特許第6282405号(P6282405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282405
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20180208BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61Q5/06
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-85468(P2013-85468)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-205650(P2014-205650A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年4月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】倉島 巧
(72)【発明者】
【氏名】豊田 智規
(72)【発明者】
【氏名】松村 正人
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓也
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010898(JP,A)
【文献】 特開2003−055164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C08F 283/01
C08F 290/00−290/14
C08F 299/00−299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示す単量体(A)、(B)、及び(C):
(A)重合によって得られるホモポリマーのガラス転移温度が300K(27℃)以下であるノニオン性単官能エチレン性不飽和単量体を71〜91重量%、
(B)分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体を4〜14重量%、及び
(C)下記式[I]:
【化1】
(式中、R及びRはH又はCHであり、Xはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)であり、nは1〜100の整数である)
で表される二官能エチレン性不飽和単量体を5〜15重量%、
を重合させて得られる粘着性セット樹脂であって、前記(A)ノニオン性単官能エチレン性不飽和単量体がアクリル酸エチル及びアクリル酸ブチルから選択される少なくとも一種を粘着性セット樹脂に対して20重量%以上含む粘着性セット樹脂、及び水を含有する毛髪化粧料(但し、洗浄剤組成物である場合を除く)。
【請求項2】
(B)分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びメタクリル酸から選択される一種又は二種である、請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
アニオン性界面活性剤を含有しない、請求項1又は2記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた固定力とアレンジ力(再整髪力も含む)とを備えるとともに、アルコールに起因する不快感や安全性の問題を低減することが可能な毛髪化粧料に関する。より詳しくは、毛髪を固定・再整髪するためのポリマーとして水溶性の高い新規なポリマーを用いることにより、当該ポリマーを溶解するためのアルコール類の配合を不要とすること、もしくはアルコール類の配合量を大幅に低減することができる毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアスタイリングは、ヘアスタイルを作ることと、作ったヘアスタイルを保持することという2つの機能を含んでいる。これらの2つの機能を発揮する原理は、固着と粘着であると言われている(非特許文献1)。
【0003】
しかし、固着によるヘアスタイリングは、セット剤と呼ばれる皮膜形成剤(ポリマー樹脂)が固い皮膜を形成するため、一度作った髪型からの再整髪ができず、皮膜を崩してしまうと整髪機能を失うという欠点があった。即ち、セット樹脂による固着に基づくスタイリング剤は、髪型の固定には長けているがアレンジ力に乏しいという問題があった。
【0004】
一方、粘着に基づくスタイリングは、粘着性油性成分が毛髪上で流動性と粘着性を保っているため、指やブラシを通して再スタイリング可能であるという特徴を有する。このため、いわゆるアレンジ力に長けているものの、セット樹脂を用いた毛髪化粧料のような固定力(キープ力)が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、近年、毛髪(へアスタイル)の固定と同時に、固定後の再整髪をも可能にする毛髪化粧料が注目されている。なかでも、皮膜形成時に程よい固さと高い粘着力とを有する特殊なポリマーを配合することが提案されている。例えば、特許文献1には、所定のモノマーA〜Dを重合させて得られる粘着性セット樹脂、アルコール、及び水を含有する毛髪化粧料が開示されている。また、特許文献2には、単官能エチレン性不飽和単量体成分(A)と、多官能エチレン性不飽和単量体成分(B)との共重合体からなり、前記成分(A)の組成から理論的に計算されるガラス転移温度が40℃以下であり、溶媒可溶性を有することを特徴とする毛髪化粧料用基剤が開示されている。
【0006】
