特許第6282317号(P6282317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6282317-インクジェット式記録装置 図000002
  • 特許6282317-インクジェット式記録装置 図000003
  • 特許6282317-インクジェット式記録装置 図000004
  • 特許6282317-インクジェット式記録装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282317
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】インクジェット式記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20180208BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180208BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   B41J15/04
   B41J2/01 125
   B41J2/01 305
   B41J11/02
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-143241(P2016-143241)
(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-12265(P2018-12265A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2016年9月28日
【審判番号】不服2017-8057(P2017-8057/J1)
【審判請求日】2017年6月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英之
【合議体】
【審判長】 黒瀬 雅一
【審判官】 藤本 義仁
【審判官】 森次 顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−154612(JP,A)
【文献】 実表昭56−77845(JP,U)
【文献】 特開2013−39737(JP,A)
【文献】 特開2009−234208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な記録媒体にインクを吐出するノズルを備え、前記記録媒体の幅方向である主走査方向に移動可能なインクヘッドと、
前記インクヘッドの下方に配置され、前記記録媒体が配置され、上面が平坦状に形成されたプラテンと、
前記主走査方向と直交する副走査方向において前記プラテンより上流側に配置され、横断面円弧状に形成された上流側円弧部を備え、前記記録媒体を案内する上流側ガイドと、
前記副走査方向において前記プラテンより下流側に配置され、横断面円弧状に形成された下流側円弧部を備え、前記記録媒体を案内する下流側ガイドと、
前記上流側ガイドより下方に配置され、前記記録媒体が巻き付けられた供給軸と、
前記プラテンに設けられ、前記供給軸から巻き解かれた前記記録媒体を前記副走査方向に搬送する搬送装置と、
前記下流側ガイドより下方に配置され、印刷後の前記記録媒体を巻き取る巻き取り軸と、
前記プラテンを加熱する第1ヒータと、
前記上流側ガイドの前記上流側円弧部を加熱する第2ヒータと、
前記下流側ガイドの前記下流側円弧部を加熱する第3ヒータと、を備え、
前記主走査方向から見て、前記上流側ガイドの前記上流側円弧部の第1曲率は、前記下流側ガイドの前記下流側円弧部の第2曲率より大きく設定され、
前記主走査方向から見て、前記上流側円弧部の前記第1曲率は、前記供給軸に前記記録媒体が最も長く巻き付けられたときの前記記録媒体の第3曲率より小さい、インクジェット式記録装置。
【請求項2】
長尺な記録媒体にインクを吐出するノズルを備え、前記記録媒体の幅方向である主走査方向に移動可能なインクヘッドと、
前記インクヘッドの下方に配置され、前記記録媒体が配置され、上面が平坦状に形成されたプラテンと、
前記主走査方向と直交する副走査方向において前記プラテンより上流側に配置され、横断面円弧状に形成された上流側円弧部を備え、前記記録媒体を案内する上流側ガイドと、
前記副走査方向において前記プラテンより下流側に配置され、横断面円弧状に形成された下流側円弧部を備え、前記記録媒体を案内する下流側ガイドと、
前記上流側ガイドより下方に配置され、前記記録媒体が巻き付けられた供給軸と、
前記プラテンに設けられ、前記供給軸から巻き解かれた前記記録媒体を前記副走査方向に搬送する搬送装置と、
前記下流側ガイドより下方に配置され、印刷後の前記記録媒体を巻き取る巻き取り軸と、
前記プラテンを加熱する第1ヒータと、
前記上流側ガイドの前記上流側円弧部を加熱する第2ヒータと、
