(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クラッチ装置は、前記クラッチカバー組立体により前記クラッチディスク組立体に押圧荷重を作用させて前記エンジンからの動力を前記トランスミッションに伝達するものであり、
前記流体式動力伝達装置は前記エンジン側の部材に連結可能なインペラを有し、
前記クラッチカバー組立体は前記インペラを介して前記エンジンから動力が入力され、
前記クラッチ操作機構は、前記クラッチ操作荷重を作用させて前記クラッチディスク組立体への押圧荷重を解除し、前記クラッチ装置による動力の伝達を解除する、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に示すような装置では、エンジンからの動力を直接トランスミッション側に伝達するために、乾式クラッチ装置が用いられている。このため、乾式クラッチ装置においてクラッチをオン(動力の伝達)及びオフ(動力伝達の解除)するために、レリーズ機構が必要になる。このレリーズ機構は、例えば、乾式クラッチ装置に設けられたダイヤフラムスプリングの内周部を一方向に押圧するように構成されている。
【0006】
以上のようなレリーズ機構を備えた装置では、レリーズ荷重であるスラスト力がエンジンクランク軸に作用するため、エンジン側回転部品への負荷になっている。
【0007】
本発明の課題は、クラッチ装置及びトルクコンバータ等の流体式動力伝達装置を有する動力伝達装置において、クラッチ操作のための荷重を簡単な構成でトランスミッション側の固定された部品に支持させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る動力伝達装置は、エンジンからの動力をトランスミッションに伝達又は遮断する装置である。この動力伝達装置は、流体式動力伝達装置と、クラッチ装置と、駆動軸と、クラッチ操作機構と、固定部材と、軸受と、を備えている。流体式動力伝達装置は、エンジン側の部材に連結可能であり、エンジンからの動力を、作動流体を介してトランスミッションに伝達する。クラッチ装置は、流体式動力伝達装置を介してエンジンから動力が入力されるクラッチカバー組立体と、クラッチカバー組立体の内部に配置されたクラッチディスク組立体と、を有し、動力をトランスミッション側に伝達又は遮断する。駆動軸は、流体式動力伝達装置及びクラッチディスク組立体の回転中心部に配置され、クラッチディスク組立体の出力部及び流体式動力伝達装置の出力部に連結されて、動力をトランスミッションの入力軸に伝達する。クラッチ操作機構は、クラッチカバー組立体にクラッチ操作荷重を作用させて、クラッチ装置の動力の伝達又は伝達解除を行う。固定部材はトランスミッション側の部材に固定される。軸受は、クラッチ操作機構の操作荷重を受ける部材を回転自在に支持するとともに、操作荷重を受けて固定部材に伝達する。
【0009】
この装置では、クラッチ装置がオン(動力伝達状態)のときには、エンジンからの動力は、クラッチ装置を介して駆動軸に伝達され、さらにトランスミッションの入力軸に伝達される。一方、クラッチ装置がオフ(動力の伝達が遮断された状態)のときには、エンジンからの動力は流体式動力伝達装置を介して駆動軸に伝達され、さらにトランスミッションの入力軸に伝達される。
【0010】
以上のような動作において、クラッチ装置はクラッチ操作機構によって操作されてオン又はオフされる。このときのクラッチ操作荷重は、軸受によって受けられ、この軸受を介してトランスミッション側の部材に固定された固定部材に伝達される。
【0011】
ここでは、クラッチ操作機構の操作荷重が、軸受から固定部材及びトランスミッション側の回転及び移動が不能な部材に伝達される。したがって、簡単な構成でクラッチ操作荷重を、エンジン回転部品に負荷をかけることなく支持することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る装置では、クラッチ装置は、クラッチカバー組立体によりクラッチディスク組立体に押圧荷重を作用させてエンジンからの動力をトランスミッションに伝達するものである。流体式動力伝達装置はエンジン側の部材に連結可能なインペラを有している。クラッチカバー組立体はインペラを介してエンジンから動力が入力される。クラッチ操作機構は、クラッチ操作荷重を作用させてクラッチディスク組立体への押圧荷重を解除し、クラッチ装置による動力の伝達を解除する。
