(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282470
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ケーシング付きオーガの交換羽根の固定方法
(51)【国際特許分類】
E21B 10/44 20060101AFI20180208BHJP
E21B 7/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
E21B10/44
E21B7/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-12206(P2014-12206)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-140511(P2015-140511A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】南 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】森野 有晴
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3069190(JP,U)
【文献】
特開2000−204865(JP,A)
【文献】
特開平05−149076(JP,A)
【文献】
実開昭58−025393(JP,U)
【文献】
特開2000−104293(JP,A)
【文献】
特開2000−319943(JP,A)
【文献】
特開2009−150124(JP,A)
【文献】
特開2000−120362(JP,A)
【文献】
実開昭56−051897(JP,U)
【文献】
実開昭55−113790(JP,U)
【文献】
実開昭52−056003(JP,U)
【文献】
特開2003−184071(JP,A)
【文献】
特開2006−233748(JP,A)
【文献】
特開2008−207140(JP,A)
【文献】
特開2012−127125(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3052082(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00〜 49/10
E02F 5/00〜 7/10
E02D 7/00〜 13/10
E02D 3/12
E02D 5/00〜 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部にオーガを備えたケーシング付きオーガの交換羽根の固定方法であって、
前記オーガは、
回転軸と、
前記回転軸に螺旋状に設けられた羽根本体と、
前記羽根本体に交換可能に取り付けられた交換羽根と、
を備え、
前記羽根本体には、前記回転軸側から外縁に向けて厚みが薄くなるテーパがつけられており、
前記交換羽根には、前記羽根本体の外縁側に嵌合する嵌合部が形成されており、
前記交換羽根は、前記羽根本体の螺旋ピッチの1/2以下のサイズであり、
前記羽根本体に前記交換羽根を固定する際には、複数の前記交換羽根を前記羽根本体の外縁側に嵌合させた後、隣接する前記交換羽根同士を繋ぐことで前記羽根本体に固定することを特徴とするケーシング付きオーガの交換羽根の固定方法。
【請求項2】
ケーシングの内部にオーガを備えたケーシング付きオーガの交換羽根の固定方法であって、
前記オーガは、
回転軸と、
前記回転軸に螺旋状に設けられた羽根本体と、
前記羽根本体に交換可能に取り付けられた交換羽根と、
を備え、
前記羽根本体には、前記回転軸側から外縁に向けて厚みが薄くなるテーパがつけられており、
前記交換羽根には、前記回転軸の軸方向に沿う面で断面視した際、前記羽根本体の外縁部に嵌合する略コ字形状の嵌合部が形成され、前記羽根本体の上面及び下面に係合凹部が形成され、前記交換羽根の上内面及び下内面に係合凸部が形成されており、
前記羽根本体に前記交換羽根を固定する際には、前記交換羽根を前記羽根本体の外縁側に嵌合させるとともに、前記係合凹部に前記係合凸部を嵌め合わせることを特徴とするケーシング付きオーガの交換羽根の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング付きオーガ
の交換羽根の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を削孔するケーシング付きオーガは、例えば、矢板圧入時の穿孔掘削に用いられる。この掘削は硬質地盤に対して行われ、ケーシング付きオーガの搬送物は破砕岩や砂礫が主となるためオーガ羽根は磨耗しやすく、その磨耗に応じてオーガ羽根の交換や補修を行う必要が生じる(例えば、特許文献1,2参照。)。
