特許第6282384号(P6282384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282384車両のインナトリムの開口開閉用ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282384
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】車両のインナトリムの開口開閉用ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20180208BHJP
   B60K 37/04 20060101ALI20180208BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20180208BHJP
   B60R 7/04 20060101ALN20180208BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   B60K37/04
   G02B27/01
   !B60R7/04 T
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-519792(P2017-519792)
(86)(22)【出願日】2015年5月5日
(65)【公表番号】特表2017-522231(P2017-522231A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】EP2015059871
(87)【国際公開番号】WO2016000852
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】102014212796.3
(32)【優先日】2014年7月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シェラート
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ミールケ
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−061987(JP,A)
【文献】 特開2008−302715(JP,A)
【文献】 特開平04−090934(JP,A)
【文献】 特開2005−335582(JP,A)
【文献】 特開2013−159297(JP,A)
【文献】 独国実用新案第20015730(DE,U1)
【文献】 独国特許出願公開第102011109056(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60K 37/04
G02B 27/01
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に自動車、のインナトリム(1)のカバー面(2)に設けられた開口(3)を、移動可能なカバー部材(5)を用いて開閉するユニットであって、前記カバー部材(5)は、面状部材により形成されていて、前記カバー部材(5)が前記開口(3)に位置する閉鎖位置(6a)から、前記カバー部材(5)がその移動により前記開口(3)を開放する開放位置(6b)へ移動可能であり、且つ逆に前記開放位置(6b)から前記閉鎖位置(6a)へ移動可能であるユニットにおいて、
前記カバー部材(5)は、互いに間隔を置いて平行に配置され且つ前記カバー部材(5)の移動方向(7)を向いた2つのラック(8,9)を有しており、これらのラック自体は、それぞれ対応配置された歯車(10,11)に噛み合っており、これらの歯車(10,11)は、前記インナトリム(1)に結合されたフレーム部材(12)に回動可能に支持されており、且つ回転駆動される軸(13)によって互いに結合されており、該軸(13)には少なくとも1つの前記歯車(10,11)が、相対回動不能に結合されており、前記カバー部材(5)は、前記ラック(8,9)に噛み合っている前記歯車(10,11)の回動に基づき、前記フレーム部材(12)延いては前記開口(3)に対して相対的に移動することができるようになっており、前記ラック(8,9)はそれぞれ、前記歯車(10,11)上を転動する合同の転動輪郭を有しており、該転動輪郭は、