【0013】
本発明の別の側面に係る装置では、クラッチ操作荷重は、トランスミッション側からエンジン側に向かう第1方向の荷重である。
【0014】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、流体式動力伝達装置は、インペラに対向して配置されたタービンと、インペラの内周部とタービンの内周部との間に配置されたステータと、ステータの内周部に配置されたワンウェイクラッチと、ワンウェイクラッチを介してステータに連結されトランスミッション側の回転が禁止された部材に固定可能なステータシャフトと、
を有している。
【0015】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、クラッチカバー組立体はクラッチディスク組立体に対する押圧荷重を解除するためのレバー部材を有している。また、クラッチ操作機構は、係合部材と、作動機構と、を有している。係合部材は、レバー部材の内周部に係合して、レバー部材を第1方向に移動させる。作動機構は係合部材を第1方向に作動させる。
【0016】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、作動機構は、アクチュエータと、ピストンと、を有している。ピストンは、アクチュエータによって駆動され、係合部材に当接して係合部材を第1方向に移動させる。
【0017】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、作動機構は、アクチュエータと、係合部材を第1方向に移動させるための押圧部材と、レリーズレバーと、有している。レリーズレバーは、一端がアクチュエータによって駆動されるとともに他端が押圧部材に当接し、押圧部材を第1方向に移動させる。
【0018】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、駆動軸は回転軸に沿って延びる貫通孔を有し、ステータシャフトは貫通孔内においてトランスミッション側に延びている。
【0019】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、流体式動力伝達装置は、外周部がクラッチカバー組立体に連結された環状のカバーを有し、カバーの内周部と
駆動軸との間に設けられたシール部材をさらに備えている。
【0020】
ここでは、流体式動力伝達装置がシール部材によって他の部分から密閉されている。したがって、クラッチ装置を乾式タイプのクラッチ装置にすることができる。
【0021】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、流体式動力伝達装置に供給される作動流体は、エンジン及びトランスミッションで使用される作動流体と独立している。
【0022】
ここで、従来装置においては、トランスミッションやエンジンと作動流体を共用していた。しかし、流体式動力伝達装置に供給される作動流体を、エンジン及びトランスミッションで使用される作動流体と独立させることによって、その必要がなくなり、作動流体を自由に選択、変更することができる。
【0023】
本発明のさらに別の側面に係る装置では、流体式動力伝達装置の作動流体を貯留するタンクと、タンクと流体式動力伝達装置との間で作動流体を流通させる油回路と、をさらに備えている。流体式動力伝達装置は、クラッチカバーから動力が入力されるインペラと、インペラに対向して配置されたタービンと、を有している。そして、流体式動力伝達装置に供給される作動流体は、インペラのポンプ効果によってタンク、油回路、及び流体式動力伝達装置の間で循環する。
【0024】
ここでは、作動流体がインペラのポンプ効果によって循環するので、作動流体を流通させるためのオイルポンプ等の機器が不要になる。
【発明の効果】
【0025】
以上のような本発明では、クラッチ装置及び流体式動力伝達装置を有する動力伝達装置において、クラッチ操作荷重を簡単な構成でエンジン回転部品に負荷をかけることなく支持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
