【文献】
ゴム引布製起伏堰及び鋼製起伏堰(ゴム袋体支持式)のゴム袋体に関する技術資料,日本,一般財団法人国土技術研究センター,2016年 1月,15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の工程において、前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体は、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートが幅方向に沿って所定量ずらして積層した状態に貼り付けられることによって、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シートが所定量ずれた幅方向階段状部を有し、
前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体は、幅方向に隣り合う前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体同士における、互いの前記幅方向階段状部を形成する幅方向に沿って所定量ずれた各層の可撓性膜シートの面と他の層の可撓性膜シートの面とが貼り合わさり、最外層の可撓性膜シート同士が面一となっていることを特徴とする請求項1に記載の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法。
前記第1の工程において、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートが幅方向に沿って所定量ずらして積層した状態に貼り付けられていて、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シートが所定量ずれた幅方向階段状部を有する前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体を準備し、
前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体の長さ方向の端縁部同士の前記幅方向階段状部を形成する幅方向に沿って所定量ずれた各層の可撓性膜シートの面と他の層の可撓性膜シートの面とを貼り合わせ、最外層の可撓性膜シート同士が面一となるようにして、前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体をつくることを特徴とする請求項2に記載の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法。
前記第1の工程において、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートの長さ方向の端縁部同士を貼り合わせて未加硫状態の可撓性膜シートの集合体をつくり、前記集合体をなす夫々の未加硫状態の可撓性膜シートの上に、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートを当該下層の集合体をなす夫々の未加硫状態の可撓性膜シートの端縁部の位置から幅方向に沿って所定量ずらして貼り付けるとともに、夫々の長さ方向の端縁部同士を貼り合わせて上層の未加硫状態の可撓性膜シートの集合体をつくり、前記上層の未加硫状態の可撓性膜シートの集合体をつくることを繰り返すことによって、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シートが所定量ずれた幅方向階段状部を有する前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体の長さ方向の端縁部同士が貼り合わされた、前記未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体をつくることを特徴とする請求項2に記載の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
図5は例えば特許文献1に記載の製造方法のような、従来の重ね合わせた2つの未加硫状態の可撓性膜シート積層体の一端縁部を長さ方向全体にわたって加硫接合する、可撓性膜起伏堰本体の製造方法に用いる製造設備の一例を概念的に示す説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5に示す製造設備は、巻き出し機51と、加硫プレス装置52と、巻き取り機53を備えている。なお、
図5中、60は可撓性膜シート積層体、54、55は搬送用ローラー、52a、52bはプレス加熱板、52cは油圧ジャッキ、52dはプレス加熱板15aの移動方向をガイドするためのガイド部材である。その他、便宜上、図示を省略したが、巻き出し機51と加硫プレス装置52の間には、搬送用ローラー54の他にも、巻き出し機51から巻き出された未加硫状態の可撓性膜シート積層体60の下面を支持しながら加硫プレス装置52の加硫プレス領域に搬送するためのガイド手段や搬送手段を備えている。なお、
図5では、便宜上、巻き出し機51は1つのみ示してある。
【0016】
図5に示す製造設備を用いた、可撓性膜起伏堰本体の製造方法では、上下に夫々設けられた所定の巻き出し機51から未加硫状態の可撓性膜シート積層体60を巻き出して重ね合わせ、重ね合わせた可撓性膜シート積層体60を、可撓性膜シート積層体60の長さ方向が加硫プレス装置52のプレス加熱板52a、52bによる加硫プレス領域の長辺に沿う向きにして、加硫プレス領域の短辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送する。そして、重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体60の間に、可撓性膜シート積層体60における一側縁部を残して長さ方向全体に離型材(図示省略)を介在させ、加硫プレス装置52の油圧ジャッキ52cを作動してプレス加熱板52aを上昇させ、プレス加熱板52aとともに可撓性膜シート積層体60を上下からプレス加硫を施し、重ね合わせた可撓性膜シート積層体60における一端縁部同士を、加硫プレス領域の長辺に対応する長さに亘って接合する。その後、可撓性膜シート積層体60において加硫を施した領域を、加硫プレス領域外に搬送し、巻き取り機53で巻き取る。
