(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パージ通路におけるキャニスタの側にパージ弁、吸気管の側に逆止弁、を設けた場合、特許文献2に記載されているように、パージ通路におけるパージ弁と逆止弁との間(以降、この部分を中間パージ通路、と記載する)に負圧が残留する場合がある。パージ弁が全閉状態である場合において、吸気管内の圧力が、中間パージ通路内の圧力よりも低い場合は逆止弁が開いて中間パージ通路内と吸気管内とが同じ圧力になり、吸気管内の圧力が、中間パージ通路内の圧力よりも高い場合は逆止弁が閉じて中間パージ通路内の圧力が維持されるためであり、この現象は、構造上、回避することができない。
【0009】
この中間パージ通路内の負圧の残留は、車両の停止時だけでなく、車両の走行中でも発生する現象である。中間パージ通路内の負圧が残留している状態では、パージ制御を開始してパージ弁を開いた場合、キャニスタに導入された大気によって中間パージ通路内の圧力が吸気管内の圧力以上に上昇するまで、逆止弁が開かない。そして逆止弁が開いた後は、吸気管内の負圧によってキャニスタ内の蒸発燃料が吸い出される。つまり、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが発生し、キャニスタから内燃機関までの蒸発燃料の到達遅れ時間が長くなってしまう。従って、上記タイムラグによって到達遅れ時間が長くなることを考慮することなくインジェクタからの噴射量を減量すると、蒸発燃料が内燃機関に到達するかなり手前の時点から噴射量の減量が開始されてしまう場合がある。この場合、吸入空気量に対する燃料量が不足し、理論空燃比に対してリーン状態(空気過剰状態)となるので好ましくない。
【0010】
特許文献1及び特許文献2には、上記のタイムラグの発生、及びこのタイムラグに起因する空燃比の変動を抑制する点について、記載がされていない。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、パージ通路におけるキャニスタの側にパージ弁、吸気通路の側に逆止弁、を設けた蒸発燃料供給装置において、パージ弁と逆止弁との間のパージ通路に負圧が残留している場合であっても、キャニスタ内の蒸発燃料を内燃機関に吸引させて燃焼させるパージ制御において、空燃比の変動をより抑制することができる蒸発燃料供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る蒸発燃料供給装置は次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、蒸発した燃料を貯蔵するキャニスタと、内燃機関の吸気通路と、前記キャニスタと、を連通して前記キャニスタに貯蔵された蒸発燃料を前記内燃機関に供給するパージ通路と、前記パージ通路に設けられて前記パージ通路を開閉制御して前記キャニスタから前記吸気通路へと流れる蒸発燃料の流量を調整するパージ弁と、前記パージ通路における前記パージ弁と前記吸気通路の間に設けられて前記キャニスタから前記吸気通路へと流体が流れることを許容するとともに前記吸気通路から前記キャニスタへと流体が流れることを防止する逆止弁と、前記パージ弁を制御する制御手段と、を備えた蒸発燃料供給装置である。そして、前記制御手段は、前記内燃機関に設けられたインジェクタからの燃料噴射量を制御しており、前記パージ弁の開度を制御して前記パージ弁を通過する流体の流量を調整可能、あるいは所定周期に対する開弁時間の割合であるデューティ比に基づいて前記パージ弁を開閉制御して前記パージ弁を通過する流体の流量を調整可能であり、前記パージ弁を第1開度あるいは第1デューティ比にて制御することで、
前記吸気通路の負圧を用いて、前記キャニスタに貯蔵した蒸発燃料を、前記パージ通路において、前記パージ弁、前記パージ弁と前記逆止弁との間の前記パージ通路である中間パージ通路、前記逆止弁、を経由させた後、前記吸気通路を経由させて前記内燃機関に供給するパージ制御を実行可能であり、前記パージ制御を開始した後、所定到達遅れ時間の経過後から、前記キャニスタから前記内燃機関に供給される蒸発燃料に基づいて、前記インジェクタからの燃料噴射量の減量を開始する。そして前記制御手段は、前記パージ制御の実行条件を満足したと判定して前記パージ制御を開始した場合、
前記中間パージ通路内の圧力が前記吸気通路内の圧力よりも高くなるまでの期間、あるいは前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との圧力差が所定圧力差以下となるまでの期間では、前記第1開度よりも大きな開度である第2開度、あるいは前記第1デューティ比よりも大きなデューティ比である第2デューティ比にて、前記パージ弁を制御する。
【0013】
この第1の発明によれば、パージ制御の実行条件を満足する場合であって
、中間パージ通路内の圧力が吸気通路内の圧力よりも高くなるまでの期間、あるいは吸気通路内の圧力と中間パージ通路内の圧力との圧力差が所定圧力差以下となるまでの期間の間、第2開度(第1開度より大)あるいは第2デューティ比(第1デューティ比より大)にてパージ弁を制御する。例えばパージ制御の開始時や、パージ制御を開始してから蒸発燃料が内燃機関に到達するまでの間に、第2開度あるいは第2デューティ比でパージ弁を制御することにより、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが発生する場合であっても、このタイムラグをより短くすることが可能である。従って、キャニスタ内の蒸発燃料を内燃機関に吸引させて燃焼させるパージ制御において、パージ弁と逆止弁との間のパージ通路に負圧が残留している場合であっても、空燃比の変動をより抑制することができる。
【0014】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始した時点では、前記第2開度あるいは前記第2デューティ比にて前記パージ弁を制御する。
【0015】
この第2の発明によれば、パージ制御の開始時に、第2開度あるいは第2デューティ比でパージ弁を制御する。これにより、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが発生する場合であっても、このタイムラグをより短くすることが可能である。従って、キャニスタ内の蒸発燃料を内燃機関に吸引させて燃焼させるパージ制御において、パージ弁と逆止弁との間のパージ通路に負圧が残留している場合であっても、空燃比の変動をより抑制することができる。
【0016】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始する際、前記中間パージ通路内の圧力が前記吸気通路内の圧力よりも低い場合に、前記第2開度あるいは前記第2ディーティ比にて前記パージ弁を制御する。
【0017】
この第3の発明によれば、中間パージ通路内の圧力が吸気通路内の圧力よりも低い場合に、第2開度あるいは第2デューティ比にてパージ弁を制御することで、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが発生する場合において、当該タイムラグを適切により短くすることができる。
【0018】
次に、本発明の第4の発明は、上記第2の発明または第3の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始する際に前記第2開度あるいは前記第2デューティ比で前記パージ弁の制御を開始した場合、所定時間経過した場合に、前記第2開度を前記第1開度へと切替える、あるいは前記第2デューティ比を前記第1デューティ比へと切替える。
【0019】
この第4の発明によれば、本来のパージ制御時の開度である第1開度(あるいは第1デューティ比)に対して、パージ制御の開始時において、一時的に大きな第2開度(あるいは第2デューティ比)としたパージ弁の開度を、適切なタイミングで、本来のパージ制御時の開度である第1開度(あるいは第1デューティ比)へと戻すことができる。
【0020】
次に、本発明の第5の発明は、上記第2の発明または第3の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始する際に前記第2開度あるいは前記第2デューティ比で前記パージ弁の制御を開始した場合、前記中間パージ通路内の圧力が前記吸気通路内の圧力よりも高くなった場合に、前記第2開度を前記第1開度へと切替える、あるいは前記第2デューティ比を前記第1デューティ比へと切替える。
【0021】
この第5の発明によれば、本来のパージ制御時の開度である第1開度(あるいは第1デューティ比)に対して、パージ制御の開始時において、一時的に大きな第2開度(あるいは第2デューティ比)としたパージ弁の開度を、適切なタイミングで、本来のパージ制御時の開度である第1開度(あるいは第1デューティ比)へと戻すことができる。
【0022】
