(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドラムの内部に供給した温風を外槽の外部に排出するための排気口を、外槽の第1の給気口と第2の給気口との間の部位に形成したことを特徴とする請求項1記載の衣類乾燥機。
温風供給装置が外槽の外部からドラムの内部に温風を供給するのに送風ファンを具え、その送風ファンによる送風量を乾燥行程において制御するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の衣類乾燥機。
温風供給装置が外槽の外部からドラムの内部に温風を供給するのに送風ファンを外槽の後方に具えると共に、第1の給気口に連なる第1の風路と、第2の給気口に連なる第2の風路とを具備し、そのうちの第2の風路を、ドラムの外周部上に前後の軸方向に延ばし配設して、前記送風ファンがドラムの径方向に送る温風を受けて通すようにしたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の衣類乾燥機。
【背景技術】
【0002】
従来より、衣類乾燥機においては、衣類を収容するドラムを外槽の内部に配設し、外槽の外部からモータなどドラム駆動装置によりドラムを回転させ、同時に外槽の外部から温風供給装置により温風を外槽の内部へ、そしてドラムの内部へと供給することにより、衣類を乾燥させるようになっている。
【0003】
しかして、このものの場合、ドラムの内部に温風を供給するための給気口は、一般的に外槽の後部に設けられ、ドラムの内部に供給した温風を外槽の外部に排出するための排気口は、それとは反対側の外槽の前部に設けられている。従って、このものの場合、温風は、外槽の後部からドラムの内部に供給されて、外槽の前部から外槽の外部に排出されることを続けて、衣類を乾燥させようになっている。
【0004】
このため、ドラム内の後部に位置した衣類の乾燥が先に進み、ドラム内の前部に位置した衣類の乾燥が遅れる状況になりやすい。よって、ドラム内の前部に位置する衣類まで100〔%〕の乾燥率とするときには、ドラム内の後部に位置した衣類は100〔%〕を超える乾燥率となっており、乾燥むらを生じる。又、ドラム内の後部に位置した衣類は、乾燥率が100〔%〕を超えることで、過乾燥による縮みなどダメージを受ける。
【0005】
加えて、ドラムが水平に設けられている場合、衣類はドラム内の前後部の全体に分布するが、そのうちのドラム内の後部に位置した衣類がドラムの回転により持ち上げられてから落下することを素直に繰返すのに対して、ドラム内の前部に位置した衣類は、回転するドラムと静止する扉との間でねじられ、しわを生じやすい。
【0006】
一方、衣類の出し入れがしやすいようにドラムが前上がりの傾斜状に設けられている場合、木綿系で含水性の高い下着や靴下など含水で重くなる衣類は、ドラムが回転を続ける間にドラム内の下部である後部に集まりやすいのに対して、ワイシャツや長袖シャツなど軽い衣類は、ドラム内の上部である前部に集まりやすい。このワイシャツや長袖シャツなどの衣類は、着用したとき、人目に触れやすくて、しわの発生が嫌われるのにもかかわらず、乾燥中、ドラム内の前部に集まりやすいことで、回転するドラムと静止する扉との間でねじられ、しわを生じやすい。
【0007】
従って、このドラム内の後部と前部とに位置した衣類の乾燥をうまく行うことが、衣類をむらなく乾燥させ、又、縮みなどのダメージを与えることもなく乾燥させると共に、しわの発生もなく乾燥させて、仕上がり具合を良くする重要なポイントである。
【0008】
下記の特許文献1には、外槽の外部からドラムの内部に温風を供給するための第1の給気口を外槽の後部に形成すると共に、同温風を供給するための第2の給気口を外槽の前部に形成し、第1の給気口からの温風の供給と第2の給気口からの温風の供給とを、乾燥行程の進行に応じて切換えるようにしたものが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ドラム式洗濯乾燥機に適用した第1の実施形態につき、
