(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明のワイパ装置を示す斜視図を、
図2はノズルユニットの周辺を表側から見た拡大斜視図を、
図3はノズルユニットの周辺を裏側から見た拡大斜視図を、
図4は
図1のA−A線に沿う断面図を、
図5は
図2のB−B線に沿う断面図を、
図6はワイパアームを裏側から見た斜視図を、
図7はワイパアームの噴射位置(射点)を説明する斜視図を、
図8はワイパブレードと噴射位置との距離Lと、ワイパブレードの周速vと、付着物の溶融時間tとの関係を説明する模式図をそれぞれ示している。
【0017】
図1に示すように、ワイパ装置10は、ワイパブレード20とワイパアーム30とを備えている。ワイパブレード20は、ワイパアーム30の一端側に回動自在に装着され、自動車等の車両のフロント側にあるウィンドシールド(払拭面)11上を摺接する。ワイパアーム30の他端側は、車両のフロント側にある揺動軸PSに軸支される。つまり、揺動軸PSは、ワイパブレード20の揺動中心となっている。そして、車室内にあるワイパスイッチ(図示せず)をオン操作してワイパモータ(図示せず)を回転させることで、揺動軸PSが揺動される。これにより、ワイパ装置10は、ウィンドシールド11上に形成された所定の払拭範囲ARを、図中矢印に示すように往路側および復路側に向けて往復払拭動作する。
【0018】
図1ないし
図5に示すように、ワイパブレード20は、ウィンドシールド11に接触するブレードラバー21と、ブレードラバー21を保持するホルダ部材22と、ホルダ部材22の長手方向中間部分に設けられた連結部23とを備えている。なお、ホルダ部材22の長手方向両端部分には一対のエンドキャップCPが装着されている。これにより、ホルダ部材22に保持されたブレードラバー21の抜け止めがなされている。
【0019】
図4および
図5に示すように、ブレードラバー21は、ホルダ部材22に保持される本体部21aと、ウィンドシールド11に接触されるリップ部21bと、本体部21aとリップ部21bとを連結するネック部21cとを備えている。なお、ブレードラバー21は、ゴム等の弾性材料を押出成形することにより長尺に形成され、その断面形状は長手方向に沿う全域で一様の形状となっている。
【0020】
ネック部21cのブレードラバー21の動作方向(図中左右方向)に沿う厚み寸法は、本体部21aおよびリップ部21bの厚み寸法よりも薄い厚み寸法に設定されて弾性変形し易くなっている。これにより、ワイパブレード20がウィンドシールド11上を往路側および復路側に移動する際に、リップ部21bの傾斜が許容され、ひいてはリップ部21bの先端部分がワイパブレード20の移動方向にスムーズに追従できるようになっている。したがって、ウィンドシールド11に付着した雨水や埃等の付着物(図示せず)を確実に払拭することができる。
【0021】
ホルダ部材22は、
図4に示すように、ホルダ本体22aとフィン部22bとを備えている。ホルダ本体22aおよびフィン部22bは、互いに硬度が異なる異種材料を二色成形することにより一体化され、ブレードラバー21と同様に長尺に形成されている。
【0022】
ホルダ本体22aは、ブレードラバー21の本体部21aを保持し得る十分な強度を確保しつつ、ウィンドシールド11の曲面形状(図示せず)に追従可能とするために、柔軟性を有するプラスチック等の樹脂材料により形成されている。一方、フィン部22bは、ホルダ本体22aの硬度よりも低い硬度のゴム等の弾性材料により形成されている。そして、走行風がフィン部22bに当たることにより、ワイパブレード20にはダウンフォースが発生して、これによりブレードラバー21の払拭性能が良好に保持される。
【0023】
ホルダ本体22aの内部には、一対のバーティブラ22cが所定間隔で設けられている。各バーティブラ22cは、バネ性を有する鋼板によって形成され、ブレードラバー21の本体部21aを、往路側および復路側からそれぞれ挟むようにして鏡像対称となるように配置されている。各バーティブラ22cは、外力を負荷していない自然状態においては、ウィンドシールド11の曲率よりも大きい曲率で湾曲されており、ホルダ部材22およびブレードラバー21をウィンドシールド11の曲率に合わせて弾性変形させるようになっている。これにより、リップ部21bの長手方向に沿う全域がウィンドシールド11に密着される。
【0024】
図1および