次に、本発明の第6の発明は、上記第2の発明または第3の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始する際に前記第2開度あるいは前記第2デューティ比で前記パージ弁の制御を開始した場合、前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との圧力差が所定圧力差以下となった場合に、前記第2開度を前記第1開度へと切替える、あるいは前記第2デューティ比を前記第1デューティ比へと切替える。
【0023】
この第6の発明によれば、本来のパージ制御時の開度である第1開度(あるいは第1デューティ比)に対して、パージ制御の開始時において、一時的に大きな第2開度(あるいは第2デューティ比)としたパージ弁の開度を、適切なタイミングで、本来のパージ制御時の開度である第1開度(あるいは第1デューティ比)へと戻すことができる。
【0024】
次に、本発明の第7の発明は、上記第1の発明〜第6の発明のいずれか1つに係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始する際に前記第2開度あるいは前記第2デューティ比で前記パージ弁の制御を開始した場合、前記所定到達遅れ時間の計測の開始を遅らせる。
【0025】
この第7の発明によれば、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが発生すると予測される場合、このタイムラグに相当する時間分、所定到達遅れ時間の計測の開始を遅らせる。これにより、燃料噴射量の減量を、蒸発燃料が内燃機関に到達するタイミングにより近づけることができる。従って、空燃比の変動をより抑制することができる。
【0026】
次に、本発明の第8の発明は、上記第7の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始する際に前記第2開度あるいは前記第2デューティ比で前記パージ弁の制御を開始した場合、前記第2開度を前記第1開度へと切替えた時点から、あるいは前記第2デューティ比を前記第1デューティ比へと切替えた時点から、前記所定到達遅れ時間の計測を開始する。
【0027】
この第8の発明によれば、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが終了した後、逆止弁が開いた時点から所定到達遅れ時間の計測を開始するので、タイムラグが発生した場合であっても、蒸発燃料が内燃機関に到達した時点から適切に燃料噴射量の減量を実行することができる。従って、空燃比の変動をより抑制することができる。
【0028】
次に、本発明の第9の発明は、上記第1の発明〜第6の発明のいずれか1つに係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御を開始する際に前記第2開度あるいは前記第2デューティ比で前記パージ弁の制御を開始した場合、前記所定到達遅れ時間を長くする。
【0029】
この第9の発明によれば、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが発生すると予測される場合、所定到達遅れ時間の計測の開始を遅らせる第7の発明に対して、所定到達遅れ時間そのものを長くする。これにより、燃料噴射量の減量を、蒸発燃料が内燃機関に到達するタイミングにより近づけることができる。従って、空燃比の変動をより抑制することができる。
【0030】
次に、本発明の第10の発明は、上記第9の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記所定到達遅れ時間を長くする際、前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との圧力差が大きくなるにつれて前記所定到達遅れ時間が長くなるように、前記所定到達遅れ時間を長くする。
【0031】
この第10の発明によれば、吸気通路内の圧力と中間パージ通路内の圧力との圧力差が大きくなるに従って大きくなるタイムラグに対して、所定到達遅れ時間を適切に長くすることができる。これにより、燃料噴射量の減量を、蒸発燃料が内燃機関に到達するタイミングにより近づけることができる。従って、空燃比の変動をより抑制することができる。
【0032】
次に、本発明の第11の発明は、蒸発した燃料を貯蔵するキャニスタと、内燃機関の吸気通路と、前記キャニスタと、を連通して前記キャニスタに貯蔵された蒸発燃料を前記内燃機関に供給するパージ通路と、前記パージ通路に設けられて前記パージ通路を開閉制御して前記キャニスタから前記吸気通路へと流れる蒸発燃料の流量を調整するパージ弁と、前記パージ通路における前記パージ弁と前記吸気通路の間に設けられて前記キャニスタから前記吸気通路へと流体が流れることを許容するとともに前記吸気通路から前記キャニスタへと流体が流れることを防止する逆止弁と、前記パージ弁を制御する制御手段と、を備えた蒸発燃料供給装置である。そして、前記制御手段は、前記内燃機関に設けられたインジェクタからの燃料噴射量を制御しており、前記パージ弁の開度を制御して前記パージ弁を通過する流体の流量を調整可能、あるいは所定周期に対する開弁時間の割合であるデューティ比に基づいて前記パージ弁を開閉制御して前記パージ弁を通過する流体の流量を調整可能であり、前記パージ弁を第1開度あるいは第1デューティ比にて制御することで、
前記吸気通路の負圧を用いて、前記キャニスタに貯蔵した蒸発燃料を、前記パージ通路において、前記パージ弁、前記パージ弁と前記逆止弁との間の前記パージ通路である中間パージ通路、前記逆止弁、を経由させた後、前記吸気通路を経由させて前記内燃機関に供給するパージ制御を実行可能であり、前記パージ制御を開始した後、所定到達遅れ時間の経過後から、前記キャニスタから前記内燃機関に供給される蒸発燃料に基づいて、前記インジェクタからの燃料噴射量の減量を開始する。そして前記制御手段は、前記パージ制御の実行条件を満足していないと判断した場合であって現時点より先の時点において前記パージ制御の実行条件が満足されると予測した場合、予測した前記パージ制御の実行条件が満足されるタイミングから所定プレ駆動時間前において、前記第1開度または前記第1開度よりも大きな開度である第2開度、あるいは前記第1デューティ比または前記第1デューティ比よりも大きなデューティ比である第2デューティ比にて、前記パージ弁を制御するプレ駆動を実行し、前記パージ制御の実行条件を満足したと判定した場合は、前記第1開度、あるいは前記第1デューティ比にて、前記パージ弁を制御する。
【0033】
この第11の発明によれば、現時点より先の時点において、パージ制御の実行条件が満足されると予測された場合、そのパージ制御の実行開始前に、第1開度または第2開度(あるいは第1デューティ比または第2デューティ比)にて、予めパージ弁を動作させる。これにより、パージ制御の実行条件が満足されると予測された際、前もって、吸気通路内の圧力と中間パージ通路内の圧力との圧力差を解消しておくことができる。従って、パージ制御の実行時において、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグをより短くすることができるので、パージ制御時における空燃比の変動をより抑制することができる。
【0034】
次に、本発明の第12の発明は、上記第11の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記予測を行った時点において、前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との圧力差に基づいて、前記所定プレ駆動時間の長さを設定する。
【0035】
この第12の発明によれば、所定プレ駆動時間の長さを適切な長さに設定することができる。従って、パージ制御の実行条件が満足されると予測された際、前もって、吸気通路内の圧力と中間パージ通路内の圧力との圧力差を適切に解消しておくことができる。
【0036】
次に、本発明の第13の発明は、上記第11の発明または第12の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記プレ駆動を実行した場合は、前記所定プレ駆動時間が経過後、あるいは前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との圧力差が所定圧力差以下となった場合、あるいは前記中間パージ通路内の圧力が前記吸気通路内の圧力よりも高くなった場合、前記プレ駆動を終了する。
【0037】
この第13の発明によれば、プレ駆動を実行した場合、適切なタイミングでプレ駆動を終了させることができる。
【0038】
次に、本発明の第14の発明は、上記第1の発明〜第13の発明のいずれか1つに係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ弁を前記第2開度あるいは前記第2ディーティ比にて制御する際、前記パージ弁を最大開度とする開度あるいはディーティ比にて制御する。
【0039】
この第14の発明によれば、パージ弁を第2開度(あるいは第2デューティ比)で制御する際、最大開度とする。これにより、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグの長さを、より短くすることができる。
