(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気浮上式コンベヤベルトにおいて、プーリから完全にトラフするまでのトラフ変換部、ベルトの往路の始端部におけるシュートから被搬送物が投下される部分等では、下面カバーゴム層がベルト支持体に接触することによりベルトの駆動抵抗が増大する。そのため、下面カバーゴム層は低粘着性、低摩擦性を有する必要がある。
また、同時に空気浮上式コンベヤベルトを長寿命化させるために、下面カバーゴム層は耐摩耗性を有する必要がある。
しかし、従来の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物を用いて製造された下面カバーゴム層は、粘着性、摩擦性が高く、耐摩耗性が低いことを本願発明者は見出した。
そこで、本発明は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性に優れる空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物及びこれを用いる空気浮上式コンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとを95/5〜70/30の質量比(SBR/BR)で含むゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック70質量部以上を含有するゴム組成物が、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性に優れる、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物及びこれを用いる空気浮上式コンベヤベルトを提供する。
1. スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとを95/5〜70/30の質量比(SBR/BR)で含むゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック70質量部以上を含有する、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
2. 前記カーボンブラックの24M4DBP吸収量が90cm
3/100g以上である上記1に記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
3. 前記カーボンブラックの量が、110質量部以下である上記1又は2に記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
4. 前記カーボンブラックのN
2SAが80m
2/g以上である上記1〜3のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
5. 前記ゴム成分が更に天然ゴムを含む上記1〜4のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
6. 前記ゴム成分がスチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとからなる上記1〜4のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
7. 上記1〜6のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物を用いて製造された下面カバーゴム層を有する空気浮上式コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性に優れる。
本発明の空気浮上式コンベヤベルトは、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、
スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとを95/5〜70/30の質量比(SBR/BR)で含むゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック70質量部以上を含有する、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物である。
本発明のゴム組成物は低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性に優れる。このように低粘着性・低摩擦性が改善できることから、ベルトの駆動抵抗を下げることが可能となり、ベルトラインの省電力化が可能となる。さらに、摩耗性が改善できることから、コンベヤベルトの長寿命化が可能となる。
【0010】
ゴム成分について以下に説明する。本発明のゴム組成物に含有されるゴム成分は、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとを含む他は特に制限されない。
スチレンブタジエンゴム(SBR)は、スチレンとブタジエンとの共重合体であれば特に制限されない。
SBRの重量平均分子量は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、20万〜100万であるのが好ましく、30万〜80万であるのがより好ましい。SBRの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定された。
SBRのスチレン量は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、SBRの15〜35質量%であるのが好ましく、18〜30質量%であるのがより好ましい。
【0011】
ブタジエンゴム(BR)は特に制限されない。
ブタジエンゴムの重量平均分子量は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、20万〜90万であるのが好ましく、30万〜70万であるのがより好ましい。BRの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定された。
【0012】