【0017】
しかし、上述したように、従来、標準的な幅3.0mのプレス加熱板を用いて、重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体の一端縁部を長さ方向全体にわたって加硫接合することによって、一体に構築できるゴム堰の高さは、最大で1.5m程度が限界であった。
そのため、堰高が1.5mを超える大型の可撓性膜起伏堰を構築する場合、例えば、特許文献2に示す製造方法のように、複数個の加硫済みの可撓性膜シート積層体を、後接着により接合する必要があった。
しかし、上述したように、加硫済みの可撓性膜起伏堰部分を後接着により接合する製造方法には、接合部位の強度がその他の部位よりも低下して破損する虞等の問題があった。
【0018】
加硫済みの可撓性膜シート積層体を後接着により接合する製造方法により製造される可撓性膜堰は、例えば、
図6(a)に示すように、接続部jが周方向に設けられており、軸方向に沿ってフィンfが設けられている。そして、倒伏時には
図6(b)に示すように扁平な形状に倒伏する。また、
図6(c)に示すように、接続部jは補強材rにより図面において左右の可撓性膜シート積層体gが接続されている。
【0019】
加硫済みの後接着による可撓性膜シート積層体の接合に際しては、まず、隣り合う加硫済みの可撓性膜シート積層体g(
図7(a)参照)相互に接合する端縁部に対し、多段状のステップdが形成されるように、可撓性膜シートを削除する(
図7(b)参照)。次に、ステップdの表面を研磨して粗くし、その後に、接着用の未加硫状態のゴムシートuを貼り付ける(
図7(c)参照)。その上に、順次、補強用の加硫済みの可撓性膜シートや調整ゴムを積層して貼り合わせ、ステップdに対応する形状に補強材rを形成する(
図7(d)参照)。そして、隣り合う加硫済みの可撓性膜シート積層体gの相互に接合する端縁部と、未加硫状態のゴムシートu、補強用の加硫済みの可撓性膜シートや調整ゴムを積層して貼り合わせた補強材gとを一体で加硫接合する。
【0020】
しかし、このように加硫した場合、加硫後の可撓性膜シート積層体gの表面には、後接着による接合部位において、接着用のゴムシートuのゴムが可撓性膜起伏堰の表面に露出し、露出したゴムが日光等に当たることで、経年劣化を起こし易い。このため、後接着による接合方法を用いて製造した可撓性膜起伏堰を高温で越流が無い場所に使用した場合、使用期間中に接合部位で割れを起こす虞がある。
また、可撓性膜シート積層体gにおける、後接着による接合をするために、剥ぎ取られないで残る加硫済みのゴムは、後加硫により2回加硫されることになるが、2回加硫されたゴムは、強度低下を起こし易い。
さらに、接合に用いる未加硫状態のゴムシートuの量が適正でない場合、可撓性膜起伏堰を膨張させたときに割れを生じ易い。
さらにまた、加硫済みの可撓性膜シート積層体g同士を後接着により接合すると、接合部の境界には、可撓性膜シート積層体gにおける2回加硫されたゴムと、1回加硫された接着用のゴムシートとが存在することによって、可撓性膜起伏堰の表面に接合跡が残り、美観が悪くなる。
また、可撓性膜起伏堰の製造に際しては、後接着による接合をするために、可撓性膜シートにおける、加硫済みのゴムを剥ぎ取る等の作業が必要であるため、作業が煩雑化し、工数がかかってしまう。
また、可撓性膜シート積層体における、加硫済みのゴムを剥ぎ取る際に、可撓性膜シート積層体の本体部の可撓性膜シートを傷つけてしまう虞がある。
【0021】
そのため、堰高が1.5mを超える大型の可撓性膜起伏堰を構築するには、加硫済みの可撓性膜シート積層体同士を後接着により接合する接合方法を用いないで、幅が3.0mを超えるプレス加熱板を備えた大型のプレス加硫装置を用いて未加硫状態の可撓性膜シート積層体同士を一体に加硫接合することが望まれる。しかし、上述したように、大型のプレス加硫装置は、製造コストが莫大に掛かる上、設置面積の限られている現有の工場内に配置することが非常に難しい。
【0022】
そこで、本発明者らは、
図5に示した、重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体の一端縁部を長さ方向全体にわたって加硫接合する、従来の可撓性膜起伏堰本体の製造方法に用いる製造設備に備わるプレス加硫装置と同程度の大きさのプレス加硫領域を有するプレス加硫装置を用いて、未加硫状態の可撓性膜シート積層体を可撓性膜起伏堰の周方向に接合して堰高が1.5mを超える大型の可撓性膜起伏堰を構築するために必要な条件を検討・考察した。
【0023】
図5に示したプレス加硫装置52は、プレス加熱板52a、52bの長辺が、製造する可撓性膜起伏堰の軸方向に沿うように形成され、未加硫状態の可撓性膜シート積層体60を、加硫プレス領域の短辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送する構成となっている。また、プレス加熱板52aの移動方向をガイドするガイド部材52cがプレス加熱板52a、52bの長辺方向に設けられている。
このため、
図5に示した加硫プレス装置52を用いたのでは、未加硫状態の可撓性膜シート積層体60を
、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向からプレス加硫装置52の加硫プレス領域
内に搬送することができず、可撓性膜起伏堰の周方向に接合することによって堰高が1.5mを超える大型の可撓性膜起伏堰を構築することはできない。
【0024】
しかるに、本発明者らは、ガイド部材を、プレス加熱板の長辺方向に設けずに短辺方向に設けたプレス加硫装置を構成し、
図5に示したプレス加硫装置と同程度の大きさのプレス加硫領域を用いて、未加硫状態の可撓性膜シート積層体を可撓性膜起伏堰の周方向に貼り合せた集合体にして、集合体の長さ方向が加硫プレス装置における加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する向きにして、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送することを着想した。
