特許第6282630号(P6282630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282630封入体からのG−CSFリフォールディング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282630
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】封入体からのG−CSFリフォールディング方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20180208BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20180208BHJP
   C07K 14/53 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C12P21/02 Z
   C07K1/18
   C07K14/53ZNA
【請求項の数】21
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-500867(P2015-500867)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公表番号】特表2015-512377(P2015-512377A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2013055531
(87)【国際公開番号】WO2013068603
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】P1200172
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】596035695
【氏名又は名称】リチュテル・ゲデオン・ヴェジェーセティ・ジャール・ニュイルヴァーノシャン・ミューコェデー・レースヴェーニュタールシャシャーグ
【氏名又は名称原語表記】Richter Gedeon Nyrt.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】フェレンツ・フェルフォルディ
(72)【発明者】
【氏名】アンドラーシュ・バッラギ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーノシュ・ベーチ
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特表平02−504521(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/001056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12P
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む封入体からの果粒球コロニー刺激因子 (G-CSF)のリフォールディング方法:
a) 可溶化剤の存在下で G-CSFを可溶化し、
b)酸化剤および可溶化剤の存在下で可溶化G-CSFをインキュベーションすることを含む酸化および第1リフォールディング工程を実施し、
c)イオン交換樹脂吸着および/またはイオン交換クロマトグラフィにより可溶化剤を除去し、
d)工程(c)のG-CSFを2mS/cm以下の低電導性緩衝液で希釈しインキュベーションすることを含む第2リフォールディング工程を実施する。
【請求項2】
該封入体が、微生物由来である請求項1記載の方法。
【請求項3】
該微生物がE. coliである請求項2記載の方法。
【請求項4】
G-CSFが組換えウシまたはヒトメチオニル-G-CSFである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
可溶化剤がN-ラウロイルサルコシンである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
酸化剤がCuSO4である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
G-CSFの可溶化がpH7より大きいpH値で行われる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
可溶化剤が0.5%〜1.5%の濃度のN-ラウロイルサルコシンである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該酸化および第1リフォールディング工程が少なくとも2時間実施される請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該酸化および第1リフォールディング工程が気流下で冷却せずに実施される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該酸化および第1リフォールディング工程が、7〜9のpH値および/または20〜28℃の温度で、および/または15〜25時間実施される請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(c)の該可溶化剤の除去が、AEXおよびCEXを含む請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程(c)の該可溶化剤の除去が以下の工程を含む請求項1〜12のいずれかに記載の方法:
