(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本発明の基礎となった知見)
近年の表示装置、特に液晶ディスプレイ、及び、液晶を用いたプロジェクターなどの分野においては、画質改善のためにバックライトスキャンと呼ばれる技術が採用されている。ここで、バックライトスキャンとは、液晶の反応速度の遅さと、ホールド型による動画ボケを改善するバックライト制御方法であり、表示画面をいくつかの領域(バックライト領域)に分割し、その領域毎に定期的に順次点灯するようバックライトの発光を制御する。より具体的には、バックライトスキャンとは、バックライト消灯期間を設け、各バックライト領域において、周期的に行う消灯期間(ブランキング期間)のタイミングを異なるようにした制御方法である。一般的にブランキング期間のタイミングを液晶の走査タイミングに合うように制御されることが多い。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、可視光通信では、バックライトの点滅により可視光通信信号を重畳する方法をとる。そのため、バックライトの消灯時間中は可視光通信信号の送信ができず、また、この停止期間が信号の伝達ミスの要因となるため、バックライトスキャンをやめて画質を低下した状態で通信を行うしかなかった。
【0010】
そこで、本開示は、表示画像の画質を大きく劣化させることなく可視光通信信号を出力すること、かつ、出力した可視光通信信号の受信ミスを低減することができる表示装置を提供する。
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施の形態)
以下、
図1〜8を用いて、実施の形態を説明する。
【0014】
[1.構成]
図1は、実施の形態にかかる可視光通信システムの一例を示す概略図である。
【0015】
[1.1可視光通信システムの構成]
図1に示す可視光通信システム10は、表示装置100と、スマートフォン200とを備える。
【0016】
表示装置100は、例えばテレビであり、表示面110に映像を表示することができる。また、表示装置100は、表示面110に、可視光通信信号を重畳することもできる。
【0017】
スマートフォン200は、可視光通信信号を受信する電子機器の一例であり、表示装置100から送信された可視光通信信号を受信することができる。これにより、スマートフォン200のユーザーは、表示装置100に表示されている映像に関連する情報などを受け取ることができる。
【0018】
なお、本実施形態では、表示装置100は、映像を表示するモニターを例に挙げて説明するが、それに限らない。表示装置100は、プロジェクターのように映像を投影する機器であってもよい。また、表示装置100が出力した可視光通信信号を受信する電子機器としてスマートフォン200を例に挙げているが、可視光通信信号を受信できる電子機器であればスマートフォンには限られない。例えば、電子機器は、JEITA−CP1222に準拠した受信装置であってもよい。また、この電子機器は、スマートフォンに限らず一般的な携帯端末であってもよい。また、電子機器は、可視光通信信号を受信し、受信した可視光通信信号をデコードすることで情報を得るとしてもよい。
【0019】
また、可視光通信信号を伝達する情報伝達方式は、現在国際規格へ展開中のJEITA−CP−1223、或いは作成済みのIEEE−P802.15などの規格に準拠するとしてもよい。換言すると、電子機器は、これらの規格に対応した受信装置を用いて構成されるとしてもよい。
【0020】
[1.2.表示装置の構成]
図2は、本実施の形態にかかる表示装置の表示面を示す概略図である。
【0021】
図2に示す表示装置100の表示面110に映像を表示する際、バックライトスキャンにより複数の領域毎にバックライトの発光が制御される。
図2では、表示面110が領域111〜114の4つの領域に分割された状態の例を示している。
【0022】
本実施の形態では複数の領域のうちの1つの領域111を、可視光通信に基づく発光を優先的に行う領域(可視光通信領域)として用いる。詳細は後述するためここでの説明は省略する。
【0023】
図3は、本実施の形態にかかる表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
図3に示す表示装置100は、可視光通信信号を出力可能な表示装置であって、映像信号入力部120と、映像処理部130と、表示制御部140と、表示パネル150と、可視光通信信号入力部160と、可視光通信信号処理部170と、バックライト制御部180と、バックライト190と、を有する。
【0025】
映像信号入力部120は、表示パネル150に表示される映像に関する映像信号が入力される。映像信号入力部120は、入力された映像信号を、映像処理部130に送信する。
【0026】
映像処理部130は、映像信号に対して画質の処理などの一般的な画像処理を施す。映像処理部130は、画像処理を施した映像信号を、表示制御部140および可視光通信信号処理部170に送信する。ここで、映像信号には、映像の明るさ等に関する情報が含まれている。
