のバイパス接合部と前記第2のバイパス接合部との間に配設された弁を備え、この弁が、ガスが前記バイパスガスラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることができる、第1の位置と、ガスが前記バイパスガスラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることを阻止される、第2の位置を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
記少なくとも1つの弁が、前記ガス入口ライン上に、前記第1のバイパス接合部と前記第2のバイパス接合部との間に配設された弁を更に備え、この弁が、ガスが前記ガス入口ラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることができる、第1の位置と、ガスが前記ガス入口ラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることを阻止される、第2の位置と、を有する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの弁が、前記第1のバイパス接合部に位置するまたは前記第1のバイパス接合部と流体連通する切換弁を備え、この切換弁が、ガスが前記バイパスガスラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることができ、かつガスが前記ガス入口ラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることを阻止される、第1の位置と、ガスが前記ガス入口ラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることができ、かつガスが前記バイパスガスラインに沿って前記第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることを阻止される、第2の位置と、を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの切り換え可能な流れ制限部が、並列配設で設けられている前記ガス入口ライン上の複数の流れ制限部として提供されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の制限部が、複数の制限ラインとして提供され、前記制限ラインのそれぞれが、少なくとも1つの流れ制限部を備え、前記複数の制限ラインが、前記第1のバイパス接合部の下流の第1の制限ライン接合部で合流し、かつ前記複数の制限ラインが、前記第2のバイパス接合部の上流の第2の制限ライン接合部で合流する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
分析物ガスとキャリアガスが組み合わされる混合接合部で合流する、分析物ガス入口ライン及びキャリアガス入口ラインを更に備え、前記混合接合部が、前記ガス入口ラインに流体接続されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記弁のうちの少なくとも1つの弁位置を制御するための制御器を更に備える、請求項4〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御器が、少なくとも1つの測定セルパラメータについての入力を受信するように適合され、前記制御器が、前記少なくとも1つの測定セルパラメータに基づいて、前記弁のうちの少なくとも1つの前記位置を調整することができ、前記少なくとも1つの測定セルパラメータが、前記測定セル中のガス濃度、前記測定セル中のガスの同位体比決定、及び前記測定セル中のガス圧力から選択される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
第1の位置において、前記同位体比分析器のフラッシング及び/または充填中に、ガスが第1の流量で前記バイパスラインを通って前記同位体比分析器の中に流れるよう誘導されるように、かつ第2の位置において、前記同位体比分析器における分析物ガスの測定の間に、ガスが前記第1の流量よりも少ない第2の流量で前記流れ制限部を通って前記同位体比分析器の中に流れるよう誘導されるように、前記制御器が、前記弁のうちの少なくとも1つの前記弁位置を制御するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記測定セルが、同位体比光学分光計のレーザセルである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
真空ポンプが、前記ガス出口ラインに流体接続され、前記システムが、前記測定セルと前記真空ポンプとの間に調整可能弁を更に備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記測定セル内の圧力を決定するための、前記測定セルに動作可能に接続された圧力センサを更に備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記真空ポンプ及び/または前記調整可能弁が、前記測定セルにおいて一定の圧力を維持するように、前記圧力センサからの信号に応答して制御されるように適合される、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
前記測定セルと前記真空ポンプとの間で、前記ガス出口ライン上に配設された少なくとも1つのガスバラストを更に備える、請求項14〜16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記ガスバラストが、(i)前記ガス出口ラインに流体接続されると共に大気に開かれた毛細管であって、前記毛細管を通るガス流が、その毛細管の長さ及び内径によって調節される毛細管、(ii)前記ガス出口ライン上の流れ口、あるいは(iii)前記ガス出口ラインに流体接続された毛細管、及び前記毛細管におけるガス流を調節するために、前記毛細管上にまたは前記毛細管と流体連通して配設された調整可能弁、として提供される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
第1の期間中に前記ガスが第1のゼロ以外の流量で前記測定セルの中に流れるように、かつ第2の期間中に前記ガスが、前記第1の流量よりも少ない第2のゼロ以外の流量で前記測定セルの中に流れるように、前記切り換え可能な流れ制限部を制御するように構成された制御器を更に備え、前記第1の期間の少なくとも一部の間に、前記セルが分析物ガスでフラッシュされ及び/または前記分析物ガスで充填され、かつ前記第2の期間の少なくとも一部の間に、前記セル中の前記分析物ガスが前記分析物ガスの同位体比を決定するために測定される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
連続流れ同位体比分光計において分析物ガスの同位体比を決定する方法であって、
第1の流量で同位体比決定のために分析物ガスを含むガス流を測定セルの中に提供するステップと、
第2の流量を実現するように、前記測定セルの中への前記ガス流を低減するステップと、
前記分析物中の前記同位体比を決定するステップと、を含み、
前記第1の流量と前記第2の流量との比が、2:1〜20:1の範囲にあり、
前記方法が、請求項1〜19のいずれか一項に記載のシステムを使用して行われる、方法。
【請求項21】
連続流れ同位体比分光計において分析物ガスの同位体比を決定する方法であって、
第1のゼロ以外の流量で同位体比決定のために分析物ガスを含むガス流を測定セルの中に提供するステップと、
前記第1の流量よりも少ない第2のゼロ以外の流量を実現するように、前記測定セルの中への前記ガス流を低減するステップと、
前記測定セルの中への前記ガス流が前記第2の流量にあるときに前記分析物ガスを測定することによって、前記分析物中の前記同位体比を決定するステップと、を含み、
前記方法が、請求項1〜19のいずれか一項に記載のシステムを使用して行われる、方法。
【請求項22】
前記第1の流量での前記測定セルの中への前記ガス流が第1の期間にわたって発生し、前記第1の期間の少なくとも一部の間に、前記セルが前記分析物ガスでフラッシュされ及び/または前記分析物ガスで充填され、前記第2の流量での前記測定セルの中への前記ガス流が、第2の期間にわたって発生し、前記第2の期間の少なくとも一部の間に、前記セル中の前記ガスが、前記同位体比を決定するために測定される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の流量と前記第2の流量との比が、2:1〜20:1の範囲にある、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