a)G-CSF溶液と懸濁樹脂物質を混合してイオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去し、および/または
b)可溶化剤が該樹脂と結合し、G-CSFがフロースルー中に止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ、および/または
c)G-CSFが該樹脂と結合し、可溶化剤がフロースルー中に止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ。
【請求項14】
可溶化剤および他の不純物を下記工程を連続的に適用することにより除去する請求項1〜13のいずれかに記載の方法:
(i)AEX、
(ii)酸沈殿、
(iii)AEX、および
(iv)CEX。
【請求項15】
該可溶化剤および他の不純物を下記工程を連続的に適用することにより除去する請求項1〜14のいずれかに記載の方法:
a)G-CSF溶液と懸濁樹脂物質を混合して該可溶化剤をイオン交換樹脂物質と結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去し、
b)pHをpH5以下に下げて不純物を沈殿させ、次いでろ過して該沈殿物を除去し、
c)残存可溶化剤が該樹脂と結合し、G-CSFがフロースルー中に止まる条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、および/または
d)G-CSFが該樹脂と結合し、残存可溶化剤がフロースルー中に止まる条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、
e)増加したpHまたは塩濃度の溶出緩衝液を用いる工程または勾配溶出により陽イオン交換樹脂から結合G-CSFを溶出する。
【請求項16】
該第2リフォールディング工程を2mS/cm以下の低電導性緩衝液中および/または冷却条件下で、および/または12時間以上実施する請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
該第2リフォールディング工程を2.0 mS/cm以下の電導度および/または2〜8℃の温度で、および/または少なくとも24時間実施する請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
該第2リフォールディング工程をpH7以上のpH値で実施する請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
さらに、1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィを含むポリッシング工程を含む請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
該ポリッシング工程中の1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィが陰イオン交換クロマトグラフィ、次いで陽イオン交換クロマトグラフィを含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィが以下の工程を含む請求項19記載の方法:
a) G-CSFと該樹脂が結合する条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、
b)低下したpHまたは増加した塩濃度の溶出緩衝液を用いる工程または勾配溶出による結合G-CSFの溶出、
c) G-CSFが該樹脂と結合する条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、
d)増加したpHまたは塩濃度の溶出緩衝液を用いる工程または勾配溶出による結合G-CSFの溶出、
ここで、陰イオンおよび陽イオン交換樹脂の主鎖ポリマーが共にメタクリレート誘導体を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入体からのG−CSF (コロニー刺激因子)の新規リフォールディング方法に関する。特に、本発明は、2つのリフォールディング工程を含む方法に関する。本発明は、 (a)G−CSFの可溶化、(b) 酸化的リフォールディング (可溶化剤存在下の第1リフォールディング工程)、(c)可溶化剤の除去、および(d) 第2リフォールディング工程 (可溶化剤非存在下)によるG−CSFのリフォールディング方法に関する。また、本発明は、可溶化剤の新規除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内因性造血成長因子、顆粒球コロニー刺激因子 (G−CS、同義語「コロニー刺激因子3」=CSF3)は、骨髄内の前駆細胞の増殖および分化、ならびに成熟好中性顆粒球(「好中球」)の末梢血中への放出を制御する。急速に分裂する細胞に作用する癌化学療法は、しばしば、「好中球減少症」という副作用をもたらす。好中球減少症は、末梢血中の好中球数の減少であり、癌に対する骨髄抑制化学療法を受けた患者の3分の1以上が罹患する。好中球減少症になった患者は、発熱し(「発熱性好中球減少症」)、感染リスクが増加しうる。敗血症などの生命を脅かす消化管疾患および肺疾患が生じる。化学療法の次のサイクルは、患者が好中球減少症から回復するまで遅らせなければならないかもしれない。組換えヒトG−CSFは、有効な医薬物質であり、化学療法誘発性好中球減少症の治療に有効に適用される。組換えヒトG−CSFは、血中の好中球数を回復し、臨界値以上に保つ (Dale 2002)。
