特許第6282506号(P6282506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282506
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20180208BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20180208BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20180208BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F04C29/00 T
   F04B39/00 106A
   H02K5/22
   H02K3/52 E
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-63465(P2014-63465)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-183668(P2015-183668A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(72)【発明者】
【氏名】小林 英司
(72)【発明者】
【氏名】鳴田 知和
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−87675(JP,A)
【文献】 特表2001−501435(JP,A)
【文献】 特開2010−104212(JP,A)
【文献】 特開2003−158846(JP,A)
【文献】 特開2011−185229(JP,A)
【文献】 特開2013−148037(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0251573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00−29/12
F04B 39/00
H02K 3/52
H02K 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、前記電動モータを駆動するためのインバータと、前記電動モータによって駆動され冷媒を圧縮する圧縮機構とを備える電動圧縮機であって、
前記電動モータは、
ロータと、
前記ロータの径方向外側に配置されるステータコアと、
前記ステータコアの端部に配置され電気的絶縁性を有するボビンと、
前記ボビン及び前記ステータコアに巻回されるコイルと、
前記インバータと前記コイルとの間を電気的に接続する接続端子を有するコネクタハウジングであって、前記ボビンに前記ステータコアの外周面より内側に位置するように設けられるコネクタハウジングと、
を含む、電動圧縮機。
【請求項2】
前記コネクタハウジングは、前記ボビンに対して着脱可能である、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記ボビンは、前記インバータに向かって延伸する延伸部であって、ボビン径方向に貫通する貫通孔又はボビン径方向外側に形成される溝部を有する延伸部を含む構成とし、
前記コネクタハウジングは、前記延伸部と嵌合する嵌合孔と、前記貫通孔又は前記溝部に係合する突起部と、を有する、請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記インバータは、雄端子からなる通電端子を有し、
前記コネクタハウジングは、当該コネクタハウジングのインバータ側端面に前記接続端子と連通する開口部を有し、
前記接続端子は、予め前記コイルの端部と接続されると共に、前記通電端子を内挿可能な雌端子からなる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記開口部は前記接続端子に向かうにつれて縮径する縮径部を含む、請求項4に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記通電端子、前記接続端子及び前記開口部は、それぞれ複数設けられ、