ガス流が、前記第1の流量で第1のガスラインを通ってまず誘導され、その後、ガスが前記第2の流量で第2のガスラインを通って流れるように、ガス流を制限するための流量制御手段を備える前記第2のガスラインを通って誘導される、請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記流量制御手段が、固定流れ制限部である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記分析物ガスの流れを提供する前記ステップの前に、前記測定セルをキャリアガスでフラッシュするステップを更に含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記連続流れ同位体比分光計が、光学分光計または質量分光計である、請求項20〜26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、同位体比光学分光計及び同位体比質量分光計などの同位体比分析器のためのガス入口システムに関する。本発明は更に、ガスの流れを同位体比分析器に送達するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、炭素、水素、酸素、及び窒素などの元素の安定同位体の相対存在度は、種々の環境でわずかながらも著しく変動する。同位体比の決定は、例えば、法医学的、人類学的、生化学的、及び環境上の研究において、ならびに薬品及び食品産業において、また運動競技者の間でのドーピング判定のためにも頻繁に使用される調査手法である。
【0003】
同位体比分析は、例えば、CO2を含有するガス状試料において、同位体の相対存在度を決定するための手法である。例えば、同位体比分析は、炭素及び酸素、例えば、13C/12C及び/または18O/16Oの同位体比を決定するために使用され得る。同位体比分析は、光学分光分析及び質量分光分析によって最も一般的に行われる。
【0004】
同位体比分析のためのガス入口システムは、当該技術分野において、特に質量分光計について既知である。同位体比質量分光分析及びガス入口システムの一般概説は、Brenna et al.,Mass Spectrometry Reviews,1997,16:227−258によって提供される。
【0005】
試料の同位体比の決定は通常、試料ガスと、既知の同位体比を有する1つ以上の基準ガスとの同位体比の比較測定を必要とする。したがって、同位体比分析のためのガス入口システムは通常、分析器の中に試料及び/または基準ガスを提供するための分析物ガス入口と、分析器によって決定予定のガスを通常は含有しない、分析物の伝達を容易にするためのキャリアガスを提供するための、キャリアガス入口と、を備える。
【0006】
同位体比光学(通常、赤外)分光分析(IROS)において、CO2またはH2Oによる光吸収が測定され、同位体組成が、結果として生じるスペクトルから決定される。この手法は、例えば、使用の容易さ、費用、及び可搬性に起因して、質量分光分析に勝る利点がある。更に、IROSは、H2Oの直接分析を可能にするのに対して、同位体比質量分光分析は、分析の前に、例えば、H2もしくはCO2へのH2Oの変換、またはCO2との平衡化を必要とする。
【0007】
しかしながら、IROSの場合、圧力が測定の間に一定のままであることが、特に必要不可欠である。これは、同位体比が、吸着(adsorption)スペクトルのフィッティングによって決定されるからであり、吸着(adsorption)帯のピーク形状及び幅は、圧力に依存する。これは、フィッティングパラメータが規定された圧力に最適化されること以上に重要である。
【0008】
光学セルは通常、連続試料流れにおいて、または停止流れ(stop−flow)によって試料を測定する。連続流れにおいて、試料ガスは、ポンピングにより一定の流れで光学セルへと通される。圧力は通常、調節ポンプによって、またはセルからの出口における弁によって維持される。セルの中への入力は、典型的には制御されておらず、すなわち、大気に開かれており、またはそれは流れ制御器によって制御される。試料が停止された流れによって測定されるとき、光学セルは、試料でフラッシュされ、その後、流れは、測定時間中にセルの入口及び出口における弁の使用によって停止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
連続流れ方法の明確な欠点は、測定時間中に光学セルを通る試料の一定の流れが存在するので、それが、大量の試料を消費することである。光学セルの中への流れを低減することは、試料消費を低減することができるが、同時に、システムの応答時間、すなわち、充填及びフラッシング応答時間が増す。しかしながら、停止された流れは、必要とされる試料の量を低減する一方で、いくつかの弱点、例えば、この方法を非常に不安定にさせる、セルにおける漏出、無駄容積、及び表面効果などに悩まされる。停止された流れの場合、測定の間に圧力が、規定された値にある必要があり、かつ一定に保たれる必要があることが特に必要不可欠である。弁の切り換えでさえも通常は圧力変化をもたらして、これは停止された流れ技法では補償することができない。
【0010】
WO2014/170179は、ガスを同位体比分析器に導入するためのガス入口システムを開示する。このシステムは、基準及びキャリアガスが組み合わされる混合接点で接続されている、基準及びキャリアガスの供給部を備える、基準システムを含む。ガスは、混合ゾーン内で混合され、同じく開口部を備える出口ラインを経由して同位体比分析器に更に輸送される。
【0011】
Sturmら(Atmos Meas Tech、2010、3:67−77)は、水蒸気同位体分析器(WVIA、Los Gatos Research Inc)を記載し、それにおいて、ガスの流れが、ポンプの速度を変えることによって変更され得る。
【0012】
Johnsonら(Rapid Commun Mass Spectrom、2011、25:608−616)は、流量を調節するために分析器の前に針弁を含む、同位体比レーザ分光計のためのシステムを開示する。
【0013】
US7,810,376は、分析物ガスの部分圧力を一定に保持するようにガス流を制御するためのシステムを開示する。そのシステムは、分析物の部分圧力を一定に保つように、チャンバの中に不活性ガスを混合することによって、試料チャンバ内のガス流を制御する制御器を含む。
【0014】
試料の高速分析を提供すると同時に試料損失を最小限にする同位体比分析器のためのガス入口システムを提供することが望ましいであろう。
【0015】
本発明は、上記問題への解決策を提供すると同時に以下に記載されるような追加の利点を提供するために、この背景に対して創作された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、連続流れ同位体比分析器においてガス流を制御するためのシステムが提供され、そのシステムは、
ガス流をそれぞれ受け取る及び放出するための入口ならびに出口を有する測定セルと、
入口に流体接続されたガス入口ラインと、
出口に流体接続されたガス出口ラインと、
同位体比分析器の中へのガス流を選択的に制御するための、ガス入口ライン上の切り換え可能な流れ制限部と、を備える。
【0017】
本発明はまた、例えば同位体比光学分光計、または同位体比質量分光計などの同位体比分析器内に、あるいはその同位体比分析器と組み合わせて、そのようなガス流制御システムを提供するように拡張され得る。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、本明細書に記載されるようなガス流を制御するためのシステムを有する同位体比光学分光計が提供される。
【0019】
