(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282488
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ロールアイロナー用乾燥度検出装置
(51)【国際特許分類】
D06F 71/00 20060101AFI20180208BHJP
D06F 63/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
D06F71/00 F
D06F63/02
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-34400(P2014-34400)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157031(P2015-157031A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390027421
【氏名又は名称】株式会社東京洗染機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(72)【発明者】
【氏名】三科 隆
(72)【発明者】
【氏名】杉本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西脇 和弘
【審査官】
村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−142337(JP,A)
【文献】
特開2009−103534(JP,A)
【文献】
特開2002−071584(JP,A)
【文献】
特開2004−170192(JP,A)
【文献】
特開昭62−094199(JP,A)
【文献】
特開2013−005857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 71/00
D06F 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連設した複数本の回転する加熱ロールと、この加熱ロールに密接して移動する耐熱性の無端ベルトとの間に被洗物を挟み込んで、加熱ロールに蒸気を供給することにより加熱して押さえながら回転移送することにより、被洗物の皺を伸ばしてプレス仕上げして乾燥させるロールアイロナーの被洗物出口の下流に設けた磁界を発生させる発振コイルと、
該発振コイルの磁界を検出すべく発振コイルと対向して配置され、洗濯・脱水・乾燥された被洗物を上記発振コイルとの間に通して磁界を検出する1対の検出コイルと、
被洗物中の残留水分量に応じて上記1対の検出コイルが検出する磁束変化から被洗物の乾燥度を算出する演算部と、
該演算部の出力データを受けて上記ロールアイロナーの加熱温度及び/又はロール回転速度を制御する制御部を備えるロールアイロナー用乾燥度検出装置の使用方法であって、
シーツ、浴衣を含む取り扱う被洗物すべての種類について、乾燥度100パーセントのときに上記検出コイルが検出した磁束と、他の乾燥度のときに上記検出コイルが検出した磁束とに基づいて、磁束−乾燥度・曲線を算出して上記演算部に設定しておく磁束−乾燥度・曲線設定工程と、
上記ロールアイロナーにて被洗物を乾燥・仕上げする際に、その被洗物の種類に応じて予め設定されている磁束−乾燥度・曲線を選択する被洗物種類選択工程と、
上記制御装置が乾燥度が上限を越えると判断した場合に、蒸気圧を下げて加熱ロールの温度を下げ、または加熱ロールの回転速度を速くし、乾燥度が下限を下回ると判断した場合に、蒸気圧を上げて加熱ロールの温度を上げ、または加熱ロールの回転速度を遅くして被洗物の乾燥状態を制御する乾燥状態制御工程と
を有することを特徴とするロールアイロナー用乾燥度検出装置の使用方法。
【請求項2】
上記演算部は、被洗物の完全乾燥時の磁束と下限となる乾燥の磁束の値とから、被洗物の乾燥度の上限及び/又は下限の磁束の値を予め設定していることを特徴とする請求項1に記載のロールアイロナー用乾燥度検出装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯・脱水した被洗物を連続して乾燥仕上げするロールアイロナーにおいて、被洗物の乾燥度合いを検出し適切に制御することにより被洗物を好適に乾燥させるとともに省エネルギーに貢献するロールアイロナー用乾燥度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、連続洗濯設備において、洗濯・脱水した被洗物を連続してプレス仕上げする装置としてカレンダーロールアイロナーが広く用いられている。このカレンダーロールアイロナーは、連設した複数本の回転する加熱ロールと、この加熱ロールに密接して移動する耐熱性の無端ベルトとの間に被洗物を挟み込んで加熱して押さえながら回転移送することにより、被洗物の皺を伸ばしてプレス仕上げして乾燥させるものである(特許文献1参照)。
