(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその趣旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0012】
≪エポキシ樹脂≫
本実施形態のエポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される。
下記一般式(1)
【化3】
(式中、α、β及びγは、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、かつ、0<(α+β+γ)≦9の関係を満たす。(α+β+γ)個のR
1は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、Xは炭素数6〜45の3価の芳香族基を表す。)
【0013】
式(1)中、R
1は、炭素数1〜10のアルキレン基であれば、特に限定されない。R
1は、直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。さらには、R
1は、不飽和結合基を含んでいてもよい。該アルキレン基の炭素数は、可撓性と耐熱性とのバランスの観点から、好ましくは1〜6であり、製造容易性の観点から、より好ましくは1〜3である。R
1の好ましい具体例としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられる。
【0014】
式(1)中、Xは炭素数6〜45の3価の芳香族基であれば、特に限定されない。Xは粘度の観点から、炭素数6〜33の3価の芳香族基であることが好ましい。
【0015】
式(1)中、Xで表される炭素数6〜45の3価の芳香族基の具体的な構造としては、
【化4】
(式中、R
2は、水素原子、ハロゲン原子、メトキシ基、シクロヘキシル基、又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
からなる群から選ばれる1つが挙げられる。
【0016】
製造容易性の観点から、式(1)のXは、下記で表される構造を有する3価の芳香族基からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【化5】
【0017】
式(1)のα、β及びγは、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、かつ、0<(α+β+γ)≦9の関係を満たす。(α+β+γ)が0であると、硬化物にした際に、十分な可撓性が得られない傾向にある。また、(α+β+γ)が9を超えると、硬化物にした際に、十分な耐熱性が得られない傾向にある。エポキシ樹脂のハンドリング性及び硬化物にした際の可撓性の観点から、3<(α+β+γ)≦9が好ましく、硬化物にした際の可撓性と耐熱性とのバランスの観点から、3<(α+β+γ)≦7がより好ましい。また、上記式(1)中のα+β+γの値を上記範囲に制御する方法としては、例えば、後述のエポキシ樹脂の製造方法における条件、例えば、原料の添加量や反応時間等を適宜調整する方法が挙げられる。
【0018】
本実施形態のエポキシ樹脂は、例えば、下記一般式(2)で表される多価ヒドロキシ化合物を原料として用いて製造することができる。
【化6】
(式中、α、β及びγは、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、かつ、0<(α+β+γ)≦9の関係を満たす。(α+β+γ)個のR
1は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、Xは炭素数6〜45の3価の芳香族基を表す。)
【0019】
本実施形態に用いる多価ヒドロキシ化合物は、例えば、フェノール性水酸基を3つ有する多価フェノール化合物に溶媒、アルカリ性化合物を加えた後、ハロゲン化アルキレンアルコールを付加させることで製造できる。以下、当該付加反応について詳細に説明する。
【0020】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール等の極性プロトン性溶媒;アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性溶媒;ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルム等の無極性溶媒;水が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記溶媒の中でも、溶解性の観点から極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒が好ましく、反応制御の観点から極性非プロトン性溶媒がより好ましい。
【0022】
アルカリ性化合物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。アルカリ性化合物の状態は、特に限定されず、例えば、固体状、液状、水溶液、アルコール溶液等であってもよい。アルカリ性化合物の添加量は、多価フェノール化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、好ましくは、1〜10当量であり、より好ましくは1〜5当量であり、さらに好ましくは1.5〜3当量である。アルカリ性化合物の添加量が、多価フェノール化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、1当量以上の場合、反応が十分に進行する。アルカリ性化合物の添加量が、多価フェノール化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、10当量以下の場合、反応の制御が容易となる。
【0023】
