【課題を解決するための手段】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、果粒球コロニー刺激因子 (G−CSF)の新規リフォールディング法を提供する。特に、本発明は、精製G−CSFの産業的製造を可能にする、封入体から活性G−CSFを高収率で得るための新規方法を提供する。
【0040】
本発明のある目的は、高純度(最高で医薬グレードの)の組換えG−CSF医薬物質を産業規模で、品質、経済性、および規制的要求を考慮して効率的に製造する方法を提供することであった。本発明は、封入体中に発現した組換えG−CSFの新規リフォールディングおよび精製方法を提供する。
【0041】
従来技術は、封入体からG−CSFを可溶化およびリフォールディングするための種々の方法を開示する。上記(背景技術参照)のように、IBタンパク質(特にG−CSFに関して)の可溶化およびリフォールディングに関する従来技術は、2つの異なる主な戦略に分けることができる。より古典的アプローチは、典型的には還元条件下およびアルカリ性pHで強カオトロピック剤(変性剤)(例えば尿素またはGuHCl)を使用することである。当該分野でより一般的に用いられる該第2戦略は、可溶化のために強界面活性剤(例えばサルコシルまたはラウリン酸)を用いることである。ときどき、G−CSFを可溶化するために強イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用することも報告された(Devlin 1988)。
【0042】
従来技術の方法は、それぞれいくらか欠点がある。本発明者らが行った実験が示すように、SDSは効率的に除去することが不可能でないまでも難しいため、可溶化剤として適切でなかった。例えば、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)を用いるクロマトグラフィによりSDSを除去すると微量のSDSがタンパク質に結合したままであった。SDSは完全に除去することができなかった。GuHClによる可溶化 (Wingfield 1988、Dietrich 2003、WO2006/097944、EP16301273、EP1837346、WO2010/146599)は、他の理由で問題がある。GuHClは透析またはゲルクロマトグラフィにより除去することができるが、GuHCl可溶化法では、後で、リフォールディングインキュベーション中にフォールディング中間体の凝集を避けるために強希釈を必要とすることにより大容量が必要である(Rudolph 1990、Rudolph 1996)。最高1:200の希釈が報告された(Rudolph 1996)。本発明者らが試験したGuHCl法では、強希釈の必要性が確認され、GuHCl法を用いて最適収量を得るには少なくとも1:50の希釈比が必要であった。この種の可溶化は、大規模法において大きなステンレススチールタンクを必要とし、経済的ではない。
【0043】
GuHClの代わりに、別の変性剤の尿素のG−CSFの可溶化における使用が報告されている。従来技術では、ほぼ飽和濃度、例えば8M尿素が用いられた (WO98/53072、WO01/87925、WO2006/135176、Khalilzadeh 2008、WO2008096370)。GuHClについて記載された同じ問題が尿素にもあてはまる。さらに、特にアルカリ性pHでの尿素の存在は、望ましくないタンパク質修飾、例えば脱アミドをもたらしうる。さらに、シアン酸アンモニウムから生じうるイソシアン酸(常に溶液中の尿素と平衡にある)の存在は、一級アミノ基のカルバミル化をもたらす(Rudolph 1996)。最後に、凝集阻害剤のアルギニンがリフォールディング中に高濃度で共変性剤として存在すると収量に有益でありうることも当該分野で報告されている(EP0219874、Rudolph 1996、Dietrich 2003)。しかしながら、アルギニンは高価な試薬であり、アルギニンの使用をやめることが経済的には望ましい。
【0044】
上記のように、界面活性剤のサルコシルをIBからG−CSFを可溶化するのに用いることもできる。優先的に、2%サルコシルが用いられた (Zsebo 1986、WO8701132、WO8910932、Lu 1992、Heidari 2001)。サルコシルは、高可溶性の陰イオン性界面活性剤である。サルコシルを用いる1つの利点は、続くリフォールディングインキュベーション中に必要な希釈比が低いことである(GuHCl/尿素の0〜200倍に対して2倍)。別の利点は、環境に対して化学廃棄物の生成が比較的少ないことである。しかしながら、当初記載された方法を用いると、本発明者らは、バッチごとの変動が高いことに関連してリフォールディング後の収量がかなり低いことを実験において観察した。サルコシルのような界面活性剤は、一般的に、タンパク質の可溶性を増加することにより可溶性を促進する。サルコシルは、カオトロピック剤がするようにタンパク質を変性しアンフォールドすることはないので、最初に間違ってフォールディングされたIBタンパク質は後でリフォールドされることはなく、GuHCl/尿素法に比べて収量が低くなるはずである。
本発明は従来技術の欠点を克服する。
【0045】
本発明者らは、従来技術の方法の問題に対処するリフォールドされたG−CSFを得るための新規方法を提供する。驚くべきことに、可溶化剤の存在下で第1酸化的リフォールディング工程、次いで可溶化剤を効率的に除去する工程 (例えば、イオン交換樹脂吸着および/または酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィにより)、次いで可溶化剤非存在下でG−CSFを希釈し、インキュベーションすることを含む第2リフォールディング工程を用いることにより、モノマーの可溶性G−CSFの収量を増加させることができること、すなわち、本明細書に記載の方法によりリフォールドされたG−CSFが得られることをみいだした。
【0046】
すなわち、本発明は、封入体中の不活性前駆体から生物活性を有するG−CSFを製造するための新規方法に関する。微生物におけるヘテロローガスな組換えポリペプチドの過剰発現は、しばしば、ポリペプチドが、アンフォールドされ、還元され、不活性であり、少なくとも一般的水性緩衝液に不溶性である封入体の形成をもたらす。封入体からの組換え果粒球コロニー刺激因子 (G−CSF)の新規リフォールディング法を本明細書に開示する。特に、本発明は、2つのリフォールディング工程を含む新規リフォールディング法に関する。該方法は、G−CSFの可溶化剤による可溶化、可溶化剤および酸化剤存在下のG−CSFの酸化的リフォールディング(「酸化および第1リフォールディング工程」)、可溶化剤の効率的除去、および可溶化剤非存在下でG−CSFのフォールディングを完結するための第2リフォールディング工程を含む。
【0047】
また、本発明は、リフォールディング工程および精製工程の新規組み合わせに関する。第1リフォールディング工程後に、新規中間精製工程を可溶化剤および酸化剤の効率的除去を確実にするために導入し、次いでG−CSFのフォールディングを完結するために第2リフォールディング工程を行う。また、本発明は、一般に、リフォールディングプロセスに用いる可溶化剤および他の薬剤を除去するための新規方法に関する。
【0048】
開示した新規方法の主要原理を
図1(所望の下流のポリッシング工程とともに)に示す。簡単には、該方法は以下のものを含む:
a)可溶化剤を用いて封入体からG−CSFを可溶化し(所望により封入体を抽出および/または単離および/または洗浄する前に)、
b)酸化剤および可溶化剤存在下でインキュベーションすることにより可溶化G−CSFを酸化および部分的にリフォールディングし、
c)可溶化剤(および他の不純物)を除去し、そして
d)部分的にリフォールドしたG−CSFを希釈およびインキュベーションすることによりリフォールディングを完結する。
すなわち、該第2リフォールディング工程は可溶化剤非存在下で行う。
【0049】
したがって、第1の局面において、本発明は、以下の工程を含む封入体から果粒球コロニー刺激因子(G−CSF)をリフォールディングする方法を提供する:
(a) 可溶化剤存在下でのG−CSFの可溶化、
