(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282521
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】小形開閉スライド装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20180208BHJP
F16C 31/02 20060101ALI20180208BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20180208BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
F16H25/20 A
F16C31/02
F16H25/24 L
F16H25/22 A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-88794(P2014-88794)
(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-206445(P2015-206445A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092347
【弁理士】
【氏名又は名称】尾仲 一宗
(72)【発明者】
【氏名】坂井 哲也
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−27338(JP,U)
【文献】
特開平8−121560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 31/02
F16H 25/20
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形平面の取付け面を有する長尺状のベッド,前記ベッドの長手方向に沿って直動案内ユニットを介して摺動自在で且つワーク取付け面を備えた一対のテーブル,それぞれの前記テーブルに固定されたナットに螺合し且つ前記ベッド上に回転可能に支持されて前記長手方向に延びるねじ軸,前記ねじ軸の一方の軸端部をベアリングを介して軸支する前記ベッドに固定されたベアリングハウス,及び前記ベアリングハウス内の前記ベアリングに回転自在に支持された前記軸端部の先端部とモータ出力軸とを連結するカップリングを介して前記ねじ軸を回転駆動するモータを備えており,
前記ねじ軸は,前記モータ側の部位に大径ねじが形成され且つ反モータ側の部位に小径ねじに形成され,一方の前記ナットと螺合する右ねじの部位と他方の前記ナットと螺合する左ねじの部位とが前記長手方向に隣接して形成され,及び前記大径ねじに隣接して前記軸端部に前記ベアリングの内輪に端面が当接係止する段部又はフランジ部が形成され,前記モータの回転駆動によって,前記一対のテーブルが互いに近寄った予め決められた所定の位置で近接状態になり,前記一対のテーブルが互いに遠ざかった予め決められた所定の位置で開放状態になることを特徴とする小形開閉スライド装置。
【請求項2】
前記ナットは,前記テーブルに軸方向に貫通して形成された設置孔にそれぞれ配設されて前記ナットの端面に設けた取付け部を介して前記テーブルに固定されており,前記ねじ軸の前記大径ねじに螺合する前記ナットは,前記ねじ軸の前記小径ねじを貫通するサイズに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の小形開閉スライド装置。
【請求項3】
前記ねじ軸には,前記大径ねじ及び前記小径ねじのいずれか一方に形成された前記右ねじと他方に形成された前記左ねじとは,同一ピッチで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の小形開閉スライド装置。
【請求項4】
前記ねじ軸を軸支する前記ベアリングは,一対のアンギュラベアリングで構成され,前記アンギュラベアリングは,前記ねじ軸に形成された前記段部又は前記フランジ部と前記カップリングとによって位置決めして前記ねじ軸に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の小形開閉スライド装置。
【請求項5】
前記ねじ軸の前記フランジ部が前記大径ねじよりも大径に形成されて,前記大径ねじを固定した前記ナットが前記ねじ軸上で規制されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の小形開閉スライド装置。