前記下流側ガイドの前記下流側円弧部を加熱する第3ヒータと、を備え、
前記主走査方向から見て、前記上流側ガイドの前記上流側円弧部の第1曲率は、前記下流側ガイドの前記下流側円弧部の第2曲率より大きく設定され、
前記主走査方向から見て、前記下流側円弧部の前記第2曲率は、前記巻き取り軸に前記記録媒体が最も長く巻き取られたときの前記記録媒体の第4曲率より小さい、インクジェット式記録装置。
【請求項3】
前記上流側円弧部の前記副走査方向の長さは、前記下流側円弧部の前記副走査方向の長さより短い、請求項1または2に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項4】
前記主走査方向から見て、前記上流側円弧部の円弧の長さは、前記下流側円弧部の円弧の長さより短い、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項5】
前記主走査方向から見て、前記上流側円弧部の第1中心角は45度以上90度以下であり、前記下流側円弧部の第2中心角は45度以上90度以下であり、前記第1中心角は、前記第2中心角以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項6】
前記主走査方向から見て、前記上流側円弧部の前記第1曲率は、前記供給軸の第5曲率より小さい、請求項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項7】
前記主走査方向から見て、前記下流側円弧部の前記第2曲率は、前記巻き取り軸の第6曲率より小さい、請求項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項8】
前記上流側円弧部の第1曲率をM1とし、前記下流側円弧部の第2曲率をM2としたとき、M1/M2は1.1〜2.0である、請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項9】
前記第1ヒータは、前記プラテンに設けられ、
前記第2ヒータは、前記上流側ガイドに設けられ、
前記第3ヒータは、前記下流側ガイドに設けられている、請求項1から8のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体上にインクを吐出する複数のノズルを有するインクヘッドと、記録媒体が配置されるプラテンとを備えたインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録装置は、インクジェット方式により記録媒体上に所定の印刷を行う。かかるインクジェット式記録装置は、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を促進するため、プラテンを加熱するヒータを備えている。プラテンが加熱されることで、プラテン上に配置された記録媒体も加熱され、記録媒体の表面に吐出されたインクを早期に乾燥させることができる。
【0003】
また、特許文献1には、プラテンを加熱するヒータに加えて、プラテンの上流側に配置され、横断面円弧状の上流側ガイドと、上流側ガイドを加熱するプリヒータと、プラテンの下流側に配置され、横断面円弧状の下流側ガイドと、下流側ガイドを加熱するポストヒータとを備えるインクジェット式記録装置が開示されている。プリヒータは、上流側ガイドを加熱することによって、上流側ガイド上に位置する記録媒体に予備的に熱を加えることができる。また、ポストヒータは、下流側ガイドを加熱することによって、下流側ガイド上に位置する記録媒体を加熱し、記録媒体の表面に吐出されたインクの乾燥を仕上げる。ここで、特許文献1に記載の上流側ガイドおよび下流側ガイドは、デザイン性や構成簡略化や部品共有化の観点から、同じ形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−184383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記録媒体として供給軸にロール状に巻かれた長尺な記録媒体(例えば帯状の記録媒体)を用いる場合、記録媒体は、供給軸から巻き解かれながら上流側ガイド、プラテン、下流側ガイドの順に搬送され、最後に、巻き取り軸によってロール状に巻き取られる。供給軸から上流側ガイドに記録媒体が搬送される際には、供給軸から巻き解かれた記録媒体は未矯正であり反りが大きいが、上流側ガイドに設けられたプリヒータによって予備的に加熱されることで、記録媒体の反りが矯正されて反りが小さくなる。
【0006】