図1ないし
図7を参照して説明する。
まず、
図4及び
図5には、ドラム式洗濯乾燥機の基台1から機内構造2を示しており、基台1には、図示しない外箱が結合され、機内構造2を覆ようになっている。機内構造2は、
図1及び
図2にも示すように、水槽3を主体としている。水槽3は、軸方向が前後の横軸円筒状を成すものであり、それを
図4及び
図5に示す左右一対のサスペンション4により、前上がりの傾斜状に弾性支持している。従って、水槽3は前部が高く、後部が低くなっている。
【0015】
水槽3の背部には、
図5に示すモータ5を取付けている。モータ5は、この場合、例えば直流のブラシレスモータであって、アウターロータ形であり、図示しない回転軸(図示省略)を水槽3の内部に挿入している。
【0016】
水槽3の内部には、
図4、
図1及び
図2に示すドラム6を収容している。このドラム6も軸方向が前後の横軸円筒状を成すもので、それを後部の中心部で上記モータ5の回転軸の先端部に取付けることにより、水槽3と同軸の前上がりの傾斜状に支持している。その結果、ドラム6はモータ5により直に回転されるようになっており、従って、ドラム6は回転槽であり、水槽3はドラム6を収容した外槽であって、モータ5はドラム6を回転させるドラム駆動装置として機能するようになっている。
【0017】
ドラム6の周側部(胴部)には、
図4に示す小孔7を全域にわたって多数形成すると共に、衣類掻き上げ用のバッフル8を複数(1つのみ図示)設けている。
このほか、水槽3については、図示しないが、水槽3の内部からドラム6の内部に給水する給水弁を初めとする給水装置と、ドラム6から水槽3内の水を外部に排出する排水弁を初めとする排水装置を設けている。
【0018】
一方、水槽3の後方である外箱内の後下部には、
図5、
図1及び
図2に示すヒートポンプユニット9を送風ファン10と共に配置している。ヒートポンプユニット9は、ユニットケース11の内部に、
図6に示すアキュムレータ12を併設した圧縮機13と、凝縮器14、絞り器である絞り弁15、及び蒸発器16を配設して成るもので、それらの圧縮機13、凝縮器14、絞り弁15、及び蒸発器16を、
図6に示すように順に接続することによって、ヒートポンプ(冷凍サイクル)17を構成している。なお、ヒートポンプ17には冷媒を封入しており、又、ユニットケース11内では、詳しくは図示しないが、凝縮器14及び蒸発器16を通る風路と、圧縮機13及び絞り弁15を配置したスペースとを仕切壁により隔てている。
【0019】
ユニットケース11の
図5、
図1及び
図2で左側端部の上部には、上記凝縮器14及び蒸発器16を通る風路に連なる入気口18を形成しており、この入気口18には、水槽3についての排気ダクト19を接続している。排気ダクト19は、第1の排気ダクトである上部排気ダクト19aと、第2の排気ダクトである後部排気ダクト19bとから成るものであり、そのうちの後部排気ダクト19bを水槽3の背部に上下方向に指向させて配設し、その下端部を上記ユニットケース11の入気口18に接続している。
【0020】
上部排気ダクト19aは、水槽3の外周部中の上部に前後の軸方向に指向させて配設しており、その後端部に上記後部排気ダクト19bの上端部を接続している。上部排気ダクト19aの中間部には、上方へ開放するフィルタ収納部20を設けており、このフィルタ収納部20に
図1及び
図2に示すフィルタ21を収納し、もっぱら衣類から散出する糸くずを捕獲するようになっている。上部排気ダクト19aの前端部は、
図4及び
図5に示す蛇腹状のダクト継手22を介して、水槽3の上部の前部に形成した排気口23に接続している。
【0021】
送風ファン10は、ケーシング10aの内部に
図1、
図2及び
図6に示す送風羽根10bを配設し、この送風羽根10bを回転駆動するモータ10cを
