【文献】
LONGQIN HU ED,DRUG DELIVERY: 8. PRODRUG APPROACHES TO DRUG DELIVERY,DRUG DELIVERY [ONLINE],WILEY-INTERSCIENCE,2005年 5月13日,P125-165,URL,http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/summary/110494622/SUMMARY
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物が、前記抗炎症脂質メディエーター全量に対して10重量%以下の、カルボキシル基がエステル化していない前記抗炎症脂質メディエーターを含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
前記組成物が、前記抗炎症脂質メディエーター全量に対して5重量%以下の、カルボキシル基がエステル化していない前記抗炎症脂質メディエーターを含む、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
前記組成物が、前記抗炎症脂質メディエーター全量に対して1重量%以下の、カルボキシル基がエステル化していない前記抗炎症脂質メディエーターを含む、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
エステル化抗炎症脂質メディエーターを含有する眼用製品であって、該抗炎症脂質メディエーターの大部分はエステル形態で存在する眼用製品を作製する方法及び使用する方法が提供される。エステル化抗炎症脂質メディエーターの大部分がエステル形態で存在する場合、エステル化抗炎症脂質メディエーターを使用することで、眼の表面への接触時又は投与時における初期的な快適性を大幅に向上させる眼用製品をもたらすことが、見出された。眼用製品には、いずれも瞳を含む眼の表面に投与可能な、製剤、溶液、ゲル、軟膏、乳剤、ストリップ、眼用装置等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本開示における用語に関しては、以下に定義が提供される。
【0016】
「抗炎症脂質メディエーター」についての言及は、上皮細胞若しく免疫細胞によるサイトカイン産生の抑制、上皮細胞若しくは免疫細胞による活性酸素種(ROS(reactive oxygen species))産生の抑制、白血球補充の制御及び/若しくは抑制(白血球浸潤の減少)、並びに/又は炎症の消炎(死細胞の取り込み促進)において(直接的又は間接的に)役割を果たすこれらの分子を含む。一般的に、好適な抗炎症脂質メディエーターは、炭化水素鎖のカルボキシル基がエステル化し得る酸系の物質である。抗炎症脂質メディエーターの大部分はエステル形態で存在する。抗炎症脂質メディエーターは所望の様々な物質のヒドロキシル基と反応し得る。ヒドロキシル基は、エステル化抗炎症脂質メディエーターと共に、浸透圧保護等の治療上の利益を眼にもたらすことができる一価アルコールによって供給される。
【0017】
本明細書において、「約」という用語は、変更されている数字の+/−5%の範囲を指す。例えば、「約10」という表現は、9.5と10.5を共に含むであろう。
【0018】
本明細書において、用いられる「a」、「an」及び「the」は単数と複数の両方を含む。
【0019】
本明細書において、「眼用組成物」という用語は、眼又は眼の表面への投与に好適な、化合物又は混合物を指す。眼用組成物には、製剤、溶液、ゲル、軟膏、乳剤、ストリップ等が含まれる。
【0020】
本明細書において、「無菌製剤」という用語には、哺乳類の体の任意の部分に、埋め込み、注射、滴剤、ゲル又は水薬等の投与を含め、直接投与するための任意の化合物又は混合物が含まれており、ここで製剤は投与の直前において不要な異物を実質的に含まない。無菌性を保証する方法として、無菌包装及び熱や放射線に晒すことによる滅菌、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0021】
本明細書において、「個体」という用語には、人間及び脊椎動物が含まれる。
【0022】
本明細書において、「剤」という用語には、本明細書に記載される方法において、有効性が試験される任意の化合物、組成物が含まれる。
【0023】
本明細書において、「眼の表面」という用語には、ぬれた表面を有し、腺性の、角膜、結膜、涙腺、副涙腺、鼻涙管及びマイボーム腺の上皮、それらの先端及び基部マトリクス(apical and basal matrices)、点(puncta)及び、神経支配による上皮の連続性並びに内分泌及び免疫系の両方によって、機能的システムとして連結されている瞼を含む隣接した又は関連する構造が含まれる。
【0024】
本明細書において、「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる構造体を指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の供給、診断的評価若しくは監視、又は紫外線遮断及び可視光線若しくはグレアの抑制又はこれらの組み合わせを含む、矯正的、美容的、治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、当該技術分野において既知の任意の適した材料からなるものであってよく、ソフトレンズ、ハードレンズ又はハイブリッドレンズであってよい。
【0025】
本明細書において、「シリコーン・ヒドロゲル・コンタクト・レンズ」という用語は、シリコーン含有の親水性繰り返し単位を有するポリマーから形成されたコンタクトレンズを指す。
【0026】
本明細書において、「ヒドロゲル」又は「ヒドロゲル材料」という用語は、平衡状態において水を含有する水和架橋ポリマー系を指す。ヒドロゲルは一般に、平衡状態において、少なくとも約15重量%の水を含有し、いくつかの実施形態においては少なくとも約20重量%の水を含有する。
【0027】
従来のヒドロゲルは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」(2-hydroxyethyl methacrylate))、N−ビニルピロリドン(「NVP」(N-vinyl pyrrolidone))及び酢酸ビニルなどの親水性モノマーを主として含むモノマー混合物から調製される。米国特許第4,495,313号、第4,889,664号及び第5,039459号は、従来のヒドロゲルの形成物について記載している。
【0028】
本明細書において、「シリコーンヒドロゲル」という用語は、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマー、プレポリマーと少なくとも1つの親水性成分との共重合によって得られるヒドロゲルを指す。シリコーンヒドロゲルの例としては、米国特許第5,998,498号、国際公開第03/22321号、米国特許第6,087,415号、米国特許第5,760,100号、米国特許第5,776,999号、米国特許第5,789,461号、米国特許第5,849,811号、米国特許第5.965.631号、米国特許第7,553,880号、国際公開第2008/061992号及び米国特許第2010/048847号において調製されているシリコーンヒドロゲルと並び、balafilcon、acquafilcon、lotrafilcon、comfilcon、galyfilcon、senofilcon、narafilcon、falcon II 3、asmofilcon Aが挙げられる。このパラグラフで記載される他の特許同様、これらの特許はその全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0029】
ハードコンタクトレンズは、ポリ(メチル)メタクリレート、シリコンアクリレート、フルオロアクリレート、フルオロエーテル、ポリアセチレン及びポリイミドを含むポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない、ポリマー類によって製造され、その代表例の調製は特開第200010055号、日本特許第6123860号及び米国特許第4,330,383号に見出すことができる。本発明の眼内レンズは既知の材料を用いて形成することができる。例えば、レンズは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート等及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、硬質材料から製造できる。加えて、可撓性材料として、ヒドロゲル、シリコーン材料、アクリル材料、フルオロカーボン材料等、又はこれらの組み合わせを挙げられるが、これらに限定されない。典型的な眼内レンズは国際公開第0026698号、第0022460号、第9929750号、第9927978号、第0022459号及び特開第2000107277号に記載されている。この出願で言及される全ての参考文献は、それら全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0030】
抗炎症脂質メディエーターの治療的に有効な量とは、病気の病態又は治療されている病状において、臨床的に認識可能な好ましい変化をもたらすのに有効な量である。治療的に有効な量としては、治療することが求められる1つ又は2つ以上の眼の症状又は避けるべき若しくは治療すべきことが求められる状態の治療、低減、和らげること、改善、軽減、解消又は予防に有効な量が挙げられる。
【0031】
当業者であれば、治療的に有効な量又は有効な量とは何であるか、容易に判断することができるであろう。
【0032】
本明細書において、「炎症性の眼の状態」との用語は、乾性角結膜炎(KCS(keratoconjunctivitissicca))とも呼ばれる、ドライアイ症候群を含む。ドライアイは、潜在的に眼の表面の損傷を伴う、不快感、視覚障害及び涙液膜の不安定という症状をもたらす、涙や眼の表面の多因子病である。ドライアイは、涙液膜の容量オスモル濃度の増加及び眼の表面の炎症を伴う。ドライアイ症候群(DES(Dry Eye Syndrome))は涙液膜の障害によって定義され、涙の欠乏及び/又は過剰な涙の蒸発をもたらし、眼の表面の損傷と眼の不快感の症状を引き起こす。ドライアイ症候群には2つの主要な形態がある。涙欠乏型(シェーグレン症候群及び非シェーグレン涙欠乏症を含む)及び蒸発型である。涙液膜は通常、眼の前部分、即ち角膜及び結膜を覆っている。涙液膜は、変化する温度、気流及び湿度等の、涙液膜の蒸発を刺激又は阻害し得る、多様な環境的要因に常にさらされている。特に、乾燥した環境での被験者により頻繁に報告されるように、強い気流の存在下における低湿度環境は、涙の蒸発量を増加させる。実際、涙の分泌量が正常な人々でさえ、飛行機や乾燥した職場などの乾燥した環境にさらされている間は、ドライアイ症状を経験することがある。