【0003】
天然ヒトG−CSFは、174アミノ酸からなるO−グリコシル化タンパク質であり、比較的疎水性である。該グリコシル化形の炭化水素鎖は、トレオニン133に位置する。この主要形に加えて、さらに3アミノ酸を有する別のスプライス形がin vivoで生じうる (Zsebo 1986)。組換えヒトG−CSFがE. coli中で発現すると、以下のことを観察することができる:第1に、組換えタンパク質が封入体中に産生される;第2に、得られたG−CSF分子は、天然炭化水素鎖を欠き、第3に、該組換えG−CSFは、さらなるN末端メチオニンを有する。このG−CSF分子は、N−メチオニル−G−CSFまたはrmet(hu)G−CSFと呼ばれ、国際一般名(INN)を「フィルグラスチム(filgrastim)」といい、分子量は18.7〜18.9 kDである (Welte 1996)。フィルグラスチムの理論相対質量 (Mr)は18.799である。G−CSFポリペプチド鎖は、5個のシステインを含み、フィルグラスチムの構造観察はCys 37−43とCys 65−75の間に2個のジスルフィド結合を示し、対になっていないCys 18は還元されたままである(Wingfield 1988)。最初の市販品は、E.col発現組換えヒトmet−G−CSFであるフィルグラスチムを含むAmgenのNeupogen(登録商標)であった(Welte 1996)。EU(欧州連合)で承認された別のG−CSF製品であるレノグラスチムを含有するChugaiのGranocyte(登録商標)は、組換え哺乳動物(CHO)細胞に由来し、グリコシル化される(Holloway 1996)。さらに、Amgenは2002年に改良形のG−CSFであるフィルグラスチムとポリエチレングリコールのコンジュゲートからなるNeulasta(登録商標)を発売した(INN=ペグgフィルグラスチム) (Molineux 2004)。最後に、Neupogen(登録商標)の種々のバイオ後続品が、ヨーロッパでここ数年間に種々のジェネリック医薬品会社から発売された。
【0004】
形質転換微生物におけるヘテロローガスな組換えポリペプチドの過剰発現は、しばしば組換えタンパク質を含むいわゆる封入体(IB)の形成をもたらす。この封入体は、高屈折性の不定形凝集物であり、その中のポリペプチドは、一般的にホールディングされておらず、還元され、不活性で、一般的水性緩衝液中で少なくともある程度不溶性である。封入体から組換えタンパク質を得る方法は、文献に記載されており、一般的には細胞の溶解および破壊、次いで遠心分離を含む。大部分の封入体を含むペレットは、通常、界面活性剤で洗浄し、脂質膜、リポ多糖(LPS)、および他の細胞デブリもしくは夾雑物を除去する。
科学文献は、そのような封入体を細菌から単離し、精製し、次いで組換えタンパク質を可溶化し、その天然の状態にリフォールディングすることができる多くの方法を開示する(用語「フォールディング」および「復元」は本明細書では同義に用いる)。
種々の戦略が組換えタンパク質を可溶化するために用いられた。イオン性および非イオン性界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウムもしくはN−ラウリルサルコシンン(サルコシル))に加え、カオトロピック試薬(例えば塩酸グアニジンまたは尿素)を用いて目的とするタンパク質を可溶化した。しばしば、可溶化は、還元剤、例えばジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスロール(DTE)、または2−メルカプトエタノール(ME)の存在下、アルカリ条件下(pH 8〜12.5)で行う(Marston 1986、Rudolph 1990、Rudolph 1996、Dietrich 2003)。典型的には、可溶化タンパク質は、最初に完全に還元および不活化され、次いでリフォールディングを受け、次いでクロマトグラフィ精製される。
【0005】
例えば、EP0219874は、E. coli 封入体からの組換えタンパク質の一般的リフォールディング方法を開示する。可溶化のために、カオトロピック剤GuHClおよびアルギニンを高pHで用いた。EP0219874は、GSH/GSSGによりもたらされる酸化還元条件下でのジスルフィド架橋の形成について開示する。Rudolph 1990は、以下の順の工程を開示する:a)pH8〜9の還元条件下 (DTT、DTE、または2−ME)で可溶化するためのGuHClまたは尿素の使用、b)透析またはゲルクロマトグラフィ (Sephadex G−25)による試薬の除去、およびc)添加したGSH/GSSGの効果に基づくオキシドシャッフリング系またはタンパク質チオールの逆転化学修飾によるジスルフィド形成(=リフォールディング)。
【0006】
別の総説(Rudolph 1996)は、アンフォールドタンパク質、フォールディング中間体、および天然フォールドタンパク質の可溶性と安定性に影響を及ぼすことができるリフォールディング時に用いる添加物について強調している。著者らは、可溶化(pH8で6M GuHClおよび100mM DTTを用いて可溶化)およびリフォールディングのための一般的な基本プロトコールを示唆する。還元剤を透析により除去し、pHを4.5に調整する。フォールディングを、EDTAおよびGSH/GSSGを含む緩衝液(pH7.5〜8.5)中高希釈(1:200)で行う。
【0007】