図6に示すようにケーシング10a外に配設して成るもので、そのケーシング10aをユニットケース11の
図5で右側部に配置して、該ケーシング10aの入口部(図示せず)をユニットケース11の前記凝縮器14及び蒸発器16を通る風路の出口部(図示せず)と連通させている。又、ケーシング10aは出口部10dを上部に有しており、その出口部10dを、蛇腹状のダクト継手24を介して、給気ダクト25の下端部に接続している。
【0022】
給気ダクト25は、第1の風路25aと第2の風路25bとから成るものであり、そのうちの第1の風路25aを水槽3の背部に配設して、下方の基端部を上記ケーシング10aの出口部10dにダクト継手24を介して接続している。これに対して、水槽3の後部、中でも後端板部の上部には、第1の給気口26を形成しており、この第1の給気口26に第1の風路25aの上方の先端部を連通させている。
【0023】
ここで、前記ダクト継手24は、送風ファン10におけるケーシング10aの、上方を指向した出口部10dから上方に延びる直状を成しており、従って、ドラム6の径方向に送風するもので、それに対し、上記給気ダクト25の第1の風路25aは、水槽3の背部の外周部に沿う屈曲状を成し、ドラム6のほゞ周方向に送風するようになっている。
【0024】
第2の風路25bは、第1の風路25aの上部の屈曲部からボックス状の風量調整トラップ27を介して分岐したもので、すなわち、第1の風路25aと第2の風路25bとの分岐部分に風量調整トラップ27を設けており、第2の風路25bは、その風量調整トラップ27からドラム6の外周部中の上部に前後の軸方向に延ばし配設していて、途中部をクランク状にやゝ屈曲させている。従って、この第2の風路25bは、前記送風ファン10がドラム6の径方向に送った温風を受けてドラム6の軸方向に通すようになっている。
【0025】
このようにして、水槽3の後方に配置した送風ファン10を基準に、第1の風路25aと第2の風路25bとを有し、そのうちの第1の風路25aが送風ファン10の送風方向(上方)に対して周方向に曲がっているのに対し、第2の風路25bは、軸方向に延ばして配設している。
【0026】
第2の風路25bは、最前部が水槽3の前縁部の上部を貫通して水槽3の内部に臨む第2の給気口28となっており、このようにして水槽3の前部に第2の給気口28を形成し、この第2の給気口28に第2の風路25bが連なるようにしている。これに対して、第1の風路25aは前述のように前記第1の給気口26に連なっており、この第1の給気口26と第2の給気口28との間に、前記排気口23が位置している。
【0027】
以上の、ダクト継手22、排気ダクト19(上部排気ダクト19a、後部排気ダクト19b)、ユニットケース11の凝縮器14及び蒸発器16を通る風路、送風ファン10(ケーシング10a)、ダクト継手24、給気ダクト25(第1の風路25a、第2の風路25b)により、水槽3の排気口23と第1の給気口26及び第2の給気口28とを接続する通風路29を構成している。
【0028】
なお、
図6は、通風路29を前記ヒートポンプ17と併せて概略的に示しており、そのほか、排気ダクト19内に設けた排気温度センサ30、並びに給気ダクト25内に設けた給気温度センサ31をも示している。
又、
図1及び
図2は、以上の機内構造2を概略的に示している。
【0029】
そして、通風路29中、給気ダクト25の第1の風路25aと第2の風路25bの分岐部分に前述のように設けた風量調整トラップ27には、
図7、
図1及び
図2に示す風量調整ダンパ32を設けている。この風量調整ダンパ32は、詳細には、風量調整トラップ27の内部に、一辺部32aを支点として上下に回動するように設けたもので、風量調整トラップ27の外部に配設したギヤドモータ33を駆動源として、回動されるようになっている。その回動により、風量調整ダンパ32は、風量調整トラップ27において給気ダクト25の第1の風路25aから第2の風路25bに連なる開口27a(
