特許第6282417号(P6282417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282417可変光学電子式眼科用レンズのための神経筋検知
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282417
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】可変光学電子式眼科用レンズのための神経筋検知
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20180208BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G02C7/04
   G02C7/06
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-148244(P2013-148244)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-21500(P2014-21500A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】13/552,046
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ランドール・ブラクストン・ピュー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ビー・オッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ダニエル・リオール
(72)【発明者】
【氏名】アダム・トナー
【審査官】 川俣 洋史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/020184(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/051225(WO,A1)
【文献】 国際公開第2000/025662(WO,A1)
【文献】 米国特許第06051720(US,A)
【文献】 特表2009−504291(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/006691(WO,A1)
【文献】 特開2012−130712(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/004094(WO,A1)
【文献】 特表2012−507748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0122530(US,A1)
【文献】 特表2002−528212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
G02C 7/06
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ゾーン及び周辺ゾーンを有するウェアラブルな眼科用レンズと、
前記ウェアラブルな眼科用レンズの前記光学ゾーンに組み込まれる可変光学要素であって、前記ウェアラブルな眼科用レンズの屈折力を変化させるように構成された、可変光学要素と、
前記ウェアラブルな眼科用レンズの前記周辺ゾーンに組み込まれる電子要素であって、遠近調節のプロセスにともなう毛様体筋の運動を検出するための検知システムを含み、該検知システムは前記可変光学要素を制御するための活動を生成するように構成されている、電子要素と、
を含み、
前記検知システムが、接触式センサ、電源、信号プロセッサ、コントローラ、及びアクチュエータを含み、
前記接触式センサが、眼の涙膜と直接的な電気的接触を形成することにより、毛様体筋によって発生された電気的信号を、当該涙膜を通して検出するように構成された、1又は2以上の接点を含む、
電子式眼科用レンズ。
【請求項2】
前記ウェアラブルな眼科用レンズがコンタクトレンズを含む、請求項1に記載の電子式眼科用レンズ。
【請求項3】
前記コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズを含む、請求項2に記載の電子式眼科用レンズ。
【請求項4】
前記電源が電池を含む、請求項1に記載の電子式眼科用レンズ。
【請求項5】
前記信号プロセッサがデジタル信号プロセッサを含む、請求項4に記載の電子式眼科用レンズ。
【請求項6】
前記コントローラがマイクロプロセッサを含む、請求項5に記載の電子式眼科用レンズ。
【請求項7】
前記アクチュエータが前記可変光学要素と機能的に関連付けられている、請求項6に記載の電子式眼科用レンズ。
【請求項8】
前記検知システムが、前記1又は2以上の接点と機能的に関連付けられた、電圧、電流及びインピーダンスの少なくとも1つを検出するための計器、及びアナログデジタル変換器を更に含む、請求項7に記載の電子式眼科用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛様体筋の信号を検出するためのセンサ、並びに付属するハードウェア及びソフトウェアを有する可変光学電動式又は電子式眼科用レンズに関し、より詳細には、個人の毛様体筋の信号を検出し、可変光学電動式又は電子式眼科用レンズを作動及び制御するためのセンサ、並びに付属するハードウェア及びソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型化が進むのにともなって、様々な用途においてウェアラブル又は埋め込み型のマイクロ電子装置が創出される可能性が益々高まっている。こうした用途としては、体内の化学プロセスの諸側面の観測、様々な機構(自動的に、又は測定値に応じて、又は外部制御信号に応じてなど)による調節された量の薬物又は治療薬の投与、及び臓器又は組織の性能の強化などが挙げられる。