特許第6282441号(P6282441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282441
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ノズル交換式薬剤注入器
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/62 20170101AFI20180208BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61C5/62
   A61M5/24
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-229841(P2013-229841)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-89420(P2015-89420A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】110002088
【氏名又は名称】特許業務法人プロイスIPパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】染川 剛
(72)【発明者】
【氏名】小川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】友岡 忍
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−006994(JP,A)
【文献】 特開2004−016772(JP,A)
【文献】 特開2008−119359(JP,A)
【文献】 特表2011−509754(JP,A)
【文献】 特開平09−285540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/62
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に充填された薬剤を吐出するためのノズル部を有するシリンジと、該シリンジのノズル部に交換可能に外嵌されるノズルアタッチメントとを備え、前記シリンジは、前記ノズル部の周囲に設けられた円筒状のロック部をさらに備え、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック部に対して所定のロック位置まで所定方向に回転操作されることにより前記ロック部に固定されるノズル交換式薬剤注入器において、
前記ロック部は周方向所定位置に第1係合部を備え、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック位置まで所定方向に回転操作されたときに前記ロック部に対する前記ノズルアタッチメントの逆回転を阻害するように前記第1係合部に周方向に係合する第2係合部を備えており、
前記ノズル部は先細りの管状に構成され、前記ノズルアタッチメントは、その外周面に設けた係合片が前記ロック部の内周面に設けた一又は複数のネジ山により構成される雄ネジに係合することによって前記ロック部に螺着され、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック位置まで回転操作されたときに前記ノズル部の先端部がきつく嵌合する絞り部と、該絞り部に軸方向に連設され且つ前記ロック位置まで回転操作されたときに前記ノズル部の先端部以外の部分に緩く嵌合する延長部とを備え、前記ノズル部の先端部は、前記ノズルアタッチメントを前記ノズル部に対して前記ロック位置まで所定方向に回転操作することにより前記絞り部に対して螺進して該絞り部にきつく嵌合されており、
前記ロック部の前記雄ネジに前記係合片が係合した直後においては前記ノズル部の先端部は前記絞り部内に嵌合しておらず、前記ノズルアタッチメントを前記ロック部に対して螺進させていくにしたがって前記ノズル部の先端部が前記絞り部内に嵌合していくよう構成されていることを特徴とするノズル交換式薬剤注入器。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル交換式薬剤注入器において、前記第1係合部は前記ロック部の外周面に設けられ且つ軸方向からみて径方向外方に隆起する凸部であり、前記ノズルアタッチメントは前記ロック部の先端部外周に位置する突起を備え、前記第2係合部は、前記突起の内周部に設けられ且つ軸方向からみて径方向内方に隆起する凸部であることを特徴とするノズル交換式薬剤注入器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノズル交換式薬剤注入器において、少なくとも前記ノズルアタッチメントが前記ロック位置にあるとき、前記係合片の前記所定方向における先端部が前記雌ネジを構成するいずれかのネジ山の軸方向基端側の縁部に接触するとともに、前記係合片の前記所定方向における基端部が前記雌ネジを構成するいずれかのネジ山の軸方向先端側の縁部に接触することを特徴とするノズル交換式薬剤注入器。