特許第6282372号(P6282372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6282372
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】処理炉
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20180208BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C21D9/56 101J
   F27D7/06 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-115230(P2017-115230)
(22)【出願日】2017年6月12日
【審査請求日】2017年6月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】惠上 寿雄
(72)【発明者】
【氏名】門谷 克浩
(72)【発明者】
【氏名】足立 憲亮
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−307244(JP,A)
【文献】 特開昭52−107207(JP,A)
【文献】 特開2008−038176(JP,A)
【文献】 特開平08−199246(JP,A)
【文献】 特開2017−106067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52− 9/66
F27D 7/00− 7/06
F27B 9/00− 9/40
C21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させるようにした処理炉において、前記の第1処理部と第2処理部とにおける組成の異なる雰囲気ガスが前記の連通部を通して移動するのを抑止するシール部を、前記の連通部内に鋼帯の移動方向に設け、このシール部に、連通部における雰囲気ガスを移動する鋼帯に対して第1処理部から第2処理部に向けて吹き付ける吹付け部を設けると共に、この吹付け部よりも吹付け方向下流側の位置に前記の鋼帯に吹き付けた雰囲気ガスを吸引する吸引部を設け、この吸引部において吸引された雰囲気ガスを前記の吹付け部に戻して前記のシール部において循環させる一方、循環される前記の雰囲気ガスの一部を排気させるシール部排気管を設け、このシール部排気管を通して排気させる雰囲気ガスの量をシール部調整弁によって調整すると共に、前記のシール部よりも下流側の第2処理部側における連通部内の雰囲気ガスの一部を排気させる連通部排気管を設け、この連通部排気管を通して排気させる雰囲気ガスの量を連通部調整弁によって調整し、さらに、前記の連通部に連通される前記の第1処理部と第2処理部との少なくとも一方に、前記の鋼帯と接触しないようにして、これらの処理部内における雰囲気ガスが連通部に移動するのを抑止するように鋼帯が通過する隙間を狭くするシール部材を設けたことを特徴とする処理炉。
【請求項2】
請求項1に記載の処理炉において、前記のシール部材を、前記のシール部よりも下流側における第2処理部側に設けると共に、前記の連通部排気管を、前記のシール部材と前記のシール部との間の連通部に設けたことを特徴とする処理炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の処理炉において、前記の吹付け部から前記の鋼帯に吹き付けた雰囲気ガスを吸引部において吸引し、この吸引部に吸引された雰囲気ガスを前記の吹付け部に戻して、前記の雰囲気ガスを循環させる循環パイプに循環ファンを設け、循環される雰囲気ガスの一部を排気させる前記のシール部排気管を、前記の循環ファンよりも下流側における前記の循環パイプから分岐させて設けたことを特徴とする処理炉。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の処理炉において、前記の組成の異なる雰囲気ガスは、活性ガスの濃度が異なることを特徴とする処理炉。
【請求項5】