こうした装置の例としては、グルコース注入ポンプ、ペースメーカー、除細動器、補助人工心臓及び神経刺激装置が挙げられる。新規な、特に有用な応用分野の1つに、ウェアラブルな眼科用レンズ及びコンタクトレンズがある。例えば、ウェアラブルレンズに、電子的に調節可能な焦点を有するレンズアセンブリを組み込むことで眼の性能を強化又は向上させることができる。別の例では、調節可能な焦点を有するか又は有さないウェアラブルコンタクトレンズに前角膜(涙膜)中の特定の化学物質の濃度を検出するための電子センサを組み込むことができる。レンズアセンブリにおける埋め込み型の電子部品の使用により、電子部品に電力供給及び/又は再電圧印加する方法として、電子部品同士を相互接続するため、内部及び外部の検知及び/又は観測を行うため、並びに電子部品及びレンズの全体的機能の制御を行うために、電子部品と通信する潜在的要求が生じる。
【0003】
人の眼は、数百万の色を識別する能力、光条件の変化に対して容易に順応し、高速のインターネット接続を上回る速度で信号又は情報を脳に伝達する能力を有する。コンタクトレンズ及び眼内レンズなどのレンズは現在、近視(近眼)、遠視(遠眼)、老眼、及び乱視などの視力障害を補正する目的で利用されている。しかしながら、更なる要素を組み込んだ、適切に設計されたレンズを使用することで、視力障害を補正するのみばかりか、視力の向上を図ることができる。
【0004】
従来のコンタクトレンズは、上記に簡単に述べた様々な視力の問題を解消するための特定の形状を有するポリマー構造である。機能性の向上を図るため、これらのポリマー構造には各種の回路及び要素を組み込む必要がある。例えば、制御回路、マイクロプロセッサ、通信装置、電力供給装置、センサ、アクチュエータ、発光ダイオード、及び小型アンテナを特別に設計された光電子要素を介してコンタクトレンズに組み込むことで、視力を補正するだけでなく、視力を向上させ、更に本明細書に述べられるような更なる機能性を与えることができる。電子式及び/又は電動式コンタクトレンズは、ズームイン及びズームアウト機能により、又は単純にレンズの屈折能力を変化させることにより、視力を向上させるように設計することができる。電子式及び/又は電動式コンタクトレンズは、色及び解像度を向上させ、文字情報を表示し、会話をリアルタイムで字幕に翻訳し、ナビゲーションシステムからの視覚的キューを与え、画像処理及びインターネットアクセスを与えるように設計することができる。こうしたレンズは装用者が低光量条件下でも見えるように設計することもできる。適切に設計された電子部品及び/又はレンズ上の電子機器の適切な配置により、可変焦点光学レンズを用いることなく、例えば網膜に画像を投影することが可能となり、新規な画像ディスプレイを提供し、更には目覚ましアラートを提供することも可能となる。これらの機能のいずれか若しくは同様の機能に代わって、又はこれに加えて、コンタクトレンズに装用者のバイオマーカー及び健康指標を非侵襲的に監視するための要素を組み込むこともできる。例えば、レンズに内蔵されたセンサによって涙膜の成分を分析することにより、糖尿病患者が血液を採取する必要なくして、血糖値を監視することが可能となる可能性がある。更に、適切に構成されたレンズには、コレステロール、ナトリウム及びカリウムの濃度、並びに他の生物学的マーカーを監視するためのセンサを組み込むことができる。これを無線データ送信器と組み合わせることにより、患者が検査機関に赴いて血液を採取するために時間を浪費する必要なく、医師が患者の血液成分をほぼ即時に把握することが可能となり得る。更に、レンズに内蔵されたセンサを利用して眼に入射する光を検出することにより、周辺光条件を補償したり、又は瞬きのパターンを調べることができる。
【0005】
装置の適当な組み合わせにより、潜在的に無制限の機能性が提供され得るが、光学等級のポリマーの小片上に余分な要素を組み込むには多くの困難を伴う。一般的に、こうした要素をレンズ上に直接製造すること、及び非平面状の表面に平面状の装置を実装して相互に接続することは、多くの理由により困難である。一定の縮尺で製造することもまた困難である。レンズ上又はレンズ内に配置される要素は、眼の液体環境からこうした要素を保護する一方で、小型化され、わずか1.5平方センチメートルの透明なポリマー上に集積化される必要がある。更なる要素によって厚みが増したコンタクトレンズを装用者にとって快適かつ安全なものとすることにも困難がともなう。
【0006】
コンタクトレンズなどの眼科用装置の面積及び体積の制約、並びに装置が使用される環境を考慮すると、装置を物理的に実現するためには、その大部分が光学プラスチックからなる非平面状の表面に多数の電子要素を実装して相互接続することを含む、多くの問題を克服しなければならない。したがって、機械的かつ電気的な耐久性を有する電子コンタクトレンズを提供することが求められている。
【0007】
これらのレンズは電動式レンズであることから、電子部品を動作させるためのエネルギー又はより具体的には消費電流が、眼科用レンズの規模での電池技術を考慮した場合には問題となる。通常の消費電流に加えて、この種の電動式装置又はシステムでは一般的に、潜在的に広範囲の動作パラメータにわたって動作を保証するための待機予備電流、正確な電圧制御及びスイッチング性能、並びに、例えば数年にわたり潜在的にアイドリング状態に維持された後、1回の充電で最大で18時間のバースト消費が求められる。したがって、必要とされる電力を与える一方で、低コスト性、長期の信頼性の高い動作、安全性、及びサイズについて最適化されたシステムが求められている。
【0008】
更に、電動式レンズに付随する機能の複雑性、及び電動式レンズを構成するすべての要素間の高度な相互作用のため、電動式眼科用レンズを構成する電子部品及び光学要素の全体的な動作を調整及び制御することが求められる。したがって、安全、低コストで信頼性が高く、電力消費速度が低く、かつ眼科用レンズに組み込むための拡張性を有するすべての他の要素の動作を制御するためのシステムが求められている。