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のノズル交換式薬剤注入器において、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック位置まで回転操作されたときに前記ノズル部の先端部に軸方向に接触するシール面を備えていることを特徴とするノズル交換式薬剤注入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジの先端部にノズルアタッチメントが着脱自在に取付けられたノズル交換式薬剤注入器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種従来のノズル交換式の歯科用薬剤注入器として、下記の特許文献1に開示されたものが知られている。この従来の歯科用薬剤注入器は、シリンジの先端にノズル部とルアーロック部とが一体に設けられ、これらノズル部及びルアーロック部に対してアダプターを介してノズルアタッチメント(細口ノズル)が交換可能に取付けられている(特に、段落番号0017〜0019、図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−11341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の歯科用薬剤注入器では、ノズルアタッチメントとアダプターとが別体に構成されているため、使用時の組み付け作業が煩雑となるとともに、コスト高となるという問題がある。
【0005】
一方、アダプターをノズルアタッチメントに一体形成することもできるが、ノズルアタッチメントは患者の口腔内に挿入するものであって適度な弾性を有することが要求されるため、ノズルアタッチメントの成形材料中に所定量のエラストマーが混入されることが一般的である。このようにエラストマーを混入した場合、成形材料表面にオイルブリードが生じ、滲出したオイルによってルアーロック部にねじ込まれたノズルアタッチメントの緩みが生じ、歯科用薬剤の適切な注入が行えなくなるという問題が生じてしまう。
【0006】
また、緩みの発生を防止するために、ノズル部及びルアーロック部と、ノズルアタッチメントとの嵌め合いをきつくすると、ノズルアタッチメントの着脱操作を円滑に行えなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、ノズルアタッチメントの着脱操作を円滑に行うことができるものでありながら、オイルブリードに起因するノズルアタッチメントの緩みを防止することのできるノズル交換式薬剤注入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、次の技術的手段を講じた。
【0009】
すなわち、本発明は、内部に充填された薬剤を吐出するためのノズル部を有するシリンジと、該シリンジのノズル部に交換可能に外嵌されるノズルアタッチメントとを備え、前記シリンジは、前記ノズル部の周囲に設けられた円筒状のロック部をさらに備え、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック部に対して所定のロック位置まで所定方向に回転操作されることにより前記ロック部に固定されるノズル交換式薬剤注入器において、前記ロック部は周方向所定位置に第1係合部を備え、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック位置まで所定方向に回転操作されたときに前記ロック部に対する前記ノズルアタッチメントの逆回転を阻害するように前記第1係合部に周方向に係合する第2係合部を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる本発明のノズル交換式薬剤注入器によれば、ノズル部及びロック部に対するノズルアタッチメントの嵌合を比較的緩くしても、ノズルアタッチメントがロック位置にあるとき、ロック部の第1係合部にノズルアタッチメントの第2係合部が周方向に係合することによって、オイルブリードに起因するノズルアタッチメントの逆回転が阻害され、ノズルアタッチメントの着脱操作を円滑かつ迅速に行えるものでありながらノズルアタッチメントの固定が緩むことを防止できる。
【0011】
なお、本発明において、ロック部は、その内周面に雌ネジが設けられたルアーロック構造とすることが好ましいが、内周面にL字形状の係合溝を設けて、まずノズルアタッチメントをロック部に対して軸方向に押し込み、その後ノズルアタッチメントを周方向に回転操作することによって軸方向の抜けが防止される構造とすることもできる。
【0012】