【0033】
ドライアイは、角膜及び結膜の傷害のあるなしに関係なく、涙の質の低下又は変化を伴う状態として定義することもできる。これには、涙液減少症、無涙症、眼球乾燥症及び糖尿病、HIV/AIDS等を罹患する個体にみられるドライアイ状態、白内障手術後ドライアイ、アレルギー性結膜炎関連ドライアイ、長期のコンタクトレンズ使用に関連するドライアイ並びに加齢性のドライアイ症候群が含まれる。ドライアイには、長時間にわたる視覚表示端末装置(VDT(visual display terminal))の操作、エアコンによる部屋の乾燥等により誘発された涙液減少症の個体にみられる病状も含むことができる。乾性角結膜炎(KCS)、加齢性のドライアイ、スチーヴンズ−ジョンソン症候群、シェーグレン症候群、眼部瘢痕性類天疱瘡、眼瞼炎、角膜損傷,感染症、ライリー−デイ症候群、先天性無涙症、栄養障害又は欠乏症(ビタミンを含む)、薬理的副作用、眼のストレス、腺及び組織の破壊、環境的な曝露(例えばスモッグ、煙、過度に乾燥した大気、空気中浮遊微粒子等)、自己免疫及び他の免疫不全障害、並びに瞬きできなくなるこん睡状態の個体、も「炎症性の眼の状態」と言うことができるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書における、「コンタクトレンズ関連性ドライアイ(「CLRDE」(contact lens related dry eye))」とは、少なくとも1つの客観的に臨床的な症状及び少なくとも1つの自覚症状によって特徴付けられる障害を言う。臨床的な症状は(a)少なくとも一方の眼において、約10秒未満の涙液層破壊時間(「TFBUT」(tear film break up time))、(b)少なくとも一方の眼において、0〜15の尺度でのフルオレセイン染色スコアが3以上、(c)少なくとも一方の眼において、0〜18の尺度でのリサミングリーン染色スコアが3以上又は(d)少なくとも一方の眼において、涙液メニスカス等級が「異常」、から選択される。主観的な症状は、患者のフィードバックを通して判断され、(a)一日のコンタクトレンズ着用時間の平均と一日の快適なコンタクトレンズ着用時間の平均との間の差が約2時間以上及び(b)レンズ着用時の頻繁な又は一定の乾燥感、灼熱感、刺すような感じ又は不快感の評価が含まれる。CLRDEの徴候として、過剰な涙の蒸発と非シェーグレン水性涙液欠乏症の両方が挙げられる。過剰な涙の蒸発は、NEI尺度において約3秒以上の結膜又は角膜の染色と並んで、少なくとも一方の眼において、約10秒以下のTFBUT又は少なくとも一方の眼において、10秒以下のTFBUTによって特徴付けられる疾患である。非シェーグレン水性涙液欠乏症の涙液メニスカスは、NEI尺度において3以上の結膜又は角膜の染色と並んで、少なくとも一方の眼において、等級が「異常」又は少なくとも一方の眼において涙液メニスカス等級が「異常」であることによって特徴付けられる疾患である。
【0035】
本明細書において、「付属器の炎症」という用語は、眼又は、瞼、涙腺及び外眼筋が挙げられるが、これらに限定されない、眼又は視覚系の任意の範囲又は部分の炎症を含む。
【0036】
本明細書において、「浸透圧保護」という用語は、眼の容量オスモル濃度を正常な生理学的範囲(好ましくは、270〜320mOsm/kg、平均して約290mOsm/kg)に維持すること、及び/又は上皮組織を高張状態から保護することを意味する(ここで、単位「mOsm/kg」は1キログラムあたりのミリオスモル濃度である。)。浸透圧保護を提供する浸透圧保護剤は、一般に帯電しておらず、眼細胞中に保持されることが可能で、比較的小さい分子量を有し、そうでなければ細胞の代謝と適合する。浸透圧保護剤は眼の表面下で高張状態を防ぎ、上皮表面を水和する。浸透圧保護剤としては、グリセロール、イノシトール、ソルビトール、キシリトール及びエリスリトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書において、「不飽和脂肪酸」という用語は、少なくとも1つの二重又は三重結合を有する脂肪酸を指す。この種類の脂肪酸には二重結合の位置を特定するためギリシャ文字を用いる。「α」炭素はカルボキシル基に最も近い炭素であり、「ω」炭素はその鎖の末端の炭素である。例えば、リノール酸及びγ−リノレン酸(それぞれLA(linoleic acid)、及びGLA(gamma-linolenic acid))は、ω炭素から炭素6個分離れて二重結合を有するため、ω−6脂肪酸である。α−リノレン酸は、ω炭素から炭素原子3個分離れて二重結合を有するため、ω−3脂肪酸である。
【0038】
本明細書において、「ω−3脂肪酸」という用語は、ω炭素原子から炭素原子3個分離れて二重結合を有する脂肪酸を指す。例えば、ω−3脂肪酸としては、α−リノレン酸(ALA(alpha linolenic acid))が挙げられるが、これに限定されない。他のω−3脂肪酸として、ALAの誘導体が挙げられる。ALAの「誘導体」とは、例えば酵素によって、α−リノレン酸を化学修飾して製造された、又は有機合成によって製造された脂肪酸を指す。ALAの誘導体であるω−3脂肪酸の例として、エイコサペンタエン酸(EPA(eicosapentaenoic acid))、ドコサヘキサエン酸(DHA(docosahexaenoic acid))等が挙げられるが、これに限定されない。「ω−3脂肪酸」は、1つ又は2つ以上のω−3脂肪酸を含んでよい。
【0039】
本明細書において、「ω−6脂肪酸」という用語は、ω炭素原子から炭素原子6個分離れて二重結合を有する1つ又は2つ以上の脂肪酸を指す。例えば、ω−6脂肪酸としては、リノール酸(LA)が挙げられるが、これに限定されない。他のω−6脂肪酸として、リノレン酸の誘導体が挙げられる。リノール酸の「誘導体」とは、リノール酸を化学修飾して製造された脂肪酸を指す。リノール酸の誘導体であるω−6脂肪酸の例として、γ−リノレン酸(GLA)、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA(dihomogammalinolenic acid))等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記組成物は少なくとも1つの非炎症性ω−6脂肪酸を含む。非炎症性ω−6脂肪酸とは、炎症を促進又は引き起こさないω−6脂肪酸である。いくつかの実施形態において、炎症は眼の中で起こる、又は眼の表面に影響を与える。当業者は、ある脂肪酸が炎症を引き起こす又は促進させるかどうかを判断することができる。もし、脂肪酸が炎症を促進又は引き起こす場合は、その脂肪酸は前記組成物から除外されてよい。
【0040】
本明細書において、「リノール酸」という用語は、18:2(n−6)という省略表記で表される(ここで、炭素数:二重結合数(位置)である。)、9,12−オクタデカジエン酸(9,12-octadecandienoic acid)を指す。本明細書全体において、リノール酸は、リノール酸又は「LA」と表記される。
【0041】
本明細書において、「アラキドン酸」という用語は、20:4(n−6)という省略表記で表され、分子量が304.5である、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸を指す。本明細書全体において、アラキドン酸は、アラキドン酸又は「AA」(arachidonic acid)と表記される。アラキドン酸が、炎症促進性プロスタグランジンを生み出し得ることに留意すべきである。また、アラキドン酸は、リポキシン及び、アナンダミド(アラキドノイルエタノールアミン(arachidonoylethanolamine))であるエンドカンナビノイド等の有益な抗炎症脂質メディエーターをもたらす、酵素法に含まれ得ることに留意すべきである。
【0042】
本明細書において、「α−リノレン酸」という用語は、18:3(n−3)という省略表記で表され、分子量が278.4である、9,12,15−オクタデカトリエン酸を指す。本明細書全体において、α−リノレン酸は、α−リノレン酸又は「ALA」と表記される。
【0043】
本明細書において、「γ−リノレン酸」という用語は、18:3(n−6)という省略表記で表され、分子量が278.4である、9,6,12−オクタデカトリエン酸を指す。本明細書全体において、γ−リノレン酸は、γ−リノレン酸又は「GLA」と表記される。
【0044】
本明細書において、「ジホモ−γ−リノレン酸」という用語は、20:3(n−6)という省略表記で表され、分子量が306.5である、8,11,14−エイコサトリエン酸を指す。本明細書全体において、エイコサトリエン酸は、エイコサトリエン酸又は「DGLA」と表記される。
【0045】
本明細書において、「エイコサペンタエン酸」という用語は、20:5(n−3)という省略表記で表され、分子量が302.5である、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸を指す。本明細書全体において、エイコサペンタエン酸は、エイコサペンタエン酸又は「EPA」と表記される。
【0046】
本明細書において、「ドコサヘキサエン酸」という用語は、22:6(n−3)という省略表記で表され、分子量が328.6である、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸を指す。本明細書全体において、ドコサヘキサエン酸は、ドコサヘキサエン酸又は「DHA」と表記される。
【0047】
本明細書において、「エステル」という用語は、オキソ酸(酸素を含有する有機酸)とアルコール等のヒドロキシル化合物との反応に誘導される任意の化合物を指す。エステルは、通常、少なくとも1つのヒドロキシル(−OH)基が−O−アルキル(アルコキシ)基に置き換えられた有機酸から誘導される。最も一般的には、エステルはカルボン酸をアルコールと縮合させて形成される。1つ又は2つ以上の実施形態において、本発明のエステルは天然に存在してもよく、又は脂肪酸とアルコールの反応により形成されてもよい。
【0048】
本明細書において、「アミドエステル」という用語は、オキソ酸とアミンとの反応に誘導される任意の化合物を指す。1つ又は2つ以上の実施形態において、アミドエステルをもたらす脂肪酸とアミンの反応が提供される。「エステル形態」についての言及は、従来のエステルに加えて、アミドエステルを含むことができる。「反応生成物」についての言及は、エステル又はアミドエステルが天然由来であるか合成されたかに関わらず、酸とアルコール又はアミンとの反応により形成されたエステル又はアミドエステルを意味する。もし合成されている場合、エステル又はアミドエステルは当業者に周知である様々なエステル化方法によって調製できる。