また、ケーシング付きオーガの搬送物が主に破砕岩や砂礫であるため、動作時に騒音が発生しやすく、住宅地や商業地などでの作業の支障となるので、その動作時の静音性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−144689号公報
【特許文献2】特開平9−150932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように、オーガ羽根の外縁に帯状鋼材をその板面が略垂直となるように溶接する補修の場合、一人が帯状鋼材に熱を加えながら捩って、もう一人がその帯状鋼材をオーガ羽根に連続溶接するため、高温となる作業環境下に複数の作業員が必要となる上に、多大な時間と労力を要してしまう。
また、この補修方法では補修箇所の外径精度が悪いので、補修したオーガをケーシングに挿入できなくなることを懸念して、オーガ羽根の外径をケーシング内径よりも小径にしてしまうため、オーガ羽根とケーシング内面との隙間が大きく砂礫などの排出能力が低くなってしまうことがある。また、オーガ羽根とケーシング内面との隙間が大きいとその隙間に破砕岩を噛み込んでしまうためにオーガ羽根の摩耗が早く、短期間で補修が必要になってしまい、さらに補修に要する時間や費用がかさむという問題が生じる。特に、オーガ羽根とケーシング内面との隙間が大きいと、破砕岩を噛み込んで砕く破壊音や、ケーシング内でオーガが振れて生じる干渉音などの騒音が発生してしまう問題が生じる。
【0005】
また、上記特許文献2のように、オーガ羽根の外縁に複数の耐摩耗材を螺旋状に一連に溶接するという補修作業では効率が悪く、その補修には多大な時間と労力を要し、費用がかさんでしまう。
また、隣接する耐摩耗材同士は溶接されていないために強度は弱く、部分的に曲がってしまうことがあり、オーガ羽根とケーシング内面との隙間が広がることで、砂礫などの排出能力が低くなってしまうことがある。また、オーガ羽根とケーシング内面との隙間が広がることで、その隙間に破砕岩を噛み込んで砕く破壊音や、ケーシング内でオーガが振れて生じる干渉音などの騒音が発生してしまう問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、メンテナンスが容易で作業性能に優れたケーシング付きオーガ
の交換羽根の固定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
ケーシングの内部にオーガを備えたケーシング付きオーガ
の交換羽根の固定方法であって、
前記オーガは、
回転軸と、
前記回転軸に螺旋状に設けられた羽根本体と、
前記羽根本体に交換可能に取り付けられた交換羽根と、
を備え、
前記羽根本体には、前記回転軸側から外縁に向けて厚みが薄くなるテーパがつけられており、
前記交換羽根には、前記羽根本体の外縁側に嵌合する嵌合部が形成されて
おり、
前記交換羽根は、前記羽根本体の螺旋ピッチの1/2以下のサイズであり、
前記羽根本体に前記交換羽根を固定する際には、複数の前記交換羽根を前記羽根本体の外縁側に嵌合させた後、隣接する前記交換羽根同士を繋ぐことで前記羽根本体に固定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
ケーシングの内部にオーガを備えたケーシング付きオーガ
の交換羽根の固定方法であって、
前記オーガは、
回転軸と、
前記回転軸に螺旋状に設けられた羽根本体と、
前記羽根本体に交換可能に取り付けられた交換羽根と、
を備え、
前記羽根本体には、前記回転軸側から外縁に向けて厚みが薄くなるテーパがつけられており、
前記交換羽根には、
前記回転軸の軸方向に沿う面で断面視した際、前記羽根本体の外縁
部に嵌合する
略コ字形状の嵌合部が形成され
、前記羽根本体の上面及び下面に係合凹部が形成され、前記交換羽根の上内面及び下内面に係合凸部が形成されており、
前記羽根本体に前記交換羽根を固定する際には、前記交換羽根を前記羽根本体の外縁側に嵌合させるとともに、前記係合凹部に前記係合凸部を嵌め合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メンテナンスが容易で作業性能に優れたケーシング付きオーガ
の交換羽根の固定方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のケーシング付きオーガを一部破断視して示す側面図である。
【
図2】本実施形態のケーシング付きオーガを一部破断視して示す上面図である。