ハロゲン化アルキレンアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール、2−(2−クロロエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ハロゲン化アルキレンアルコールの添加量は、多価フェノール性化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、好ましくは、1〜5当量であり、より好ましくは1.5〜3当量である。ハロゲン化アルキレンアルコールの添加量が、多価フェノール性化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、1当量以上の場合、十分にアルキレンエーテルが付加し、油水分離が容易となる。ハロゲン化アルキレンアルコールの添加量が、多価フェノール性化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、5当量以下の場合、過剰量のハロゲン化アルキレンアルコールの除去に時間が掛からず、サイクルタイムを短縮できる。
【0024】
反応温度は、好ましくは、30〜150℃であり、より好ましくは50〜120℃である。反応温度が30℃以上の場合、反応が十分進行する。反応温度が150℃以下の場合、ポリマー化が抑制され、回収が容易となる。
【0025】
反応時間としては、好ましくは、0.5〜36時間であり、より好ましくは1.5〜24時間であり、さらに好ましくは3〜8時間である。反応時間が0.5時間以上の場合、反応が十分進行する。反応時間が36時間以下の場合、ポリマー化が抑制され、回収が容易となる。
【0026】
反応終了後、例えば、水洗等によって、生成塩や残留するアルカリ性化合物を反応液から除去する。次いで、例えば、反応液を常圧或いは減圧下で加熱することによって、残留する溶媒や過剰量のハロゲン化アルキレンアルコールを反応液から除去し、多価ヒドロキシ化合物を回収する。
【0027】
また、本実施形態に用いる多価ヒドロキシ化合物は、例えば、フェノール性水酸基を3つ有する多価フェノール化合物に溶媒、アルカリ性化合物を加えた後、密閉加圧下でアルキレンオキサイドを付加させることで製造できる。以下、当該付加反応について詳細に説明する。
【0028】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール等の極性プロトン性溶媒;アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性溶媒;ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルム等の無極性溶媒;水が挙げられる。
【0029】
上記溶媒の中でも、副反応を抑制する観点から、水が好ましい。
【0030】
アルカリ性化合物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物類;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物類;ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。アルカリ性化合物の状態は、特に限定されず、例えば、固体状、液状、水溶液、アルコール溶液等であってもよい。
アルカリ性化合物の添加量は、多価フェノール化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、好ましくは、0.05〜5.0当量であり、より好ましくは0.08〜3.0当量であり、さらに好ましくは0.1〜1.0当量である。
【0031】
アルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどが挙げられる。アルキレンオキサイドの添加量は、多価フェノール化合物のフェノール性水酸基1当量に対し、好ましくは、1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.5〜3.0当量であり、さらに好ましくは2.0〜2.5当量である。
【0032】
反応温度は、好ましくは、60〜150℃であり、より好ましくは80〜120℃である。反応温度が60℃以上の場合、反応が十分に進行する。反応温度が150℃以下の場合、反応制御が容易になる。
【0033】
反応圧力は、好ましくは、0.5MPa以下である。反応圧力が0.5MPa以下の場合、反応制御が容易となり、内圧の上昇や内温の上昇を抑制できる。
【0034】
反応終了後、例えば、水洗等によって、生成塩や残留するアルカリ性化合物を反応液から除去する。次いで、例えば、反応液を常圧或いは減圧下で加熱することによって、残留する溶媒や過剰量のアルキレンオキサイドを反応液から除去し、多価ヒドロキシ化合物を回収する。
【0035】
本実施形態のエポキシ樹脂は、例えば、上記一般式(2)で表される多価ヒドロキシ化合物をエピハロヒドリンと反応させることで製造できる。本実施形態のエポキシ樹脂の製造方法としては、例えば、フェノール性水酸基を3つ有する多価フェノール化合物にフェノール性水酸基3モルに対し1〜9倍モルの割合でアルキレンオキサイドを付加させた化合物(以下、単に「オキシアルキレン付加物」ともいう。)と、エピハロヒドリンとを、アルカリ性化合物で反応させる方法等が挙げられる。この方法の場合、反応促進の観点から、アルカリ性化合物と相間移動触媒とを併用することが好ましい。以下、当該方法について詳細に説明する。
【0036】
エピハロヒドリンとしては、特に限定されないが、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。エピハロヒドリンの添加量は、オキシアルキレン付加物のアルコール性水酸基1当量に対し、好ましくは、1〜10当量であり、より好ましくは2〜8当量である。
【0037】
アルカリ性化合物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。アルカリ性化合物の状態は、特に限定されず、例えば、固体状、液状、水溶液、アルコール溶液等であってもよい。アルカリ性化合物の添加量は、オキシアルキレン付加物のアルコール性水酸基1当量に対し、好ましくは、1〜10当量であり、より好ましくは1.5〜7.5当量であり、さらに好ましくは2〜5当量である。
【0038】
本実施形態のエポキシ樹脂の製造方法では、反応を促進させる観点から、相間移動触媒を用いることが好ましい。特に、上記したアルカリ性化合物と相間移動触媒とを併用することがより好ましい。
【0039】