しかし、
図5に示したプレス加硫装置において、プレス加熱板の長辺が製造する可撓性膜堰の軸方向に沿うように形成されていた理由は製造効率にあると考えられる。これに対し、未加硫状態の可撓性膜シート積層体を加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送しても、一度の加硫プレスによって製造できる可撓性膜起伏堰の長さは、加硫プレス領域の短辺に対応する分であり、可撓性膜起伏堰本体としての使用に必要な所定の長さに到達しない。
【0025】
そこで、本発明者らは、未加硫状態の可撓性膜シート積層体を可撓性膜起伏堰の周方向に接合した集合体を、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向からの加硫プレス領域内へ搬送し、加硫プレスを行って接合し、その後加硫プレス領域外に搬送する一連の処理を繰り返すことを着想し、本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法を導出するに至った。
【0026】
本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法は、複数組の可撓性膜シート積層体が可撓性膜起伏堰の周方向に接合されてなる可撓性膜起伏堰本体の製造方法であって、複数組の未加硫状態の可撓性膜シート積層体が幅方向に並び、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体の長さ方向の端縁部同士が貼り合わさった、未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体をつくる第1の工程と、未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体を上下に重ね合わせ、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体を、集合体の長さ方向が
、ガイド部材をプレス加熱板の長辺方向に設けずに短辺方向に設けた、加硫プレス装置における加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する向きにして、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送する第2の工程と、加硫プレス領域内に搬送した未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体に対し、加硫プレス装置を介してプレス加硫を施し、隣り合う可撓性膜シート積層体における長さ方向の端縁部同士及び上下に重なり合う可撓性膜シート積層体の集合体における一方の側の端縁部同士を、加硫プレス領域の短辺に対応する長さに亘って接合する第3の工程と、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体における、プレス加硫を施した領域を、加硫プレス領域外に搬送する第4の工程と、を有し、第1〜第4の工程を、可撓性膜シート積層体の集合体のプレス加硫済み領域における、加硫プレス領域の短辺に沿う方向の長さが、可撓性膜起伏堰本体としての使用に必要な所定の長さに到達するまで繰り返す。
【0027】
本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法のように、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体の長さ方向の端縁部同士が貼り合わさった、未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体を上下に重ね合わせ、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体を、集合体の長さ方向が
、ガイド部材をプレス加熱板の長辺方向に設けずに短辺方向に設けた、加硫プレス装置における加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する向きにして、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送するようにすれば、工場内でのプレス加硫装置の設置面積が既存のプレス加硫装置と同程度で足りる。そして、既存のプレス加硫装置と同程度の大きさの加硫プレス領域を有するプレス加硫装置を用いることで、コストの増大化を抑えることができる。
【0028】
また、本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法のように、未加硫状態の可撓性膜シート積層体同士を加硫すれば、接合部位の可撓性膜中のゴム同士が均質化した状態で一体化する。その結果、強度のバラツキが少なく、安定した強度の可撓性膜起伏堰が得られる。また、後接着による接合方法とは異なり、接着用の未加硫状態のゴムを使用する必要がなく、接合部位から接合に用いたゴムが可撓性膜起伏堰の表面に露出することがないため、経年劣化を起こし難く、高温で越流が無い場所に使用しても、使用期間中に接合部位で割れを生じない。また、未加硫状態の可撓性膜シート積層体同士を、成型・加硫することで、接合部位の可撓性膜中のゴム同士が均質化した状態で一体化するため、後接着による接合方法に比べて、接合用の段差形成や接着用のゴムを貼る作業が不要となり作業工数を低減できる。
【0029】