【0040】
次に、本発明の第15の発明は、上記第1の発明〜第13の発明のいずれか1つに係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ弁を前記第2開度あるいは前記第2ディーティ比にて制御する際、前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との差に基づいて、前記第2開度あるいは前記第2ディーティ比を調整する。
【0041】
この第15の発明によれば、吸気通路内の圧力と中間パージ通路内の圧力との圧力差に応じて、第2開度(あるいは第2デューティ比)を、適切な値に設定することができる。
【0042】
次に、本発明の第16の発明は、蒸発した燃料を貯蔵するキャニスタと、内燃機関の吸気通路と、前記キャニスタと、を連通して前記キャニスタに貯蔵された蒸発燃料を前記内燃機関に供給するパージ通路と、前記パージ通路に設けられて前記パージ通路を開閉制御して前記キャニスタから前記吸気通路へと流れる蒸発燃料の流量を調整するパージ弁と、前記パージ通路における前記パージ弁と前記吸気通路の間に設けられて前記キャニスタから前記吸気通路へと流体が流れることを許容するとともに前記吸気通路から前記キャニスタへと流体が流れることを防止する逆止弁と、前記パージ弁を制御する制御手段と、を備えた蒸発燃料供給装置である。そして、前記制御手段は、前記内燃機関に設けられたインジェクタからの燃料噴射量を制御しており、前記パージ弁の開度を制御して前記パージ弁を通過する流体の流量を調整可能、あるいは所定周期に対する開弁時間の割合であるデューティ比に基づいて前記パージ弁を開閉制御して前記パージ弁を通過する流体の流量を調整可能であり、前記パージ弁を第1開度あるいは第1デューティ比にて制御することで、
前記吸気通路の負圧を用いて、前記キャニスタに貯蔵した蒸発燃料を、前記パージ通路において、前記パージ弁、前記パージ弁と前記逆止弁との間の前記パージ通路である中間パージ通路、前記逆止弁、を経由させた後、前記吸気通路を経由させて前記内燃機関に供給するパージ制御を実行可能であり、前記パージ制御を開始した後、所定到達遅れ時間の経過後から、前記キャニスタから前記内燃機関に供給される蒸発燃料に基づいて、前記インジェクタからの燃料噴射量の減量を開始する。そして、前記制御手段は、前記パージ制御の実行条件を満足したと判定して前記パージ制御を開始した場合、前記第1開度あるいは前記第1デューティ比にて前記パージ弁を制御し、所定待ち時間を経過した後、前記所定到達遅れ時間の計測を開始する。
【0043】
この第16の発明によれば、パージ弁を開いてから逆止弁が開くまでのタイムラグが発生しても、このタイムラグの期間では、所定待ち時間で待機し、その後、所定到達遅れ時間の計測を開始する。これにより、タイムラグの時間を積極的に短くすることは行わないが、所定到達遅れ時間にタイムラグの時間分を加算するので、適切なタイミングで燃料噴射量の減量を行い、パージ制御を行った際の空燃比の変動をより抑制することができる。
【0044】
次に、本発明の第17の発明は、上記第16の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ制御の実行条件が満足した時点における前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との圧力差に基づいて、前記所定待ち時間を算出する。
【0045】
この第17の発明によれば、所定待ち時間の長さを、適切に設定することができる。
【0046】
次に、本発明の第18の発明は、上記第16の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記所定待ち時間の計時中において、前記吸気通路内の圧力と前記中間パージ通路内の圧力との圧力差が所定圧力差以下となった場合、あるいは前記中間パージ通路内の圧力が前記吸気通路内の圧力よりも高くなった場合は、前記所定待ち時間の経過を待つことなく、前記所定到達遅れ時間の計測を開始する。
【0047】
この第18の発明によれば、所定待ち時間の終了タイミングを、適切に判定することができる。
【0048】
次に、本発明の第19の発明は、上記第1の発明〜第18の発明のいずれか1つに係る蒸発燃料供給装置であって、前記吸気通路内のいずれかの位置には、圧力検出手段が設けられており、前記制御手段は、前記圧力検出手段からの検出信号に基づいて前記吸気通路内の圧力を検出し、前記パージ弁を全閉状態に制御している場合は、前記吸気通路内の圧力の最小値が前記中間パージ通路内の圧力であると推定し、前記パージ弁を全閉状態から、全閉状態とは異なる開度あるいは全閉状態とは異なるデューティ比に制御した場合、所定の圧力変動過渡時間を経過後に、前記吸気通路内の圧力が前記中間パージ通路内の圧力になったと推定する。
【0049】
この第19の発明によれば、中間パージ通路に圧力検出手段を設けることなく、吸気管に設けた圧力検出手段にて検出した吸気管内の圧力を利用して、中間パージ通路内の圧力を、適切に推定することができる。
【0050】
次に、本発明の第20の発明は、上記第19の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ弁を全閉状態から、全閉状態とは異なる開度あるいは全閉状態とは異なるデューティ比に制御した場合、前記圧力検出手段を用いて検出した前記吸気通路内の圧力と、前記パージ弁の全閉状態にて推定した前記中間パージ通路内の圧力と、の圧力差に基づいて、前記圧力変動過渡時間の長さを変更する。
【0051】
この第20の発明によれば、中間パージ通路内の圧力が過渡状態にある期間を適切に回避して、安定状態となった中間パージ通路内の圧力を推定することができる。
【0052】
次に、本発明の第21の発明は、上記第19の発明または第20の発明に係る蒸発燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記パージ弁を全閉状態から、全閉状態とは異なる開度あるいは全閉状態とは異なるデューティ比に制御した場合、所定の圧力変動過渡時間を経過後に、前記吸気通路内の圧力が前記中間パージ通路内の圧力になったと推定する際、前記吸気通路内の圧力が大気圧よりも高い場合は前記中間パージ通路内の圧力は大気圧であると推定する。
【0053】
この第21の発明によれば、吸気管内の圧力が正圧となって逆止弁が閉じた場合であっても、適切な中間パージ通路内の圧力を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
●[蒸発燃料装置を含むエンジン制御システム1の全体構成(
図1)]
図1は、車両のエンジン制御システムの全体構成の例を示している。なお本実施の形態の説明では、内燃機関の例として、過給機(
図1の例ではターボチャージャ)を備えたガソリンエンジンを例として説明する。
【0056】
図1に示すように、エンジン制御システム1は、制御手段40によって制御されており、吸気の側から排気の側に向かって、エアクリーナ10、吸気通路21、コンプレッサ11、吸気通路22、インタークーラ12、吸気通路23、スロットル13、吸気通路24(サージタンク)、吸気マニホルド25、燃焼室26、排気マニホルド27、排気通路28、タービン14、排気通路29、触媒29P、消音器15、等が順に配置されている。過給機を備えているので、吸気通路21、22、23、24、吸気マニホルド25内の吸気は、負圧(大気圧よりも低い圧力)である場合と、正圧(大気圧より高い圧力)である場合とが有る。なお制御手段40は、例えばCPUを備えたエンジンコントロールユニットである。
【0057】
またキャニスタ30は配管35にて燃料タンク38と接続されており、燃料タンク38内で発生した蒸発燃料は、配管35を経由してキャニスタ30に吸着される。またキャニスタ30には、吸入通路34、パージ通路36が接続されており、パージ通路36におけるキャニスタ30と反対の側は吸気通路23に接続されている。従ってパージ通路36はキャニスタ30と吸気通路23とを連通している。そして吸入通路34には、大気がキャニスタ30に流入することを許容するとともにキャニスタ30から大気の側に流体が流れることを禁止する逆流防止弁34Vが設けられている。そしてパージ通路36におけるキャニスタ30の側にはパージ弁31Vが設けられており、パージ通路36における吸気通路23の側には逆止弁32Vが設けられている。またパージ通路36は、キャニスタ30からパージ弁31Vまでの初段パージ通路31と、パージ弁31Vと逆止弁32Vの間となる中間パージ通路32と、逆止弁32Vから吸気通路23までの終段パージ通路33と、にて構成されている。また、中間パージ通路32には、中間パージ通路32内の圧力を検出可能な圧力検出手段32S(例えば圧力センサ)が設けられている。そして圧力検出手段32Sは検出信号を制御手段40に出力する。なお、後述するように、圧力検出手段32Sは、省略することができる。
【0058】