本発明の更なる態様は、連続流れ同位体比分光計において分析物ガスの同位体比を決定する方法であって、(i)第1の流量で同位体比決定のために分析物ガスを含むガス流を測定セルの中に提供するステップと、(ii)第2の流量を実現するように、測定セルの中へのガス流を低減するステップと、(iii)分析物中の同位体比を決定するステップと、を含む方法を提供する。第1及び第2の流量は、それぞれゼロ以外の流量である。第2の流量は、より好ましくは第1の流量と第2の流量との比が2:1〜20:1の範囲にあるように、好ましくは第1の流量よりも少ない。好ましくは、同位体比は、測定セルの中へのガス流が第1の流量ではなく第2の流量であるときに分析物ガスを測定することによって、決定される。このようにして、分析物ガスの量は、それが分析的測定のためにより少ない流量で使用されるので、より長く持続し得る。これは、所与の量の分析物ガスのためのより長い測定時間、ひいてはより高い感度を可能にし、一方で、規定された及び一定の圧力を維持することが依然として容易である。好ましくは、第1の流量での測定セルの中へのガス流が第1の期間にわたって発生し、第1の期間の少なくとも一部の間にセルが、分析物ガスでフラッシュされる及び/または充填される。更に好ましくは、第2の流量での測定セルの中へのガス流が第2の期間にわたって発生し、第2の期間の少なくとも一部の間にセル中のガスが、同位体比を決定するために測定される。連続流れ同位体比分光計は、光学または質量分光計、好ましくは連続流れ光学分光計であってもよい。
【0020】
ガスラインは、本文脈において、ガスを輸送するためのあらゆるチャネル、チューブ、導管、毛細管、または同様のものを指す。追加の構成要素が、ガスライン、例えば、接合部、弁、流れ制限部、流れ制御器、計器、及び同様のものなどの上に配設され得ることは当業者に明らかになるであろう。これらの構成要素はまた、ガスラインと流体接続にあり得る。
【0021】
切り換え可能な流れ制限部が、ガス入口ライン上に配設された流れ制限部によって提供され得る。流れの切換部が、流れ制限部を含むそれの一部分であって、それぞれ流れ制限部の上流と下流にある第1のバイパス接合部及び第2のバイパス接合部においてガス入口ラインに接続される、それの一部分に沿ってガス入口ラインをバイパスするガスラインを配設することによって、提供され得る。したがって、いくつかの実施形態において、切り換え可能な流れ制限部が、第1のバイパス接合部及び第2のバイパス接合部において、ガス入口ラインに接続されたバイパスガスラインと、第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間で、ガス入口ライン上に配設された流れ制限部と、によって提供される。このようにして、流れが、ガス流をバイパスライン及び/またはガス入口ラインの中に選択的に誘導することによって調節され得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間に、ガス入口ライン上にまたはガス入口ラインに並列して配置された複数の制限部がある。複数の制限部は、好ましくは異なる制限部である。このようにして、制限の度合いが、要求に応じて選択され得る。制限部は、ガス流が選択的に任意の1つの制限部の中に誘導され得るように、好ましくは並列配設で配設される。そのような配設は、第1のバイパス接合部の下流の、ガス入口ライン上の第1の制限ライン接合部で交わる、または第1のバイパス接合部で交わる、及び第2のバイパス接合部の上流の、ガス入口ライン上の第2の制限ライン接合部でも交わる、または第2のバイパス接合部で交わる、複数のガス制限ラインによって適切に適合され得る。制限部、例えば固定流れ制限部などが、ガス制限ラインのそれぞれの上に配設され得る。それによって、ガス流は、ガス制限ライン上に配置された任意の1つのまたは複数の制限部の中に適切に誘導され得る。制限部の中へのガス流が、1つ以上の弁の適切な配設によって制御され得る。一実施形態において、ガス入口上の第1の制限ライン接合部に、または第1の制限ライン接合部と流体連通して配設された切換弁が存在し、切換弁の位置は、ガス流を制限部の中に選択的に誘導する。別の実施形態において、各制限ガスラインにおける流れを選択的に調節するための、制限ガスラインのそれぞれの上に配置された弁が存在する。あるいは、複数の制限部が、好ましくは各制限部が、バイパスラインによって独立してバイパスされ得るように構成された、例えば、第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間の、ガス入口ラインに沿って直列配設で配設されてもよい。
【0023】
流量制御手段は、任意の流れ制御器または調節弁によって一般に提供され得る。流量制御手段は、例えば、質量流量制御器もしくは比例弁、体積流量制御器、または流れが別個のステップにおいて調整されることを可能にする固定流れ制限部の切り換え可能な組み合わせであり得る。そのような流量制御手段は、例えば、US7,928,369及びWO2007/112876に記載される。流量制御手段は、手動でまたは自動的に動作され得る。それらはまた、圧力調節器の下流の少なくとも1つの流れ制限部と組み合わされる1つ以上の自動または手動圧力調節器を備えることができる。流量制御手段は、例えばWO2007/112876に開示されるように、自動、電子、またはデジタル式流れ制御器であり得る。流量制御手段の実施例は、Thermo ScientificからのConFloIV(登録商標)である。
【0024】
それゆえ、流れ制限部は、一般に、ガス流を制限するための任意の好都合な手段、例えば、質量流量制御器、比例弁、または固定流れ制限部などから選択され得る。いくつかの好適な実施形態では、流れ制限部は、固定流れ制限部である。流れ制御器に優る固定流れ制限部を提供する1つの利点は、制限部における同位体分別の危険性の低減である。固定流れ制限部の更なる利点は、流れ制御器と比較して、より短い応答時間である。
【0025】
バイパスラインの中へのガス流は、バイパスガスライン、ガス入口ライン、またはその両方上の1つ以上の弁によって調節され得る。例えば、弁は、ガス入口ライン上の第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間に配設され得、弁は、ガスが、ガス入口ラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間で流れることができる、第1の位置と、ガスが、ガス入口ラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間で流れることを阻止される、第2の位置と、を有する。あるいは、または更に、バイパスガスラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間に配設される弁が存在し得、弁は、ガスが、バイパスガスラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることができる、第1の位置と、ガスが、バイパスガスラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間を流れることを阻止される、第2の位置と、を有する。
【0026】
別の構成では、バイパスラインの中へのガスの流れが、第1のバイパス接合部に位置する、または第1のバイパス接合部と流体連通する切換弁によって調節される。切換弁は、ガスが、バイパスガスラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間で流れることができ、かつガスが、ガス入口ラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間で流れることを阻止される、第1の位置と、ガスが、ガス入口ラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間で流れることができ、かつガスが、バイパスガスラインに沿って第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間で流れることを阻止される、第2の位置と、を有することができる。それによって、単一弁を使用して、制限されないガス流が、バイパスラインの中に誘導され得、一方で、ガス流がそのラインを通ってかつバイパスラインを通らずに誘導されるときに、ガス入口ライン上の流れ制限部が、ガス入口ラインを通るガス流を制限する。このようにして、高いガス流が、例えば、同位体比分析器の測定セルを充填する及び/またはフラッシュするために使用され得、一方で低減された流れが、測定(例えば、光学測定または質量分光測定)の間に使用され得、それは、同位体比決定に必要とされるガスの量を低減する。あるいは、測定は、所与の量のガスを用いてより長い期間にわたって行われ得、それによって測定感度を高める。
【0027】