【0009】
それぞれの眼は、水晶体の周囲又はこれに近接して位置する毛様体筋を有している。小帯が毛様体筋に付着し、更に水晶体に付着している。毛様体筋は、水晶体の形状を変化させることによって異なる距離にある物体を見るために遠近調節を制御する。例えば、短い焦点距離を要する近くの物体に焦点を合わせる場合、毛様体筋が収縮して小帯を緩めると、水晶体がより丸みを帯びてより圧縮される。これに対して、遠くの物体に焦点を合わせ、長い焦点距離が必要とされる場合、毛様体筋は弛緩し、小帯が水晶体の縁を引っ張って水晶体をより薄く、より平たくする。したがって、毛様体筋及び毛様体筋から誘導される電気的信号を、電動式眼科用レンズを作動及び制御するための手段として利用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電動式又は電子式眼科用レンズは、電動式又は電子式眼科用レンズを使用して人から検出される異なる毛様体筋信号を説明しなければならない場合がある。より具体的には、電動式レンズは、異なる毛様体筋の信号間で、また、他の信号、ノイズ及び干渉の1又は2以上から、検出し、区別しなければならない。したがって、毛様体筋の信号を検出し、この信号を利用して、毛様体筋の収縮又は弛緩などの、センサによって検出される毛様体筋の信号の種類に基づいて電子又は電動式眼科用レンズを作動するための手段及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく神経筋センサは、装用者からの直接的なフィードバック信号に基づいて、電動式眼科用レンズの制御に関連する制約を克服するものである。
【0012】
一態様によれば、本発明は電子式眼科用レンズに関する。電子式眼科用レンズは、光学ゾーン及び周辺ゾーンを有するウェアラブルな眼科用レンズと、ウェアラブルな眼科用レンズの光学ゾーンに組み込まれる可変光学要素であって、ウェアラブルな眼科用レンズの屈折力を変化させるように構成された、可変光学要素と、ウェアラブルな眼科用レンズの周辺ゾーンに組み込まれる電子要素であって、遠近調節のプロセスにともなう毛様体筋の運動を検出するための検知システムを含み、該検知システムは可変光学要素を制御するための活動を生成するように構成されている、電子要素と、を含む。
【0013】
本発明は、可変焦点光学要素の作動を含む任意の数の機能を行う電子システムを有する電動式コンタクトレンズに関する。電子システムは、1又は2以上の電池又は他の電源、電力管理回路、1又は2以上のセンサ、クロック発生回路、制御アルゴニズム及び回路、並びにレンズ駆動回路を含む。
【0014】
電動式眼科用レンズの制御は、携帯型遠隔装置などの、レンズと無線で通信する手動式の外部の装置によって行うことができる。また、電動式眼科用レンズの制御は、装用者からの直接的なフィードバック又は制御信号によって行うこともできる。例えば、レンズに内蔵されたセンサによって、毛様体筋の運動、すなわち収縮及び弛緩を示す信号を検知することができる。これらの信号に基づいて、電動式眼科用レンズは、例えばその屈折力などの状態を変化させることによって近くの物体又は遠くの物体に焦点を合わせることができる。
【0015】
毛様体筋は、水晶体の形状を調節する構造である。水晶体は、水晶体嚢として知られる外膜内に収容されており、水晶体嚢は毛様体筋と繋がった小帯として知られる繊維によって懸吊されている。毛様体筋は、小帯を引っ張るか又は弛緩させることにより、水晶体の形状及び焦点を合わせる能力を変化させて進入又は入射する光を屈折させる。虹彩すなわち眼の着色部分は、眼の前眼房と後眼房と間の隔壁であり、瞳孔の大きさを調節して眼に入射する光の量を制御する2つの筋肉で構成されている。散大筋は瞳孔を開き、括約筋は瞳孔を閉じる。眼はまた、眼又は眼球の全体の運動を制御する6つの外眼筋を有している。外眼筋並びに/又は散大筋及び括約筋を検知することにより、電動式又は電子式眼科用レンズに他の機能又は更なる機能を与えることができる。しかしながら、本発明では、干渉、ノイズ及び他の筋肉の信号をフィルター除去する一方で毛様体筋の信号は増幅するように回路が好ましく設計されている。
【0016】
その構成要素をコンタクトレンズに埋め込むことができるセンサは、異なる眼の筋肉の信号の特性を検出することができる。例えば、異なる信号には、眼が上下に動かされる、近くに焦点を合わせる、及び/又は、明から暗へ、暗から明へ、及びそれらの間のすべての光条件などの周囲の光のレベルの変化に適応する場合の1又は2以上が含まれ得る。毛様体筋は、水晶体の形状を制御することのみによって近く又は遠くの物体に眼の焦点を合わせる(すなわち遠近調節)。本発明に基づくセンサは、個人が字を読んでいる、遠くに焦点を合わせる、又は蛍光灯照明の室内にいる場合などの特定のサンプル条件下で毛様体筋によって発生されるか又は発信される振幅、時間領域応答及び周波数などの様々な信号を追跡することに依存する。これらの毛様体筋の信号のサンプルは記録及び追跡することができ、その場合、信号のそれぞれの異なる波形及び周波数を1又は2以上の他の信号、ノイズ、及び干渉から区別することができる。上記に述べたように、本発明の回路は、毛様体筋の信号を検出、分離及び/又はフィルタリングし、増幅するように設計されることが好ましい。認識された毛様体筋の信号をセンサが検出すると、センサは例えばレンズの屈折力を変化させるといった、電子回路の活動を引き起こす。別の実施形態では、他の筋肉の信号を用いて、眼がそれ自体ではもはや行うことができない他の眼の機能を強化又は実施することができる。更に、センサは、本明細書において詳しく説明するような毛様体筋の活動を検知するのに適した任意の手段を含み得る。
【0017】