上記特許文献1及び2に記載されている粘着性セット樹脂あるいは毛髪化粧料用基剤は、固定力とアレンジ力とを備え、それによりヘアスタイルの保持と再整髪の両立を実現するとされている。しかし、これらの粘着性セット樹脂あるいは毛髪化粧料用基剤は、いずれもアルコールに対する溶解性は高いものの、水溶性が低くそのままでは水性溶媒に安定かつ透明に溶解させることが難しい。そのため、これらを毛髪化粧料に配合するには、通常化粧料に用いられるエタノール等のアルコール類を高配合して、水性媒体に可溶化させる必要があった。しかし、アルコール類は、独特の臭気を有し、肌にしみるような刺激を与え、肌質によっては肌荒れやアレルギーを引き起こすこともある。また、揮発性が強く、引火しやすい性質を有するため、火気を避けるなど取り扱いには注意を要する。さらに、カルボマーのような増粘剤の増粘効果を妨げたり、水溶性エキスや水溶性薬剤の活性を低下させてしまうなど、アルコール類との併用に適さない化粧品原料も多数存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「機能性化粧品の開発II」、鈴木正人監修、シーエムシー出版発行、1996年、第10章 整髪剤の機能と最新の技術
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5108817号公報
【特許文献2】特開2011−26250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、へアスタイルの固定力とアレンジ力(再整髪力も含む)とを両立しつつ、アルコール類の配合を不要とすること、もしくはアルコール類の配合量を大幅に低減することが可能な毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の単量体を特定の比率で重合させて得られる親水性の高い新規の粘着性セット樹脂を使用することにより、固定力とアレンジ力とを兼ね備えつつも、従来のように可溶化のためにアルコール類を高配合する必要がない毛髪化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す単量体(A)、(B)、及び(C):
(A)重合によって得られるホモポリマーのガラス転移温度が300K(27℃)以下であるノニオン性単官能エチレン性不飽和単量体(以下、「単量体A」とする)を71〜91重量%、
(B)分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体B」とする)を4〜14重量%、及び
(C)下記式[I]:
【化1】
(式中、R及びRはH又はCHであり、Xはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)であり、nは1〜100の整数である)
で表される二官能エチレン性不飽和単量体(以下、「単量体C」とする)を5〜15重量%、
を重合させて得られる粘着性セット樹脂、及び水を含有する毛髪化粧料を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る毛髪化粧料は、特定の単量体を特定の比率で重合させて得られる水溶性の高い粘着性セット樹脂を用いることにより、アルコール類に依らずに粘着性セット樹脂を水性溶媒に安定に溶解することができる。このため、従来のように可溶化剤としてアルコール類を高配合する必要が無く、アルコール類に起因する不快感や安全性の問題を回避することができる。また、アルコール類との併用が難しい成分を配合できるため、毛髪化粧料の処方幅を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の毛髪化粧料は、上記単量体A、単量体B、及び単量体Cを所定の比率で重合させて得られる粘着性セット樹脂と、水とを必須に含むことを特徴とする。以下、本発明について詳述する。
【0014】
<粘着性セット樹脂>
本発明の毛髪化粧料に配合される粘着性セット樹脂は、以下の単量体A、単量体B、及び単量体Cを所定の割合で重合させることによって得ることができる。
【0015】
[単量体A]
粘着性セット樹脂を構成する単量体Aは、単独で重合してホモポリマーとした場合のガラス転移温度が300K(27℃)以下であるノニオン性単官能エチレン性不飽和単量体である。ホモポリマーが当該ガラス転移温度を満たす単量体であれば、一種の単量体を単独で使用することも、二種以上の単量体を組み合わせて使用することもできる。一方、ホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲から外れる単量体を併用すると、粘着性が低下してアレンジ力が劣るほか、仕上がりが硬くぱさつく傾向があり、本発明の効果が得られない。
【0016】
各単量体Aをホモポリマーとした場合の前記ガラス転移温度は、300K(27℃)以下、より好ましくは270K(−3℃)以下であり、さらに好ましくは260K(−13℃)以下である。ガラス転移温度が300K(27℃)以下であることにより、粘着性セット樹脂を含有する毛髪化粧料の再整髪性が優れたものとなる。単量体のホモポリマーのガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)等の一般的な方法により測定することができるほか、便覧等の刊行物に記載されている数値を採用することもできる。
【0017】
上記ガラス転移温度を満たす主なノニオン性単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、メタクリル酸パルミチル等の、直鎖状、分岐鎖状又は脂環式の炭化水素基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル類;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、前記ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル類の水酸基末端がアルキルエーテル化されたもの;アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル等の単官能不飽和単量体が挙げられる。これらの単量体は、一種を単独で使用することも、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0018】