(b)酸化剤および可溶化剤存在下で可溶化G−CSFをインキュベーションすることを含む酸化および第1リフォールディング工程、
(c)イオン交換樹脂吸着および/または酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィによる可溶化の除去、および
(d)可溶化剤非存在下で工程(c)のG−CSFを希釈およびインキュベーションすることを含む第2リフォールディング工程。
該封入体は微生物から得ることができる。該微生物は、例えば組換え的にG−CSFを産生することができる。したがって、該本発明は、所望によりさらに微生物細胞から該封入体を単離する工程を含みうる。
【0050】
封入体
本発明は、封入体からG−CSFをリフォールディングする方法を提供する。過去に種々の異なる発現系が大量のG−CSFを製造するために試験されてきた。試験したすべての細菌株がG−CSFタンパク質を封入体 (IB)の形で発現する。封入体 (IB)はG−CSFを大量に、アンフォールドされた不活性形で含む。単離され、好ましくは洗浄された封入体の分画を本明細書に記載の方法の出発物質として用いることができる。そのような封入体調製物は、適切な発現系、発酵条件、回収および溶解手順、およびiBの単離および洗浄に適した方法により得ることができる。そのような方法は、従来技術に開示されている(例えば、Rudolph 1990、Rudolph 1996、Heidari 2001、Khalilzadeh 2008、Rao 2008、Vanz 2008、US5849883、EP0219874、EP1630173、またはWO2004001056参照)。宿主細胞から封入体を抽出する方法は、一般的に、細胞の溶解および破壊、次いで遠心分離を含む。該封入体は、分離器で細胞を回収し(例えば遠心分離(例えば11000g)により)、細胞を高圧ホモゲナイザー(例えば約1000bar)で機械的に破壊し、次いで分離器で細胞デブリから封入体を分離する(例えば遠心分離(例えば11000g)により)により得ることができる。大部分の古典的封入体を含むペレットを、通常、界面活性剤で洗浄する。G−CSFを可溶化する前に、該封入体を凍結保存することができる。分離器で細胞デブリから分離し、−80℃の還元緩衝液中で保存したIBは最高8カ月安定であることがわかった。
【0051】
該封入体は微生物細胞から得ることができる。したがって、本明細書に記載の方法は、微生物宿主細胞から封入体を抽出する工程を含む。G−CSFの発現に用いる微生物宿主細胞は、酵母細胞、糸状菌細胞、または細菌細胞でありうる。好ましい態様において、該微生物は細菌であり、より好ましい態様ではグラム陰性菌、最も好ましくはE. coliである。すなわち、該封入体はE. coli細胞から得ることができる。
【0052】
G−CSF
本発明の文脈において本明細書で用いる「G−CSF」は、G−CSFの種相同分子種、例えばヒトG−CSF、ウシ G−CSFなどを含む。ヒトG−CSFのアミノ酸配列は以下の通りである。
(配列番号1):
TPLGPASSLPQSFLLKCLEQVRKIQGDGAALQEKLCATYKLCHPEELVLLGHSLGIPWA
PLSSCPSQALQLAGCLSQLHSGLFLYQGLLQALEGISPELGPTLDTLQLDVADFATTIWQ
QMEELGMAPALQPTQGAMPAFASAFQRRAGGVLVASHLQSFLEVSYRVLRHLAQP
(例えば、Holloway、1994、またはDrugbank Accession No DB00099に記載されている。)
【0053】
ウシG−CSFは以下の通りである。
(配列番号2):
TPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAP
LSSCSSQSLQLRGCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQ
MEDLGAAPAVQPTQG AMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
(例えば、US5849883の
図7またはPDB Accession No:1BGC−Aに記載されている。)
【0054】
好ましい態様においてG−CSFは哺乳類G−CSFであり、特に好ましい態様ではヒトG−CSFである。ある好ましい態様において、組換えポリペプチドはメチオニル−G−CSF (Met−G−CSF)、例えばヒトMet−G−CSF (r−met−hu−G−CSF=フィルグラスチム)である。フィルグラスチムの配列は以下の通りである。
(配列番号3):
MTPLGPASSLPQSFLLKCLEQVRKIQGDGAALQEKLCATYKLCHPEELVLLGHSLGIPWA
PLSSCPSQALQLAGCLSQLHSGLFLYQGLLQALEGISPELGPTLDTLQLDVADFATTIWQ
QMEELGMAPALQPTQGAMPAFASAFQRRAGGVLVASHLQSFLEVSYRVLRHLAQP
【0055】
ウシG−CSFは、メチオニル−ウシ G−CSFと同様に得ることができる。本発明の文脈において本明細書で用いている「G−CSF」はG−CSFの機能的変異体を含む。本明細書において「変異体」への言及は、特記しない限り「機能的変異体」への言及を意味する。G−CSFタンパク質の変異体は、G−CSFタンパク質の配列と異なるが、同じ生物活性を有するタンパク質を表す(機能的変異体)。G−CSFタンパク質の「変異体」は、基準G−CSFタンパク質配列(例えばヒトG−CSF配列)と1またはそれ以上のアミノ酸が異なるタンパク質を表す。「変異体」は、あるいはまたはさらに、別の修飾、例えばメチル化、peg化(ペグ化)、スクシニル化、タグまたはラベルの付加などを有する。該変異体は、酵素的または化学的に修飾されたG−CSFでありうる。該変異体は、別のペプチドまたはポリペプチドと融合した融合タンパク質でありうる。
好ましい態様において、G−CSFはペグ化されている。
【0056】
「変異体」は、アレル変異体を含む天然変異体、またはアレル変異体または合成的に生成した変異体を含むスプライス変異体(例えばZsebo 1986参照)でありうる。修飾形のG−CSFが封入体中で発現することが従来技術で示された。例えば、EP0719860は、実施例2および3に、封入体中で発現する修飾ウシG−CSFの構築および産生を開示する。したがって、変異体は、本明細書に記載の方法を用いて得ることができる。
【0057】
ある態様において、G−CSF変異体は、配列番号3 (r−met−hu−G−CSF = フィルグラスチム)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有するタンパク質である。配列同一性は、標準的配列分析ツール、例えばClustal、BLASTなど、またはアラインメントアルゴリズム、例えばNeedleman−Wunsch algorithm、Smith−Waterman algorithmなどを用いて決定することができる。変異体は、1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有しうる。あるアミノ酸が同様の特性を有するアミノ酸で、例えば他の極性アミノ酸が別の極性アミノ酸で、酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸で置換される場合は、アミノ酸置換は保存的である。保存的置換は、化学特性、すなわちタンパク質の機能にあまり影響を与えない。G−CSFに対する「変異体」は、G−CSFの変異体がG−CSFと同じ生物学的機能を有する限り(機能的に等価)、配列番号3に比べて1またはそれ以上のアミノ酸の1またはそれ以上の突然変異、欠失、置換、挿入、および/または修飾を有するタンパク質を含む。変異体は、同じ生物学的機能を有するか否かは、G−CSFの生物活性を測定するアッセイ(以下に記載する)で試験することができる。市販されているG−CSFを基準コントロールとして用いることができる。変異体は、市販のG−CSF基準品の活性の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、or 少なくとも99.5%を有する場合、「同じ生物活性」を有する、すなわち「生物学的に活性」または「活性」であると考えることができる。
