【実施例1】
【0033】
[ヘッド・サスペンションの概要]
図1は、実施例1に係り、ヘッド・サスペンションのフレキシャ側から見た平面図である。なお、以下の説明では、ヘッド・サスペンションの旋回半径方向を長手方向又は前後方向、これに直交するヘッド・サスペンションの旋回方向を幅方向又はスウェイ方向、旋回軸心方向を厚み方向とする。
【0034】
図1のように、ヘッド・サスペンション1は、ベース・プレート3と、ロード・ビーム5と、フレキシャ7とを備える他、位置決めアクチュエータ9が設けられている。
【0035】
ベース・プレート3は、旋回駆動用のキャリッジ側に取り付けられて軸回りに旋回駆動される構成部材である。ベース・プレート3には、取り付け用のボス部11が備えられ、ボス部11によりキャリッジ(図示せず)側へのボールカシメによる取り付けを可能としている。ベース・プレート3には、位置決めアクチュエータ9が一体的に取り付けられている。
【0036】
位置決めアクチュエータ9は、後述のヘッド部25をベース・プレート3側に対しスウェイ方向へ変位可能とするものであり、アクチュエータ・プレート13に圧電素子15が取り付けられている。アクチュエータ・プレート13の後部は、ベース・プレート3に重ねられてレーザ・スポット溶接等により一体的に結合されている。アクチュエータ・プレート13の前端に、ロード・ビーム5がレーザ・スポット溶接等により一体的に結合されている。
【0037】
ロード・ビーム5は、剛体部21及びばね部23a、23bを一体に含む。ロード・ビーム5は、アクチュエータ・プレート13の前端に対し、ばね部23a、23bを介して剛体部21の基端側が支持され、情報の書き込み、読み取りを行う先端側(前端側又はヘッド部側)のヘッド部25に負荷荷重を与えるものである。剛体部21には、フレキシャ7が取り付けられている。
【0038】
フレキシャ7には、前端側にスライダー27が取り付けられている。スライダー27は、読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、ヘッド・ディスク・インターフェイス(HDI)センサー等の機能が組み込まれて、磁気ヘッド又はヘッド部25を構成している(
図2参照)。スライダー27の読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、ヘッド・ディスク・インターフェイス(HDI)センサー等の各端子部43は、フレキシャ7の配線の各端子部37にはんだにより接続されている。このフレキシャ7は、位置決めアクチュエータ9を通ってベース・プレート3側のテール部側に延設されている。
【0039】
位置決めアクチュエータ9においては、フレキシャ7のアクチュエータ接続端子部29が導電性ペーストにより圧電素子15の電極に導通接続されている(
図9参照)。
【0040】
かかるヘッド・サスペンション1は、ボス部11を介したキャリッジ(図示せず)側への取り付けによりハード・ディスク・ドライブ(HDD)に組み込まれる。
【0041】
このヘッド・サスペンション1は、キャリッジ側のボイス・コイル・モータにより旋回駆動され、スライダー27によりヘッド部25がハード・ディスク上を移動して位置決められ、ハード・ディスクに対してヘッド部25による情報の読み取り、書き込み等を行わせることができる。
【0042】
また、ヘッド・サスペンション1では、ハード・ディスクに対する位置決めの際に、位置決めアクチュエータ9によってヘッド部25をスウェイ方向に微小駆動して精度を向上することができる。
【0043】
[ヘッド部の端子パッド構造]
図2は、実施例1に係るフレキシャのヘッド部側の端子結合を示し、(A)は、概略断面図、(B)は、フレキシャ側の端子部を示す概略平面図、
図3は、フレキシャのヘッド部側の端子部を示す斜視図、
図4は、同拡大斜視図である。
【0044】
図1、
図2(A)のように、フレキシャ7は、ばね性を有する薄いステンレス鋼圧延板(SST)などの導電性薄板31上に電気絶縁層33を形成し、この電気絶縁層33上に銅の配線パターン35を積層した断面構造を有する。なお、配線パターン35上は、後述する端子部37を除いて、図示しないカバー絶縁層により覆われている。導電性薄板31の厚みは、10〜25μmの範囲等で形成され、銅の配線パターン35の厚みは、5〜15μmの範囲等で形成されている。但し、これらの数値は、設計に応じて適宜変更することができる。