本発明のセンサ及び付属する回路は、異なる毛様体筋の信号を互いから区別できるものであることが好ましく、毛様体筋の信号を他の信号、ノイズ、及び干渉から区別することができるものであることが好ましい。本発明のセンサ及び付属する回路は、可変光学電子コンタクトレンズによって毛様体筋の信号を検出するための、利便性が高く、安全、低コストで信頼性の高い手段及び方法を提供する。こうしたコンタクトレンズはまた、電力消費速度も低く、眼科用レンズに組み込むための拡張性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の前述の特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、以下の付属の図面に示される本発明の好ましい実施態様のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
図1】本発明の特定の実施形態に基づく非接触式センサを有する代表的なコンタクトレンズ。
図2】本発明の特定の実施形態に基づく接触式センサを有する代表的なコンタクトレンズ。
図3】本発明に基づく測定可能な電気的パラメータと眼の望ましい焦点距離との間の相関を示すグラフ。
図4】本発明に基づく、センサ回路を含む電子要素及び可変光学要素を有する眼科用レンズの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従来のコンタクトレンズは、上記に簡単に述べた様々な視力の問題を解消するための特定の形状を有するポリマー構造である。機能性の向上を図るためには、これらのポリマー構造に様々な回路及び要素を組み込む必要がある。例えば、制御回路、マイクロプロセッサ、通信装置、電力供給装置、センサ、アクチュエータ、発光ダイオード、及び小型アンテナを特別に設計された光電子要素を介してコンタクトレンズに組み込むことで、視力を補正するだけでなく、視力を向上させ、更に本明細書に述べられるような更なる機能性を与えることができる。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、ズームイン及びズームアウト機能により、又は単純にレンズの屈折能力を改変することによって視力を向上させるように設計することができる。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、色及び解像度を向上させ、文字情報を表示し、会話をリアルタイムで字幕に翻訳し、ナビゲーションシステムからの視覚的キューを与え、画像処理及びインターネットアクセスを与えるように設計することができる。こうしたレンズは装用者が低光量条件下でも見えるように設計することもできる。適切に設計された電子部品及び/又はレンズ上の電子機器の適切な配置により、可変焦点光学レンズを用いることなく例えば網膜に画像を投影することが可能となり、新規な画像ディスプレイを提供し、更には目覚ましアラートを提供することも可能となる。これらの機能のいずれか若しくは同様の機能に代えるか、又はこれに加えて、コンタクトレンズに装用者のバイオマーカー及び健康指標を非侵襲的に監視するための要素を組み込むこともできる。例えば、レンズに組み込まれたセンサによって涙膜の成分を分析することにより、糖尿病患者が血液を採取する必要なく、血糖値を監視することが可能となる可能性がある。更に、適宜構成されたレンズには、コレステロール、ナトリウム及びカリウムの濃度、並びに他の生物学的マーカーを監視するためのセンサを組み込むことができる。これを無線データ送信器と組み合わせることにより、医師が患者の血液成分をほぼ即時に把握することが可能となり、患者が検査機関に赴いて血液を採取するために時間を浪費する必要がなくなる。更に、レンズに内蔵されたセンサを利用して眼の毛様体筋からの信号を検出し、眼がどのような種類の動作又は運動を行おうとしているかを決定し、電子レンズを作動するためにこれを用いることができる。
【0020】
本発明の電動式又は電子コンタクトレンズは、上述した視力障害の内の1又は2以上を有する患者の視力を補正かつ/又は向上させるか、又は何らかの方法で有用な眼科的機能を行ううえで必要な要素を有する。更に、本発明の電動式又は電子コンタクトレンズは、単純に通常の視力を向上させるか、又は上述した広範な機能を与える目的で使用することもできる。電子コンタクトレンズは、コンタクトレンズに埋め込まれるか、又は任意の適当な機能性を与えるためにレンズなしで電子部品を単純に埋め込んだ、組み立てられた前方光学要素である可変焦点光学レンズとして構成することができる。本発明の電子レンズは、上述したような任意の数のコンタクトレンズに組み込むことができる。しかしながら、説明を簡単にするため、本開示では、1回使用、1日使い捨ての視力障害補正用の電子コンタクトレンズについて主に述べる。
【0021】
本発明は、可変焦点光学装置又は実行可能な任意の数の様々な機能を実行するように構成された他の任意の装置を作動させる電子システムを備えた電動式眼科用レンズ又は電動式コンタクトレンズに関する。電子システムは、1又は2以上の電池又は他の電源、電力管理回路、通信回路、1又は2以上のセンサ、クロック生成回路、制御アルゴリズム及び回路、並びにレンズ駆動回路を含む。これらの要素の複雑度は、必要とされる又は望ましいレンズの機能に応じて変わり得る。
【0022】
電子又は電動式眼科用レンズの制御は、携帯型遠隔装置などの、レンズと無線で通信する手動式の外部の装置によって行うことができる。例えば、フォブは、装用者からの手動入力に基づいて電動式レンズと無線通信を行うことができる。また、電動式眼科用レンズの制御は、装用者からの直接的なフィードバック又は制御信号によって行うこともできる。例えば、レンズに内蔵されたセンサによって毛様体筋の運動、すなわち収縮及び弛緩を示す信号を検知することで水晶体の機能不全、又は視力若しくは眼疾患にともなう他のあらゆる問題を補償することができる。これらの信号に基づいて、電動式眼科用レンズは例えばその屈折力などの状態を変化させることによって近くの物体又は遠くの物体に焦点を合わせることができる。眼の毛様体筋は、水晶体の形状を制御する、又は制御しようとする構造である。水晶体は、水晶体嚢内に収容されており、水晶体嚢は毛様体筋と繋がった小帯によって懸吊されている。毛様体筋は、小帯を収縮又は弛緩させることにより、水晶体の形状及び/又は焦点を合わせる能力を変化させる。水晶体が毛様体筋の運動に部分的又は完全に応答できない場合、その個人は遠近調節を行うことができず、老視と呼ばれる疾患状態にある。したがって、これらの同じ信号に応答する電動式又は電子式眼科用レンズを使用することによってこのような遠近調節能力の喪失を補償することができる。