請求項4に記載の処理炉において、前記の第1処理部に収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度が、前記の第2処理部に収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度よりも低いことを特徴とする処理炉。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の処理炉において、前記の鋼帯を、前記の第1処理部から前記のシール部が設けられた連通部を通して前記の第2処理部に移動させることを特徴とする処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させるようにした処理炉に関するものである。特に、前記のような処理炉において、鋼帯を組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して移動させるにあたり、鋼帯が傷ついたりすることなく、第1処理部と第2処理部とに収容された組成の異なる雰囲気ガスが連通部を通して移動するのを確実に抑止できるようにし、特に、第1処理部と第2処理部とに活性ガスの濃度が異なる雰囲気ガスを収容させた場合において、第1処理部と第2処理部とに収容された雰囲気ガスが混ざり合って、第1処理部と第2処理部とに収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度が変動するのを防止するようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼帯を処理する処理炉として、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させるようにしたものが使用されている。
【0003】
また、鋼帯の連続熱処理設備では、各処理部内に収容させる雰囲気ガス中に、活性ガスとして熱伝導率の高い水素を含有させ、各処理部において雰囲気ガス中における活性ガスの濃度を変えて、加熱や冷却の温度を調整することが行われている。
【0004】
そして、このような処理炉において、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部とにおける雰囲気ガスが前記の連通部を通して移動し、第1処理部と第2処理部とに収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度が変動したりするのを抑止するため、第1処理部や第2処理部に、雰囲気ガスが連通部に漏れ出すのを防止する一対のシール用のローラーを設け、この一対のシール用のローラーの間に鋼帯を挟むようにして、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して移動させるようにしたものが知られている。
【0005】
しかし、このように鋼帯を一対のシール用のローラーの間に挟むようにして移動させるようにした場合、鋼帯が挟まれたローラーによって傷ついたり、鋼帯を移動させる際の抵抗が大きくなって、大きな駆動装置が必要になったり、シール用のローラーが摩耗したりする等の問題があった。
【0006】
また、従来においては、特許文献1に示されるように、炉内雰囲気が異なる2つの帯域間において、中央に鋼板を通す矩形路を、小室を挟んで配置し、該両矩形路に小室から吸引したガスを小室側に向けて吹き出すと共に、各隣接帯域より一定量のシールガスを小室へ流し放散させるようにしたものが提案されている。
【0007】
しかし、この特許文献1に示されるものにおいても、雰囲気ガスに含まれる活性ガスの濃度等の組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間において、鋼帯を前記の矩形路を通して移動させるようにした場合、組成の異なる雰囲気ガスがこの矩形路を通して流れ、雰囲気ガスに含まれる活性ガスの濃度等が変動するのを確実に防止することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−302430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させるようにした処理炉における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
本発明は、前記のような処理炉において、鋼帯を組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して移動させるにあたり、鋼帯が傷ついたりすることなく、第1処理部と第2処理部とに収容された組成の異なる雰囲気ガスが連通部を通して移動するのを確実に抑止できるようにし、特に、第1処理部と第2処理部とに活性ガスの濃度が異なる雰囲気ガスを収容させた場合において、第1処理部と第2処理部とに収容された雰囲気ガスが混ざり合って、第1処理部と第2処理部とに収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度が変動するのを防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る処理炉においては、前記のような課題を解決するため、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させるようにした処理炉において、前記の第1処理部と第2処理部とにおける組成の異なる雰囲気ガスが前記の連通部を通して移動するのを抑止するシール部を前記の連通部内に鋼帯の移動方向に設け、このシール部に、連通部における雰囲気ガスを移動する鋼帯に対して第1処理部から第2処理部に向けて吹き付ける吹付け部を設けると共に、この吹付け部よりも吹付け方向下流側の位置に前記の鋼帯に吹き付けた雰囲気ガスを吸引する吸引部を設け、この吸引部において吸引された雰囲気ガスを前記の吹付け部に戻して前記のシール部において循環させる一方、循環される前記の雰囲気ガスの一部を排気させるシール部排気管を設け、このシール部排気管を通して排気させる雰囲気ガスの量をシール部調整弁によって調整すると共に、前記のシール部よりも下流側の第2処理部側における連通部内の雰囲気ガスの一部を排気させる連通部排気管を設け、この連通部排気管を通して排気させる雰囲気ガスの量を連通部調整弁によって調整し、さらに、前記の連通部に連通される前記の第1処理部と第2処理部との少なくとも一方に、前記の鋼帯と接触しないようにして、これらの処理部内における雰囲気ガスが連通部に移動するのを抑止するように鋼帯が通過する隙間を狭くするシール部材を設けるようにした。
【0012】
そして、本発明の処理炉において、前記の連通部における雰囲気ガスを、前記のシール部における吹付け部から移動する鋼帯に対して第1処理部から第2処理部に向けて吹き付け、この吹付け部よりも吹付け方向下流側に設けた前記の吸引部において前記の雰囲気ガスを吸引させて前記の吹付け部に戻し、連通部における雰囲気ガスをシール部において循環させるようにすると共に、第1処理部や第2処理部からそれぞれの雰囲気ガスが連通部に流入された場合には、このように流入されたそれぞれの雰囲気ガスをシール部において循環させる途中において、必要に応じて、前記のシール部調整弁によりシール部排気管を通して排気させるようにする。さらに、前記のシール部よりも下流側における連通部内の雰囲気ガスの一部を排気させる連通部排気管を設け、この連通部排気管を通して排気させる雰囲気ガスの量を連通部調整弁によって調整させるようにすると、シール部よりも下流側における第2処理部における雰囲気ガスや、前記の吸引部に十分に吸引されずシール部から第1処理部の雰囲気ガスが導かれた場合にも、前記の連通部調整弁により前記の連通部排気管を通して排気させることができ、前記の第2処理部に収容された雰囲気ガスと第1処理部に収容された雰囲気ガスとが、前記の連通部を通して移動するのをさらに抑制できるようになる。
【0013】
また、本発明の処理炉においては、前記のように連通部に連通される前記の第1処理部と第2処理部との少なくとも一方に、前記の鋼帯と接触しないようにして、これらの処理部内における雰囲気ガスが連通部に移動するのを抑止するように鋼帯が通過する隙間を狭くするシール部材を設けたため、これらの処理部内における雰囲気ガスが連通部に移動するのを一層抑制できるようになる。また、このようにシール部材を設けるにあたっては、シール部材を、前記のシール部よりも下流側における第2処理部側に設けると共に、前記の連通部排気管を、前記のシール部材と前記のシール部との間の連通部に設けることが好ましい。
また、本発明の処理炉においては、前記の吹付け部から前記の鋼帯に吹き付けた雰囲気ガスを吸引部において吸引し、この吸引部に吸引された雰囲気ガスを前記の吹付け部に戻して、前記の雰囲気ガスをシール部において循環させる循環パイプに循環ファンを設け、循環される雰囲気ガスの一部を排気させる前記のシール部排気管をこの循環ファンよりも下流側における前記の循環パイプから分岐させて設けることが好ましい。
【0014】
ここで、本発明の処理炉において、前記の第1処理部と第2処理部における組成の異なる雰囲気ガスとしては、活性ガスの濃度が異なるものを用いるようにすることができる。この場合、前記の第1処理部に収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度が、前記の第2処理部に収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度と異なるようにすることができる。
【0015】