【0049】
本明細書において、「ワックスエステル」という用語は、脂肪酸及び長鎖アルコールのエステルを指す。ワックスエステルとして、蜜蝋及びカルナバワックスが挙げられるが、これらに限定されない。蜜蝋はC
40〜C
46の分子種からなる。カルナバワックスは、C
30〜C
34の長鎖アルコールでエステル化したC
16〜C
20の脂肪酸となっており、C
46〜C
54の分子種をもたらす。
【0050】
本明細書において、「アルコール」という用語は、通常は他の炭素及び水素原子と結合した、炭素原子に結合した少なくとも1つのヒドロキシル官能基(−OH)を有する任意の有機化合物を指す。アルコールとしては、非環式アルコール、環状アルコール、一級、二級、及び第三級アルコール、一価アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。アルコールとして、1つのヒドロキシル官能基を有するアルコールである、一価アルコールが挙げられる。一価アルコールとして、化学式CH
3−(CH
2)
z−OH(ここで、zは0〜5であり、いくつかの実施形態においては、zは0〜2)を持つ任意の化合物が挙げられる。一価アルコールとして、特に、エタノール(CH
3−CH
2−OH)を挙げることができる。
【0051】
本明細書において、「レゾルビン」という用語は、エイコサペンタエン酸(EPA)又はドコサヘキサエン酸(DHA)、シクロオキシゲナーゼ−II(COX−2(cyclooxygenase-II))等のω−3多価不飽和脂肪酸と、アスピリン等の鎮痛剤との間の相互作用から生成される薬剤を指す。EシリーズのレゾルビンはEPAから誘導される一方で、DシリーズのレゾルビンはDHAから誘導される。例示のレゾルビンとして、レゾルビンE1(RvE1)、レゾルビンE2(RvE2)、レゾルビンD1(RvD1)、レゾルビンD2(RvD2)、レゾルビンD3(RvD3)、レゾルビンD4(RvD4)及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
本明細書において、「プロテクチン」又は「ノイロプロテクチン」という用語は、ある薬剤、特に(炭素数22の必須脂肪酸、特にDHAの酸素付加によって製造されるシグナル分子である)ドコサノイドであり、即ち多価不飽和脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)から誘導される。「プロテクチン」又は「ノイロプロテクチン」は、ナノモル濃度において、脳や網膜の病気の様々な実験モデルに強力な抗炎症及び抗アポトーシス生理活性を発揮する。例示のプロテクチンとして、プロテクチンD1(PD1(protectin D1))が挙げられる。
【0053】
本明細書において、「リポキシン」という用語は、5−リポキシゲナーゼ経路によって合成される一連の抗炎症脂質メディエーターを指す。リポキシンは短命であり、内因的に生産され、非古典的なテトラエン−含有エイコサノイドであり、炎症におけるその出現は炎症の消炎を示す。また、リポキシンはアラキドン酸、ω−6脂肪酸から酵素的に誘導される。例示のリポキシンとして、リポキシンA4(LXA(lipoxin A4))、リポキシンB4(LXB4)及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
本明細書において、「プロスタグランジン」という用語は、平滑筋の収縮及び弛緩、血管の拡張及び収縮、血圧の調節並びに炎症の調節のような、広範囲にわたる体の機能に関与する多くのホルモン様物質のうちの1つを指す。プロスタグランジンω−3及びω−6脂肪酸から誘導される。プロスタグランジンは3種に大別できる。抗炎症特性を有するプロスタグランジンE1(PGE1(Prostaglandin E1))及びプロスタグランジンE3(PGE3)、並びに炎症を促進させるプロスタグランジンE2(PGE2)である。ジホモ−γ−リノレン酸から誘導されるPGE1は、強力な血管拡張剤であり、末梢血流を増加させ、血小板凝集を阻害し、かつ他に、気管支拡張及び炎症の媒介等の、多くの生物学的な効果を有する。PGE1は涙液腺及び唾液腺の分泌及びT細胞機能にとって重要である。PGE2は、アラキドン酸から誘導され、感染症又は炎症に応答して血管壁によって放出され、発熱を誘発させるよう脳に作用し、また、PGE2は、分娩促進薬として広く用いられてきた。PGE3は、エイコサペンタエン酸のシクロオキシゲナーゼ(COX(cyclooxygenase))代謝を介して形成される。PGE3は、眼圧を下げることが知られている。
【0055】
本明細書において、「レチノイン酸」という用語は、成長及び発達に必要なビタミンA(レチノール)の機能を媒介する、ビタミンAの代謝産物を指す。レチノイン酸は、皮脂抑制剤(sebostaticum)としての機能に加え、強い抗炎症特性を有することが明らかになってきている。(Plewig,G.,et al.,Archives of Dermatological Research,Vol.270,No.1,89〜94参照)レチノイン酸としては、13−シス−レチノイン酸が挙げられるが、これに限定されない。
【0056】
本明細書において、「エンドカンナビノイド」という用語は、カンナビノイド受容体を活性化する、体内で生産され、見出される有機化合物の種類を指す。内因性カンナビノイド(「エンドカンナビノイド」)は、高濃度で組織中に存在する場合、抗炎症性及び鎮痛性の効果をもたらす。エンドカンナビノイドは、ある細胞から放出され、他の近接する細胞上に存在するカンナビノイド受容体を活性化する、細胞間脂質メッセンジャー、シグナル分子として働き、逆行性信号伝達を用いる。エンドカンナビノイド、水にあまり溶けない親油性の分子である。エンドカンナビノイドとして、アナンダミド(アラキドノイルエタノールアミン)及び2−アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書において、「リン脂質」という用語は、主に脂肪酸、リン酸基及びコリン等の単純有機分子からなる、様々なリン含有脂質のうちのいずれかを指す。好ましくは、リン脂質は、(所望によりω−6脂肪酸を伴う)ω−3脂肪酸である、1つ又は2つ以上の脂肪酸の残留物を含有する。リン脂質は本質的に両親媒性であり、即ちリン脂質の極性末端(polar end)は水及び水性溶液に可溶性(親水性)である一方、脂肪酸末端は油に可溶性(疎水性)である。水性環境において、リン脂質は集まって、中間に疎水性末端を有しかつ水性環境に露出した親水性末端を有する2層構造(脂質二重層)を形成している。このような脂質二重層は細胞膜の構造的基礎である。
【0058】
本明細書において、「代謝産物」という用語は、代謝の産物である化合物を指す。代謝産物は化合物を分解し、排出する自然な生化学的プロセスの一環として形成される。
【0059】
本明細書において、「代謝的に安定な類縁体」という用語は、(時には、単一の元素が親化合物と異なる)親化合物の構造誘導体又は親化合物に似た特性を持つ化合物を指す。類縁体は簡単には分解されないため、代謝的に安定である。
【0060】
本明細書において、「CD11b+浸潤」という用語は、ドライアイの誘発に続く、角膜の中心又は周辺に存在するCD11b
+細胞の増加を含む。
【0061】
本明細書において、「IL−1α又はTNF−α発現」という用語は、定量的なリアルタイムのポリメラーゼ連鎖反応による、IL−1α及びTNF−αのRNA転写物の測定を含む。
【0062】
本明細書において、「炎症性サイトカイン」という用語は、IL−1α及びTNF−αを含むが、これらに限定されない。
【0063】
本開示の詳細に戻ると、エステル化抗炎症脂質メディエーターを含有する眼用製品を製造する方法及び使用する方法が提供され、ここで、該抗炎症脂質メディエーターの大部分はエステル形態で存在する。1つ又は2つ以上の実施形態において、実質的に脂肪酸を含まない前記組成物が提供される。即ち、これらの実施形態において、眼用製品は10重量%以下(又は8%、又は6%、又は5%、又は4%、又は3%、又は2%、又は1%)の酸形態の抗炎症脂質メディエーターを含有する。更なる実施形態において、眼用製品は1重量%以下(又は0.8%、又は0.6%、又は0.5%、又は0.4%、又は0.3%、又は0.2%、又は0.1%、又は0.05%、又は0.025%、又は0.01%)の酸形態の抗炎症脂質メディエーターを含有する。エステル化抗炎症脂質メディエーターは、酸性抗炎症脂質メディエーターのエステルである。このエステルは、抗炎症脂質メディエーターと少なくとも1つの一価アルコール又はアミンとの反応によって形成されてよい。他の実施形態においては、前記エステルをアミンから形成することが可能である。望ましい抗炎症脂質メディエーターとしては、ω−3及び/又はω−6脂肪酸、レゾルビン又は代謝的に安定な類縁体、プロテクチン又は代謝的に安定な類縁体、リポキシン又は代謝的に安定な類縁体、プロスタグランジン又は代謝的に安定な類縁体、レチノイン酸、エンドカンナビノイド及びリン脂質が挙げられる。炎症はドライアイの構成要素である。眼への長期的な利益をもたらしつつ、眼への投与の際に初期の不快感(急性の眼の不快感)と関連しない形態で、炎症を軽減することが知られた有効な候補を供給する必要がある。
【0064】
1つ又は2つ以上の実施形態において、前記エステルは治療的に有効な量供給される。即ち、前記エステルは、眼の表面、眼の裏側、涙の組成及び安定性が挙げられるが、これらに限定されない、眼領域に対して、有益な効果をもたらすのに十分な量存在する。治療的に有効な量のエステルにより、眼の環境に利益をもたらす、適切な量の抗炎症脂質メディエーターを供給することができる。
【0065】
先行技術(例えば、米国特許出願公開第20070265341号(Dana et al.)で記載される組成物)の遊離脂肪酸製剤(例えば、α−リノレン酸エマルション)においては、点眼時に不快感があった。界面活性剤の濃度の変化(大抵は、2.5%〜0.25%のTween−80)又は1つ又は2つ以上な界面活性剤(若しくは複数の界面活性剤)(両性のモナテリック界面活性剤等)の使用によって、点眼時の快適性が改善することはなかった。現行の本発明は、必須脂肪酸を非イオン性にすることにより、即ちこの分子のエステル化した相対物を用いることにより、この不快感の問題を回避し、改善する方法を模索する。
【0066】