すなわち、本明細書において「G−CSF」に対する言及は、ヒトG−CSFの種相同分子種および変異体、すなわち機能的変異体に対する言及を含む。
【0058】
可溶性
IB分画のG−CSFは、可溶化剤の存在下で可溶化する。あらゆる適切な可溶化剤 (すなわち、本明細書に記載のG−CSFの可溶性をもたらすあらゆる物質)を用いることができる。そのような可溶化剤は、例えば(限定されるものではないが)変性剤またはカオトロピック剤の群、例えば (限定されるものではないが) GuHClまたは尿素、もしくは界面活性剤(detergent、tenside、またはsurfactant)の群、例えば、(限定されるものではないが) N−ラウロイルサルコシン(サルコシル)、ラウリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、またはN−セチルトリメチルアンモニウムクロリドなどから選ぶことができる。
【0059】
サルコシルに関して、本発明者らは、しばしば報告される濃度の2%サルコシルではなく、1%(w/v)サルコシルで最大可溶性がすでに達成されることをみいだした。より好都合には、SDSのような他のイオン性界面活性剤と異なり、サルコシルは種々の精製方法による生成物から完全に除去することができることを本発明者らはみいだした。最終的に、本発明者らは、サルコシルの効率的除去後の第2リフォールディング工程が正しくフォールドされたモノマーG−CSFの収量の増加をもたらすことをみいだした。
【0060】
したがって、本発明の好ましい態様において、可溶化剤は、界面活性剤(detergentまたはsurfactant)である。より好ましい態様において、可溶化剤は、可溶化剤は、陰イオン性界面活性剤、最も好ましくはサルコシルである。可溶化時のサルコシルの好ましい濃度は、0.2〜2.0%(w/v)、より好ましい態様において約0.5%〜1%(w/v)、最も好ましくは約1%(w/v)または1%(w/v)である。
【0061】
さらに、他のパラメーター(例えば温度、pH、緩衝液など)の最適化はさらに収量を改善しうる。最適温度、pH、緩衝液などは、本明細書に記載の方法を用いて本明細書の記載に照らして確立することができる。好ましい態様において、可溶化は、アルカリ性pH、例えば、
7〜10、または7〜9、または7.5〜8.5、または7.8〜8.2の範囲内のpHで行う。好ましい態様において、pHは約8または8である。ある態様において、可溶化は、室温、すなわち20〜25℃で行う。可溶化のために特定pH範囲で用いるのに適した緩衝液は当該分野で知られている。例えばTris−HClを用いることができる。好ましくは、可溶化は攪拌下で行う。
【0062】
好ましい態様において、可溶化は、サルコシルを用いてアルカリ性pH、好ましくはpH8で行う。可溶化のための好ましい緩衝液は、Tris−HCl/pH 8、優先的には40mM Tris−HCl/pH 8である。
【0063】
可溶化後に希釈工程を行うことができる(例えば5倍、4倍、または3倍、好ましくは2倍希釈)。希釈のための好ましい溶媒は、低電導性緩衝液、より好ましくは単に水である。低電導度は、少なくとも2mS/cm以下、より好ましくは1mS/cm以下の電導度を意味する。適切な緩衝系は、例えば、濃度10mM Trisまたはそれ以下、pH値7以上のTris/HClである。同じ低電導度およびpHの他の緩衝液を用いることもできる。
第1リフォールディング (酸化的フォールディング)
【0064】
還元システインの酸化およびジスルフィド形成はG−CSFの正しいフォールディングに必要である。古典的アプローチは、還元剤/酸化剤ペアの存在下の酸化である (Rudolph 1990、Rudolph 1996、背景技術参照)。多くのin vitroリフォールディング技術が公表されている。これらのリフォールディングプロトコールに基づいて、本発明者らは、封入体中に発現したジスルフィド含有タンパク質に共通のいくつかの一般的原理を得た。該タンパク質は還元状態でありアンフォールドであるので、そのようなリフォールディング方法の背後にある該メカニズムは、主として、システインペアのスルフィドリル基間に天然のジスルフィド架橋を形成することによる天然コンフォメーションへのポリペプチド鎖の酸化的フォールディングである。典型的リフォールディングプロセスにおいて、可溶化剤 (カオトロピック剤または界面活性剤)の濃度は、最初に、しばしば段階希釈、透析、またはゲルクロマトグラフィ(例えばSephadex G−25を用いる)により変性濃度以下に低下する。酸化剤(例えばCuSO
4)または酸化還元系(例えばグルタチオンred/ox (GSH/GSSG))の存在は、リフォールディングインキュベーション時のジスルフィド形成を促進する。一般的に、該インキュベーションは、室温で数時間〜数日間行われた。所望により該タンパク質の可溶性を増加し、および/または凝集を防ぐために用いることができる種々のさらなる添加物が記載された。特に部分的にフォールドされた中間体の凝集は、リフォールディング時の大きな問題であり、タンパク質濃度を臨海レベル以下に希釈することによって防止する(Rudolph 1990、Rudolph 1996)。従来技術は、G−CSFについて、CuSO
4をサルコシルと組み合わせて用いることによる酸化も開示している。該リフォールディングは、酸化剤および可溶化剤の存在下で行った(Zsebo 1986、WO8701132、WO8910932、Lu 1992、Heidari 2001)。
【0065】
本発明者らは、可溶化剤(例えばサルコシル)の存在下でG−CSFのフォールディングが完全に達成できないことをみいだした。すなわち、そのような酸化およびフォールディング工程は、G−CSFの部分的リフォールディングをもたらすだけである。本発明者らは、可溶化剤の完全な除去、次いで可溶化剤非存在下の第2フォールディング工程が収量の改善をもたらすことをみいだした。本発明者らは、該可溶化剤を除去するための最適化した方法も考案した(下記参照)。不完全なフォールディングに関与しうる他の夾雑物も除去される。あらゆる適切な酸化剤、例えば酸素または気流(気泡)、GSSG (グルタチオン−ox)、金属イオン(Cu
2+、Fe
2+、Zn
2+,..)パーオキシド(H2O2)を用いることができる。好ましい態様において、酸化剤はCuSO
4である。CuSO
4の他に他の銅塩も用いることができる(例えばCuCl2)。
【0066】
可溶化剤は有効量で用いる。当業者は、該有効量、すなわちG−CSFの効率的な可溶化を達成する可溶化剤の量を容易に決定および最適化することができる。可溶化G−CSFの量を決定する方法をさらに以下に記載する(例えば実施例13.3参照)。
【0067】
第1リフォールディング工程時の可溶化剤の好ましい濃度は、0.2〜2.0% (w/v)、より好ましくは0.2%〜1% (w/v)、最も好ましくは約0.5% (w/v)または0.5% (w/v)である。サルコシルを用いる場合は、好ましい態様において、サルコシルの濃度は、1% (w/v)以下、優先的には0.5 % (w/v)である。
【0068】
本発明者らは、さらに、長い酸化時間はRP−HPLCクロマトグラムに余分な2〜3ピークの出現をもたらしうることをみいだした。これらのさらなるピークは、G−CSFのメチオニン残基の酸化によるようである。そのような酸化形は、望ましくない生成物関連物質であり、それらを適切なクロマトグラフィで除去することは困難である。
【0069】
ある態様において、酸化的リフォールディング (すなわち、該酸化および第1リフォールディング工程)は、1−30時間、2−25時間、6−25時間、10−25時間、12−25時間、14−25時間、16−25時間、18−22時間、または19−21もしくは20−24時間行う。ある態様において、G−CSFの酸化および部分的リフォールディングは、2時間以上、優先的には12時間以上、好ましくは20時間以上、最も好ましくは20−24時間行う。
【0070】
好ましい態様において、酸化リフォールディング工程 (すなわち、酸化および第1リフォールディング工程)は、7〜10、7〜9、7.5〜8.5、または7.8〜8.2の範囲内のpHで行う。好ましい態様において、pHは約8または8である。ある態様において、第1リフォールディング工程のpH値はpH 7以上、好ましくは pH 8である。