【請求項6】
前記ねじ軸は,前記段部又はフランジ部の前記端面と前記カップリングの端面とで前記ベアリングの前記内輪を挟持して前記ベアリングに軸支されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の小形開閉スライド装置。
【請求項7】
前記ねじ軸は,すべりねじ形式又はボールを介して前記一対のナットと螺合するボールねじ形式に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の小形開閉スライド装置。
【請求項8】
前記ボールねじ形式の前記ねじ軸の最小サイズは,前記大径ねじが実質的に外径6mmであり,前記小径ねじが実質的に外径4mmであることを特徴とする請求項7に記載の小形開閉スライド装置。
【請求項9】
前記一対のテーブルがスライド案内される前記直動案内ユニットの周囲部には異物の侵入を防止するために一つのカバーが配設され,前記カバーは,前記カバーに形成された凸部が前記ベッドの前記反モータ側の端面に形成された凹部と前記ベアリングハウスの両側面にそれぞれ形成された凹部とにスナップフィットして固着されて成ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の小形開閉スライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,マイクロマシン,小形工作機械,各種組立装置,半導体製造装置,各種組立装置,試験装置等に使用されるチャック等の開閉動作をする小形開閉スライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉動作をするスライド装置は,すべりねじを使用しているものが知られている。すべりねじの軸端の外径は,ナットを組み付けるためにねじ軸外径より小さくする必要があった。上記スライド装置は,ダイレクトにカップリング端面でアンギュラベアリングを押して固定した構造であった。軸端の外径部には,アンギュラベアリングを固定するために別部品のカラーを使用するが,モータの回転トルクの方が大きくなり,カラーとアンギュラベアリング端面がすべってしまうことがあった。また,別のスライド装置として,ねじ軸にナットを組み付けた後に,フランジ一体形カラーを使用するものが知られている。このタイプでは,圧入や接着等して固着せねばならず,面倒なものであった。このタイプのスライド装置は,上記のスライド装置と同様に,ねじ軸端の外径もナットを取り付けるために小さくしなくてはいけない。従って,小形スライド装置では,回転サポート用のアンギュラベアリングも内径の小さなものを使用し,カップリングもモータ軸径と異なったサイズにする必要があり,汎用品を使用できず,特殊品として一から製作せねばならずコストがかさむ問題があった。
【0003】
また,小型スライド装置として,長さ方向における一層の小型化を実現したものが知られている。該小型スライド装置は,モータを駆動してスクリューシャフトを回転させ,スクリューシャフトの回転によってスライドテーブルをレールの軸方向に移動させるものであり,スクリューシャフトには狭持部を設けると共に,該狭持部とカップリング部材との間にベアリングを挟持させたものである。上記小型スライド装置は,ベアリングナットを用いずに,段付きのフランジを一体型のカラーをねじ軸と一体化しているが,圧入のうえ接着せねばならず面倒なものであった(例えば,特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5047749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記小型スライド装置は,アンギュラベアリングの固定用ベアリングナットを使用せずに,ダイレクトにカップリングを組み付けて,テーブル全長を短くしたものであり,テーブルに組み込んだナットは,1つの直動案内ユニットであって,シングルタイプである。そこで,本出願人は,上記の小型スライド装置を利用して1本のねじ軸に一対のスライダを摺動自在に配設し,互いのスライダがねじ軸上で接近したり離間したりする移動ができ,その動きを小さな部品を把持して移動できないかの課題を直面し,一対のテーブルが相対的に移動して開閉動作を行わうタイプに構成することを考えた。
【0006】