また、本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法においては、第1の工程において、未加硫状態の可撓性膜シート積層体は、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートが幅方向に沿って所定量ずらして積層した状態に貼り付けられることによって、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シートが所定量ずれた幅方向階段状部を有し、未加硫状態の可撓性膜シート積層体の集合体は、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体同士における、互いの幅方向階段状部を形成する幅方向に沿って所定量ずれた各層の可撓性膜シートの面と他の層の可撓性膜シートの面とが貼り合わさり、最外層の可撓性膜シート同士が面一となっている。
本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法において、未加硫状態の可撓性膜シート積層体が、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートが幅方向に沿って所定量ずらして積層した状態に貼り付けられることによって、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シートが所定量ずれた幅方向階段状部を有すれば、後接着による接合方法とは異なり、可撓性膜シート積層体に対して、接着用の段差を設けるためにゴムを剥ぎ取る等の作業が不要となるため、可撓性膜シート積層体の本体部の可撓性膜シートを傷つける虞が生じない。
また、本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法において、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体同士を、最外層の可撓性膜シート同士が面一となるように貼り合わせれば、加硫後の接合部位は、表面に凹凸がなく美観に優れ、凹凸があることに起因する接合部位の剥離も防止することができる。
【0030】
従って、本発明によれば、設備コストを抑え、装置の設置面積を拡大させずに済み、製造作業が煩雑化せず、製造工数を削減でき、製造後の製品が、安定した強度を有し、耐久性、さらには美観に優れた、堰高が1.5mを超える大型の可撓性膜起伏堰本体の製造方法が得られる。
【0031】
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係る大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法における、可撓性膜シート積層体の集合体と、加硫プレス装置における加硫プレス領域との配置関係を概念的に示す説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2は第1実施形態の製造方法における、可撓性膜シート積層体の集合体を構成する可撓性膜シート積層体の端縁部の形状の一例を示す説明図である。
図3は第1実施形態の製造方法における、可撓性膜シート積層体の集合体を構成する可撓性膜シート積層体の接合箇所及び接合態様を示す説明図で、(a)はその一例を示す図、(b)は他の一例を示す図、(c)はさらに他の一例を示す図である。
図4は第1実施形態の製造方法における、可撓性膜シート積層体の集合体を示す図で、(a)は可撓性膜シート積層体を可撓性膜起伏堰の周方向に貼り合せた状態を示す図、(b)は(a)に示す可撓性膜シート積層体の集合体におけるA部を、可撓性膜シート積層体の集合体の幅方向に対して垂直に交差する方向からみた拡大図、(c)は(a)に示す可撓性膜シート積層体の集合体を、可撓性膜シート積層体の集合体の幅方向に対して垂直に交差する方向からみた拡大図である。
【0032】
本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法に用いる製造設備は、
図1に示すように、巻き出し機11と、加硫プレス装置12と、巻き取り機13を備えている。なお、
図1中、14、15は搬送用ローラー、12a、12bはプレス加熱板、12cは油圧ジャッキ、12dはプレス加熱板12aの移動方向をガイドするためのガイド部材である。その他、便宜上、図示を省略したが、巻き出し機11と加硫プレス装置12の間には、搬送用ローラー14の他にも、巻き出し機11から巻き出された未加硫状態の可撓性膜シート積層体20(あるいは後述する可撓性膜シート積層体20の集合体20G)の下面を支持しながら加硫プレス装置12の加硫プレス領域に搬送するためのガイド手段や搬送手段を備えている。
【0033】
巻き出し機11は、各組の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20を巻き出すことができるように構成され、幅方向に並んだ状態で複数個配置されている。なお、
図1では、便宜上、巻き出し機11を一つのみ示してある。
各組の可撓性膜シート積層体20は、例えば、
図2に示すように、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5が幅方向(可撓性膜起伏堰の周方向)に沿って所定量ずらして積層した状態に貼り付けられ、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5が所定量ずれた幅方向階段状部20aを有する。なお、図示は省略するが、後述する可撓性膜シート積層体20の集合体20Gにおける一方の側の端縁部同士となる部位に相当する可撓性膜シート積層体20の端縁部は、幅方向階段状部がなく、各層の未加硫状態の可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5の端部が揃った形態を有している。なお、可撓性膜シート20
1は、最外層となる未加硫状態の外面ゴムであり、可撓性膜シート20
5は、最内層となる未加硫状態の内面ゴムである。また、可撓性膜シート20
2、20
3、20
4は、帆布20
bを補強材とした未加硫状態のゴム引布である。