前記各開口部及び前記各接続端子は、前記各通電端子に対応して前記ボビンの円周方向に沿ってそれぞれ配置されている、請求項4又は5に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮機構は、スクロール式圧縮機である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置などにおいて冷媒の圧縮に用いられ、圧縮機構、圧縮機構を駆動する電動モータ及び電動モータを駆動するためのインバータが一体化された電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置などに使用される電動圧縮機では、一般的に車両のバッテリからの直流電流がインバータにより交流電流に変換されて、接続端子を介して電動モータへ給電されている。
【0003】
この種の電動圧縮機として、例えば特許文献1に記載の電動圧縮機が知られている。特許文献1に記載の電動圧縮機は、環状のステータコアとロータとを有する電動モータと、モータ駆動用のインバータと、電動モータによって駆動される圧縮機構とを備えている。前記インバータは通電端子としてのハーメチック端子(雄端子)を有しており、このハーメチック端子はクラスタハウジング内に備えられた接続端子(雌端子)を介して前記電動モータのステータコイル端部のリード線と導通する。そして、このクラスタハウジングはステータコアの外周面に配置されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−42409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電動圧縮機においては、クラスタハウジングをステータコアの径方向外側に配置させているため、電動圧縮機の胴回りの外形寸法が大きくなる。このため、車両等において電動圧縮機を搭載するスペースに余裕がなく、特に電動圧縮機の胴回りの外形寸法の制約が厳しい場合には、特許文献1に記載の電動圧縮機を用いることができない可能性がある。また、クラスタハウジングを取り付けるためにステータコアに係合用の溝を形成する構成であるため、ステータコアの透磁率の低下及びその不均衡が生じ、ひいては、モータ効率の低下を招く可能性もある。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであり、モータ効率の低下及び胴回り外形寸法の増大を招くことなく、インバータと電動モータとの間の導通を行うことが可能な電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面による電動圧縮機は、電動モータと、前記電動モータを駆動するためのインバータと、前記電動モータによって駆動され冷媒を圧縮する圧縮機構とを備える電動圧縮機であって、前記電動モータは、ロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータコアと、前記ステータコアの端部に配置され電気的絶縁性を有するボビンと、前記ボビン及び前記ステータコアに巻回されるコイルと、前記インバータと前記コイルとの間を電気的に接続する接続端子を有するコネクタハウジングであって、前記ボビンに前記ステータコアの外周面より内側に位置するように設けられるコネクタハウジングと、を含む、構成とする。
【発明の効果】
【0008】
かかる構成の電動圧縮機によれば、電気的絶縁性を有するボビンが、ロータの径方向外側に配置されるステータコアの端部に配置され、インバータと電動モータのコイルとの間を電気的に接続する接続端子を有するコネクタハウジングが、ボビンにステータコアの外周面より内側に位置するように設けられる構成であるので、コネクタハウジングをステータコアの外周面より突出しないように設けることができるため、胴回りの外形寸法の増大を招くことがない。
そして、コネクタハウジングは、ステータコアの端部に配置されるボビンに設けられるので、コネクタハウジング取り付け用にステータコアを加工等する必要がなく、コネクタハウジング取り付けに起因するステータコアの透磁率の低下及びその不均衡の発生を防止しつつ、インバータと電動モータとの間の導通を行うことができる。
【0009】
このようにして、モータ効率の低下及び胴回り外形寸法の増大を招くことなく、インバータとモータとの間の導通を行うことが可能な電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による電動圧縮機の断面図である。
図2】上記実施形態の電動圧縮機のステータユニットを組み立てた状態を示す斜視図である。
図3図2のステータユニットの分解斜視図である。
図4図2に示すA部の拡大図である。
図5】上記実施形態の電動圧縮機の通電端子とコネクタハウジングの配置関係を説明するための斜視図である。
図6図1に示すB部の拡大図である。
図7図6に示した通電端子及びコネクタハウジングをコネクタハウジングの長手方向を含む別の断面で示した要部断面図である。
図8】上記実施形態の電動圧縮機のコネクタハウジングの平面図であり、接続端子装着前の状態を示す図である。
図9図8に示すC矢視方向から見たコネクタハウジングの側面図であり、接続端子装着前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動圧縮機の断面図である。
本実施形態による電動圧縮機100は、例えば車両用空調装置の冷媒回路に設けられ、当該車両用空調装置の冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、電動モータ1と、電動モータ1を駆動するためのインバータ10と、電動モータ1によって駆動される圧縮機構20と、を有する。電動モータ1には、インバータ10からの受電のためのコネクタハウジング30が備えられる。
【0012】
本実施形態において、電動圧縮機100は、いわゆるインバータ一体型の圧縮機であり、図1に示すように、電動モータ1及びインバータ10をその内側に収容するメインハウジング41と、圧縮機構20をその内側に収容する圧縮機構ハウジング42と、インバータカバー43と、圧縮機構カバー44とを有する。そして、これら(41,42,43,44)が、ボルトなどの接合手段(図示省略)によって一体的に接合されて電動圧縮機100のハウジング40を構成している。
【0013】
前記メインハウジング41は、環状の周壁部41aと仕切壁部41bとから構成される。この仕切壁部41bは、メインハウジング41内を、電動モータ1を収容する空間とインバータ10を収容する空間とに仕切る隔壁をなす。周壁部41aの一端側(図1中、左側)の開口を介してインバータ10がメインハウジング41内に収容され、当該開口はインバータカバー43によって閉塞される。また、周壁部41aの他端側(図1中、右側)の開口を介して電動モータ1がメインハウジング41内に収容され、当該開口は圧縮機構ハウジング42(後述の底壁部42b)によって閉塞される。仕切壁部41bには、その径方向中央部に電動モータ1の後述する回転軸5aの一端部を支持するための筒状の支持部41b1が、周壁部41aの他端側に向って突設されている。
また、インバータ10から電動モータ1への給電用の後述する通電端子11は、仕切壁部41bの適宜位置に開設された貫通孔を介して気液密に、当該仕切壁部41bを貫通している。この気液密の構造については後述する。
【0014】
前記圧縮機構ハウジング42は、メインハウジング41との接合側とは反対側が開口した、一端開口の筒状に形成されており、当該開口を介して圧縮機構20が圧縮機構ハウジング42内に収容されるようになっている。圧縮機構ハウジング42の開口は、圧縮機構カバー44によって閉塞される。圧縮機構ハウジング42は、円筒部42aとその一端側の底壁部42bとから構成され、これら円筒部42aと底壁部42bとによって区画される空間内に圧縮機構20が収容される。底壁部42bは、メインハウジング41内と圧縮機構ハウジング42内とを仕切る隔壁をなす。また底壁部42bには、その径方向中央部に電動モータ1の回転軸2aの他端部を挿通させる貫通孔が開設されると共に、この回転軸2aの他端側を支持するベアリング45を嵌合させる嵌合部が形成されている。
【0015】
また、図示省略するが、ハウジング40には、前記冷媒の吸入ポート及び吐出ポートが形成されており、例えば、吸入ポートから吸入される冷媒はメインハウジング41内を通流した後、圧縮機構ハウジング42内に吸入される。これにより、電動モータ1は吸入冷媒により冷却される。圧縮機構20にて圧縮された冷媒は、吐出ポートより吐出される。
【0016】
前記電動モータ1は、ロータ2と、ロータ2の径方向外側に配置されるステータコア3と、ステータコア3の端部に配置され電気的絶縁性を有するボビン4と、ボビン4及びステータコア3に巻回されるコイル5と、コネクタハウジング30とを含んで構成され、例えば、三相交流モータが適用される。例えば車両のバッテリ(図示省略)からの直流電流は、インバータ10により交流電流に変換され、後述するようにインバータ10の通電端子11及びコネクタハウジング30内の接続端子32を介して電動モータ1へ給電されている。ステータコア3と、ボビン4と、コイル5とを含んで、電動モータ1のステータユニットが構成される。まず、このステータユニットについて、以下に詳述する。