パージ弁31Vは、パージ通路36を開閉制御してキャニスタ30から吸気通路23へと流れる蒸発燃料の流量を調整する電磁弁であって、制御手段40から開閉制御が可能な電磁弁である。例えばパージ弁31Vは、回転角度量やスライド量等にて開度量を調整可能なバルブ、あるいは所定周期に対する開弁時間の割合であるデューティ比に基づいて周期的に開閉制御されて開度量を調整可能なバルブである。本実施の形態の説明では、パージ弁31Vとして、デューティ比に基づいて開度量を調整可能な電磁弁を用いた例を説明する。
【0059】
逆止弁32Vは、パージ通路36におけるパージ弁31Vと吸気通路23の間に設けられてキャニスタ30から吸気通路23へと流体が流れることを許容するとともに吸気通路23からキャニスタ30へと流体が流れることを防止する弁である。従って、逆止弁32Vは、吸気通路23内の圧力である吸気通路圧力のほうが、中間パージ通路32内の圧力である中間パージ通路圧力よりも高い場合(吸気通路圧力>中間パージ通路圧力)では閉じ、吸気通路圧力のほうが中間パージ通路圧力よりも低い場合(吸気通路圧力<中間パージ通路圧力)では開く弁である。
【0060】
エアクリーナ10は、吸気に含まれているゴミ等の異物を除去する装置であり、内部には、吸入空気量(流量)を検出するための吸入空気量検出手段10S(例えばエアフロセンサ)、吸入空気の温度を検出するための吸気温度検出手段10T(例えば吸気温センサ)が設けられている。そして吸入空気量検出手段10Sは検出信号を制御手段40に出力し、吸気温度検出手段10Tは検出信号を制御手段40に出力する。
【0061】
コンプレッサ11は、タービン14の回転動力が伝達されて回転し、吸気通路21から吸入した空気を吸気通路22に向けて圧送することで過給する。インタークーラ12は、コンプレッサ11にて過給された吸気の温度を冷却する。このコンプレッサ11による過給やバックファイヤが発生した場合等では、吸気通路内の圧力が大気圧よりも高い圧力となる場合がある。
【0062】
スロットル13は、回転角度が制御されることで吸気通路の開口面積を可変なスロットルバルブを備えている。そしてスロットルバルブの回転角度は、ユーザからのアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル踏込量検出手段(図示省略)からの検出信号に基づいたアクセル踏込量と、内燃機関の種々の運転状態等に基づいて、制御手段40から制御される。またスロットルバルブの回転角度は、回転角度検出手段13S(例えばスロットル角度センサ)にて検出される。そして回転角度検出手段13Sは検出信号を制御手段40に出力する。
【0063】
吸気通路24はサージタンクであり、吸気通路24には、吸気通路24内の圧力(吸気通路23、24、吸気マニホルド25の圧力)を検出可能な圧力検出手段24S(例えば圧力センサ)が設けられている。そして圧力検出手段24Sは検出信号を制御手段40に出力する。
【0064】
吸気マニホルド25には、燃料を噴射するインジェクタ25Aが設けられている。そしてインジェクタ25Aには燃料タンク38からの液体燃料が供給されており、インジェクタ25Aは、制御手段40からの制御信号に基づいて開弁時間が制御され、霧化した燃料を、燃焼室26に向けて噴射する。なお、吸気バルブ25V、排気バルブ27V、ピストン26Pについては説明を省略する。
【0065】
燃焼室26には、点火プラグ26Aが設けられている。そして点火プラグ26Aは、制御手段40からの制御信号に基づいて、燃焼室26内でスパークを発生して燃焼室26内の圧縮混合気を燃焼・爆発させる。
【0066】
燃焼室26を含むエンジンEには、クランクシャフト26Cの回転を検出するクランク回転検出手段26N(例えば回転検出センサ)、エンジンEの冷却用クーラントの温度を検出する水温検出手段26W(例えば水温センサ)、エンジンEのカムシャフトの回転を検出する気筒検出手段26G(例えば回転検出センサ)、等が設けられている。そしてクランク回転検出手段26N、気筒検出手段26G、水温検出手段26Wのそれぞれは、検出信号を制御手段40に出力する。
【0067】
排気マニホルド27には、燃焼室26にて燃焼・爆発後の排気から空燃比を検出するための空燃比検出手段27S(例えばA/Fセンサ)が設けられている。空燃比検出手段27Sは、検出信号を制御手段40に出力する。
【0068】
タービン14は、排気通路28から流入する排気のエネルギーにて回転し、回転動力をコンプレッサ11に伝達する。またタービン14を回転させた後の排気は、排気通路29に吐出される。
【0069】
触媒29Pは、いわゆる三元触媒であり、空燃比検出手段27Sにて検出された空燃比が、理論空燃比(λ=1.0)に対して所定範囲内である場合に、有害物質を最も効率よく浄化する。
【0070】
触媒29Pの下流側には、O
2検出手段29S(例えばO
2センサ)が設けられている。O
2検出手段29Sは、触媒29Pを通過してきた排気に含まれている酸素の有無を検出し、検出信号を制御手段40に出力する。なお、消音器15(いわゆるマフラ)については説明を省略する。
【0071】
なお、本発明の蒸発燃料供給装置は、キャニスタ30と、パージ通路36と、パージ弁31Vと、逆止弁32Vと、制御手段40と、にて構成されている。
【0072】
●[逆止弁32Vが開状態となる条件と閉状態となる条件(
図2、
図3)]
パージ通路36には、制御手段40から制御されるパージ弁31Vに加えて、逆止弁32Vが設けられている。この逆止弁32Vは、自動的に開閉動作する弁であり、制御手段40から直接的に開閉制御することができず、以下の状況下において、自動的に開閉動作する。なお、逆止弁32Vの開閉動作の条件(状況)は、パージ弁31Vの開閉状態に応じて変わるので、パージ弁31Vが全閉状態の場合(
図2参照)と、パージ弁31Vが開状態(全閉でない状態)の場合(
図3参照)と、のそれぞれに対して説明する。
【0073】
[パージ弁31Vが全閉状態の場合に逆止弁32Vが開く条件(
図2)]
パージ弁31Vが全閉状態である場合、逆止弁32Vが開状態となる条件(状況)は、吸気通路23内の圧力である吸気通路圧力P(23)のほうが、中間パージ通路32内の圧力である中間パージ通路圧力P(32)よりも低い場合である。すなわち、「パージ弁31V=全閉」かつ「吸気通路圧力P(23)<中間パージ通路圧力P(32)」が成立時、逆止弁32Vは開く。なお、パージ弁31Vが全閉状態である場合、逆止弁32Vが閉状態となる条件(状況)は、吸気通路圧力P(23)>中間パージ通路圧力P(32)である。従って、パージ弁31Vが全閉状態では、吸気通路23内の圧力が変動した場合、最も低い圧力の状態が、中間パージ通路32に保持される。この場合、逆止弁32Vが閉じている場合、負圧が密封されている。
【0074】
[パージ弁31Vが開状態の場合(全閉でない場合)に逆止弁32Vが開く条件(
図3)]
パージ弁31Vが開状態である場合(全閉でない場合)、逆止弁32Vが開状態となる条件(状況)は、吸気通路圧力P(23)が、大気圧未満の場合(負圧の場合)である。すなわち、「パージ弁31V=開状態」かつ「吸気通路圧力P(23)<大気圧」が成立時、逆止弁32Vは開く。この場合、キャニスタ30には、逆流防止弁34Vと吸入通路34を経由して大気が導入され、キャニスタ30内の蒸発燃料は導入された大気とともに、初段パージ通路31、パージ弁31V、中間パージ通路32、逆止弁32V、終段パージ通路33、を経由して吸気通路23へと吸い出される。なお、パージ弁31Vが開状態である場合、逆止弁32Vが閉状態となる条件(状況)は、吸気通路圧力P(23)が、大気圧より高い場合(正圧の場合)である。
【0075】
●[従来のパージ制御の処理手順(
図5)と、パージ制御の理想状態(
図4)]
まず
図5に示すフローチャートを用いて、従来のパージ制御の処理手順について説明する。制御手段は、例えば所定の時間間隔(10ms間隔等)や所定のクランク角度毎(180度クランク角度毎等)の所定タイミングにて、
図5に示す処理を起動する。
【0076】
ステップR10にて制御手段は、パージ制御の実行条件が成立しているか否かを判定し、実行条件が成立している場合(Yes)はステップR20に進み、実行条件が成立していない場合(No)はステップR40Aに進む。
【0077】
ステップR40Aに進んだ場合、制御手段は、パージ弁を全閉状態に制御してステップR60Aに進む。そしてステップR60Aにて制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0078】
ステップR20に進んだ場合、制御手段は、パージ制御の実行条件が成立時点(今回のタイミングが、実行条件が不成立から成立になったタイミング)であるか否かを判定し、成立時点である場合(Yes)はステップR30に進み、成立時点でない場合(No)はステップR40Bに進む。
【0079】
ステップR30に進んだ場合、制御手段は、パージ制御中のパージ弁の開度である第1Duty比(または第1開度)と、到達遅れ時間Tdを算出し、ステップR40Bに進む。なお、到達遅れ時間Tdは、例えば
図1におけるクランク回転検出手段26Nにて検出したクランクシャフト26Cの回転数や、吸入空気量検出手段10Sにて検出した吸気の流量や、パージ弁31Vの開度量や、圧力検出手段24Sにて検出した吸気通路23内の圧力、等に基づいて算出される。