ここで、上記特許文献1のように、上流側ガイドおよび下流側ガイドが同形状の場合、供給軸から巻き解かれた記録媒体の反りに合わせて、上流側ガイドおよび下流側ガイドの曲率(即ち曲面の曲がり具合)を比較的大きめに設定すると、下流側ガイドにおいて印刷後の記録媒体が必要以上に反った状態でポストヒータによって加熱されるため、インクの割れが発生してしまう虞がある。一方、プリヒータおよびヒータによって反りが矯正された記録媒体の反りに合わせて、上流側ガイドおよび下流側ガイドの曲率を比較的小さめに設定すると、上流側ガイドにおいて未矯正で反りが大きい記録媒体は、上流側ガイドから浮き上がってしまい記録媒体にしわや弛みが発生してしまう虞がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体にしわや弛みが発生することを抑制すると共に、印刷後の記録媒体においてインクに割れが発生することを抑制することができるインクジェット式記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェット式記録装置は、長尺な記録媒体にインクを吐出するノズルを備え、前記記録媒体の幅方向である主走査方向に移動可能なインクヘッドと、前記インクヘッドの下方に配置され、前記記録媒体が配置されるプラテンと、前記主走査方向と直交する副走査方向において前記プラテンより上流側に配置され、横断面円弧状に形成された上流側円弧部を備え、前記記録媒体を案内する上流側ガイドと、前記副走査方向において前記プラテンより下流側に配置され、横断面円弧状に形成された下流側円弧部を備え、前記記録媒体を案内する下流側ガイドと、前記上流側ガイドより下方に配置され、前記記録媒体が巻き付けられた供給軸と、前記プラテンに設けられ、前記供給軸から巻き解かれた前記記録媒体を前記副走査方向に搬送する搬送装置と、前記下流側ガイドより下方に配置され、印刷後の前記記録媒体を巻き取る巻き取り軸と、前記プラテンを加熱する第1ヒータと、前記上流側ガイドの前記上流側円弧部を加熱する第2ヒータと、前記下流側ガイドの前記下流側円弧部を加熱する第3ヒータと、を備え、前記主走査方向から見て、前記上流側ガイドの前記上流側円弧部の第1曲率は、前記下流側ガイドの前記下流側円弧部の第2曲率より大きく設定されている。
【0009】
本発明のインクジェット式記録装置によると、主走査方向から見て、上流側円弧部の第1曲率は、下流側円弧部の第2曲率より大きく設定されている。このため、冷えた状態の記録媒体に第2ヒータが予備的に熱を加えることによって記録媒体の反りを矯正するために、上流側円弧部の曲率を、供給軸から搬送される記録媒体の反りに合わせて設定することができる。これにより、上流側ガイドにおいて未矯正で反りが大きい記録媒体が上流側ガイドから浮き上がることによって発生し得るしわや弛みを抑制することができる。また、印刷後の記録媒体に加わる物理的な負荷を抑えながら第3ヒータによって乾燥を仕上げるために、下流側円弧部の曲率を、第2ヒータおよび第1ヒータによって反りが矯正された印刷後の記録媒体の反りに合わせて設定することができる。これにより、下流側ガイドにおいて印刷後の記録媒体が必要以上に反った状態で第3ヒータによって加熱されることによって発生し得るインクの割れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録媒体にしわや弛みが発生することを抑制すると共に、印刷後の記録媒体においてインクに割れが発生することを抑制することができるインクジェット式記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2図1中のII‐II線に沿う断面図である。
図3】一実施形態に係るプラテンおよびその周辺構造を示す断面図である。
図4】他の一実施形態に係るプラテンおよびその周辺構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェット式記録装置について説明する。本実施形態に係るインクジェット式記録装置は、長尺な記録媒体(例えば帯状の記録媒体)に印刷を行うインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)10である。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。図2は、図1のII‐II線に沿う断面図である。プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行うためのものである。
【0014】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。主走査方向Yは、記録媒体5の幅方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。副走査方向Xは、記録媒体5の長手方向である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0015】
本実施形態の記録媒体5は、普通紙である。記録媒体5は、後述する供給軸42に巻き付け可能でありかつ巻き取り軸48に巻き取り可能な形状のものであればよく、記録紙に限定されない。記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステル等の樹脂製のシートやフィルム、織布や不織布等の布帛、その他の媒体であってもよい。