この発明の目的は,小形開閉スライド装置であって,半導体製造装置,各種組立装置,試験装置等の各種装置に使用することができ,ベッドの長手方向に沿って直動案内ユニットを介して往復移動自在な一対のテーブル上にそれぞれチャック等の部品を取り付け,供給位置で小さなワーク(部品)を掴み(把持)したり,組立位置で把持したワーク(部品)を解放するようなチャック等の開閉動作を一対のテーブルに行わせるため,モータの駆動によって対向するテーブルに精確な開閉を行わせるスライド装置に構成されており,所謂,フィンガ等の把持部材を一対のテーブルにそれぞれ取り付けて,モータの駆動によって対向するテーブルが互いに近寄った任意位置で閉状態即ち把持状態に,又は一対のテーブルが互いに遠ざかった任意位置では開状態即ち解放状態に動作させることができる小形開閉スライド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は,矩形平面の取付け面を有する長尺状のベッド,前記ベッドの長手方向に沿って直動案内ユニットを介して摺動自在な一対のテーブル,それぞれの前記テーブルに固定されたナットに螺合し且つ前記ベッド上に回転可能に支持されて前記長手方向に延びるねじ軸,前記ねじ軸の一方の軸端部をベアリングを介して軸支する前記ベッドに固定されたベアリングハウス,及び前記ベアリングハウス内の前記ベアリングに回転自在に支持された前記軸端部の先端部とモータ出力軸とを連結するカップリングを介して前記ねじ軸を回転駆動するモータを備えており,
前記ねじ軸は,前記モータ側の部位に大径ねじが形成され且つ反モータ側の部位に小径ねじに形成され,一方の前記ナットと螺合する右ねじの部位と他方の前記ナットと螺合する左ねじの部位とが前記長手方向に隣接して形成され,及び前記大径ねじに隣接して前記軸端部に前記ベアリングの内輪に端面が当接係止する段部又はフランジ部が形成され,前記モータの回転駆動によって,前記一対のテーブルが互いに近寄った予め決められた所定の位置で近接状態になり,前記一対のテーブルが互いに遠ざかった予め決められた所定の位置で開放状態になることを特徴とする小形開閉スライド装置に関する。
【0008】
この小形開閉スライド装置において,前記ナットは,前記テーブルに軸方向に貫通して形成された設置孔にそれぞれ配設されて前記ナットの端面に設けた取付け部を介して前記テーブルに固定されており,前記ねじ軸の前記大径ねじに螺合する前記ナットは,前記ねじ軸の前記小径ねじを貫通するサイズに形成されている。また,前記ねじ軸には,前記大径ねじ及び前記小径ねじのいずれか一方に形成された前記右ねじと他方に形成された前記左ねじとは,同一ピッチで形成されているものである。
【0009】
また,前記ねじ軸を軸支する前記ベアリングは,一対のアンギュラベアリングで構成され,前記アンギュラベアリングは,前記ねじ軸に形成された前記段部又は前記フランジ部と前記カップリングとによって位置決めして前記ねじ軸に固定されているものである。更に,前記ねじ軸の前記フランジ部が前記大径ねじよりも大径に形成されて,前記大径ねじを固定した前記ナットが前記ねじ軸上で規制されているものである。
【0010】
また,前記ねじ軸は,前記段部又はフランジ部の前記端面と前記カップリングの端面とで前記ベアリングの前記内輪を挟持して前記ベアリングに軸支されている。
【0011】
また,前記ねじ軸は,すべりねじ形式又はボールを介して前記一対のナットと螺合するボールねじ形式に形成されているものである。
【0012】
また,前記ボールねじ形式の前記ねじ軸の最小サイズは,前記大径ねじが実質的に外径6mmであり,前記小径ねじが実質的に外径4mmである。
【0013】
また,前記一対のテーブルがスライド案内される前記直動案内ユニットの周囲部には異物の侵入を防止するために一つのカバーが配設され,前記カバーは,前記カバーに形成された凸部が前記ベッドの前記反モータ側の端面に形成された凹部と前記ベアリングハウスの両側面にそれぞれ形成された凹部とにスナップフィットして固着されているものである。
【発明の効果】
【0014】