相間移動触媒としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム水酸化物類;15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジアザ−18−クラウン−6等のクラウンエーテル類;[2.1.1]−クリプタンド、[2.2.1]−クリプタンド、[2.2.2]クリプタンド、[2.2.2]−デシルクリプタンド、[2.2.2]−ベンゾクリプタンド等のクリプタンド類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。相間移動触媒の状態は、特に限定されず、例えば、固体状、液状、水溶液、アルコール溶液等であってもよい。
【0040】
相間移動触媒の添加量は、オキシアルキレン付加物のアルコール性水酸基1モルに対し、好ましくは、0.25〜10モルであり、より好ましくは0.5〜5モルである。
【0041】
反応温度は、好ましくは、20〜100℃であり、より好ましくは30〜80℃である。反応温度を20℃以上とすることで反応の進行が早くなるため、オキシアルキレン付加物にエピハロヒドリンのグリシジル基を効率よく導入できる傾向にある。反応温度を100℃以下とすることで、エピハロヒドリン同士の高分子化反応を効率よく抑制できるため、オキシアルキレン付加物にエピハロヒドリンのグリシジル基を効率よく導入できる傾向にある。
【0042】
反応時間としては、好ましくは、1〜12時間であり、より好ましくは1.5〜8時間であり、さらに好ましくは2〜6時間である。
【0043】
反応終了後、例えば、水洗等によって、生成塩、残留するアルカリ性化合物や相間移動触媒等を反応液から除去する。次いで、例えば、反応液を常圧或いは減圧下で加熱することによって、残留するエピハロヒドリンを反応液から除去し、エポキシ樹脂を回収する。
【0044】
本実施形態のエポキシ樹脂中の全塩素量を一層低減したい場合には、上記で回収したエポキシ樹脂を、トルエンやメチルイソブチルケトン等の溶媒に溶解させた後、アルカリ性化合物(固体状でも、液状でも、溶液等でもよい)を新たに加える。これにより、エピハロヒドリンの閉環反応が進行し、エポキシ樹脂中の加水分解性塩素量を一層低減させることもできる。この場合、アルカリ性化合物の添加量は、エポキシ樹脂中の加水分解性塩素1当量に対し、好ましくは、0.5〜5当量であり、より好ましくは1〜3当量である。通常、エピハロヒドリンの閉環反応の反応温度は60〜120℃であることが好ましく、反応時間は0.5〜3時間であることが好ましい。
【0045】
本実施形態のエポキシ樹脂は、相溶性に優れるため、その他の成分を添加したエポキシ樹脂組成物としても、好適に用いることができる。以下、エポキシ樹脂組成物について説明する。
【0046】
≪エポキシ樹脂組成物≫
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、例えば、上述のエポキシ樹脂と硬化剤と組み合わせることにより得ることができる。すなわち、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、例えば、上述のエポキシ樹脂と、硬化剤と、を含有する。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、上述のエポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂成分、硬化促進剤等を更に含有してもよい。
【0047】
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
硬化剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール類、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ポリアルキレングリコールポリアミン、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミン系硬化剤;ジシアンジアミド等のアミド系硬化剤;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物類及びこれらの変性物等のフェノール系硬化剤;BF
3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記硬化剤の中でも、可撓性や反応性を重視する場合は、アミン系硬化剤が好ましい。また、耐熱性を重視する場合は、フェノール系硬化剤が好ましい。
【0050】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂のグリシジル基1当量に対して、0.7〜1.5当量であることが好ましい。硬化剤の含有量がこの範囲内であれば、硬化反応が効率よく進み、一層良好な硬化物性が発現する傾向にある。
【0051】
硬化剤以外のその他の成分として、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上記したエポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂成分を併用してもよい。他のエポキシ樹脂成分としては、特に限定されないが、例えば、上記一般式(1)の構造式には該当するが、上記一般式(1)のα、β及びγが、0〜3の整数であること、及び、0<(α+β+γ)≦9の関係を満たすこと、の少なくともいずれかを満たさないエポキシ樹脂等が挙げられる。他のエポキシ樹脂成分として併用することができるエポキシ樹脂成分の構造の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、フェニルベンゾエート型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホキシド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、ジフェニルジスルフィド型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、メチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂類;N,N−ジグリシジルアミノベンゼン型エポキシ樹脂、o−(N,N−ジグリシジルアミノ)トルエン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノベンゼン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂類;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ブロモ化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂類;及び脂環式エポキシ樹脂類が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。さらに、これらをイソシアネート等で変性したエポキシ樹脂等も併用することができる。