また、本発明の処理炉において、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させるにあたっては、鋼帯を第1処理部から連通部を通して第2処理部に移動させるようにし、或いは鋼帯を第2処理部から連通部を通して第1処理部に移動させるようにすることができ、鋼帯を活性ガスの濃度が異なるそれぞれの処理部において適切に加熱・冷却させて、鋼帯を高効率で処理させることができるようになる。なお、例えば、第1処理部に収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度が、前記の第2処理部に収容された雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度よりも低いとした場合、第2処理部に収容された活性ガスの濃度が高い雰囲気ガスが、雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度が低い第1処理部に流れ込みにくいように、連通部の雰囲気ガスを、活性ガスの濃度の低い側(吹き付け部)から活性ガスの濃度の高い側(吸引部)に向けて吹き付けて流すようにし、第2処理部と第1処理部とに収容された活性ガスの濃度差が減少するのを防止させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明における処理炉においては、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させるにあたり、第1処理部と第2処理部とにおける組成の異なる雰囲気ガスが連通部を通して移動するのを抑止するように、前記のようなシール部を前記の連通部内に鋼帯の移動方向に設けると共に、前記のシール部よりも下流側における連通部内の雰囲気ガスの一部を排気させる連通部排気管を設けるようにしたため、鋼帯を一対のシール用のローラーの間に挟むようにして移動させる従来の場合のように鋼帯が傷つくということがなくなると共に、組成の異なる雰囲気ガスを収容させた第1処理部と第2処理部との間において、組成の異なる雰囲気ガスが連通部を通して移動するのも確実に抑止できるようになる。また、前記のように連通部に連通される前記の第1処理部と第2処理部との少なくとも一方に、前記の鋼帯と接触しないようにして、これらの処理部内における雰囲気ガスが連通部に移動するのを抑止するように鋼帯が通過する隙間を狭くするシール部材を設けたため、これらの処理部内における雰囲気ガスが連通部に移動するのを一層抑制できるようになる。
【0017】
この結果、組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させる場合に、第1処理部と第2処理部とにおいて組成の異なる雰囲気ガスが安定した状態で維持され、鋼帯を活性ガスの濃度が異なるそれぞれの処理部において適切に加熱・冷却させて、高効率で処理させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る処理炉において、第1処理部と第2処理部との間における連通部を通して、鋼帯を第1処理部と第2処理部との間で移動させる構成を示した概略説明図である。
図2】前記の実施形態に係る処理炉において、第1処理部と第2処理部との間における連通部の状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態に係る処理炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る処理炉は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0020】
この実施形態における処理炉においては、雰囲気ガスとして、窒素ガス等の不活性ガスに水素ガス等の活性ガスを混合させたものを用いるようにした。なお、雰囲気ガスにおける不活性ガスとしては、前記の窒素ガスに限られず、アルゴンガス等を用いることができ、また活性ガスとしては、前記の水素ガスに限られず、処理目的に応じて一酸化炭素ガス等を用いることができる。
【0021】
ここで、この実施形態における処理炉においては、例えば、図1に示すように、第1処理部10内に、第1処理側雰囲気ガス供給管12を通して活性ガスの濃度が低い低濃度雰囲気ガスを供給する一方、第2処理部20内に、第2処理側雰囲気ガス供給管22を通して活性ガスの濃度が高い高濃度雰囲気ガスを供給するようにしている。
【0022】
そして、活性ガスの濃度が低い低濃度雰囲気ガスが収容された第1処理部10と、活性ガスの濃度が高い高濃度雰囲気ガスが収容された第2処理部20との間に連通部30を設け、長尺状の鋼帯1を、この連通部30を通して第1処理部10と第2処理部20との間で移動させるようにしている。
【0023】