多価不飽和脂肪酸、レゾルビン又は代謝的に安定な類縁体、プロテクチン又は代謝的に安定な類縁体、リポキシン又は代謝的に安定な類縁体、プロスタグランジン又は代謝的に安定な類縁体、レチノイン酸、エンドカンナビノイド及びリン脂質等の抗炎症脂質メディエーターは、炎症、ドライアイ及び/又は乾燥症状、並びにマイボーム腺機能不全等の眼の状態の治療で使用される眼用製品の成分として望ましい。抗炎症脂質メディエーターの大部分がエステル形態で存在する場合、エステル化抗炎症脂質メディエーターを使用することで、眼の表面への接触時又は投与時における初期的な快適性を大幅に向上させる眼用製品をもたらすことが、見出された。概して、エステル化抗炎症脂質メディエーターは、酸性抗炎症脂質メディエーターとアルコール又はアミンとの反応生成物である。
【0067】
このようなエステル化抗炎症脂質メディエーターは、場合によっては非保存性のリウェッティングドロップ(rewetting drop)において有用であり得、又はエステル化抗炎症脂質メディエーターの混合物でレンズを処理することで、シリコーンヒドロゲル等のコンタクトレンズと関連させてもよい。エステル化抗炎症脂質メディエーターは、様々な方法を用いて、コンタクトレンズに取り込まれてもよく、例えば、取り込みはレンズ抽出又は水和工程又はそれらの組み合わせ時に実施される。
【0068】
このような特徴は以前の脂肪酸及び/又は脂肪酸油の使用によっては、提供されていなかった。エステル化抗炎症脂質メディエーターは、所望の眼用組成物を得るため、水性デリバリーシステムと組み合わせてもよい。
【0069】
抗炎症脂質メディエーターの大部分はエステル形態で存在する場合、エステル化抗炎症脂質メディエーターはドライアイ病の炎症性要素(ドライアイ病を恒久化する)を標的とする利点を有し、広い濃度範囲において初期の不快感を引き起こしにくい。理論によって拘束される意図なく、眼の表面の細胞に接触し取り込まれた際、エステル化多価不飽和脂肪酸、エステル化レゾルビン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化プロテクチン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化リポキシン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化プロスタグランジン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化レチノイン酸、エンドカンナビノイド及びリン脂質等のエステル化抗炎症脂質メディエーターは、加水分解を受け、エステルの形成に用いたアルコールと共に酸性抗炎症脂質メディエーター状態に戻ると考えられている。
【0070】
ω−3及びω−6脂肪酸等の、多価不飽和脂肪酸のエステルについては、カルボン酸とアルコール又はアセテートとの反応はエステルを生産する。一般的には、次のエステル(Ia)等の脂肪酸誘導体及びアミド(Ib)等の他の官能基が、安定性及び改善された初期的な眼の快適性のために望ましい。
CH
3−CH
2−CH=CH−(CH
2−CH=CH)
n−(CH
2)
x−CO−O−R (Ia)
CH
3−CH
2−CH=CH−(CH
2−CH=CH)
n−(CH
2)
x−CO−NH−R (Ib)
【0071】
このような誘導体はその後、元の脂肪酸構造(II)へと戻るはずである。
CH
3−CH
2−CH=CH−(CH
2−CH=CH)
n−(CH
2)
x−酸{−CO−OH} (II)
【0072】
一旦、眼の環境に入ると及び/又は脂質層若しくは細胞膜脂質二重層に取り込まれると、涙液膜安定効果及び/又は抗炎症効果を発揮する。
【0073】
n、x及びRは次の範囲内でもよい。nは2〜5、xは2〜7、Rは眼科的に適合する脱離基として、
−(CH
2)
yCH
3が挙げられるが、これに限定されない(ここで、yは0、1又はそれ以上である)。いくつかの実施形態において、yは0〜5、又は0〜3でありy=1が好ましい。
【0074】
特に、エステル化抗炎症脂質メディエーターはエステル化ω−3脂肪酸を含み、ここで、該ω−3脂肪酸は、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(docohexaenoic acid)、ドコサペンタエン酸(DPA(docosapentaenoic acid))、テトラコサペンタエン酸及びテトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)、誘導体、代謝産物、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されない。エステル化の際、抗炎症脂質メディエーターの大部分はω−3脂肪酸のエステル形態で存在する。
【0075】
特に、エステル化ω−3脂肪酸は、次の非限定例、リノレン酸エチル(α−リノレン酸エチルエステル(ALA−EE(alpha-linolenic acid ethyl ester))、ステアリドン酸エチルエステル及びステアリドン酸プロピルエステル、エイコサテトラエン酸エチルエステル及びエイコサテトラエン酸プロピルエステル、エイコサペンタエン酸エチルエステル及びエイコサペンタエン酸プロピルエステル、並びにドコサヘキサエン酸エチルエステル及びドコサヘキサエン酸プロピルエステルから選択されてよい。
【0076】
抗炎症脂質メディエーターは一価アルコール又はアミンと反応し、所望の抗炎症脂質メディエーターのエステル形態を形成する。一価アルコールは、1つのヒドロキシル官能基を有する。好適な一価アルコールは、炭素原子を5個まで含む。一実施形態において、一価アルコールの化学式はCH
3−(CH
2)
z−OH(式中、zは0〜5)である。他の実施形態において、一価アルコールはメタノール及びエタノールから選択される。他の実施形態において、一価アルコールはエタノールである。
【0077】
好適なアミンとして、炭素原子を6個まで有する一級及び二級アミンが挙げられる。前記アミンは直鎖状、分岐鎖状又は環状である。一実施形態において、好適なアミンとして、CH
3−(CH
2)
z−NH
2(式中、zは0〜5であり、好ましくは0又は1)の化学式を有するアミンが挙げられる。
【0078】
炎症脂質メディエーター及び一価アルコールはエステル形成条件下で反応させる。好適な触媒が当該技術分野において既知であり、酸、塩基、カルボジイミド等が挙げられる。エステル化及びアミド化反応は室温で起こり得(典型的には、約19〜25℃の範囲)、より温度を高くする必要はなく、反応が完了するまでの時間を加速するために、周囲気圧、温度をより高い範囲(約25〜80℃)にしてもよい。
【0079】
エステル化抗炎症脂質メディエーターは、ヒマワリ油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油等の天然油の形態をとらないことに留意すべきである。炭素鎖の短いアルコールから形成されているため(炭素原子は6個以下であり、いくつかの実施形態においては3個以下である)、本発明のエステル化抗炎症脂質メディエーターは、ワックスエステルではないことに更に留意すべきである。
【0080】
混合物には、所望の比率でω−3及びω−6脂肪酸エステルが含まれてよい。1つ又は2つ以上の実施形態において、エステルの加水分解時に、眼におけるω−3脂肪酸:ω−6脂肪酸のバランスを約1:1とする組成物を提供することが望ましい。他の実施形態において、加水分解時に、ω−3脂肪酸:ω−6脂肪酸の比が、約10:約1〜約1:約1以上及び、約5:1〜約1:1、約4:1〜約1:1、約3:1〜約1:1、約2:1〜約1:1、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1又は約10:1の範囲にある眼用組成物を提供することが望ましい。この比は各種ω脂肪酸の種類の総量に基づく。
【0081】
眼用組成物の混合は、無菌条件で行われてもよく、又は、周囲条件下で行われ、その後殺菌されてもよい。温度は広範囲にわたってよく、周囲条件の温度及び圧力下で反応を行ってもよい。
【0082】
リウェッティングドロップ、多用途溶液、洗浄用及び保存用溶液並びにコンタクトレンズ自体の中を含む、眼用組成物における成分として、エステル化抗炎症脂質メディエーターが有用であることに加え、これらの材料はまたレンズ包装用溶液における含有物の候補と成り得る。レンズはエステル化抗炎症脂質メディエーターと共に、製剤で及び/若しくはエマルションで包装されてもよく、又は、適した溶媒(又は複数の溶媒)に溶解させてそのような材料中に水和され、包装用溶液中でレンズが平衡状態となってもよい。
【0083】
他の眼用組成物として、多用途溶液、製剤、溶液、ゲル、軟膏、乳剤等のレンズケア溶液及びストリップ、挿入具、涙点プラグ又は眼の表面と接触する任意の製品等の眼用製品を挙げることができる。
【0084】
一実施形態において、エステル化抗炎症脂質メディエーターは水性デリバリーシステムにおいて提供される。水性デリバリーシステムは、眼に直接点眼することができる、水ベースのシステムであり、又は、眼の環境に置かれた眼用製品の手入れ、保存若しくは洗浄に用いてもよい。水性デリバリーシステムの例として、包装用溶液、保存用溶液、洗浄用及びケア用溶液、多用途溶液、コンディショニング用溶液並びに点眼液のうちの1つ又は2つ以上が挙げられる。また、水性デリバリーシステムは、乳化剤、キレート剤、安定剤,界面活性剤,湿潤剤,酸化防止剤、等張化剤、防腐剤、浸透圧保護剤、これらの組み合わせ等の1つ又は2つ以上のような、既知の構成要素を含んでもよい。
【0085】
包装用溶液は、コンタクトレンズの保存に用いられている、任意の水系溶液であってよい。エステル化抗炎症脂質メディエーターは、包装用溶液中に分散してよい。典型的な溶液には、生理食塩水、他の緩衝液及び脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水溶液は、塩を含有する生理食塩水で、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、又は同酸の対応するカリウム塩を含むが、これらに限定されない。これらの成分は一般に混合されて、酸及びその共役塩基を含む緩衝液を形成するので、酸や塩基を添加してもpHには比較的小さな変化しか起こらない。緩衝液は更に、2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid)(MES)、水酸化ナトリウム、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール(2,2-bis(hydroxymethyl)-2,2',2"-nitrilotriethanol)、n−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(n-tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethanesulfonic acid)、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム等、及びそれらの組み合わせを含んでよい。好ましくは、溶液は、ホウ酸緩衝水溶液若しくはリン酸緩衝生理食塩水溶液である。