−第1実施形態−
[全体構成]
図1に本発明の第1実施形態による動力伝達装置1を示す。この装置1は、エンジンからの動力をトランスミッションに伝達又は遮断する装置である。
図1において、右側にエンジンが配置され、左側にトランスミッション(
図1では模式的に符合10で示している)が配置される。この動力伝達装置1は、トルクコンバータ2と、クラッチ装置3と、駆動軸としてのタービンシャフト4と、クラッチレリーズ機構5と、固定部材としてのハウジング6と、第1軸受7と、を備えている。また、この動力伝達装置1はタンク8を備えている。
【0028】
[トルクコンバータ2]
トルクコンバータ2は、エンジンからの動力を、作動流体を介してトランスミッション10に伝達する。トルクコンバータ2は、
図1及び
図2に示すように、インペラ11と、タービン12と、ステータ13と、カバー14と、を有している。なお、
図2は
図1におけるトルクコンバータ2の部分を抽出して示したものである。
【0029】
インペラ11は、エンジンのクランク軸15に円板状のドライブプレート16を介して連結されており、エンジンからの動力が入力される。インペラ11は、
図2に示すように、インペラシェル18と、複数のインペラブレード19と、インペラハブ20と、を有している。インペラハブ20は、内周部にエンジン側に延びる筒状部20aを有している。筒状部20aはクランク軸15の中心部に形成された凹部に嵌め込まれている。
【0030】
タービン12は、軸方向においてインペラ11に対向して配置されており、タービンシェル22と、複数のタービンブレード23と、タービンハブ24と、を有している。タービンハブ24は円板状のフランジ24aを有しており、フランジ24aの内周端からトランスミッション側に筒状のタービンシャフト4が延びている。なお、ここでは、タービンハブ24のフランジ24aとタービンシャフト4とを一体で形成しているが、それぞれを別部材で形成して互いに連結してもよい。フランジ24aの外周部には、リベット25によりタービンシェル22の内周部が固定されている。また、タービンシャフト4の先端(トランスミッション側の端部)には、トランスミッション10の入力軸(図示せず)が連結可能である。
【0031】
ステータ13は、インペラ11の内周部とタービン12の内周部との間に配置されており、ステータキャリア26と、ステータキャリア26の外周部に形成された複数のステータブレード27と、を有している。ステータキャリア26の内周部にはワンウェイクラッチ28が設けられている。ワンウェイクラッチ28の内輪28aは、ステータシャフト29の外周面に形成されたスプライン軸29aに係合している。
【0032】
ステータシャフト29は、タービンシャフト4の中心部の孔を貫通して軸方向に延びている。ステータシャフト29のエンジン側の第1端部はインペラハブハブ20の筒状部20aの内周部に挿入されている。このステータシャフト29の第1端部に、インペラ11がローラ軸受30によって回転自在に支持されている。また、ステータシャフト29のトランスミッション側の第2端部は、
図1に示すように、トランスミッション10を貫通し、トランスミッション10のエンジンとは逆側に設けられたサイドカバー31に固定されている。
【0033】
なお、ハウジング6と、サイドカバー31と、は互いに連結されており、回転及び軸方向の移動が不能である。
【0034】
ステータキャリア26とインペラ11との間、及びステータキャリア26とタービン12との間には、それぞれスラスト軸受33,34が設けられている。
【0035】
カバー14は、軸方向においてトルクコンバータ2とクラッチ装置3との間に配置されており、環状の円板部材である。カバー14の外周端部にはインペラシェル18のトランスミッション側の端部が溶接されている。カバー14の中心部には、
図2に示すように、大径凹部14aと、大径凹部14aよりも外径の小さい小径凹部14bと、が形成されている。また、カバー14の外周部において、クラッチ装置3側の側面には、摩擦面14cが形成されている。大径凹部14aと小径凹部14bとは、共にエンジン側に開口し、かつ互いに連通している。小径凹部14bのトランスミッション側の側面は、小径凹部14bの外径よりも小径の孔が貫通している。