【0071】
酸化リフォールディング工程は、すでに(部分的に)精製されたG−CSFを用いて行うこともできる。ある態様において、酸化的リフォールディングに用いるG−CSFの純度は、50%以上、優先的には約60〜70%またはそれ以上である。
【0072】
酸化的リフォールディングは、好ましくは冷却せずに、好ましくは室温で、好ましくは18〜30℃、好ましくは20〜28℃、好ましくは20〜26℃、好ましくは20〜24℃、好ましくは21〜23℃、最も好ましくは約22℃または22℃で行う。
酸化的リフォールディングは連続気流下で行うことができる。
【0073】
種々の最適化実験に基づく酸化的リフォールディング (酸化および第1リフォールディング工程)の最も好ましい条件は、表1のカラム「第1リフォールディング」の欄に示す。
【0074】
酸化的リフォールディング工程は、停止剤(例えばEDTAなど)を加えて停止させることができる。ある態様において、該酸化は、EDTAを好ましくは最終濃度約1mMで加えて停止させるが、他の濃度を用いることができる。EDTAはCu
2+イオン(CuSO
4を用いる場合は酸化剤)を除去し、酸化を止める。EDTA以外の他のCu
2+錯化剤および/または他の濃度を用いることができる。酸化剤に応じて、例えば以下の他のキレート剤を用いることができる:三座リガンド、例えばN−ピコリノイル−エチレンジアミン、グリシン−2−ピリジルメチルアミド、Nα−(2−ピリジルメチル)−グリシンアミド、およびNα−(2−ピリジルメチル)−グリシン−エチルアミド。
【0075】
上記のごとく、本発明者らは、サルコシルの存在がG−CSFのかなりの部分が完全にリフォールドされるのを防ぐことをみいだした。本発明者らは、これは、一部、可溶化剤存在下でよりゆっくりとリフォールディングされることにより生じるかもしれないと考える。しかしながら、上記のように、生成物の品質はインキュベーション時間をより長くすると許容できないレベルになり得るため、インキュベーション時間を延長することはできない。
【0076】
本発明者らは、驚くべきことに、該リフォールディングを、可溶化剤および酸化剤の完全な除去後に第2インキュベーションにより最適化し完結することにより、予期せず、可溶性で純粋な生物活性を有するG−CSFを高収量で得ることができることをみいだした。
可溶化剤および酸化剤の除去、および他の夾雑物の除去
【0077】
中間体の精製工程において、酸化され部分的にリフォールドされたG−CSFをさらに精製する。重要なことは、可溶化剤を、該第2リフォールディング工程を行う前に完全に除去しなければならないことである。酸化剤および部分的にさらに夾雑物/不純物も除去する。
【0078】
透析/限外ろ過またはクロマトグラフィ法により可溶化剤および酸化剤を除去するための種々の方法が従来技術に開示されている。しかしながら、本発明者らは、1つのバッチ吸収工程では可溶化剤(例えばサルコシル)の除去を達成することができないことをみいだした。本発明者らが行った実験では、サルコシルはこの工程後に0.01〜0.04 mg/mlの濃度で残存し(表III)、正しくフォールドされたG−CSFの収量に悪影響を及ぼすことがわかった。
【0079】
可溶性で活性なG−CSFの収量を改善するため、可溶化剤は、完全に、すなわち、本明細書に記載の検出方法の検出レベル以下まで除去しなければならない。例えば、残存する可溶化剤の濃度は、HPLCで測定し、UVで検出することができる。本発明者らが行ったアッセイの検出限界は0.01 mg/mlであった。該方法は、Burgess、R. R. 1996. Purification of over produced E. coli RNA polymerase σ factors by solubilizing inclusion bodies and refolding from sarkosyl. Methods Enzymol. 273:145−149により詳細に記載されている。
【0080】
あらゆる適切な除去方法を用いることができる。例えば、イオン交換樹脂吸着および/または酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィにより充分な除去を達成することができる。本発明にしたがってこれら技術のいずれかまたは組み合わせを適用し、該第2リフォールディング工程におけるリフォールディングに干渉または阻害しない可溶化剤(例えばサルコシル)の濃度(好ましくは0.01 mg/ml以下、好ましくは検出限界以下)をもたらす。これら精製工程は、可溶化剤の完全な除去をもたらす限り、あらゆる順序および/またはあらゆる組み合わせで適用することができる。他の適切な精製方法を用いることもできる。すなわち、本明細書に記載の方法は、可溶化剤を完全に除去する工程を含む。すなわち、可溶化剤は、残存量が該第2リフォールディング工程に干渉または阻害しない程度に充分に除去される。したがって、該第2リフォールディング工程は可溶化剤の非存在下で行われ、すなわち、可溶化剤は該第2リフォールディング工程に干渉しない量で存在し、すなわち、可溶化剤は検出限界以下である。
【0081】
ある態様において、本発明は可溶化剤が1またはそれ以上の以下の工程により除去される方法を提供する:
i) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、および/または
ii)可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルーに止まるか、また逆に、G−CSFが該樹脂と結合し、可溶化剤がフロースルーに止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ。
【0082】
ある態様において、本発明は、可溶化剤 (または他の不純物)を1またはそれ以上の以下の工程により除去する方法を提供する:
i) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、および/または
ii)酸沈殿。
【0083】
ある態様において、本発明は、可溶化剤(または他の不純物)を1またはそれ以上の以下の工程により除去する方法を提供する:
i) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、および/または
ii)酸沈殿、および/または
iii) 可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルーに止まるか、また逆に、G−CSFが該樹脂と結合し、可溶化剤がフロースルーに止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ。
【0084】
好ましい態様において、可溶化剤(または他の不純物)は以下の工程の連続適用により除去される:
a) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して可溶化剤を陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、
b)pHをpH5以下に下げて不純物を沈殿させ、次いでろ過して沈殿物を除去し、
c) 残存可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルー中に止まる条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、
d) G−CSFが該樹脂と結合し、残存可溶化剤がフロースルーに止まる条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、
e) 増加したpHおよび塩濃度の溶出緩衝液を用いる段階または勾配放出により結合したG−CSFを陽イオン交換樹脂から溶出。
イオン交換樹脂吸着
【0085】
イオン交換樹脂吸着を用いて可溶化剤を除去することができる。