a)それぞれ第1の直線的なラック部分(8a,9a)により形成されており、該第1の直線的なラック部分(8a,9a)は、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第2の湾曲したラック部分(8b,9b)に移行している、又は
b)それぞれ内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第1の湾曲したラック部分(8a,9a)により形成されており、該第1の湾曲したラック部分(8a,9a)は、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第2の湾曲したラック部分(8b,9b)に移行しており、前記第1のラック部分(8a,9a)のピッチ円直径は、前記第2のラック部分(8b,9b)のピッチ円直径より何倍も大きく選択されていることを特徴とする、ユニット。
【請求項2】
前記開口(3)の開放中、前記カバー部材(5)は、前記開口(3)を画成している前記インナトリム(1)の前記カバー面(2)の下にもぐり込むようになっている、請求項1記載のユニット。
【請求項3】
前記ラック部分(8a,8b;9a,9b)はそれぞれ、前記カバー部材(5)の前記閉鎖位置(6a)では前記第2のラック部分(8b,9b)が前記歯車(10,11)と噛み合っているのに対し、前記カバー部材(5)の前記開放位置(6b)では前記第1のラック部分(8a,9a)が前記歯車(10,11)と噛み合っているように、前記カバー部材(5)に配置されている、請求項1又は2記載のユニット。
【請求項4】
前記カバー部材(5)の移動方向(7)に見て前記カバー部材(5)の両側には、前方及び後方のガイドピン(15,16;17,18)が1つずつ配置されており、これらのガイドピン(15,16;17,18)は、前記フレーム部材(12)のガイド溝(19,20)内を移動可能に強制案内されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のユニット。
【請求項5】
前記ガイド溝(19,20)は、前方及び後方に互いに分けて配置された前方及び後方のガイド溝部分(19a,19b;20a,20b)により形成されている、請求項記載のユニット。
【請求項6】
前記ガイド溝部分(19a,19b;20a,20b)は、前記カバー部材(5)の前記両側に互いに分かれて形成されている、請求項記載のユニット。
【請求項7】
前記カバー部材(5)の前記両側に形成された前記ガイド溝部分(19a,19b;20a,20b)は、前記カバー部材(5)の前記閉鎖位置(6a)から出発して前記カバー部材(5)の開放過程中、該カバー部材(5)がまず最初に前記歯車の側で所定の角度”α”だけ前記歯車(10,11)に向かって傾けられて、前記歯車(10,11)に向かって傾斜案内され、最終的には直線又はほぼ直線に沿って進むような延在部を有している、請求項記載のユニット。
【請求項8】
前記カバー部材(5)の前記両側に形成された前記ガイド溝部分(19a,19b;20a,20b)は、前記カバー部材(5)の前記開放位置(6b)では今や、前記カバー部材(5)の、前記歯車(10,11)とは反対の側の端部が、前記直線に対して所定の角度”β”だけ傾けられているような延在部を有している、請求項記載のユニット。
【請求項9】
前記インナトリム(1)は、車両のインストルメントパネルである、請求項1からまでのいずれか1項記載のユニット。
【請求項10】
ヘッドアップディスプレイをカバーするための、請求項1からまでのいずれか1項記載のユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明の特許請求項1の上位概念に記載の、車両、特に自動車のインナトリムの開口開閉用ユニットに関する。
【0002】
本発明を説明するために、車両の通常の走行方向を”−x”(「マイナスx」)で表し、通常走行方向とは逆の方向を”+x”(「プラスx」)で表し、通常の走行方向(−x)から出発して水平面内でx方向に対して右向きに直交する方向を”+y”で表し、通常の走行方向(−x)から出発して水平面内でx方向に対して左向きに直交する方向を”−y”で表し、垂直面内でx方向に対して上向きに直交する方向を”+z”で表し、垂直面内でx方向に対して下向きに直交する方向を”−z”で表すものとする。直交座標におけるこれらの空間方向の表し方は、自動車工業全般で使用される座標系に対応している。更に、「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、並びに「右」及び「左」を含む類似の意味内容を有する概念は、自動車において方向を表すために通常用いられるのと同様に使用される。