【0052】
他のエポキシ樹脂成分の含有量は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分中の75質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含有してもよい。硬化促進剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4―メチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の3級アミン系硬化促進剤;トリフェニルホスフィン等のリン系硬化促進剤;有機酸金属塩;ルイス酸;アミン錯塩等が挙げられる。これらは上記した硬化剤と併用することで硬化反応を促進させることができる。上記した硬化剤の種類に応じて、適切な硬化促進剤の種類を選択することができる。
【0054】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲であれば特に限定されない。硬化促進剤の含有量は、通常、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。硬化促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、硬化反応が十分に促進するとともに、一層良好な硬化物性が得られる傾向にある。
【0055】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤を更に含有してもよい。無機充填剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク、窒化ケイ素、窒化アルミ等が挙げられる。
【0056】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、無機充填剤の含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲であれば特に限定されない。本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、無機充填剤の含有量は、通常、90質量%以下であることが好ましい。無機充填剤の含有量を上記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の粘度が十分低く、取扱性に優れる傾向にある。
【0057】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料等の他の配合剤を更に含有してもよい。これらは、本実施形態の効果が得られる範囲であれば、適宜好適なものを選択することができる。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化物、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、無機系難燃化合物等が挙げられる。
【0058】
≪硬化物≫
本実施形態の硬化物は、上記のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
本実施形態の硬化物は、上記のエポキシ樹脂組成物を、例えば、従来公知の方法等により熱硬化させることで得られる。具体的には、例えば、以下の方法により本実施形態の硬化物を得ることができる。まず、上記のエポキシ樹脂と、硬化剤と、更に必要に応じて硬化促進剤、無機充填剤、及び/又は配合剤等とを、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得る。その後、エポキシ樹脂組成物を注型あるいはトランスファー成形機、コンプレッション成形機、射出成形機等を用いて成形し、80〜200℃程度で2〜10時間程度の条件で更に加熱することにより、硬化物を得ることができる。
【0059】
また、例えば、以下の方法により本実施形態の硬化物を得ることができる。まず、上記のエポキシ樹脂組成物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、溶液を得る。得られた溶液を、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得る。次に、得られたプリプレグを熱プレス成形することにより、硬化物を得ることもできる。
【0060】
≪用途≫
本実施形態のエポキシ樹脂組成物及びそれから得られる硬化物は、エポキシ樹脂が材料として用いられている種々の用途に使用できるが、とりわけ、封止材、接着剤、プリント基板材、塗料、複合材料等の用途として特に有用である。それらの中でも、アンダーフィルやモールディング等の半導体封止材、異方性導電フィルム(ACF)等の導電性接着剤、ソルダーレジストやカバーレイフィルム等のプリント配線基板等に好適に用いられる。本実施形態の電子部材は、上記の硬化物を含む。なお、本実施形態の電子部材としては、例えば、アンダーフィルやモールディング等の半導体封止材、ACF等の導電性接着剤、ソルダーレジストやカバーレイフィルム等のプリント配線基板が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を、合成例、実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0062】
各物性の測定法は以下のとおりとした。
(1)(α+β+γ)個数
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)及び質量分析装置(MS)を用いて、α、β及びγに基づく(α+β+γ)個数の確認を行った。