【0023】
虹彩すなわち眼の着色部分は、眼の前眼房と後眼房と間の隔壁であり、瞳孔の大きさを調節して眼に入射する光の量を制御する2つの筋肉で構成されている。散大筋は瞳孔を開き、括約筋は瞳孔を閉じる。眼はまた、眼又は眼球の全体の運動を制御する6つの外眼筋を有している。外眼筋並びに/又は散大筋及び括約筋を検知することにより、電動式又は電子式眼科用レンズに他の機能又は更なる機能を与えることができる。眼は、涙膜などの多くの液体成分を有している。これらの液体は、電気的信号及び音響的信号又は音波などの他の信号の優れた導体である。したがって、本発明に基づく神経筋センサは、電動式又は電子式眼科用レンズによって実施することが可能な任意の数の機能を制御するためのフィードバック信号を与えることができることが理解されるはずである。しかしながら、本発明に基づけば、回路はノイズ及び他の筋肉の信号をフィルター除去する一方で毛様体筋の信号を検出、分離、及び増幅するように構成される。
【0024】
その構成要素を電動式コンタクトレンズに埋め込むことができるセンサは、異なる眼の筋肉の信号の特性を検出することができる。例えば、異なる信号には、眼が上下に動かされる、近くに焦点を合わせる、明から暗へ、暗から明へ、又は他の任意の光条件のような周囲の光のレベルの変化に適応する場合の1又は2以上が含まれ得る。毛様体筋は、水晶体の形状を制御することによってのみ近く又は遠くの物体に焦点を合わせる。センサは、個人が字を読んでいる、遠くに焦点を合わせる、又は蛍光灯照明の室内にいる場合などの特定のサンプル条件下で毛様体筋によって発生されるか又は放射される振幅、時間領域応答及び周波数組成などの様々な信号を追跡することに依存している。この条件のリストは、代表的なものであって網羅的なものではない点に留意することは重要である。これらの毛様体筋の信号のサンプルは記録及び追跡することができ、その場合、信号のそれぞれの異なる波形及び周波数を1又は2以上の他の信号、ノイズ、及び干渉から区別することができる。上記に述べたように、本発明の回路は、毛様体筋の信号を検出、分離及び/又はフィルタリングするように設計されることが好ましい。別の実施形態では、他の筋肉の信号を利用して他の眼機能を強化又は実施することができる。認識された毛様体筋の信号をセンサが検出すると、センサは例えば電子レンズを作動させるといった、電子回路の活動を引き起こす。
【0025】
本明細書に述べられるように、眼の水晶体はその繊維が水晶体及び毛様体筋の両方に付着した小帯によって懸吊されている。毛様体筋は様々な刺激に反応して任意の数の信号を発信し、これらの信号が通常は中枢神経系によって解釈される際に何らかの活動が生じる。例えば、遠近調節においては、網膜が近距離又は近くの物体から像を受け取ると毛様体筋は収縮する。この収縮により小帯が弛緩して水晶体が厚くなり、これにより近距離又は近くの物体に焦点を合わせるうえで必要とされるようにレンズは強くなる(プラスの度数が増える)。この過程は遠近調節として知られている。より詳細には、これは毛様体筋が小帯及び水晶体とともに遠近調節においてどのように働くかについてのより広く受け容れられている理論の1つである。老視の個人では水晶体は弾力性を失い、毛様体筋の収縮にもかかわらず動かなくなることがある。水晶体が応答しない場合であっても、毛様体筋は依然収縮するか又は他の何らかの態様で反応して測定可能な信号を発信し、この測定可能な信号を水晶体による応答の欠如を補償するために電動式レンズによって利用することができる。別の言い方をすれば、遠近調節の正確な機序が毛様体筋に対してどのように働くかとは無関係に、毛様体筋は異なる刺激に反応するため、その応答は適性なセンサによって測定することができる。したがって、毛様体筋の完全な応答のセットを様々な条件又は刺激の下で測定し、電動式又は電子式眼科用レンズを直接制御するためのフィードバック信号のセットとして利用されるデータのセットを生成することができる。電動式又は電子式眼科用レンズを使用することで老視をはじめとする様々な視力の問題、及び任意の数の他の条件を補償することが可能である。
【0026】
本明細書の特定の代表的な実施形態を実施するために用いられる様々な方法が存在し得る。例えば、センサによって、筋電図(EMG)、筋磁図(MMG)、筋音図(PMG)、及びインピーダンスの1又は2以上を用いて毛様体筋の信号を検出することができる。更にセンサは、コンタクトレンズに埋め込まれているが眼の表面と直接接触することはない、アンテナなどの非接触式センサを含み得る。また、センサは、眼の表面と直接接触する接触パッドなどの接触式センサも含み得る。下記に詳しく説明するように、任意の数の装置及びプロセスを用いて毛様体筋からの信号を検出することができる点に留意することは重要である。
【0027】
本明細書に述べるように、任意の種類のセンサ及び/又は検知技術を用いることができる。別の代表的な実施形態に基づけば、超音波生体顕微鏡法を用いて眼の毛様体筋領域を画像化することができる。超音波生体顕微鏡法によれば、異なる遠近調節状態にある毛様体筋の輪郭の変化を区別及び分析することが可能である。このようにして毛様体筋の輪郭の変化を検出することが可能であるため、本発明に基づけば他の任意の検知装置と同じ要領で結果及び変化を得て、これを利用することが可能である。
【0028】