可溶化剤を除去する第1工程として、イオン交換樹脂吸着を行うことができる。適切な方法が当該分野で知られている。上記のごとく、可溶化剤(例えばサルコシル)を除去するための方法には、Dowex 陰イオン交換樹脂 (Dow Chemicals、USA)、好ましくはDowex 1X4へのバッチ吸着がある(WO8910932、Lu1992、Heidari 2001)。結合した界面活性剤を捕捉する樹脂はろ過して除去する。Dowex樹脂と非常に似た製品に、同様に用いることができるBioRadのAG樹脂 (例えばAG−1X8)がある。
【0086】
上記方法は、溶液中で荷電しているすべての可溶化剤に適用される。多くの界面活性剤は両親媒性であり、他に陰イオン性または陽イオン性のものがある。可溶化剤および該溶液のpH値に応じて、荷電は陽性または陰性でありうる。AEX物質、例えばDowexまたはAG−1の使用は、負に荷電した可溶化剤、例えばサルコシルまたはSDSに依存する。これに対し、樹脂のタイプの選択に応じたイオン交換クロマトグラフィは、陰性または陽性に荷電した可溶化剤の両方と結合することができる。負に荷電した可溶化剤は、AEX樹脂と結合し、CEX樹脂とは結合しない。陽性に荷電した物質はその反対の挙動を示す。例えば、陽イオン性脂質、セチルトリメチルアンモニア、またはアルギニンは、陽イオン交換クロマトグラフィにより除去することができる。可溶化剤に加え、他の夾雑物も該方法により少なくとも一部除去される。これらの他の夾雑物/不純物は、プロセス関連不純物、例えば宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA/RNA、エンドトキシン(例えばLPS)、酸化剤(例えば、Cu
2+)、プロセス関連化学物質(例えば、EDTA)、および生成物関連不純物(例えば凝集物)などを含みうる。
【0087】
ある態様において、該可溶化剤は、バッチ法でAEX樹脂に吸着する陰イオン性界面活性剤(detergentまたはtenside)である。好ましくは、該界面活性剤はサルコシルである。ある態様において、該サルコシルは、分析グレード(AG)AEX樹脂 (BioRad、USA)、好ましくはAG 1−Xシリーズの樹脂、最も好ましくはAG 1−X8と吸着する。ある態様において、該樹脂はディスポーザブル物質として用いる。
【0088】
好ましい態様において、該可溶化剤とAG 1−X樹脂とのバッチ吸着は、アルカリ性pH、優先的には約pH 8の緩衝液中で行う。適切な緩衝系は、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、Tris、HEPES、MOPS、HEPPS、EPPS、CAPS、CAPSO、CHES、TES、BES、TAPS、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリシン、ビシン、アセトアミドグリシン、グリシンアミド、またはpKa7以上の他の生体適合性緩衝物質に基づきうる。該吸着のための好ましい緩衝液は、Tris−HCl/pH 8、優先的には20mM Tris−HCl/pH 8である。Tris−HCl/pH8+1mM EDTAが最も好ましい。
【0089】
好ましくはAG 1−X8の量は、10〜60g乾燥樹脂/gサルコシル、最も好ましくは20g/gサルコシルである。ある態様において、初期サルコシル濃度は0.5%である。
好ましい態様において、該イオン交換樹脂吸着工程は、該可溶化剤を90%以上、95%、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、より好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.3%以上、より好ましくは99.4%以上、より好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.6%以上、より好ましくは99.7%以上、より好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上除去する。好ましい態様において、該可溶化剤はサルコシルである。ある態様において、該イオン交換樹脂吸着工程は、AG 1−X8バッチ吸着抗知恵によりサルコシルを95%以上、より好ましくは少なくとも99%除去する。ある態様において、捕捉されたサルコシルを有するAG 1−X8樹脂は、該溶液からろ過により除去される。好ましくは、該ろ過工程は、100μmのステンレススチールメッシュを用いる。より好ましくは、該ろ過工程は、100μmナイロンバッグフィルターメッシュを用いる。
【0090】
該イオン交換樹脂吸着工程は、該可溶化剤の充分に完全な除去をもたらさなければ、さらに酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィなどの精製工程を行うことができる。
酸沈殿
【0091】
所望により、酸沈殿工程を行い、他の存在しうる夾雑物を除去することができる。驚くべきことに、本発明者らは、単純な酸賃でによりかなりの部分の夾雑物を除去することができる。G−CSF、特にフィルグラスチムは、酸性pHで最良の可溶性と安定性を有することが知られており、等電点(フィルグラスチムのpI=5.65)以下のpHに下げることにより可溶性のままである。夾雑物の酸沈殿は、pHを6.5〜6.0、6.0〜5.5、5.5〜5.0、5.0〜4.5、4.5〜4.0、4.4〜3.5、3.5〜3.0などに下げることにより行うことができる。
【0092】
残存可溶化剤の存在にも関わらず、本発明者らは、尿素の添加は沈殿プロセスにさらなる有利な効果をもたらし得ることをみいだした。pH値を低下させることにより、G−CSFの非特異的な望ましくない共沈殿が生じることがあり、これは最終収量の望ましくない減少をもたらしうる。本発明者らは、この欠点をpH調整前に該溶液にサブ変性濃度の尿素を加えて用いることにより克服することができることをみいだした。尿素はG−CSFの共沈殿を有効に抑制する。この工程の最適化は、pHを酢酸または酢酸ナトリウムを用いて徐々に着実に低下させることにより最良の結果が得られた。5.0以下のpH値はすでに有効であった。かなり低濃度の尿素(すなわち約1M)で充分である。
【0093】
ある態様において、酸沈殿前の残存サルコシル濃度は0.01〜0.04 mg/mlである。ある態様において、ある態様において、pH値を濃酢酸ナトリウムまたは酢酸を加えて低下させる。好ましい態様において、pH値をpH 5.0以下、好ましくは4.8以下、最も好ましくはpH 4.3〜4.5に低下させる。ある態様において、酸性化は、尿素、好ましくは3M以下の濃度の尿素、最も好ましくは1M尿素の存在下で行う。ある態様において、該沈殿物は深層ろ過により除去される。
イオン交換クロマトグラフィ
【0094】
イオン交換を用いて可溶化剤を除去することもできる。可溶化剤を除去する工程は1またはそれ以上のイオン交換工程を含みうる。
イオン交換樹脂吸着 (酸沈殿を用いるかまたは用いない)を用いても可溶化剤が完全に除去されなかった場合は、1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィ工程を行って可溶化剤を完全に除去することができる。該イオン交換工程は、AEXおよび/またはCEXをあらゆる順番で含みうる。あらゆる他の適切なイオン交換技術を用いることができる。
【0095】
G−CSFを精製するためのイオン交換クロマトグラフィの使用は従来技術に記載されている。多くのプロセスが、AEXおよびCEX、または両方法をあらゆる順序で、またはIEX工程をHIC、IMAC、SEC、またはRP−HPLCなどの他のクロマトグラフィ法と組み合わせて用いる (背景技術参照)。
【0096】
サルコシルに関して、本発明者らは、AEXバッチ吸着および酸沈殿後にも低濃度のサルコシルが残存したままである場合、それを続くイオン交換工程で完全に除去することができることをみいだした。
【0097】
本発明者らは、酸化沈殿工程後にG−CSFが上清中に存在したままであり、pHがそのpI以下であることをみいだした。これらのpH条件下でG−CSFは陽イオン性であり、CEXと結合し、AEX樹脂とは結合しないであろう。実験でこれを確認した。
【0098】