図1及び
図2参照)の開度を変化させることにより、その開口27aを通じて第1の風路25aから第2の風路25bへ至る風量を変化させて、第1の風路25aを通る風量と第2の風路25bを通る風量の割合を調整するようになっている。
【0030】
次に、上記構成の洗濯乾燥機の作用を述べる。
上記構成の洗濯乾燥機では、標準的な運転コースが開始されると、洗濯行程、脱水行程、及び乾燥行程が順に実行される。
洗濯行程には、洗い運転とすすぎ運転とがあり、そのうちの洗い運転では、図示しない給水装置により水槽3からドラム6内に給水する動作が行われ、続いて、モータ5が作動されることにより、ドラム6が低速で正逆両方向に交互に回転される。これにより、ドラム6に収容された衣類が上げ下げ(タンブリング)されて撹拌され、洗浄される。その後、図示しない排水弁が開放されて、ドラム6及び水槽3内の水が機外に排出される。
【0031】
すすぎ運転では、上記洗い運転と同様の動作が行われるものであり、それにより、洗い後の衣類が上げ下げされて撹拌され、すすがれる。
洗濯行程が終了すると、次に脱水行程が実行される。この脱水行程では、ドラム6が一方向に高速回転され、それによって洗濯後の衣類の遠心脱水をし、同時に上記排水弁が開放されて、脱水によりドラム6内から排出された水が機外に排出される。
【0032】
脱水行程が終了すると、次に、乾燥行程が実行される。この乾燥行程では、ドラム6が低速で正逆両方向に回転されつつ、送風ファン10が作動される。これにより、脱水後の衣類が上げ下げされて撹拌されつつ、送風ファン10の作動で、ドラム6内の空気が、水槽3の排気口23からダクト継手22及び排気ダクト19を順に通して水槽3外に出される。この水槽3外に出された空気は、その後、ユニットケース11の凝縮器14及び蒸発器16を通る風路、送風ファン10、ダクト継手24、給気ダクト25を順に通して、すなわち通風路29を通して、水槽3の第1の給気口26と第2の給気口28から水槽3内に吹き込まれ、そしてドラム6内に戻す循環が行われる。
【0033】
又、このときには、ヒートポンプ17の圧縮機13の作動が開始される。これにより、ヒートポンプ17に封入された冷媒が圧縮されて高温高圧の冷媒となり、その高温高圧の冷媒が凝縮器14に流れて、ユニットケース11内の凝縮器14及び蒸発器16を通る風路の空気と熱交換する。その結果、ユニットケース11内の凝縮器14に接触する空気が加熱され、反対に、冷媒の温度は低下して液化される。この液化された冷媒が、次に、絞り弁15を通過して減圧された後、蒸発器16に流入し、気化する。それにより、蒸発器16はユニットケース11内の蒸発器16に接触する空気を冷却する。この蒸発器16に接触する空気を冷却することでその熱を奪った冷媒は、その後、圧縮機13に戻る。
【0034】
これらにより、前記送風ファン10の作動によって水槽3内から前記通風路29中のユニットケース11内の凝縮器14及び蒸発器16を通る風路に流入した空気は、蒸発器16で冷却されて除湿され、その後に凝縮器14で加熱されて温風化される。そして、その温風が通風路29の後段(給気ダクト25)を通して水槽3の第1の給気口26と第2の給気口28から水槽3内に吹き込まれ、そしてドラム6内に送り入れられる。従って、通風路29と送風ファン10及びヒートポンプ17の凝縮器14は、温風供給装置34として機能するものである。
【0035】
ドラム6内に送り入れられた温風は、ドラム6内の衣類と接触してその水分を奪い、その後に水槽3の排気口23から通風路29の前段(排気ダクト19)を経てユニットケース11内の凝縮器14及び蒸発器16を通る風路に流入する。
このようにして、ユニットケース11内の凝縮器14及び蒸発器16を通る風路とドラム6を有する水槽3内との間を空気が循環することにより、ドラム6内の衣類が乾燥される。
【0036】