【0027】
表示パネル150は、例えば液晶パネルであり、映像を表示する表示面110を有する。
【0028】
表示制御部140は、映像信号に基づいて表示パネル150の表示面110に映像を表示するよう表示パネル150を制御する。本実施の形態では、表示制御部140は、映像処理部130から送信された映像信号に基づいて表示パネル150に映像を表示するよう制御する。より具体的には、表示制御部140は、映像処理部130から送信された映像信号に基づいて表示パネル150の液晶の開口制御等を行う。また、表示制御部140は、映像処理部130から送信された映像信号に基づいて、可視光通信領域および可視光通信領域以外の領域に対応する表示面110の領域に映像を表示するよう表示パネル150を制御する。
【0029】
可視光通信信号入力部160は、可視光通信に用いられる信号(以下、可視光通信信号と称す)が入力される。可視光通信信号入力部160は、入力された可視光通信信号を、可視光通信信号処理部170に送信する。
【0030】
可視光通信信号処理部170は、受信した可視光通信信号の符号化や可視光通信信号のデューティ比の処理などを行う。また、可視光通信信号処理部170は、映像処理部130から映像信号を受信する。また、可視光通信信号処理部170は、映像信号に含まれる映像の明るさ等に関する情報に基づいて、例えば
図2に示す表示面110を分割する複数の領域のうち、どの領域を可視光通信領域として用いるかを決定する。つまり、可視光通信信号処理部170は、複数の領域のうちの少なくとも1つの領域を可視光通信領域として決定する。ここで、可視光通信信号処理部170は、例えば、表示面110内で最も明るい映像が表示される領域を可視光通信領域として設定してもよいし、分割された表示面110の複数の領域のうちの表示面110の端部を含む領域を可視光通信領域として設定してもよい。
【0031】
可視光通信信号処理部170は、符号化された可視光通信信号、可視光通信領域に関する情報および映像信号を、バックライト制御部180に送信する。
【0032】
なお、可視光通信信号処理部170は、可視光通信領域の場所があらかじめ決められている場合は、上述した可視光通信領域の決定に関する処理は行わなくてもよい。この場合、映像信号は映像処理部130から直接バックライト制御部180に送信するとしてもよい。
【0033】
バックライト制御部180は、バックライト190の発光面を複数の領域に分割し、映像信号に基づいて、複数の領域それぞれにおいて発光の制御を行い、発光面の複数の領域それぞれにおいて異なるタイミングで消灯の期間を設ける制御を行う。バックライト制御部180は、表示装置100が可視光通信信号を出力する期間には、分割された発光面の複数の領域のうちの少なくとも1つの領域である可視光通信領域において、映像信号に基づく発光の制御に代えて可視光通信信号に基づく発光の制御を行い、可視光通信信号を出力しない期間には、可視光通信領域において、映像信号に基づく発光の制御を行う。ここで、例えば、バックライト制御部180は、可視光通信信号を出力する期間には、分割された複数の領域のうちの表示面110の端部に対応する少なくとも1つの領域(バックライト190の発光面における少なくとも1つの領域)を、可視光通信領域として、可視光通信信号に基づく発光の制御を行うとしてもよい。
【0034】
本実施の形態では、バックライト制御部180は、映像処理部130又は可視光通信信号処理部170から送信される映像信号に基づいて生成したバックライト制御信号によりバックライト190の輝度やタイミングを制御する。また、バックライト制御部180は、可視光通信信号処理部170から送信される可視光通信信号に基づいて、バックライト190の発光を制御する。
【0035】
バックライト190は、表示パネル150に対して背面側から光を照射する。より具体的には、バックライト190は、表示パネル150の表示面110を背面から照明する発光面を有する。これにより、視聴者は、表示パネル150に表示されている映像を視認することができる。
【0036】
バックライト190の発光面は複数の領域に分割されており、その領域毎に順次発光制御を行うことでバックライトスキャンを実現することができる。本実施の形態では、発光面の複数の領域は、表示面110の複数の領域に対応する。すなわち、発光面の複数の領域のうちの少なくとも1つの領域を可視光通信領域として用いる。この可視光通信領域では、可視光通信信号に基づく発光は行われるが、映像信号に基づく発光は行われない。すなわち、映像信号に可視光通信信号が重畳しない状態になるので、可視光通信信号を欠落することなく送信することができる。
【0037】
なお、表示パネル150は、上述したように、可視光通信領域にも映像を表示している。そして、表示パネル150における可視光通信領域では映像信号に基づく発光は行われず、可視光通信信号に基づく発光が行われる。すなわち、可視光通信領域に表示されている映像は、可視光通信信号に基づく光により照明される。そのため、視聴者は、表示パネル150の表示面110全体の映像を視認することができる。