【0017】
図2は電動モータ1の上記ステータユニットを組み立てた状態を示す斜視図であり、図3はステータユニットの分解斜視図であり、図4図2に示すA部の拡大図である。
前記ステータコア3は、図3に示すように、バックヨーク3aと、このバックヨーク3aの径方向内側に突設される複数のティース3bとを有し、例えば、ケイ素鋼板を積層して構成される。各ティース3bは、バックヨーク3aの周方向に互いに所定間隔離間して形成される。各ティース3bの間はそれぞれスロット部3cとなる。各スロット部3cには、当該スロット部3cの形状に合わせて適宜形状(例えば断面概略C字状)に形成された絶縁フィルム6が挿入される。これにより、コイル5ステータコア3との間の電気的な絶縁を保持する。また、各スロット部3cには、上記絶縁フィルム6と長手方向の寸法を合わせて適宜形状に形成された絶縁フィルム7も挿入される。これにより、互いに隣接するティース3bにそれぞれ巻回されたコイル5どうしの電気的な絶縁を保持する。
【0018】
前記ボビン4は、ステータコア3の端部に配置されものであり、例えば、ステータコア3の軸方向両端にそれぞれ配置される。ボビン4は、例えば合成樹脂により形成されており、電気的な絶縁性を有する。
【0019】
本実施形態において、ボビン4は、具体的には、インバータ10側に配置されるインバータ側ボビン4aと、圧縮機構20側に配置される圧縮機構側ボビン4bとを含んで構成される。
前記インバータ側ボビン4aは、円筒部4a1と、この円筒部4a1の径方向内側に突設される複数の突設部4a2とを有する。円筒部4a1は、その外径がステータコア3のバックヨーク3aの外径より小さくなるように形成されている。突設部4a2は、ステータコア3のティース3bと対応する位置に突設され、その突端部が軸方向外方(インバータ側)に向って屈曲形成される。このように屈曲させることにより、コイル5の巻回時のコイル脱落を防止している。
【0020】
前記圧縮機構側ボビン4bは、円筒部4b1と、この円筒部4b1の径方向内側に突設される複数の突設部4b2とを有する。円筒部4b1は、その外径がステータコア3のバックヨーク3aの外径より小さくなるように形成されている。突設部4b2は、ステータコア3のティース3bと対応する位置に突設され、その突端部が軸方向外方(インバータ10とは反対側)、つまり、インバータ側ボビン4aの突設部4a2の突端部とは反対の方向に、屈曲形成される。このように一対のボビン4a,4bの突設部4a2,4b2の各突端部を互いに反対方向に屈曲させることにより、コイル5を緩みなく確実に巻回させることができる。
ここで、インバータ側ボビン4aは、その突設部4a2がステータコア3のティース3bと重なるように、ステータコア3の軸方向一端側に配置される。一方、圧縮機構側ボビン4bは、その突設部4b2がステータコア3のティース3bと重なるように、ステータコア3の軸方向他端に配置される。つまり、ティース3bの軸方向両端面は突設部4a2、4b2により覆われ、ティース3bのスロット部3c側の側面は絶縁フィルム6に覆われる。このように、各ティース3bは、その突設端面を除く外周面が絶縁性の部材(4a2,4b2,6)で覆われる。この状態で、各ティース3bの周りにコイル5が巻回されている。そして、絶縁フィルム7は、互いに隣接するティース3bにそれぞれ巻回されたコイル5の間に挿入されている。このようにして、コイル5がボビン4及びステータコア3に巻回される。
【0021】
また、本実施形態において、ボビン4(インバータ側ボビン4a)は、例えば、インバータ側端部(つまり、円筒部4a1のインバータ側端部)に、インバータ10に向かって延伸する延伸部4a3を含む。この延伸部4a3は、ボビン径方向に貫通する貫通孔4a4(図3参照)を有する。延伸部4a3は、図4に示すように、コネクタハウジング30の後述する嵌合孔31eに嵌合し、嵌合した状態で、突起部31fが貫通孔4a4に係合する。これにより、ボビン4(4a)にコネクタハウジング30が係合して取り付けられる。また、延伸部4a3の端部4a3’(図4参照)は傾斜形成されている。
なお、延伸部4a3は、貫通孔4a4を有するものとして説明したが、これに限らず、図示省略するが、そのボビン径方向外側に形成される溝部4a5を有するものとしてもよい。この場合、この溝部4a5に、コネクタハウジング30の突起部31fが係合する。