【0036】
大径凹部14aには第2軸受36が装着されている。この第2軸受36によって、タービンシャフト4がカバー14に回転自在に支持されている。また、小径凹部14bには第1シール部材37が配置されている。この第1シール部材37により、トルクコンバータ2の作動油がクラッチ装置3側に漏れないようになっている。
【0037】
このような構成により、トルクコンバータ2に供給する作動流体を、トランスミッションやエンジンの潤滑油と別にすることができる。したがって、トルクコンバータ2の作動油を、自由に選択、変更することができ、設計の自由度が増す。
【0038】
[クラッチ装置3]
クラッチ装置3は、クラッチカバー組立体41と、クラッチディスク組立体42と、を有している。
【0039】
<クラッチカバー組立体41>
図1及び
図3に示すように、クラッチカバー組立体41は、カバー14に連結されており、エンジンからの動力がインペラ11及びカバー14を介して入力される。クラッチカバー組立体41は主に、クラッチカバー45と、プレッシャプレート46と、ダイヤフラムスプリング47とから構成されている。なお、
図3は
図1におけるクラッチ装置3の部分を抽出して示したものである。
【0040】
図3に示すように、クラッチカバー45は、中心部に円形の開口を有する円板部45aと、円板部45aの外周部からエンジン側に延びる筒状部45bと、を有している。筒状部45bの先端がカバー14の外周面に溶接により固定されている。
【0041】
クラッチカバー45の円板部45aには、径方向の中間部に複数のスタッドピン49が装着されている。スタッドピン49は、胴部49aと、胴部49aより大径のつば部49bと、を有している。胴部49aの一端がクラッチカバー45の円板部45aにかしめ固定されており、つば部49bは胴部49aの他端に形成されている。
【0042】
プレッシャプレート46は、エンジン側の側面に押圧面46aが形成された環状の部材である。プレッシャプレート46には、押圧面46aと反対側の側面に、軸方向に突出する環状の突出部46bが形成されている。プレッシャプレート46は、複数のストラッププレート(図示せず)によって、クラッチカバー45に対して、軸方向には移動可能であるが相対回転不能に連結されている。
【0043】
ダイヤフラムスプリング47は、クラッチカバー45の円板部45aとプレッシャプレート46との間に配置された円板状の部材であり、環状の押圧部47aと、押圧部47aの内周部から内周側に延びる複数のレバー部47bと、から構成されている。押圧部47aは、弾性変形が可能であり、プレッシャプレート46の突出部46bに当接している。押圧部47aの内周部は1対のワイヤリング50を介してクラッチカバー45とスタッドピン49のつば部49bとの間に支持されている。
【0044】
<クラッチディスク組立体42>
クラッチディスク組立体42は、クラッチカバー組立体41からの動力をトランスミッション側に伝達又は遮断するものであり、軸方向に対向して配置されたクラッチプレート52及びリティニングプレート53と、クラッチディスク54と、ハブフランジ55と、複数のトーションスプリング56と、を有している。
【0045】
クラッチプレート52及びリティニングプレート53は、円板状の部材であり、円周方向に所定の間隔で複数のスプリング支持部52a,53aを有している。また、クラッチディスク54はクラッチプレート52の外周部に固定されている。クラッチディスク54は、内周部がクラッチプレート52に固定された複数のクッショニングプレート57と、クッショニングプレート57の両面に固定された1対の摩擦部材と、を有している。
【0046】
ハブフランジ55は、中心部に形成されたハブ55aと、ハブ55aから外周側に延びる円板状のフランジ55bと、を有している。ハブ55aの中心部にはスプライン孔55cが形成されており、このスプライン孔55cがタービンシャフト4の外周面に形成されたスプライン軸4aに係合している。フランジ55bはクラッチプレート52とリティニングプレート53との軸方向間に配置されている。また、フランジ55bには、円周方向の所定の間隔で複数の開口55dが形成されている。
【0047】