Dietrich 2003は、還元条件下(DTE)のE. coli封入体由来タンパク質の6M GuHClによる可溶化を開示している。リフォールディングインキュベーションは、GSH/GSSG存在下、1Mアルギニン、pH9と定義された。最終精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィ (HIC)、次いでSP Sepharose(セファロース)を用いる陽イオン交換クロマトグラフィ (CEX)を用いて行った。
【0008】
GE Healthcare 2007から利用可能なアプリケーションノート(アプリケーションノート18−1112−33、1−4)も一般的プロトコールについて考察している。可溶化は、8M尿素または6M GuHClの使用が推奨される。リフォールディングは、ほぼ中性pHで徐々に透析または希釈すると記載された。あるいはまた、クロマトグラフィ工程をリフォールディングに用いることができる。示唆されたクロマトグラフィ法には、サイズ排除クロマトグラフィ (SEC)、イオン交換クロマトグラフィ (IEX)、および疎水性交互作用クロマトグラフィ (HIC)(透析または希釈の代わりに示唆されている)が含まれる。
【0009】
WO00/02901は、リフォールディングタンク内で高圧を適用することによる一般的リフォールディング法を開示する。所望により、カオトロピック剤および/または酸化還元化合物(DTT/GSSG)はリフォールディング緩衝液中に存在する。
【0010】
1980年代に始まる生物活性組換えG−CSFの製造方法の長い開発の歴史がある。大部分の刊行物はE. coliを用いる産生を開示する。この宿主ではG−CSFは、良く発現し、通常、封入体に蓄積する。用いた他の発現系は、例えばCHO細胞(Holloway 1994)、ヒト細胞(WO01/04154)、または酵母(US5055555)であった。
【0011】
Zsebo 1986は、G−CSFの2%サルコシルによる可溶化、および可溶性G−CSFのAEXおよびCEXクロマトグラフィによる精製について開示した。
【0012】
WO87/01132は、E. coli由来ヒトG−CSF (フィルグラスチム)を開示する。以下の2つの代替リフォールディング/精製法が開示された。プロセス1):G−CSF を、1% ラウリン酸 (飽和C15脂肪酸)で可溶化し、40μM CuSO4で酸化し、次いでC4物質を用いてHPLC−精製した。プロセス2):可溶化を2%サルコシルで行い、次いで20μM CuSO4で酸化した。G−CSFをアセトンで沈殿させ、再度6M GuHClで可溶化し、この条件によりアンホールドされた。ゲルクロマトグラフィ (Sephadex G−25、リフォールディング工程)でGuHClの除去し、次のクロマトグラフィはCEX (CM−Cellulose)、次いで最終サイズ排除クロマトグラフィ (SEC、Sephadex G−75)であった。別の可溶化剤がDevlin 1988により用いられ、IBペレットを10% SDSで可溶化し、SDSロードしたG−CSFを、SEC (Sephacryl S−200、0.1% SDS中)、次いで逆相高圧液体クロマトグラフィ (RP−HPLC、Vydac C4)により精製した。
【0013】
これらの初期の刊行物は、組換えG−CSFの商業的大規模生産に適したリフォールディングおよび精製方法を提供することではなく、適切な発現系を構築し、さらにG−CSFを特徴づけるための精製した物質を得ることに注目した。
【0014】
WO89/10932は、さらに進歩した方法として、E. coli IBからのヒトおよびウシG−CSFの精製方法を開示した。IBを界面活性剤(デオキシコーレート)で処理し、夾雑物を抽出する。サルコシルを用いてG−CSFを可溶化した。酸化をCuSO4を用いて行った。さらになる方法がLu 1992 and Heidari 2001により開示された。
【0015】
2%サルコシル/40μM CuSO4を用いるWO89/10932の方法を含む可溶化および酸化的リフォールディングのための上記方法の種々の代替法が公表されている。これらの戦略のほとんどは、GuHClおよび尿素などの強変性剤を用い、アルカリ性pH、還元条件下で水素結合を完全に破壊する古典的一般的な可溶化アプローチに従う(Marston 1986、Rudolph 1990、Rudolph 1996、上記参照)。特により最近の刊行物はGuHCl−または尿素−可溶化G−CSFのリフォールディングの方を選択している。例えば、Wingfield 1988は、E. coli IBからの野生型G−CSFおよび突然変異タンパク質の精製を開示する。可溶化は6M GuHClを用いた行った。第1精製は、アンフォールドタンパク質について4M GuHCl存在下SEC (Sephacryl S200)を用いて行った。次に、G−CSFを酸化し、次いで、3M尿素に対して透析してリフォールディングし、さらにCEX (CM−Sepharose)およびSEC (Ultrogel AcA54)を用いて精製した。
【0016】
Kang 1998は、E. coli IBにおけるN−meth−hu−G−CSF発現について記載した。G−CSFをアルカリ条件下、2M尿素で可溶化した。希釈し、室温で16時間インキュベーションしてリフォールディングを開始した。次に、pHをpH5.5に下げ、新たに生じた沈殿物を除去した。2つの次のクロマトグラフィ(CEX工程(SP Sepharose)、次いでポリ緩衝液(polybuffer)を用いるクロマトフォーカシング工程(PBE94))を行った。
【0017】