この小形開閉スライド装置は,上記のように構成されているので,一対のテーブルにそれぞれ固定したナットをねじ軸の一方のフリー側から容易に組み立てることができ,ナットの交換を容易に行うことができ,また,可及的に最小に小型化可能なスライド装置を構成することができ,スライド装置の姿勢にかかわらず,ねじ軸を軸支可能なベアリングを収容するベアリングハウスをベッドに配設して,ベアリングに端面を当接する段部又はフランジが形成されたねじ軸をベアリングに軸支させた状態で,該ねじ軸に一対のナットを螺入し,その際に,まず,ねじ軸に大径ねじに螺合するナットを固定したテーブルを組み込み,次いでねじ軸に小径ねじに螺合するナットを固定したテーブルを組み込むものであり,更に,ねじ軸に形成された段部又はフランジ部によってねじ軸が堅固にベアリングに軸支され,スライド装置の組立・分解が容易になると共にメンテナンスが容易になっている。また,この小形開閉スライド装置では,ねじ軸が一対のアンギュラベアリングを介してベッドに軸支されているので,ねじ軸が強固に安定してベッドに取り付けられ,一対のテーブルの往復運動が安定して精確に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明による小形開閉スライド装置の一実施例を示し,本体とカバーとを分解した状態であって,本体にはセンサコード,モータコード,レゾルバコード等のコード類が取り除かれた状態を示した斜視図である。
【
図2】この小形開閉スライド装置を示す平面図である。
【
図3】
図2の小形開閉スライド装置の側面図である。
【
図4】
図2の小形開閉スライド装置のA−A断面を示す断面図である。
【
図5】
図4の小形開閉スライド装置のB−B断面を示す断面図である。
【
図6】この小形開閉スライド装置に組み込まれたナットと該ナットが螺入されたねじ軸を示す正面図である。
【
図7】
図6のナットが螺入されたねじ軸を示す側面図である
【
図8】この小形開閉スライド装置における一方のテーブルを示す平面図である。
【
図10】この小形開閉スライド装置におけるベアリングハウスを示す側面図である。
【
図12】この小形開閉スライド装置におけるベッドを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,図面を参照して,この発明による小形開閉スライド装置の一実施例を説明する。この小形開閉スライド装置は,半導体製造装置,組立装置,測定・検査装置,試験装置,工作機械等の各種装置にアクチュエータとして組み込んで使用できるものであり,アクチュエータとしての可動なテーブル3,4を種々のストローク長さに構成することができ,使い勝手がよいものになっている。
【0017】
この発明による小形開閉スライド装置は,概して,
図1〜
図4に示すように,矩形平面の取付け面18を有した長尺状のベッド1,ベッド1の長手方向に沿って直動案内ユニット13,14を介してスライド自在な一対のテーブル3,4,テーブル3に固定されたナット15とテーブル4に固定されたナット16とに螺合して長手方向に延びるねじ軸5,ねじ軸5の一方の軸端部56をベアリング7を介して軸支するベッド1に固定されたベアリングハウス6,及びベアリングハウス6の嵌入穴38に配設されたベアリング7,ベアリング7を貫通した軸端部56の先端部とモータ軸49とを連結するカップリング8,及びカップリング8を介してねじ軸5を回転駆動する超小形のACサーボモータ,ステッピングモータ,DCモータ等のモータ2を備えている。ベッド1は,ベースに設置して取り付けるため取付けねじ孔37が形成されている。テーブル3,4には.ナット15,16を配設する嵌挿孔35が形成されている。テーブル3には嵌挿孔35に嵌合したナット15が固定され,テーブル4には嵌挿孔35に嵌合したナット16が固定されている。ナット15,16には雌ねじ33(
図5)がそれぞれ形成され,雌ねじ33は,互いに左右逆のねじが形成されている。ねじ軸5に形成された雄ねじは,ナット15,16に螺入するように,右ねじと左ねじが長手方向に隣接して形成されている。
【0018】
また,この小形開閉スライド装置において,テーブル3,4には,
図8に示すように,上面に長手方向に伸びる凹溝48の両側にワーク等の部品を取り付けるための取付け面17が形成され,取付け面17には ワーク取付けねじ孔23及び取付け用孔22が形成されている。また,テーブル3,4の凹溝48には,カバー10のブリッジ部47が嵌入位置し,カバー10の長孔46からテーブル3,4の取付け面17が突出した状態で長孔46に沿って取付け面17が往復移動する。また,テーブル3,4は,その側面にナット15,16に設けたフランジ形状の取付け部50を配設するため凹溝状に形成された収容段部54が形成されており,収容段部54には,ナット15,16を嵌合配設して固定するための嵌挿孔35が形成されている。また,取付け部50には,取付け用孔32が形成されており,また,収容段部54には,ナット15,16に設けた取付け部50を固定するための取付け用ねじ孔34が形成されている。そこで,テーブル3,4の収容段部54にナット15,16の取付け部50を配設して固定ねじ27を取付け用孔32を挿通して取付け用ねじ孔34に螺入し,テーブル3,4にナット15,16を固定することができる。この小形開閉スライド装置には,