図5に示すように、ホルダ部材22の長手方向中間部分には、連結部23が設けられている。連結部23は、連結本体23aと、ベース板23bと、カバー部材23cとを備えている。連結本体23aは、鋼板をプレス加工等することにより断面が略U字形状に形成され、一体に設けられた固定脚部(図示せず)によって各バーティブラ22cにカシメ固定されている。
【0025】
連結本体23aには、鋼材よりなる円柱ピン23dがカシメ固定されており、この円柱ピン23dには、プラスチック等の樹脂材料によって形成されたフック固定部材23eが回動自在に装着されている。ここで、フック固定部材23eには、ワイパアーム30の一端側に固定されたアームピース60(
図2参照)が、ワンタッチで連結されるようになっている。なお、円柱ピン23dおよびフック固定部材23eにおいても、連結部23を構成している。
【0026】
ベース板23bは、プラスチック等の樹脂材料により板状に形成されており、このベース板23bは、一体に設けられた固定脚部23fによって各バーティブラ22cに装着されている。ここで、連結本体23aはホルダ部材22のフィン部22b側(表側)に配置され、ベース板23bはホルダ部材22のホルダ本体22a側(裏側)に配置されている。
【0027】
カバー部材23cは、プラスチック等の樹脂材料により略箱形状に形成されており、一体に設けられた複数の係合爪(図示せず)によって連結本体23aの外側に装着されている。このカバー部材23cは、連結本体23aの側面部分等を覆い隠すようになっており、これによりワイパブレード20の見栄えを良くしている。
【0028】
図1および
図6に示すように、ワイパアーム30は、アームヘッド40,アームシャンク50およびアームピース60を備えている。
【0029】
アームヘッド40は、アルミ材料を鋳造成形等することで、略J字形状に湾曲された棒状に形成されている。アームヘッド40の基端部(図中右側)には、揺動軸PSに装着される軸固定部41が設けられている。一方、アームヘッド40の先端部(図中左側)には、アームシャンク50の他端側が回動自在に装着されるシャンク装着部42が設けられている。
【0030】
図6に示すように、シャンク装着部42には、アームシャンク50の他端側を回動自在に支持する支持ピン42aが設けられている。この支持ピン42aは、円柱状の鋼材によって形成され、揺動軸PSの延在方向と交差する方向に延在されている。これにより、アームシャンク50はアームヘッド40に対して、がたつくこと無く回動自在に装着され、かつ容易にロックバック可能となっている。
【0031】
アームヘッド40のウィンドシールド11側(図中手前側)には、ウィンドシールド11側に向けて開口されたヘッド側配管収容部43が設けられている。このヘッド側配管収容部43は、アームヘッド40の形状に合わせて、アームヘッド40の長手方向全域に亘って設けられている。すなわち、アームヘッド40の短手方向に沿う断面形状は略U字状に形成されている。
【0032】
ヘッド側配管収容部43には、往路側ウォッシャチューブ(配管)44および復路側ウォッシャチューブ(配管)45が収容されている。ここで、各ウォッシャチューブ44,45の配置構造を判り易くするために、図示において、各ウォッシャチューブ44,45に網掛けを施している。
【0033】
図1の破線矢印に示すように、各ウォッシャチューブ44,45のそれぞれには、図示しないウォッシャポンプから、往路側ウォッシャ液W1および復路側ウォッシャ液W2がそれぞれ供給される。ここで、各ウォッシャチューブ44,45は、後述するノズルユニット70に、各ウォッシャ液W1,W2を送るものである。
図6に示すように、往路側ウォッシャチューブ44は、車両側チューブ44aとノズル側チューブ44bとから形成されている。また、復路側ウォッシャチューブ45は、車両側チューブ45aとノズル側チューブ45bとから形成されている。
【0034】
車両側チューブ44aとノズル側チューブ44b、および車両側チューブ45aとノズル側チューブ45bは、それぞれヘッド側配管収容部43の内側に固定されたジョイント部材46によって互いに連結されている。このように、ヘッド側配管収容部43の内側にジョイント部材46を固定することで、アームヘッド40の部分において、各ウォッシャチューブ44,45が弛むのを防止している。また、ジョイント部材46を境に、車両側チューブ44a,45aとノズル側チューブ44b,45bとに分割することで、車両側チューブ44a,45aおよびノズル側チューブ44b,45bを、アームヘッド40およびアームシャンク50に対して容易に組み付けられるようにしている。