WO98/53072は、E. coli中に発現し、シグナルペプチドを開裂せず、IB中に蓄積した、N末端に小リーダーペプチドを有するG−CSFを開示する。可溶化は、還元条件下 (10mM DTT) で8M尿素中で行った。可溶化G−CSFを、AEX (DEAE−Sepharose)、次いでSEC (Sephacryl 200)に流した。2mM GSH存在下のかなり短いインキュベーションを含む酸化的リフォールディングが開示された。
【0018】
別の刊行物(Wang 2005)では、封入体を100mM 2−MEおよび5mM EDTA(pH 8)存在下、8M尿素で可溶化した。マトリックス結合リフォールディングを次のAEXクロマトグラフィ (Q−Sepharose)において行った。G−CSFはカラムに結合し、結合したままであったが、移動相中の尿素濃度は低下した。緩衝液はGSH/GSSGを含み、溶出したG−CSFは生物活性を有した。さらなる方法がWO01/87925およびWO2004/015124に記載された。
【0019】
WO2004/001056は、pH 8で6時間の第1インキュベーション、次いでpH 4〜5で6〜8時間の第2インキュベーションを含む方法を開示する。
【0020】
WO2006/097944は、IBをアルカリpH(8〜11)で尿素またはGuHCl (2〜6M)を用いて可溶化し、次いで室温で6〜16時間酸性pHで希釈した後リフォールディングを行ったことを開示する。
【0021】
WO2006/135176は、G−CSF 突然変異タンパク質を精製し、次いでPEG化することに関する。G−CSF変異体をE. coli中で発現させ、pH11で8M尿素を用いてIBから可溶化した。リフォールディングを2M尿素および50mMグリシンに希釈して行い、pH9で一夜インキュベーションした。EP1630173は、G−CSF (フィルグラスチム)をE. coli IBから単離し、リフォールディングする方法を開示する。該方法は、変性剤、優先的にGuHClを用いる抽出に基づく。リフォールディングは、GSH/GSSG存在下、高pH、および低温度で行った。
【0022】
EP1837346は、E. coli IBに発現したG−CSF (フィルグラスチム)の単離、リフォールディング、および精製方法を開示する。GuHClを用いて可溶化し、リフォールディングをGSH存在下で行った。次のゲルクロマトグラフィ (Sephadex G−25)を変性剤と緩衝液の除去に用いた。
【0023】
Rao 2008は、E. coli IBからG−CSFを製造する方法を開示する。IBを、著しく高いpH(pH 12〜12.8)で、25mMシステイン存在下、2M尿素に溶解した。同様のG−CSF (フィルグラスチム)の可溶化、リフォールディング、および精製方法がVanz 2008により記載されている。Khalilzadeh 2008は、上記サルコシル/CuSO4を用いる方法の修飾を示唆した。洗浄したIBの可溶化を8M尿素を用いて行った。リフォールディングを、尿素を8Mから0Mまで減少させる段階透析により行った。CuSO4濃度は5〜60μMの範囲であり、最適濃度は40μMであった。クロマトグラフィは、3工程、AEX (DEAE)、次いでHIC (ブチル)、および最後にSEC (Sephadex G−25)からなった。
【0024】
WO2008/096370は、E. coli IB からのhuG−CSFのリフォールディングおよび精製も開示する。G−CSFをDTT存在下、尿素で可溶化し、pHをpH 12〜12.5に上昇させた。最後に、WO2010/146599は、G−CSFの6M GuHClによる可溶化およびDTTによる還元を開示する。リフォールディング用の複合緩衝液は、2M尿素、0.1Mアルギニン、10%ショ糖、2mM EDTAからなり、オキシドシャッフリング剤、例えば10mM Na−アスコルベート/ジヒドロアスコルベート/DTTもしくはGSH/GSSGまたはシステイン/システイン(酸化還元)を含む複雑な緩衝液を含む。
【0025】
封入体からG−CSFを得るための新規な方法が必要とされ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
(発明の要約)
本発明は、封入体から抽出した組換え果粒球コロニー刺激因子 (G−CSF)を生物活性分子にリフォールディングするための新規な方法に関する。該方法は、G−CSFを可溶化剤で可溶化し、酸化し、次いでそのような可溶化剤の存在下でG−CSFを部分的にリフォールディングし、該可溶化剤を効率的に除去し、可溶化剤の非存在下でリフォールディングを完結することを含む。部分的リフォールドG−CSFから可溶化剤を分離するための種々の方法が開示されている。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、2つのリフォールディング工程の組み合わせにより正しくフォールドされたG−CSFの収量が顕著に増加することをみいだした。
【0028】
封入体からの組換え果粒球コロニー刺激因子 (G−CSF)の新規リフォールディング方法を開示する。該方法は2つのリフォールディング工程を含む。特に、該方法は、G−CSFの可溶化剤を用いる可溶化、可溶化剤および酸化剤の存在下でのG−CSFの酸化的リフォールディング (第1リフォールディング工程)、該可溶化剤の効率的除去、および可溶化剤非存在下でG−CSFのフォールディングを完結する第2リフォールディング工程を含む。部分的にリフォールドしたG−CSFから可溶化剤を効率的に除去するための種々の方法を開示している。本発明は、さらに、それに続くイオン交換クロマトグラフィを用いるリフォールドしたG−CSFの精製方法を提供する。