図1は、本発明の代表的な一実施形態に基づく、眼又は角膜112の前面に示された、非接触式センサシステムを有するコンタクトレンズ100をブロック図の形で示したものである。この代表的な実施形態では、非接触式センサシステムは、アンテナ102、増幅器104、アナログデジタル変換器106、デジタル信号プロセッサ108、電源116、アクチュエータ118、及びシステムコントローラ114を有し得る。図に示されるように、毛様体筋110が眼の前面又は角膜112の後方に位置している。より詳細には、眼球は前眼房及び後眼房の2つの区画に分けられる。虹彩は前眼房と後眼房との間の隔壁である。後眼房は水晶体の前面と虹彩の後面との間にある。虹彩の基部には水性体液を作る毛様体があり、毛様体筋と連続している。コンタクトレンズ100が眼112の前面上に置かれ、ここでセンサシステムの電子回路を用いて本発明の神経筋検知を行うことができる。アンテナ102及び他の回路は、異なる組織及び眼を形成し眼によって作られる液体による毛様体筋110の活動による信号を検知するように構成されている。上記に述べたように、眼を構成する各種の液体は、電気的及び音響的信号の優れた導体である。
【0029】
この代表的な実施形態では、アンテナ102はコンタクトレンズ100に埋め込まれ、誘電体によって眼及び眼112の前面上の涙膜から隔離され得る。非接触式アンテナ102は、眼の毛様体筋110によって生成される電磁信号を検出する受容器として機能し得る。例えば、毛様体筋が収縮しているか若しくは弛緩しているかといった毛様体筋の状態、又は近くの物体若しくは遠くの物体に眼の焦点を合わせるといった毛様体筋が行おうとしている動作の種類に応じて、異なる信号がアンテナ102によって検出され得る。アンテナ102は、毛様体筋110からの信号を捕捉するのに適した任意の適当な装置を含み得る。代表的な一実施形態では、アンテナ102はシングルループアンテナを含み得る。増幅器104は、アナログデジタル変換器106によって取得されるのに充分な電力を信号に与えるなど、システムの残りの部分に使用可能なレベルにまで信号を増幅することができる。利得を与える以外に、増幅器104は、アンテナ102及び増幅器104の出力に適したフィルタリング及びインピーダンス整合回路などの他のアナログ信号調整回路を含み得る。増幅器104は、アンテナ102による信号出力を増幅及び調整するのに適した任意の装置を含み得る。例えば、増幅器104は、単純に1個の演算増幅器、又は1又は2以上の演算増幅器を含むより複雑な回路を含むことができる。上記に述べたように、アンテナ102及び増幅器104は、毛様体筋からの信号を捕捉して眼の内部において又は眼によって発生されるノイズ及び他の信号から分離し、これを最終的にシステムコントローラ114によって使用可能な信号に変換するように構成されている。システムコントローラ114は、様々な条件下で毛様体筋によって発生される様々な信号を認識し、適当な出力信号をアクチュエータ118に与えるように予めプログラムされることが好ましい。
【0030】
この代表的な実施形態では、アナログデジタル変換器106を使用して、増幅器からのアナログ信号出力をデジタル信号に変換して処理することができる。例えばアナログデジタル変換器106は、増幅器104からのアナログ信号出力を、デジタル信号処理システム108又はマイクロプロセッサ108などのこれに続く又はその下流の回路によって使用され得るデジタル信号に変換することができる。デジタル信号処理システム又はデジタル信号プロセッサ108は、毛様体筋の信号をノイズ及び干渉から区別するために、サンプリングされたデータのフィルタリング、処理、検出、及び他の何らかの態様による操作/処理の内の1又は2以上を行うことを含むデジタル信号処理に使用することができる。デジタル信号プロセッサ108には、上記に述べたような毛様体筋の応答を予めプログラムすることができる。デジタル信号プロセッサ108は、アナログ回路、デジタル回路、ソフトウェア、及び/又は好ましくはこれらの組み合わせを用いて実施することができる。例えば、特定の周波数範囲内で生じ得る様々な毛様体筋の信号を、他の周波数範囲内で生じる他の信号、ノイズ、及び干渉から区別することが可能である。特定の一般的に生じるノイズ及び干渉信号は、例えば、50/60Hzの交流主電源及び蛍光灯の高調波などのアナログ又はデジタルフィルターを使用して信号取得チェーンの異なる段階においてノッチ処理を行うことができる。
【0031】
電源116は、非接触式センサシステムを構成する多くの要素に電力を供給する。電力は、電池、エネルギー回収装置、又は当業者には周知の他の適当な手段から供給することができる。基本的には、任意の種類の電源を使用してシステムの他のすべての要素に高信頼度の電力を供給することができる。アナログからデジタルに処理された毛様体筋の信号によってシステムコントローラ114を作動させることができる。更に、システムコントローラ114は、例えば、アクチュエータ118により電子的に制御されたレンズの焦点又は屈折力を変化させるなど、デジタル信号プロセッサ108からの入力に応じて電動式コンタクトレンズの他の側面を制御することができる。
【0032】
更なる別の代表的な実施形態では、システムコントローラ114は接触式センサ、瞬き検出器、及びフォブ制御装置の内の1又は2以上を含むソースから入力を受信することができる。一般化すると、システムコントローラ114を作動及び/又は制御する方法は、1又は2以上の作動方法の使用を必要とし得ることが当業者には明らかであり得る。例えば、電子又は電動式コンタクトレンズは、例えば、遠くの物体に焦点を合わせる又は近くにある物体に焦点を合わせるなどの様々な動作を行う場合の個人の毛様体筋信号及び個人の瞬きパターンの両方を認識するようにレンズをプログラムするなど、個々の使用者に固有となるようにプログラムすることができる。特定の代表的な実施形態では、毛様筋の信号検出及び瞬き検出など、電子コンタクトレンズを作動するために複数の方法を用いることにより、コンタクトレンズが作動される前に、各方法を相互比較することが可能となる。相互比較を行うことの利点としては、意図せずにレンズを作動させてしまう機会を最小限に抑えるなど、誤判定の低減が含まれる。代表的な一実施形態では、相互比較において、何らかの動作が起きる前に特定の数の条件が満たされるような投票スキームを行ってもよい。