【0038】
しかしながら、可視光通信領域に表示される映像は、可視光通信信号に基づく光により照明され、映像信号により示される適切な輝度で映像が表示されないので、その可視光通信領域だけ他の領域よりも暗くなってしまう恐れがある。
【0039】
そこで、表示パネル150が液晶パネルの場合は、液晶の開口を制御することで輝度を調整できるので、これを利用するとしてもよい。すなわち、表示制御部140は、可視光通信領域に対して、映像信号を入力したときよりも輝度が高くなるように表示パネル150を制御するとしてもよい。より具体的には、表示制御部140は、表示装置100が可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域に対応する表示面110の領域111(可視光通信領域)に対して、映像信号に基づいて映像を表示したときの輝度よりも高い輝度となるように表示パネル150を制御するとしてもよい。
【0040】
なお、符号化された信号の二種類の強度比を変調率と呼ぶ。一般的に変調率は100%の場合に最もS/Nがよいが、特に可視光通信などの場合には、チラつきが人の目で見て判り易くなる等の課題も存在する。ここでは、符号化された可視光通信信号は、変調率100%のON/OFF(点灯/消灯)として記載しているが、変調率が100%でない、High/Lowの変調を用いてもよい。例えば、100%/10%や、80%/30%など、High/Lowの関係に特に制限はなく、High>Lowであればよい。以下の記載におけるON/OFF(点灯/消灯)は、High/Lowなどのように読み替えて実施してもよい。また、可視光通信信号のデューティ比も単に、ON(点灯)期間を信号送信期間全体で規格化した値として取り扱っているが、(Highレベル×High期間+Lowレベル×Low期間)/(信号送信期間×Highレベル)と呼応して読み替えて実施してもよい。
【0041】
[2.表示装置の動作]
次に、以上のように構成された表示装置100のバックライト190の制御について説明する。
【0042】
[2.1.比較例]
図4は、映像表示のためのバックライト信号に、可視光通信信号を重畳した状態の一例を示す概略図である。
図4の(a)には、例えば、JEITA CP−1222に準拠した可視光通信信号の一例が示されており、
図4の(b)には、バックライト制御信号の一例が示されている。
図4の(c)には、
図4の(a)の可視光通信信号を
図4の(b)のバックライト制御信号に重畳した場合が示されている。
【0043】
図4の(c)に示すように、
図4の(b)に示すバックライト制御信号に、
図4の(a)に示す可視光通信信号を重畳した場合、期間t11〜期間t14及び期間t15〜期間t18のバックライト制御信号が送信されない期間(バックライト190が消灯している期間)には、期間t11〜期間t14及び期間t15〜期間t17の可視光通信信号(図の信号c1及び信号c2)がバックライト制御信号に重畳できない。そのため、可視光通信号のうち信号c1及び信号c2は欠落することになり、表示装置100の可視光通信が適切に行われない恐れが生じる。
【0044】
[2.2.バックライト制御]
そこで、本実施の形態では、可視光通信をバックライト制御信号に重畳させるのではなく、可視光通信を優先的に行う領域(可視光通信領域)を設定する。
【0045】
図5A及び
図5Bは、本実施の形態にかかる信号制御を説明するための概略図である。
【0046】
図5Aには本実施の形態にかかる可視光通信信号とバックライト制御信号の一例が示されている。
【0047】
本実施の形態では、バックライトスキャンを行うため、バックライト190は
図2に示す4つの領域111〜114に対応する領域に分割されて制御される。ここで、
図5Aに示すバックライト制御信号A〜Dはそれぞれ、領域111〜114に対応する領域のバックライトの制御信号である。したがって、バックライト制御部180は、可視光通信信号を受信しない場合または表示装置100が可視光通信を出力しない場合には、これらの各バックライト制御信号A〜Dに従って、異なるタイミングで順次バックライト190のON/OFF(High/Low)の制御(発光制御)を行う。
【0048】
図5Bには本実施の形態にかかるバックライト制御の一例が示されている。より具体的には、
図5Bには、領域111に対応する領域が可視光通信領域として選択された場合のバックライトスキャンが示されている。
【0049】
本実施の形態では、
図5Bに示すように、領域111に対応する領域(可視光通信領域)においては、バックライト制御信号Aに可視光通信信号を重畳させるのではなく、可視光通信信号に基づくバックライト190の発光制御のみを行い、映像信号に基づくバックライト190の発光制御を行わない。つまり、バックライト制御部180は、可視光通信信号のみに基づいて、バックライト190の発光を制御する。
【0050】