すべての引用文献は本明細書の一部を構成する。
【0029】
ある局面において、本発明は、以下の工程を含む封入体からの果粒球コロニー刺激因子 (G−CSF)のリフォールディング方法を提供する:
a) 可溶化剤の存在下で G−CSFを可溶化し、
b)酸化剤および可溶化剤の存在下で可溶化G−CSFをインキュベーションすることを含む酸化および第1リフォールディング工程を実施し、
c)イオン交換樹脂吸着および/またはイオン交換クロマトグラフィにより可溶化剤を除去し、所望により酸沈殿を実施し、
d)可溶化剤の非存在下で工程(c)のG−CSFを希釈しインキュベーションすることを含む第2リフォールディング工程を実施する。
【0030】
該封入体は、微生物、好ましくはE. coliから得ることができる。該G−CSFは組換えウシまたはヒトG−CSFであり得、ウシまたはヒトメチオニル−G−CSFであり得る。可溶化剤はN−ラウロイルサルコシンでありうる。酸化剤はCuSO4でありうる。G−CSFの可溶性は、pH7以上のpHで行うことができる。
【0031】
ある態様において、可溶化剤は、約0.5%〜約1.5%の濃度のN−ラウロイルサルコシンである。
【0032】
ある局面において、該酸化および第1リフォールディング工程は少なくとも2時間行う。ある態様において、該酸化および第1リフォールディング工程は、気流下で冷却せずに行う。ある態様において、該酸化および第1リフォールディング工程は、pH値約7〜9および温度約20〜28℃で約15〜25時間行う。
【0033】
ある態様において、上記工程(c)における可溶化剤の除去は、AEX (陰イオン交換)およびCEX (陽イオン交換)(所望によりこの順序で)を含む。ある態様において、上記工程(c)における可溶化剤の除去は以下の工程を含む:
a)G−CSF溶液と懸濁樹脂物質を混合してイオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去し、および/または
b)可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルー中に止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ、および/または
c)G−CSFが該樹脂と結合し、可溶化剤がフロースルー中に止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ。
【0034】
ある態様において、該可溶化剤および他の不純物は、以下の工程を連続的に適用することにより除去される:AEX、酸沈殿、AEX、およびCEX。
【0035】
ある態様において、該可溶化剤および他の不純物は、以下の工程を連続的に適用することにより除去される:
a)G−CSF溶液と懸濁樹脂物質を混合して該可溶化剤をイオン交換樹脂物質と結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去し、
b)pHをpH5以下に下げて不純物を沈殿させ、次いでろ過して該沈殿物を除去し、
c)残存可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルー中に止まる条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、および/または
d)G−CSFが該樹脂と結合し、残存可溶化剤がフロースルー中に止まる条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、
e)増加したpHまたは塩濃度の溶出緩衝液を用いる工程または勾配溶出により陽イオン交換樹脂から結合G−CSFを溶出する。
【0036】
本明細書に記載の方法のある態様において、該第2リフォールディング工程は、低電導性緩衝液中および/または冷却条件下でおよび/または12時間以上行う。ある態様において、該第2リフォールディング工程は、2.0 mS/cm以下の電導度および/または温度約2〜8℃でおよび/または少なくとも24時間行う。ある態様において、該第2リフォールディング工程はpH7以上のpH値で行う。
【0037】
ある態様において、本明細書に記載の方法は、さらに、1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィを含むポリッシング工程を含む。該ポリッシング工程中の1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィは、陰イオン交換クロマトグラフィ、次いで陽イオン交換クロマトグラフィを含みうる。
【0038】
別の局面において、本発明は、以下の工程を含む、G−CSFの精製方法および/または封入体からG−CSFを可溶化するために用いる可溶化剤の除去方法を提供する:
a) G−CSFと該樹脂が結合する条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、
b)低下したpHまたは増加した塩濃度の溶出かんしょう液を用いる工程または勾配溶出による結合G−CSFの溶出、
c) G−CSFが該樹脂と結合する条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、
d)増加したpHまたは塩濃度の溶出緩衝液を用いる工程または勾配溶出による結合G−CSFの溶出、
ここで、陰イオンおよび陽イオン交換樹脂の主鎖ポリマーが共にメタクリレート誘導体を含むことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、果粒球コロニー刺激因子 (G−CSF)の新規リフォールディング法を提供する。特に、本発明は、精製G−CSFの産業的製造を可能にする、封入体から活性G−CSFを高収率で得るための新規方法を提供する。