【0003】
このロールアイロナーを用いる連続洗濯システムにあっては、シーツやタオルなどの平らなものが洗濯・乾燥されることが多く、この場合洗濯され脱水された被洗物は、一般的に残留水分率が40%程度でロールアイロナーに送られてくる。この残留水分率約40%の被洗物を、本ロールアイロナーにて処理する場合に、乾燥度98.0〜98.5%(完全乾燥を100%とする)にすることが経験的に適切とされている。
そして、この被洗物の乾燥度合いについては、実際の工程では測定器で測定するのではなく、ロールアイロナーの後工程の折り畳み工程において作業者が被洗物に触れることで乾燥度を感覚的に判断し、これにより供給蒸気圧やロールの回転速度などを制御することが行われているのが実態である。すなわち、加熱ロールに供給する蒸気圧を上げて温度を上げたり、ロールの回転速度を下げて被洗物に対する加熱時間を増やしたりすることが適宜選択されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−5857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乾燥度が低いと被洗物が生乾き(未乾燥)となってしまい、保管時に臭気を発生したり、カビが発生したりするおそれがあった。
また、高生産性を追求される状況ではロールの回転速度を下げることは、時間当たりの処理数に影響することから難しく、さらには前工程の脱水工程での脱水率が各種要因により異なったからといって、すぐにその脱水率に応じた加熱制御することも難しかった。
そこで、被洗物が未乾燥にならないよう作業者が感覚に頼って乾燥度を高めに設定することが通常行われていた。しかしながら、被洗物の乾燥度を高めに設定すること、すなわち過乾燥にすることは、エネルギーの損失であるとともに、被洗物を傷める原因ともなり、それに加えて高温になった被洗物を冷却する手間を要するという課題があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、被洗物の乾燥度を客観的に数値化して測定することにより、適正な乾燥度に制御することができ、省エネルギーに貢献することができるロールアイロナー用乾燥度検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、発振コイルと検出コイルとの間の磁束を検出して微小な金属の混入を検出する金属検出器を利用して、被洗物の乾燥度を検出することができるロールアイロナー用乾燥度検出装置を案出するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のロールアイロナー用乾燥度検出装置は、磁界を発生させる発振コイルと、該発振コイルの磁界を検出すべく発振コイルと対向して配置され、洗濯・脱水・乾燥された被洗物を上記発振コイルとの間に通して磁界を検出する検出コイルと、被洗物中の残留水分量に応じて上記検出コイルが検出する磁束変化から被洗物の乾燥度を算出する演算部と、該演算部の出力データを受けて上記ロールアイロナーの加熱温度及び/又はロール回転速度を制御する制御部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、官能に頼らざるを得なかった被洗物の乾燥度チェックを、客観的に数値化することが可能となり、これにより被洗物を過乾燥することなく、また未乾燥にすることもなく、無駄なエネルギーを用いることなく適正な乾燥状態にすることができるものである。
【0009】
また本発明のロールアイロナー用乾燥度検出装置は、演算部が、被洗物の完全乾燥時の磁束と下限となる乾燥の磁束の値とから、被洗物の乾燥度の上限及び/又は下限の磁束の値を予め設定していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のロールアイロナー用乾燥度検出装置とロールアイロナーの説明図である。
【
図2】本発明のロールアイロナー用乾燥度検出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るロールアイロナー用乾燥度検出装置を実施するための形態を詳細に説明する。
図1、
図2は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び機能は同様であるものとする。
【0012】
図1は、ロールアイロナー1と、その被洗物出口に配置されたロールアイロナー用乾燥度検出装置2と、これらと連携して被洗物に対する加熱を制御するための制御装置3を示している。
ロールアイロナー1は、1個又は複数個の加熱ロール4を備え(本実施例では4個)、その加熱ロール4はその内部に蒸気を通じることで外周面が加熱され、その加熱された外周面には無端ベルトが巻き付けられて周回し、そして加熱ロール4と無端ベルトとの間に被洗物を挟み込むことによりプレスしている。被洗物は、