そして、本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法に用いる製造設備は、巻き出し機11より巻き出された、複数組の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20を、幅方向に並べ、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士の、互いの幅方向階段状部20aを形成する幅方向に沿って所定量ずれた可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5の突出面20
1a、20
2a、20
3a、20
4a、20
5aと、他の層の可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5の突出面20
1a、20
2a、20
3a、20
4a、20
5aとを貼り合わせて最外層の可撓性膜シート同士が面一となるようにすることで、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士が貼り合わさった、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gをつくることができるように構成されている。
【0034】
また、本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法に用いる製造設備は、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを上下に重ね合わせることができるように構成されている。
なお、巻き出し機11は、隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士が貼り合わされた未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを、上下に重ね合わせた状態で巻き出すことができるように構成されていてもよい。
また、巻き出し機11を上下に配置し、上下に配置した巻き出し機11から巻き出した夫々の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを、上下に重ね合わせることができるようにしてもよい。
【0035】
なお、
図3(a)に示すように、上下に重ね合わせる未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20G同士は、幅方向の長さが同じであり、夫々の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gにおいて幅方向に貼り合わさる夫々の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士は、幅方向の長さが同じであってもよい。
あるいは、
図3(b)に示すように、上下に重ね合わせる未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体同士は、幅方向の長さが同じであり、夫々の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gにおいて幅方向に貼り合わさる夫々の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士は、幅方向の長さが異なっていてもよい。
あるいは、
図3(c)に示すように、上下に重ね合わせる未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20G同士は、幅方向の長さが同じであり、幅方向に貼り合わさる未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の数が異なっていてもよい。
【0036】
加硫プレス装置12は、
図1に示すように、プレス加熱板12a、12bと、油圧ジャッキ12cと、ガイド部材12dを有し、プレス加熱板12a、12bの長辺が、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gの搬送方向に対して垂直に交差する向きに配置されている。プレス加熱板12a、12bによるプレス加硫領域の面積は、
図5に示したプレス加硫装置60のプレス加熱板52a、52bによるプレス加硫領域と同程度の大きさを有している。また、ガイド部材12dは、プレス加熱板12a、12bの短辺方向に設けられている。油圧ジャッキ12cは、プレス加熱板12aの長辺方向に沿って複数個設けられている。
そして、本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法に用いる製造設備は、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを、集合体20Gの長さ方向が加硫プレス装置12におけるプレス加熱板12a、12bによる加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する向きにして、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送することができるように構成されている。
巻き取り機13は、プレス加硫装置12により、プレス加硫が施されて一体化した可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを巻き取ることができるように構成されている。
【0037】
このように構成された製造設備を用いた、本実施形態の可撓性膜起伏堰本体の製造方法では、次のような手順で可撓性膜起伏堰本体を製造する。
まず、巻き出し機11から複数組の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20を巻き出し、複数組の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20を、幅方向に並べ、
図4(b)に示すように、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士の、互いの幅方向階段状部20aを形成する幅方向に沿って所定量ずれた可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5の突出面20