一方、領域112〜114に対応する領域においては、各領域に対応したバックライト制御信号B〜Dを用いたバックライトスキャンが行われる。つまり、バックライト制御部180は、バックライト制御信号B〜Dに基づいて、バックライト190の発光の制御を行い、かつ、消灯の制御を行う。
【0051】
このようにして、本実施の形態にかかる表示装置100は、領域111に対応する領域(可視光通信領域)において、バックライトスキャンによって本来消灯される期間にも、可視光通信信号を優先して出力することができる。より具体的には、本実施の形態にかかる表示装置100は、可視光線通信信号を送信する期間には、本来のバックライトスキャンでは消灯される期間であってもバックライト190を点灯させ、可視光線通信信号を送信しない期間にはバックライト190を消灯する制御を行う。
【0052】
本実施の形態では、可視光通信信号のHighとLowはバックライト190の点灯と消灯との制御に対応するため、バックライト190の制御をしている制御系(バックライト制御部180)に可視光通信信号を
図5Bに示すようにそのまま導入している。
【0053】
なお、本実施の形態では、バックライト190の光源として、LED(Light Emitting Diode)を使用したものを用いることで、ON状態からOFF状態への立ち上がりを速くすることができる。
【0054】
また、バックライト190の光源として、従来から使用されている冷陰極管などを使用するとしてもよい。この場合には、非点灯状態からの点灯、或いは点灯状態からの消灯に時間が掛かるため、LEDのようなON−OFFで対応するのではなく、冷陰極管に流す電流量を大小させてHigh−Lowの区別をつけるとしてもよい。また、冷陰極管は高い周波数で駆動されることから、その周波数を変更することでHigh−Lowの区別をつける対応を行ってもよい。なお、LEDにおいて、電流の制御などによる制御を行ってもよい。この場合には、ON/OFFではなく、さらなる上位概念として、High/Lowによる制御を行うことができる。
【0055】
なお、このような機能を実現するため、本実施の形態の表示装置100は、可視光通信信号の変調信号を作成する可視光通信信号処理部170とバックライトスキャンの制御を行うバックライト制御部180とを独立して具備している。
【0056】
[3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、表示装置は、可視光通信信号を出力可能な表示装置(100)であって、映像を表示する表示面(110)を有する表示パネル(150)と、映像信号に基づいて表示パネル(150)の表示面(110)に映像を表示するよう表示パネル(150)を制御する表示制御部(140)と、表示パネル(150)の表示面(110)を背面から照明する発光面を有するバックライト(190)と、バックライト(190)の発光面を複数の領域に分割し、映像信号に基づいて、複数の領域それぞれにおいて発光の制御を行い、かつ、複数の領域それぞれにおいて異なるタイミングで消灯の期間を設けるバックライト制御部(180)とを備える。バックライト制御部(180)は、可視光通信信号を出力する期間には、分割された複数の領域のうちの少なくとも1つの領域である可視光通信領域において、映像信号に基づく発光の制御に代えて可視光通信信号に基づく発光の制御を行い、可視光通信信号を出力しない期間には、可視光通信領域において、映像信号に基づく発光の制御を行う。
【0057】
この構成により、表示画像の画質を大きく劣化させることなく可視光通信信号を出力すること、かつ、出力した可視光通信信号の受信ミスを低減することができる表示装置を提供することができる。
【0058】
また、表示制御部(140)は、映像信号に基づいて、可視光通信領域および可視光通信領域以外の領域に対応する表示面(110)の領域に映像を表示するよう表示パネル(150)を制御するとしてもよい。
【0059】
また、表示制御部(140)は、可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域に対応する前記表示面(110)の領域に対して、映像信号に基づいて映像を表示したときの輝度よりも高い輝度となるように表示パネル(150)を制御するとしてもよい。
【0060】
この構成により、表示面(110)を明るくすることができ、可視光通信信号の通信ミスが減少することができる。
【0061】
なお、表示制御部(140)は、可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域に対応する表示面(110)の領域に対して、映像信号に基づいて映像を表示したときの輝度よりも低い輝度となるように表示パネル(150)を制御するとしてもよい。
【0062】
この構成により、映像信号に基づくデューティが、通信信号のデューティよりも低い場合には輝度が低くなる場合には、表示面(110)を暗くすることができ、可視光通信信号の通信ミスが減少することができる。
【0063】
また、バックライト制御部(180)は、可視光通信信号を出力する期間には、分割された複数の領域のうちの表示面(110)の端部に対応する少なくとも1つの領域を、可視光通信領域として、可視光通信信号に基づく発光の制御を行うとしてもよい。