図2に示すように,センサコード24,レゾルバコード25,モータコード26等のセンサが,モータ2を作動制御し,テーブル3,4を往復移動制御させるため設けられている。
【0019】
図13に示すように,ベッド1には,テーブル3,4の摺動移動部にセンサ基板取付け用凹部28が形成されており,また,長手方向両側に沿って伸びる取付け用孔63が形成されており,一対の軌道レール13Rが取付け用孔63に通したねじ(図示せず)によってベッド1に固定されており,1本の軌道レール13Rには,テーブル3に固定されたスライダ13Sとテーブル4に固定されたスライダ14Sとが摺動自在に配設されている。即ち,ベッド1には,一対の直動案内ユニット13,14が配設されている。直動案内ユニット13は,軌道レール13Rと軌道レール13R上を摺動移動するスライダ13Sから構成され,また,直動案内ユニット14は,軌道レール13Rと軌道レール13R上を摺動移動するスライダ14Sから構成されている。また,ベッド1には,取付け用孔64が形成されており,ベアリングハウス6は,取付け用孔64に通したねじ(図示せず)によってベッド1に固定されている。ベアリングハウス6には,一対のアンギュラベアリングで成るベアリング7が配設されている。ベアリング7は,内輪30,外輪21及び内輪30と外輪21との間にボール62が介在して構成されている。更に,ベッド1には,端部に形成された突出部51に取付け用ねじ孔65が形成されており,カップリング8が取付け用ねじ孔65に螺入してねじ(図示せず)によって固定されている。カップリング8の端部はベアリングハウス6に形成されている挿通孔53に嵌挿している。即ち,ベッド1には,一対の軌道レール13R,ベアリングハウス6,及びカップリング8がねじでそれぞれ固定されている。
【0020】
この小形開閉スライド装置については,特に,ねじ軸5には,右ねじと左ねじとが長手方向に隣接して形成されており,これらの左右ねじに螺合するナット15,16にそれぞれ固定されたテーブル3,4は,ねじ軸5の回転によって互いに逆方向に移動して互いに近寄ったり又は離れたりする往復運動をするものである。具体的には,ねじ軸5には,一方のナット15に螺合する右ねじ及び左ねじのいずれか一方が大径ねじ11に形成され,他方のナット16に螺合する他方が小径ねじ12に形成されており,モータ2側の軸端部56には,大径ねじ11に形成され,反モータ2側には小径軸に小径ねじ12が形成されており,大径ねじ11に螺合するナット15は,小径ねじ12を挿通するサイズに形成されている。また,ねじ軸5は,大径ねじ11が形成されている部位に続く軸端部56には,ベアリング7の内輪30に端面が当接して係止可能な段部又はフランジ部20が形成されている。即ち,ねじ軸5は,モータ2側に大径ねじ11が形成され,反モータ2側に小径ねじ12が形成されている。また,ねじ軸5のフランジ部20の外周には押さえ板39が配設されており,押さえ板39は,アンギュラベアリング7の外輪21に隣接してベアリングハウス6内にアンギュラベアリング7を収容し,ベアリングハウス6に形成されたねじ孔55にねじ込んだねじ(図示せず)でベアリングハウス6に固定されている。この小形開閉スライド装置は,可逆回転するモータ2によってねじ軸5が回転させられると,テーブル3,4が互いに反対方向に移動するようになり,モータ2の一方向の回転によってテーブル3,4が接近する方向に移動し,モータ2の反対方向の回転によってテーブル3,4が離間する方向に移動するように作動することになる。
【0021】
また,この小形開閉スライド装置は,モータ2は,モータブラケット9を介してベッド1に固定されており,モータ2の出力軸49は,振れ止めのためにサポートベアリング29によってモータブラケット9に支持されている。モータ2の回転駆動によって一対のテーブル3,4が互いに近寄った予め決められた所定の位置に位置決めされたり,一対のテーブル3,4が互いに遠ざかった予め決められた所定の位置に位置決めされるように構成されていることを特徴としている。それ故に,この小形開閉スライド装置は,テーブル3,4にフィンガ等の把持部材をそれぞれ取り付けて,テーブル3,4を接近する位置へ移動させれば,ワーク等の部品を把持できる閉位置になり,テーブル3,4を遠ざかった位置へ移動させれば,ワーク等の部品を離す開位置になり,開閉スライド装置を構成することができる。
【0022】