【0080】
ステップR40Bにて制御手段は、パージ弁を第1Duty比(または第1開度)で駆動し、ステップR50に進む。なお、
図4に示す理想状態の動作波形では、パージ弁31Vを第1Duty比で駆動開始したタイミングT1において、逆止弁32Vが開状態であるので、キャニスタからの蒸発燃料の流出が開始される(パージ制御の開始時において、吸気通路圧力P(23)≦中間パージ通路圧力P(32)である場合)。ただし、パージ通路から内燃機関までの距離があるので、流出した蒸発燃料が内燃機関に吸引されるまでには到達遅れ時間Tdだけ時間がかかり、到達遅れ時間Tdが経過したタイミングT2から内燃機関への蒸発燃料流入量が増加している。
【0081】
ステップR50にて制御手段は、パージ制御の実行条件が成立後、到達遅れ時間Tdが経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップR60Bに進み、経過していない場合(No)はステップR60Cに進む。
【0082】
ステップR60Bに進んだ場合、制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を実行し、処理を終了する。
図4に示す理想状態の動作波形では、到達遅れ時間Tdが経過したタイミングT2からの内燃機関への蒸発燃料流入量の増加分を相殺するように、インジェクタからの燃料の噴射量を減量している。このため、空燃比の変動が適切に抑制され、理論空燃比(λ=1.0)の近傍の状態が維持されている。
【0083】
ステップR60Cに進んだ場合、制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0084】
●[パージ制御の開始時において、中間パージ通路圧力<吸気通路圧力の場合(
図6)]
図4に示した状態は、パージ制御の開始時に逆止弁が開状態である理想状態であるが、パージ制御の開始時において、吸気通路圧力P(23)>中間パージ通路圧力である場合、中間パージ通路内には負圧が密閉されている。この場合、
図5に示すフローチャートのステップR40Bにてパージ弁を第1Duty比(または第1開度)で駆動を開始しても、逆止弁はまだ閉じている(
図6中のタイミングT1参照)。このタイミングT1の時点から、中間パージ通路内には、キャニスタに導入された大気が、パージ弁の側から徐々に流れ込み、中間パージ通路内の圧力が徐々に上昇していく(
図6中のタイミングT1〜タイミングT3)。
【0085】
なお、
図6の例では、パージ弁を第1Duty比で駆動を開始した後、到達遅れ時間Tdを経過しても、まだ逆止弁が閉じた状態である例を示している。従って、この状態でインジェクタの燃料噴射量の減量を行うと、まだ蒸発燃料が内燃機関に到達していないので、燃料が不足し、空燃比が大きくなる側に変動する(空気過剰(リーン)の側に変動する)ので、理論空燃比に対して所定範囲内から外れる可能性があり、好ましくない。
【0086】
なお、
図6に示すように、中間パージ通路圧力P(32)≧吸気通路圧力P(23)となったタイミングT3にて逆止弁32Vが開くので、タイミングT3から到達遅れ時間Tdが経過したタイミングT4から、内燃機関への蒸発燃料流入量が増加している。この
図6中におけるタイミングT1〜タイミングT3までの逆止弁32Vが閉じた状態の時間が、上述したタイムラグである。
【0087】
以降、このタイムラグを考慮したパージ制御、タイムラグをより短くするパージ制御等の第1〜第5の実施の形態について順に説明する。
【0088】
●[第1の実施の形態の処理手順(
図8)と、動作波形(
図7)]
図8に示すフローチャートと、
図7に示す動作波形を用いて、蒸発燃料供給装置の第1の実施の形態について説明する。制御手段は、従来の処理手順と同様のタイミングにて、
図8に示す処理を起動する。
【0089】
ステップS10にて制御手段は、パージ制御の実行条件が成立しているか否かを判定し、実行条件が成立している場合(Yes)はステップS20に進み、実行条件が成立していない場合(No)はステップS50Aに進む。
【0090】
ステップS50Aに進んだ場合、制御手段は、パージ弁を全閉状態に制御してステップS70Aに進む。そしてステップS70Aにて制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0091】
ステップS20に進んだ場合、制御手段は、パージ制御の実行条件が成立時点(今回のタイミングが、実行条件が不成立から成立になったタイミング)であるか否かを判定し、成立時点である場合(Yes)はステップS30に進み、成立時点でない場合(No)はステッS40に進む。
【0092】
ステップS30に進んだ場合、制御手段は、パージ制御中の通常のパージ弁の開度である第1Duty比(または第1開度)と、パージ制御の開始時に一時的に用いる第2Duty比(または第2開度)と、所定時間Tpと、到達遅れ時間Td(所定到達遅れ時間に相当)を算出し、ステップS40に進む。なお、第1Duty比(または第1開度)は、パージ制御を実行するための通常の開度(本来の開度)である。また、第2Duty比(または第2開度)は、第1Duty比(または第1開度)よりも大きな開度であって一時的にパージ弁の開度を大きくするための開度である。また所定時間Tpは、
図7に示すように、中間パージ通路圧力P(32)が吸気通路圧力P(23)以上となるまでに要する時間(タイムラグ)であって、吸気通路圧力P(23)、中間パージ通路圧力P(32)、パージ弁の開度量、等に基づいて算出される。また到達遅れ時間Tdは、例えば
図1におけるクランク回転検出手段26Nにて検出したクランクシャフト26Cの回転数や、吸入空気量検出手段10Sにて検出した吸気の流量や、パージ弁31Vの開度量や、圧力検出手段24Sにて検出した吸気通路23内の圧力、等に基づいて算出される。
【0093】
ステップS40にて制御手段は、パージ制御の実行条件が成立後、所定時間Tpが経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS50Bに進み、経過していない場合(No)はステップS50Cに進む。
【0094】
ステップS50Cに進んだ場合、制御手段は、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で駆動し、より大きな開度でタイムラグ(
図7中のタイミングT1〜T3(1)までの長さ)がより短くなるように制御し、ステップS70Cに進む。なお、第1Duty比(または第1開度)よりも大きな第2Duty比(または第2開度)でパージ弁を開くことで、
図6の例に示したタイムラグ(タイミングT1〜T3の長さ)よりも、
図7の例に示したタイムラグ(タイミングT1〜T3(1)の長さ)を、より短くすることができる。なお
図7の例では、所定時間Tpが経過したタイミングT3(1)にて、中間パージ通路圧力P(32)≧吸気通路圧力P(23)となり、逆止弁が閉状態から開状態に変化した例を示している。
【0095】
ステップS70Cでは制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0096】
ステップS50Bに進んだ場合(この場合は
図7中のタイミングT3(1)以降の期間であるので)、制御手段は、パージ弁を第1Duty比(または第1開度)で駆動し、ステップS60に進む。
【0097】
ステップS60にて制御手段は、所定時間Tpの経過時点から(タイミングT3(1)の時点から)、到達遅れ時間Tdが経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS70Bに進み、経過していない場合(No)はステップS70Cに進む。
【0098】
ステップS70Bに進んだ場合、制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を実行し、処理を終了する。
図7に示す動作波形では、パージ制御の実行条件が成立後、タイムラグ(所定時間Tp)と到達遅れ時間Tdとが経過したタイミングT4(1)からの内燃機関への蒸発燃料流入量の増加分を相殺するように、インジェクタからの燃料の噴射量を減量している。このため、空燃比の変動が適切に抑制され、理論空燃比(λ=1.0)の近傍の状態が維持されている。
【0099】
上記の例では、
図7中においてパージ制御の実行を開始してから逆止弁が開くまでのタイミングT1〜タイミングT3(1)までの間、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で制御する例を示したが、タイミングT1〜タイミングT3(1)までの間において任意の期間の間(所定条件を満足する期間の間)、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で制御するようにしてもよい。
【0100】
また、例えば第2Duty比(または第2開度)は、パージ弁の最大開度となる開度であってもよいし、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差に基づいて第2Duty比(または第2開度)を算出する(調整する)ようにしてもよい。