【0045】
配線パターン35は、
図3及び
図4のように、複数の配線41の一端に、複数のパッド状の端子部(端子パッド)37がそれぞれ形成されている。本実施例では、8本の配線41に対して8個の端子部37が形成されているが、後述するヘッド部25側の端子部43の数に応じて10個以上等の端子部37を形成することも可能である。端子部37は、
図2(B)のように、配線パターン35の配線41に比較して拡大して形成されている。詳細については、後述する。
【0046】
ヘッド部25の機能部品であるスライダー27は、
図2(A)のように、例えばFemtoスライダーであり、組み込まれた機能に応じて、読み取り用、書き込み用の素子、フライハイト制御用ヒーター、HDIセンサー等に対応した例えば8個の端子部43がスライダー27の側面27aに幅方向に並んで配置されている。ただし、端子部43の個数は、機能に応じて変更することが可能であり、例えば、10個以上とすることもできる。
【0047】
ヘッド部25は、フレキシャ7の表面上に取り付けられており、スライダー27の側面27aがフレキシャ7の表面に対してほぼ直交するように位置する。これに応じ、各端子部43は、フレキシャ7の表面に位置する各端子部37と断面においてほぼ直交するようにそれぞれ隣接している。
【0048】
各端子部37と各端子43との間は、はんだにより接合され、固化したはんだからなるフィレット47が形成されている。本実施例のフィレット47の形成は、はんだボール接合が用いられ、はんだボール45のリフローにより行われている。ただし、フィレット47の形成には、はんだジェット接合を用いることも可能である。はんだジェット接合を用いる場合は、予め端子部37及び43のいずれか一方又は双方に吹き付けておいたはんだペーストをリフローするか或は溶融したはんだを端子部37及び43間に吹き付ける。フィレット47は、端子部43上で上下幅全体にわたる断面形状を有し、その断面形状をほぼ維持しつつ端子部37上へと延設され、端子部37及び端子部39間でフィレット47の幅が結合不良の生じない範囲で十分に確保されている。
【0049】
図5は、フレキシャのヘッド部側の端子部の断面図であり、(A)は、実施例1、(B)は、嵩上げメッキのない比較例、(C)は、同他の比較例を示す。
【0050】
各端子部37は、
図2(B)〜
図5(A)のように、全体としてかまぼこ型であり、断面D字状或は半円形状に形成されている。この各端子部37は、本体部39上に、基礎メッキである下地メッキ51と、嵩上げメッキ53と、表面メッキ55とが形成されてなる。
【0051】
本体部39は、配線パターン35の配線41をそのまま延設して配線41と同一幅となっている。本実施例では、配線41及び本体部39の幅W0が25μm程度に設定されている。
【0052】
下地メッキ51は、ニッケル・メッキであり、本体部39の表面に均一な厚みで形成され、本体部39の平面及び側面全体を覆っている。
【0053】
嵩上げメッキ53は、下地メッキ51と同材質のニッケルで一体に形成され、下地メッキ51及びその周辺の電気絶縁層33に対し膨出する断面形状となっている。この嵩上げメッキ53により、端子部37の表面の嵩上げが行われると同時に、端子部37を配線41に対して拡大している。
【0054】
嵩上げメッキ53の形成は、下地メッキ51と共にメッキ処理により形成され、端子部37周囲に対するマスクなしのメッキ処理時間の管理により膨出形成される。なお、端子部37と無関係な部分には、マスクを使用しても良い。
【0055】
従って、
図5(A)では、概念上、下地メッキ51及び嵩上げメッキ53を分けて図示しているが、これらは一体であり、断面に境はなく、連続している。
【0056】
さらに説明すると、嵩上げメッキ53の形成においては、嵩上げメッキ53を有さない他の端子部にも行われる通常の下地メッキ処理を、その前又は後において処理時間を延長することで、他の端子部の下地メッキと共に端子部37の本体部39表面に下地メッキ51及び嵩上げメッキ53が一体に形成される。
【0057】
本実施例において、下地メッキ51は、下地メッキ51及び嵩上げメッキ53が一体の全領域に対し、端子部37の表面を均一な厚みで覆い、嵩上げメッキ53を有さない端子部に対する通常の下地メッキ(