また,ねじ軸5には,右ねじ又は左ねじが形成された大径ねじ11と,大径ねじ11とは逆方向の左ねじ又は右ねじが形成された小径ねじ12とが,同一ピッチで形成されている。例えば,この小形開閉スライド装置がワーク等の部品を把持するチャックに構成された場合に,一対のテーブル3,4即ちフィンガが等速で移動し,ワーク等の部品に対する衝撃等の悪影響を与えることが無く,好ましいものとなる。また,ねじ軸5は,軸端部56側にフランジ部20を備えており,フランジ部20は,大径ねじ11よりも大径に形成されてフランジ部20にベアリング7の内輪30に当接する端面57が形成されている。また,カップリング8の端部がベアリングハウス6の挿通孔53に挿通してカップリング8の端面がベアリング7の内輪30に当接している。即ち,ねじ軸5の段部又はフランジ部20の端面57とカップリング8の端面58とでベアリング7の内輪30が挟持されており,ねじ軸5は,ベアリング7に軸支されている。また,ねじ軸5は,一対のナット3,4が直接螺合するすべりねじ形式に構成するか,又は,ナット3,4とねじ軸5との間に配設されるボール(図示せず)を介して一対のナット3,4と螺合するボールねじ形式に構成したものである。また,ねじ軸5がボールねじ形式に形成されている場合には,ねじ軸5は,大径ねじ11がM6(外径6mm)に形成され,また,小径ねじ12がM4(外径4mm)に形成された場合,装置自体を小型化に形成できるものである。
【0023】
また,この小形開閉スライド装置は,一対のテーブル3,4がスライド案内される直動案内ユニット13,14の周囲部には,塵や粉塵等の異物の侵入を防止するために,カバー10が配設されている。カバー10は,両側面59,一方の端面61,及び上面60から形成され,モータ2側の端面と底面が開口した形状であり,上面60には,テーブル3,4のワーク取付け面17が挿通する長孔46がブリッジ部47の長手方向両側に形成され,長孔46からテーブル3,4の取付け面17が露出している。カバー10は,両側面59の内側には凸部41が形成され,端面61の内側には凸部43が形成され,上面60の裏面側には凸部45が形成されている。また,ベッド1には,反モータ2側の端面にはカバー10の凸部43が嵌合する凹部42が形成され,ベアリングハウス6は,両側面にカバー10の凸部41が嵌合する凹部40が形成され,上面にカバー10の凸部45が嵌合する凹部44が形成されている。従って,カバー10は,開口したモータ2側の端面と底面とを,ベッド1に配設されたテーブル3,4に覆って配設することによって,ベッド1の凹部42とベアリングハウス6の両側面の凹部40と上面の凹部44とに,スナップフィットして固着される。
【0024】
この小形開閉スライド装置では,テーブル3,テーブル4,ベッド1,ねじ軸5等の仕様は,例えば,次のように構成することができる。テーブル3,4は,幅15mmであり,また,テーブル3,4が配設されるベッド1は,幅15mmに形成され,カバー10付きの状態で総高さが20mmであって幅が17mm程度に構成されたものである。また,テーブル3,4は,直動案内ユニット13,14の軌道レール13R上を往復移動するストロークが5mm程度であり,従って,テーブル3,4間の開閉ストロークが10mmに構成されている。また,ねじ軸5に形成された大径ねじ11及び小径ねじ12は,ねじ仕様が次のように構成されている。ねじ軸5は,小径部のねじ径がM4(外径4mm)であり,ねじのピッチ即ちリードが1mmであり,また,大径部のねじ径がM5(外径5mm)であり,ねじのピッチ即ちリードが1mmに形成されている。ねじ軸5は,全長が54mmであり,右ねじ部の長さが18.5mmであり,左ねじ部が19.5mmに形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明による小形開閉スライド装置は,半導体製造装置,組立装置,測定・検査装置,試験装置,位置決めテーブル,スライドテーブル等の各種装置に適用して好ましいものである。
【符号の説明】
【0026】
1 ベッド
2 モータ
3,4 テーブル
5 ねじ軸
6 ベアリングハウス
7 ベアリング
8 カップリング
10 カバー
11 大径ねじ
12 小径ねじ
13,14 直動案内ユニット
13R 軌道レール
13S,14S スライダ
15,16 ナット
17 ワーク取付け面
18 ベース取付け面
20 フランジ部
30 内輪
35 嵌挿孔
40,42,44 凹部
41,43,45 凸部
49 モータ出力軸
50 取付け部
54 収容段部
56 軸端部
57 端面