ある態様において、該イオン交換工程は、AEX、次いでCEXを含む。AEXを非結合モード(フロースルー中にG−CSF)で用いることができ、残存可溶化剤やDNAなどの夾雑物は樹脂に結合したままであるという知見は、本発明者らに本発明のある態様として、AEX、次いでCEXの順序で連続的に組み合わせた2つのカラムの直列工程の開発を促した。AEX樹脂の主な機能は残存サルコシルを結合し、CEX樹脂の主な機能は緩衝液交換 (第2リフォールディングに備えての)である。第1カラムを通過したG−CSFは、次いで第2樹脂と結合し、該タンパク質は適切な方法によりCEXカラムから溶出させることができる。そのような方法は当業者に知られている。結合G−CSFを脱離させるための溶出方法は、段階溶出または勾配溶出のいずれかによる塩濃度の増加を含みうるか、または、G−CSFの溶出は、例えば、pH値をpI以上に増加させることにより達成することができる。さらに、これは段階溶出またはpH勾配により達成することができる。pH段階溶出を適用すると、これはさらに急速緩衝液およびpH交換の可能性をもたらす。
【0099】
ポリペプチドのクロマトグラフィに用いるAEX樹脂のための適切な官能基が知られている。これらの基は、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチル (TMAE)、 第4級アミノメチル(Q)、および第4級アミノエチル (QAE)を含む。これらにはバイオクロマトグラフィプロセスに一般に用いる官能陰イオン交換基がある。適切な市販生成物には、例えば以下のものが含まれる:Macro−Prep High Q、Macro−Prep DEAE、Nuvia Q (BioRad、USA)、TOYOPEARL DEAE−650、TOYOPEARL SuperQ−650、TOYOPEARL QAE−550 (Tosoh Bioscience、Japan)、Fractogel EMD DEAE、Fractogel EMD TMAE (Merck、Germany)、Biosepra Q Ceramic HyperD、Biosepra DEAE Ceramic HyperD (Pall Corporation、USA)、DEAE−Sepharose FF、DEAE−Sepharose CL−4B、Q−Sepharose FF、Q−Sepharose CL−4B、Q−Sepharose HP、Q−Sepharose XL、Q−Sepharose Big Beads、QAE−Sephadex、DEAE−Sephadex、Capto DEAE、Capto Q、Capto Q ImpRes、Source 15Q、Source 30Q、およびDEAE Sephacel (GE Healthcare、USA)。
【0100】
好ましい態様において、AEX樹脂はDEAEである。DEAEは、古典的弱陰イオン交換基であり、本発明らの実験において、優れた分解および高速平衡プロフィールを示した。
【0101】
CEX樹脂に用いる適切な官能基には、カルボキシメチル(CM)、スルホネート(S)、スルホプロピル(SP)、およびスルホエチル(SE)が含まれる。これらはバイオクロマトグラフィプロセスに一般的に用いられる陽イオン交換官能基である。適切な市販製品には例えば以下のものが含まれる:Macro−Prep High S、Macro−Prep CM、Nuvia S (BioRad、USA)、TOYOPEARL CM−650、TOYOPEARL SP−650、TOYOPEARL SP−550 (Tosoh Bioscience、Japan)、Fractogel EMD COO−、Fractoゲル EMD SO3− (Merck、Germany)、Biosepra CM Ceramic HyperD、Biosepra S Ceramic HyperD (Pall Corperation、USA)、CM−Sepharose FF、SP−Sepharose FF、 S−Sepharose FF、SP−Sepharose HP、SP−Sepharose XL、SP−Sepharose Big Beads、CM−Sephadex、Capto S、Capto SP ImpRes、Source 15S、Source 30S (GE Healthcare、USA)。
【0102】
好ましい態様において、CEX樹脂は、官能基としてSPを有する樹脂である。SPは古典的強陽イオン交換基であり、本発明者らの実験において、優れた分解、高速平衡、および優れた再現性を示した。
【0103】
したがって、本発明のある態様において、可溶化剤の除去 (および酸化剤および他の酸化剤の除去)に用いるAEXクロマトグラフィは非結合法で行われ、得られるフロースルーは、いかなる凝集もなく次のカラムに直接流れる。
【0104】
好ましい態様において、2つのカラム (AEX+CEX)を直接接続し、G−CSFがCEX樹脂と結合する。本発明のある態様において、AEX樹脂は弱陰イオン交換体であり、好ましくはDEAE官能基を有する。最も好ましくは該樹脂はDEAE Macro−Prep (BioRad、USA)である。ある態様において、サンプルのロードはpH5以下、好ましくは4.3〜4.5で、最も好ましくはpH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液中で行う。
【0105】
本発明のある態様において、CEX樹脂は強陽イオン交換体であり、好ましくはSP官能基を有する。最も好ましくは、該樹脂はToyopearl SP−650 (Tosoh、Tokio)である。好ましい態様において、CEX樹脂からのG−CSFの溶出は、溶出緩衝液中のpH値を増加させることにより行う。より好ましくは、該溶出はpH段階勾配で行う。
【0106】
ある態様において、CEX溶媒緩衝液は、アルカリ性pH、好ましくはpH 8を有し、最も好ましくは該溶出緩衝液は20mM Tris−HCl/pH 8である。
【0107】
最も好ましい態様において、DEAE Macro−PrepカラムをToyoperl SP−650カラムと直接接続し、サンプルのロードをpH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液中で行い、G−CSFの溶出をTris−HCl緩衝液pH 8を用いるpH工程により行った。
【0108】
本明細書に記載の方法のある態様において、可溶化剤および他の不純物を下記工程の連続適用により除去する:
a) AEX、
b) 酸沈殿、
c) AEX、および
d) CEX。
【0109】
工程a)において、該可溶化剤は陰イオン交換樹脂と結合する。該樹脂物質はろ過により除去することができる。
【0110】
工程b)において、pHはpH5以下、例えば4〜5でありうる。沈殿物はろ過により除去することができる。
【0111】
工程c)において、残存可溶化剤は該樹脂と結合する。G−CSFはフロースルー中にとどまる。
【0112】
工程d)において、G−CSFは該樹脂と結合する。残存可溶化剤はフロースルー中にとどまる。
【0113】
これに、結合したG−CSF、その機能的変異体を段階または勾配溶出によりCEX樹脂から溶出する工程が続きうる。溶出緩衝液は、増加したpHまたは塩濃度を有しうる。増加したpHとは工程b)より高いpH、すなわち、pH5以上、または6以上、または7以上を意味する。
第2リフォールディング (フォールディングの完結)
【0114】
すでに記載したように、驚くべきことに、モノマーの可溶性で活性なG−CSFの収量は、リフォールディングの第2サイクルを行うと顕著に増加させることができることがわかった。該実験は、「古典的」サルコシル/CuSO
4法を用いて得られたG−CSFが完全にはリフォールドされなかったことを示唆する。
【0115】
該第2リフォールディング工程は、部分的にリフォールドされたG−CSFの希釈、次いでインキュベーションを含む。
【0116】
該希釈用の好ましい溶媒は、低電導性緩衝液、またはより好ましくは水である。該希釈は、5倍、または4倍、または3倍、好ましくは2倍希釈でありうる。低電導度は、少なくとも2mS/cm以下、より好ましくは1mS/cm以下の電導度を意味する。適切な緩衝系は、例えば、濃度10mM Trisまたはそれ以下またはpH値が7以上のTris/HClである。同じ低電導度およびpHの他の緩衝液を用いることもできる。
【0117】