【0003】
独国特許出願公開第19804743号明細書(DE 198 04 743 A1)から、インストルメントパネル内に配置された、ナビゲーションシステム、テレビ等の車両用表示装置のための起立機構が公知である。例えば第1の実施形態では、表示装置は、一端に配置されたピンを介して、表示装置を収容するケーシングのいわゆるカム溝内を変位可能に案内されている。ピンがカム溝に沿って往復運動させられた場合、表示装置は、傾倒状態と直立若しくは起立状態との間で変位可能であり、この場合、起立状態では、旋回可能なカバーにより閉じることのできるケーシングの開口を通り抜けることになる。カバーは開放過程中、表示装置により開放される。ピンは、ラック機構を介してモータに連結されていることが望ましい。モータの回転運動は、ラック機構を介して直線的な往復運動に変換されることが望ましく、これにより、ピンが滑動可能になる。このラック機構の詳細な形成法については、当該刊行物に何ら記載されていない。表示装置の第2の実施形態では、表示装置は同様に、一端に配置されたピンを介してカム溝内を変位可動に案内されており、これにより、フラップ式に上げ下げすることができるようになっている。この場合、表示装置を収容するケーシングの底面に、右ラックと左ラックとが設けられており、右ラックと左ラックの上を、左右の歯車を介してブロックがモータにより作動させられて、ラックに沿って移動することができるようになっている。前記モータはブロック内に配置されている。表示装置のピンは、ブロックのカム溝内でも、ケーシングのカム溝内でも、ブロックの動きに基づき結合部材を介して表示装置が起立させられるか、又は傾倒させられるように案内されている。
【0004】
独国特許出願公開第10220180号明細書(DE 102 20 180 A1)には、頭の高さで読み取り可能な表示装置のための、車両に設けられた開口を開閉するカバーユニットが記載されており、この場合、前記開口は、表示装置から出射された画像光線を、スクリーン、例えば車両のフロントガラス、に入射させる。カバーユニットは遮蔽板を有しており、これにより、表示装置からスクリーン若しくはフロントガラスまでの幾何学上の光路を中断する又は空けることができるようになっている。この遮蔽板は、モータで作動させられる旋回機構及び/又はてこ腕機構を介して、起立位置と傾倒位置との間で可動である。
【0005】
本発明の課題は、従来技術に鑑みて、車両のインナトリムの開口を開閉するための、簡単且つ廉価な代替ユニットを提供することにある。
【0006】
車両、特に自動車、のインナトリムのカバー面に設けられた開口を、移動可能なカバー部材を用いて開閉するユニットを起点とすると、この場合、カバー部材は面状部材により形成されていて、当該カバー部材が前記開口に位置する閉鎖位置から、当該カバー部材がこのカバー部材の移動により開口を開放する開放位置へ移動可能であり、且つ逆に開放位置から閉鎖位置へ移動可能であり、前記課題は、カバー部材が、互いに間隔を置いて平行に配置され且つカバー部材の移動方向を向いた2つのラックを有しており、これらのラック自体は、それぞれ対応配置された歯車に噛み合っており、これらの歯車は、インナトリムに結合されたフレーム部材に回動するように支持されており、且つ回転駆動される軸によって互いに接続されており、該軸には少なくとも1つの歯車が、相対回動不能に結合されており、カバー部材は、ラックに噛み合っている歯車の回動に基づき、フレーム部材延いては開口に対して相対的に移動することができるようになっていることにより解決される。
【0007】
有利には、カバー部材が取り付けられたラックが歯車上を移動することによってのみ、開口が開閉されるようになっている。
【0008】
本発明の好適な改良又は構成は、従属請求項に記載されている。
【0009】
開口開放中、カバー部材は好適には、開口を画成しているインナトリムのカバー面の下にもぐり込む。この場合、本発明では、従来技術において好適であるような、開口開放用の複雑なてこ腕作用を用いたカバー部材の起立運動は不要である。それというのも、開放過程中、カバー部材はインナトリムのカバー面の下にもぐり込んで、少なくとも部分的に、いわば前記カバー面に対して平行又はほぼ平行に進むようになっているので、開口の開放状態では、従来技術とは異なり、インナトリムのカバー面の上方に起立することはない。