ガス入口システムは、分析物(試料及び/もしくは基準)ならびに/またはキャリアガスを同位体比分析器の中に送達するために他のガス入口システムを用いる使用に互換性があることが認識されるであろう。例えば、ガス入口システムは、WO2014/170179及び同時係属出願PCT/EP2014/074205に記載されたガス入口システムと併用され得、それらの内容全体が、参照によって組み込まれる。それゆえ、これらの文書に記載されるような分析物ガス(試料ガス及び/または基準ガス)ならびにキャリアガスを提供するためのガス入口システム、または当該技術分野に既知である他の適切なガス入口システムが、本明細書に記載された流れ低減システムと併用され得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、ガス入口システムの中へのガスが、分析物ガスとキャリアガスが組み合わされる混合接合部で合流する分析物ガス入口ライン及びキャリアガス入口ラインによって提供され得る。混合接合部は、次いで、分析物ガス、キャリアガス、またはそれらの混合物がガス入口システムに提供されるように、ガス入口ラインに流体接続され得る。
【0029】
例えば、分析物の流れの供給部を提供する可変流れデバイスが存在し得る。それゆえ、分析物ガス入口供給部が、分析物ガス供給部及び混合接合部の下流に位置し得る、可変容量の中間貯蔵器を通って提供され得る。中間貯蔵器における貯蔵器容量の一定の減少を通して、分析物ガスの一定の流れが、提供され得る。これは、多種多様な供給源からのガス、例えば、小瓶、袋、シリンジ、サンプリングチューブ、ガスクロマトグラフ、TOC分析器、レーザ脱離機器、燃焼またはアブレーションセルなどからのガスが分析されるときに有用であり得る。そのような供給源のうちの1つまたは任意の組み合わせからのガスが、可変容量貯蔵器の中に提供され得、そこから、そのガスは、同位体比分析器に送達され得る。
【0030】
ガスの流れを制御するための弁が、更に、分析物ガス入口ライン、キャリアガス入口ライン、またはその両方上に配置され得る。それゆえ、混合接合部の方へ分析物ガスの流れを制御するための弁が、提供され得る。弁は、分析物ガスが、混合接合部の方へ分析物ガスラインに沿って流れることができる、第1の位置と、分析物ガスが、混合接合部の方へ分析物ガスラインに沿って流れることを阻止される、第2の位置と、を有することができる。同様に、混合接合部の方へのキャリアガスの流れを制御するための弁が、提供され得る。この弁はまた、キャリアガスが、混合接合部の方へ分析物ガスラインに沿って流れることができる、第1の位置と、キャリアガスが、混合接合部の方へ分析物ガスラインに沿って流れることを阻止される、第2の位置と、を有することができる。
【0031】
キャリアガスライン、分析物ガスライン、またはその両方上にガス流を制御するための適切な手段を配設することもまた適切であり得る。ガス流を制御するための適切な手段は、質量流量制御器及び比例弁を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、混合接合部の上流に、キャリアガス入口ライン上に存在する開口部が存在し得る。キャリアガスの流れを制御するための弁と混合接合部との間に開口部を設けることが適切であり得る。開口部は、大気に開かれ得、それゆえ、システムを大気圧にまたは大気圧の近くに維持する。キャリアガス入口ラインを通って流れる過剰ガスは、開口部を通って出ることができる。
【0033】
分析物ガスラインにおける分析物ガスの流量は、同位体比分析器の中へのガスの流量よりも少ないように配設され得る。混合接合部及び開口部は、この構成において、混合接合部の方へキャリアガスラインに沿ってキャリアガスの流れが存在し、過剰キャリアガスが、キャリアガス入口ライン上の開口部を通って通気されるように、配設され得る。それによって、同位体比分析器の方へのガスの流れが常に存在し、分析物試料の損失が発生しない。開口部の方への分析物ガスの逆拡散が、システムにおけるガス流量の大きさ、及び混合接合部と開口部との距離によって阻止される。
【0034】
キャリアガス入口ライン上の開口部は、大気に開かれ得る。これは、キャリアガス入口ライン及び伝達ガスラインにおける流れが、同位体比分析器によって取り扱われ得るものを超えないことを確実にする。開口部は、開いた毛細管の形態にあり得る。開口部は、いくつかの実施形態において、キャリアガス入口ライン上の、混合接合部の上流の接合部、例えばT型接合部などの上に配置される。開口部は、開口部にわたる圧力降下がわずかに存在し、したがって、接合部における圧力が、大気圧に近いように構造化される。開口部にわたる圧力降下は、250mbar以下とすることができるが、100mbar以下、または50mbar以下とすることもできる。いくつかの実施形態において、開口部は、直径が少なくとも0.5mmである開いた毛細管の形態にある。開口部は、例えば、直径が0.5〜2.0mmの間にあり得る。開口部は更に、少なくとも5mm、または少なくとも10mmの長さであり得る。開口部は、5〜20mmの長さ、または約5〜10mmの長さの範囲にあり得る。輸送されたガスのうちのいくつかは、開口部を通って失われるが、適切な量が、キャリアガスラインの下流にかつ輸送ガスラインの中に伝達されることになる。開口部は、無視できる圧力降下が開口部にわたって発生するように設計されることが好ましい可能性があり、その結果、開口部を通る拡散によるガスの損失がほとんどまたは全くない。適切な開口部の詳細は、WO2014/170179に開示される。
【0035】
システムは、分析物ガスを分析物ガス入口ラインに供給するための分析物ガスの供給部を更に備えることができる。分析物ガスは、試料ガス、例えば未知の同位体組成及び/または未知の濃度の試料ガスなどであり得る。分析物ガスはまた、同位体比分析器の較正のためのものである、基準ガス、すなわち、既知の同位体比のガスとすることもできる。いくつかの実施形態において、分析物ガスは、試料ガスである。システムはまた、キャリアガスをシステムのキャリアガス入口ラインに供給するためのキャリアガスの供給部を備えることもできる。キャリアガスは、試料ガスが実質的にないものとすることができる。いくつかの実施形態において、キャリアガスは、試料ガスがない。いくつかの実施形態において、試料ガスは、CO2であり、キャリアガスが、CO2がないガス、例えばCO2がないN2、CO2がないHe、CO2がない空気、またはCO2がないArなどである。
【0036】
いくつかの実施形態において、分析物ガスから水の跡を除去するために、水乾燥機が、分析物ガス入口ライン上に提供される。
【0037】
システムはまた、1つを超える分析物供給部及び/または1つを超える分析物ガス入口ラインを備えることもできる。システムはまた、1つを超えるキャリアガス供給部及び/または1つを超えるキャリアガス入口ラインを備えることもできる。それゆえ、本明細書に規定されるような本発明の特定の利点を維持しながら、本明細書に記載されるようなシステムの修正及び変更が可能であり、そのような修正は、当業者に明らかであろう。
【0038】
キャリアガスは、一般に、窒素、ヘリウム、アルゴン、及び空気から選択され得、またはこれらのガスのうちの任意の2つ以上の混合であり得る。キャリアガスは、試料がない、すなわち、キャリアガスは、同位体比分析器において測定予定である試料ガスを含有するべきではないことが好ましい可能性がある。同位体比分析器によって測定される一般的な試料ガスは、CO、CO2、アルカン、例えばCH4、Nxy、及びNO2などを含む。したがって、試料ガスは、CO、CO2、CH4、Nxy、及びNO2のうちの1つ以上がないことが好ましい可能性がある。
【0039】
同位体比分析器によって決定される一般的な同位体は、13C/12C及び18O/16O、17O/16O、15N/14N、及び2H/1Hである。基準ガスは、同位体比のうちの1つ以上のための測定予定の試料ガスを含むことができる。例えば、基準ガスは、既知の同位体比を有し、同位体比を測定するために使用される複数の濃度を提供し、かつ同位体比の濃度依存性決定するために、システムにおいてキャリアガスで動的に希釈され得る。
【0040】
混合接合部を通ってガス入口ラインの中に送達される分析物ガス供給部からの分析物ガスの流れを選択的に制御することが望ましい可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、システムは、例えば、質量流量制御器、比例弁、体積流量制御器、または同様のものであり得る、混合接合部への分析物ガスの流れを制御するための手段を更に含有することができる。
【0041】
ガス入口システムは、好ましくは、大気圧で動作するか大気圧の近くで動作することができる。1つの構成では、キャリア入口ライン及び/または分析物入口ラインが、大気に開かれた少なくとも1つの割れ部を備える。
【0042】