いかなる理論にも縛られるものではないが、本発明者らは以下の検討をおこなった。先の論文(Lu 1992)で知られているように、G−CSFの該第2ジスルフィド架橋の形成は、比較的遅い動力学を有する。還元遊離システイン部分を有する完全にはリフォールドされていない中間体は、凝集および/または沈殿のリスクがある(Rudolph 1990、Rudolph 1996)。G−CSFの場合、3個の対になっていないシステインを有する中間体は、Cu
2+濃度および温度に応じてかなり長時間存在し得る (Lu 1992)。凝集および沈殿は、ろ過およびクロマトグラフィ工程中にG−CSFの損失を生じる。本発明者らは、改善されたフォールディング効果は下流プロセスにおける収量の増加をもたらすと仮定した。本発明者らは、第2リフォールディング工程が収量を改善することをみいだした。
【0118】
本発明者らは、驚くべきことに、弱アルカリ性pHでの該第2リフォールディング工程のインキュベーションが有益であることをみいだした。これは、G−CSF、特にフィルグラスチムがそのpI (5.65)以上のpH値で可溶性および安定性が低い比較的疎水性のタンパク質であることから特に驚くべきことである。pH4またはそれ以下の酸環境で最も可溶性および安定である。したがって、古典的精製方法(例えばクロマトグラフィ)は、より低いpHと、好ましくは酢酸緩衝液中pH 4〜5.5で行われる。これに対して、本発明者らは、アルカリ性pHでインキュベーションするとさらに収量増加を促すことをみいだした。本発明者らは、酸化剤非存在下のアルカリ性pHがスルホヒドリルの完全な酸化、すなわち、G−CSFの両天然ジスルフィド架橋の形成に重要であると考える。
【0119】
したがって、該第2リフォールディング工程は、アルカリ性pH、すなわちpH7またはそれ以上で行うことができる。pHは7以上でありうる。該第2リフォールディング工程は、pH7〜10、または7〜9、または7〜8.5、または7〜8、または7.5〜10、または7.5〜9、または7.5〜8.5、またはpH 約8、またはpH8で行うことができる。
【0120】
該第2リフォールディング工程のインキュベーションは、可溶化剤非存在下で行う。
好ましい態様
【0121】
該第2リフォールディング工程は、例えば以下の緩衝液の一つ中で行うことができる:リン酸塩、ホウ酸塩、Tris(トリス)、HEPES、MOPS、HEPPS、EPPS、CAPS、CAPSO、CHES、TES、BES、TAPS、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリシン、ビシン、アセトアミドグリシン、グリシンアミド、またはpKa7以上の他の生体適合性緩衝物質。該第2リフォールディング工程のための好ましい緩衝液は、Tris−HCl/pH 8、好ましくは10mM Tris−HCl/pH 8である。
【0122】
該第2リフォールディング工程は、低濃度の残存界面活性剤(例えば0.01 mg/mlまたはそれ以下)で行うことができる。
【0123】
該第2リフォールディング工程は、例えば、0.02 mol/lまたはそれ以下の溶液のイオン強度で行うことができる。
【0124】
該第2リフォールディング工程は、例えば、0〜20℃、または2〜8℃、または2〜5℃の温度範囲で行うことができる。
【0125】
該第2リフォールディング工程は、例えば、少なくとも24 h、または24 h以上、または30〜48 h、または32〜42 hのインキュベーション時間で行うことができる。
【0126】
該第2リフォールディング工程は、溶液の低い電導度、例えば0.1〜2mS/cm、または0.2〜1.5mS/cm、または0.5〜1.0mS/cmで行うことができる。
【0127】
該第2リフォールディング工程は冷却下で行うことができる。
【0128】
該第2リフォールディング工程は連続攪拌下で行うことができる。
【0129】
これらのパラメーターの1またはそれ以上を本明細書に記載の方法に用いることができる。
【0130】
ある態様において、部分精製された(優先的には純度約80〜90%の)G−CSFを用いてリフォールディングを完結する。
【0131】
好ましくは、リフォールディングは、12時間、冷却条件下の低電導性緩衝液中で部分的に離フォールドされたG−CSFをインキュベーションすることにより完結する。
【0132】
好ましくは、リフォールディングの完結は、2mS/cm以下の電導度、最も好ましくは1mS/cm以下の電導度で行う。
【0133】
ある態様において、リフォールディングの完結は、pH7以上、好ましくは (約) pH8で行う。
【0134】
該第2フォールディングインキュベーション用の緩衝液は、好ましくは(約)pH 8の10mM Tris−HClである。
【0135】
ある態様において、該第2フォールディングのためのインキュベーションは、冷却条件下(優先的には2〜8℃)で行う。
【0136】
好ましい態様において、第2フォールディングのインキュベーション時間は、12時間以上、より好ましくは24時間以上、最も好ましくは32〜42時間である。
【0137】
種々の最適化実験に基づくフォールディング(第2リフォールディング)を完結するための特に好ましい条件は、表Iの「第2リフォールディング」の欄に示したものである。
最終精製(ポリッシング工程)
【0138】
および第2リフォールディング工程の上記組み合わせは、活性モノマーG−CSFの収量の増加をもたらす。
【0139】
所望により、得られたG−CSFの意図する用途に応じて、続く下流プロセス、1またはそれ以上のポリッシング工程を行うことができる。本明細書に記載の方法は、さらに、1またはそれ以上のポリッシング工程(s)を含みうる。該ポリッシング工程は、該第2リフォールディング工程後のリフォールドされたG−CSFのさらなる精製をもたらす。
【0140】
続く下流プロセス(ポリッシング)は、AEXおよびCEXクロマトグラフィ、またはG−CSFポリッシング/精製、例えばHIC、IMAC、SEC、またはRP−HPLCのために当該分野で用いられる他の方法 (背景技術の参考文献参照)の使用を含みうる。該ポリッシング工程は、これらの方法の2またはそれ以上の組み合わせも含み得る。
【0141】
該第2フォールディング工程後のG−CSFの純度は典型的には80〜90%である(表III)。これは医薬品質に適合しない。該生成物を活性医薬成分として用いる場合は、求める純度を達成するために少なくとも1のさらなるポリッシング工程を行う。そのようなポリッシング工程は、宿主または該プロセスから生じる残存夾雑物を除去する。さらに、あらゆる生成物関連物質および関連不純物を除去する。
AEX
【0142】
該下流ポリッシングは、1またはそれ以上のAEX工程を含みうる。該ポリッシング工程はAEXを含みうる。
【0143】
当業者は適切なAEXを選ぶことができる。該樹脂の選択は、求める分離性能、プロセス時間、クリーニングロバスト性、再現性、結合能、ロット間の一貫性、および全体的経済性などに基づいて行うことができる。好ましい態様では官能基DEAEを用いる。当業者は、該官能基の他に、AEX樹脂の主鎖の性質とビーズのサイズを考慮する必要があると認識するだろう。特に好ましい態様において、メタクリレート誘導体に基づくマトリックス(例えばMacro−Prep(登録商標)およびToyopearl(登録商標))を用いる。そのようなマトリックスは、特に良好な分解性と再現性を示した。メタクリレート物質は、より強固であり、例えば、よく用いられる架橋アガロースマトリックス(例えばSepharose(登録商標))より良好な寿命サイクルを有する。AEXは、(可溶化剤を除去するための先の工程と異なり)直ちに結合法に用いることができるので、段階的もしくは勾配により塩濃度を増加させるか、または段階的または勾配により溶出緩衝液のpHを低下させることによりもたらされる選択的溶出条件を用いることができる。
【0144】
AEX樹脂物質は上記したとおりである。
【0145】
当業者は、緩衝液などの先に用いた条件に応じて適切な下流ポリッシング法を選ぶことができる。例えば、好ましい態様において、該第2リフォールディング工程は、約pH8の低電導性緩衝液中で行う。これは、結合法のAEXポリッシング工程には理想的な初期状況であり、夾雑物のさらなる除去と所望により低pH緩衝液への容易な緩衝液交換(G−CSFはより可溶性でより安定である)を可能にする。
CEX
【0146】