【0064】
この構成により、表示面(110)の端部で可視光通信信号を通信することで、可視光通信信号を出力する表示面の領域が目立ちにくいので、表示面(110)を明るくするなどの補正を少なくすることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、表示装置100は可視光通信信号を絶えず出力するとしてもよいし、1つ以上の特定の期間に出力するとしてもよい。ここで、特定の期間に出力する場合は、特定の期間の開始と終了を伝える信号を発生する機器を具備してもよい。この場合、可視光通信信号処理部170およびバックライト制御部180は、期間が開始する信号を受け取ると、可視光通信信号を送信する制御に切り替え、特定の期間が終了する信号を受け取ると、通常のバックライト制御を行うように切り替える機構を具備するとしてもよい。上記機器または機構としては、スイッチングの立ち上がりなどを考慮すると、例えば固体半導体素子を用いたスイッチングを行える素子を用いることが望ましい。
【0066】
また、本実施の形態では、表示装置100の表示面110の最上部に相当する領域111に可視光通信信号を優先して出力する構成にしたがそれに限らない。
【0067】
例えば、可視光通信信号を優先して出力する領域は、表示面110の少なくとも1つの領域であればよい。また、出力する領域は、例えば信号伝達の精度を優先する場合には上記の領域111よりも広い領域であってもよいし、画質を優先する場合には、バックライトスキャンの最小単位のうちの、できるだけ狭い領域であってもよい。また、人の目が表示面110の中心部付近を注視しようとする傾向があることなどを勘案して、表示装置100の表示面110の両端部の領域を使用するとしてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、表示面110の複数の領域のうちひとつの領域にひとつの可視光通信信号を送信する場合について説明を行ったが、これに限らない。
【0069】
例えば、表示面110における複数の領域のうちの複数領域(全部の領域でない複数領域)において、可視光通信信号を送信するとしてもよい。ここで、連続しない複数領域において、別の可視光通信信号を独立して送信することも可能である。この場合、表示装置100は、可視光通信信号の変調信号を作成する回路を二つ以上具備し、各可視光通信信号を送信する領域のバックライトスキャンの制御回路とタイミングを合わせればよい。
【0070】
また、実施の形態では、可視光通信領域を1つ設定したが、これに限定するものではない。ひとつ以上の可視光通信領域を設け、複数の可視光通信信号を各可視光通信領域に重畳してもよい。この場合、映像信号はそれぞれの可視光通信信号に関連した映像を流し、可視光通信信号を送信していることを示唆する内容の映像を送るとしてもよい。これにより、可視光通信信号が出力されていない、表示画像(映像)の画質が劣化しているなどの誤解を軽減する効果が得られ、複数信号の取り扱いやユーザーの間違いの減少を図ることができる。可視光通信信号に関連した映像としては、信号のSN比が取れるできるだけ開口率の高い映像、即ち、白の輝度が高い信号を利用すればよい。これにより、可視光通信信号の通信ミスは激減することができる。このようにして、表示装置100は、表示面110のどの領域から可視光通信信号が送信されているかを表示することができ、表示された領域であって可視光通信信号が送信されている領域に受光機を向けるよう誘導することができ、更なる通信精度改善につながる。
【0071】
上述のような制御を行うことで、画質の改善と通信精度の向上を実現することができる。
【0072】
なお、可視光通信が送信されている領域の輝度は、ブランキング期間においても一定量の発光をさせるため、低諧調の表示に関して白浮きしたような現象が見られる。さらには、それが隣接する領域間で平均的な輝度の差が大きくなることにより、境目が見えるような映像になってしまうこともある。
【0073】
これを防ぐため、以下の変形例で説明する映像信号および/または可視光通信信号に基づくデューティを変更する制御を行うことで、更なる画質改善を行うとしてもよい。
【0074】
(変形例1)
本変形例では、可視光通信が送信されている領域(例えば
図2の領域111)、またはそれに隣接する領域(例えば
図2の領域112)に対応するバックライト190の領域および/またはバックライト190の領域の映像信号に基づくデューティを以下のように変更する制御を行うとしてもよい。以下、
図6を用いて、映像信号および/または可視光通信信号に基づくデューティを変更する具体的な制御の一例について説明する。
【0075】
図6は、変形例1にかかる信号制御を説明するため概略図である。
図6の(a)は可視光通信信号のデューティを変化させる前の可視光通信信号を示す概略図であり、
図6の(b)は可視光通信信号のデューティを変化させた状態の可視光通信信号を示す概略図である。
【0076】
つまり、
図6の(a)に示す可視光通信信号の時刻t22の立ち下りのタイミングを、