【0010】
本発明の第1の有利な実施形態では、ラックはそれぞれ、歯車上を転動する合同の転動輪郭を有しており、転動輪郭は、それぞれ第1の直線的なラック部分により形成されており、第1の直線的なラック部分は、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第2の湾曲したラック部分に移行している。ラックの選択された転動輪郭に基づいて、カバー部材の進路、若しくは開口開閉中にカバー部材が描く曲線が予め規定されている。第2の有利な変化態様では、ラックはそれぞれ、歯車上を転動する合同の転動輪郭を有しており、転動輪郭はそれぞれ、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第1の湾曲したラック部分により形成されており、第1の湾曲したラック部分は、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第2の湾曲したラック部分に移行しており、この場合、第1のラック部分のピッチ円直径は、第2のラック部分のピッチ円直径より何倍も大きく選択されている。この第2の変化態様は第1の実施形態と、主として第1の直線的なラック部分が、今や湾曲した、特にやや湾曲しているに過ぎない第1のラック部分により代替されている、という点において相違している。この手段により、有利には開口開閉中更に良好に、開口を画成しているインナトリムのカバー面の輪郭に適合された、カバー部材の進路若しくは曲線を形成することができる。その結果、有利には特にインナトリムの下側をカバー部材が進むために必要とされる構成空間も減少させることができる。
【0011】
好適には、ラック部分はそれぞれ、カバー部材の閉鎖位置では第2のラック部分が歯車と噛み合っているのに対し、カバー部材の開放位置では第1のラック部分が歯車と噛み合っているように、カバー部材に配置されている。開閉過程中のカバー部材の確実な案内を保証するために、カバー部材の移動方向に見てカバー部材の両側には、前方及び後方のガイドピンが1つずつ配置されており、これらのガイドピンは、フレーム部材のガイド溝内を移動可能に強制案内されている。この場合、ガイド溝は、前方のガイドピンに対応配置された前方のガイド溝部分と、後方のガイドピンに対応配置された後方のガイド溝部分とにより形成されている。この場合、便宜上、ガイド溝部分は各側に互いに分かれて形成されていてよく、これにより、カバー部材の選択された進路に応じて、各ガイド溝部分を概ね互いに独立して形成することができる。好適には、ガイド溝部分は各側において、カバー部材の閉鎖位置から出発してカバー部材が開放過程中、まず最初に歯車側を所定の角度”α”だけ歯車に向かって傾けられて、歯車に向かって傾斜案内され、最終的には直線又はほぼ直線に沿って進むような延在部を有している。この場合、開放過程の開始時に、カバー部材はいわば開口を画成しているインナトリムのカバー面の下にもぐり込む。カバー部材の移動を保証するために必要とされる構成空間を更に最小化するために、本発明の改良では、各側においてガイド溝部分が、カバー部材の開放位置では今や、カバー部材の、歯車とは反対の側の端部が、前記直線に対して所定の角度”β”だけ傾けられている/傾けられるような延在部を有している。つまり前記端部は、インナトリムのカバー面の輪郭延在部に応じて、例えば上向き又は下向きに、前記角度”β”だけ傾けられてよい。
【0012】
特に有利には、本発明によるユニットは、例えばヘッドアップディスプレイをカバーするために、車両のインストルメントパネルの形態でインナトリムに組み込むことに適している。ヘッドアップディスプレイとは、インストルメントパネルから出される情報をインストルメントパネルの開口を通じて車両運転者の視界内へ、例えば車両のフロントガラス又はヘッドアップディスプレイの別個のコンバイナガラスに投影する情報表示システムを意味する。本発明では、前記コンバイナガラスがもぐっているときには、カバー部材により開口が閉鎖され、コンバイナガラスが外に出ているときには、カバー部材により開口が開放される。この場合、コンバイナガラスとは、部分反射型の透光性ガラスを意味する。
【0013】