【
図3】ケーシング付きオーガのオーガを一部断面視して示す拡大側面図である。
【
図4】オーガの変形例を一部断面視して示す拡大側面図である。
【
図5】オーガの変形例を一部断面視して示す拡大側面図である。
【
図6】オーガの変形例を一部断面視して示す拡大側面図である。
【
図7】オーガの変形例を一部断面視して示す拡大側面図である。
【
図8】オーガの変形例を一部断面視して示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係るケーシング付きオーガの実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態のケーシング付きオーガ100は、
図1〜
図3に示すように、オーガ1と、オーガ1を内部に備えた略円筒状のケーシング2等を有している。
【0014】
オーガ1は、回転軸11と、回転軸11に螺旋状に設けられた羽根本体12と、羽根本体12に交換可能に取り付けられた交換羽根13等を備えている。このオーガ1の下端側の先端部にはオーガヘッド(図示省略)を取り付けることができる。
【0015】
羽根本体12は、螺旋形状を呈する鋼製の部材であり、回転軸11の周面に溶接されている。例えば、
図3に示すように、羽根本体12の内縁と回転軸11とを繋ぐ溶接ビード12aが設けられた状態で、羽根本体12は回転軸11に固設されている。この羽根本体12は、一定の幅の帯状の鋼材を回転軸11に螺旋状に巻き付けて溶接することで、寸法精度よく形成することができる。
また、羽根本体12には、回転軸11側から外縁に向けて厚みが薄くなるテーパがつけられている。例えば、
図3に示す羽根本体12の場合、回転軸11の軸方向に沿う面で断面視した際、羽根本体12の上面と下面には回転軸11の軸方向と直交しない向きにテーパがつけられており、上面は外縁に向かって下がる傾斜を有し、下面は外縁に向かって上がる傾斜を有している。
【0016】
交換羽根13は、羽根本体12の螺旋ピッチの1/2以下のサイズの螺旋形状を有している鋼製の部材である。
また、交換羽根13は、回転軸11の軸方向に沿う面で断面視した際、略コ字形状を呈する部材であり、交換羽根13の内周側には羽根本体12の外縁側に嵌合する嵌合部13aが形成されている。この嵌合部13aは、羽根本体12とテーパ嵌合するように、羽根本体12の外縁のテーパ形状に応じた溝形状に形成されている。この交換羽根13は鍛造で造られており、嵌合部13aなどは寸法精度よく形成されている。
そして、羽根本体12には、羽根本体12の螺旋ピッチの1/2以下のサイズであって、上面視した際の中心角θが180°以下の円弧形状(略C字形状)の交換羽根13が複数取り付けられている。この交換羽根13が羽根本体12の螺旋ピッチの1/2以下のサイズであることで、螺旋形状であっても羽根本体12に着脱しやすくなっている。
本実施形態の交換羽根13は、羽根本体12の螺旋ピッチの1/3のサイズであって、上面視した際の中心角θが120°の円弧形状を有している。
【0017】
この複数の交換羽根13は所定間隔をあけて羽根本体12に取り付けられ、隣接する交換羽根13と溶接されて繋がれている。例えば、
図2に示すように、羽根本体12に取り付けられた交換羽根13は溶接連結部15によって繋がれており、隣接する交換羽根13同士が溶接連結部15で繋がれたことで、交換羽根13が羽根本体12に固定されるようになっている。
特に、交換羽根13の嵌合部13aは、羽根本体12の外縁のテーパ形状に対応して寸法精度よく形成されており、羽根本体12に交換羽根13がしっかりとテーパ嵌合するので、溶接連結部15による部分的な溶接によって交換羽根13を羽根本体12に固定することが可能になっている。
【0018】
また、交換羽根13の外面の少なくとも一部には、硬化肉盛14が設けられている。
硬化肉盛14は、例えば、タングステンカーバイド系材料を肉盛溶接して形成した補強部であり、交換羽根13の上面から外側面に亘って設けられている。
【0019】
このような硬化肉盛14が設けられた交換羽根13は、予め工場などで精度よく製造することができ、また、羽根本体12も寸法精度よく形成されているので、交換羽根13を羽根本体12に取り付けた状態での交換羽根13(硬化肉盛14)の外径精度も良好に設計することができる。そして、交換羽根13の硬化肉盛14とケーシング2の内面との隙間を、例えば数mmと狭くすることが可能になる。
【0020】
また、この交換羽根13は、羽根本体12の外縁にテーパ嵌合させることができるので、施工現場であっても短時間で且つ容易に羽根本体12に交換羽根13を取り付けることができる。