【0035】
図6に示すように、ヘッド側配管収容部43に収容された各ウォッシャチューブ44,45の揺動軸PS側は、軸固定部41を避けた位置からアームヘッド40の外部に纏めて引き出されている。具体的には、各ウォッシャチューブ44,45の揺動軸PS側は、揺動軸PSの延在方向(軸方向)に並べられた状態のもとで、アームヘッド40の外部に引き出されている。
【0036】
これにより、アームヘッド40における軸固定部41の周辺が幅広となって大型化するのを抑制している。また、アームヘッド40の揺動時において、各ウォッシャチューブ44,45は、軸固定部41の周囲に沿ってそれぞれ同じ曲率半径で弾性変形されるため、駆動側の揺動軸PS(ワイパモータ)に掛かる負荷を軽減することができる。
【0037】
一方、ヘッド側配管収容部43に収容された各ウォッシャチューブ44,45のアームシャンク50側は、支持ピン42aの延在方向(軸方向)に並べられた状態のもとで、アームヘッド40の外部に纏めて引き出されている。
【0038】
これにより、アームシャンク50をアームヘッド40に対してロックバックさせる際に、各ウォッシャチューブ44,45がそれぞれ同じ曲率半径で弾性変形されて、各ウォッシャチューブ44,45の双方に略同じ負荷を掛けることができる。よって、各ウォッシャチューブ44,45のうちのいずれか一方が早期に劣化する等の不具合が発生するのを抑制できる。
【0039】
図6に示すように、アームシャンク50は、鋼板をプレス加工等することで断面が略U字形状に形成され、略真っ直ぐの長尺の棒状に形成されている。そして、アームシャンク50の他端側(図中右側)は、アームヘッド40のシャンク装着部42に回動自在に装着され、アームシャンク50の一端側(図中左側)には、アームピース60を介してワイパブレード20(
図1参照)が装着されている。また、アームシャンク50の長手方向に沿う一端側、つまりワイパアーム30の一端側には、ウィンドシールド11に向けて各ウォッシャ液W1,W2(
図3参照)を噴射するノズルユニット70が装着されている。
【0040】
アームシャンク50は、底壁51と、当該底壁51に対して略直角に起立された一対の側壁52a,52bとを備えている。これらの底壁51および一対の側壁52a,52bで囲まれた部分は、シャンク側配管収容部53となっている。シャンク側配管収容部53には、各ウォッシャチューブ44,45が収容され、シャンク側配管収容部53は、アームヘッド40に設けたヘッド側配管収容部43に連なっている。すなわち、シャンク側配管収容部53は、アームシャンク50の長手方向に沿うように設けられ、かつウィンドシールド11に向けて開口されている。
【0041】
また、シャンク側配管収容部53には、各ウォッシャチューブ44,45と並行となるようにスプリングSPが収容されている。このスプリングSPは、ワイパブレード20をウィンドシールド11に向けて押圧する弾性力を発生するようになっている。
【0042】
図6に示すように、アームシャンク50の長手方向に沿う他端側、つまりアームヘッド40側には、アームシャンク50の開口部分を覆うように突出された突出片52cが設けられている。この突出片52cは、アームシャンク50の側壁52bに一体に設けられており、各ウォッシャチューブ44,45を保持している。すなわち、突出片52cは、各ウォッシャチューブ44,45のシャンク側配管収容部53からの脱落を防止している。
【0043】
図6に示すように、アームシャンク50の長手方向に沿う略中央部分には、支持片52dと、この支持片52dに装着される第1チューブホルダ54とが設けられている。支持片52dは、アームシャンク50の開口部分を覆うように突出され、アームシャンク50の側壁52aに一体に設けられている。また、第1チューブホルダ54は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、各ウォッシャチューブ44,45をシャンク側配管収容部53に収容した状態のもとで、支持片52dに装着される。具体的には、第1チューブホルダ54は、アームシャンク50の長手方向に沿う一端側(ノズルユニット70側)から支持片52dに臨ませて、当該支持片52dに装着される。
【0044】
支持片52dおよび第1チューブホルダ54は、アームシャンク50の短手方向に沿うスプリングSPを避けた位置において、各ウォッシャチューブ44,45を保持している。これにより、各ウォッシャチューブ44,45は、スプリングSPに接触すること無く、かつアームシャンク50からの脱落が防止される。