【0022】
図1に戻って、前記ロータ2は、回転軸2aに挿入され、ステータコア3の径方向内側で回転可能に支持される。回転軸2aの一端部は、メインハウジング41に形成された支持部41b1に回転可能に支持される。回転軸2aの他端部は、圧縮機構ハウジング42に形成された貫通孔を挿通して、ベアリング45によって回転可能に支持される。ロータ2は、円筒状の永久磁石等からなるものである。回転軸2aは、ロータ2の径方向中央に形成された貫通孔に焼嵌め等により嵌合されて、ロータ2と一体となる。インバータ10からの給電により、ステータコア3に磁界が発生すると、ロータ2に回転力が作用し、これにより、回転軸2aが回転駆動される。回転軸2aの他端部は、圧縮機構20の後述する可動スクロール22を旋回駆動可能に連結されている。
【0023】
前記インバータ10は、電動モータ1を駆動するためのものである。
本実施形態において、インバータ10は、通電端子11を有し、車両のバッテリ(図示省略)からの直流電流を交流電流に変換して、この交流電流は通電端子11から出力される。インバータ10は、メインハウジング41の周壁部41aの一端側の開口を介してメインハウジング41内に収容されて、ロータ2の回転軸2aの一端側に配置される。
【0024】
前記通電端子11は、電動モータ1への給電用の端子であり、コネクタハウジング30内に保持された接続端子32と電気的に接続される。後述するように、接続端子32は、予めコイル5の端部(リード線5a)と接続されている。したがって、通電端子11を接続端子32に接続することにより、インバータ10から電動モータ1へ給電することができる。
【0025】
本実施形態において、通電端子11は、図1及び図5図7に示すように、インバータ10から電動モータ1に向って延伸する雄端子からなる。
図5は上記実施形態の電動圧縮機の通電端子11とコネクタハウジング30の配置関係を説明するための斜視イメージ図であり、図6図1に示すB部の拡大図であり、図7図6に示した通電端子及びコネクタハウジングをコネクタハウジングの長手方向を含む別の断面で示した要部断面図である。なお、図5においては、説明の便宜のためメインハウジング41及びインバータカバー43を図示省略し、通電端子11とコネクタハウジング30との接続前の位置関係を概略示している。
【0026】
具体的には、雄端子からなる通電端子(以下において、リードピンという)11は、図5に示すように、複数(3本)設けられている。各リードピン11は、後述するハーメチックプレート12を貫通して、互いに間隔を空けて配列されている。
【0027】
各リードピン11には、図5に示すように、ハーメチックプレート12の一端面側と他端面側に分割された環状のガイシ13,13が嵌合されている。環状ガイシ13,13が互いの間にハーメチックプレート12を挟むと共にリードピン11と嵌合することにより、リードピン11がハーメチックプレート12に固定される。
【0028】
前記ハーメチックプレート12は、リードピン11を支持するためのものであり、図6及び図7に示すように、仕切壁部41bにボルトにより固定されている。ハーメチックプレート12と仕切壁部41bとの間にはハーメチックガスケット14が介挿され、これらの間がシールされる。リードピン11の一端側は、インバータ10の回路側の雌端子15と接続される。リードピン11の他端側は、コネクタハウジング30の後述する各開口部31bと対応して仕切壁部41bの適宜位置に開設された貫通孔を挿通して、電動モータ1側に突設されて、コネクタハウジング30内の接続端子32と接続される。また、各リードピン11のコネクタハウジング側(電動モータ側)のガイシ13の外周には、例えばゴムからなり電気絶縁性を有する環状の密封部材16が取り付けられる。リードピン11がガイシ13及び密封部材16と伴に開口部31bに挿入される。これにより、ガイシ13とコネクタハウジング30の開口部31bを形成する周壁31dとの間に、密封部材16が介装されることになる。
このような構造により、通電端子11が仕切壁部41bを気液密に貫通している。
【0029】
前記圧縮機構20は、電動モータ1によって駆動され冷媒を圧縮するものであり、圧縮機構ハウジング42内に収容されて、ロータ2の回転軸2aの他端側に配置される。
本実施形態において、圧縮機構20は、スクロール式圧縮機であり、固定スクロール21と、可動スクロール22とを含んで構成される。可動スクロール22が固定スクロール21に対して旋回駆動することにより、冷媒が圧縮される。