本発明において、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとの質量比(SBR/BR)は、95/5〜70/30である。低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、90未満/10を超えるであるのが好ましく、89/11〜75/25であるのがより好ましく、85/15〜80/20であるのがさらに好ましい。
スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとの合計量はゴム成分中の90〜100質量%とすることができる。
【0013】
ゴム成分は、ゴム強度に優れるという観点から、更に天然ゴムを含むのが好ましい態様の1つとして挙げられる。天然ゴムは特に制限されない。
天然ゴムの量は、ゴム成分100質量部中、10質量部以下とすることができ、0〜10質量部であるのが好ましい。
【0014】
ゴム成分は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムとからなるものであるのが好ましい。
ゴム成分はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0015】
カーボンブラックについて以下に説明する。
本発明のゴム組成物に含有されるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0016】
カーボンブラックの24M4DBP吸収量は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、90cm
3/100g以上であるのが好ましく、95cm
3/100g以上であるのがより好ましい。24M4DBP吸油量は、JIS K6217−4に準拠して求められるものとする。
【0017】
カーボンブラックのN
2SA(窒素吸着比表面積)は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、80m
2/g以上であるのが好ましく、110m
2/g以上であるのがより好ましい。カーボンブラックのN
2SAは、JIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」に従い測定した値である。
【0018】
本発明において、カーボンブラックの量はゴム成分100質量部に対して70質量部以上である。カーボンブラックの量は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、80質量部を超えるのが好ましく、90質量部を超えるのがより好ましく、95質量部以上であるのがさらに好ましく、96質量部以上であるのが特に好ましい。
カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、カーボンブラックの量の上限はゴム成分100質量部に対して120質量部以下とすることができる。カーボンブラックの量は、低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性により優れ、ゴム組成物の粘度が低く作業性に優れるという観点から、110質量部以下であるのが好ましく、100質量部以下であるのがより好ましい。
【0019】
本発明のゴム組成物は、上記各成分以外に、必要に応じて、目的の範囲内で、更に添加剤を含有することができる。添加剤としては例えば、加硫剤(例えば硫黄)、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、配合剤が挙げられる。配合剤としては、例えば、カーボンブラック以外の補強剤(充填剤)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー(充填剤)、加工助剤等が挙げられる。添加剤は、の配合量は特に制限されず、任意に選択できる。
【0020】
本発明のゴム組成物の製造は、ゴム成分、カーボンブラック、必要に応じて使用できる配合剤を、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練し、ついで、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤もしくは加硫遅延剤を加え混練ロール機等で混練して行うことができる。
本発明のゴム組成物は、通常行われる条件で加硫することができる。具体的には、例えば、温度140〜150℃程度の条件下で加熱、加圧することにより行われる。
【0021】
本発明のゴム組成物の用途としては、例えば、空気浮上式コンベヤベルトが挙げられる。
【0022】
本発明の空気浮上式コンベヤベルトについて以下に説明する。
本発明の空気浮上式コンベヤベルト(本発明のコンベヤベルト)は、本発明の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物を用いて製造された下面カバーゴム層を有する空気浮上式コンベヤベルトである。
本発明のコンベヤベルトに使用されるゴム組成物は本発明の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物であれば特に制限されない。本発明のコンベヤベルトは、当該コンベヤベルトの下面カバーゴム層が本発明のゴム組成物によって製造されているので、低粘着性、低摩擦性に優れ駆動抵抗が低く、耐摩耗性に優れ長寿命である。
【0023】
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層を有する空気浮上式コンベヤベルトであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、本発明の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物によって形成されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明のコンベヤベルトを添付の図面を用いて以下に説明する。本発明のコンベヤベルトは図面に限定されない。
【0024】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、1はコンベヤベルトを示す。コンベヤベルト1は、補強層3を中心層とし、その両側に上面カバーゴム層2と下面カバーゴム層4が設けられており、上面カバーゴム層2は外層11と内層12の2層から構成され、下面カバーゴム層4は外層16と内層15の2層から構成されている。コンベヤベルト1は運搬物搬送面5を有する。
【0025】