【0033】
アクチュエータ118は、受信された命令信号に基づいて特定の動作を実行するための任意の適当な装置を含み得る。アクチュエータ118は、電気的装置、機械的装置、磁気的装置、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。アクチュエータ118は、電源116からの電力以外にシステムコントローラ114から信号を受信し、システムコントローラ114からの信号に基づいて特定の動作が発生する。例えば、システムコントローラ114の信号が、装用者が近くの物体に焦点を合わせようとしていることを示すものである場合、アクチュエータ118を用いて電子式眼科用レンズの屈折力を何らかの方法で変化させることができる。
【0034】
図2は、本発明の別の代表的な実施形態に基づく、眼又は角膜112の前面に示された、接触式センサシステムを有するコンタクトレンズ200を図の形で示したものである。この代表的な実施形態では、接触式センサシステムは、1乃至複数の接点202、電圧電流インピーダンスソース/計204、アナログデジタル変換器206、デジタル信号プロセッサ208、電源216、アクチュエータ218、及びシステムコントローラ214を有し得る。毛様体筋110が眼の前面又は角膜112の後方に位置している。コンタクトレンズ200が眼112の前面上に置かれることにより、センサの電子回路を用いて本発明の神経筋検知を行うことができる。この代表的なシステムの各構成要素は、接点202及びソース/計204を除き、図1に示したものと同様であり、同じ機能を行う。別の言い方をすれば、直接接点202が使用されているために、アンテナによって受信された信号を増幅及び調整するためのアンテナ又は増幅器の必要がないということである。
【0035】
図の代表的な実施形態では、接点202は、涙膜及び眼の表面との直接的な電気的接続を与えることができる。例えば、接点202はコンタクトレンズ200の背面の曲面上に露出する金属接点として実施し、金又はチタンなどの生体適合性の導電性材料で形成することができる。更に、コンタクトレンズのポリマーを接点202の周囲に型成形することで、眼に装用する際の快適性を高め、コンタクトレンズ200の導電性を高めることができる。更に、接点202は、眼の表面112とコンタクトレンズ200内部の電子回路との間に抵抗の低い接続を与えることができる。ケルビン検知法としても知られる4端子検知法を利用して眼に対する接触抵抗効果を軽減することができる。ソース/計204は、接点202の両側の電圧/電流を測定する一方で複数の構成周波数を有する信号又は周波数掃引を発信することができる。
【0036】
別の代表的な一実施形態では、ソース/計204は、毛様体筋100の収縮又は弛緩によって発生する電圧又は電流に起因する眼の両側の電位差を読み取るように構成することができる。眼が、優れた導体である涙をはじめとする様々な液体を含んでいるかぎり、様々なタイプのセンサを使用することができるという点に留意することは重要である。
【0037】
毛様体筋が収縮又は弛緩など、どのような活動を行おうとしているかに応じて特定の位置においてインピーダンスは変化し得るが、ソース/計204は、眼のインピーダンスを測定するように構成してもよい。この代表的な実施形態では、アナログデジタル変換器206及びデジタル信号プロセッサ208は、図1で述べたような非接触式センサに対して、接触式センサ用に異なった構成をすることができる。例えば、異なるサンプリング速度、異なる解像度、及び異なる信号処理アルゴリズム208とすることができる。
【0038】
図3は、参照文献に述べられるような測定可能な電気的パラメータと眼の焦点距離との間の相関を示すグラフを示す。トレース302は、眼の内部、又は眼の上の電気的に測定可能な信号を表したものである。例えばこのような信号は、インピーダンス、電位差、誘導電磁場、及び他の測定可能なパラメータの1又は2以上として検出することができる。トレース304は望ましい焦点距離を表したものであり、例えば、臨床的被験者が0.2及び2.0mの距離の物体に焦点を合わせる場合、これに対応するように毛様体筋が焦点距離に応じて測定可能な電気的パラメータの対応する変化を生じ得る。しかしながら、同じ例を用いた場合でも、個人が老視であり、眼のレンズが固すぎて焦点を変化させるように遠近調節を行うことができない場合などでは、毛様体筋がこの変化に応答していたとしてもレンズの実際の焦点距離は変化しないか、又はごくわずかしか変化しない可能性がある。文献に述べられるように、測定可能な電気的信号と焦点距離との間には相関が認められる。図3に示されるように、焦点距離が遠くである場合(308)にはインピーダンスは高く(306)、焦点距離が近くである場合(312)にはインピーダンスは低い(310)。更に、図3には示されていないが文献に述べられているように、中間の値ではトレース302とトレース304の振幅の間に相関が存在する。
【0039】
特定の代表的な実施形態では、形状、周波数成分、タイミング、及び振幅といった電気的信号302の特性は、使用される検出方法(例えば、インピーダンス又は電界の強さ)、個人の眼の生理学的特性、毛様体筋の疲労度、眼内の電解質濃度、老視の状態、干渉、及び焦点距離の1又は2以上を含む幾つかの因子によって変わり得る。例えば、使用される検出方法の種類に応じて、望ましい焦点と測定可能な電気的パラメータとの間の相関は、図3に示されるものとは反対の極性を有し得る。更に、例えば、電気的信号は、有意なノイズ、他の筋肉からの干渉、異なる環境源からの干渉の1又は2以上を含むことにより、又は加齢、疾患、若しくは遺伝的素因の作用のために歪みを生じ得る。したがって、眼の応答の研究並びに個々の使用者の測定値及び訓練を用いて、眼の望ましい焦点距離を適性に検出するようにデジタル信号回路をプログラムすることができる。デジタル信号処理のパラメータは、例えば時刻、測定された電解質濃度、周辺光のレベルなどの他の測定値に応じて調整することができる。更に、記録された使用者の眼の焦点の信号のサンプルを、干渉の検出及び軽減技術と組み合わせて使用することもできる。