下流ポリッシングは1またはそれ以上のCEX ポリッシング工程を含みうる。該ポリッシング工程はCEXを含みうる。
【0147】
AEX工程の代替物として(またはそれに加えて)、CEXクロマトグラフィを効率的なポリッシング工程として用いることもできる。この方法では、結合法においてクロマトグラフィを可能にするために、試料をロードする前にpHを5.5以下に適合させる必要があり、これはンパク質を充分に分離するために重要である。官能的陽イオン交換基および該マトリックスをAEXについて記載したのと同じ基準に従って選択することができる。好ましい態様において、メタクリレート主鎖上のSPおよびCM官能基(Toyopearl(登録商標)、Macro−Prep(登録商標))を用いる。特に好ましい態様では、Toyopearl CM−650を用い、より好ましくはToyopearl SP−650を用いる。
【0148】
CEX樹脂物質は上記の通りである。
【0149】
CEX樹脂と結合するとG−CSFは、段階的または勾配により塩濃度を増加させるか、または段階的または勾配により溶出緩衝液中のpHを増加させることによりもたらされる選択的条件下で溶出することができる。
【0150】
当業者は、クロマトグラフィの分解性を最適化する方法を知っている。
【0151】
ある態様において、G−CSF生成物の望む品質を達成するには1クロマトグラフィ工程、AEXまたはCEXで充分である。
【0152】
他の態様において、該下流プロセスは、2またはそれ以上のポリッシング工程を含む。例えば、該ポリッシングは、2またはそれ以上のクロマトグラフィ工程を含みうる。すなわち、所望によるかまたは必要であれば、2またはそれ以上のイオン交換ポリッシング工程を行うことができる。2つのポリッシング工程を用いる場合はAEX、次いでCEXを用いるのが好ましい。そのような場合は、両工程は、結合モードで行う。この順番の利点の1つは、G−CSFが最終的に酸性pHで得られることであり、例えば濃縮G−CSFの長期保存を可能にする。2つのIEXポリッシング工程の使用は、特に高純度をもたらすことが証明された(表IV)。
【0153】
該下流ポリッシング工程は、G−CSFの以下の純度をもたらす:少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、または99.5%。
【0154】
本発明において純度を計算するために(実施例13参照)、HPLCクロマトグラムを用い、主要ピーク(面積)を統合した。あらゆる残存「不純物」がいわゆる「生成物関連不純物」であり、これはそれらが修飾、例えば酸化 (異なる種)、脱アミド、二量化、凝集、または今までのところ構造的に解明されていない異性化を有するG−CSF分子であることを意味する(表IV)。もちろんこれら生成物関連物質は微量存在するだけである。最終精製G−CSF調製物中の「生成物関連不純物」、例えばHCP、DNA、または細菌エンドトキシンは、非常に低いppmレベルで検出可能であるか、全く検出不能であることに注目すべきである(表IV)。そのような純度は、他の箇所では見かけ上均質であると報告されるだろう。純度を測定するための分析方法は実施例13に開示している。
図3は、基準として用いた市販のEU承認医薬製品(3A)と比較した精製したG−CSFバッチ(3B)のSEC−HPLCクロマトグラムの例を示す。微量の凝集物が主要ピークの左側にみられる。主要ピークの右側のピークは、不純物ではなく溶媒によって生じたものである。これらのクロマトグラムは、記載した方法にしたがって精製したG−CSFが充分な品質(医薬グレードであることも)であることを示す。
【0155】
本発明のある態様において、完全にリフォールドしたG−CSFは、さらに1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィなどにより精製される。好ましくは、該イオン交換クロマトグラフィは、陰イオン交換クロマトグラフィ、次いで陽イオン交換クロマトグラフィを含む。ある態様において、純度約80〜90%の部分精製されたG−CSFは、さらに2つのポリッシング工程:AEXおよびCEXにより95%以上に精製される。ある態様において、該AEX工程の次にCEX工程を行う。好ましくは両工程は結合モードで行う。
【0156】
本明細書に記載の方法を用いて、G−CSFを医薬グレード品質で得ることができる。そのようなG−CSF調製物は、治療的適用に適しているか、または例えばポリエチレングリコールを用いる続くコンジュゲーションの中間体として用いることができる。
【0157】
ある局面において、本発明はG−CSFの精製方法を提供する。該方法は、本明細書に記載の第1リフォールディング工程と第2リフォールディング工程の間の可溶化剤の除去に用いることもできる。本発明は、以下の工程を含む、G−CSFの精製方法、および/または封入体からG−CSFを可溶化するために用いる可溶化剤の除去方法を提供する:
e) G−CSFが該樹脂と結合する条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、および
f) 増加したpHまたは増加した塩濃度の溶出緩衝液を用いる段階または勾配溶出による結合G−CSFの溶出、および
g) G−CSFが該樹脂と結合する条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、および
h) 増加したpHまたは塩濃度の溶出緩衝液を用いる段階または勾配溶出による結合G−CSFの溶出。
【0158】
「低下した/増加したpH」または「増加した塩濃度」は、カラム平衡化、サンプルローディングまたは洗浄用の緩衝液と比べて溶出に用いる緩衝液に言及する。AEXおよびCEXに関する適切な物質および条件は先に述べた。好ましい態様において、該方法は、陰イオンおよび陽イオン交換樹脂両方の主鎖ポリマーがメタクリレート誘導体を含むことを特徴とする。ある態様において、AEX樹脂の官能基はジエチルアミノエチル(DEAE)基である。ある態様において、CEX樹脂の官能基は、カルボキシメチル(CM)基である。
【0159】
ある態様において、陰イオンおよび陽イオン交換樹脂の主鎖ポリマーは、架橋アガロース、例えば、Sepharose(登録商標)を含まない。好ましい態様において、AEXおよび/またはCEX 陰イオンおよび/または陽イオン交換樹脂の主鎖ポリマーは、メタクリレート誘導体を含む。より好ましい態様において、AEX樹脂は、DEAE Macro−Prep (BioRad)であり、CEX樹脂はToyopearl CM−650 (Tosoh)である。ある態様において、AEXカラムは、pH7以上の低電導性緩衝液、好ましくは10mM Tris−HCl/pH 8で平衡化する。
【0160】
ある態様において、G−CSFは、好ましくは勾配、最も好ましくは直線勾配で塩濃度を増加させることによりAEXカラムから溶出する。好ましくは、該溶出は、Tris−HCl/pH 8緩衝液中の直線NaCl勾配を用いて行われる。ある態様において、CEX工程前に、AEXカラムから溶出したG−CSFのpH値を調節し、好ましくは該pHをpH5.5以下、最も好ましくは(約)pH 4.5に調節する。優先的には、AEXカラムから溶出したG−CSFを、水で2倍に希釈し、pHを50%酢酸で滴定して(約)4.5に調節する。ある態様において、CEXカラムを、pH5.5以下の低電導性緩衝液、好ましくは20mM酢酸ナトリウム/pH 5.3で平衡化する。
【0161】
ある態様において、G−CSFを、好ましくは勾配、最も好ましくは直線勾配で塩を増加させてCEXカラムから溶出した。優先的には、CEXカラムからのG−CSFの溶出は、pH5.3の直線酢酸ナトリウム勾配を用いて行う。
【0162】
好ましい態様において、G−CSFをIBから可溶化し、リフォールし、
図2の精製スキームに記載の工程の順序に従って精製する。
【0163】
本発明のある態様において、ポリッシング後の最終精製G−CSFを、好ましくはSephadex G−25を用いるゲルクロマトグラフィにより処方する。
【0164】
ある態様において、処方用緩衝液は、ソルビトールおよびポリソルベートを含み、より好ましくは該処方用緩衝液は、10mM酢酸ナトリウム/pH 4/5%(w/v)ソルビトール/0.006% (w/v)ポリソルベート80を含む。