さて、この乾燥行程においては、前記水槽3の内部に第1の給気口26から供給する温風と、同水槽3の内部に第2の給気口28から供給する温風との割合を、行程の進行に応じて変化させるようにしている。具体的には、第1の給気口26から供給する風量を第2の給気口28から供給する風量より多くして乾燥行程を開始するようにしている。そして、行程の進行に伴い、第2の給気口28から供給する風量を増加させて、第1の給気口26から供給する風量より多くするようにしている。
【0037】
更に具体的には、
図3に示すように、この乾燥行程において、通風路29中の給気温度センサ31と排気温度センサ30との検知温度差から衣類の乾燥率を判断し、乾燥行程の開始から、判断した衣類の乾燥率が90〔%〕近くに達する中盤まで、第1の給気口26から供給する風量を全風量の80〔%〕とし、第2の給気口28から供給する風量を全風量の残り20〔%〕として、第1の給気口26から供給する風量を、第2の給気口28から供給する風量より多くするようにしている。
【0038】
そして、判断した衣類の乾燥率が90〔%〕に達して以後、同衣類の乾燥率が100〔%〕に達するまでの終盤では、第1の給気口26から供給する風量を全風量の20〔%〕とし、第2の給気口28から供給する風量を全風量の残り80〔%〕として、第2の給気口28から供給する風量を増加させ、第1の給気口26から供給する風量より多くするようにしている。
【0039】
この風量の変化は、通風路29中の第1の風路25aと第2の風路25bとの分岐部分に設けた風量調整ダンパ32をギヤドモータ33により回動させることで、風量調整トラップ27の第1の風路25aから第2の風路25bに連なる開口27aの開度を変化させことにより行うもので、第1の給気口26から供給する風量を、第2の給気口28から供給する風量より多くするときには、
図1に示すように、上記開口27aの開度を小さくすることで、第2の風路25bを通って第2の給気口28に至る風量より、第1の風路25aを通って第1の給気口26に至る風量を多くし、他方、第2の給気口28から供給する風量を増加させるときには、
図2に示すように、上記開口27aの開度を大きくすることで、第2の風路25bを通って第2の給気口28に至る風量を増加させる。この第2の風路25bを通って第2の給気口28に至る風量の増加は、一度にでも良いし、段階的でも良く、更に連続的でも良い。
この後、乾燥行程が終了し、標準的な運転コースが終了される。
【0040】
このように上記構成の洗濯乾燥機では、ドラム6の内部に温風を供給するための第1の給気口26を水槽3の後部に形成すると共に、同じくドラム6の内部に温風を供給するための第2の給気口28を水槽3の前部に形成し、水槽3の内部に第1の給気口26から供給する温風と水槽3の内部に第2の給気口28から供給する温風との割合を、乾燥行程の進行に応じて変化させるようにしている。
【0041】
これにより、水槽3の内部には後部からだけでなく前部からも同時に温風を供給し得るので、ドラム6内の後部に位置した衣類だけでなくドラム6内の前部に位置した衣類も同時に乾燥させ得て、衣類をむらなく乾燥させることができる。又、ドラム6内の後部に位置した衣類のみを過度に乾燥させることも避け得るので、衣類に縮みなどのダメージを与えることもなく乾燥させることができる。更に、乾燥行程の進行に応じた温風の供給がドラム6内の後部と前部とに対してできるので、しわの発生もなく乾燥させ得て仕上がり具合を良くすることができる。
【0042】
加えて、ドラム6の内部に対する、水槽3の後部からの温風の供給と水槽3の前部からの供給は、その割合を乾燥行程の進行に応じて変化させるもので、前記特許文献1に記載のもののような乾燥行程の進行に応じて切換えるものではなく、第1の給気口26からの供給と第2の給気口28からの供給とを並行して実施するため、衣類の全部に対する乾燥速度を速め得、すなわち乾燥終了までに時間がかかることのないようにできる。