以下に本発明を、図面に概略的に示した実施例につき詳しく説明する。但し本発明は、当該実施例に限定はされず、特許請求項により規定されるあらゆる構成を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両のインナトリムを、本発明によるインナトリム開口開閉用ユニットと共に示す斜視図である。
図2】フレーム部材に移動可能に支持されたカバー部材を備える前記ユニットを、図1に示したI−Iに沿って断面した図である。
図3】カバー部材のラック輪郭及びガイド溝輪郭を示す概略図である。
図4a】インナトリム開口開放中のカバー部材の移動位置を示す図である。
図4b】インナトリム開口開放中の、図4aに示した位置とは異なるカバー部材の移動位置を示す図である。
図4c】インナトリム開口開放中の、図4a及び図4bに示した位置とは異なるカバー部材の移動位置を示す図である。
図4d】インナトリム開口開放中の、図4a、図4b及び図4cに示した位置とは異なるカバー部材の移動位置を示す図である。
図5図4aに示した移動位置(閉鎖位置)に対応する、カバー部材の斜視図である。
図6図4cに示した移動位置(中間位置)に対応する、カバー部材の斜視図である。
図7図4dに示した移動位置(開放位置)に対応する、カバー部材の斜視図である。
【0015】
最初に図1には、インナトリム1、本発明では例えば車両(図示せず)、特に自動車、のインストルメントパネル、の重要部分が示されている。インナトリム1は、水平又は概ね水平な上側のカバー面2に開口3を有しており、開口3自体は、カバー面2に支持された透明な保護カバー4によってカバーされている。
【0016】
この実施例では、前記開口3は、ヘッドアップディスプレイ(図示せず)により生ぜしめられる光線の幾何学上の光路を保証する。既に上述したように、ヘッドアップディスプレイとは、車両のインナトリム1若しくはインストルメントパネルから出される情報を、車両のインナトリム1若しくはインストルメントパネルの開口3を通じて車両運転者の視界に、例えば車両のフロントガラス又はヘッドアップディスプレイの別個のいわゆるコンバイナガラスに投影する情報表示システムを意味する。この場合、移動可能なカバー部材5によって開口3を開閉することができるようになっている(図示せず)。
【0017】
前記カバー部材5は、面状部材から形成されていて、カバー部材5が前記開口3に位置する閉鎖位置6a(特に図1図2図4a、図5参照)から、カバー部材5がその移動に基づき開口3を開放する開放位置6b(特に図4b〜図4d、図6図7参照)へ移動し、且つ逆に開放位置6bから閉鎖位置6aへ移動することができるようになっている。カバー部材5は、本発明では開放過程中(特に図4b〜図4d、図6図7参照)に、いわば開口3に沿って、開口3を画成しているインナトリム1のカバー面2の下側を進むように移動可能であり、したがってカバー部材5は、開口3の開放状態ではインナトリム1のカバー面2の上方に起立してはいない。この場合、カバー部材5は少なくとも部分的に、前記カバー面2に対して平行又は概ね平行に進むことができる。
【0018】
カバー部材5は、インナトリム1のカバー面2とは反対の側に、互いに間隔を置いて平行に配置され且つカバー部材5の移動方向7を向いた2つのラック8,9を有している。前記移動方向7は、本実施例では車両の長手方向(±X方向)を向いている。ラック8,9自体は、それぞれ対応配置された歯車10,11に噛み合っている。歯車10,11は、インナトリム1に結合され且つインナトリム1のカバー面2の下側に配置されたフレーム部材12に、回動するように支持されている(図1図7)。更に歯車10,11は、回転駆動される軸13を介して互いに接続されており、この場合、歯車10,11のうちの少なくとも1つ、但し好適には両方の歯車10,11は、軸13に相対回動不能に結合されている。軸13と歯車10,11とは、電動モータ14により回転駆動され、電動モータ14自体は、フレーム部材12に位置固定的に取り付けられている(図1図5図7)。ラック8,9に噛み合っている歯車10,11の回動に基づいて、カバー部材5はフレーム部材12延いては開口3に対して相対的に、本発明では車両の長手方向(±X方向)に移動することができるようになっている。
【0019】