単量体Aの配合比率は、粘着性セット樹脂に対して71〜91重量%、より好ましくは75〜87重量%である。単量体Aの配合比率が71重量%未満であると粘着性が低下する傾向があり、91重量%を超えると水溶性や固定力が低下する傾向がある。
【0019】
[単量体B]
粘着性セット樹脂を構成する単量体Bは、分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体である。代表的には、一分子内に少なくとも一つのカルボキシル基(無水物を形成した形態であってもよい)を有するビニル系単量体が挙げられる。
単量体Bの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、2−メタアクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート;アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド、3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。これらの単量体は、一種を単独で使用することも、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
なかでも、粘着性セット樹脂に高い水溶性を付与できることから、単量体Bがアクリル酸及びメタクリル酸から選択される一種又は二種であることが好ましい。
【0021】
単量体Bの配合比率は、粘着性セット樹脂に対して4〜14重量%、より好ましくは5〜10重量%である。単量体Bの配合比率が4重量%未満であると水溶性が低下する傾向があり、14重量%を超えると粘着性が低下するほか、ヘアスタイルのキープ力が劣る傾向がある。
【0022】
[単量体C]
粘着性セット樹脂を構成する単量体Cは、下記式[I]:
【化2】
(式中、R及びRはH又はCHであり、Xはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)であり、nは1〜100の整数である)
で表される二官能エチレン性不飽和単量体である。
【0023】
単量体Cとしては、例えば、PEG(n=23)ジアクリレート、PEG(n=9)ジアクリレート、PEG(n=6)ジアクリレート、PEG(n=3)ジアクリレート等を挙げることができる。これらの単量体は、一種を単独で使用することも、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
単量体Cの配合比率は、粘着性セット樹脂に対して5〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%である。単量体Cの配合比率が5重量%未満であると粘着性が劣るほか、仕上がりが硬くなる傾向があり、15重量%を超えると成膜性が低下し、ヘアスタイルの固定力に劣る傾向がある。
【0025】
粘着性セット樹脂の重量平均分子量は1000〜1000000の範囲、好ましくは10000〜500000の範囲、さらに好ましくは40000〜300000の範囲である。重量平均分子量が1000以上であれば、ヘアスタイルの固定及び再整髪に優れた効果を発揮することができ、重量平均分子量が1000000以下であれば、粘着性セット樹脂を含有する毛髪化粧料がヘアスプレー等のような噴霧形態であっても良好な噴霧が可能である。
【0026】
本発明の毛髪化粧料に使用される粘着性セット樹脂は、上記単量体A、B及びCを上記比率で混合し、必要に応じて適当な溶媒中において、標準的な方法を用いて重合反応させることにより調製することができる。例えば、エタノール中で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を用い、約80℃において8時間熱重合させることによって得ることができる。得られたポリマーは適宜精製して使用することができる。
【0027】
本発明の毛髪化粧料における粘着性セット樹脂の配合量は、その製品形態に応じて変化しうるが、一般的には0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%である。0.1重量%未満であるとアレンジ力が不足する場合があり、30重量%を超えて配合すると毛髪にごわつきを生じる場合がある。
【0028】
<水>
本発明の毛髪化粧料は、上記した粘着性セット樹脂に加えて、水を含有している。本発明で用いる水は特に限定されず、具体的に示すとすれば、精製水、イオン交換水などが挙げられる。
水の配合量は、その製品形態に応じて変化しうるが、一般的には毛髪化粧料全量に対して、5〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜80重量%である。水の配合量が上記範囲外であると、使用性等が低下する場合がある。
【0029】
本発明の毛髪化粧料は、上記した高い水溶性を有する粘着性セット樹脂を使用するため、従来、樹脂を溶解するために配合されていたエタノール等のアルコール類の配合量を低減もしくは不要にすることができる。しかし、必要に応じて、毛髪化粧料の速乾性や使用性を向上させたりする等の目的で、化粧品で一般に使用されているアルコール類を配合することは差し支えない。本発明の毛髪化粧料にアルコール類を配合する場合には、アルコールによる不快感等を抑えるために、毛髪化粧料全量に対して、30重量%以下、さらには10重量%以下とするのが好ましい。