1a、20
2a、20
3a、20
4a、20
5aと、他の層の可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5の突出面20
1a、20
2a、20
3a、20
4a、20
5aとを貼り合わせて最外層の可撓性膜シート同士が面一となるようにして、
図4(a)に示すように幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士が貼り合わさった、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gをつくる。
【0038】
次に、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを、上下に重ね合わせ、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを、集合体20Gの長さ方向が加硫プレス装置12における加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する向きにして、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送する。
【0039】
次に、加硫プレス領域内に搬送した未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gに対し、上下に重ね合わせた2つの未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gにおけるフィンに相当する一側縁部を残して長さ方向全体に離型材(図示省略)を介在させる。そして、加硫プレス装置12の油圧ジャッキ12cを作動してプレス加熱板12bを上昇させ、プレス加熱板12aとともに可撓性膜シート積層体20の集合体を上下からプレス加硫を施し、隣り合う可撓性膜シート積層体20における長さ方向の端縁部同士(
図3、
図4(a)において符号20c1で示す部位)及び上下に重なり合う可撓性膜シート積層体20の集合体における一方の側の端縁部同士(
図3、
図4(a)、
図4(c)において符号20c2で示す部位)を、加硫プレス領域の短辺に対応する長さに亘って接合する。このとき、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士の、互いの幅方向階段状部20aを形成する幅方向に沿って所定量ずれた可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5の突出面20
1a、20
2a、20
3a、20
4a、20
5aと、他の層の可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5の突出面20
1a、20
2a、20
3a、20
4a、20
5aとが圧着された状態で加硫されるとともに、上下に重なり合う可撓性膜シート積層体20の集合体20Gにおける一方の側の端縁部に位置する可撓性膜シートの積層体20における最内層の可撓性膜シート20
5同士が圧着された状態で加硫され、加硫中に可撓性膜シート20
1、20
2、20
3、20
4、20
5中のゴムが流れて接合部位の可撓性膜中のゴム同士が均質化した状態で一体化する。その結果、プレス加硫を施した領域における、可撓性膜シート積層体20の集合体20Gの接合部位(
図3、
図4(a)、
図4(c)において符号20c1、20c2で示す部位)には接合の跡が残らなくなる。
【0040】
その後、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gにおける、プレス加硫を施した領域を、加硫プレス領域外に搬送し、巻き取り機13で巻き取る。
これらの工程を、可撓性膜シート積層体20の集合体20Gのプレス加硫済み領域における、加硫プレス領域の短辺に沿う方向の長さが、可撓性膜起伏堰本体としての使用に必要な所定の長さに到達するまで繰り返す。
これにより、可撓性膜起伏堰本体が完成する。
【0041】
本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法によれば、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士が貼り合わさった、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを上下に重ね合わせ、上下に重ね合わせた未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを、集合体20Gの長さ方向が
、ガイド部材12dをプレス加熱板12a、12bの長辺方向に設けずに短辺方向に設けた、加硫プレス装置12における加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する向きにして、加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送するようにしたので、工場内での設置面積が既存のプレス加硫装置と同程度で足りる。そして、既存のプレス加硫装置と同程度の大きさの加硫プレス領域を有するプレス加硫装置12を用いることで、コストの増大化を抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法によれば、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士を加硫するので、接合部位の可撓性膜中のゴム同士が均質化した状態で一体化する。その結果、強度のバラツキが少なく、安定した強度の可撓性膜起伏堰が得られる。また、後接着による接合方法とは異なり、接着用の未加硫状態のゴムを使用する必要がなく、接合部位から接合に用いたゴムが可撓性膜起伏堰の表面に露出することがないため、経年劣化を起こし難く、高温で越流が無い場所に使用しても、使用期間中に接合部位で割れを生じない。また、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士を、成型・加硫することで、接合部位の可撓性膜中のゴム同士が均質化した状態で一体化するため、後接着による接合方法に比べて、接合用の段差形成や接着用のゴムを貼る作業が不要となり作業工数を低減できる。