分析物ガスは、同位体比分析器における測定の前にキャリアガスの流れによって希釈され得る。例えば、試料ガスは、既知の同位体比を有する基準ガスの濃度範囲内にある濃度まで希釈され得る。試料ガスは、例えば、既知の同位体比を有する基準ガスの濃度の範囲にある濃度まで希釈され得る。試料ガスは、キャリアガスの流れによって希釈され得、試料ガスとキャリアガスが混合接合部で混合される。いくつかの実施形態において、試料ガスは、測定の前に希釈されない。すなわち、同位体比分析器は、ガス入口ラインを通して希釈されない試料ガスを受け取る。
【0043】
分析物ガスはまた、基準ガスと交換され得、または基準ガスと混合され得る。基準ガスは、キャリアガスでそれを動的に希釈することによって、流れにおける可変濃度で送達され得る。いくつかの実施形態において、基準ガスは、既知の同位体比を有するガスのパルス、または連続する一連のパルスとして提供され得る。
【0044】
一定の実施形態では、混合接合部、第1のバイパス接合部、及び/または第2のバイパス接合部が、T型接合部である。この文脈において、T型接合部は、3つの流れチャネルの任意の接合部、すなわち、3つの腕部を含有する接合部を意味する。T型接合部は、T型部分として、Y型部分として、または3つの直交するチャネルの接合部として提供され得る。接合部は、3つのチャネルが同じ平面内にある、二次元接合部として更に提供され得、または接合部は、3つのチャネルが全て(すなわち、三次元「三脚(tripod)」のように)同じ平面にあるとは限らない、三次元構造として提供され得る。
【0045】
ガスラインの構成要素、例えば本明細書に記載される接合部などが、機械加工されたブロックで、すなわち、1つの機械的部分として、提供され得る。これは、システムの製造が、材料の塊、例えば金属ブロックなどから機械加工することによって、行われ得ることを意味する。更に、T型接合部を使用して、機械加工されたブロックに製造することを用いてまたは用いずに、接合部における開口部を通る流れが、完全な機械的制御下にあることを確実にする。T型接合部設計は、拡散経路が十分に分離していることを確実にし、それにより、その流れ特性がはっきりと決定及び予測されるため、システムの設定及び較正が容易となる。
【0046】
分析物ガス、例えば試料ガスまたは基準ガスなどが、同位体比の測定前にキャリアガスで希釈され得る。これは、分析物ガスラインを通って提供される分析物ガスと、キャリアガス入口ラインを通って提供されるキャリアガスを混合接合部で混合することによって実現され得る。また、例えばWO2014/170179に開示されるように、混合接合部の上流で、分析物ガスライン上に別個の混合デバイスが存在することができる。したがって、試料ガス及び基準ガスは、ある範囲の濃度を有することができる。
【0047】
基準ガスが、基準ガスの単一供給部を通して提供され得、それは、同位体比及びその濃度依存性を測定するために基準ガスの複数の濃度を提供するようにキャリアガスで希釈される。いくつかの場合において、基準ガスが、希釈の2つの段階を通って希釈される。
【0048】
ガス入口システムは、少なくとも1つの弁の弁位置を制御するための少なくとも1つの制御器を含むように構成され得る。制御器は、好ましくは、それが、システムにおけるガスの濃度、同位体比、または圧力を反映する少なくとも1つのパラメータについての入力を受信することができるように、かつそのパラメータ情報に基づいて信号を弁に提供するように、適合され得る。いくつかの実施形態において、制御器は、少なくとも1つの測定セルパラメータについての入力を受信するように適合され、制御器は、少なくとも1つの測定セルパラメータに基づいて、システムにおける弁のうちの少なくとも1つの位置を調整することができる。測定セルパラメータは、好ましくは、測定セル中のガス濃度、測定セル中のガスの同位体比決定、及び測定セル中のガス圧力から選択され得る。
【0049】
制御器は、1つの測定セルパラメータについての入力を受信することができ、パラメータの値に基づいて、バイパスガスライン及び/またはガス入口ラインにおけるガス流を制御することができる。測定セルのフラッシング及び/または充填中に、ガス流を高いガス流のためにバイパスラインの中に誘導することが有用であり得る。セルのフラッシング及び/または充填後、例えば一定のガス流における試料の測定の間に、より少ない流量に切り換えることが有用であり得る。したがって、制御器は、第1の位置において、ガスが、同位体比分析器のフラッシング及び/または充填中に、第1の流量でバイパスラインを通って同位体比分析器の中に流れるよう誘導されるように、かつ第2の位置において、ガスが、同位体比分析器における分析物ガスの測定の間に、第1の流量よりも少ない第2の流量で流れ制限部を通って同位体比分析器の中に流れるよう誘導されるように、弁のうちの少なくとも1つの弁位置を制御するように構成され得る。
【0050】
したがって、一般に、ガス入口システムが、第1の期間中にガスが、第1のゼロ以外の流量で測定セルの中に流れるように、かつ第2の期間中にガスが、第1の流量よりも少ない第2のゼロ以外の流量で測定セルの中に流れるように切り換え可能な流れ制限部を制御するように構成された少なくとも1つの制御器を含むように構成され得ることが分かり得る。好ましくは、第1の期間の少なくとも一部の間にセルが分析物ガスでフラッシュされ及び/または充填され、かつ第2の期間の少なくとも一部の間にセル中の分析物ガスが、分析物ガスの同位体比を決定するために測定される。制御器は、好ましくはコンピュータを備える。
【0051】
一定の実施形態では、ガス入口システムが、少なくとも1つのガス供給部を備えられ得る。ガス供給部は、例えば、分析物ガス供給部(試料ガス供給部及び/または基準ガス供給部)ならびに/あるいはキャリアガス供給部を含むことができる。その上、システムは、例えば、複数の基準ガス供給部、複数の試料供給部、及び/または複数のキャリアガス供給部を含む構成で、各ガスの1つを超える供給部を含むことができる。そのような供給部は、各ガス供給部のための別々のガス入口ラインを有する、かつ混合接合部の上流で、または混合接合部で合流し得る、システムに好都合に提供され得る。
【0052】
ガス入口システムは、ガス出口ラインに接続され得るガス真空ポンプを含むことができる。真空ポンプは、測定セル中の圧力を調節する可能性を提供する。したがって、測定セル内の圧力を決定するための、測定セルに動作可能に接続された圧力センサが提供され得る。真空ポンプは、圧力センサからの信号に応答して制御されるように更に適合され得る。例えば、圧力センサは、信号に応答して真空ポンプの設定を調節する制御器に信号を送信することができる。このポンプ制御器は、切り換え可能な流れ制限部の制御、弁の制御などについて上述されたものと同じ制御器であってもよいし、また好ましくは同じ制御器である。あるいは、ポンプ制御器は、別個の制御器であってもよい。
【0053】
システムは、圧力制御の増大されたダイナミックレンジを提供するのに有用であるガスバラストであって、凝縮もまた阻止するガスバラストを更に含むことができる。ガスバラストは、好ましくは、大気に開かれ得る毛細管として提供され得、かつ測定セルと真空ポンプとの間で、ガス出口ラインに接続され得る。ガスバラストはまた、不活性ガスの供給部に開かれ得る。毛細管は、毛細管内のガスの流量を制御するための、調整可能弁を更に含むことができる。弁は、圧力センサからの信号を受信する制御器、例えば、ポンプ速度を制御する同じ制御器(または異なる制御器)によって制御されるように適合され得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、ガスバラストは、ガス出口ラインに流体接続された毛細管であって、大気に開かれた毛細管として提供され得る。そのような実施形態において、毛細管を通るガス流が、その毛細管の長さ及び内径によって調節される。
【0055】
ガスバラストはまた、ガス出口ライン上に流れ口として提供され得る。そのような実施形態において、流れ口の寸法が、ガスバラストに望ましい要求される動的なガス流を実現するように調整され得る。
【0056】
システムが、広い圧力範囲にわたって測定セル中の必要な圧力制御を実現するために、複数のガスバラストを備えることが有利であり得る。したがって、いくつかの実施形態は、好ましくは並列に配設され得る複数のガスバラストを備えるシステムに関する。例えば、複数のガスバラストが、ガス出口ラインに接続される複数の毛細管として配置され得、各毛細管が、望ましいバラスティング(ballasting)を実現するための、長さ及び直径の特定の寸法を有する。毛細管におけるガス流を制御するための少なくとも1つの弁を更に含むことが好ましい可能性がある。1つのそのような実施形態では、2つ以上のそのような毛細管を通るガス流を選択的に誘導するために配設された切換弁が存在し得る。切換弁は、ガス出口ライン上に配設され得る。切換弁はまた、切換弁で交わる2つ以上の毛細管においてガス流を選択的に制御するために、ガスバラスト毛細管またはガスバラストライン上に配置され得る。