【0045】
図6に示すように、アームシャンク50の長手方向に沿う第1チューブホルダ54とノズルユニット70との間には、支持片52eと、当該支持片52eに装着される第2チューブホルダ55とが設けられている。支持片52eは、アームシャンク50の開口部分を覆うように突出され、アームシャンク50の側壁52aに一体に設けられている。また、第2チューブホルダ55は、プラスチック等の樹脂材料により略正方形形状に形成され、各ウォッシャチューブ44,45をシャンク側配管収容部53に収容した状態のもとで、支持片52eに装着される。具体的には、第2チューブホルダ55は、アームシャンク50の開口部分の上方側(図中手前側)から支持片52eに臨ませて、当該支持片52eに装着される。
【0046】
これにより、各ウォッシャチューブ44,45は、第2チューブホルダ55および支持片52eによって底壁51に押さえ付けられて、各ウォッシャチューブ44,45のアームシャンク50からの脱落が防止される。
【0047】
図6に示すように、アームシャンク50の長手方向に沿う一端側に固定されるアームピース60は、鋼材をプレス加工等することで所定形状に形成されている。アームピース60の一端側は略U字形状に形成されている。アームピース60の先端部分は、フック固定部材23e(
図5参照)にワンタッチで連結されるようになっている。また、アームピース60の他端側は、アームシャンク50の一端側の部分の内側に、一対のリベットR(
図2参照)によって固定されている。このように、鋼板よりなるアームシャンク50と鋼材よりなるアームピース60とを互いにリベット止めすることで、両者はがたつくこと無く強固に固定されている。
【0048】
アームピース60には、固定ネジSC(
図6参照)によってノズルユニット70が固定されている。ここで、
図2に示すネジ穴HLには、固定ネジSCが図中下側、つまりワイパブレード20側からネジ込まれるようになっている。そして、このネジ穴HLを含むアームピース60およびノズルユニット70の一部は、アームシャンク50によって覆われている。これにより、ワイパ装置10のノズルユニット70の周辺をすっきりさせて見栄えを良くしている。
【0049】
図2および
図3に示すように、ノズルユニット70は、ワイパブレード20の払拭方向に各ウォッシャ液W1,W2をそれぞれ噴射する複数のノズルを備えるものであって、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで、アームシャンク50の長手方向と交差する方向(短手方向)の断面形状が、略U字形状に形成されている。そして、ノズルユニット70は、往路側ブロック71と復路側ブロック72とを備えている。
【0050】
往路側ブロック71には、アームヘッド40側(
図2および
図3中右側)に向けられた往路側第1壁部71aが設けられている。往路側ブロック71の往路側第1壁部71a側には、往路側ウォッシャチューブ44の一端側が接続されている。一方、往路側ブロック71の往路側第1壁部71a側とは反対側には、連結部23側(
図2および
図3中左側)に向けて徐々に先細り形状となった往路側腕部71bが一体に設けられている。そして、往路側腕部71bには、連結部23側に向けられた往路側第2壁部71cが設けられている。
【0051】
また、往路側ブロック71の往路側第1壁部71aと往路側第2壁部71cとの間には、ウィンドシールド11と対向する往路側対向面71dが形成されている。往路側対向面71dの往路側第2壁部71c寄りの部分には、往路側ノズルキャップ71eが設けられている。
【0052】
往路側第2壁部71cには、往路側ウォッシャ液W1を噴射する往路側第1噴射ノズルA1が設けられている。この往路側第1噴射ノズルA1の噴射方向は、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側(連結部23側)に向けられており、かつワイパブレード20側とは反対側に向けられている。つまり、ワイパブレード20を直に濡らす方向には向けられていない。これにより、ワイパブレード20の往路側払拭動作の際に、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側で、かつ払拭方向に沿う前方側のウィンドシールド11上の噴射位置A2(
図7参照)を濡らせるようにしている。
【0053】