複数のトーションスプリング56は、クラッチプレート52及びリティニングプレート53とハブフランジ55とを回転方向に弾性的に連結する。各トーションスプリング56は、フランジ55bの開口55dに収容されるとともに、クラッチプレート52及びリティニングプレート53の支持部52a,53aに支持されている。
【0048】
[クラッチレリーズ機構5]
クラッチレリーズ機構5は、クラッチ装置3のクラッチカバー組立体41にレリーズ荷重を作用させて、クラッチディスク組立体42による動力の伝達を解除する機構である。クラッチレリーズ機構5は、
図1及び
図4に示すように、レリーズ軸受60と、レリーズ軸受60をエンジン側に移動させるための作動機構61と、を有している。
【0049】
レリーズ軸受60は、係合部材としての内輪60aと、外輪60bと、転動体60cと、を有している。内輪60aのエンジン側の端部は外周側に折り曲げられており、この折り曲げられた部分がダイヤフラムスプリング47の内周端部(レバー部47bの内周端部)に当接している。外輪60bのトランスミッション側の端部は内周側に折り曲げられている。
【0050】
作動機構61は、アクチュエータ62と、ピストン63と、から構成されている。
【0051】
ここで、ハウジング6の内周部において、エンジン側の側面には第1支持カバー65が固定され、トランスミッション側の側面には第2支持カバー66が固定されている。第1支持カバー65には、径方向の中間部にエンジン側に突出する環状の突起部65aが形成されている。そして、この突起部65aとハウジング6と第2支持カバー66とを貫通するようにレリーズ用の油路PLが軸方向に延びて形成されている。
【0052】
アクチュエータ62は、油路PLに圧油を供給するものである。なお、図示していないが、アクチュエータ62には油路PLをドレンするための回路が設けられている。ピストン63は、環状に形成されたプレート部材であり、本体部63aと、内周延長部63bと、を有している。本体部63aはトランスミッション側に開くキャップ状に形成されている。本体部63aは、第1支持カバー65の突起部65aに嵌まり、軸方向に移動自在である。内周延長部63bは、本体部63aの内周端からさらに内周側に延び、レリーズ軸受60の外輪60bの折り曲げ部に、トランスミッション側から当接している。
【0053】
このような構成では、アクチュエータ62から油路PLに圧油が供給されると、ピストン63が突起部65aに案内されてエンジン側に移動する。すると、ピストン63の内周延長部63bがレリーズ軸受60を介してダイヤフラムスプリング47の内周端部を同方向に押す。すると、ダイヤフラムスプリング47はワイヤスプリング50によって支持された部分を支点として外周端部(押圧部47a)がエンジン側に移動する。すなわち、ダイヤフラムスプリング47によるプレッシャプレート46への押圧が解除され、プレッシャプレート46はストラッププレートによってカバー14の摩擦面14cから離れる方向に移動する。これによってクラッチディスク組立体42によるエンジンからトランスミッション側への動力の伝達が解除される。
【0054】
[第1軸受7]
第1軸受7は、
図1及び
図5に示すように、タービンシャフト4の外周面に装着されている。
図5は
図1を拡大した部分図である。より詳細には、第1軸受7は、タービンシャフト4をハウジング6に対して回転自在に支持するものであり、タービンシャフト4の外周面に内輪7aが圧入されている。タービンシャフト4の外周面にはスナップリング67が固定されており、内輪7aのトランスミッション側の側面はこのスナップリング67に当接している。また、第1軸受7の外輪7bはハウジング6の中心孔6aに装着されている。そして、外輪7bのエンジン側の側面は、第1支持カバー65の内周部の側面に当接している。
【0055】
このような構成では、タービンシャフト4に作用するエンジン側へのスラスト力(主には、レリーズ機構5によるレリーズ荷重)は、スナップリング67から第1軸受7の内輪7a、転動体7c、及び外輪7bを介して第1支持カバー65及びハウジング6に伝達される。
【0056】
[タンク8及び油回路70]
タンク8は、トルクコンバータ2の作動流体を貯留するものであり、エンジンやトランスミッション10とは別に設けられている。そして、