【0040】
本発明のある目的は、高純度(最高で医薬グレードの)の組換えG−CSF医薬物質を産業規模で、品質、経済性、および規制的要求を考慮して効率的に製造する方法を提供することであった。本発明は、封入体中に発現した組換えG−CSFの新規リフォールディングおよび精製方法を提供する。
【0041】
従来技術は、封入体からG−CSFを可溶化およびリフォールディングするための種々の方法を開示する。上記(背景技術参照)のように、IBタンパク質(特にG−CSFに関して)の可溶化およびリフォールディングに関する従来技術は、2つの異なる主な戦略に分けることができる。より古典的アプローチは、典型的には還元条件下およびアルカリ性pHで強カオトロピック剤(変性剤)(例えば尿素またはGuHCl)を使用することである。当該分野でより一般的に用いられる該第2戦略は、可溶化のために強界面活性剤(例えばサルコシルまたはラウリン酸)を用いることである。ときどき、G−CSFを可溶化するために強イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用することも報告された(Devlin 1988)。
【0042】
従来技術の方法は、それぞれいくらか欠点がある。本発明者らが行った実験が示すように、SDSは効率的に除去することが不可能でないまでも難しいため、可溶化剤として適切でなかった。例えば、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)を用いるクロマトグラフィによりSDSを除去すると微量のSDSがタンパク質に結合したままであった。SDSは完全に除去することができなかった。GuHClによる可溶化 (Wingfield 1988、Dietrich 2003、WO2006/097944、EP16301273、EP1837346、WO2010/146599)は、他の理由で問題がある。GuHClは透析またはゲルクロマトグラフィにより除去することができるが、GuHCl可溶化法では、後で、リフォールディングインキュベーション中にフォールディング中間体の凝集を避けるために強希釈を必要とすることにより大容量が必要である(Rudolph 1990、Rudolph 1996)。最高1:200の希釈が報告された(Rudolph 1996)。本発明者らが試験したGuHCl法では、強希釈の必要性が確認され、GuHCl法を用いて最適収量を得るには少なくとも1:50の希釈比が必要であった。この種の可溶化は、大規模法において大きなステンレススチールタンクを必要とし、経済的ではない。
【0043】
GuHClの代わりに、別の変性剤の尿素のG−CSFの可溶化における使用が報告されている。従来技術では、ほぼ飽和濃度、例えば8M尿素が用いられた (WO98/53072、WO01/87925、WO2006/135176、Khalilzadeh 2008、WO2008096370)。GuHClについて記載された同じ問題が尿素にもあてはまる。さらに、特にアルカリ性pHでの尿素の存在は、望ましくないタンパク質修飾、例えば脱アミドをもたらしうる。さらに、シアン酸アンモニウムから生じうるイソシアン酸(常に溶液中の尿素と平衡にある)の存在は、一級アミノ基のカルバミル化をもたらす(Rudolph 1996)。最後に、凝集阻害剤のアルギニンがリフォールディング中に高濃度で共変性剤として存在すると収量に有益でありうることも当該分野で報告されている(EP0219874、Rudolph 1996、Dietrich 2003)。しかしながら、アルギニンは高価な試薬であり、アルギニンの使用をやめることが経済的には望ましい。
【0044】
上記のように、界面活性剤のサルコシルをIBからG−CSFを可溶化するのに用いることもできる。優先的に、2%サルコシルが用いられた (Zsebo 1986、WO8701132、WO8910932、Lu 1992、Heidari 2001)。サルコシルは、高可溶性の陰イオン性界面活性剤である。サルコシルを用いる1つの利点は、続くリフォールディングインキュベーション中に必要な希釈比が低いことである(GuHCl/尿素の0〜200倍に対して2倍)。別の利点は、環境に対して化学廃棄物の生成が比較的少ないことである。しかしながら、当初記載された方法を用いると、本発明者らは、バッチごとの変動が高いことに関連してリフォールディング後の収量がかなり低いことを実験において観察した。サルコシルのような界面活性剤は、一般的に、タンパク質の可溶性を増加することにより可溶性を促進する。サルコシルは、カオトロピック剤がするようにタンパク質を変性しアンフォールドすることはないので、最初に間違ってフォールディングされたIBタンパク質は後でリフォールドされることはなく、GuHCl/尿素法に比べて収量が低くなるはずである。
本発明は従来技術の欠点を克服する。
【0045】
本発明者らは、従来技術の方法の問題に対処するリフォールドされたG−CSFを得るための新規方法を提供する。驚くべきことに、可溶化剤の存在下で第1酸化的リフォールディング工程、次いで可溶化剤を効率的に除去する工程 (例えば、イオン交換樹脂吸着および/または酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィにより)、次いで可溶化剤非存在下でG−CSFを希釈し、インキュベーションすることを含む第2リフォールディング工程を用いることにより、モノマーの可溶性G−CSFの収量を増加させることができること、すなわち、本明細書に記載の方法によりリフォールドされたG−CSFが得られることをみいだした。