図6の(b)に示す時刻t21に早めたり、
図6の(a)に示す可視光通信信号の時刻t23の立ち下りのタイミングを
図6の(b)に示す時刻t24に遅らせたりすることで、可視光通信信号のパルスのHigh期間を変更する(通信信号のデューティを変更する)ことができる。
【0077】
なお、映像によるバックライトのデューティが、可視光通信信号のデューティよりも大きい場合には、可視光通信が送信される領域の平均的な可視光通信信号のデューティを下げる信号制御ではなく、可視光通信信号が送信される領域と隣接する領域の平均的なデューティを上げる信号制御を行うとしてもよい。また、逆に、バックライトの制御として省電力モードなどで全体的な映像信号に基づくバックライトのデューティが可視光通信信号のデューティよりも小さい場合などでは、可視光通信が送信される領域の平均的なデューティを下げる信号制御を行うとしてもよい。
【0078】
[本変形例の効果等]
以上のように、本変形例において、バックライト制御部(180)は、さらに、可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域における平均的なデューティと、可視光通信領域に隣接する領域における映像信号に基づくデューティとの差に応じて、可視光通信領域における平均的なデューティおよび/または可視光通信領域に隣接する領域における映像信号および/または可視光通信信号に基づくデューティを変化させるとしてもよい。
【0079】
この構成により、可視光通信領域と当該可視光通信領域以外の領域との輝度(明るさ)の差をバックライト制御により緩和することができる。
【0080】
それにより、可視光通信の信号が送信されない状態の輝度に近づける信号制御することができるので、実施の形態1の制御による画質の改善と通信精度の向上とに加えて、更なる画質改善を行うことができる。
【0081】
ここで、バックライト制御部(180)は、可視光通信領域における該当する1フレーム当たりの平均的なデューティを可視光通信領域に隣接する領域における映像信号に基づく平均的なデューティに近づけるように、可視光通信領域における映像信号および/または可視光通信信号に基づくデューティを変化させるとしてもよい。
【0082】
これにより、可視光通信信号が送信されない場合にブランキング期間であった期間には、可視光通信信号が送信される領域と隣接する領域の映像信号のデューティはそのままにして、可視光通信が送信される領域の該当する1フレーム当たりの平均的なデューティを下げて、可視光通信の信号が送信されない状態の輝度に近づける制御することができる。
【0083】
また、バックライト制御部(180)は、可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域においては、可視光通信信号に基づく発光の制御を行い、可視光通信領域以外の各領域においては、さらに、可視光通信領域に対応する表示面(110)の領域の輝度と、可視光通信領域以外の領域に対応する表示面(110)の領域との輝度の差を小さくするよう、それぞれ異なるタイミングで発光および消灯を行う制御を行うとしてもよい。
【0084】
これにより、可視光通信信号が送信されない場合にブランキング期間であった期間には、可視光通信信号が送信される領域と隣接する領域の該当する1フレーム当たりの平均的なデューティをあげる制御を行うことができる。
【0085】
なお、バックライト制御部(180)は、可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域においては、可視光通信信号に基づく発光の制御を行い、可視光通信領域以外の各領域においては、さらに、可視光通信領域に対応する表示面(110)の領域の輝度と、可視光通信領域以外の領域に対応する表示面(110)の領域との輝度の差を小さくするよう、それぞれ異なる電流を与えて制御を行うとしてもよい。
【0086】
これにより、デューティ制御ではなく電流制御によって輝度をそろえることができる。
【0087】
(変形例2)
図7は、変形例2にかかる信号制御を説明するため概略図である。
【0088】
すなわち、
図7に示すように、バックライト制御信号がON状態である期間1および期間3においては、通信信号のデューティが大きな可視光通信信号を対応するバックライト190の領域に入力し、バックライト制御信号がOFF状態である期間2および期間4においては、デューティの小さな信号に対応するバックライト190の領域に入力するよう制御してもよい。このような制御によってもまた、可視光通信信号領域におけるデューティを変更することができる。
【0089】
[本変形例の効果等]
以上のように、本変形例の表示装置によれば、可視光通信の信号が送信されない状態の輝度に近づける信号制御することができるので、実施の形態1の制御による画質の改善と通信精度の向上とに加えて、更なる画質改善を行うことができる。
【0090】
(変形例3)
さらに、以下のような制御により可視光通信信号のデューティを変更する制御を行うとしてもよい。