前記固定スクロール21は、圧縮機構ハウジング42の円筒部42aの端部を切り欠いて形成される段付き部に、外周部を当接させて固定される。
前記可動スクロール22は、固定スクロール21と底壁部42bとの間に配置され、回転軸2aの回転により旋回可能に、回転軸2aの他端部と連結されている。
【0030】
次に、図8はコネクタハウジング30の平面図であり、接続端子32装着前の状態を示し、図9図8に示すC矢視方向から見たコネクタハウジング30の側面図である。
前記コネクタハウジング30は、図8及び図9に示すように、コネクタハウジング本体31と、接続端子32とを含み、図6及び図7に示すように、コネクタハウジング本体31内に接続端子32を保持してなる。このコネクタハウジング30は、図2に示すように、ボビン4にステータコア3の外周面より内側に位置するように設けられる。コネクタハウジング30は、具体的には、インバータ側ボビン4a(円筒部4a1)のインバータ側端部に設けられる。
本実施形態において、コネクタハウジング30は、ボビン4(4a)に対して着脱可能に構成されている。この着脱構造については、後述する。
【0031】
前記コネクタハウジング本体31は、図7に示すように、接続端子32を内部に保持して収容する収容部31aを形成するものであり、当該コネクタハウジング本体31のインバータ側端面に接続端子32と連通する開口部31bを有する。例えば、コネクタハウジング本体31のインバータ側端面に貫通孔31c(図6及び図7参照)が開設され、コネクタハウジング本体31のインバータ側端面の貫通孔31cの周縁から円筒状の周壁31dを突設させている。これにより、周壁31dの内側及び貫通孔31cを経由して接続端子32と連通する開口部31bが形成される。
【0032】
本実施形態において、開口部31bは、図6及び図7に示すように、接続端子32側に向かうにつれて縮径する縮径部31b1を含んで構成される。縮径部31b1は、例えば、周壁31dの基部における内周面を円錐面状に形成して構成する。
【0033】
本実施形態において、コネクタハウジング本体31は、複数の接続端子32を収容可能に複数の収容部31a(図7参照)を有すると共に複数の開口部31bを有する、いわゆるクラスタハウジングタイプのハウジング形状で形成されている。接続端子32、収容部31a及び開口部31bは、リードピン11の個数に対応してそれぞれ3個ずつ設けられている。
これら各開口部31b及び各接続端子32は、図2及び図5に示すように、コネクタハウジング本体31がボビン4に取り付けられたとき、各リードピン11に対応してインバータ側ボビン4a(円筒部4a1)の円周方向に沿ってそれぞれ配列されるように形成される。
より具体的には、図7図9に示すように、クラスタハウジングタイプのコネクタハウジング本体31は、収容部31aを形成する断面矩形状の筒体のインバータ側端面に貫通孔31cが開設され、この貫通孔31cの周縁に上記周壁31dが突設されてなるL字状筒体が3個並設されて、一体形成されてなるものである。3個のL字状筒体は、図2及び図5に示すように、各開口部31bがインバータ側ボビン4aの円筒部4a1の端部に沿うように、互いに長手方向に位置をずらして一体形成されている。
【0034】
前記接続端子32は、インバータ10のリードピン11とコイル5との間を電気的に接続するものである。
本実施形態において、接続端子32は、図7に示すように、コイル5の端部(リード線5a)と接続されると共に、リードピン(雄端子)11を内挿可能な雌端子からなるものである。
【0035】
具体的には、ボビン4に巻回されたコイル5から引き出されるリード線5aは、図7図9に示すように、その先端部5a1を残して被覆されており、この露出した先端部5a1が接続端子32の一端側にカシメられている。そして、当該リード線5aの被覆されている端部の外周には、例えばゴムからなり電気絶縁性を有する環状の密封部材33が取り付けられる。接続端子32がリード線5a及び密封部材33と伴に収容部31a内に挿入されて保持される。これにより、図7に示すように、コネクタハウジング本体31とリード線5aとの間に、密封部材33が介装されることになる。
このような構造により、コイル5の端部(リード線5a)がコネクタハウジング30内に気液密に挿通される。
【0036】