【0016】
図1に示すように、プリンタ10は、本体部12と、左サイドカバー13Lおよび右サイドカバー13Rと、中央壁14と、プラテン20(図2参照)と、上流側ガイド24(図2参照)と、下流側ガイド28と、グリッドローラ30(図2参照)と、ピンチローラ32(図2参照)と、ガイドレール34と、ベルト36と、キャリッジ38(図2参照)と、インクヘッド40と、供給軸42と、巻き取り装置44とを備えている。
【0017】
図1に示すように、本体部12は、スタンド15に支持されている。本体部12は、主走査方向Yに延びている。左サイドカバー13Lは、本体部12の左端に設けられている。右サイドカバー13Rは、本体部12の右端に設けられている。本体部12には上下方向に延びる中央壁14が設けられている。中央壁14は、主走査方向Yに延びている。中央壁14は、左サイドカバー13Lと右サイドカバー13Rとを連結する。
【0018】
図1に示すように、本体部12には、記録媒体5が配置されるプラテン20が設けられている。図2に示すように、プラテン20には、円筒状のグリッドローラ30が設けられている。グリッドローラ30は、その上面部を露出させた状態でプラテン20に埋設されている。グリッドローラ30は、フィードモータ(図示せず)によって駆動される。グリッドローラ30は、供給軸42から巻き解かれた記録媒体5を副走査方向Xに移動させる搬送装置の一例である。グリッドローラ30の上方には、複数のピンチローラ32が配置されている。ピンチローラ32は、グリッドローラ30に対向している。ピンチローラ32は、記録媒体5の厚さに応じて上下方向の位置を設定可能に構成されている。ピンチローラ32とグリッドローラ30との間に記録媒体5を挟み込む。グリッドローラ30およびピンチローラ32は、記録媒体5を狭持しながら記録媒体5を副走査方向Xに搬送可能に構成されている。
【0019】
図1示すように、ガイドレール34は、中央壁14に設けられている。ガイドレール34は、プラテン20の上方に配置されている。ガイドレール34は、プラテン20と平行に配置されている。ガイドレール34は、主走査方向Yに延びている。図2に示すように、ガイドレール34には、キャリッジ38が係合している。
【0020】
図1に示すように、ベルト36は、中央壁14の壁面に平行して配置されている。ベルト36は、主走査方向Yに延びている。ベルト36は、無端状のベルトである。ベルト36の右端および左端には、プーリ16A、16Bが巻き掛けられている。一方のプーリ16Aには、当該プーリ16Aを駆動するキャリッジモータ17に接続されている。キャリッジモータ17が回転するとプーリ16Aが回転し、ベルト36が主走査方向Yに走行する。
【0021】
図2に示すように、キャリッジ38は、ベルト36に固定されている。ベルト36が走行すると、キャリッジ38はガイドレール34に沿って主走査方向Yに移動する。
【0022】
図2に示すように、インクヘッド40は、プラテン20の上方に配置されている。インクヘッド40は、記録媒体5にインクを吐出するノズル(図示せず)を備えている。インクヘッド40は、キャリッジ38に設けられている。キャリッジ38が主走査方向Yに移動すると、インクヘッド40も主走査方向Yに移動する。インクヘッド40は、主走査方向Yに移動しながら記録媒体5に向かってインクを吐出する。
【0023】
図2に示すように、供給軸42は、上流側ガイド24より下方に配置されている。供給軸42は、プラテン20より後方に配置されている。供給軸42は、左右方向に延びる円筒形状または円柱形状に形成されている。供給軸42には、印刷前の帯状の記録媒体5がロール状に巻き付けられている。図1に示すように、供給軸42の左端部は左ガイド板42Lに回転可能に支持されている。供給軸42の右端部は右ガイド板42Rに回転可能に支持されている。左ガイド板42Lおよび右ガイド板42Rは、本体部12に設けられている。グリッドローラ30が記録媒体5を前方に搬送することにより、記録媒体5は供給軸42から巻き解かれてプラテン20に向かって搬送される。図3に示すように、符号C1は、供給軸42の曲率半径を示す。本実施形態では、曲率半径C1は、4cmである。符号C2は、供給軸42に記録媒体5が最も長く巻き付けられたときの記録媒体5の曲率半径を示す。本実施形態では、曲率半径C2は、8cmである。
【0024】
巻き取り装置44は、印刷後の記録媒体5をロール状に巻き取る。図1に示すように、巻き取り装置44は、テンションバー46と、支持アーム47L、47Rと、巻き取り軸48と、モータ49とを備えている。
【0025】