【0086】
包装用溶液を形成するため、任意の1つ又は2つ以上な成分と共に、少なくとも1つの界面活性剤又は乳化剤が、水系溶液と組み合せられ、撹拌され、そして溶解又は分散される。好ましくは、溶液のpHは、約6.2〜約7.5に調整される。本発明の包装用溶液に保存されるレンズは、該溶液に浸漬され、それら溶液及びレンズはレンズ保存用の包装内に配置される。あるいは、溶液が包装内へ配置されてから、レンズが溶液内に配置されてもよい。典型的には、その後、包装はヒートシール等の任意の手頃な方法によって密封され、好適な殺菌処置を受ける。
【0087】
本発明での使用に適した界面活性剤は、任意の好適な分子量、好ましくは約200〜約1,000,000、より好ましくは約1000〜約18,000、を有する。有用な界面活性剤は、約10〜約30、好ましくは約15〜約25、より好ましくは約15〜約23の親水性−親油性バランス(「HLB」(hydrophile-lipophile balance))を有する。
【0088】
共に用いられる溶液における溶解度の観点から適合する界面活性剤である限り、上述した基準に合う任意の既知の界面活性剤を用いてよい。それゆえ、好適な界面活性剤としては、カチオン性、イオン性、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、カチオン性及びイオン性界面活性剤を含有するレンズ包装用溶液は眼に刺激を与える。それゆえ、好ましくは、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。
【0089】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(polysorbate)20、60又は80等(全てTWEEN(登録商標)界面活性剤として入手可能)の脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、アルカノールアミド、アミンオキシド、エトキシル化アルコール及び酸、並びに、ポロキサミン界面活性剤(脂質及び環境的破片をレンズから取り除く表面活性剤、エチレンジアミンのポリアルコキシル化ブロックポリマー)等の1つ又は2つ以上のポリ(オキシアルキレン)鎖を有する界面活性剤、又は、ポロキサマー界面活性剤(界面活性剤、乳化剤、安定剤、及び食品添加物として用いられる、一連のポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン共重合体型非イオン性界面活性剤のうちのいずれか)等、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、界面活性剤はポリソルベート又はポロキサマー界面活性剤である。ポロキサマー界面活性剤は、分子の約10〜約80重量%を構成するポリオキシエチル親水基末端を有するポリオキシエチレン−−ポリオキシプロピレン非イオン性界面活性剤である、PLURONIC200という名称で市販されている。いずれのPLURONIC(登録商標)界面活性剤でも好ましいが、本発明において特に好ましいのは、約70重量%のエチレンオキシドであり、約12,000〜約15,0000の分子量を有する、PLURONIC(登録商標)127である。
【0090】
界面活性剤は、レンズ包装用溶液又はリウェッティングドロップのために、任意の既知の有効成分及び担体成分と組み合わせてもよい。レンズ包装用溶液に好適な有効成分として、抗菌剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びデキストラン等の抗乾燥剤、等張化剤等、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
好適な湿潤剤としては、粘性強化剤と共に、メチルグルセス−20(methyl gluceth-20)(例えば、Glucam E20の商標名で販売されている)、カルボキシメチルセルロース、デキストラン70、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、PEG、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA(polyvinyl alcohol))、ポリビニルピロリドン(PVP(polyvinylpyrrolidone))、カルボマー、ポリメチルビニルエーテル無水マレイン酸(polymethylvinylethermaleic anhydride)、ヒアルロン酸、キサンタンガム及びポリアクリル酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明で使用される好適な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、カテコール、トコフェロール、カロテノイド、ヒアルロン酸、ルテイン又はフリーラジカルを除去可能な任意の化学種が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤は、酸化還元反応を通して他の化学物質の酸化損傷を阻害する分子種である。これらの反応は典型的には、分子種のための電子を酸化剤分子へ移動させる。これらは、連鎖反応を起こし得るフリーラジカルを含む。簡単に言えば、酸化防止剤は還元剤である。酸化防止剤の例としては、ビタミンE、ビタミンC、(ビタミンAに転換された)β−カロチン、及びペルオキシダーゼ、及びフリーラジカルの形成を阻害できる他の薬剤、例えば、キレート剤、EDTA、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA(diethylene triamine pentaacetic acid))、N、N−bis[カルボキシメチル]グリシン(NTA(N, N- bis[carboxymethyl]glycine))等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
いくつかの実施形態において、ビタミンEはエステル化抗炎症脂質メディエーターを含む溶液に添加される。
【0094】
他の実施形態において、本発明の組成物はコンタクトレンズ又はより詳細には、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ等の眼用製品に取り込まれる。この実施形態において、大部分はエステル形態で存在するエステル化抗炎症脂質メディエーターは、レンズが重合される反応混合物への取り込み、包装前、包装中又は包装後のいずれかにおいて、エステル化抗炎症脂質メディエーターを含む溶液にレンズを接触させることを含むが、これらに限定されない、多くの方法でレンズに取り込まれてよい。例えば、エステル化抗炎症脂質メディエーターは、レンズの製造中の抽出、水和又は保存溶液に含まれてもよく、又はコンタクトレンズの着用者によってレンズと接触させられる溶液に含まれてもよい。一実施形態において、溶液はレンズを膨張させ、エステル化抗炎症脂質メディエーターの増強された取り込みを可能にする。エステル化抗炎症脂質メディエーターが反応混合物に取り込まれる実施形態において、エステル化抗炎症脂質メディエーターは反応混合物に別の成分として添加されてもよく、又は反応成分の少なくとも1つにおけるアルコール基とあらかじめ反応させてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのエステル化ω−3脂肪酸を含む眼用組成物を含む。いくつかの実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのエステル化ω−6脂肪酸を含む眼用組成物を含む。いくつかの実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのエステル化ω−6脂肪酸及び少なくとも1つのエステル化ω−3脂肪酸を含む眼用組成物を含む。
【0096】
エステル化抗炎症脂質メディエーターは中性pHにおいて加水分解的に安定であり、pH中性の本発明の眼用組成物及び無菌製剤は保存中に加水分解しないということは本発明の効果である。これは、前記眼用溶液及び無菌製剤は、眼に点眼されたとき、刺すような感じを引き起こさないことを意味する。理論によって拘束される意図なく、眼の表面の細胞に接触及び/又は取り込まれた際、エステル化多価不飽和脂肪酸、エステル化レゾルビン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化プロテクチン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化リポキシン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化プロスタグランジン又は代謝的に安定な類縁体、エステル化レチノイン酸、エンドカンナビノイド及びリン脂質等のエステル化抗炎症脂質メディエーターは、加水分解を受け、エステルの形成に用いたアルコールと共に酸性抗炎症脂質メディエーター状態に戻ると考えられている。
【0097】
エステル化抗炎症脂質メディエーターの量は組成物全体のパーセンテージ又はレンズ水和工程(装置への材料の取り込みをもたらし得る、レンズ製造工程の一部)等の処理工程において用いられる溶液のパーセンテージとして述べることができる。エステル化抗炎症脂質メディエーターのパーセンテージは任意の方法で決定してよく、例えば、抗炎症脂質メディエーターの重量を眼用組成物又は眼用装置の全重量で割ることで決定してよい。眼用組成物の任意の成分のパーセンテージを同様の方法で判断することができる。
【0098】
本発明の眼用組成物又は眼用装置に存在し得るエステル化抗炎症脂質メディエーターの量として、眼用組成物の全成分に対して、約0.025重量%〜5.0重量%が挙げられる。眼用組成物がリウェッティングドロップの場合、エステル化抗炎症脂質メディエーターは、眼用組成物の全成分に対して、約0.025重量%〜0.5重量%の量で存在し、酸含量は0.1重量%(又は0.075、又は0.05、又は0.025、又は0.01重量%)以下でよい。眼用組成物がコンタクトレンズに取り込まれている場合、エステル化抗炎症脂質メディエーターは、眼用組成物の全成分に対して、約0.025重量%〜5.0重量%の量で存在し、酸含量は1重量%(又は0.75、又は0.5、又は0.25、又は0.1重量%)以下でよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明は、眼の表面の炎症を抑える有効な治療方針として、エステル化抗炎症脂質メディエーター(例えば、エステル化ALA)を含む組成物の局所適用を目的とする。本明細書で議論するように、眼の表面の炎症は、例えば、前方部分/眼の前側の病状及び眼の裏側の病状の両方(例えば、マイボーム腺機能不全、眼瞼炎、アトピー性角結膜炎、コンタクトレンズに関連するドライアイ、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、黄斑変性症、及び広範囲にわたる他の病状)を含むが、これらに限定されない、ドライアイ症候群及び他の炎症性の眼の状態として診察することができる。