ここで、この実施形態の処理炉においては、前記の鋼帯1を第1処理部10内に導き、この第1処理部10内に設けられた送りローラー11により前記の鋼帯1を第1処理部10内で移動させて、第1処理部10内に収容された活性ガスの濃度が低い低濃度雰囲気ガスにより鋼帯1を処理した後、この鋼帯1を前記の連通部30を通して第2処理部20内に導き、この第2処理部20内に設けられた送りローラー21により前記の鋼帯1を第2処理部20内で移動させて、第2処理部20内に収容された活性ガスの濃度が高い高濃度雰囲気ガスにより鋼帯1を処理するようにしている。
【0024】
また、この実施形態の処理炉においては、外気の侵入を防ぐため、常時、雰囲気ガスを導入しているが、前記の第1処理部10内で余剰になった前記の低濃度雰囲気ガスを、この第1処理部10から排気させる低濃度側雰囲気ガス排気管13を設けると共に、この低濃度側雰囲気ガス排気管13を通して排気させる低濃度側雰囲気ガスの量を調整する低濃度側調整弁13aを設けている。
【0025】
また、前記の第2処理部20内で余剰になった前記の高濃度雰囲気ガスを、この第2処理部20から排気させる高濃度側雰囲気ガス排気管23を設け、この高濃度側雰囲気ガス排気管23を通して排気させる高濃度側雰囲気ガスの量を調整する高濃度側調整弁23aを設けている。
【0026】
そして、この実施形態の処理炉においては、前記の第1処理部10内における雰囲気ガスを活性ガスの濃度が低い低濃度雰囲気ガスの状態で維持させ、この第1処理部10内において前記の鋼帯1を加熱させる一方、前記の第2処理部20内における雰囲気ガスを活性ガスの濃度が高い高濃度雰囲気ガスの状態で維持させ、この第2処理部20内において前記の鋼帯1を冷却させるようにしている。
【0027】
ここで、この実施形態の処理炉においては、前記の第1処理部10内における活性ガスの濃度が低い低濃度雰囲気ガスと、第2処理部20内における活性ガスの濃度が高い高濃度雰囲気ガスとが前記の連通部30を通して移動して、第1処理部10内における低濃度雰囲気ガスや、第2処理部20内における高濃度雰囲気ガスにおける活性ガスの濃度等が変化するのを抑止するようにしている。
【0028】
そして、この実施形態の処理炉においては、第1処理部10内における前記の低濃度雰囲気ガスと第2処理部20内における前記の高濃度雰囲気ガスとが前記の連通部30を通して移動するのを抑制するため、図1及び図2に示すように、前記の連通部30にシール部31を設け、循環ファン311により連通部30における雰囲気ガスを、移動する鋼帯1に対して、その上下両面側に設けた各吹付け部312を通してそれぞれ第1処理部10から第2処理部20に向けて吹き付けると共に、各吹付け部312から鋼帯1に吹き付けた雰囲気ガスを各吹付け部312よりも下流側の位置において鋼帯1の上下両面側に設けた多孔板等で構成された各吸引部313を通して吸引し、連通部30における雰囲気ガスを、前記の循環ファン311により循環パイプ314を通して前記の各吹付け部312と各吸引部313との間で循環させるようにしている。また、このようにシール部31において循環される雰囲気ガスの一部を排気させるシール部排気管315を設け、このシール部排気管315を通して排気させる雰囲気ガスの量をシール部調整弁315aによって調整するようにしている。
【0029】
また、前記のシール部31よりも第2処理部20側の連通部30内における雰囲気ガスの一部を排気させる連通部排気管32を設け、この連通部排気管32を通して排気させる雰囲気ガスの量を連通部調整弁32aによって調整するようにしている。
【0030】
なお、シール部調整弁315aと連通部調整弁32aでは、雰囲気ガスを流す量を、第1処理部10と第2処理部20の雰囲気ガスの濃度等を監視して調整する。
【0031】
さらに、この実施形態の処理炉においては、前記の連通部30と第2処理部20との間に、移動される鋼帯1と接触しないようにして、第2処理部20内における高濃度雰囲気ガスが連通部30に移動するのを抑止する非接触型のシール部材33を設けている。
【0032】
そして、この実施形態の処理炉においては、前記のように連通部30における雰囲気ガスをシール部31において循環させると共に、第1処理部10や第2処理部20から低濃度雰囲気ガスや高濃度雰囲気ガスが連通部30に流入された場合には、このように流入された雰囲気ガスをシール部31において循環させる途中において、前記のシール部調整弁315aを調整して前記のシール部排気管315を通して排気させるようにしている。また、前記のシール部31よりも第2処理部20側の連通部30内に、例えば、前記の第2処理部20における高濃度雰囲気ガスや、前記の吸引部313に十分に吸引されずシール部31から低濃度雰囲気ガスが導かれた場合には、このような雰囲気ガスを前記の連通部調整弁32aを調整し、前記の連通部排気管32を通して排気させるようにしている。
【0033】