図2に示すように、テンションバー46は、記録媒体5のうち下流側ガイド28と巻き取り軸48との間に位置する部分に対して張力を与えるものである。詳しくは、テンションバー46は、自重を利用して記録媒体5を前斜め下方に押すことにより、記録媒体5に対して張力を与えるものである。テンションバー46は、左右方向に延びる円筒形状または円柱形状に形成されている。テンションバー46は、巻き取り軸48に平行に配置されている。テンションバー46は下流側ガイド28より下方に配置されている。テンションバー46は、巻き取り軸48より前方に配置されている。図1に示すように、テンションバー46は、支持アーム47L、47Rに揺動可能に支持されている。支持アーム47Lは、本体部12に設けられた第1左側壁48Lに回転自在に設けられている。支持アーム47Rは、本体部12に設けられた第1右側壁48Rに回転自在に設けられている。
【0026】
図2に示すように、巻き取り軸48は、下流側ガイド28より下方に配置されている。巻き取り軸48は、プラテン20より前方に配置されている。巻き取り軸48は、左右方向に延びる円筒形状または円柱形状に形成されている。巻き取り軸48は、印刷後の帯状の記録媒体5を巻き取る。図1に示すように、巻き取り軸48の左端部は、第1左側壁48Lより右方に配置された第2左側壁49Lに回転可能に支持されている。巻き取り軸48の右端部は、第1右側壁48Rより左方に配置された第2右側壁49Rに回転可能に支持されている。第2左側壁49Lおよび第2右側壁49Rは、本体部12に設けられている。図3に示すように、符号D1は、巻き取り軸48の曲率半径を示す。本実施形態では、曲率半径D1は、4cmである。符号D2は、巻き取り軸48に記録媒体5が最も長く巻き取られたときの記録媒体5の曲率半径を示す。本実施形態では、曲率半径D2は、8cmである。本実施形態では、供給軸42の曲率半径C1と巻き取り軸48の曲率半径D1とは同じであるが、異なっていてもよい。
【0027】
図1に示すように、モータ49は、巻き取り軸48に連結されている。モータ49は、巻き取り軸48を回転させる。モータ49は、第1右側壁48Rと第2右側壁49Rとの間に配置されている。
【0028】
図2に示すように、上流側ガイド24は、副走査方向Xにおいてプラテン20より上流側に配置されている。本実施形態では、上流側ガイド24は、プラテン20より後方に配置されている。上流側ガイド24は、横断面円弧状に形成された上流側円弧部25を備えている。本実施形態では、上流側ガイド24の全体が上流側円弧部25によって構成されているが、上流側円弧部25の上流側や下流側に直線上に延びる直線部が設けられていてもよい。上流側円弧部25は、プラテン20から離れるほど下方に向かうように湾曲している。即ち、上流側円弧部25は、後方に行くほど下方に向かうように湾曲している。上流側ガイド24は、供給軸42から巻き解かれた記録媒体5をプラテン20に案内する。即ち、供給軸42から巻き解かれた記録媒体5は、上流側ガイド24に沿って搬送される。図3に示すように、符号A1は、上流側円弧部25の曲率半径を示す。本実施形態では、曲率半径A1は、15cmである。上流側円弧部25の中心角αは、45度以上90度以下である。本実施形態では、中心角αは凡そ60度である。なお、中心角αとは、主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の上流側の端部と下流側の端部を通る2つの半径の作る角である。なお、図4に示すように、上流側円弧部25が、上方に向けて(ここでは記録媒体5に向けて)屈曲する複数の屈曲部25Aと、隣り合う屈曲部25Aの間に形成された面25B(例えば平面。曲面であってもよい。)とを有する場合には、主走査方向Yから見て、屈曲部25Aを通る仮想円L1の曲率半径を上流側円弧部25の曲率半径A1とする。仮想円L1は、上流側円弧部25に外接する。このとき、上流側円弧部25の曲率は、曲率半径A1の逆数(即ち、1/A1)である。
【0029】
図2に示すように、下流側ガイド28は、副走査方向Xにおいてプラテン20より下流側に配置されている。本実施形態では、下流側ガイド28は、プラテン20より前方に配置されている。下流側ガイド28は、横断面円弧状に形成された下流側円弧部29を備えている。本実施形態では、下流側ガイド28の全体が下流側円弧部29によって構成されているが、下流側円弧部29の上流側や下流側に直線上に延びる直線部が設けられていてもよい。下流側円弧部29は、プラテン20から離れるほど下方に向かうように湾曲している。即ち、下流側円弧部29は、前方に行くほど下方に向かうように湾曲している。下流側ガイド28は、印刷後の記録媒体5をテンションバー46を介して巻き取り軸48に案内する。即ち、印刷後の記録媒体5は、下流側ガイド28に沿って搬送される。図3に示すように、符号B1は、下流側円弧部29の曲率半径を示す。本実施形態では、曲率半径B1は、21cmである。下流側円弧部29の中心角βは、45度以上90度以下である。本実施形態では、中心角βは凡そ90度である。なお、中心角βとは、主走査方向Yから見て、下流側円弧部29の上流側の端部と下流側の端部を通る2つの半径の作る角である。なお、図4に示すように、下流側円弧部29が、上方に向けて(ここでは記録媒体5に向けて)屈曲する複数の屈曲部29Aと、隣り合う屈曲部29Aの間に形成された面29B(例えば平面。曲面であってもよい。)とを有する場合には、主走査方向Yから見て、屈曲部29Aを通る仮想円L2の曲率半径を下流側円弧部29の曲率半径B1とする。仮想円L2は、下流側円弧部29に外接する。このとき、下流側円弧部29の曲率は、曲率半径B1の逆数(即ち、1/B1)である。