ここで、往路側第1噴射ノズルA1は、往路側ウォッシャ液W1の噴射位置が可変の目玉式のノズルを採用している。具体的には、ノズルに針金等を刺して回動させることで、往路側第1噴射ノズルA1の噴射位置を調整することができる。これにより、ワイパアーム30に装着されるワイパブレード20の長さ違い等の仕様に対応させて、往路側第1噴射ノズルA1の噴射位置を最適化できる。
【0054】
往路側ノズルキャップ71eには、往路側ウォッシャ液W1を噴射する往路側第2噴射ノズルB1および往路側第3噴射ノズルC1が設けられている。これらの往路側第2噴射ノズルB1および往路側第3噴射ノズルC1においては、往路側ウォッシャ液W1の噴射位置が固定式のノズルとなっている。往路側第2噴射ノズルB1は連結部23側に向けられており、往路側第3噴射ノズルC1はアームヘッド40側に向けられている。そして、往路側第2噴射ノズルB1および往路側第3噴射ノズルC1から噴射される往路側ウォッシャ液W1は、ブレードラバー21の長手方向中央部の近傍で、かつ往路側にある噴射位置B2および噴射位置C2(
図7参照)を濡らせるようにしている。なお、往路側第2噴射ノズルB1および往路側第3噴射ノズルC1においても、往路側第1噴射ノズルA1と同様に、ワイパブレード20を直に濡らす方向には向けられていない。
【0055】
ここで、噴射位置A2,噴射位置B2および噴射位置C2のうち、噴射位置A2が、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側に最も離れた位置にあり、かつワイパブレード20からその払拭方向に最も離れた位置にある。これとは逆に、噴射位置C2が、ワイパブレード20の揺動中心側に最も近い位置にあり、かつワイパブレード20からその払拭方向に最も近い位置にある。そして、噴射位置B2は、
図7にも示すように、噴射位置A2と噴射位置C2との間の中間位置にある。
【0056】
図3に示すように、往路側第1壁部71aには、往路側ウォッシャ液W1を噴射する往路側第4噴射ノズルD1が設けられている。この往路側第4噴射ノズルD1の噴射方向は、ワイパブレード20の揺動中心側(アームヘッド40側)に向けられており、かつワイパブレード20側とは反対側に向けられている。つまり、ワイパブレード20を直に濡らす方向には向けられていない。これにより、ワイパブレード20の往路側払拭動作の際に、ワイパブレード20の揺動中心側で、かつ払拭方向に沿う前方側のウィンドシールド11上の噴射位置D2(
図7参照)を濡らせるようにしている。
【0057】
ここで、往路側第4噴射ノズルD1においても、往路側第1噴射ノズルA1と同様に、往路側ウォッシャ液W1の噴射位置が可変の目玉式のノズルを採用している。したがって、ワイパブレード20の仕様に合わせて、往路側第4噴射ノズルD1の噴射位置を最適化できる。そして、噴射位置D2は、噴射位置C2よりもワイパブレード20の揺動中心側にある。また、噴射位置D2および噴射位置C2は、ワイパブレード20からその払拭方向に同じ距離だけ離れた位置にある。
【0058】
このように、往路側ブロック71には、ワイパブレード20の往路側払拭方向に、往路側ウォッシャ液W1をそれぞれ噴射する合計4つの噴射ノズルA1〜D1が設けられている。そして、これらの噴射ノズルA1〜D1から噴射される往路側ウォッシャ液W1の噴射位置は、
図7に示すように、ワイパブレード20の揺動中心側よりも、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側の方が、ワイパブレード20からその払拭方向に離れている。
【0059】
より具体的には、ワイパブレード20に対してノズルユニット70が設けられる位置を基点BPとしたときに、この基点BPからワイパブレード20の揺動中心側とは反対側に向かうにつれて、噴射位置B2および噴射位置A2は、それぞれワイパブレード20からその払拭方向に徐々に離れている。つまり、基点BPからワイパブレード20の揺動中心側とは反対側においては、ワイパブレード20と噴射位置との距離L1が、揺動中心側とは反対側に向かうにつれて徐々に離れるように設定されている。これに対し、基点BPからワイパブレード20の揺動中心側においては、噴射位置C2および噴射位置D2のワイパブレード20からの距離がL2で一定となるように設定されている。
【0060】