【0100】
他の実施形態において、涙液膜の機能又は安定性を改善するための効果的な方針として、本発明は、エステル化抗炎症脂質メディエーター(例えば、エステル化ALA)を含む組成物の局所適用を目的とする。理論によって拘束される意図なく、エステル化抗炎症脂質メディエーターは、レンズと涙液膜及び/又は瞼との間の相互作用を改善すると考えられる。
【0101】
また、本発明は、本明細書に記載された組成物が必要であると診断された個体に投与することができる。個体が、上記のように識別した、ドライアイ症候群又は他の炎症性の眼の状態のうちの1つの病状に苦しむ又はそれらを有すると診断された場合、その個体が本明細書に記載された組成物を必要としてよい。当業者には、ドライアイ症候群の治療が必要な個体を診断する方法は既知である。
【0102】
また、少なくとも1つのドライアイの徴候及び/又は症状を軽減するために、又は浸透圧保護を必要とする個体に提供するために、本発明を投与することができる。
【0103】
理論による制約の意図なく、抗炎症脂質メディエーター組成物の抗炎症特性と涙液膜にもたらす利益のため、コンタクトレンズ着用時の眼へ提供するために、抗炎症脂質メディエーター組成物をコンタクトレンズに充填する場合、ドライアイ又は他の炎症性の眼の状態に苦しむ個体を楽にするため眼に有効に供給するために十分長い間、抗炎症脂質メディエーターを、コンタクトレンズを介し、眼に対して保持することができると考えられる。
【0104】
上皮構成方法
脂肪酸リウェッティングドロップにより生じる急性の眼の不快感を予測可能にするために、モデルが開発された。前記モデルでは、角膜上皮組織構成物を用いる(例えば、SkinEthicにより製造されたHCE構成物等)。化学的に定義された培地において、気液界面でヒト角膜上皮細胞が培養されることで、この組織構成物は、インビトロに再構築された全層角膜上皮組織から形成されており、角質層を欠きかつヒトの眼の粘膜に組織学的に類似した角膜上皮組織の形成物である(Nguyen,D.H.et al,Three−dimensional construct of the human corneal epithelium for In Vitro toxicology.In:Alternatives Toxicological Methods.Boca Raton,FL,CRC Press ed Katz SA and Salem H,2003.Chapter14:p.147〜159)。組織はほぼ70マイクロメートルの厚みを有し、完全に分化した角膜上皮組織の関連マーカーを発現することが明らかになっている(Nguyen et al,2003)。
【0105】
構成物は更に、細胞生存率の影響及び炎症性サイトカイン放出/細胞活性化の両方の観点から、一般的な眼用保存剤塩化ベンザルコニウム(BAK(benzalkonium chloride))の用量依存的効果が評価されることを特徴とする。前記モデルにおける細胞生存率反応は、評価された濃度範囲内のBAKの既知のインビボでの影響と矛盾しないことがわかった。BAKの非細胞傷害濃度(0.001及び0.01%)の判別を可能にすることを考慮すれば、サイトカインエンドポイント(組織培養培地でのIl−1−α放出の定量)により細胞活性化における眼用保存剤の効果の高感度な評価ができる。
【0106】
その後、30マイクロリットルのリウェッティングドロップを、8又は24時間、組織に局所適用することにより、エステル化抗炎症脂質メディエーターの用量反応が前記構成物について評価され、それから、組織培養培地内の選択されたバイオマーカー候補のサブセットと共に、細胞生存率が定量された。AOD予測因子を同定するためにかつ(急性の眼の)快適性予測モデルを定義するために、インビボの反応(点眼時の快適性)との相関について、インビトロのエンドポイントを探求した。
【0107】
8時間のインキュベーション期間が、インビトロとインビボ反応との間の最適な相関と最も関連性が高いことがわかった。8時間の暴露条件を用い、0〜50、即ち「とても良好」の快適性評価となる最も快適なスコアを50、「良好」の快適性評価となるスコアを約42、「満足以上」(即ち、平均以上)の快適性評価となるスコアを約33、「満足」(即ち、平均)の快適性評価となるスコアを約26、「満足以下」(即ち、平均以下)の快適性評価となるスコアを約18、「悪い」の快適性評価となるスコアを約8及び「非常に悪い」の快適性評価となるスコアを約0とする尺度を用いて、点眼時直ちに測定された、点眼時の快適性のインビボ反応と、次のインビトロエンドポイントとの間に、非常に良い相関が得られた。
【0108】
表1は、MTTアッセイ(MTT assay)を用いて評価した細胞生存率を示す。
【0110】
表2は、組織培養培地でのIl−1−α放出を示す。
【0112】
表3は、組織培養培地でのIl−1 Ra放出を示す。
【0114】
インビトロ反応の望ましい成果は、インビボ−インビトロ相関に基づいて定義した。望ましくない快適性スコアは25以下のスコアに該当し、インビボ−インビトロ相関によると、60%以下のインビトロエンドポイントでの望ましくない細胞生存率に変換される。最も望ましい快適性スコアは35以上であり、それはインビボ−インビトロ相関によると、80%以上の細胞生存率に変換される。
【0115】
また、前記モデルにおいて有益なインビトロ反応を示したα−リノレン酸エチルエステルも眼に有益な反応(即ち、急性の眼の不快感がない)を示すことにより、該モデルが更に確証された。
【0116】
本発明を以下の実施例を参照しながら説明する。本発明の例示の実施形態を幾つか説明するに先立ち、本発明が次の説明において明らかにされる構成や処理工程の詳細に限定されない点に留意すべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ様々な手法で実践又は実行できる。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
局所適用に好適なエマルションを提供するため、リノレン酸エチル(α−リノレン酸エチルエステル(ALA−EE)、化学式
【化1】
を有するエステル化抗炎症脂質メディエーター(AILM(anti-inflammatory lipid mediator))を、様々な界面活性剤/乳化剤、湿潤剤、キレート剤及び酸化防止剤(又は複数の酸化防止剤)を含有する、包装用溶液/水性デリバリーシステムに添加し、高い剪断速度で混合して、局所用組成物を形成した。表4に組成物の成分をまとめて示す。
【0118】
【表4】
a=ホウ酸0.4重量%、ホウ酸ナトリウム0.2重量%、塩化ナトリウム0.5重量%、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)0.01重量%
【0119】
(実施例2)
比較例
局所適用に好適なエマルションを提供するため、α−リノレン酸(ALA)を、様々な界面活性剤/乳化剤、湿潤剤、キレート剤及び酸化防止剤(又は複数の酸化防止剤)を含有する、包装用溶液/水性デリバリーシステムに添加し、高い剪断速度で混合して、局所用組成物を形成した。表5に組成物の成分をまとめて示す。
【0120】
【表5】
a=ホウ酸0.4重量%、ホウ酸ナトリウム0.2重量%、塩化ナトリウム0.5重量%、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)0.01重量%
【0121】
(実施例3)
試験
実施例1A及び1B及び比較例2Aの組成物は次のようにインビトロで試験された。インビボモデルの経上皮透過性(TEP試験(transepithelial permeability test))を用いて、α−リノレン酸のエステル形態と比較した、遊離酸によるフルオレセイン漏出(又は増加した経上皮透過性)を評価した。結果は表6に示されている。表6では、高濃度のALAエチルエステル(0.2%)は、経上皮透過性への影響の観点から、溶媒(Tween及びGlucamを含む包装用溶液)に類似した挙動を示した一方で、ALA脂肪酸は、同濃度において、コントロールに対して、著しく増大したフルオレセイン漏出を示し、それは点眼時における不快感の臨床的観察と一致する。このことは、0.2%と同程度の高濃度で使用する場合、ω−3脂肪酸のエステル版が、遊離酸を使用する場合と比較して、点眼時において改善した許容特性を有することを示唆している。
【0122】
【表6】
c−TWはTween−80
d−GlcmはGlucam E20
【0123】
(実施例4A)
試験
実施例1C、1Dの組成物と比較例2C、2Dが次のようにインビボで試験された。(点眼時の)主観的不快感のインビボのデータと相関させるために既に提示した(対応する相関曲線を示す表1−3を参照)バイオマーカー又は特定のサイトカインの測定に加え、細胞生存率が評価されることにより、マルチエンドポイント・アッセイ・システム(multi-endpoint assay system)からなる角膜上皮組織モデル。8時間での結果が表7Aに示されている。表7Aでは、リノレン酸エチル(ALA−EE)は、インビトロエンドポイントへの影響がリノレン酸(ALA)に比べて10分の1であり(8時間暴露後)、ALA−EEは0.2%以上までの濃度で、点眼時の初期の不快感を誘発せずに使用できることが示唆されている。
【0124】
【表7】
【0125】
(実施例4B)
試験
実施例1C(ALA−EE 0.2%)及び比較例2C(ALA 0.2%)の組成物は、インビトロにおいて、0.1cm
2のSkinEthicヒト角膜上皮組織構成物(HTS constructs)及び24時間の暴露時点を用いて、試験された。結果を下記の表7Bに示す。
【0126】
全体として、実施例3、4A及び4Bのインビトロデータはω−3脂肪酸のエステル版は、遊離酸と比較して、点眼時の初期の不快感を引き起こしにくい傾向が大きいこと、及び、初期の不快感反応を引き起こすいかなるリスクも冒さずに高濃度での使用(効能のため)が可能であるという利点を提示しうることが示されている。
【0127】