そして、羽根本体12に取り付けられた交換羽根13は、隣接する交換羽根13同士を溶接してなる溶接連結部15で繋ぐことで、容易に羽根本体12に固定することができる。また、隣接する交換羽根13同士を繋いでいる溶接連結部15を切断することで、羽根本体12から任意の交換羽根13を取り外すことができる。
【0021】
以上のように、本実施形態のケーシング付きオーガ100であれば、オーガ1の羽根本体12に交換羽根13を容易に固定することができるとともに、容易に取り外すことができるので、交換羽根13が摩耗したり損傷したりした場合に容易に取り替えることができる。
特に、羽根本体12に取り付けた交換羽根13(硬化肉盛14)とケーシング2の内面との隙間を精度よく狭くすることができるので、ケーシング付きオーガ100の搬送物である破砕岩や砂礫、土砂などの排出効率を高めることができる。
また、交換羽根13(硬化肉盛14)とケーシング2の内面との隙間を狭くすることで、その隙間に破砕岩や砂礫が入り難くなるので、交換羽根13(硬化肉盛14)の摩耗が進行しにくく、交換羽根13の長寿命化を図ることができる。
さらに、交換羽根13(硬化肉盛14)とケーシング2の内面との隙間に破砕岩や砂礫が入り難くなることで破砕岩などを砕く破壊音を低減することができる。また、その隙間を狭くすることで、ケーシング2内でオーガ1が振れて生じる干渉音などの騒音を低減することができる。
【0022】
このように、このケーシング付きオーガ100は、メンテナンスが容易で作業性能に優れた機器であるといえる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
オーガ1の羽根本体12には、回転軸11側から外縁に向けて厚みが薄くなるテーパがつけられているが、例えば、
図4に示すように、回転軸11の軸方向に沿う面で羽根本体12を断面視した際、羽根本体12の下面に回転軸11の軸方向と直交しない向きにテーパがつけられて外縁に向かって上がる傾斜を有していれば、上面にはテーパがつけられていなくてもよい。
また、羽根本体12の上面にテーパがつけられて外縁に向かって下がる傾斜を有していれば、下面にはテーパがつけられていなくてもよい。
【0024】
また、オーガ1の羽根本体12の全体にテーパがつけられていなくてもよく、例えば、
図5に示すように、交換羽根13の嵌合部13aが接触する部分にテーパが形成されて外縁に向けて厚みが薄くなっていれば、羽根本体12の回転軸11側の根本部分は上面と下面とが平行となる厚みを有していてもよい。
【0025】
また、交換羽根13は、回転軸11の軸方向に沿う面で断面視した際に、略コ字形状を呈していなくてもよく、例えば、
図6に示すように、断面視略L字形状を呈する部材であってもよい。
【0026】
また、例えば、
図7に示すように、羽根本体12に係合凹部12bを形成するとともに、交換羽根13に係合凸部13bを形成し、その係合凹部12bに係合凸部13bを嵌め合わせるようにして、羽根本体12に交換羽根13を固定するようにしてもよい。さらに、交換羽根13を羽根本体12にかしめて、その固定強度を高めるようにしてもよい。
この羽根本体12の係合凹部12bに交換羽根13の係合凸部13bを係合させることで、ケーシング付きオーガ100の動作時に交換羽根13が脱落しない固定強度が得られる場合、隣接する交換羽根13同士を溶接してなる溶接連結部15を形成して、交換羽根13を羽根本体12に固定しなくてもよい。勿論、羽根本体12の係合凹部12bに交換羽根13の係合凸部13bを係合させたうえで、溶接連結部15を用いた固定を行ってもよい。
【0027】
また、例えば、
図8に示すように、羽根本体12と交換羽根13のそれぞれに上下に貫通した係止孔を形成し、互いに位置合わせした係止孔に係止ピン16を取り付けて、羽根本体12に交換羽根13を固定するようにしてもよい。なお、係止孔に係止ピン16を挿入する代わりに、係止ボルトを螺着して交換羽根13を羽根本体12に固定してもよい。
この係止孔に係止ピン16を挿入することで、ケーシング付きオーガ100の動作時に交換羽根13が脱落しない固定強度が得られる場合、隣接する交換羽根13同士を溶接してなる溶接連結部15を形成して、交換羽根13を羽根本体12に固定しなくてもよい。勿論、係止孔に係止ピン16を挿入したうえで、溶接連結部15を用いた固定を行ってもよい。
【0028】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 オーガ
2 ケーシング
11 回転軸
12 羽根本体
12b 係合凹部
13 交換羽根
13a 嵌合部
13b 係合凸部
14 硬化肉盛
15 溶接連結部
16 係止ピン
100 ケーシング付きオーガ