【0057】
本明細書に記載されたガス入口システムは、ガス流を同位体比分析器に提供するために使用され得る。分析器は、同位体比を決定することができる任意の種類の分析器、例えば同位体比質量分光計または同位体比光学分光計であり得る。いくつかの実施形態において、同位体比が、同位体比光学分光計、例えばレーザ分光計である。そのような分光計は、典型的には2〜6μmの間の中間赤外領域で動作する。いくつかの実施形態において、同位体比分光計が、分析予定のガスについて光吸収測定を行うための測定セルを備える。
【0058】
測定セルは、流れセル、例えば、ガスの連続的な流れのための流れセルであり得る。いくつかの実施形態において、測定セルは、マルチパスセル、すなわち、マルチパス光学セル、好ましくはマルチパスレーザセルである。セルの光路長は、典型的には、セル内の複数のレーザパスの合計として提供され、かつ1〜105m、1〜104m、1〜103m、1〜100m、または1〜10mの範囲内にあり得る。単一測定セルが、試料及び基準ガスの両方を測定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、セルは、セルの出口を経由してポンプに接続される。測定セル中の圧力は、約50〜200mbar、約70〜150mbar、または約80〜100mbの範囲にあり得る。いくつかの実施形態において、測定セル中の圧力が約100mbである。
【0059】
いくつかの実施形態において、フィルタが、粒子がセルに入ることを阻止するために、測定セルの上流のガス入口ライン上に設けられ得る。フィルタは、第2のバイパス接合部と測定セルとの間でガス入口ライン上に配設され得る。
【0060】
光学(典型的には赤外)分光計における同位体比は、一般に、2つ以上のスペクトル吸収ライン、決定予定の各異なる同位体種のための少なくとも1つのライン、例えば、13162のための1つのライン及び12162のための1つのラインを測定することによって、決定される。一実施例では、CO2についての好適なスペクトルラインは、4.329μmにあるラインまたは約4.329μmのラインである。スペクトル吸収ラインの強度の比率は、試料に存在する各同位体種の存在量の比率の測定値、及びそれゆえ同位体比(この場合において、13C/12C)の測定値である。同位体比は、デルタ表記(δ)によって、この場合において、δ13Cとして表現され得る。
【0061】
本明細書に記載されたガス入口システムを用いて使用される同位体比分析器は、CO2からの同位体比13C/12C及び/または18O/16Oの決定のために構成され得る。しかしながら、一般に、同位体比分析器は、例えば、CH4の分析における例えば2H/1Hなどの他の同位体比を決定するのに、あるいは例えばNOまたはCOなどの他のガスにおける13C/12C、18O/16O、または15N/14Nを測定するのに好適であり得る。目的とする他の種類のガス及び同位体比がまた、本明細書に更に記載されるように、また当業者に明らかであるように、測定され得る。異なるガスの測定のために、流量及び/またはガス濃度は、測定の性質及び分析器の感度に従って、最適な測定設定のために調整される必要があり得る。
【0062】
本発明のガス入口システムは、異なった利点を有し得る、同位体比分析器の中へのガス流を迅速に変える機会を提供する。例えば、分析前にキャリアガスによってまたは分析物ガスによって、試料分析前または後に、測定セルを迅速にフラッシュできることが有用かつ有益であり得る。それゆえ、分析予定の試料でセルを急速に充填でき、次いで、測定の間に流量を低減できることが有益であり得る。これは、分析のために必要とされる試料の量を最小限にすると共に、微量で利用可能な試料に特に有用であり得る。更に、少ない流量は、測定の間に(試料ガスがキャリアガスによって希釈されるときに)または機器の活動停止期間中に、少量のキャリアガスを必要とする。その結果、低減された第2の流量が、分光計の活動停止期間中に、例えば、セルが、フラッシュされていないとき、充填されていないとき、または測定に使用されていないときに、利用され得る。
【0063】
それゆえ、本発明に係る方法において、測定セルが、試料ガスの流れを測定セルの中に提供する前にキャリアガスでフラッシュされ得る。フラッシングは、ガスが、高流量で、例えば約80mL/分などでバイパスラインを通って流れることを可能にすることによって、及びより少ない流量に切り換えた後に試料ガスでキャリアガスの交換をすることによって、行われ得る。切り換えは、バイパスガスライン及びガス入口ラインの中への流れを調節する弁によって行われ得る。
【0064】
本発明の追加の詳細と共に上記特徴が、以下の実施例に更に記載され、それらは、本発明を更に例示することを意図されるが、決して本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0065】
当業者は、以下に記載された図面が、単なる例示目的のためのものであることを理解するであろう。図面は、本教示の範囲を限定することを決して意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明に係るガス入口システムとインターフェースを取る同位体比光学分光計の概略配置図を示す。
図2】同位体比光学分光計の代替の配置図を示す。
図3】光学分光計のガス入口ライン上の2つの制限ラインを含む配置図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下において、本発明の例となる実施形態が、図面を参照にして、記載される。これらの実施例は、本発明の更なる理解をもたらすために、本発明の範囲を限定することなく、提供される。
【0068】
以下の記載において、一連のステップが記載される。当業者は、文脈によって要求されない限り、ステップの順序は、結果として生じる構成及びそれの効果に重要ではないことを認識するであろう。更に、ステップの順序に関わらず、ステップ間の時間遅延があることまたはないことが、記載されたステップのうちのいくつかまたは全ての間に存在し得ることは当業者に明らかになるであろう。
【0069】
本発明は、一般に、光学分光分析、質量分光分析、または他の種類の分光分析技法によって、ガスの同位体分析に適用可能であることを認識されたい。したがって、一般に、システムにおいて分析されているガスが、可変になる。更に、本発明に係るシステム及び方法が、光学分光計の好適な実施形態が続く実施形態に例示されるが、本発明はまた、同位体比を決定するための、質量分光計を含む、他の分光計に適用可能であることを認識されたい。
【0070】
図1を参照にすると、本発明に係るガス入口とインターフェースを取る同位体比光学分光計20が概略的に示される。分光計は、それぞれ、測定セル9からガスを提供するための及び除去するための、ガス入口ライン1ならびにガス出口ライン2を有する。測定セルは、マルチパス光学セルである。同位体比光学分光計は、ガス入口システムとインターフェースを取る同位体比質量分光計と交換され得ることは当業者に明らかになるであろう。同位体比光学分光計は、レーザ分光計、すなわち、マルチパスレーザセルのような測定セルを用いるものであり得る。それゆえ、以下の実施形態に記載されるような本発明のシステム及び方法は、光学分光計を用いて構成され得るが、本発明は、質量分光計または他の分光計を用いる使用に同様に適用可能であることを認識されたい。
【0071】
測定予定の分析物ガス(試料ガスまたは基準ガス)が、混合接合部15の方へ分析物ガス入口ライン21を通って、ガス供給部(図示しない)から輸送される。そこから、分析物ガスは、マルチパス測定セル9の中に及びマルチパス測定セル9を通るガス入口ライン1に沿って移動する。ガスの輸送は、例えば膜ポンプであり得る真空ポンプ11によって駆動される。ガス入口ラインにおけるガスは、例えば分析物ガスを希釈するときにまたは測定セルをフラッシュするために、キャリアガス入口ライン22によって、代わりにまたは更に提供され得る。
【0072】
バイパスガスライン3は、第1のバイパス接合部13及び第2のバイパス接合部14でガス入口ライン1に接続される。第1のバイパス接合部に到達した試料ガスは、したがって、ガス入口ラインに沿って、バイパスガスラインに沿って、またはその両方に沿って移動することができる。弁7及び弁8は、それぞれ、バイパスガスライン及びガス入口ラインに沿って、ガス流を制御する。弁7が開かれる(かつ弁8が閉じられる)とき、ガスは、バイパスガスラインのみに沿って及び測定セルの中に流れる。弁7を閉じること及び弁8を開けることは、ガスがガス入口ラインのみを通って及び測定セルの中に流れるように、流れを変える。第1及び第2の接合部間のガス入口ライン上の固定流れ制限部6は、この構成でガス流を低減する。