【0030】
本発明の毛髪化粧料は、上記の通りエタノール等のアルコール類の配合量を低減もしくは不要とすることができるため、アルコール類と併用すると効果が損なわれるようなアルコール類と相性の悪い原料を使用する場合に特に適している。
【0031】
さらに、本発明の毛髪化粧料は、糖、糖アルコール、及びEO/PO誘導体から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、これらを配合することにより、アレンジ力を更に向上させることができる。
【0032】
本発明で用いられる糖としては、単糖類及びオリゴ糖類が挙げられる。具体的には、単糖類としては、三炭糖(例えば、D−グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等);四炭糖(例えば、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−トレオース等);五炭糖(例えば、L−アラビノース、D−キシロース、L−リキソース、D−アラビノース、D−リボース、D−リブロース、D−キシルロース、L−キシルロース等);六炭糖(例えば、D−グルコース、D−タロース、D−ブシコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ガラクトース、L−マンノース、D−タガトース等);七炭糖(例えば、アルドヘプトース、ヘプロース等);八炭糖(例えば、オクツロース等);デオキシ糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース、6−デオキシ−L−ガラクトース、6−デオキシ−L−マンノース等);アミノ糖(例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等);ウロン酸(例えば、D−グルクロン酸、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等)等が挙げられる。また、これらの誘導体(POE・POP付加、アルキル基付加、カチオン化、アニオン化、シリル化類)などが挙げられる。
【0033】
オリゴ糖類としては、ショ糖、マルトース、セロビオース、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類等が挙げられる。また、これらの誘導体(POE・POP付加、アルキル基付加、カチオン化、アニオン化、シリル化類)などが挙げられる。
【0034】
糖アルコールとしては、例えば、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、ソルビトール、マルチトール、イノシトール等が挙げられる。また、これらの誘導体(POE及び又はPOP付加物、アルキル基付加物、カチオン化物、アニオン化物、シリル化物)なども用いることができる。
本発明で用いられる糖及び糖アルコールは限定されないが、それらの中でも糖アルコール、特にマルチトール、ソルビトールが最適である。
【0035】
本発明の毛髪化粧料における糖及び/又は糖アルコールの配合量は、一般的には0.1〜20重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは3〜10重量%である。0.1重量%未満であるとアレンジ力(再整髪力)の向上効果が十分でない場合があり、30重量%を超えて配合するとべたつきを生じる場合がある。
【0036】
本発明で用いられるEO/PO誘導体は、下記の整髪油分及びポリアルキレングリコール類を包含する化合物類である。
整髪油分とは、一価〜四価のアルコール、または一価〜三価のカルボン酸のEO/PO付加体を意味する。市販のものを利用することができ、例えば、ユニルーブ50 MB 168、ユニルーブMB370、ベルタモール P−700、ベルタモールDG−25、トリオールG−40、サボンドールSGP−7、サボンドールGP−9(以上日油株式会社)エステモール50(日清オイリオグループ株式会社)などを挙げることができる。
【0037】
ポリアルキレングリコール類とは、ポリアルキレングリコール、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)の付加重合体を意味する。市販のものを利用することができ、例えば、EO付加重合体:PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1540、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG11000、PEG20000(日油株式会社または東邦化学工業株式会社)PO付加重合体:ユニオールD−700、ユニオールD−1000、ユニオールD−1200、ユニオールD−2000(以上日油株式会社)などを挙げることができる。
本発明で用いられるポリアルキレングリコール類は限定されないが、それらの中でもポリエチレングリコールが最適である。
【0038】
本発明の毛髪化粧料におけるEO/PO誘導体の配合量は、一般的には0.1〜20重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは3〜10重量%である。0.1重量%未満であるとアレンジ力(再整髪力)の向上効果が十分でない場合があり、30重量%を超えて配合するとべたつきを生じる場合がある。
【0039】
本発明の毛髪化粧料は、ヘアリキッド、ヘアフォーム、ヘアムース、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアジェル、ヘアワックス等の様々な態様で提供することができる。