【0091】
まず、例えば、スマートフォン200などの受信機側では、一定の期間で定期的に送信されたスロット(所定時間)ごとのON/OFF信号(High/Low信号)をそのまま受信できるとし、さらにスロットの期間は一定であり変更されないとする。この場合、受信機側では、送信された可視光通信信号のパルスの立ち上がり或いは立ち下りだけを検出し、検出した立ち上がり或いは立ち下がりのタイミングが元々のスロット時間としてどの位置(時間位置)に相当しているかを判断する。これにより、その該当するスロットがON信号なのか、OFF信号なのかを判断することができる。
【0092】
以下、表示装置100側において、
図8を用いて本変形例にかかる映像信号および/または可視光通信信号に基づくデューティを変更する具体的な制御の一例について説明する。
【0093】
図8は、変形例3にかかる信号制御を説明するための概略図である。
図8の(a)には可視光通信信号の立ち下がりのタイミングを変化させる前の可視光通信信号71の一例が示されており、
図8の(b)には可視光通信信号の立ち下がりのタイミングを変化させる前の可視光通信信号72の一例が示されている。
【0094】
表示装置100は、例えば、受信機側がパルスの立ち上がりだけを捉える場合には、スロット時間の期間において、
図8の(a)の時刻t42、時刻t44および時刻46まで可視光通信信号71を点灯(ON信号)させず、
図8の(b)の時刻t41、時刻t43および時刻45などの途中で可視光通信信号72を消灯(OFF信号に)させる制御を行うとしてもよい。つまり、本変形例では、
図8に示すように、可視光通信信号72は、可視光通信信号71の立ち下がりのタイミングを早める制御を行うことにより、可視光通信信号72における消灯期間は可視光通信信号71における消灯期間より長くすることができる。
【0095】
なお、上記では、バックライト190のPWMを利用した輝度の制御を行うことで、面内の均一性、画質の劣化防止を説明してきたが、これに限らない。バックライト制御部180は、各領域のバックライト190に供給する電流を制御することで、可視光通信領域における輝度を可視光通信領域以外の領域における輝度に近づけてもよい。さらに、バックライト190のPWM制御と、電流制御の組合せによって可視光通信領域における輝度を可視光通信領域以外の領域における輝度に近づけてもよい。
【0096】
[本変形例の効果等]
以上のように、本変形例において、バックライト制御部(180)は、さらに、可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域における輝度を可視光通信領域以外の領域における輝度に近づけるように可視光通信信号のパルスのハイ期間を変更するとしてもよい。
【0097】
ここで、バックライト制御部(180)は、可視光通信信号の立ち下りまたは立ち上がりのタイミングを変更することで、可視光通信信号のパルスのハイ期間を変更するとしてもよい。
【0098】
バックライト制御部(180)は、さらに、可視光通信信号を出力する期間には、可視光通信領域における平均的なデューティと、前記可視光通信領域に隣接する領域における映像信号に基づく平均的なデューティの差に応じて、前記可視光通信領域における平均的なデューティと前記可視光通信領域に隣接する領域におけるデューティを変化させるとしてもよい。
【0099】
バックライト制御部(180)は、前記可視光通信領域における平均的なデューティを前記可視光通信領域に隣接する領域における映像信号に基づく平均的なデューティに近づけるように、前記可視光通信領域におけるデューティを変化させるとしてもよい。
【0100】
これにより、1フィールドに亘るデューティを下げることができ、隣接する領域の点灯率が小さいときにより自然な変化をつけることが可能となる。
【0101】
また、本来ブランキング期間にあたっている時間帯においても、上記のような制御を行うことにより、元々の信号を送信しない映像の画質に近いものにすることができる。
【0102】
なお、可視光通信信号を送信する領域と隣接する領域の点灯率が非常に高い時間帯であり、受信機側がパルスの立ち下がりだけを捉える場合には、上記とは逆に立ち上がりのタイミングを早めることでデューティを上げることができる。これにより、隣接する領域間の輝度差を軽減することができる。
【0103】
また、バックライト制御部は、各領域のバックライトに供給する電流を制御することで、可視光通信領域における輝度を可視光通信領域以外の領域における輝度に近づけてもよい。
【0104】
このように、本変形例における制御を行うことにより、平均的な輝度が複数の領域毎に極端に変化しないように制御することが可能である。また、画面全体で見たときの制御信号が入ることによる不連続領域が減少し、自然な画像を提供することができる。すなわち、本変形例の信号制御の方法によれば、隣接する領域の発光強度が可視光通信領域の発光強度よりも強いか弱いかに応じて、可視光通信信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングを通常より短くしたり長くしたりすることができるので、隣接する領域間の輝度差を低減させることができる。