【0043】
特に上記構成のものでは、ドラム6を前上がりの傾斜状に設けており、このものでは、既述のように、木綿系で含水性の高い下着や靴下など含水で重くなる衣類は、ドラム6が回転を続ける間にドラム6内の下部である後部に集まりやすいのに対して、ワイシャツや長袖シャツなど軽い衣類は、ドラム6内の上部である前部に集まりやすい。これに対して、上記構成のものでは、第1の給気口26から、すなわち水槽3の後部から水槽3の内部に供給する風量を、第2の給気口28から、すなわち水槽3の前部から水槽3の内部に供給する風量より多くして、乾燥行程を開始するようにしている。これにより、ドラム6内の下部である後部に集まりやすい、含水性の高い下着や靴下など含水で重くなる衣類を乾燥行程の開始当初から効率良く乾燥させることができる。
【0044】
そして又、前上がりの傾斜状に設けたドラム6においては、これも既述のように、着用したときに人目に触れやすくてしわの発生が嫌われるワイシャツや長袖シャツなど軽い衣類が、ドラム内の前部に集まりやすいことで、回転するドラムと静止する扉との間でねじられ、しわを生じやすいのに対して、乾燥行程の進行に伴い、第2の給気口28から供給する風量を増加させるようにしている。
【0045】
しわのない、仕上がり具合の良い乾燥を行うには、衣類の乾燥率に応じた乾燥制御を実行することが重要である。衣類の乾燥を行うとき、衣類にしわが付いても、衣類の乾燥率が低くて撹拌をしているうちにしわが取れる運転区間は重要ではない。重要なのは、衣類の乾燥率が進んで特に90〔%〕付近から100〔%〕の間に衣類にしわが付いた状態で乾燥が進行した場合にしわが固定されやすく仕上がり具合の悪い乾燥となりやすいので、この区間をどのように乾燥させるかである。
【0046】
そこで、上述のように、前上がりの傾斜状に設けたドラム6に対し、乾燥行程の進行に伴い、特に衣類の乾燥率が90〔%〕に近づいたころから第2の給気口28から供給する風量を増加させるようにしており、それによって、ドラム6内の前部に集まりやすくて着用したときに人目に触れやすくて嫌われるしわを生じやすいワイシャツや長袖シャツなど軽い衣類をそれまでより速い速度で乾燥させ得るようになり、しわが付いたまま乾燥が進行するのを短時間に留めて、しわが固定されるのを回避し、仕上がり具合を良くすることができる。
【0047】
又、上記構成のものでは、ドラム6の内部に供給した温風を水槽3の外部に排出するための排気口23を、水槽3の第1の給気口26と第2の給気口28との間の部位に形成している。これにより、水槽3の内部に第1の給気口26から供給する温風と第2の給気口28から供給する温風の双方をドラム6内に効率良く通して衣類に当てることができ、衣類の乾燥むらを一層少なくできる。
【0048】
更に、上記構成のものでは、第1の給気口26に連なる第1の風路25aと、第2の給気口28に連なる第2の風路25bとを具備し、これら第1及び第2の両風路25a,25bの分岐部分に、両風路を通る風量の割合を調整する風量調整ダンパ32を具えている。これにより、水槽3の内部に第1の給気口26から供給する温風と第2の給気口28から供給する温風の風量調整が容易かつ適切にできる。
【0049】
加えて、上記構成のものでは、温風供給装置34が水槽3の外部からドラム6の内部に温風を供給するのに送風ファン10を水槽3の後方に具えると共に、上記第1の風路25aと第2の風路25bとうち、第2の風路25bを、ドラム6の外周部上に前後の軸方向に延ばし配設して、送風ファン10がドラム6の径方向に送る温風を受けて通すようにしている。これにより、水槽3の後方から前部へと配管の引き回しが長くなって温風の流通抵抗が大きくなりやすいところを改善できて、温風を水槽3の前部から内部へ抵抗少なく供給することができ、ドラム6内の前部に位置する衣類の乾燥が効率良くできる。
【0050】
以上に対して、
図8ないし