【表8】
【0128】
(実施例5)
ω−3脂肪酸組成物の使用について更に評価するため、あらかじめ投薬しない臨床的な研究が行われた。0.05重量%のエステル版のω−3脂肪酸が、3人の「コンタクトレンズ誘発性ドライアイ」の被験者(それぞれが、コンタクトレンズ誘発性ドライアイの少なくとも1つの徴候及び1つの症状を有する)に、何ら急性の眼の不快感又は生理学的な所見なく、点眼された。同様に濃度0.2重量%のエステル版のω−3脂肪酸が、4人の「コンタクトレンズ誘発性ドライアイ」の被験者に、何ら急性の眼の不快感又は生理学的な所見なく、点眼された。
【0129】
(実施例6)
コンタクトレンズ着用時の眼への供給が緩やかであるため、ω−3エステル材料(特に、α−リノレン酸エチルエステル(ALA−EE)又はリノレン酸エチル)が充填された。抗炎症特性及び涙液膜にもたらし得る有益性により、ドライアイ又は他の炎症状態に苦しむ被験者を楽にするため、ω−3脂肪酸(エステル)を眼に有効に供給するのに十分長い間、コンタクトレンズを介し眼に保持してよい。ω−3脂肪酸(エステル)の供給の緩やかさは、この材料の酸化防止及び抗炎症特性により、黄斑変性症等の病気に対する予防又はその病状発症の遅延を可能とするため、この材料が標的とする病状には、前方部分/眼の前側の病状及び眼の裏側の病状の両方が含まれる。
【0130】
一価アルコールとの反応に誘導されたω−3脂肪酸のエステル形態を用いることにより、生物学的利用能の向上という利益をもたらし、眼の組織のエステラーゼとの接触時における、眼上での酸形態の放出が可能となると考えられる。次の実施例において、ω−3エステル材料はリノレン酸エチルエステル又はリノレン酸エチルである。
【0131】
ALA−EEをイソプロパノール(IPA(isopropanol))に0.05又は0.5%で溶解させた。その後、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(senofilcon、ACUVUE(登録商標)OASYS(登録商標)with HYDRACLEAR(登録商標)Plusレンズとして市販されている)を、室温で1時間までALA−EE含有IPAに浸漬し、続いて、1時間までALA−EE含有IPA/包装用溶液(IPA 70%/包装用溶液30%)に浸漬し、包装用溶液中ですすぎ、包装用溶液中にレンズを包装した。コンタクトレンズによるALA−EEの取り込みはガスクロマトグラフィーにより定量した。レンズに定量可能な遊離酸形態は伴われず、これらの条件下でALA−EEは遊離酸形態に加水分解しないことがわかった(表8)。
【0132】
ALA−EEの取り込みは、IPA中に0.05及び0.5%のALA−EE溶液を用いたレンズで、それぞれ54及び611マイクログラムであった(表6)。
【0133】
【表9】
*BDL:検出限界未満
【0134】
(実施例7)
比較例
エステルではなく、α−リノレン酸(ALA)を取り込んだ、比較用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが実施例6と同一の手順に沿って調製された。コンタクトレンズによるALAの取り込みは、IPA中に0.05及び0.5%のALA溶液を用いた場合、レンズごとにそれぞれ23及び300マイクログラムであった(表9を参照)。
【0135】
【表10】
【0136】
(実施例8)
試験
再構築ヒト角膜上皮構成物での、実施例6及び7のALA及びALA−EEレンズの評価より、細胞生存率への影響がないという観点から、24時間暴露後の眼の表面組織との好ましい相互作用が明らかになった。細胞生存率はリン酸緩衝食塩水(PBS(phosphate buffered saline))ネガティブコントロールに対して、減少しなかった(表10)。
【0137】
【表11】
【0138】
実施例4A及び4Bにおいて、初期の不快感を引き起こさずに、リウェッティングドロップエマルション内において、ω−3脂肪酸のエステル形態(リノレン酸エチル)では、前記材料をより高濃度で使用できることが明らかになった。
【0139】
この実施例では、ω−3脂肪酸のエステル形態(リノレン酸エチル)は、同一濃度の原料を用いた遊離酸形態よりも、多量に充填できることが示されている。このような多量のω−3脂肪酸のエステル形態を取り込んだレンズが細胞生存率を減少させることはなく、製品の十分な眼への許容性を示唆する。
【0140】
他のリノレン酸エチル取り込み方法として、プロピレングリコール水和作用の使用が挙げられ(レンズの水和/浸漬のため、ALA−EEはIPAの代わりにプロピレングリコールに可溶化させられる)、レンズのパラメーターに大きな変動が観察されないことが確かめられた。
【0141】
(実施例9)
α−リノレン酸エチルエステル(ALA−EE)を0.05及び0.5%の濃度でプロピレングリコール(PG(propylene glycol))に溶解し、シリコーンヒドロゲルレンズ(Narafilcon Bレンズ(ACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標))を、室温で1時間ALA−EE含有プロピレングリコール溶液中で水和又は浸漬し、続いて、DI水中ですすぎ、包装用溶液中にレンズを再包装した。レンズは50ppmのメチルセルロースを含むホウ酸緩衝包装用溶液中に包装され、121℃で19分間、オートクレーブ処理した。ALA−EEはガスクロマトグラフィーで定量した。
【0142】
これらの条件下でかつNarafilcon B基材を使用し、ALA−EEの取り込みは、それぞれIPA中で、0.05及び0.5%のALA−EE溶液を用いたレンズにつき、それぞれ91及び721マイクログラムであった(表11)。この条件下では、検出可能なエステルから酸への加水分解は認められなかった。
【0143】
【表12】
*BDL:検出限界未満
【0144】
この条件下では、水の容量又はレンズの直径に変化は認められなかった。
【0145】
(実施例10)
試験
実施例9の選択されたレンズからのALA−EEの放出はインビトロ及びインビボの両方において評価された(ウサギ研究)。包装用溶液中の1mLの2.5% Tween−80でのインビトロでの放出から、3日間でALA−EEの50%が実施例9Aによるレンズから放出されることが明らかになった。
【0146】
インビボの試験については、製品の眼への許容性を評価するため、特にインビボでの放出速度を評価するため、動物実験が行われた。ウサギの眼におけるインビボでの放出は、時間とともに比較的ゆっくりとしたALA−EEの放出を示した。実施例9Bによるレンズに関しては、初めの12時間で43%のALA−EEが放出され、最初の1時間後は1時間あたり3マイクログラムの平均値であった。一日の経過とともに、約40〜50マイクログラムがNarafilcon Bレンズから放出された。
【0147】
(実施例11〜12)
ALA−EEを0.05及び0.1%の濃度でプロピレングリコール(PG)に溶解し、シリコーンヒドロゲルレンズ(Narafilcon Bレンズ(ACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標))を、常に撹拌しながら室温で1時間、PG−ALA−EE溶液中で浸漬した(溶液1リットルあたり200枚のレンズ)。レンズは、室温で30分間、水を用いて2回すすがれた。レンズは50ppmのメチルセルロースを含むホウ酸緩衝包装用溶液中に包装され、121℃で約19分間、オートクレーブ処理した。
【0148】
レンズは7〜8人のヒト患者により、8〜12時間着用された。不快感は報告されず、有害な事象又は臨床的に重大な角膜の染色又は沈着は認められなかった。投薬において、湿潤性は均一であった。経過観察において、数人の患者に軽度な不均一な湿潤性の痕跡が認められた。
【0149】
着用されたレンズは全て回収された。ALA−EEの残存レベルが塩化メチレンを用いて抽出され、ガスクロマトグラフィーにより定量された。着用時間経過後、ALA−EE 0.05%で接触していたレンズは、平均して27μg放出され、ALA−EE 0.1%で接触していたレンズは、平均して51μg放出された。これは、1次関数的な放出速度であると仮定すると、3.7及び6.4μg/時間の放出速度に対応する。
【0150】
(実施例13)
1滴が50マイクロリットルであり、(滴剤適用/初期排液時の初期的な損失により)滴剤の90%が失われ、10%のみが初期的に眼に保持されるという仮定の下、脂肪酸含有リウェッティングドロップに対するドライアイ・マウス・モデルからの動物データを用い、1日あたり4滴の0.2% ALAリウェッティングドロップの服用量と、眼の表面に適用される40マイクログラムの蓄積服用量とが同等であると推定された。
【0151】
本出願における抗炎症脂質メディエーターのエステル又はアミドは、脂肪酸と同様の眼の環境への供給濃度を有すると考えられる。それゆえ、90マイクログラムのALA−EEが充填されたコンタクトレンズの使用時に、同様の範囲のALA−EE量が眼の表面で利用可能であった。それゆえ、レンズ使用時の眼における長い保持期間を考慮すると、このようなALA−EEの放出量は、リウェッティングドロップ使用時よりも、大きな効能をもたらすことができる。
【0152】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ又は2つ以上の実施形態」、「更なる実施形態」、「ある実施形態」と言うときは、その実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえ、本明細書全体の様々な箇所での「1つ又は2つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」又は「ある実施形態において」等の表現の出現は、本発明の同一の実施形態について言及しているとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ又は2つ以上の実施形態で、任意の好適なやり方で組み合わせることができる。
【0153】
本発明について本明細書において特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途を説明するものに過ぎないことが理解されよう。本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に様々な修正及び変更を実施できることが当業者に明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に含まれる修正物及び変更物を包含することが意図される。
【0154】
〔実施の態様〕
(1) 眼の病状を治療するための眼用組成物であって、
抗炎症脂質メディエーターと一価アルコール又はアミンの反応生成物である、前記抗炎症脂質メディエーターのエステル又はアミドと、