特に図2図7から看取されるように、本発明の第1の有利な実施形態では、ラック8,9はそれぞれ歯車10,11上を転動する合同の転動輪郭を有しており、この転動輪郭は、それぞれ第1の直線的なラック部分8a,9aにより形成されており、第1の直線的なラック部分8a,9aは、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第2の湾曲したラック部分8b,9bに移行している(特に図2参照)。ラック8,9の選択された転動輪郭によって、カバー部材5の進路、若しくは開口3の開閉中にカバー部材5が描く曲線が規定されている。本発明では、ラック部分8a,8b;9a,9bは、カバー部材5の閉鎖位置6a(図1図3図4a、図5)では第2のラック部分8b,9bが歯車10,11と噛み合うのに対して、カバー部材5の開放位置6b(図4d、図7)では第1のラック部分8a,9aが歯車10,11と噛み合うように、カバー部材5に配置されている。
【0020】
開閉過程中のカバー部材5の確実な案内を保証するために、カバー部材5の移動方向7に見てカバー部材5の両側には、前方及び後方のガイドピン15,16;17,18が1つずつ配置されている。各側に設けられたガイドピン15,16;17,18は、対応配置されたフレーム部材12のガイド溝19,20内を移動可能に強制案内されている。この場合、ガイド溝19,20は一貫して形成されていてよく、各側に設けられた前方及び後方のガイドピン15,16;17,18を受容していてよい(図示せず)。但し好適には、ガイド溝19,20は互いに分かれた前方及び後方のガイド溝部分19a,19b;20a,20bを形成している(特に図2参照)。この場合、前方のガイド溝部分19a,20aには前方のガイドピン15,17が対応配置されており、後方のガイド溝部分19b,20bには後方のガイドピン16,18が対応配置されている。
【0021】
各側に設けられたガイド溝部分19a,19b;20a,20bは、カバー部材5がこのカバー部材5の閉鎖位置6aから出発して、開放過程中にまず、歯車側において所定の角度”α”だけ歯車10,11に向かって傾き、且つ歯車10,11の方向に傾斜案内され、最終的には直線又はほぼ直線に沿って移動させられるような延在部を有している(図2)。前記直線は、本発明ではインナトリム1のカバー面2に対して水平又はほぼ水平に且つ/又は平行又はほぼ平行に延びる延在部の直線部分を意味する。
【0022】
この点において前方のガイド溝部分19a,20aは、前記開口3から出発して車両後方に向かって下向きに傾斜した延在部を有しており、この下向きに傾斜した延在部は、直線的な、特にカバー面2に対して水平又はほぼ水平な若しくは平行又はほぼ平行な延在部に移行している。後方のガイド溝部分19b,20bも同様に、最初は斜め下を向いており、次いで上述した定義による直線又はほぼ直線に移行している。前記角度”α”は実質的に、ガイド溝部分19a,19b;20a,20bの傾斜した延在部と、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第2の湾曲したラック部分8b,9bの選択されたピッチ円直径とから形成される。したがって、いわば開放過程開始時に、カバー部材5は開口3を画成しているインナトリム1のカバー面2の下にもぐり、次いで前記カバー面2の下側で引き続き案内されることになる。
【0023】
簡単に云うと、第2の湾曲したラック部分8b,9bは、前記ガイド溝部分19a,19b;20a,20bの傾斜部と組み合わされて、開放過程開始時におけるカバー部材5のもぐり込みに役立つ。この下向きの動きは進路を進むにつれて減少し、カバー部材5が降下して第1の直線的なラック部分8a,9aが歯車10,11と噛み合うと、カバー部材5は容易に降下状態で進行する。好適には、前方のガイド溝部分19a,20aの傾斜は、外部から(誤って)荷重”F”が加えられた場合にカバー部材5の変形が防止されるように、少なくとも効果的に阻止されるように、選択若しくは調整されている(図3参照)。よって前記傾斜は、極端に急勾配に形成されるべきではない。更にカバー部材5の前記変形は、モータ伝動装置の選択された減速比によっても防止することができ、少なくとも効果的に阻止することができる。
【0024】