図11は第2ないし第4の実施形態を示すもので、それぞれ、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
[第2の実施形態]
図8及び
図9に示す第2の実施形態においては、風量調整ダンパ32の作動による風量の調整の仕方を、第1の実施形態と異ならせている。
【0051】
第1の実施形態は、給気ダクト25の第2の風路25bの断面積を大きく確保できる場合に適するもので、この場合、
図1から
図2への変化で明らかなように、風量調整ダンパ32により第2の風路25bの流路抵抗を減じる方向で第2の風路25bを通る風量を増加できるので、送風ファン10の電力消費が少なく済み、エネルギーの省減に効果がある。
【0052】
それに対して、第2の実施形態は、給気ダクト25の第2の風路25bの断面積を大きく確保できない場合に適するもので、この場合、
図8から
図9への変化で明らかなように、風量調整ダンパ32により第1の風路25aを通じて第1の給気口26に至る風量を減じることで、第2の風路25bを通る風量を増加させるようにしている。これにより、第2の風路25bの断面積を大きく確保できない場合でも、第2の風路25bを通る風量を増加させることが確実にできる。
【0053】
[第3の実施形態]
図10に示す第3の実施形態においては、送風ファン10による送風量を乾燥行程において制御するようにしている。具体的には、前述の、衣類の乾燥率が90〔%〕に達して以後、同衣類の乾燥率が100〔%〕に達するまで、送風ファン10による送風量を多くするようにしている。その多くする量は例えば20〔%〕である。
【0054】
これにより、同図に示す「乾燥率」や「蒸発速度」の違い(破線)で明らかなように、特に、前述の、ドラム6内の前部に集まりやすくて着用したときに人目に触れやすくて嫌われるしわを生じやすいワイシャツや長袖シャツなど軽い衣類を、より速い速度で時間短縮をして乾燥させ得るようになり、しわが付いたまま乾燥が進行するのをより短時間に留めて、しわが固定されるのを回避し、仕上がり具合を一段と良くすることができる。
【0055】
又、前記構成のものでは、温風をヒートポンプ17で生成するようにしており、送風ファン10による送風量を多くすることで、ヒートポンプ17との熱交換量に対する風量の割合が増して、同図に示す「水槽吹込み風温度」の違い(破線)で明らかなように、低温の温風を供給できるようになるので、衣類のしわを伸ばす効果も得ることができ、仕上がり具合を一層良くすることができる。
更に、この場合、送風ファン10による送風量の増加を、衣類の乾燥率が90〔%〕に達して以後、同衣類の乾燥率が100〔%〕に達するまでという一時的に留めることで、騒音の増加並びに省エネ性の低下を少なく抑えることができる。
【0056】
[第4の実施形態]
図11に示す第4の実施形態においては、温風供給装置34が水槽3の外部からドラムの内部に温風を供給するのに補助送風ファン41を具えるようにしている。これも具体的には、第2の風路25bの途中部に補助送風ファン41を設けたもので、補助送風ファン41は、ケーシング41aと、これの内部に位置する送風羽根41b、及び送風羽根41bを回転駆動する図示しないモータから成っている。
【0057】
このようにすることで、上記第3の実施形態と同様に、特に衣類の乾燥率が90〔%〕に達して以後、同衣類の乾燥率が100〔%〕に達するまでの送風量を、補助送風ファン41で多くできて、第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。従って、この補助送風ファン41は第1の風路25aの途中部に設けるようにしても良い。
【0058】
なお、温風の生成はヒートポンプによらず、電気ヒータによるものであっても良い。又、洗濯、脱水機能もなくても良い。
そのほか、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。