上記本発明のノズル交換式薬剤注入器において、前記ノズル部は先細りの管状に構成され、前記ノズルアタッチメントは前記ロック部に螺着され、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック位置まで回転操作(すなわち、ロック部に対してねじ込み操作)されたときに前記ノズル部の先端部がきつく嵌合する絞り部と、該絞り部に軸方向に連設され且つ前記ロック位置まで回転操作されたときに前記ノズル部の先端部以外の部分に緩く嵌合する延長部とを備え、前記ノズル部の先端部は、前記ノズルアタッチメントを前記ノズル部に対して前記ロック位置まで所定方向に回転操作することにより前記絞り部に対して螺進して該絞り部にきつく嵌合されているものとすることができる。かかる構成によれば、ノズル部の先端部のみがノズルアタッチメントにきつく嵌合するため、ノズルアタッチメントを取付けるための回転操作の途中段階においては当該回転操作に対する抵抗が殆どなく、より円滑にノズルアタッチメントの着脱操作を行えるものとしつつ、ロック位置までノズルアタッチメントを回転操作したときはノズル部の先端部がノズルアタッチメントにきつく嵌合することにより、ノズルアタッチメントの緩みの発生を一層防止できるとともに、ノズル部の先端部の外周面とノズルアタッチメントの絞り部の内周面との間から液剤が漏れ出すことを効果的に防止できる。さらに、ノズルアタッチメントをロック部に対して螺進させることによってノズル部の先端部にノズルアタッチメントをきつく嵌合させるため、かかるきつい嵌合力を比較的軽い力の回転操作によって得ることができる。
【0013】
さらに、前記第1係合部は前記ロック部の外周面に設けられ且つ軸方向からみて径方向外方に隆起する凸部であり、前記ノズルアタッチメントは前記ロック部の先端部外周に位置する突起を備え、前記第2係合部は、前記突起の内周部に設けられ且つ軸方向からみて径方向内方に隆起する凸部とすることができる。かかる構成によれば、全体構成のコンパクト化を図りつつ、回転操作の最終段階で第2係合部が第1係合部を円滑に乗り越えるようになり、ノズルアタッチメントがロック位置まで回転操作されたときに適度なロック感が得られ、ロック位置まで回転操作したことを使用者が把握し易くなる。なお、第1係合部及び第2係合部は、丘状に隆起するものとするのが好ましいが、一方が丘状に隆起するものであればよく、他方は四角形状などとすることもできる。
【0014】
また、前記ロック部の内周面には雌ネジを構成する一若しくは複数のネジ山が設けられ、前記ノズルアタッチメントの外周面には前記雌ネジに係合する係合片が設けられ、少なくとも前記ノズルアタッチメントが前記ロック位置にあるとき、前記係合片の前記所定方向における先端部(すなわち、周方向の一端部)が前記雌ネジを構成するいずれかのネジ山の軸方向基端側の縁部に接触するとともに、前記係合片の前記所定方向における基端部(すなわち、周方向の他端部)が前記雌ネジを構成するいずれかのネジ山の軸方向先端側の縁部に接触する構成とすることができる。ここで、ネジ山の軸方向基端側の縁部とは、螺旋状のネジ山の螺旋の中途部における軸方向基端部のことであり、ネジ山の軸方向先端側の縁部とは、螺旋状のネジ山の螺旋の中途部における軸方向先端部のことである。かかる構成によれば、ノズルアタッチメントの係合片がロック部の雌ネジに対して軸方向先端側及び基端側のいずれの方向にも係合することによって、ノズルアタッチメントを逆方向に回転させなければノズルアタッチメントがロック部に対して軸方向にガタツキが生じることがなく、より一層ノズルアタッチメントの固定を確実なものとすることができる。
【0015】
また、前記ノズルアタッチメントは、前記ロック位置まで回転操作されたときに前記ノズル部の先端部に軸方向に接触するシール面を備えているものとすることができる。これによれば、ノズルアタッチメントのシール面がノズル部の先端部に圧接されることによって、ノズル部の先端部とノズルアタッチメントのシール面との間から薬剤が漏れ出すことが防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノズルアタッチメントの着脱操作を円滑に行うことができるものでありながら、オイルブリードに起因するノズルアタッチメントの緩みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るノズル交換式薬剤注入器の全体斜視図である。
図2】同薬剤注入器の正面縦断面図である。
図3】同薬剤注入器の側面縦断面図である。
図4】同薬剤注入器の底面図である。
図5】同薬剤注入器のシリンジ先端部の拡大斜視図である。
図6】同薬剤注入器のノズルアタッチメントの斜視図である。
図7】同ノズルアタッチメントの正面図である。
図8】同ノズルアタッチメントの右側面図である。
図9】同ノズルアタッチメントの底面図である。