UPLCの測定条件は、以下のとおりとした。
・日本ウォーターズ株式会社製「ACQUITY UPLC H−Class」システム
・カラム:Phenomenex社製「Kinetex XB−C18 2.6μm」
・移動相:10mM 酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル(混合割合は、多価ヒドロキシ化合物の場合、0分〜10分の間において、10mM 酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル=75/25〜50/50(体積比)、10分〜20分の間において、10mM 酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル=75/25となるよう変化させた。エポキシ樹脂の場合、0分〜10分の間において、10mM 酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル=55/45〜50/50(体積比)、10分〜20分の間において、10mM 酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル=55/45となるよう変化させた。)
・流量:0.3mL/分
・分検出器:276nm
・測定サンプルの調製:多価ヒドロキシ化合物2mg、又はエポキシ樹脂5mgに対し、アセトニトリル1ml加え、0.2質量%、又は0.5質量%−アセトニトリル溶液に調製した。
MSの測定条件は、以下のとおりとした。
・日本ウォーターズ株式会社製「Synapt G2」装置
・イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI)
・スキャンレンジ:m/z=50〜2000
・測定サンプルの調製:多価ヒドロキシ化合物2mg、又はエポキシ樹脂5mgに対し、アセトニトリル1ml加え、0.2質量%、又は0.5質量%−アセトニトリル溶液に調製した。
なお、上記式(1)の(α+β+γ)の値等は、
図3及び
図6に示すように、MSで同定されたUPLCの該当するピーク面積比より求めた。
【0063】
(2)エポキシ当量
JIS K7236に準拠して、エポキシ当量を測定した。
【0064】
(3)粘度
JIS K7117−2(E型粘度計)に準拠して、粘度を測定した。
【0065】
(4)ゲルタイム
JACT試験法 RS−5及びJIS K−6910−1995に準拠して、ゲルタイムを測定した。具体的には、後述の実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂組成物を測定試料とし、ゲル化試験機を用いてゲルタイムを測定した。測定試料を、170℃のホットプレート上で撹拌しながら加熱し、試料と撹拌棒との間で糸を引かなくなるまでの時間をゲルタイムとした。
【0066】
(5)ガラス転移点(Tg)測定
後述の実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂硬化物から、ダイヤモンドカッターを用いて、10mm×30mm×2mmの試験片を作製した。該試験片を固体粘弾性測定装置(DMA;オリエンテック社製「レオバイブロンDDV−25FP」)にセットし、温度範囲40〜300℃(昇温速度:2℃/分)、周波数10Hzの測定条件で測定した。tanδが最大値になったときの温度をガラス転移点(Tg)とした。
【0067】
(6)引張伸度
JIS K7115に準拠して、後述の実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂硬化物の引張伸度を測定した。
【0068】
(7)粘弾性弾性率(DMA弾性率)
JIS K7115に準拠して、後述の実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂硬化物の粘弾性弾性率(DMA弾性率)を測定した。
【0069】
(8)破壊靭性(K
Ic)試験
JIS K6911に準拠して、後述の実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂硬化物の破壊靱性を測定した。
【0070】
[合成例1]
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、4,4’,4”−エチリジントリスフェノール(本州化学工業株式会社製:商品名 TrisP−HAP)50g(163mmol)、及びジメチルホルムアミド150gを加え溶解させた。その後、前記フラスコに、炭酸カリウム101.5g(734mmol)を加え、前記フラスコ内の溶液を120℃で撹拌させた。前記フラスコに備えられた滴下ロートに、2−ブロモエタノール20.4g(163mmol)、2−(2−クロロエトキシ)エタノール30.5g(245mmol)及び2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール55.0g(326mmol)を加え、滴下ロート内の混合溶液を1時間かけて前記フラスコに滴下させた。滴下終了後、さらに3時間反応させた。なお、該反応温度は120℃とし、該反応時間は合計4時間とした。得られた反応生成物の水洗を繰り返して反応生成物から無機塩類を除去した。また、反応生成物から、ジメチルホルムアミド、過剰の2−ブロモエタノール、2−(2−クロロエトキシ)エタノール及び2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノールを減圧下で蒸留して除去し、多価ヒドロキシ化合物(PH−1)88.6gを得た。
【0071】
[合成例2]
反応温度を100℃、反応時間を6時間にした変更した以外は合成例1と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−2)66.1gを得た。
【0072】
[合成例3]
2−(2−クロロエトキシ)エタノールの添加量を40.6g(326mmol)に変更し、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノールの添加量を82.5g(489mmol)に変更した以外は合成例1と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−3)63.1gを得た。