図5(B)及び(C)参照)に対応する領域を意味する。
【0058】
つまり、
図5(A)では、通常の下地メッキ処理を行った後に処理時間の延長による嵩上げメッキ処理を行うことを示しているのではなく、通常の下地メッキ処理の前後いずれにおいて処理時間を延長した場合でも、通常の下地メッキに対応する領域としての下地メッキ51及びそれに対する嵩上げメッキ53が一体に形成されることを示している。
【0059】
なお、下地メッキ51及び嵩上げメッキ53は、必ずしも他の端子部の下地メッキと共に形成する必要ない。また、下地メッキ51の厚みは、通常の下地メッキの厚みが形成時等のばらつきを有するほぼ均一であるので、そのばらつきを考慮したほぼ均一であればよい。ただし、下地メッキ51は、嵩上げメッキ53と一体の通常の下地メッキに対応する領域を示し、断面に境もないことから、厚みが正確に均一なものとして観念することも可能である。
【0060】
嵩上げメッキ53は、本体部39の厚みよりも厚く形成され、T1=8.9μm<T2=14.1μmに設定されている。但し、全体として本体部39を覆って電気絶縁層33に対し膨出する断面形状となっていれば、嵩上げメッキ53を、端子部39の厚みよりも薄く形成することもできる。また、下地メッキ51も含めた嵩上げメッキ53の幅は、本体部39に対する両側においてほぼ均一であり、本実施例において、一側の幅W1=16.3μm、他側の幅W2=16.0μmとなっている。なお、嵩上げメッキ53の幅W1及びW2は、メッキ処理によって若干のばらつきが生じるものの、端子部37の幅からすれば極めて微細である。
【0061】
嵩上げメッキ53は、上述のかまぼこ型により、表面の断面形状がアーチ状となっている。嵩上げメッキ53の頂部側の曲率は、その両側のコーナー部の曲率よりも小さく設定され、リフロー時の溶融したはんだが安定し易いようになっている。嵩上げメッキ53の頂部側の相対的に曲率の小さな範囲は、本実施例において本体部39の幅に対応している。なお、嵩上げメッキ53の頂部を平坦面に形成することもできる。
【0062】
表面メッキ55は、嵩上げメッキ53の表面全体を覆うように金(Au)メッキで薄く形成され、表面メッキ55が、嵩上げメッキ53に応じて、かまぼこ型で、断面アーチ状になっている。なお、表面メッキ55は、配線パターン35全体を覆う構成の場合もある。嵩上げメッキ63を有さない他の端子部の通常の下地メッキに対しては、その表面に表面メッキ55と同様の表面メッキが施されることになる。
【0063】
この
図5(A)の実施例1の各端子部37に対し、
図5(B)及び
図5(C)の嵩上げメッキのない比較例は、各端子部37A、37Bが下地メッキ51A、51Bのみを備え、各本体部39A、39Bに沿ってほぼ均一な厚みとなっている。従って、
図5(A)の実施例1は、
図5(B)及び
図5(C)の各端子部37A、37Bと比較すると、嵩上げにより各端子部37が相対的に大きく膨出している。なお、端子部37A、37Bでは、本体部39A、39B自体が配線41よりも拡大して形成されている。
【0064】
かかる端子部37とスライダー27の端子部43との間のフィレット47の状況を、
図6、
図7の比較例と比較する。
【0065】
図6は、嵩上げメッキのない比較例に係るフレキシャのヘッド部側の端子結合を示し、(A)は、概略断面図、(B)は、フレキシャ側の端子部の平面図、
図7は、嵩上げメッキのない他の比較例に係るフレキシャのヘッド部側の端子結合を示し、(A)は、概略断面図、(B)は、フレキシャ側の端子部を示す概略平面図である。
【0066】
図6は、例えば、端子部37Cの数が読み取り用、書き込み用の素子のみに応じた4個であり、端子部37C、43Cも相対的に大きなものとなっている。従って、使用されるはんだボール45Cも相対的に大きなものを用いることができ、フィレット47Cも十分な太さのものを形成することができる。
【0067】
しかし、端子部が8個や10個などと増加すると、
図7のように、端子部37D、43Dが小さくなり、使用されるはんだボール45Dも相対的に小さなものを用いることになり、フィレット47Dも細く十分には形成することができなくなる。このため、端子部37D、43D間できれいで十分な太さのフィレットを形成できず、結合不良となる割合が増加する。