本発明において、下面カバーゴム層の外層と内層は、それぞれ互いに異なるゴム組成物を用いて形成されていてもよい。上面カバーゴム層も同様である。
下面カバーゴム層を構成する層の数は、1以上であればよい。2以上とすることができる。上面カバーゴム層も同様である。
上面カバーゴム層の運搬物搬送面(
図1における5)を構成する外層は、耐熱性、耐摩耗性、耐油性等に優れたゴム組成物から形成されるのが望ましいため、上面カバーゴム層は2層以上から構成されていることが好ましい。上面カバーゴム層を製造するために使用するゴム組成物としては例えば従来公知のものが挙げられる。
下面カバーゴム層の裏面表面を構成する外層(
図1における16)は本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成されることができ、また、下面カバーゴム層の内層は製造コストや補強層との接着性が重視されることから他のゴム組成物を用いて形成することができる。下面カバーゴム層は2層以上から構成されていることが好ましい。下面カバーゴム層の内層を製造するために使用するゴム組成物としては例えば従来公知のものが挙げられる。
【0026】
補強層の芯体は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができ、その具体例としては、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられ、これらを一種単独で用いてもよく、2種以上のものを積層して用いてもよい。補強層の形状は特に限定されず、例えば、シート状(
図1)、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。
【0027】
本発明のコンベヤベルトにおいて、下面カバーゴム層の厚さが5〜20mmであるのが好ましく、6〜15mmであるのがより好ましい。ここで、下面カバーゴム層の厚さは、下面カバーゴム層が内層および外層で構成されている場合は、これらの層の合計の層厚をいう。
【0028】
本発明のコンベヤベルトの製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。具体的には、まず、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて各カバーゴム層用の原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、150〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が好適に例示される。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す組成成分(質量部)で用いてこれらを均一に混合し、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物(ゴム組成物)を製造した。
<ゴム組成物の加硫>
上記のとおり製造されたゴム組成物を、148℃、30分間加熱、加圧して、加硫し、加硫ゴムを製造した。
【0030】
<ゴム組成物の評価>
上記のとおり製造された、ゴム組成物又は加硫ゴムについて、以下の評価をした。結果を下記第1表に示す。
・動摩擦係数
上記のとおり製造された加硫ゴムを縦10mm×横10mm×厚さ10mmの大きさに切断して加硫ゴム試験片を製造した。加硫ゴム試験片を円盤状の鉄板に置き、当該加硫ゴム試験片に4.90Nの鉛直荷重をかけて加硫ゴム試験片と鉄板とを圧着させた状態で、鉄板を300mm/分の速度で回転させ、そのときにゴム試験片にかかる水平荷重を測定した。
そして、かけられた荷重と測定された水平荷重を下記式に当てはめて動摩擦係数を算出した。この値が小さいほど(0.7以下)低摩擦性に優れ駆動抵抗を減少させることができる。
動摩擦係数=水平荷重/鉛直荷重
【0031】
・粘着性
上記水平荷重の測定後、加硫ゴム試験片に荷重計をセットし、加硫ゴム試験片を上方に持ち上げることで、加硫ゴム試験片を鉄板からはがす際の剥離強度を測定した。
剥離強度が小さいほど(0.6kgf以下)低粘着性に優れ駆動抵抗を減少させることができる。
【0032】
・DIN摩耗
上記のとおり製造された加硫ゴムのDIN摩耗試験をJIS−K6264−2:2005に準じて行った。室温でDIN摩耗試験を行った際の摩耗量(mm
3)を測定した。
摩耗量が150mm
3以下であったものは耐摩耗性に優れているといえる。
【0033】
・最低ムーニー粘度(Vm)
JIS K 6300−1:2001に記載の方法に準じて、L型ローターを用い、測定温度125℃の測定条件で、ローターのシャフトにかかるトルクを測定しムーニー単位(M)で記録した(この値がムーニー粘度である)。ムーニー粘度−時間曲線を作り、この曲線における最低値を、125℃での最低ムーニー粘度(Vm)とした。
Vmが80以下である場合、加工性に優れる。
【0034】
【表1】
【0035】
第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム、RSS#3
・SBR:スチレンブタジエンゴム、Nipol 1502(日本ゼオン社製)、重量平均分子量50万、スチレン量23.5質量%
・BR:ブタジエンゴム、Nipol BR1220(日本ゼオン社製)、重量平均分子量50万
・カーボンブラック1:ISAF(ショウブラックN220、キャボットジャパン社製)
・カーボンブラック2:SAF(ショウブラックS118、キャボットジャパン社製)
・カーボンブラック3:SAF(ニテロン#415UD、新日化カーボン社製)
・オイル:A-OMIX、三共油化工業社製
・硫黄:油処理硫黄、細井化学工業社製
・加硫促進剤:テトラメチルチウラム・モノスルフィド(サンセラーTS、三新化学工業社製)
第1表において、カーボンブラック1〜3の24M4DBP吸収量の単位はcm
3/100gであり、N
2SAの単位はm
2/gである。
【0036】
第1表に示す結果から明らかなように、ブタジエンゴムを含まない比較例1、2は耐摩耗性が悪かった。ブタジエンゴムを過剰に含む比較例3は粘着性が高かった。カーボンブラックの量が少ない比較例4は摩擦性が高く、耐摩耗性が悪かった。
これに対して実施例1〜
7、参考例1
〜6は低粘着性、低摩擦性、耐摩耗性に優れる。
またカーボンブラックの量がゴム成分100質量部に対して110質量部未満である場合、最低ムーニー粘度が適正な範囲となり加工性に優れる。