【0073】
[合成例4]
2−ブロモエタノール20.4g(163mmol)、2−(2−クロロエトキシ)エタノール30.5g(245mmol)及び2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール55.0g(326mmol)を、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール165.2g(980mmol)のみに変更した以外は合成例1と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−4)80.0gを得た。
【0074】
[合成例5]
4,4’,4”−エチリジントリスフェノール(本州化学工業株式会社製:商品名 TrisP−HAP)から4,4’−[1−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル}エチリデン]ビスフェノール(和光純薬工業株式会社製)に変更した以外は合成例1と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−5)66.5gを得た。
【0075】
[合成例6]
4,4’,4”−エチリジントリスフェノール(本州化学工業株式会社製:商品名 TrisP−HAP)から4,4’,4”−メチリジントリスフェノール(本州化学工業株式会社製:商品名 TrisP−PHBA)に変更し、2−ブロモエタノール20.4g(163mmol)、2−(2−クロロエトキシ)エタノール30.5g(245mmol)及び2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール55.0g(326mmol)を、2−(2−クロロエトキシ)エタノール127.8g(1026mmol)のみに変更した以外は合成例1と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−6)60.4gを得た。
【0076】
[合成例7]
ガラス製オートクレーブに、4,4’,4”−エチリジントリスフェノール(本州化学工業株式会社製:商品名 TrisP−HAP)50g(163mmol)、水50gを加え撹拌させ、分散液とした。前記オートクレーブに、さらに水酸化カリウム4.1g(73mmol)を添加した。その後、前記オートクレーブにおいて、窒素置換を行い、エチレンオキサイド43.1g(978mmol)を90℃、0.2MPa以下で6時間、滴下反応させた。滴下終了後、さらに2時間反応させた。なお、該反応時間は合計8時間とした。その後、得られた反応生成物の水洗を繰り返して、反応生成物から無機塩類を除去した。また、反応生成物から、過剰量のエチレンオキサイド、低分子副反応物を減圧下で蒸留して除去し、多価ヒドロキシ化合物(PH−7)94.7gを得た。
【0077】
[合成例8]
エチレンオキサイドからプロピレンオキサイドに変更した以外は合成例7と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−8)101.9gを得た。
【0078】
[合成例9]
4,4’,4”−エチリジントリスフェノール(本州化学工業株式会社製:商品名 TrisP−HAP)からビスフェノールA(和光純薬工業株式会社製)に変更した以外は合成例1と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−9)68.1gを得た。
【0079】
[合成例10]
水酸化カリウムの添加量を6.2g(110mmol)に変更し、エチレンオキサイドの添加量を53.9g(1223mmol)に変更し、及びエチレンオキサイドの滴下時間を8時間に変更した以外は合成例7と同様に行い、多価ヒドロキシ化合物(PH−10)103.2gを得た。
【0080】
[実施例1]
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を備えたフラスコ(反応器)に、多価ヒドロキシ化合物(PH−1)、エピクロロヒドリン218.8g(PH−1の水酸基1molに対してエピクロロヒドリン5mol)、及び50質量%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液(5g)を混合し、得られた混合物を、減圧下に加熱して60〜65℃で還流を行った。そして、前記反応器に、50質量%水酸化ナトリウム水溶液200gを2時間かけて滴下した。滴下の際、水をエピクロロヒドリンとの共沸混合物として連続的に除去するとともに、凝縮したエピクロロヒドリン層のみを連続的に反応器に戻した。滴下後、さらに2時間反応させた後、混合物(反応生成物)を冷却した。得られた反応生成物の水洗を繰り返して、反応生成物から、副生した塩化ナトリウムを除去した。また、反応生成物から、過剰のエピクロロヒドリンを減圧下で蒸留して除去し、粗樹脂を得た。得られた粗樹脂をメチルイソブチルケトン100gに溶解し、得られた溶液に、0.18gの50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間反応させた。反応終了後、反応生成物の水洗を繰り返して、反応生成物から、副生した塩化ナトリウムを除去した。また、反応生成物から、メチルイソブチルケトンを減圧下で蒸留して除去しエポキシ樹脂(EP−1)108.8gを得た。
【0081】
[実施例2]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−2)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−2)78.2gを得た。
【0082】
[実施例3]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−3)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−3)79.3gを得た。
【0083】
[実施例4]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−4)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−4)98.2gを得た。