復路側ブロック72には、アームヘッド40側に向けられた復路側第1壁部72aが設けられている。復路側ブロック72の復路側第1壁部72a側には、復路側ウォッシャチューブ45の一端側が接続されている。一方、復路側ブロック72の復路側第1壁部72a側とは反対側には、連結部23側に向けて徐々に先細り形状となった復路側腕部72bが一体に設けられている。そして、復路側腕部72bには、連結部23側に向けられた復路側第2壁部72cが設けられている。
【0061】
また、復路側ブロック72の復路側第1壁部72aと復路側第2壁部72cとの間には、ウィンドシールド11と対向する復路側対向面72dが形成されている。復路側対向面72dの復路側第1壁部72a寄りの部分には、復路側ノズルキャップ72eが設けられている。
【0062】
復路側第2壁部72cには、復路側ウォッシャ液W2を噴射する復路側第1噴射ノズルE1が設けられている。この復路側第1噴射ノズルE1の噴射方向は、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側(連結部23側)に向けられており、かつワイパブレード20側とは反対側に向けられている。つまり、ワイパブレード20を直に濡らす方向には向けられていない。これにより、ワイパブレード20の復路側払拭動作の際に、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側で、かつ払拭方向に沿う前方側のウィンドシールド11上の噴射位置E2(
図7参照)を濡らせるようにしている。
【0063】
ここで、復路側第1噴射ノズルE1は、復路側ウォッシャ液W2の噴射位置が可変の目玉式のノズルを採用している。具体的には、ノズルに針金等を刺して回動させることで、復路側第1噴射ノズルE1の噴射位置を調整することができる。これにより、ワイパアーム30に装着されるワイパブレード20の長さ違い等の仕様に対応させて、復路側第1噴射ノズルE1の噴射位置を最適化できる。
【0064】
復路側ノズルキャップ72eには、復路側ウォッシャ液W2を噴射する復路側第2噴射ノズルF1および復路側第3噴射ノズルG1が設けられている。これらの復路側第2噴射ノズルF1および復路側第3噴射ノズルG1においては、復路側ウォッシャ液W2の噴射位置が固定式のノズルとなっている。復路側第2噴射ノズルF1は連結部23側に向けられており、復路側第3噴射ノズルG1はアームヘッド40側に向けられている。そして、復路側第2噴射ノズルF1および復路側第3噴射ノズルG1から噴射される復路側ウォッシャ液W2は、ブレードラバー21の長手方向中央部の近傍で、かつ復路側にある噴射位置F2および噴射位置G2(
図7参照)を濡らせるようにしている。なお、復路側第2噴射ノズルF1および復路側第3噴射ノズルG1においても、復路側第1噴射ノズルE1と同様に、ワイパブレード20を直に濡らす方向には向けられていない。
【0065】
ここで、噴射位置E2,噴射位置F2および噴射位置G2のうち、噴射位置E2が、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側に最も離れた位置にあり、かつワイパブレード20からその払拭方向に最も離れた位置にある。これとは逆に、噴射位置G2が、ワイパブレード20の揺動中心側に最も近い位置にあり、かつワイパブレード20からその払拭方向に最も近い位置にある。そして、噴射位置F2は、
図7にも示すように、噴射位置E2と噴射位置G2との間の中間位置にある。
【0066】
図3に示すように、復路側第1壁部72aには、復路側ウォッシャ液W2を噴射する復路側第4噴射ノズルH1が設けられている。この復路側第4噴射ノズルH1の噴射方向は、ワイパブレード20の揺動中心側(アームヘッド40側)に向けられており、かつワイパブレード20側とは反対側に向けられている。つまり、ワイパブレード20を直に濡らす方向には向けられていない。これにより、ワイパブレード20の復路側払拭動作の際に、ワイパブレード20の揺動中心側で、かつ払拭方向に沿う前方側のウィンドシールド11上の噴射位置H2(
図7参照)を濡らせるようにしている。
【0067】
ここで、復路側第4噴射ノズルH1においても、復路側第1噴射ノズルE1と同様に、復路側ウォッシャ液W2の噴射位置が可変の目玉式のノズルを採用している。したがって、ワイパブレード20の仕様に合わせて、復路側第4噴射ノズルH1の噴射位置を最適化できる。そして、噴射位置H2は、噴射位置G2よりもワイパブレード20の揺動中心側にある。また、噴射位置H2および噴射位置G2は、ワイパブレード20からその払拭方向に同じ距離だけ離れた位置にある。
【0068】