【0101】
また、ステップS40にて所定時間Tpの経過を判定する代わりに、中間パージ通路圧力P(32)が吸気通路圧力P(23)よりも高くなった場合にステップS50Bに進む(第2Duty比から第1Duty比に切り替える)ようにしてもよい。また、ステップS40にて所定時間Tpの経過を判定する代わりに、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差が所定圧力差以下となった場合にステップS50Bに進む(第2Duty比から第1Duty比に切り替える)ようにしてもよい。この場合は、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)から第1Duty比(または第1開度)に切り替えたタイミングから、到達遅れ時間の計測を開始する。
【0102】
以上、
図7、
図8に示す第1の実施の形態では、
図5、
図6に示す従来と比較して、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御の実行時における空燃比の変動が抑制されており、より良好なパージ制御を実行することができる。また、パージ制御の実行を開始してから逆止弁が開くまでの時間であるタイムラグ(
図6中のタイミングT1〜T3、
図7中のタイミングT1〜T3(1))を、より短くすることができる。
【0103】
なお、パージ制御の開始時に中間パージ通路圧力が吸気通路内の圧力よりも高い場合(あるいは同じ場合)は、逆止弁が既に開いており所定時間Tpがゼロとなるので、この場合は、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で駆動することを省略できる。
【0104】
●[第2の実施の形態の処理手順(
図10)と、動作波形(
図9)]
次に
図10に示すフローチャートと、
図9に示す動作波形を用いて、蒸発燃料供給装置の第2の実施の形態について説明する。なお、
図7中のタイミングT3(1)を起点としてタイミングT4(1)にて燃料噴射量の減量を開始する第1の実施の形態に対して、第2の実施の形態では、
図9中のタイミングT1を起点としてタイミングT4(2)にて燃料噴射量の減量を開始する点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
【0105】
図10に示すフローチャートは、
図8に示すフローチャートに対して、ステップS30がステップS32に変更され、ステップS60がステップS62に変更されている点が異なる。
【0106】
ステップS32に進んだ場合、制御手段は、パージ制御中の通常のパージ弁の開度である第1Duty比(または第1開度)と、パージ制御の開始時に一時的に用いる第2Duty比(または第2開度)と、所定時間Tpと、総合遅れ時間Tddを算出し、ステップS40に進む。なお、総合遅れ時間Tdd=所定時間Tp+到達遅れ時間Tdである。また、到達遅れ時間Tdの求め方は、第1の実施の形態と同じである。
【0107】
ステップS62にて制御手段は、パージ制御の実行条件の成立時点から(タイミングT1の時点から)、総合遅れ時間Tddが経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS70Bに進み、経過していない場合(No)はステップS70Cに進む。なお、ステップS32、S62以外のステップの処理は、第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0108】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対して、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を開始するタイミングT4(2)の計時の起点を、タイミングT3(1)(
図7参照)からタイミングT1(
図9参照)に変更したのみである。従って、第2の実施の形態の動作波形(
図9)は、第1の実施の形態の動作波形(
図7)と同じである。また、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御の実行時における空燃比の変動が抑制される点、パージ制御の実行を開始してから逆止弁が開くまでの時間であるタイムラグをより短くできる点も第1の実施の形態と同じである。
【0109】
また、第1の実施の形態と同様に、タイミングT1〜タイミングT3(2)までの間において任意の期間の間(所定条件を満足する期間の間)、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で制御するようにしてもよい。また、例えば第2Duty比(または第2開度)は、パージ弁の最大開度となる開度であってもよいし、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差に基づいて第2Duty比(または第2開度)を算出する(調整する)ようにしてもよい。
【0110】
また、第1の実施の形態と同様に、ステップS40にて所定時間Tpの経過を判定する代わりに、中間パージ通路圧力P(32)が吸気通路圧力P(23)よりも高くなった場合にステップS50Bに進む(第2Duty比から第1Duty比に切り替える)ようにしてもよい。また、ステップS40にて所定時間Tpの経過を判定する代わりに、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差が所定圧力差以下となった場合にステップS50Bに進む(第2Duty比から第1Duty比に切り替える)ようにしてもよい。
【0111】
また、総合遅れ時間Tdd=所定時間Tp+到達遅れ時間Tdであるので、総合遅れ時間Tddは、到達遅れ時間Tdよりも長い。さらに、吸気通路圧力と中間パージ通路圧力との圧力差が大きくなるにつれて総合遅れ時間が長くなるように設定される。また、この総合遅れ時間を、新たな到達遅れ時間(パージ制御を開始時から内燃機関に蒸発燃料が到達するまでの遅れ時間)とみなすようにしてもよい。
【0112】
なお、パージ制御の開始時に中間パージ通路圧力が吸気通路内の圧力よりも高い場合(あるいは同じ場合)は、逆止弁が既に開いており所定時間Tpがゼロとなるので、この場合は、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で駆動することを省略できる。
【0113】
●[第3の実施の形態の処理手順(
図12)と、動作波形(
図11)]
次に
図12に示すフローチャートと、
図11に示す動作波形を用いて、蒸発燃料供給装置の第3の実施の形態について説明する。なお、
図7中のタイミングT1を起点として所定時間Tp+到達遅れ時間Tdを経過したタイミングT4(1)にて燃料噴射量の減量を開始する第1の実施の形態に対して、第3の実施の形態では、
図9中のタイミングT1を起点として到達遅れ時間Tdを経過したタイミングT3(3)にて燃料噴射量の減量を開始する点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
【0114】
図12に示すフローチャートは、
図8に示すフローチャートに対して、ステップS60がステップS63に変更されている点が異なる。
【0115】
ステップS63にて制御手段は、パージ制御の実行条件の成立時点から(タイミングT1の時点から)、到達遅れ時間Tdが経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS70Bに進み、経過していない場合(No)はステップS70Cに進む。なお、ステップS63以外のステップの処理は、第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0116】
第3の実施の形態は、第1の実施の形態に対して、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を開始するタイミングT3(3)を、所定時間Tp(タイムラグ)+到達遅れ時間Tdから、到達遅れ時間Tdのみに変更している。従って、
図11の動作波形に示すように、内燃機関への蒸発燃料の流入が開始されるタイミングT4(3)よりも、やや手前となるタイミングT3(3)から燃料噴射量の減量が開始される。そのため、
図11に示すように、タイミングT3(3)からタイミングT4(3)及びタイミングT4(3)以降の所定期間では、空燃比がやや空気過剰の側に変動する。しかし、パージ制御の開始時において、パージ弁を、より大きな開度の第2Duty比(または第2開度)に制御することで、逆止弁が開くまでのタイムラグ(タイミングT1〜タイミングT2(3)までの期間)を、より短くしているので、
図6に示す従来の動作波形と比較して、空燃比の値(図中の高さ)と、空燃比が空気過剰の側に変動している時間(図中の幅)を、より短くすることが可能であり、理論空燃比に対して所定範囲内に収めることが可能である。
【0117】