図1に示すように、タンク8とトルクコンバータ2とは油回路70によって連結され、トルクコンバータ2のインペラ11のポンプ効果によって、作動流体がオイルポンプ等の機器なしに循環させられるようになっている。
【0057】
油回路70は、タービンシャフト4及びハウジング6やステータシャフト29等に形成された複数の油路、タービンシャフト4とステータシャフト29との間の隙間を含む。
【0058】
具体的には、
図6に示すように、第2支持カバー66の内周部には軸方向に貫通する第1油路P1が形成されている。第2支持カバー66とハウジング6の内周部との間には隙間が形成され、この隙間を通じて、第1油路P1とタービンシャフト4の外周部の第1空間S1とが連通している。第1空間S1のトランスミッション側、すなわち第2支持カバー66の内周面とタービンシャフト4との間には第2シール部材72が設けられている。
【0059】
第1空間S1の内周側において、タービンシャフト4には径方向に貫通する第2油路P2が形成されている。第2油路P2のさらに内周側において、ステータシャフト29の外周面には環状の溝29aが形成されている。ステータシャフト29の中心部には、エンジン側に開口し、かつ環状の溝29aよりもトランスミッション側に延びる第4油路P4が形成されている。そして、環状の溝29aには、溝29aの底部から径方向に延びて第4油路P4に到達する第3油路P3が形成されている。
【0060】
なお、第1軸受7はシール付きの軸受である。したがって、第1空間S1に供給された作動油は、第2シール部材72によってトランスミッション側に漏れず、また第1軸受7によって第1軸受7のクラッチ装置3側に漏れない。
【0061】
ステータシャフト29のエンジン側の端部とインペラハブ20との間には第2空間S2が形成されており、油路となっている。
【0062】
タービンシャフト4において、第1軸受7のエンジン側には、径方向に貫通する第5油路P5が形成されている。この第5油路P5によって、ステータシャフト29とタービンシャフト4との間の隙間と、タービンシャフト4の外周側の第3空間S3とが連通している。第3空間S3はタービンシャフト4の外周面と第1支持カバー65の内周面との間の空間である。第1支持カバー65の内周面とタービンシャフト4の外周面との間には第3シール部材73が配置されている。このため、第3空間S3に供給された作動油は、第3シール部材73によってクラッチ装置3側に漏れず、第1軸受7によって第1空間S1側に漏れない。
【0063】
また、第1支持カバー65とハウジング6との間には、油路を構成する隙間が形成されている。ハウジング6及び第2支持カバー66には、軸方向に延びて互いに連通する第6油路P6が形成されている。そして、第1支持カバー65とハウジング6との間の隙間の外周部と第6油路P6とが連通している。
【0064】
また、第1油路P1の開口部とタンク8との間には第1外部油路PO1が設けられ、第6油路P6とタンク8との間には第2外部油路PO2が設けられている。
【0065】
以上のような構成では、タンク8→第1外部油路PO1→第1油路P1→第1空間S1→第2油路P2→第3油路P3→第4油路P4→第2空間S2→インペラハブ20とステータキャリア26との間の隙間→トルクコンバータ2の内部→タービンハブ24とステータキャリア26との間の隙間→ステータシャフト29とタービンシャフト4との間の隙間→第5油路P5→第3空間S3→第6油路P6→第2外部油路PO2→タンク8の経路で、作動油は循環することが可能である。
【0066】
[動作]
この動力伝達装置1では、クラッチレリーズ機構5が作動していない場合は、クラッチ装置3はオン(動力伝達状態)である。具体的には、ダイヤフラムスプリング47によってプレッシャプレート46がカバー14側に押圧され、これによりクラッチディスク組立体42のクラッチディスク54がプレッシャプレート46の押圧面46aとカバー14の摩擦面14cとの間に挟持される。これにより、エンジンからの動力は、クラッチカバー組立体41からクラッチディスク組立体42を介してタービンシャフト4に伝達される。そして、このタービンシャフト4に伝達された動力は、タービンシャフト4に連結されたトランスミッションの入力軸に伝達される。
【0067】