図10】同薬剤注入器のシリンジ先端部とノズルアタッチメントとの係合構造を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図10は本発明の一実施形態に係るノズル交換式の歯科用薬剤注入器1を示しており、該薬剤注入器1は、シリンジ2と、該シリンジ2の先端部に着脱自在に螺着されるノズルアタッチメント3とにより構成されている。本実施形態のノズルアタッチメント3は、シリンジ2に対して所定のロック位置まで所定方向に回転操作しつつねじ込むことによってシリンジ先端部に取付け固定される。図1図3及び図10は、ノズルアタッチメント3がロック位置で固定されている状態を図示している。
【0020】
シリンジ2は、種々の歯科用薬剤、例えば根管及び歯周ポケット等へ注入される各種医薬品、医薬部外品、接着剤若しくは充填剤などが内部に充填される円筒状ボディと、該円筒状ボディの先端部に一体成形された先細り筒状のノズル部4及びルアーロック部5とを備えている。円筒状ボディには、図示しないプランジャが内嵌され、該プランジャの引き込み操作によってノズル部4を介して薬剤がボディ内に吸引されるとともに、プランジャの押し込み操作によってボディ内の薬剤がノズル部4を介して吐出される。シリンジ2は、透明な樹脂製若しくはガラス製とすることができる。なお、シリンジ2の外径は10mm前後、全長は5〜10cm程度とすることができる。
【0021】
上記ノズル部4及びルアーロック部5は円筒状ボディと同心状に設けられており、ルアーロック部5はノズル部4の外周側に設けられている。ノズル部4は、ルアーロック部5よりも先端側に向けて延設されている。ルアーロック部5の外径は円筒状ボディの外径と同一とされ、ルアーロック部5の内周面とノズル部4の外周面との間には隙間が設けられている。ノズル部4の外周面は軸方向先端側に至るにしたがって徐々に小径となるテーパー面とされている。ルアーロック部5の内周面は軸方向先端側に至るにしたがって僅かに大径とされている。
【0022】
ルアーロック部5の内周面には雌ネジが設けられている。図示実施例においては、雌ネジは2条のネジ山6a,6bによって構成されているが、1条ネジによって雌ネジを構成することもできる。
【0023】
上記ノズルアタッチメント3は、ノズル部4に外嵌される円筒状基部と、該円筒状基部に連設された細口ノズル7と、円筒状基部の外周部に一体成形されたフランジ8とを備えている。細口ノズル7は図示実施例では屈曲成形されているが、直筒状に構成されていてもよい。このノズルアタッチメント3は、適度な弾性を有するようにエラストマーが混入された熱可塑性樹脂製となされている。
【0024】
円筒状基部の基端部外周には、ロック部5の雌ネジに螺合する係合片9が径方向外方に向けて突設されている。図示実施例では、係合片9は直径方向に対向して一対(2つ)設けられ、各係合片9は周方向に平坦な突片により構成されている。なお、係合片9は3つ以上設けられていてもよく、また、複数の係合片9を軸方向に位置をずらして設けることも可能である。また、各係合片9は、多少螺旋状に傾斜して形成されていてもよい。各係合片9は、図10に示すように、係合片9の図示左端部(前記所定方向における先端部)が雌ネジを構成する一のネジ山6aの軸方向基端側の縁部に下方(軸方向基端側)から接触するとともに、係合片9の図示右端部(前記所定方向における基端部)が雌ネジを構成する他のネジ山6bの軸方向先端側の縁部に上方(軸方向先端側)から接触するように構成されている。なお、ノズルアタッチメント3がロック位置にあるときは係合片9の両端が各ネジ山6a,6bに比較的強く押し付けられるが、ロック位置の手前では比較的弱く押し付けられるか若しくは隙間が生じるようにネジ山6a,6bの形状を定義することもできる。また、係合片9及び各ネジ山6a,6bの軸方向寸法(厚さ)は0.5〜1.0mm程度であってよく、係合片9と各ネジ山6a,6bが若干オーバーラップする寸法設計であっても、係合片9の端部が適度に変形して良好な係合関係となる。
【0025】
ノズルアタッチメント3の円筒状基部は、ロック位置にあるときにノズル部4の先端部にきつく外嵌する円筒状絞り部10と、該絞り部10に軸方向に連設され且つロック位置にあるときにノズル部4の先端部以外の部分に緩く外嵌する円筒状延長部11とを備えている。延長部11はロック部5内に挿入され、該延長部11の軸方向基端部に上記係合片9が設けられている。図示実施例では、絞り部10の内周面と延長部11の内周面との間に段部が設けられているが、ノズル部の先端部の径を先端部以外の径よりも若干大径とするならば絞り部と延長部の内径は同一であっても良い。また、ノズルアタッチメント3をシリンジ2の先端部にねじ込む初期段階、すなわち、ロック部5の雌ネジに係合片8が係合した直後においてはノズル部4の先端部は絞り部10内に嵌合しておらず、ノズルアタッチメント3をロック部5に対して螺進させていくにしたがってノズル部4の先端部が絞り部10内に嵌合していくように各部の寸法が設定されている。
【0026】