【0105】
なお、本変形例の信号制御を実現するためには、以下のような方法を用いればよい。
【0106】
まず、可視光通信を送信する領域およびこれに隣接する領域の映像と、バックライトスキャンおよび可視光通信信号による輝度とを、画面フレームごとに計算する。次に、さらに隣の領域との差も鑑みて不自然に不連続にならない1フィールドに亘る平均的なデューティを求め、可視光通信を送信する領域およびこれ隣接する領域の間の1フィールドに亘る平均的なデューティを決定する。次に、一個の1フィールドに亘るデューティから点灯時間を長く或いは短くする時間を計算し、その時間の経過によって信号を強制的にON状態に立ち上げるまたはOFF状態に立ち下げるよう制御する。
【0107】
このような方法(動作)を実現する機構を備えることで、信号転送の精度を落とすことなく、また画質の大きな劣化もなく、映像信号とは別の通信信号を供することのできるモニターを提供することが可能となる。
【0108】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0109】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0110】
例えば、画像信号との更なる重畳や、バックライトスキャンの順序を変えて対応するなどの方法を加えるとしてもよい。以下、
図9Aおよび
図9Bを用いて、他の実施の形態の動作の一例について説明する。
【0111】
図9Aおよび
図9Bは、他の実施の形態にかかるバックライト制御の一例を示す概略図である。
図9Aおよび
図9Bには、表示面を8つの領域に分割した場合のバックライトスキャンの方法が示されており、バックライト制御信号A〜Hは、分割した8つの領域それぞれに対応するバックライト制御信号を示している。
【0112】
従来、バックライトスキャンでは、画像のデータを書き込む際の無駄な時間帯をブロック分けしており、コントラスト向上のために、該当時間においてバックライトを消灯する制御を行っていた。
【0113】
しかし、実際には隣接する領域からの漏れ光が相当ある。そのため、隣接する領域からの漏れ光を利用してバックライトスキャンのブランキング期間を補完することができるとも考えられるが、不都合が生じる。
【0114】
具体的には、順次スキャンの場合には、
図9Aの円で囲んだ部分X1、X2、X3およびX4で示すように、隣接する領域が連続してブランキング期間となる場合は、可視光通信信号の欠落が発生してしまう。そのため、可視光通信信号の転送においてスロット区切りとの関連付けが不明確になるなどの不都合が発生する。
【0115】
そこで、
図9Bに示す両矢印Y1、Y2、Y3およびY4で示すように、少なくとも隣接する領域には必ずON状態のバックライト制御信号が存在し、ブランキング期間は連続させように、画像データのスキャニングの順序を変更する制御を行うとしてもよい。これは、単独でも効果は認められるが、上記実施の形態と合わせても充分にその効果を発揮することができる。
【0116】
なお、以上の実施の形態において、それぞれの一つの符号化された信号は、一つの信号として記載しているが、更に、人の目で見た際のチラツキを軽減するために、一つの信号内を2つ以上の副搬送波による高周波パルスの集合体として発光させてもよい。
【0117】
そこで、他の実施の形態として、更に、可視光通信信号のデューティ比も適宜変更するとしてもよい。また、副搬送波の暗い期間については、消灯ではなく、点灯時よりも暗い発光状態にするとしてもよい。
【0118】
また、一般的なディスプレイの特徴として、ガンマ補正がなされており、2.2の値或いは、デジタル放送信号の場合には、2.4の値で補正されている場合がある。しかし、特に、上記の実施の形態で示した可視光通信信号を重畳しようとする際には、中間階調において、その輝度が高くなるよう、ガンマ補正の値をより高い、2.4〜2.8程度に設定するとしてもよい。これにより可視光通信信号の送信エラーをより減少させる効果を奏することができる。
【0119】
具体的には、他の実施の形態として、ガンマ補正値をAPL(Average Picture Level)により自動的に或いは予め設定されていた通りに制御するとしてもよい。更には、映像信号自身が非常に暗く、信号送信をしても、受信側の性能不足によりエラー発生が予測される際には、信号を一時中断するなどしてもよい。信号については、画面の性質に関わらず、片方向通信であることを考慮すると、同じ信号を2回以上繰り返して送信し、受信時に発生するエラーを回避する対策を採ることも効果がある。
【0120】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0121】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0122】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。