図1のロールアイロナー1の左端の投入口から投入され、右端の被洗物出口1aから送出される。
【0013】
ロールアイロナー1の被洗物出口1aから送り出された被洗物は、
図2に示すように、折りたたみ機5に送られて折りたたまれた後、複数枚重ねられ積重被洗物6としてベルトコンベア7上を搬送される。ロールアイロナー用乾燥度検出装置2は、折りたたみ機5の下流に設置されており、積重被洗物6とベルトコンベア7を挟んで、上方に発振コイル8、下方に発振コイル8からの磁界(磁束)を検出する一対の検出コイル9を配置するとともに、この一対の検出コイル9の信号から被洗物の乾燥度を演算する演算部10を備えている。
【0014】
この磁界の測定には、乾燥後の被洗物に金属が混入していないかをチェックするために一般に用いられている金属検出器(探針機)の機能を応用することができる。
金属検出器の原理は、発振コイルと、この発振コイルからの磁界を検出する2つの検出コイルの間を金属が順に通過する際に、金属に近い検出コイルと遠い検出コイルとの間に検出する磁束の差が生じることから、この磁束の差を信号としてとらえることにより金属を検出するものである。
これに対し本実施例にあっては、積重被洗物6が、発振コイル8と検出コイル9の間を通過する際に、被洗物の残留水分率が0%、すなわち完全乾燥の場合には、被洗物が一対の検出コイル9上を順次通過しても一対の検出コイル9が検出する磁界にほとんど変化は生じないが、被洗物の残留水分率が高い(乾燥度が低い)と磁界が乱れて一対の検出コイルが検出する磁界に差が生じることが経験的に知られている。それは、従来の金属検出器を使用していた際に、針などの小さな金属を確実に検出すべく、検出感度の設定を上げた場合に、被洗物の残留水分率が高いと金属検出器がこれに反応して金属を探知したと誤作動することがあった。
【0015】
この金属検出器の場合は、検出すべき金属の大きさに応じて磁界の変化のスレッショルドレベル(しきい値)をユーザーが設定してオン・オフ制御しているが、本実施例にあっては、測定した磁界の相対変化を相対値として利用するものである。
本発明は、この磁界の変化の検出に着目して、適正な残留水分率(本実施例の場合は乾燥度の下限98.0及び/又は上限98.5%)における磁界を設定しておくことにより、ロールアイロナー用乾燥度検出装置2が乾燥度の下限・上限の間の適正な乾燥度を外れた値を検出した場合に、制御装置3が加熱ロールに対する蒸気圧及び/又は加熱ロールの回転数を制御し、これにより加熱ロールの温度をコントロールするものである。
【0016】
すなわち、所定の被洗物における乾燥度100%のときに検出コイル9が検出した磁束と、例えば乾燥度98%のときに検出コイル9が検出した磁束とから磁束−乾燥度・曲線を演算部10が算出する。この磁束−乾燥度・曲線は、被洗物の種類、例えばシーツ、浴衣、タオル等では異なることも考えられることから、本実施例のロールアイロナー用乾燥度検出装置2の演算部10にあっては、取り扱う被洗物すべての種類について磁束−乾燥度・曲線を算出して予め設定しておく。
そして、ロールアイロナーにて被洗物を乾燥・仕上げする際に、その被洗物の種類に応じて予め設定されている磁束−乾燥度・曲線を選択することにより、制御装置3は乾燥度が98.5%を超えると判断した場合に、蒸気圧を下げて加熱ロールの温度を下げたり、加熱ロールの回転速度を速めたりして被洗物の適正な乾燥状態に制御する。
また、乾燥度が98%を下回ると判断した場合は、制御装置3は蒸気圧を上げて加熱ロールの温度を上げたり、加熱ロールの回転速度を遅くしたりして被洗物の適正な乾燥状態に制御するものである。
【0017】
本実施例のロールアイロナー用乾燥度検出装置を用いてロールアイロナーに供給する蒸気圧をコントロールして加熱ロールの温度制御を行った場合に、
《従来》
0.75MPaの蒸気圧で乾燥度99.7%に乾燥させていた綿100%のシーツ(6.6m
2)1枚当たりの蒸気流量が、1.28〜1.67kg(単位時間当たりのシーツの枚数=ペースにより変化する)であったのに対し、
《本実施例》
0.5MPaの蒸気圧で乾燥度98.0%に乾燥させた綿100%のシーツ(6.6m
2)1枚当たりの蒸気流量が1.00〜1.44kgと減少し、蒸気ロスが14〜22%改善された。
【0018】
以上、本発明のロールアイロナー用乾燥度検出装置について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記実施形態におけるロールアイロナー用乾燥度検出装置の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のロールアイロナー用乾燥度検出装置は、連続洗濯設備のロールアイロナーを製造する産業において利用することができるものである。
【符号の説明】
【0020】
1:ロールアイロナー
2:ロールアイロナー用乾燥度検出装置
3:制御装置
4:被洗物出口
5:折りたたみ機
6:積重被洗物
8:発振コイル
9:検出コイル
10:演算部