カバー部材5の移動を保証するために必要とされる構成空間を更に最小化するために、本発明の改良では、各側に設けられたガイド溝部分19,20、本発明では後方のガイド溝部分19b,20bの後端部21は、カバー部材5の開放位置6bにおいてカバー部材5の、今や歯車10,11とは反対の側の端部が前記直線に対して所定の角度”β”だけ傾けられている/傾けられるような延在部を有している。つまり、カバー部材5の前記端部21は、インナトリム1のカバー面2の輪郭延在部に応じて、例えば上向き又は下向きに、前記角度”β”だけ傾けられてよい(図4d参照)。この実施例では、後方のガイド溝部分19b,20bの前記後端部21は下向きに延在しているので、カバー部材5の開放位置6bにおいて、カバー部材5の歯車10,11とは反対の側の端部は、前記直線に対して所定の角度”β”だけ、下向きに傾けられている(図4d)。
【0025】
図4a〜図4d、図5図7には、本発明によるユニットの機能が示されている。図4a及び図5において、カバー部材5は”t”の時点で、その閉鎖位置6aに位置している。カバー部材5をその開放位置6b(図4d)へ移動させようとする場合には、歯車10,11が電動モータ14(ここには図示せず)により回転駆動され、これによりカバー部材5は、そのラック8,9を介してガイド溝19,20内を前記開放位置6bに向かって強制的に案内される、即ち図4a〜図4dに示すように左側から右側に向かって移動若しくは進行させられることになる。カバー部材5の進路は、ガイド溝19,20若しくはガイド溝19,20のガイド溝部分19a,19b;20a,20bの延在部並びに上述したラック8,9若しくはラック8,9のラック部分8a,8b;9a,9bの転動輪郭によって予め規定されている。つまり図4bによると、カバー部材5は”t”の時点で、インナトリム1のカバー面2(ここでは破線による概略的な示唆のみ)の下にもぐり込む。図4c及び図6では、”t”の時点でカバー部材5は、本発明ではカバー面2に対して平行又はほぼ平行に延在する直線又はほぼ直線上を案内される。最後に図4d及び図7によると、カバー部材5は”t”の時点でその開放位置6bに到達し、このときカバー部材5の、歯車10,11とは反対の側の端部は、前記直線に対して所定の角度”β”だけ、下向き又は上向きに選択的に傾けられた状態になる。
【0026】
本発明の第2の有利な変化態様(図示はしないが、当業者には容易に想像可能)では、ラック8,9は、歯車10,11上で転動する合同の転動輪郭を有しており、この転動輪郭はそれぞれ、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第1の湾曲したラック部分8a,9aにより形成されており、この第1の湾曲したラック部分8a,9aは、内側に歯列が設けられた平歯車の円弧部分により形成された、第2の湾曲したラック部分8b,9bに移行している。この場合、第1のラック部分8a,9aのピッチ円直径は、第2のラック部分8b,9bのピッチ円直径に比べると、何倍も大きく選択されている。つまりこの第2の変化態様は第1の実施形態と、第1の実施形態による第1の直線的なラック部分8a,9aが、今や湾曲した、好適にはやや湾曲した第1のラック部分8a,9aにより代替されているという点において相違している。即ち、第1のラック部分8a,9aのピッチ円直径は、例えばほぼ直線の第1のラック部分8a,9aが形成されているような大きさに選択されていてよい。この手段により、有利には開口3の開閉中、開口3を画成しているインナトリム1のカバー面2の輪郭に更に良好に適合されたカバー部材5の進路若しくは曲線を形成することができる。その結果、有利には特にインナトリム1の下側でカバー部材5を移動させるために必要とされる構成空間も縮小されることになる。
【符号の説明】
【0027】
1 インナトリム
2 カバー面
3 開口
4 保護カバー
5 カバー部材
6a 閉鎖位置(カバー部材5)
6b 開放位置(カバー部材5)
7 移動方向
8 ラック
8a 第1のラック部分
8b 第2のラック部分
9 ラック
9a 第1のラック部分
9b 第2のラック部分
10 歯車
11 歯車
12 フレーム部材
13 軸
14 電動モータ
15 前方のガイドピン
16 後方のガイドピン
17 前方のガイドピン
18 後方のガイドピン
19 ガイド溝
19a 前方のガイド溝部分
19b 後方のガイド溝部分
20 ガイド溝
20a 前方のガイド溝部分
20b 後方のガイド溝部分
21 後端部(後方のガイド溝部分19b,20b)
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7