このように、復路側ブロック72には、ワイパブレード20の復路側払拭方向に、復路側ウォッシャ液W2をそれぞれ噴射する合計4つの噴射ノズルE1〜H1が設けられている。そして、これらの噴射ノズルE1〜H1から噴射される復路側ウォッシャ液W2の噴射位置は、
図7に示すように、ワイパブレード20の揺動中心側よりも、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側の方が、ワイパブレード20からその払拭方向に離れている。
【0069】
より具体的には、ワイパブレード20に対してノズルユニット70が設けられる位置を基点BPとしたときに、この基点BPからワイパブレード20の揺動中心側とは反対側に向かうにつれて、噴射位置F2および噴射位置E2は、それぞれワイパブレード20からその払拭方向に徐々に離れている。つまり、基点BPからワイパブレード20の揺動中心側とは反対側においては、ワイパブレード20と噴射位置との距離L1が、揺動中心側とは反対側に向かうにつれて徐々に離れるように設定されている。これに対し、基点BPからワイパブレード20の揺動中心側においては、噴射位置G2および噴射位置H2のワイパブレード20からの距離がL2で一定となるように設定されている。
【0070】
ここで、本実施の形態に係るワイパ装置10においては、
図7に示すように、ワイパブレード20からその払拭方向に最も近い位置にある噴射位置C2,D2,G2,H2とワイパブレード20との離間距離L2は、以下に示す基準によって設定している。
【0071】
各ウォッシャ液W1,W2の噴射位置がワイパブレード20(ブレードラバー21)に近いと、噴射された各ウォッシャ液W1,W2が運転者等の視界の妨げになることは殆ど無いが、噴射された各ウォッシャ液W1,W2は噴射直後に払拭されることになる。そのため、ウィンドシールド11に付着した埃等が溶融せずに拭き残しが生じてしまう(払拭性能の低下)。
【0072】
これに対し、各ウォッシャ液W1,W2の噴射位置をワイパブレード20(ブレードラバー21)から遠くすると、今度は逆に、ウィンドシールド11に付着した埃等を確実に溶融させて、拭き残しを無くして綺麗に払拭することができるが、噴射された各ウォッシャ液W1,W2が運転者等の視界の妨げになってしまう(視界阻害)。
【0073】
そこで、
図8(往路側のみを示す)に示すように、ブレードラバー21の周速を[v]とし、付着物の溶融時間を[t]とし、ブレードラバー21からの各ウォッシャ液W1,W2の噴射位置までの距離、つまり噴射距離を[L]としたときに、[L=v×t]の式を満たすように噴射距離[L]を設定する。これにより、付着物の払拭性能の向上と視界阻害の抑制との相反する現象をバランス良く達成することができる。なお、本実施の形態においては、噴射距離[L]を約15mm程度の噴射距離としている。
【0074】
ただし、ブレードラバー21の周速[v]は、通常、多く使用されるワイパスイッチの[Low]操作時におけるブレードラバー21の長手方向に沿う揺動中心側(内周側)の移動速度とする。これにより、特に、運転者等の目の前となるブレードラバー21の長手方向に沿う揺動中心側において、視界阻害を抑制しつつ付着物を綺麗に払拭することができる。
【0075】
これに対し、比較的視界を阻害しないブレードラバー21の長手方向に沿う揺動中心側とは反対側(外周側)においては、各ウォッシャ液W1,W2の噴射位置を、噴射位置C2,D2,G2,H2よりもブレードラバー21から遠い噴射位置B2,A2,F2,E2としている。これは、比較的視界を阻害しないこと、かつブレードラバー21の外周側の周速の方が速いことに基づき、ウィンドシールド11に付着した付着物の溶融時間[t]を稼ぐためである。
【0076】
次に、往路側ウォッシャ液W1と復路側ウォッシャ液W2との流れ方について、図面を用いて説明する。
【0077】
ウォッシャスイッチ(図示せず)を操作することでウォッシャポンプ(図示せず)が駆動され、
図1の破線矢印に示すように、各ウォッシャ液W1,W2が往路側ウォッシャチューブ44および復路側ウォッシャチューブ45にそれぞれ供給される。すると、
図3に示すように、各ウォッシャ液W1,W2が往路側ブロック71および復路側ブロック72の内部にそれぞれ入り込む。これにより、
図3の破線矢印に示すように、往路側の各噴射ノズルA1〜D1および復路側の各噴射ノズルE1〜H1から、各ウォッシャ液W1,W2がそれぞれ噴射される。
【0078】