【0084】
[実施例5]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−5)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−5)60.1gを得た。
【0085】
[実施例6]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−6)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−6)74.5gを得た。
【0086】
[実施例7]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−7)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−7)92.9gを得た。
【0087】
[実施例8]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−8)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−8)110.5gを得た。
【0088】
[比較例1]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−9)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−9)91.3gを得た。
【0089】
[比較例2]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を(PH−10)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−10)116.7gを得た。
【0090】
[比較例3]
多価ヒドロキシ化合物(PH−1)を4,4’,4”−エチリジントリスフェノール(本州化学工業株式会社製:商品名 TrisP−HAP)に変更した以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂(EP−11)91.8gを得た。
【0091】
合成例1〜10で得られた多価ヒドロキシ化合物(PH−1〜10)の(α+β+γ)個数、並びに実施例1〜8で得られたエポキシ樹脂(EP−1〜8)及び比較例1〜3で得られたエポキシ樹脂(EP−9〜11)のエポキシ当量及び粘度を測定した。この結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施例9〜16]
表2に示すとおり、実施例1〜8で得られたエポキシ樹脂(EP−1〜8)に、エポキシ基1当量に対してジアミノジフェニルメタンを0.5当量(アミノ基1当量)の割合で添加し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、180℃、2時間の条件で硬化させてエポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物について、ガラス転移点(Tg)、引張伸度、DMA弾性率、及び破壊靭性(K
Ic)の測定を行った。そして、硬化前のエポキシ樹脂組成物についてはゲルタイムを測定した。
【0094】
[比較例4〜7]
エポキシ樹脂として、比較例1〜3で得られたエポキシ樹脂(EP−9〜11)及びビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:商品名 YL983U(エポキシ当量170g/eq.))をそれぞれ用いた点以外は、実施例9〜16と同様にして、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物を得て、それらの物性を評価した。
【0095】
実施例9〜16及び比較例4〜7の評価結果を、表2に示す。なお、表2中、比較例4の引張伸度、DMA弾性率及び破壊靭性における「−」は、測定試料が柔らかく、グラフ化した際に極大点が現れず、これらについては数値化できなかったことを示す。また、比較例6のTg、引張伸度、DMA弾性率及び破壊靭性における「−」は、エポキシ樹脂(EP−11)の溶融粘度が高くかつ反応性が高いため、所定のエポキシ樹脂硬化物が作製できなかったことを示す。
【0096】
【表2】
【0097】
[実施例17〜24]
実施例1〜8で得られたエポキシ樹脂(EP−1〜8)に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:商品名 YL983U(エポキシ当量170g/eq.))を、表3に記載の配合比で混合して、エポキシ樹脂の混合物を調製した。
【0098】
表3に示すとおり、得られたエポキシ樹脂の混合物に、エポキシ基1当量に対してジアミノジフェニルメタンを0.5当量(アミノ基1当量)の割合で添加し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、180℃、2時間の条件で硬化させてエポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物について、ガラス転移点(Tg)、引張伸度、DMA弾性率、破壊靭性(K
Ic)の測定を行った。そして、硬化前のエポキシ樹脂組成物についてはゲルタイムを測定した。
【0099】
[比較例8〜10]
エポキシ樹脂(EP−1〜8)に代えて、比較例1〜3で得られたエポキシ樹脂(EP−9〜11)をそれぞれ用いた点以外は、実施例17〜24と同様にして、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物を得て、それらの物性を評価した。
【0100】
実施例17〜24及び比較例7〜10の評価結果を、表3に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
表2及び3の結果から、実施例1〜8で得られたエポキシ樹脂(EP−1〜8)は、液状でありながら優れた反応性を有し、実施例9〜24で得られたエポキシ樹脂硬化物は、少なくとも可撓性に優れ、さらには高耐熱性であることが確認された。