【0068】
これに対し、実施例1の
図2では、上記のように端子部37が8個や10個などと増加し、端子部37及び43が小さくなり、はんだボール45も相対的に小さなものを用いても、嵩上げメッキ53による各端子部37での嵩上げにより、端子部37の表面が端子部43に近づくことになる。このため、端子部37及び端子部43間で上記のようにきれいで十分なフィレット47を形成することができ結合不良を抑制することができる。
【0069】
図8は、マスクを用いた嵩上げメッキの形成を示す概略断面図である。
【0070】
図8のように、端子部37Eの嵩上げメッキ53Eを、端子部37E周囲の部分的なマスク57により形成することもできる。この場合、形成された嵩上げメッキ53Eは、本体部39の平面及び電気絶縁層33側の側面全体を覆って膨出形状となる。嵩上げメッキ53Eの表面には、表面メッキ55Eが形成されている。
【0071】
なお、マスクを用いる場合は、例えば本体部39の側面には下地メッキ51Eのみを形成し、本体部39の表面には下地メッキ51Eと共に嵩上げメッキ53Eを形成することも可能である。この場合は、嵩上げによる端子部37Eの拡大ができないので、本体部39自体を配線41に対して拡大しておくのがよい。
[実施例1の効果]
本実施例の端子パッド構造を有する端子部37(37E)は、本体部39表面の均一な厚みの下地メッキ51と、この下地メッキ51と同材質で一体に形成され下地メッキ51及びその周辺の電気絶縁層33に対して膨出形状の嵩上げメッキ53と、この嵩上げメッキ53表面の表面メッキ55とを備えている。
【0072】
従って、本実施例では、フレキシャ7の端子部37をはんだが液状から固化することによってスライダー27(ヘッド部25)の端子部43に結合する際に、嵩上げメッキ53による嵩上げにより、端子部37及び端子部43の相互間距離を縮小して、より小さくないはんだボール45(少ない接合剤の使用量)でも端子部37及び43の相互間で十分なフィレット47を形成して結合不良を抑制できる。
【0073】
しかも、嵩上げメッキ53は、下地メッキ51と同材質で一体に形成されるため、簡単に形成することができる。
【0074】
さらに、端子部37は、対応する配線41に対して嵩上げメッキ53により端子形状に拡大することができるため、配線41の端部をそのまま本体部39として用いることができ、容易に形成することができる。
【0075】
端子部37は、フレキシャ7のヘッド部25側で電気絶縁層33上に位置する本体部39を有し、嵩上げメッキ53は、端子部37の本体部39表面を下地メッキ51を介して囲む断面形状であるから、スライダー27の端子部43に結合される端子部37を確実に嵩上げしつつ配線41に対して拡大することができる。
【0076】
嵩上げメッキ53は、端子部37の本体部39の厚みよりも厚いので、スライダー27の端子部43との相互間距離を十分に縮小して、結合不良に十分なフィレット47を確実に形成することができる。
【0077】
本実施例では、下地メッキ51及び嵩上げメッキ53がニッケル・メッキであるから、通常の下地メッキ処理と同様の処理によって嵩上げメッキ53を容易に形成することができる。
【0078】
特に、本実施例では、嵩上げメッキ53をマスクなしのメッキ処理により処理時間管理に応じて形成し、又は端子部37Eに対する部分的なマスク57を用いたメッキ処理により形成するので、通常の下地メッキ処理の延長として容易且つ確実に嵩上げメッキ53を形成できる。
【0079】
また、マスクなしで嵩上げメッキ53を形成する場合は、下地メッキ51を含めた嵩上げメッキ53が本体部39に対する両側の幅W1及びW2が均一になり、フレキシャ7の端子部37の形成位置や形状の精度を向上し、ひいては端子部37に対するスライダー27の端子部43の位置決め精度を向上することができる。
【実施例2】
【0080】
[位置決めアクチュエータの端子パッド構造]
図9、
図10は、実施例2に係り、
図9は、フレキシャの端子部と位置決めアクチュエータの圧電素子との結合を示す概略断面図、
図10は、フレキシャの端子部と位置決めアクチュエータの圧電素子との結合の他の例を示す概略断面図である。なお、
図9、
図10は、フレキシャを下側にして図示している。
【0081】