【0040】
本発明の毛髪化粧料は、例えば、その形態に応じて、従来から毛髪化粧料に使用されている他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。例えば、界面活性剤、コンディショニング剤、増粘剤、粘度調整剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、粉末成分、抗フケ用薬剤、育毛薬剤、pH調整剤、色素、香料等の1種または2種以上を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合できる。
【実施例】
【0041】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り重量%を示す。
【0042】
(製造例及び比較製造例)
下記表1に示した単量体組成で重合を行い、本発明の粘着性セット樹脂(製造例1〜4)及び本発明の要件を満たさない粘着性セット樹脂(比較製造例1〜5)を調製した。
具体的には、単量体類100部を混合した混合物をあらかじめ用意し、この混合物の入った滴下漏斗、還流冷却器、温度計、窒素置換用管および、撹拌機が取り付けられた容量1Lの五つ口フラスコに、エタノール100部を仕込み、窒素気流下、昇温し、還流状態(約80℃)になったところで、このエタノール中に重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)1部を添加し、上記混合物を2時間連続して滴下した。その後、還流状態にて、8時間放置し重合反応を進行させた。次に五つ口フラスコ中の溶液から溶媒を留去および、エタノールを加えることでこの溶液の溶媒含有量を調整し、固形分濃度50%の毛髪化粧料基剤の溶液を得た。
【0043】
【表1】
【0044】
(実施例及び比較例)
上記製造例及び比較製造例の樹脂を用いて試料を調製し、当該試料を使用したときの溶解性(透明性)、固定力、粘着力、アレンジ力、再整髪力、髪のぱさつき、及び毛束感について評価した。各特性の評価方法及び評価基準は以下の通りである。
【0045】
1.溶解性(透明性)
水95重量%に上記製造例及び比較製造例の樹脂5重量%を混合し、常温にてスターラーで5分間攪拌した後、混合液の透明性を目視にて評価した。
【0046】
<評価基準>
◎:かなり透明である
○:やや透明である
△:やや濁りがある
×:かなり濁りがある
【0047】
2.固定力
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、毛髪上の固さを官能試験にて評価した。
【0048】
<評価基準>
◎:かなり固さを感じる
○:やや固さを感じる
△:やや固さを感じない
×:固さを感じない
【0049】
3.粘着力
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、毛髪上の粘着力を官能試験にて評価した。
【0050】
<評価基準>
◎:かなり粘着を感じる
○:やや粘着を感じる
△:やや粘着を感じない
×:粘着を感じない
【0051】
4.アレンジ力
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、毛髪をつまんでねじって整髪する際のアレンジのしやすさを官能試験にて評価した。
【0052】
<評価基準>
◎:かなりアレンジしやすい
○:ややアレンジしやすい
△:ややアレンジしにくい
×:アレンジしにくい
【0053】
5.再整髪力
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、塗布直後に整髪を行い、その後1時間後に再度整髪した際のしやすさ(再整髪力)を官能試験にて評価した。
【0054】
<評価基準>
◎:かなり再整髪力がある
○:やや再整髪力がある
△:やや再整髪力がない
×:再整髪力がない
【0055】
6.ぱさつきのなさ
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、毛髪上のぱさつきのなさを官能試験にて評価した。
【0056】
<評価基準>
◎:かなりぱさつかない
○:ややぱさつかない
△:ややぱさつく
×:ぱさつく
【0057】
7.毛束感
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm、質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、つまんでねじって整髪した際の毛束のできやすさを官能試験にて評価した。
【0058】
<評価基準>
◎:かなり毛束ができやすい
○:やや毛束ができやすい
△:やや毛束ができにくい
×:毛束ができにくい
【0059】
下記表2に掲げる組成の試料を調製した。試料は、水及びエタノールの混合液に各ポリマーを加えて攪拌することにより調製した。次いで、前記の基準に従って各試料の特性を評価した。それらの結果を表2に併せて示す。
【表2】
【0060】
表2に示した結果から明らかなように、ガラス転移温度が300K(27℃)を超えるノニオン性単官能エチレン性不飽和単量体を用いて得られた粘着性セット樹脂を配合した場合(比較例1)、単量体Bが14重量%を超える場合(比較例2)、単量体Cが5〜15重量%の範囲外である場合(比較例4及び5)には、粘着力、アレンジ力、再整髪性、ぱさつき、毛束感がいずれも劣る結果となった。また、単量体Cが15重量%を超える比較例4では、さらに固定力も不十分であった。一方、単量体Bが4重量%未満の場合(比較例3)には、粘着力、アレンジ力、再整髪性、ぱさつき、毛束感は十分であるものの、溶解性と固定力が劣っていた。これに対し、本発明の粘着性セット樹脂を配合した実施例1〜4は、全ての評価項目において優れた結果を示した。