また、第1の実施の形態と同様に、タイミングT1〜タイミングT2(3)までの間において任意の期間の間(所定条件を満足する期間の間)、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で制御するようにしてもよい。また、例えば第2Duty比(または第2開度)は、パージ弁の最大開度となる開度であってもよいし、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差に基づいて第2Duty比(または第2開度)を算出する(調整する)ようにしてもよい。
【0118】
また、第1の実施の形態と同様に、ステップS40にて所定時間Tpの経過を判定する代わりに、中間パージ通路圧力P(32)が吸気通路圧力P(23)よりも高くなった場合にステップS50Bに進む(第2Duty比から第1Duty比に切り替える)ようにしてもよい。また、ステップS40にて所定時間Tpの経過を判定する代わりに、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差が所定圧力差以下となった場合にステップS50Bに進む(第2Duty比から第1Duty比に切り替える)ようにしてもよい。
【0119】
なお、パージ制御の開始時に中間パージ通路圧力が吸気通路内の圧力よりも高い場合(あるいは同じ場合)は、逆止弁が既に開いており所定時間Tpがゼロとなるので、この場合は、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で駆動することを省略できる。
【0120】
●[第4の実施の形態の処理手順(
図14)と、動作波形(
図13)]
次に
図14に示すフローチャートと、
図13に示す動作波形を用いて、蒸発燃料供給装置の第4の実施の形態について説明する。なお、
図9中のタイミングT1〜タイミングT3(2)ではパージ弁を第2Duty比で駆動する第2の実施の形態に対して、第4の実施の形態では、
図13中のタイミングT1〜タイミングT3(4)ではパージ弁を第1Duty比で駆動するので所定時間Tpが長くなっている点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
【0121】
図14に示すフローチャートは、
図10に示すフローチャートに対して、ステップS32がステップS34に変更されている点と、ステップS40、S50Cが省略されている点が異なる。
【0122】
ステップS34に進んだ場合、制御手段は、パージ制御中の通常のパージ弁の開度である第1Duty比(または第1開度)と、総合遅れ時間Tddを算出し、ステップS50Bに進む。また、総合遅れ時間Tddの求め方は、第2の実施の形態と同じであるが、パージ制御の開始時におけるパージ弁の開度が、第1Duty比であるので、第2の実施の形態にて求めた総合遅れ時間Tddよりも、第4の実施の形態にて求めた総合遅れ時間Tddのほうが長い。なお、その他のステップの処理は、第2の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0123】
第4の実施の形態は、第2の実施の形態に対して総合遅れ時間Tddが長くなるが、第3の実施の形態のような燃料噴射量の減量開始タイミングと内燃機関への蒸発燃料の流入開始タイミングとの「ずれ」が生じないので、空燃比の変動をより抑制することができる。
【0124】
また、ステップS34にて、第1Duty比(または第1開度)と、所定時間Tp(所定待ち時間に相当)と、到達遅れ時間Tdを算出し、ステップS62にて、パージ制御の実行条件が成立時点から(タイミングT1の時点から)、所定時間Tpが経過した後、到達遅れ時間Tdが経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS70Bに進み、経過していない場合(No)はステップS70Cに進むようにしてもよい。あるいは、ステップS62にて、中間パージ通路圧力P(32)が吸気通路圧力P(23)よりも高くなった後(所定待ち時間の経過を待つことなく)、到達遅れ時間Tdが経過したか否かを判定するようにしてもよい。あるいは、ステップS62にて、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差が所定圧力差以下となった後(所定待ち時間の経過を待つことなく)、到達遅れ時間Tdが経過したか否かを判定するようにしてもよい。
【0125】
なお、パージ制御の開始時に中間パージ通路圧力が吸気通路内の圧力よりも高い場合(あるいは同じ場合)は、逆止弁が既に開いており所定時間Tpがゼロとなる。
【0126】
●[第5の実施の形態の処理手順(
図16)と、動作波形(
図15)]
次に
図16に示すフローチャートと、
図15に示す動作波形を用いて、蒸発燃料供給装置の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、第1の実施の形態に対して、パージ制御の実行条件の成立を予測し、パージ制御の実行条件が成立してパージ制御を実行する直前で、前もってパージ弁を第2Duty比で駆動して、中間パージ通路内の圧力を上昇させることで、パージ制御の実行を開始時点で逆止弁が開くようにしている点が異なる。以下、
図16に示すフローチャートを用いて処理手順を説明する。制御手段は、従来の処理手順と同様のタイミングにて、
図16に示す処理を起動する。
【0127】
ステップS110にて制御手段は、パージ制御の実行条件が成立しているか否かを判定し、実行条件が成立している場合(Yes)はステップS160に進み、実行条件が成立していない場合(No)はステップS115に進む。
【0128】
ステップS115に進んだ場合、制御手段は、現時点より先の時点においてパージ制御の実行条件が満足されるか否かを予測し、先の時点で満足されると予測した場合(Yes)はステップS120に進み、予測されなかった場合(No)はステップS145Aに進む。例えば、車両の速度の変動範囲が所定範囲、かつユーザのアクセルペダルの踏込量の変動範囲が所定範囲、の状態が30秒間継続した際に、パージ制御の実行条件が満足される場合、この場合では、先の時点でパージ制御の実行条件が満足されるか否かを予測することができる(例えば、現時点から20秒後に実行条件が成立する、等の予測をすることができる)。
【0129】
ステップS145Aに進んだ場合、制御手段は、パージ弁を全閉状態に制御してステップS190Aに進む。そしてステップS190Aにて制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0130】
ステップS120に進んだ場合、制御手段は、パージ制御を開始する直前のプレ駆動で用いるパージ弁の開度である第2Duty比(または第2開度)と、プレ駆動時間Tpk(所定プレ駆動時間に相当)を算出し、ステップS125に進む。なお、第2Duty比(または第2開度)は、第1Duty比(または第1開度)よりも大きな開度である。またプレ駆動時間Tpkは、
図15に示すように、中間パージ通路圧力P(32)が吸気通路圧力P(23)以上となるまでに要する時間(タイムラグ)であって、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差、パージ弁の開度量、等に基づいて算出される。
【0131】
ステップS125にて制御手段は、プレ駆動の開始タイミングであるか否かを判定し、開始タイミングであると判定した場合(Yes)はステップS145Bに進み、開始タイミングでないと判定した場合(No)はステップS130に進む。開始タイミングであるかどうかは、現時点が、予測したパージ制御の実行条件の成立タイミングからプレ駆動時間Tpkだけ前のタイミングであるか否か(
図15中のタイミングTa(5)であるか否か)で判定することができる。
【0132】
ステップS145Bにて制御手段は、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で駆動し、ステップS190Bに進む。
【0133】
ステップS190Bに進んだ場合、制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0134】
ステップS130に進んだ場合、制御手段は、プレ駆動を実行中であるか否かを判定し、プレ駆動を実行中の場合(Yes)はステップS135に進み、プレ駆動を実行中でない場合(No)はステップS145Aに進む。
【0135】
ステップS135に進んだ場合、制御手段は、プレ駆動終了タイミングであるか否かを判定し、終了タイミングである場合(Yes)はステップS140に進み、終了タイミングでない場合(No)はステップS145Bに進む。なお、終了タイミングであるか否かの判定は、プレ駆動の実行を開始してからプレ駆動時間Tpkが経過した場合にプレ駆動の終了タイミングであると判定してもよいし、中間パージ通路圧力P(32)が吸気通路圧力P(23)よりも高くなった場合にプレ駆動の終了タイミングであると判定してもよいし、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差が所定圧力差以下となった場合にプレ駆動の終了タイミングであると判定してもよい。