本実施例では、フレキシャ7の中間部において、嵩上げメッキ63、63Fをヘッド・サスペンション1の位置決めアクチュエータ9に適用した。
【0082】
図1及び
図9のように、ヘッド・サスペンション1のフレキシャ7の端子部としてのアクチュエータ接続端子部29に導電ペースト、例えば銀ペースト58により機能部品である圧電素子15を結合している。
【0083】
アクチュエータ接続端子部29は、本体部67と、基礎メッキであるビア(Via)・メッキ61と、嵩上げメッキ63と、表面メッキ65とを備えている。
【0084】
本体部67は、電気絶縁層33の貫通孔59に臨む配線パターン35の一部からなっている。なお、貫通孔59の周囲からは、導電性薄板31がエッチング等によって除去されている。
【0085】
ビア・メッキ61は、電気絶縁層33の貫通孔59に形成されたニッケル・メッキである。このビア・メッキ61は、本体部67の表面に均一な厚みで形成され、電気絶縁層33の表面と面一の高さまでを占めている。従って、ビア・メッキ61は、アクチュエータ端子部29の本体部67表面を覆い、貫通孔59を介して圧電素子15側に臨む構成となっている。これにより、ビア・メッキ61の表面は、貫通孔59から圧電素子15に対向する。なお、ビア・メッキ61の厚みは、実施例1の下地メッキ51と同様に、ほぼ均一を意味するが、正確な均一であっても良い。
【0086】
嵩上げメッキ63は、ビア・メッキ61と同材質のニッケルで一体に形成され、ビア・メッキ61及びその周辺の電気絶縁層33に対して圧電素子15側へ膨出する断面形状となっている。この嵩上げメッキ63は、平面から見て貫通孔59の周りを全体的に覆う円形形状に形成されている。嵩上げメッキ63の円形形状の直径は、貫通孔59のほぼ2倍である。ただし、嵩上げメッキ63の円形形状の直径の選択は自由である。
【0087】
嵩上げメッキ63の形成は、ビア・メッキ61と共にメッキ処理により行われ、マスクなしのメッキ処理時間管理により膨出形成される。従って、
図9では、概念上ビア・メッキ61及び嵩上げメッキ63を分けて図示しているが、これらは一体であり、断面に境はなく、連続している。
【0088】
さらに説明すると、嵩上げメッキ63の形成においては、嵩上げメッキ63を有さない場合の通常のビア・メッキ処理を、その前又は後において処理時間を延長することで、端子部29の本体部67表面にビア・メッキ61及び嵩上げメッキ63が一体に形成される。
【0089】
本実施例において、ビア・メッキ61は、ビア・メッキ61及び嵩上げメッキ63が一体の全領域に対し、端子部29の表面を均一な厚みで覆い、嵩上げメッキ63を有さない場合の通常のビア・メッキに対応する領域を意味する。
【0090】
つまり、
図9では、通常のビア・メッキ処理を行った後に処理時間の延長による嵩上げメッキ処理を行うことを示しているのではなく、通常のビア・メッキ処理の前後いずれにおいて処理時間を延長した場合でも、通常のビア・メッキに対応する領域としてのビア・メッキ61及びそれに対する嵩上げメッキ63が一体に形成されることを示している。
【0091】
嵩上げメッキ63は、本体部67、ビア・メッキ61の厚みよりも厚く形成されている。但し、嵩上げメッキ63は、全体として電気絶縁層33に対して圧電素子15側へ膨出する断面形状となっていれば、本体部67、ビア・メッキ61の厚みよりも薄く形成することもできる。
【0092】
嵩上げメッキ63は、表面の断面形状がアーチ状となっている。嵩上げメッキ63の頂部側の曲率は、その両側のコーナー部の曲率よりも小さく設定され、導電性ペーストが安定し易いようになっている。嵩上げメッキ63の頂部側の相対的に曲率の小さな範囲は、本実施例において貫通孔59の直径に対応している。なお、嵩上げメッキ63の頂部側を平坦面に形成することもできる。
【0093】
表面メッキ65は、嵩上げメッキ63の表面に金メッキで薄く全体を覆うように形成され、表面メッキ65が、嵩上げメッキ63により、平面視が円形で、断面アーチ状になっている。
【0094】
従って、嵩上げメッキ63による嵩上げで表面メッキ65が電気絶縁層33の表面よりも圧電素子15側へ大きく膨出している。
【0095】
この嵩上げメッキ63による嵩上げにより、表面メッキ65と圧電素子15との間がビア・メッキ61よりも近くなり、両者間をより少ない導電性ペースト58で結合不良を抑制しながら結合することができる。