ここで、ブレードラバー21の移動方向の切り換えに応じて、ウォッシャポンプの駆動方向が切り換えられる。より具体的には、ワイパブレード20の往路側への払拭動作時には、往路側ブロック71のみに往路側ウォッシャ液W1が供給される。一方、ワイパブレード20の復路側への払拭動作時には、復路側ブロック72のみに復路側ウォッシャ液W2が供給される。これにより、ワイパブレード20の往路側払拭方向および復路側払拭方向のそれぞれに交互に各ウォッシャ液W1,W2が噴射される。
【0079】
以上詳述したように、本実施の形態に係るワイパ装置10によれば、4つの往路側の噴射ノズルA1〜D1および4つの復路側の噴射ノズルE1〜H1から噴射される各ウォッシャ液W1,W2の噴射方向が、ワイパブレード20側とは反対側に向けられており、かつ各ウォッシャ液W1,W2の噴射位置が、ワイパブレード20の揺動中心側よりもワイパブレード20の揺動中心側とは反対側の方が、ワイパブレード20からその払拭方向に離れている。したがって、ワイパブレード20の揺動中心側において、視界が阻害されるのを抑制することができる。一方、ワイパブレード20の揺動中心側とは反対側において、埃等を十分に湿らせて払拭性能を向上させることができる。
【0080】
また、本実施の形態に係るワイパ装置10によれば、ワイパブレード20に対してノズルユニット70が設けられる位置を基点BPとしたときに、基点BPからワイパブレード20の揺動中心側とは反対側に向かうにつれて、噴射位置B2,A2,F2,E2がワイパブレード20からその払拭方向に徐々に離れている。さらに、ワイパブレード20に対してノズルユニット70が設けられる位置を基点BPとしたときに、基点BPからワイパブレード20の揺動中心側において、噴射位置C2,D2,G2,H2のワイパブレード20からの距離L2が一定とされている。したがって、より視界が阻害されるのを抑制しつつ、さらに払拭性能を向上させることが可能となる。
【0081】
また、本実施の形態に係るワイパ装置10によれば、ワイパブレードと噴射位置との距離のうちの最も短い距離Lが下記式を満たしているので、ウィンドシールド11に付着した付着物の溶融時間を考慮して、噴射位置を設定することができる。よって、十分な払拭性能を確保することができる。
【0082】
L=v×t・・・式
L:噴射距離
v:ワイパブレードの周速
t:付着物の溶融時間
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分には同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0083】
図9は実施の形態2のワイパアームの噴射位置(射点)を説明する斜視図を示している。
【0084】
図9に示すように、実施の形態2のワイパアーム80においては、実施の形態1のワイパアーム30(
図7参照)に比して、往路側の各噴射ノズルA1〜D1および復路側の各噴射ノズルE1〜H1から噴射される各ウォッシャ液W1,W2の噴射位置のみが異なっている。具体的には、
図9に示すように、ワイパブレード20の長手方向に沿う揺動中心側(内周側)から、その反対側(外周側)に向かうにつれて、噴射位置D3,C3,B3,A3の位置および噴射位置H3,G3,F3,E3の位置が、徐々にワイパブレード20からその払拭方向に離れた位置に配置されている。つまり、ワイパブレード20と噴射位置との距離L3が、ワイパブレード20の長手方向に沿う揺動中心側(内周側)からその反対側(外周側)に向かうに連れて、徐々に長くなる(遠くなる)ように設定されている。
【0085】
以上のように形成した実施の形態2に係るワイパ装置10においても、上述した実施の形態1のワイパ装置10と同様の作用効果を奏することができる。
【0086】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、ノズルユニット70に、往路側の噴射ノズルおよび復路側の噴射ノズルを、それぞれ4つずつ設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、往路側および復路側で少なくとも2つずつ以上設けることもできる。また、往路側および復路側で設ける噴射ノズルの個数を異ならせることもできる。
【0087】
さらに、上記各実施の形態においては、車両のフロント側にあるウィンドシールド11を払拭するワイパ装置10を示したが、本発明はこれに限らず、車両のリヤ側にあるウィンドシールドを払拭するワイパ装置にも適用することができる。また、自動車等の車両に限らず、鉄道車両や航空機,船舶等のワイパ装置にも本発明を適用することができる。