水性デリバリーシステムと、を含み、
前記抗炎症脂質メディエーターの大部分はエステル形態で存在する、眼用組成物。
(2) 前記エステルが、治療的に有効な量存在する、実施態様1に記載の組成物。
(3) 前記組成物が、実質的に脂肪酸を含まない、実施態様1に記載の組成物。
(4) 前記組成物が、10重量%以下の前記抗炎症脂質メディエーターの酸形態を含む、実施態様1に記載の組成物。
(5) 前記組成物が、5重量%以下の前記抗炎症脂質メディエーターの酸形態を含む、実施態様4に記載の組成物。
【0155】
(6) 前記組成物が、1重量%以下の前記抗炎症脂質メディエーターの酸形態を含む、実施態様5に記載の組成物。
(7) 前記エステルが、全組成物に対して約0.01重量%〜5.0重量%の範囲の量存在する、実施態様1に記載の組成物。
(8) 前記エステルが、全組成物に対して約0.025重量%〜0.5重量%の範囲の量存在する、実施態様7に記載の組成物。
(9) 前記エステルが、エステル化多価不飽和脂肪酸、エステル化レゾルビン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化プロテクチン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化リポキシン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化プロスタグランジン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化レチノイン酸、これらの代謝産物及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1に記載の組成物。
(10) 前記抗炎症脂質メディエーターが、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE3(PGE3)、又は代謝的に安定な類縁体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロスタグランジンである、実施態様1に記載の組成物。
【0156】
(11) 前記抗炎症脂質メディエーターが、レゾルビンE1(RvE1)、レゾルビンE2(RvE2)、レゾルビンD1(RvD1)、レゾルビンD2(RvD2)、レゾルビンD3(RvD3)、レゾルビンD4(RvD4)又は代謝的に安定な類縁体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるレゾルビンである、実施態様1に記載の組成物。
(12) 前記抗炎症脂質メディエーターが、リポキシンA4(LXA)、リポキシンB4(LXB4)、又は代謝的に安定な類縁体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるリポキシンである、実施態様1に記載の組成物。
(13) 前記抗炎症脂質メディエーターが、プロテクチンD1(PD1)又は代謝的に安定な類縁体を含む、実施態様1に記載の組成物。
(14) 前記抗炎症脂質メディエーターが、13−シス−レチノイン酸を含む、実施態様1に記載の組成物。
(15) 前記抗炎症脂質メディエーターが、アナンダミドを含む、実施態様5に記載の組成物。
【0157】
(16) 前記抗炎症脂質メディエーターが、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(docohexaenoic acid)(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、テトラコサペンタエン酸、及びテトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)、誘導体、代謝産物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのω−3脂肪酸を含む、実施態様1に記載の組成物。
(17) 前記エステルが、エステル化α−リノレン酸を含む、実施態様1に記載の組成物。
(18) 前記エステル化α−リノレン酸が、全組成物に対して約0.01重量%〜5.0重量%の範囲の量存在する、実施態様17に記載の組成物。
(19) 前記エステル化α−リノレン酸が、α−リノレン酸エチルエステルである、実施態様17に記載の組成物。
(20) 前記組成物の重量を基準として、
約0.025%〜5.0%の範囲の量の前記α−リノレン酸エチルエステルと、
約0.025%〜5.0%の範囲の量の、メチルグルセス‐20(methyl gluceth-20)である湿潤剤と、
約0.025%〜5.0%の範囲の量の、ポリソルベート80(polysorbate 80)である界面活性剤と、
約0.01%〜0.1%の範囲の量の、ビタミンEである酸化防止剤と、
塩、防腐剤及び緩衝剤のうちの1つ又は2つ以上を任意に含む水系包装用溶液と、を含む、実施態様19に記載の組成物。
【0158】
(21) 前記水性デリバリーシステムが、界面活性剤、乳化剤、湿潤剤、キレート剤及び酸化防止剤のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施態様1に記載の組成物。
(22) 前記水性デリバリーシステムが、ポリソルベート80(polysorbate 80)(商標)、チロキサポール(Tyloxapol)(商標)、メチルグルセス‐20(methyl gluceth-20)、ビタミンE、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1つ又は2つ以上の成分を含む、実施態様1に記載の組成物。
(23) 前記一価アルコールの化学式が、CH
3−(CH
2)
z−OHであり、式中、zは0〜5である、実施態様1に記載の組成物。
(24) 前記エステルが以下の構造を有し、
CH
3−CH
2−CH=CH−(CH
2−CH=CH)
n−(CH
2)
x−CO−O−R
又は、前記アミドが以下の構造を有し、
CH
3−CH
2−CH=CH−(CH
2−CH=CH)
n−(CH
2)
x−CO−NH−R
式中、
nは2、3、4又は、5であり、
xは2、3、4、5、6又は、7であり、
Rは、yが0以上である−(CH
2)
y−CH
3を含む、眼科的に適合する脱離基である、実施態様1に記載の組成物。
(25) yが1である、実施態様24に記載の組成物。
【0159】
(26) 前記抗炎症脂質メディエーターが、ω−3脂肪酸、ω−6脂肪酸、又はω−3脂肪酸及びω−6脂肪酸の両方を含む、実施態様1に記載の組成物。
(27) 前記ω−3脂肪酸が、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、テトラコサペンタエン酸及びテトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)、誘導体、代謝産物並びにこれらの混合物からなる群から選択され、
前記ω−6脂肪酸が、リノール酸、γ−リノレン酸(GLA)、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)、ドコサジエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様26に記載の組成物。
(28) 前記エステルが、アミドエステルを形成するための脂肪酸とアミンの反応生成物である、実施態様1に記載の組成物。
(29) 眼又はコンタクトレンズに投与するための、実施態様1に記載の組成物を含む無菌製剤、溶液、ゲル、軟膏、乳剤又はストリップ。
(30) 眼の病状を治療するための眼用組成物を調製する方法であって、実施態様1に記載の組成物を提供することと、前記眼用組成物を形成することと、を含む、方法。
【0160】
(31) 炎症性の眼の状態、ドライアイ又は炎症性の眼の状態及びドライアイの両方の予防を必要とする個体における、それらの予防方法であって、治療的に有効な量の実施態様1に記載の組成物を、前記個体の眼の表面へ供給することを含む、方法。
(32) 前記組成物における前記エステルの濃度が、0.025重量%〜5.0重量%の範囲にある、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記供給工程が、実施態様1に記載の組成物を含む点眼液を投与することを含む、実施態様31に記載の方法。
(34) 前記供給工程が、前記眼の表面にコンタクトレンズを位置決めすることを含み、前記コンタクトレンズが前記組成物中に浸漬又は水和させられた、実施態様31に記載の方法。
(35) ドライアイの症状を緩和する方法であって、前記症状に苦しむ患者の少なくとも一方の眼を緩和するために、治療的に有効な量の実施態様1に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0161】
(36) ドライアイの症状を軽減する方法であって、前記症状に苦しむ患者の少なくとも一方の眼に、治療的に有効な量の実施態様1に記載の組成物を投与することを含む、方法。
(37) 眼の病状の治療方法であって、眼用装置から、抗炎症脂質メディエーターと一価アルコールの反応生成物である、治療的に有効な量の前記抗炎症脂質メディエーターのエステルを、ドライアイ、マイボーム腺機能不全、眼瞼炎、アトピー性角結膜炎、コンタクトレンズに関連するドライアイ、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、黄斑変性症、及びそれらの組み合わせの治療を必要とする、少なくとも一方の眼に対して、供給することを含む、方法。
(38) 前記眼用装置が、コンタクトレンズである、実施態様37に記載の方法。
(39) 前記エステルが、エステル化多価不飽和脂肪酸、エステル化レゾルビン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化プロテクチン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化リポキシン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化プロスタグランジン又はその代謝的に安定な類縁体、エステル化レチノイン酸、エンドカンナビノイド、これらの代謝産物、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様37に記載の方法。
(40) 炎症性の眼の状態、ドライアイ又は炎症性の眼の状態及びドライアイの両方との闘病を必要とする個体における、それらとの闘病方法であって、治療的に有効な量の実施態様1に記載の組成物を、前記個体の眼の表面へ供給することを含む、方法。