そして、この実施形態の処理炉においては、前記のように連通部30と第2処理部20との間に、移動される鋼帯1と接触しないようにしてシール部材33を設けたため、第2処理部20内における高濃度雰囲気ガスが連通部30に移動するのが抑制されると共に、移動される鋼帯1が傷つくということもない。
【0034】
このため、この実施形態の処理炉においては、従来のように鋼帯1が一対のシール用のローラーの間に挟まれて傷つくということがなく、第1処理部10や第2処理部20における低濃度雰囲気ガスや高濃度雰囲気ガスが連通部30を通して移動するのが抑止されるようになり、第1処理部10内における低濃度雰囲気ガスや、第2処理部20内における高濃度雰囲気ガスにおける水素ガス等の活性ガス濃度が変化するのが確実に防止されるようになる。
【0035】
なお、この実施形態の処理炉においては、長尺状の鋼帯1を低濃度雰囲気ガスが収容された第1処理部10から連通部30を通して高濃度雰囲気ガスが収容された第2処理部20に導くようにしたが、逆に、長尺状の鋼帯1を前記の第2処理部20から連通部30を通して前記の第1処理部10に導くようにすることも可能である。
【0036】
また、この実施形態の処理炉においては、第1処理部10内における雰囲気ガスを水素ガス等の活性ガスの濃度が低い低濃度雰囲気ガスの状態で維持させ、この第1処理部10内において前記の鋼帯1を加熱させる一方、第2処理部20内における活性ガスの濃度が高い高濃度雰囲気ガス状態で維持させ、この第2処理部20内において前記の鋼帯1を冷却させるようにしたが、第1処理部10や第2処理部20に収容させる雰囲気ガスの種類はこのようなものに限定されず、また鋼帯1に対して第1処理部10や第2処理部20において行う処理や、温度の高低もこのようなものに限定されない。
【0037】
また、この実施形態の処理炉においては、第1処理部10と第2処理部20との間における連通部30を水平方向に設けるようにしたが、図示していないが、連通部30を垂直方向に設けたり、傾斜させて設けたりすることもできる。
【0038】
また、前記の実施形態の処理炉においては、鋼帯1の移動の上流側の処理部の活性ガスの濃度が低く、鋼帯1の移動の上流から下流へ向かって順番に第1処理部、第2処理部と称して説明したが、下流側の処理部の活性ガスの濃度が低い場合には、鋼帯1の移動の下流から上流へ向かって順番に第1処理部、第2処理部として説明できることはいうまでもない。
【0039】
また、このようなシール部31は、1つだけではなく、複数連続して設置することも可能である。そのようにすれば、第1処理部10と第2処理部20とにおける雰囲気ガスが、連通部30を通して移動するのをさらに確実に防止できる。
【0040】
また、前記の実施形態の処理炉においては、第1処理部10と第2処理部20との間の連通部30に前記のようなシール部31を設けるようにしただけであるが、図示していないが、前記の第2処理部20と組成の異なる雰囲気ガスを収容させた第3処理部を設け、前記の第2処理部20と第3処理部と間における連通部30にも前記のようなシール部31を設けることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 :鋼帯
10 :第1処理部
11 :送りローラー
12 :低濃度側雰囲気ガス供給管
13 :低濃度側雰囲気ガス排気管
13a :低濃度側調整弁
20 :第2処理部
21 :送りローラー
22 :高濃度側雰囲気ガス供給管
23 :高濃度側雰囲気ガス排気管
23a :高濃度側調整弁
30 :連通部
31 :シール部
32 :連通部排気管
32a :連通部調整弁
33 :シール部材
311 :循環ファン
312 :吹付け部
313 :吸引部
314 :循環パイプ
315 :シール部排気管
315a :シール部調整弁
【要約】
【課題】 組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部と第2処理部との間の連通部を通して鋼帯を移動させる場合に、鋼帯が傷ついたり、各処理部に収容された雰囲気ガスが連通部を通して移動したりするのを抑止する。
【解決手段】 組成の異なる雰囲気ガスが収容された第1処理部10と第2処理部20との間の連通部30を通して鋼帯1を移動させるにあたり、連通部を通して各雰囲気ガスが移動するのをシール部31において抑止するにあたり、連通部の雰囲気ガスを吹付け部312から鋼帯1に対して第1処理部から第2処理部に向けて吹き付けると共に、吹付け部よりも下流側の位置で雰囲気ガスを吸引する吸引部313との間で循環させ、シール部排気管315から排気させる雰囲気ガスの量や、シール部より第2処理部側の連通部内の雰囲気ガスを連通部排気管32から排気させる量を調整する。
【選択図】 図2
図1
図2