ここで、コネクタハウジング30がボビン4のインバータ側端部に取り付けられて固定されると、コイル5の巻回時に邪魔になる場合もある。本実施形態においては、このような場合も想定して、コネクタハウジング30は、ボビン4(4a)に着脱可能に設けられる。
具体的には、コネクタハウジング30は、図4に示すように、インバータ側ボビン4aに形成される延伸部4a3と嵌合する嵌合孔31eと、インバータ側ボビン4aの貫通孔4a4に係合する突起部31fと、を有して構成される。
【0037】
より具体的には、図8及び図9に示すように、コネクタハウジング本体31の基端側のL字状筒体の外側面から、互いにL字状筒体の長手方向に離間してそれぞれ突設部31g,31gが形成される。この突設部31g,31gの端部は、上記外側面と平行に下方に向かって延設されかつ外側面から延伸部4a3の厚みに対応した距離だけ離間するU字状(図9参照)の連結板31hの端部に、それぞれ接合される。連結板31hのU字溝の溝底からは、係合板31iが上記外側面と平行に上方に立設される。
前記嵌合孔31eは、コネクタハウジング本体31の上記外側面と突設部31g,31gと連結板31hとにより形成され、前記突起部31fは、係合板31iの端部に上記外側面側に向って突設される。
【0038】
以下に、コネクタハウジング30のインバータ側ボビン4aへの着脱操作について、図2図4を参照して簡単に説明する。
連結板31h及び係合板31iの下部裏面を延伸部4a3の外側面に当接させた状態で、コネクタハウジング30をインバータ側ボビン4a側にスライドさせると、延伸部4a3がコネクタハウジング30の嵌合孔31eに嵌合し、係合板31iの突起部31fが延伸部4a3の端部の傾斜部4a3’に当接する。この状態で、さらにコネクタハウジング30をスライドさせると、係合板31iが弾性変形しつつ、延伸部4a3上をスライドし、突起部31fが貫通孔4a4に係合したところで、図2及び図4に示すように、コネクタハウジング30のインバータ側ボビン4aへの装着が完了する。コネクタハウジング30の取り外しは、例えば、係合板31iの端部をつまんで外方に弾性変形させつつ、コネクタハウジング30を係合解除方向(図4では上方)にスライドさせて、突起部31fの貫通孔4a4への係合を解くことで可能となる。このようにして、コネクタハウジング30は、インバータ側ボビン4aのインバータ側端部に着脱可能に構成されている。
【0039】
かかる本実施形態による電動圧縮機100によれば、電気的絶縁性を有するボビン4が、ロータ2の径方向外側に配置されるステータコア3の端部に配置され、インバータ10と電動モータ1のコイル5との間を電気的に接続する接続端子32を有するコネクタハウジング30が、ボビン4にステータコア3の外周面より内側に位置するように設けられる構成であるので、コネクタハウジング30をステータコア3の外周面より突出しないように設けることができるため、胴回りの外形寸法の増大を招くことがない。
そして、コネクタハウジング30は、ステータコア3の端部に配置されるボビン4に設けられるので、コネクタハウジング取り付け用にステータコア3を加工等する必要がなく、コネクタハウジング取り付けに起因するステータコアの透磁率の低下及びその不均衡の発生を防止しつつ、インバータと電動モータとの間の導通を行うことができる。
このようにして、モータ効率の低下及び胴回り外形寸法の増大を招くことなく、インバータとモータとの間の導通を行うことが可能な電動圧縮機を提供することができる。
【0040】
また、コネクタハウジング30をボビン4に取り付けて固定することができるため、例えば、電動モータ1のメインハウジング41内への組み付けの際には、コネクタハウジング30をボビン(4a)に装着させて固定した状態で、電動モータ1をメインハウジング41内に挿入してリードピン11をコネクタハウジング30内の接続端子32と容易に接続させることができる。つまり、例えば、電動モータ1の組み付け時に、メインハウジング41の仕切壁部41bから突設されているリードピン11とコネクタハウジング30の開口部31bとの位置が合うように、電動モータ1の角度位置を事前に概略合わせた状態で、電動モータ1を挿入する。これにより、リードピン11とコネクタハウジング30内の接続端子32との接続を容易に行うことができる。
【0041】
本実施形態において、コネクタハウジング30は、ボビン4(4a)に対して着脱可能に構成される。したがって、例えば、コネクタハウジング30をボビン(4a)から取り外して、コイル5の巻回作業を行うことができる。このように、コネクタハウジング30を着脱可能に構成することにより、接続端子32とリードピン11との接続作業だけでなく、コイル5の巻回作業も容易に行うことができる。