【0030】
図3は、プラテン20およびその周辺構造を示す断面図である。なお、図3において、便宜上グリッドローラ30およびピンチローラ32の図示を省略している。図3に示すように、主走査方向Yから見て、上流側ガイド24の上流側円弧部25の第1曲率M1は、下流側ガイド28の下流側円弧部29の第2曲率M2より大きく設定されている。第1曲率M1/第2曲率M2は、例えば、1.1〜2.0であり、好ましくは、1.3〜1.6である。本実施形態では、第1曲率M1/第2曲率M2は、1.4である。上流側円弧部25の曲率半径A1は、例えば、下流側円弧部29の曲率半径B1より小さく設定されている。曲率半径A1/曲率半径B1は、例えば、0.5〜0.9であり、好ましくは、0.6〜0.8である。本実施形態では、曲率半径A1/曲率半径B1は、凡そ0.7である。上流側円弧部25の中心角αは、下流側円弧部29の中心角β以下に設定されている。上流側円弧部25の副走査方向Xの長さA2は、下流側円弧部29の副走査方向Xの長さB2より短く設定されている。主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の円弧の長さA3は、下流側円弧部29の円弧の長さB3より短く設定されている。主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の第1曲率は、供給軸42の第3曲率より小さく設定されている。即ち、上流側円弧部25の曲率半径A1は、供給軸42の曲率半径C1より大きく設定されている。主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の第1曲率は、供給軸42に記録媒体5が最も長く巻き付けられたときの記録媒体5の第4曲率より小さく設定されている。即ち、上流側円弧部25の曲率半径A1は、供給軸42に記録媒体5が最も長く巻き付けられたときの記録媒体の曲率半径C2より大きく設定されている。主走査方向Yから見て、下流側円弧部29の第2曲率は、巻き取り軸48の第5曲率より小さく設定されている。即ち、下流側円弧部29の曲率半径B1は、巻き取り軸48の曲率半径D1より大きく設定されている。主走査方向Yから見て、下流側円弧部29の第2曲率は、巻き取り軸48に記録媒体5が最も長く巻き取られたときの記録媒体5の第6曲率より小さい。即ち、下流側円弧部29の曲率半径B1は、巻き取り軸48に記録媒体5が最も長く巻き取られたときの記録媒体5の曲率半径D2より大きく設定されている。
【0031】
図2に示すように、プリンタ10は、第1ヒータ61と、第2ヒータ62と、第3ヒータ63とを備えている。第1ヒータ61は、プラテン20に設けられている。第1ヒータ61はプラテン20の下方に設けられている。第1ヒータ61は、グリッドローラ30より前方に配置されている。第1ヒータ61は、プラテン20を加熱する。プラテン20が加熱されることによって、プラテン20上に配置されている印刷後の記録媒体5が加熱され、インクの乾燥が促進される。
【0032】
第2ヒータ62は、上流側ガイド24に設けられている。第2ヒータ62は、上流側ガイド24の下方に設けられている。第2ヒータ62は、少なくとも上流側ガイド24の上流側円弧部25を加熱する。本実施形態では、第2ヒータ62は、上流側ガイド24の全体を加熱する。上流側円弧部25が加熱されることによって、上流側円弧部25上を案内される記録媒体5に予備的な熱が加えられ、記録媒体5の反りが矯正される。第2ヒータ62は、上流側ガイド24の副走査方向Xの全体に沿って配置されているが、上流側ガイド24の副走査方向Xの一部に配置されていてもよい。例えば、第2ヒータ62は、上流側円弧部25の全体に沿って配置されていてもよい。
【0033】