一方、クラッチレリーズ機構5によりクラッチ装置3がオフ(動力遮断状態)にされた場合は、エンジンからの動力はトルクコンバータ2を介してトランスミッション側に伝達される。より詳細には、前述のように、アクチュエータ62によりピストンがエンジン側に移動させられると、レリーズ軸受60がトランスミッション側に移動し、これによりダイヤフラムスプリング47によるプレッシャプレート46への押圧が解除される。すると、プレッシャプレート46はストラッププレートによってカバー14の摩擦面14cから離れる方向に移動し、クラッチディスク組立体42によるエンジンからトランスミッション側への動力の伝達が解除される。
【0068】
このような状態では、エンジンからクラッチカバー組立体41に伝達された動力は、カバー14からインペラ11に入力される。そして、動力は、インペラ11から作動流体を介してタービン12に伝達され、さらにタービンシャフト4に伝達される。
【0069】
トルクコンバータ2には、タンク8から第1外部油路PO1、各油路P1〜P4、各部材の隙間を介してトルクコンバータ2の流体室内部に供給される。また、流体室からの作動流体は、各部材の隙間、油路P5〜P6、及び第2外部油路PO2を介してタンク8に戻される。
【0070】
なお、以上のような作動流体の循環は、インペラ11のポンプ効果によって行われる。したがって、オイルポンプ等の機器は不要となる。
【0071】
−第2実施形態−
図7に第2実施形態による動力伝達装置を示す。第2実施形態は、クラッチレリーズ機構のみが第1実施形態と異なり、他の構成は同じである。
【0072】
[クラッチレリーズ機構5’]
クラッチレリーズ機構5’は、第1実施形態と同様に、クラッチ装置3のクラッチカバー組立体41にレリーズ荷重を作用させて、クラッチディスク組立体42による動力の伝達を解除する機構である。クラッチレリーズ機構5’は、
図7に示すように、第1実施形態と同様のレリーズ軸受60と、レリーズ軸受60をエンジン側に移動させるための作動機構81と、を有している。
【0073】
レリーズ軸受60は、第1実施形態と同様に、内輪60aと、外輪60bと、転動体60cと、を有している。
【0074】
作動機構81は、アクチュエータ82と、レリーズレバー83と、押圧部材84と、から構成されている。
【0075】
アクチュエータ82は、エア又は油圧シリンダあるいはボールねじ等によって構成されており、軸方向に進退するロッド82aを有している。レリーズレバー83は、径方向に長い部材であり、径方向の中間部がハウジング6の支持部6aに回動自在に支持されている。レリーズレバー83の外周端には、ロッド82aの先端が固定されている。また、レリーズレバー83の内周端は押圧部材84に当接している。
【0076】
より詳細には、押圧部材84は、内周円板部84aと、外周円板部84bと、これらの円板部84a,84bとの間に設けられた筒状部84cを有している。筒状部84cは軸方向に延びている。そして、外周円板部84bに、レリーズレバー83の内周端がトランスミッション側から当接している。また、内周円板部84aはレリーズ軸受60の外輪60bに、トランスミッション側から当接している。
【0077】
このような構成では、アクチュエータ82によってロッド82aが駆動されると、レリーズレバー83が支持部6aを支点として
図7において反時計回りに回動する。これにより、レリーズレバー83の内周端がクラッチ装置3側に移動し、レリーズ軸受60を介してダイヤフラムスプリング47の内周端部を同方向に押す。以降の動作は第1実施形態と同様である。
【0078】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0079】
(a)トルクコンバータ2及びクラッチ装置3の具体的な構成は前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0080】
(b)前記実施形態では、流体式動力伝達装置としてトルクコンバータを採用したが、フルードカップリングを採用してもよい。
【0081】
(c)前記実施形態では、クラッチ装置をノーマルクローズタイプ(クラッチ操作荷重が作用していない場合はクラッチオン(動力伝達)状態で、クラッチ操作荷重を作用させることによってクラッチをオフ(動力伝達の解除)状態にする構成)としたが、逆にノーマルオープンタイプにしてもよい。