【0136】
ステップS140に進んだ場合、制御手段は、パージ制御の実行条件が成立しているか否かを判定し、実行条件が成立している場合(Yes)はステップS160に進み、実行条件が成立していない場合(No)はステップS145Cに進む。
【0137】
ステップS145Cに進んだ場合、制御手段は、パージ弁を全閉状態に制御してステップS190Bに進み、ステップS190Bにて、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0138】
ステップS160に進んだ場合、制御手段は、パージ制御の実行条件が成立時点(今回のタイミングが、実行条件が不成立から成立になったタイミング)であるか否かを判定し、成立時点である場合(Yes)はステップS165に進み、成立時点でない場合(No)はステッS170に進む。
【0139】
ステップS165に進んだ場合、制御手段は、パージ制御中の通常のパージ弁の開度である第1Duty比(または第1開度)と、到達遅れ時間Tdを算出し、ステップS170に進む。なお、第1Duty比(または第1開度)は、パージ制御を実行するための通常の開度(本来の開度)である。また到達遅れ時間Tdは、例えば
図1におけるクランク回転検出手段26Nにて検出したクランクシャフト26Cの回転数や、吸入空気量検出手段10Sにて検出した吸気の流量や、パージ弁31Vの開度量や、圧力検出手段24Sにて検出した吸気通路23内の圧力、等に基づいて算出される。
【0140】
ステップS170にて制御手段は、制御手段は、パージ弁を第1Duty比(または第1開度)で駆動し、ステップS175に進む。
【0141】
ステップS175にて制御手段は、パージ制御の実行条件が成立した時点から(タイミングT1の時点から)、到達遅れ時間Tdが経過したか否かを判定し、経過している場合(Yes)はステップS190Cに進み、経過していない場合(No)はステップS190Dに進む。
【0142】
ステップS190Cに進んだ場合、制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を実行し、処理を終了する。
図15に示す動作波形では、パージ制御の実行条件が成立後、到達遅れ時間Tdが経過したタイミングT4(5)からの内燃機関への蒸発燃料流入量の増加分を相殺するように、インジェクタからの燃料の噴射量を減量している。このため、空燃比の変動が適切に抑制され、理論空燃比(λ=1.0)の近傍の状態が維持されている。
【0143】
ステップS190Dに進んだ場合、制御手段は、インジェクタからの燃料噴射量の減量制御を禁止し、処理を終了する。
【0144】
なお、上記の例では、プレ駆動を実行中はパージ弁を第2Duty比(または第2開度)で駆動したが、例えば第2Duty比(または第2開度)は、パージ弁の最大開度となる開度であってもよいし、吸気通路圧力P(23)と中間パージ通路圧力P(32)との圧力差に基づいて第2Duty比(または第2開度)を算出する(調整する)ようにしてもよい。また、プレ駆動の実行中はパージ弁を第1Duty比(または第1開度)で駆動するようにしてもよい。
【0145】
以上、第5の実施の形態では、第1〜第4の実施の形態に対して、パージ制御の実行を開始する直前に、中間パージ通路圧力を、吸気通路圧力の近傍または吸気通路圧力以上、に前もって上昇させておくことができるので、パージ制御を開始してから、実際に内燃機関に蒸発燃料が流入するまでの時間を、より短くすることができる。
【0146】
なお、プレ駆動の開始時に中間パージ通路圧力が吸気通路内の圧力よりも高い場合は、逆止弁が既に開いておりプレ駆動時間Tpkがゼロとなるので、この場合は、パージ弁を第2Duty比(または第2開度)で駆動するプレ駆動を省略できる。
【0147】
●[中間パージ通路32から圧力検出手段32Sを省略し、吸気通路圧力を利用して中間パージ通路圧力を推定する方法(
図17)]
図1に示す構成の例では、中間パージ通路32に圧力検出手段32Sを設け、圧力検出手段32Sの検出信号に基づいて中間パージ通路32内の圧力を検出した。しかし、
図17に示す処理を行うことで、中間パージ通路32から圧力検出手段32Sを省略し、吸気通路圧力を利用して中間パージ通路圧力を推定することができる。以下、その処理手順について説明する。例えば制御手段は、
図17に示す処理を、上述した第1〜第5の実施の形態の処理を実行する直前に起動する。
【0148】
ステップP10にて制御手段は、
図1中の圧力検出手段24Sからの検出信号に基づいて吸気通路圧力を検出し、吸気通路圧力の値を更新してステップP20に進む。
【0149】
ステップP20にて制御手段は、パージ制御の実行条件が成立しているか否かを判定し、成立している場合(Yes)はステップP30に進み、成立していない場合(No)はステップP25に進む。なお、プレ駆動を行わない第1〜第4の実施の形態の場合は、成立している場合(Yes)はステップP30に進み、成立していない場合(No)はステップP70に進む。
【0150】
ステップS25に進んだ場合、制御手段は、プレ駆動を実行中であるか否かを判定し、実行中である場合(Yes)はステップP30に進み、実行中でない場合(No)はステップP70に進む。なお、プレ駆動を行わない第1〜第4の実施の形態の場合は、ステップP25は省略する。つまり、ステップP20、P25では、パージ弁が全閉状態である場合にステップP70に進み、パージ弁が開いている場合にステップP30に進む、という判定を行う。
【0151】
ステップP30に進んだ場合、制御手段は、パージ開始経過カウンタをカウントアップし、判定時間(圧力変動過渡時間に相当)を算出してステップP40に進む。なお、判定時間は、例えば、パージ弁を全閉状態から、全閉状態とは異なる開度あるいは全閉状態とは異なるデューティ比、に制御する開弁時点において、吸気通路圧力と中間パージ通路圧力との圧力差、パージ弁の開度量、等に基づいて算出される。
【0152】
ステップP40にて制御手段は、パージ経過カウンタの値に相当する時間が判定時間以上であるか否かを判定し、判定時間以上である場合(Yes)はステップP50に進み、判定時間未満である場合(No)は処理を終了する。
【0153】
ステップP50に進んだ場合、制御手段は、吸気通路圧力が中間パージ通路圧力以下であるか否かを判定し、中間パージ通路圧力以下である場合(Yes)はステップP90Aに進み、中間パージ通路圧力より高い場合(No)はステップP60に進む。
【0154】
ステップP90Aに進んだ場合、制御手段は、中間パージ通路圧力に吸気通路圧力を代入して処理を終了する。
【0155】
ステップP60に進んだ場合、制御手段は、吸気通路圧力が大気圧よりも高いか否かを判定し、大気圧よりも高い場合(Yes)はステップP90Bに進み、大気圧以下である場合(No)はステップP90Cに進む。
【0156】
ステップP90Bに進んだ場合、制御手段は、中間パージ通路圧力に大気圧を代入して処理を終了する。
【0157】
ステップP90Cに進んだ場合、制御手段は、中間パージ通路圧力に吸気通路圧力を代入して処理を終了する。
【0158】
ステップP70に進んだ場合、制御手段は、吸気通路圧力が中間パージ通路圧力よりも低いか否かを判定し、中間パージ通路圧力よりも低い場合(Yes)はステップP90Dに進み、中間パージ通路圧力以上である場合(No)はステップP80に進む。
【0159】
ステップP90Dに進んだ場合、制御手段は、中間パージ通路圧力に吸気通路圧力を代入して処理を終了する。
【0160】
ステップP80に進んだ場合、制御手段は、パージ開始経過カウンタをクリアして処理を終了する。
【0161】
以上の処理手順により、パージ制御を実行していない場合(かつプレ駆動を実行していない場合であって、パージ弁=全閉の場合)は、吸気通路圧力の最小値を中間パージ通路圧力として保持する。また、パージ制御を実行している場合(あるいはプレ駆動を実行している場合であって、パージ弁=開状態の場合)は、所定の判定時間を経過した後(中間パージ通路圧力が上昇中の過渡期間を経過した後)、吸気通路圧力が大気圧以下の場合に吸気通路圧力を中間パージ通路圧力とする。これにより、圧力検出手段32Sを省略することができるので、蒸発燃料供給装置の部品点数を削減することができる。
【0162】
本発明の蒸発燃料供給装置は、本実施の形態で説明した構成、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば処理手順を説明したフローチャートは、本実施の形態にて説明したものに限定されるものではない。
【0163】
また、
図7、
図9、
図11、
図13、
図15に示す動作波形は、第1〜第5の実施の形態のそれぞれにおける動作の例を示すものであり、この波形の動作に限定されるものではない。
【0164】
本実施の形態の説明では、内燃機関の例として車両のエンジンを用いて説明したが、種々の内燃機関に適用することが可能である。
【0165】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。