【0043】
また、本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法によれば、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20を、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートが幅方向に沿って所定量ずらして積層した状態に貼り付けられた構成にして用いたので、後接着による接合方法とは異なり、可撓性膜シート積層体20に対して、接着用の段差を設けるためにゴムを剥ぎ取る等の作業が不要となるため、可撓性膜シート積層体20の本体部の可撓性膜シートを傷つける虞が生じない。
また、本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法によれば、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20同士を、最外層の可撓性膜シート同士が面一となるように貼り合わせたので、加硫後の接合部位は、表面に凹凸がなく美観に優れ、凹凸があることに起因する接合部位の剥離も防止することができる。
【0044】
従って、本実施形態によれば、設備コストを抑え、装置の設置面積を拡大させずに済み、製造作業が煩雑化せず、製造工数を削減でき、製造後の製品が、安定した強度を有し、耐久性、さらには美観に優れた、堰高が1.5mを超える大型の可撓性膜起伏堰本体の製造方法が得られる。
【0045】
以上、本実施形態の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法を
図1〜
図4を用いて説明したが、本発明の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法を行うための製造設備は、
図1に示す構成のものに限定されるものではなく、複数組の未加硫状態の可撓性膜シート積層体20が幅方向に並び、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士が貼り合わさった、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gを上下に重ね合わせ、集合体の長さ方向が加硫プレス装置における加硫プレス領域の長辺に対して垂直に交差する向きにして、加硫プレス領域12の長辺に対して垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送することができれば、どのような構成のものを用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態の製造方法では、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20として、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートが幅方向に沿って所定量ずらして積層した状態に貼り付けられていて、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シートが所定量ずれた幅方向階段状部を有するものを用いて、幅方向に隣り合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士が貼り合わさった、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gをつくったが、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gは上記以外の手順でつくるようにしてもよい。
【0047】
例えば、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートの長さ方向の端縁部同士を貼り合わせて未加硫状態の可撓性膜シートの集合体をつくり、集合体をなす夫々の未加硫状態の可撓性膜シートの上に、複数枚の未加硫状態の可撓性膜シートを当該下層の集合体をなす夫々の未加硫状態の可撓性膜シートの端縁部の位置から幅方向に沿って所定量ずらして貼り付けるとともに、夫々の長さ方向の端縁部同士を貼り合わせて未加硫状態の可撓性膜シートの集合体をつくり、上層の未加硫状態の可撓性膜シートの集合体をつくることを繰り返すことによって、幅方向に沿って各層の未加硫状態の可撓性膜シートが所定量ずれた幅方向階段状部を有する未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士が貼り合わせされた、未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の集合体20Gをつくるようにしてもよい。
【課題】設備コストを抑え装置の設置面積を拡大させずに製造作業が煩雑化せず製造工数を削減でき、製造後に安定強度を有し耐久性、美観に優れた堰高1.5m超の大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法の提供。
【解決手段】幅方向に隣合う未加硫状態の可撓性膜シート積層体20の長さ方向の端縁部同士を貼合せた集合体を上下に重ね合せ、集合体の長さ方向が加硫プレス装置12における加硫プレス領域の長辺に垂直に交差する向きで、加硫プレス領域の長辺に垂直に交差する方向から加硫プレス領域内に搬送し、プレス加硫を施して隣合う可撓性膜シート積層体の長さ方向の端縁部同士及び上下に重なり合う集合体の一方の側の端縁部同士を接合し、加硫プレス領域外に搬送する処理を、プレス加硫済み領域における加硫プレス領域の短辺に沿う方向の長さが、可撓性膜起伏堰本体としての使用に必要な所定の長さに到達するまで繰り返す。