【0073】
バイパスラインの中へのガス流のみを制御することが有利であり得る。それゆえ、システムの別の構成は、バイパスラインに沿ってガス流を制御するための弁7を含むが、第1のバイパス接合部と第2のバイパス接合部との間のガス入口ライン上に弁を含まない。この構成では、常に、固定流れ制限部6を通るガス流が存在するが、高いガス流は、ガス流が、ガス流制限部に加えてバイパスを通ることを可能にするように弁7を開くことよって切り換えられ得る。この設定の利点は以下のものである。
・費用及び複雑さ(1つの弁のみ)の低減
・制限部を有するラインが、常にフラッシュされる。さもなければ、これは、メモリー効果の元となり得る
・弁が存在せず、それゆえ、メモリー及び切り換え時間を増加させ得る、低流量ラインにおける潜在的な無駄容積が存在しない
・弁及び潜在的な無駄容積が位置するラインが、高流量によってフラッシュされ、それゆえ、無駄容積はさほど重大でなくなる
【0074】
制限部の寸法は、ガス流を決定する。いくつかの実施形態において、制限部が、バイパスラインを通るガス流の1/10であるガス流を提供するように構成される。これは、バイパスガスラインを通る80mL/分のガス流の場合、8mL/分の流れが、ガス入口ライン上の制限部を通って提供されることを意味する。制限部の他の寸法は、所望のガス流を実現することができる。いくつかの実施形態において、バイパスラインと比較して制限部を通る相対的なガス流は、約1/2〜約1/20、約1/5〜約1/15、または約1/8〜約1/12である。一実施形態において、制限部を通る相対的なガス流は、バイパスラインを通るガス流の約1/10である。他の実施形態では、流れ制限部6が、質量流量制御器または比例弁によって提供されてもよい。
【0075】
バイパスラインが、流れ制御器、例えば、バイパスガスラインにおいて流れを選択的に制御するための固定流れ制限部または質量流量制御器(図示しない)などを含有することもまた可能である。
【0076】
ガス入口ラインは、フィルタ(図示しない)、例えば、測定セルの上流に及び第2のバイパス接合部14の下流に配設される水トラップまたは化学的トラップを更に含んでもよい。
【0077】
バイパスガスラインの中へのガスの流れが、閉じられた弁7によって阻止されるとき、ガスが、測定セルの方へガス入口ラインを通って流れる。この構成では、測定セルの中へのガス流がガス入口ライン上の制限部6によって限定される。
【0078】
典型的な設定では、測定セルの中へのガス流が、大気圧に近い分析物及び/またはキャリアガス入口ラインにおける圧力の場合、80mL/分に設定される。より一般的には、測定セル中のガス流が、送達されたガスの圧力に従って変動する。測定セルの中へのガス流は、弁8を閉じたままにする及び弁7を開いたままにする(または弁8が存在しない実施形態では弁7のみを開いたままにする)ことによって、バイパスガスラインを通して実現され得る。高流量が、測定セルのフラッシング及び/または充填に望ましい可能性がある。測定セルが最初の高流量でフラッシュされた及び/または充填された後、弁7が閉じられると同時に、弁8が開かれる(または弁8が存在しない実施形態では弁7のみが閉じられる)。伝達ガスライン上の制限部6は、測定セルの中への流量を低減する。例えば、制限は、制限部を通る流れが、バイパスを通る流れの1/10であるように構成され得る。結果として、例えば、80mL/分でバイパスを通る測定セルの充填及び/またはフラッシング後、制限部を通るガス流に対する切換部が、8mL/分の低減された流量を導くことになる。
【0079】
一般に、システムを通るガス流は、連続的である。システムを通って流れるガスは、分析物ガス、キャリアガス、または分析物ガスとキャリアガスの混合であり得る。いくつかの構成では、分析物ガスが、キャリアガスで、補充され、すなわち、希釈される。これは、分析物ガスを供給されるとき、システムは、開いた弁12を通って流れるキャリアガスによって希釈され得る開いた弁5を通る分析物ガスの流れを可能にすることを意味する。分析物及びキャリアガスの流れが、混合接合部15で合流し、そこで、2つのガスが、高流量でバイパスラインを経由して、または減少された流量で制限部を通るガス入口ラインを経由して、組み合わさる及び測定セルの中に流れる。弁12が閉じられる場合、分析物ガスのみが、測定セルの中に流れる。
【0080】
ガス入口ラインは、測定予定の試料の全てが、試料ガス供給部から測定セルに伝達されることを確実にする。分光計の中への一定のガス流が、試料ガスの流れをキャリアガスの流れを用いて増大することによって確実にされ得、そのキャリアガスは、好ましくは試料がないガスである。このようにして、試料が無駄にされない。好ましくは、弁5を通る試料ガス流が、測定セルの中への流量よりも少ない。キャリアガスは、この構成において混合接合部の方へ流れることになり、ガスの流れが常に測定セルの方になること確実にする。わずかな試料ガス流が存在するまたは試料ガス流が存在しない、すなわち、試料ガスの濃度がゼロに近い場合、キャリアガスは、ガス流を補給して、測定セルの中への必要なガス流を提供する。測定セルを通るものよりも混合接合部の方への試料の高いガス流が存在する場合には、キャリアガスの中への及びキャリアガス入口ライン上の開口部を通る過剰試料ガスの逆流が存在することがある。本発明のガス入口システムと組み合わされ得るガス入口システムのより詳細な記載が、WO2014/170179に提供される。
【0081】
分析物ガス及び/またはキャリアガスの流れを更に制御することが望ましい可能性がある。これは、分析物ガス入口ライン上、キャリアガス入口ライン上、またはその両方上に、例えば、質量流量制御器、比例弁、体積流量制御器、または同様のものを含むことによって行われ得る。
【0082】
測定セル中の圧力は、ポンプ速度を制御することによって一定に保たれる。これは、測定セル中の圧力センサ17からの信号を、ポンプ11に接続されると共にポンプ11を調節することができる制御器18に提供することによって行われ得る。ポンプ速度は、セル中の実際の圧力と基準設定の比較に従って、その後に調節される。あるいは、測定セル中の圧力は、測定セルと真空ポンプとの間の調整可能弁の調整によって調整され得る。そのような構成において、弁の位置が、センサからの信号の受信に応答して、制御器によってポンプ速度の代わりに調節される。そのような手段によって、測定セル中の圧力が、典型的には20〜200mbarの範囲にある固定値に維持される。いくつかの実施形態において、圧力は、40〜200mbar、40〜150mbar、または80〜120mbarに維持され得る。いくつかの実施形態において、測定セル中の圧力が、約100mbarに維持され得る。キャリアガスにおける分析物ガス濃度は、切り換え可能な流れ制限部の上流に設定された分析物ガスとキャリアガスとの混合比によって、好ましくは一定に保たれる。
【0083】
同じ制御器18がまた、弁7及び弁8、ならびに/または弁5及び弁12を制御してもよいし、あるいはそれらは、別個の制御器(図示しない)によって動作されてもよい。
【0084】
測定セルのフラッシングを最適化するために、セルは、充填の前にフラッシュされ得る。例えば、セルは、キャリアガスを使用してフラッシュされ得る。いくつかの実施形態において、セルが、試料がない空気(例えばCO2がない空気など)、または試料がないキャリアガスであり得る、ゼロの空気を使用してフラッシュされ得る。セルのフラッシングのために高流量バイパスガスラインを使用することが好都合であり得る。セルをキャリアガスでフラッシュした後、セルが、試料及び/または基準ガスで充填され得る。この目的のために、キャリアガス入口ライン及び分析物ガス入口ラインを通るガス流を調節する弁5、弁12が、適切なガス流を可能にするように調整され得る。試料がないキャリアガスは、したがって、キャリアガス入口ラインを通してキャリアガスを提供することによって提供され得、その間に、分析物ガスラインを通るガス流が、閉じられた弁5によって阻止される。この構成では、キャリアガスは、バイパスガスラインを通る高流量のために、弁7を開いたままにすることによって、ガス入口ラインの中に及びバイパスライン3を通して、開いた弁12を通って流れる。フラッシング手順の間に、弁8はまた、存在する場合、弁8のガスラインをフラッシュするためにも開かれる必要がある。勿論、このラインのフラッシングはまた、セルのフラッシング前または後に行われ得る。セルのフラッシング後、弁5は、分析物ガスが測定セルの中に流れることを可能にするように開かれ得る。引き続き(例えば、分析物ガスを用いる所望の圧力及び濃度までのセルの充填後)、または同時に、低減された流量で制限部6を通して分析物ガスを送達するように、弁8は開かれ得、弁7は閉じられ得る。分析物ガスはまた、必要な場合、開いた弁12を通して、キャリアガスと混合され得る。