第3ヒータ63は、下流側ガイド28に設けられている。第3ヒータ63は、下流側ガイド28の下方に設けられている。第3ヒータ63は、少なくとも下流側ガイド28の下流側円弧部29を加熱する。本実施形態では、第3ヒータ63は、下流側ガイド28の全体を加熱する。下流側円弧部29が加熱されることによって、下流側円弧部29上を案内される記録媒体5が加熱され、印刷後の記録媒体5のインクの乾燥の仕上げが行われる。第3ヒータ63は、下流側ガイド28の副走査方向Xの全体に沿って配置されているが、下流側ガイド28の副走査方向Xの一部に配置されていてもよい。例えば、第3ヒータ63は、下流側円弧部29の全体に沿って配置されていてもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の第1曲率は、下流側円弧部29の第2曲率より大きく設定されている。即ち、上流側円弧部25の曲率半径A1は、下流側円弧部29の曲率半径B1より小さく設定されている。このため、冷えた状態の記録媒体5に第2ヒータ62が予備的に熱を加えることによって記録媒体5の反りを矯正するために、上流側円弧部25の曲率を、供給軸42から搬送される記録媒体5の反りに合わせて設定することができる。これにより、上流側ガイド24において未矯正で反りが大きい記録媒体5が上流側ガイド24から浮き上がることによって発生し得るしわや弛みを抑制することができる。また、印刷後の記録媒体5に加わる物理的な負荷を抑えながら第3ヒータ63によって乾燥を仕上げるために、下流側円弧部29の曲率を、第2ヒータ62および第1ヒータ61によって反りが矯正された印刷後の記録媒体5の反りに合わせて設定することができる。これにより、下流側ガイド28において印刷後の記録媒体5が必要以上に反った状態で第3ヒータ63によって加熱されることによって発生し得るインクの割れを抑制することができる。
【0035】
本実施形態のプリンタ10によると、上流側円弧部25の副走査方向Xの長さA2は、下流側円弧部29の副走査方向Xの長さB2より短い。このように、下流側円弧部29の副走査方向Xの第2長さB2を相対的に大きくすることで、記録媒体5に吐出されたインクの乾燥の時間を長くすることができ、乾燥の仕上げをより確実に行うことができる。
【0036】
本実施形態のプリンタ10によると、主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の円弧の長さA3は、下流側円弧部29の円弧の長さB3より短い。このように、下流側円弧部の29円弧の長さB3を相対的に大きくすることで、記録媒体5に吐出されたインクの乾燥の時間を長くすることができ、乾燥の仕上げをより確実に行うことができる。
【0037】
本実施形態のプリンタ10によると、主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の第1中心角αは45度以上90度以下であり、下流側円弧部29の第2中心角βは45度以上90度以下であり、第1中心角αは、第2中心角β以下である。これにより、記録媒体5に吐出されたインクの乾燥の仕上げをより確実に行うことができる。また、上流側円弧部25および下流側円弧部29をコンパクトに配置することができる。
【0038】
本実施形態のプリンタ10によると、主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の第1曲率は、供給軸42の第3曲率より小さい。これにより、上流側円弧部25において、記録媒体5の反りを低減することができる。
【0039】
本実施形態のプリンタ10によると、主走査方向Yから見て、上流側円弧部25の第1曲率は、供給軸42に記録媒体5が最も長く巻き付けられたときの記録媒体5の第4曲率より小さい。これにより、ロール状に巻かれて反っていた記録媒体5の反りを、供給軸42に巻かれていたときよりも反りが緩い曲面を有する上流側円弧部25において、徐々に矯正することができる。
【0040】
本実施形態のプリンタ10によると、主走査方向Yから見て、下流側円弧部29の第2曲率は、巻き取り軸48の第5曲率より小さい。これにより、巻き取り軸48において、記録媒体5をコンパクトに巻き取ることができる。
【0041】
本実施形態のプリンタ10によると、主走査方向Yから見て、下流側円弧部29の第2曲率は、巻き取り軸48に記録媒体5が最も長く巻き取られたときの記録媒体5の第6曲率より小さい。これにより、印刷後の記録媒体5を巻き取り軸48においてより強固に巻き取ることができる。
【0042】
本実施形態のプリンタ10によると、上流側円弧部25の第1曲率をM1とし、下流側円弧部29の第2曲率をM2としたとき、M1/M2は1.1〜2.0である。これにより、印刷前の記録媒体5の反りの矯正と、印刷後の記録媒体5のインクの割れの発生の抑制を効果的に実現することができる。
【0043】
本実施形態のプリンタ10によると、第1ヒータ61は、プラテン20に設けられ、第2ヒータ62は、上流側ガイド24に設けられ、第3ヒータ63は、下流側ガイド28に設けられている。これにより、各ヒータ61、62、63は、それぞれ、プラテン20、上流側ガイド24の上流側円弧部25および下流側ガイド28の下流側円弧部29を効率よく加熱することができる。
【符号の説明】
【0044】
5 記録媒体
10 プリンタ
20 プラテン
24 上流側ガイド
25 上流側円弧部
28 下流側ガイド
29 下流側円弧部
40 インクヘッド
42 供給軸
48 巻き取り軸
61 第1ヒータ
62 第2ヒータ
63 第3ヒータ
図1
図2
図3
図4