【0096】
嵩上げメッキ63は、実施例1の
図8と同様にマスクを用いて形成することもできる。
【0097】
図10の例は、フレキシャ7の導電性薄板31が電気絶縁層33の貫通孔59周囲にリング状の補強部31aとして存在する形態である。導電性薄板31の補強部31aにも貫通孔69が形成され、電気絶縁層33の貫通孔59と同心となっている。
【0098】
ビア・メッキ61Fは、貫通孔59、69内に形成され、ビア・メッキ61Fと一体の嵩上げメッキ63Fは、補強部31aの周囲に及び、全体として電気絶縁層33に対して圧電素子15側へ膨出する断面形状となっている。この嵩上げメッキ63Fの頂部には平坦な領域が形成され、この平坦何領域の直径は、貫通孔59、69の直径と同等か若干大きく形成されている。嵩上げメッキ63Fは、頂部の平坦な領域を含めて、全体的にほぼ断面アーチ状になっている。なお、嵩上げメッキ63Fの頂部側を曲率の緩やかな面で構成することもできる。
【0099】
従って、嵩上げメッキ63Fによる嵩上げで表面メッキ65Fが電気絶縁層33の表面よりも圧電素子15側へ、より大きく膨出している。
【0100】
この嵩上げメッキ63Fによる嵩上げにより、表面メッキ65Fと圧電素子15との間がビア・メッキ61Fよりも近くなり、両者間をより少ない導電性ペースト58でも結合不良を抑制しながらペースト結合することができる。
【実施例3】
【0101】
[テール部側の端子パッド構造]
図11は、ヘッド・スタック組み立て体の斜視図、
図12は、テール部におけるフレキシャの端子結合を示す拡大斜視図、
図13は、テール部におけるフレキシャの端子結合を説明する概略斜視図である。
【0102】
本実施例3は、嵩上げメッキをヘッド・サスペンション1のテール部74の端子部75に適用した。
【0103】
図11、
図12のように、本実施例では、ヘッド・サスペンション1を複数支持したヘッド・サスペンション・アッセンブリ71と、メイン・フレキシブル配線基板73とを結合するものである。なお、
図11及び
図12においては、便宜上、単一のヘッド・サスペンション1のみを示している。
【0104】
各ヘッド・サスペンション1側のテール部74は、メイン・フレキシブル配線基板73のエッジ73aのスリット76からエッジ73aの表面側に突出し、その突出部分において端子部75がエッジ73aの端子部77にはんだボールのリフローにより結合され、フィレット79が形成されている。
【0105】
本実施例では、テール部74の端子部75に実施例1の端子部37と同様の構造を採用している。具体的には、基礎メッキとして本体部39の表面を覆う膜状の下地メッキ51、下地メッキ51と同材質のニッケルで一体に形成され下地メッキ51及びその周辺の電気絶縁層33に対し膨出する断面形状となっている嵩上げメッキ53、嵩上げメッキ53表面の表面メッキ55からなっている(
図5参照)。
【0106】
なお、本実施例3の端子部75の下地メッキ51及び嵩上げメッキ55は、メッキ処理の時間管理ではなく、マスク57を用いて形成した。従って、嵩上げメッキ53の断面は、
図13のように、矩形の膨出断面形状となっている。但し、メッキ処理の時間管理で形成することもできる。
【0107】
この端子部75は、
図13のように、メイン・フレキシブル配線基板73のエッジ73aの端子部77にヘッド・サスペンション1側のテール部74の端子部75がはんだボール81を用いたリフローによって結合される。
【0108】
なお、
図13では、便宜上、
図11及び
図12のようにスリット76を有しておらず、テール部74を全体としてエッジ73aの表面側に位置させて示している。ただし、基本的には、
図11及び
図12のテール部74の端子部75に、実施例1の端子部37の構造をそのまま適用することが可能である。また、
図13のように、テール部74を全体としてエッジ73aの表面側に位置させることも、もちろん可能である。
【0109】
本実施例でも、嵩上げメッキによる、嵩上げで各端子部75がメイン・フレキシブル配線基板73の端子部77に向かって大きく膨出して近づき、相対的に小さな径のはんだボールを用いてきれいで十分なフィレットを形成することができ結合不良を抑制することができる。