【0085】
圧力サイクルが、無駄容積の影響を低減するまたは排除するために行われ得る。これは、測定セルをキャリアガスまたは分析物ガスで充填すること、続いて、真空ポンプを使用してセルを排気することによって実現され得る。この構成において、バイパスガスラインは、弁8を閉じたまま及び弁7を開いたままにすることによって、好ましくはセルを充填するために使用される。測定セル中の圧力センサ17からの入力が、弁5及び/または弁12の開閉を調節するために使用され得る。それゆえ、測定セルが排気されると、両方の弁が閉じられ、一方で、弁の一方または両方が、キャリアガスまたは分析物ガスでセルを充填するために開かれ得る。測定セルを充填する及び排気するプロセスは、無駄容積を効果的に取り除くまたは最小限にするために、1回以上繰り返され得る。
【0086】
別の構成では、測定セルが、高流量バイパスを通る試料で充填する前に排気され得る。一旦測定セルが充填され、かつ基準圧力(例えば、100mbarの圧力)に到達すると、バイパスラインは、閉じられ得、測定セルを通る遅い流れを維持するように開かれた制限部を通って流れ得る。セルの基準圧力は、典型的には、約10〜300秒以内に到達されるが、一般に約5〜600秒以内に到達される流量及び圧力設定に依存し得る。
【0087】
測定セルの中への流量の切り換えはまた、ガス濃度に依存して、または圧力及び濃度の組み合わせに依存して行われ得る。例えば、測定セルは、開いたバイパスガスラインを通る試料ガス及び/または基準ガスで充填され得る。測定セル中のガス濃度の決定が、弁7及び8の位置を調節するために制御器に信号を送信するように使用される。それゆえ、測定セルが、開いたバイパスガスラインを通るガスで充填され得る。例えばCO2などの測定予定のガスの濃度が一旦所定の閾値に到達すると、制御器は、弁7を通してバイパスガスラインを閉めるように、かつガス入口ライン上の弁8を開くことによって固定流れ制限部を通して流れを誘導するように信号を送信する。
【0088】
ガス流の類似の調節が、測定セル中の同位体比の決定に基づいて、行われ得る。それゆえ、同位体比の決定に基づいて、弁7及び弁8が、バイパスラインからの及び制限部を通る流れ、またはその逆の流れを切り換えるように調整され得、調整は、ガス流制御器からの信号によって提供される。
【0089】
別の構成において、測定セルは、分析のためにガスでの充填の前に排気される。そのような構成において、測定セルは、真空ポンプによって排気され、その間に弁7及び弁8は、測定セルの排気を可能にするために、閉じられたままである。測定セル中の圧力は、圧力センサによって監視され、その圧力センサは、ポンプ速度を調整するための制御器18に信号を送信する。セルが排気された後、それは、バイパスラインを通してガス流を誘導することによって、弁7を開くことによって、または、代わりに、弁8を開くことによって制限部を通してガス流を誘導することによって、分析物ガスで充填され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、弁7及び弁8の代わりにガス入口が、ガス入口ラインに沿って(ただしバイパスラインに沿わずに)第1及び第2のバイパス接合部間に、またはバイパスラインに沿って(ただしガス入口ラインに沿わずに)第1及び第2のバイパス接合部間にガス流を誘導するように、第1のバイパス接合部13に位置付けられた単一の三方向弁を有することができる。
【0091】
図2には、代替配設が示され、それにおいて2つの弁7及び弁8の代わりに、単一切換弁26が、第1のバイパス接合部13に配設される。切換弁の位置は、それぞれ、バイパスガスライン及び入口ガスラインにおけるガス流を制御する。それゆえ、第1の位置において、切換弁は、ガス入口ラインを通るガス流を阻止するが、バイパスラインを通るガス流を可能にする。この構成は、例えば、測定セルの充填及び/またはフラッシングの間に有用である。第2の位置において、切換弁は、バイパスガスラインを通るガス流を阻止するが、ガス入口ラインを通るガス流を可能にする。この位置において、測定セルの中へのガス流が、流れ制限部6によって調節される。切換弁はまた、1つの位置においてバイパスガスライン及び入口ガスラインの中への同時のガス流を可能にし得る三方向弁として提供され得る。別の位置では、弁は、バイパスラインの中へのガス流を可能にし得、入口ガスラインを通る流れを阻止し、または入口ガスラインを通るガス流を可能にし、かつバイパスラインを通る流れを阻止する。
【0092】
システムは、並列に配設され得る複数の代替の流れ制限部を含むように配設され得る。図3の実施形態に示されるこの例示において、ガス入口ライン1上に4つの並列制限ラインが示される。4つの制限ラインは、第1のバイパス接合部13で、及び第2のバイパス接合部14で交わる。各制限ライン上に、制限部6、6’、6’’、6’’’が、提供される。各ラインを通るガス流は、弁8、8’、8’’、8’’’によって制御される。これらの弁によって、制限部間で切り換えが行われ得、測定セルの中へのガス流の選択的な制御を可能にする。例えば、1つの位置において、開いた弁8を通して、制限部6を通るガスの流れが存在する。他の制限部6’、6’’、6’’’を通るガス流が、閉じられた弁8’、8’’、8’’によって阻止される。弁8’を閉じると同時に弁8’を開くことによって、制限部6への制限部6’を通る流れからの切り換えが行われ得る。類似の様式で、制限ライン上の弁8、8’、8’’、8’’’を選択的に開く及び/または閉じることによって、制限部の1つ以上を通るガス流が、選択的に制御され得る。4つの制限部は、制限部間の切り換えが、測定セル9の中への流量の変化を結果としてもたらすように、好ましくは異なる。任意の数の制限ラインが、類似の様式で、及び制限部を通るガス流を選択的に制御するために必要に応じて追加の弁で、配設され得る。更に、各制限ライン上に別々の弁を有する代わりに、制限ラインの中への流れを選択的に制御するために、接合部、例えば第1のバイパス接合部に配設された切換弁が存在し得る。制限部を通るガス流の間に、バイパスラインが、バイパスライン上の弁7によってまたは第1のバイパス接合部における切換弁を通して閉じられ得る。
【0093】
特許請求の範囲を含めて、本明細書において使用される際、文脈が別段示さない限り、用語の単数形は複数形も含むものとして、また逆の場合も同様のものとして解釈される。それゆえ、本明細書において使用される際、別段文脈が他に明確に示さない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の指示内容を含むことに留意されたい。
【0094】
記載及び特許請求の範囲全体を通して、用語「備える」、「含む」、「有する」、及び「含有する」、ならびにそれらの変形が、「限定するものではないが、〜を含む」意味として理解されるべきであり、他の構成要素を除外することを意図されない。
【0095】
依然として本発明の範囲と共にある間に本発明の前述の実施形態への変形が、成され得るが、依然として本発明の範囲内にあることが認識されるであろう。明細書に開示された特徴は、別段述べられない限り、同じ、同等の、または類似の目的にかなう代替の特徴と交換され得る。それゆえ、別段述べられない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一実施例を表わす。
【0096】
例示的な言い回しの使用、例えば、「例えば(for instance)」、「例えば〜など(such as)」、「例えば(for example)」、及び同様のものなどは、単に本発明をより良く例示することを意図され、そのように特許請求されない限り、本発明の範囲の限定を示すものではない。明細書に記載されたあらゆるステップは、文脈が別段明確に示さない限り、任意の順序でまたは同時に行われてもよい。
【0097】
明細書に開示された特徴及び/またはステップの全ては、特徴及び/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。特に、本発明の好適な特徴は、本発明の全ての態様に適用でき、任意の組み合わせで使用されてもよい。
図1
図2
図3