【0042】
本実施形態において、ボビン4(4a)は、インバータ10に向かって延伸する延伸部4a3であって、ボビン径方向に貫通する貫通孔4a4又はボビン径方向外側に形成される溝部4a5(図示省略)を有する延伸部4a3を含む。そして、コネクタハウジング30は、延伸部4a3と嵌合する嵌合孔31eと、貫通孔4a4又は溝部4a5に係合する突起部31fと、を有する構成である。これにより、コネクタハウジング30のインバータ側ボビン4aへの装着を、延伸部4a3の延伸方向、つまり、回転軸2aの軸心方向の装着操作だけで、ワンタッチで容易に行うことができる。
【0043】
本実施形態において、コネクタハウジング30は、そのインバータ側端面に接続端子32と連通する開口部31bを有し、この開口部31bは接続端子32に向かうにつれて縮径する縮径部31b1を含んで構成される。これにより、例えば、電動モータ1をメインハウジング41内に組み込む際に、リードピン11に対する電動モータ1の角度位置を正確に合わせなくても、縮径部31b1がガイドとなって、リードピン11と接続端子32との接続を容易に行うことができる。
【0044】
また、本実施形態において、リードピン11、接続端子32及び開口部31bは、それぞれ複数(3個)設けられ、各開口部31b及び各接続端子32は、コネクタハウジング本体31がボビン4に取り付けられたとき、各リードピン11に対応してボビン4(4a)の円周方向に沿ってそれぞれ配列されるように形成される構成とした。これにより、コネクタハウジング30をインバータ側ボビン4aの円筒部4a1側に寄せて配置することができるので、例えば、ロータ2の回転軸2aの一端を支持する構造(仕切壁部41bに形成される回転軸2aの支持部41b1)を形成するスペースを確保し易くなる。つまり、回転軸2a側のスペースに余裕がない場合や当該スペースを他の目的で利用した場合に便宜であり、レイアウト自由度が高くなり、スペースの有効利用を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
【0046】
例えば、本実施形態においては、コネクタハウジング30は着脱可能な場合で説明したが、コイル5の巻回を行うことができれば、取り外せなくてもよい。また、コネクタハウジング30は、いわゆるクラスタハウジングタイプの形状で形成されているものとして説明したが、接続端子32毎に分離して形成してもよい。この場合、それぞれのコネクタハウジング30を個別にインバータ側ボビン4aに取り付ける。
【0047】
また、本実施形態において、ボビン4は、インバータ側ボビン4a及び圧縮機構側ボビン4bとを有し、インバータ側ボビン4aは、その突設部4a2がステータコア3のティース3bと重なるように、ステータコア3の軸方向一端側に配置され、圧縮機構側ボビン4bは、その突設部4b2がステータコア3のティース3bと重なるように、ステータコア3の軸方向他端に配置されるものとして説明したが、ボビン4の構成は、これに限らず、ステータコア3の端部に配置される構成であればよい。
【0048】
また、電動モータ1としては、三相交流モータを用いた場合で説明したが、これに限らず、単相交流モータであってもよい、この場合、リードピン11及び接続端子32及び開口部31bは、2個ずつ設ければよい。そして、通電端子(リードピン)11は雄端子であり、接続端子32は雌端子であるものとしたが、通電端子11が雌端子であり、接続端子32が雄端子であってもよい。
【0049】
また、電動圧縮機100の圧縮機構20としては、スクロール式圧縮機を用いた場合で説明したが、これに限らず、斜板式圧縮機等の適宜形式の電動圧縮機を用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・・電動モータ
2・・・・・ロータ
2a・・・・回転軸
3・・・・・ステータコア
4・・・・・ボビン
4a3・・・延伸部
4a4・・・貫通孔
4a5・・・溝部
5・・・・・コイル
10・・・・インバータ
11・・・・通電端子(リードピン)
20・・・・圧縮機構
30・・・・コネクタハウジング
31b・・・開口部
31b1・・縮径部
31e・・・嵌合孔
31f・・・突起部
32・・・・接続端子
100・・・電動圧縮機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9