また、ノズルアタッチメント3の円筒状基部の先端部内面には、ノズル部4の先端部に対向するシール面12が設けられており、ノズルアタッチメント3がロック位置にあるときノズル部4の先端部がシール面12に圧接されるようになっている。
【0027】
ロック部5の先端部外周面には、一対の第1係合部13が直径方向に対向する位置に設けられている。各第1係合部13は、ロック部5の先端部外周面に形成された凹部14内に設けられ、該凹部14の軸方向基端側縁部14aはネジ山6a,6bと同じ勾配で傾斜されている。凹部14も直径方向に対向して一対設けられている。各第1係合部13は、軸方向からみて径方向外方に丘状に隆起する凸部により構成されている。
【0028】
一方、ノズルアタッチメント3のフランジ8には、その外周縁近傍から軸方向基端側に突設されてロック部5の上記凹部14の外周に位置する突起15が設けられ、該突起15は、ノズルアタッチメント3がロック位置まで回転操作されると凹部14の上記所定方向の先端側縁部14bに当接し、それ以上所定方向に回転操作されることが規制される。突起15の内周部には、軸方向からみて径方向内方に丘状に隆起する凸部からなる第2係合部16が設けられている。なお、突起15に代えて、ロック部5の先端部に外嵌されるキャップをフランジ8に設けて、該キャップの内周面に第2係合部16を設けることもできる。
【0029】
上記ノズルアタッチメント3の第2係合部16の最小内径は、凹部14の外周面の径よりも大きいが、第1係合部13の最大外径よりも小さい。したがって、ノズルアタッチメント3をシリンジ2の先端部にねじ込んでいくと、突起15が僅かに弾性変形することによって第2係合部16が第1係合部13を乗り越えて、第2係合部16が第1係合部13と縁部14bとの間に位置づけられ、この位置がロック位置となる。
【0030】
以上説明した本実施形態に係るノズル交換式薬剤注入器によれば、ノズルアタッチメント3をシリンジ2に対してロック位置に組み付ける過程においては、ノズル部4外周面とノズルアタッチメント3内周面との間に隙間があり、一対の係合片9の左右両端部のみがロック部5の雌ネジに係合している状態であるので、回転操作に対する摩擦抵抗が小さく、円滑にノズルアタッチメント3の着脱交換操作を行うことができる。その一方、ノズルアタッチメント3がロック位置に組み付けられたときは、ノズル部4の先端部がノズルアタッチメント3のシール面12に軸方向に圧接され、ノズル部4の先端部がノズルアタッチメント3の絞り部10にきつく内嵌され、かつ、一対の係合片9の左右両端部がロック部5の雌ネジに対して軸方向先端側に向けても基端側に向けても係合されており、これらによってノズルアタッチメント3がシリンジ2に対して軸方向のガタツキなく安定的に固定されるとともに、ノズルアタッチメント3の緩み方向への回転は、第1及び第2係合部13,16の周方向への係合によって阻害されているため、不慮にノズルアタッチメント3が緩むことが殆どなく、医療行為のための適所への薬剤注入操作を円滑かつ的確に行えるようになる。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更することができる。例えば、ノズルアタッチメントの係合片は、雄ネジを構成するネジ山によって構成することもできる。また、ロック部のネジ山の螺旋長はそれほど長くなくともよく、ノズルアタッチメントを半周程度回転するだけでロック位置に位置づけられるように構成することもできる。また、第1係合部はロック部の先端面や内周面に形成してもよく、これに対応して第2係合部を設ける位置も適所とすることができる。また、第1及び第2係合部のいずれか一方は凹部によって構成することもでき、この場合、第1係合部と第2係合部とが嵌合する位置をロック位置とすることができる。
【0032】
また、本願の図面に表された薬剤注入器、シリンジ及び薬剤注入器用交換ノズル(ノズルアタッチメント)は、それぞれ意匠登録出願に出願変更することができる。交換ノズルは、その全体意匠として把握することができるのは勿論のこと、フランジ8及び突起の外形形状のみを特徴とする部分意匠として把握することもでき、また、延長部及び係合片の外形形状のみを特徴とする部分意匠として把握することもでき、さらに、フランジ8、突起、延長部及び係合片の外形形状のみを特徴とする部分意匠として把握することもできる。シリンジは、その全体意匠として把握することができるのは勿論のこと、先端部(すなわち、ノズル部及びルアーロック部)の外形形状のみを特徴とする部分意匠として把握することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 ノズル交換式薬剤注入器
2 シリンジ
3 ノズルアタッチメント
4 ノズル部
5 ロック部
6a,6b 雌ネジのネジ山
9 係合片
10 絞り部
11 延長部
12 シール面
13 第1係合部
15 突起
16 第2係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10