【0040】
本発明に基づけば任意の種類のセンサを使用することが可能である点に留意することは重要である。変化する条件にともなって筋肉の運動が生じるかぎり、こうした運動を検知、処理、及び利用することで視力を向上、強化、又は単純に補正することができる。
【0041】
次に図4を参照すると、本発明に基づく神経筋センサを有するウェアラブル電子式眼科用レンズが平面図にて示されている。眼科用レンズ400は、光学ゾーン402及び周辺ゾーン404を有している。光学ゾーン402は、視力補正、視力向上、他の視力関連機能、機械的支持、又は更にははっきりとした視覚を与えるための空隙の1又は2以上を与える機能を有し得る。本発明に基づけば、光学ゾーン402は、毛様体筋から検知される信号に基づいて近い範囲及び遠い範囲における視覚を向上させるように構成された可変光学要素を含み得る。可変光学要素は、本明細書に述べられる検知システムからの活動化信号に基づいてレンズの焦点距離又はレンズの屈折力を変化させるのに適した任意の装置を含み得る。例えば、可変光学要素は、その球面の曲率を変化させることが可能な、レンズに組み込まれる光学グレードのプラスチックの小片のような単純なものであり得る。周辺ゾーン404は、電気回路406、電源408、電気的相互接続要素410、機械的支持部、及び他の機能要素のうちの1又は2以上を含む。電子回路406は、1又は2以上の集積回路ダイ、プリント電子回路、電気的相互接続要素、及び/又は、本明細書に述べるような検知回路を含む他の任意の適当な装置を含み得る。電源408は、電池、エネルギー回収装置、及び/又は他の任意の適当なエネルギー貯蔵又は発生装置のうちの1又は2以上を含み得る。当業者であれば、図4は、あくまで電子式眼科用レンズの代表的な一実施形態を表したものに過ぎず、図に示されるもの以外の他の幾何的配置を用いて、面積、体積、機能、作動時間、保管寿命、及び他の設計上のパラメータを最適化することが可能である点は容易に認識されるところである。いずれの種類の可変光学要素においても、フェールセーフは遠くの視覚である点に留意することは重要である。例えば、電源が失われた場合、又は電子部品が故障した場合、装用者には遠くの視覚を与える光学要素が残される。
【0042】
本明細書に図示及び説明した実施形態は、最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるが、当業者であれば、本明細書に説明及び図示した特定の設計及び方法からの改変はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明及び図示される特定の構造に限定されるものではないが、付属の特許請求の範囲に含まれ得るすべての改変例と一貫性を有するものとして解釈されなければならない。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 光学ゾーン及び周辺ゾーンを有するウェアラブルな眼科用レンズと、
前記ウェアラブルな眼科用レンズの前記光学ゾーンに組み込まれる可変光学要素であって、前記ウェアラブルな眼科用レンズの屈折力を変化させるように構成された、可変光学要素と、
前記ウェアラブルな眼科用レンズの前記周辺ゾーンに組み込まれる電子要素であって、遠近調節のプロセスにともなう毛様体筋の運動を検出するための検知システムを含み、該検知システムは前記可変光学要素を制御するための活動を生成するように構成されている、電子要素と、
を含む電子式眼科用レンズ。
(2) 前記ウェアラブルな眼科用レンズがコンタクトレンズを含む、実施態様1に記載の電子式眼科用レンズ。
(3) 前記コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズを含む、実施態様2に記載の電子式眼科用レンズ。
(4) 前記検知システムが、無線センサ、電源、信号プロセッサ、コントローラ、及びアクチュエータを含む、実施態様1に記載の電子式眼科用レンズ。
(5) 前記電源が電池を含む、実施態様4に記載の電子式眼科用レンズ。
【0044】
(6) 前記信号プロセッサがデジタル信号プロセッサを含む、実施態様5に記載の電子式眼科用レンズ。
(7) 前記コントローラがマイクロプロセッサを含む、実施態様6に記載の電子式眼科用レンズ。
(8) 前記アクチュエータが前記可変光学要素と機能的に関連付けられている、実施態様7に記載の電子式眼科用レンズ。
(9) 前記無線センサが、毛様体筋によって発生される電磁信号を検出するように構成されたアンテナを含む、実施態様8に記載の電子式眼科用レンズ。
(10) 前記検知システムが、前記アンテナと機能的に関連付けられた増幅器及びアナログデジタル変換器を更に含む、実施態様9に記載の電子式眼科用レンズ。
【0045】
(11) 前記検知システムが、接触式センサ、電源、信号プロセッサ、コントローラ、及びアクチュエータを含む、実施態様1に記載の電子式眼科用レンズ。
(12) 前記電源が電池を含む、実施態様11に記載の電子式眼科用レンズ。
(13) 前記信号プロセッサがデジタル信号プロセッサを含む、実施態様12に記載の電子式眼科用レンズ。
(14) 前記コントローラがマイクロプロセッサを含む、実施態様13に記載の電子式眼科用レンズ。
(15) 前記アクチュエータが前記可変光学要素と機能的に関連付けられている、実施態様14に記載の電子式眼科用レンズ。
【0046】
(16) 前記接触式センサが、眼の涙膜と直接的な電気的接触を形成することにより毛様体筋によって発生された電気的信号を検出するように構成された1又は2以上の接点を含む、実施態様15に記載の電子式眼科用レンズ。
(17) 前記検知システムが、前記1又は2以上の接点と機能的に関連付けられた、電圧、電流及びインピーダンスの少なくとも1つを検出するための計器、及びアナログデジタル変換器を更に含む、実施態様16に記載の電子式眼科用レンズ。
図1
図2
図3
図4