【0046】
すなわち、本発明は、封入体中の不活性前駆体から生物活性を有するG−CSFを製造するための新規方法に関する。微生物におけるヘテロローガスな組換えポリペプチドの過剰発現は、しばしば、ポリペプチドが、アンフォールドされ、還元され、不活性であり、少なくとも一般的水性緩衝液に不溶性である封入体の形成をもたらす。封入体からの組換え果粒球コロニー刺激因子 (G−CSF)の新規リフォールディング法を本明細書に開示する。特に、本発明は、2つのリフォールディング工程を含む新規リフォールディング法に関する。該方法は、G−CSFの可溶化剤による可溶化、可溶化剤および酸化剤存在下のG−CSFの酸化的リフォールディング(「酸化および第1リフォールディング工程」)、可溶化剤の効率的除去、および可溶化剤非存在下でG−CSFのフォールディングを完結するための第2リフォールディング工程を含む。
【0047】
また、本発明は、リフォールディング工程および精製工程の新規組み合わせに関する。第1リフォールディング工程後に、新規中間精製工程を可溶化剤および酸化剤の効率的除去を確実にするために導入し、次いでG−CSFのフォールディングを完結するために第2リフォールディング工程を行う。また、本発明は、一般に、リフォールディングプロセスに用いる可溶化剤および他の薬剤を除去するための新規方法に関する。
【0048】
開示した新規方法の主要原理を図1(所望の下流のポリッシング工程とともに)に示す。簡単には、該方法は以下のものを含む:
a)可溶化剤を用いて封入体からG−CSFを可溶化し(所望により封入体を抽出および/または単離および/または洗浄する前に)、
b)酸化剤および可溶化剤存在下でインキュベーションすることにより可溶化G−CSFを酸化および部分的にリフォールディングし、
c)可溶化剤(および他の不純物)を除去し、そして
d)部分的にリフォールドしたG−CSFを希釈およびインキュベーションすることによりリフォールディングを完結する。
すなわち、該第2リフォールディング工程は可溶化剤非存在下で行う。
【0049】
したがって、第1の局面において、本発明は、以下の工程を含む封入体から果粒球コロニー刺激因子(G−CSF)をリフォールディングする方法を提供する:
(a) 可溶化剤存在下でのG−CSFの可溶化、
(b)酸化剤および可溶化剤存在下で可溶化G−CSFをインキュベーションすることを含む酸化および第1リフォールディング工程、
(c)イオン交換樹脂吸着および/または酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィによる可溶化の除去、および
(d)可溶化剤非存在下で工程(c)のG−CSFを希釈およびインキュベーションすることを含む第2リフォールディング工程。
該封入体は微生物から得ることができる。該微生物は、例えば組換え的にG−CSFを産生することができる。したがって、該本発明は、所望によりさらに微生物細胞から該封入体を単離する工程を含みうる。
【0050】
封入体
本発明は、封入体からG−CSFをリフォールディングする方法を提供する。過去に種々の異なる発現系が大量のG−CSFを製造するために試験されてきた。試験したすべての細菌株がG−CSFタンパク質を封入体 (IB)の形で発現する。封入体 (IB)はG−CSFを大量に、アンフォールドされた不活性形で含む。単離され、好ましくは洗浄された封入体の分画を本明細書に記載の方法の出発物質として用いることができる。そのような封入体調製物は、適切な発現系、発酵条件、回収および溶解手順、およびiBの単離および洗浄に適した方法により得ることができる。そのような方法は、従来技術に開示されている(例えば、Rudolph 1990、Rudolph 1996、Heidari 2001、Khalilzadeh 2008、Rao 2008、Vanz 2008、US5849883、EP0219874、EP1630173、またはWO2004001056参照)。宿主細胞から封入体を抽出する方法は、一般的に、細胞の溶解および破壊、次いで遠心分離を含む。該封入体は、分離器で細胞を回収し(例えば遠心分離(例えば11000g)により)、細胞を高圧ホモゲナイザー(例えば約1000bar)で機械的に破壊し、次いで分離器で細胞デブリから封入体を分離する(例えば遠心分離(例えば11000g)により)により得ることができる。大部分の古典的封入体を含むペレットを、通常、界面活性剤で洗浄する。G−CSFを可溶化する前に、該封入体を凍結保存することができる。分離器で細胞デブリから分離し、−80℃の還元緩衝液中で保存したIBは最高8カ月安定であることがわかった。
【0051】
該封入体は微生物細胞から得ることができる。したがって、本明細書に記載の方法は、微生物宿主細胞から封入体を抽出する工程を含む。G−CSFの発現に用いる微生物宿主細胞は、酵母細胞、糸状菌細胞、または細菌細胞でありうる。好ましい態様において、該微生物は細菌であり、より好ましい態様ではグラム陰性菌、最も好ましくはE. coliである。すなわち、該封入体はE. coli細胞から得ることができる。
【0052】
G−CSF
本発明の文脈において本明細書で用いる「G−CSF」は、G−CSFの種相同分子種、例えばヒトG−CSF、ウシ G−CSFなどを含む。ヒトG−CSFのアミノ酸配列は以下の通りである。
(配列番号1):
TPLGPASSLPQSFLLKCLEQVRKIQGDGAALQEKLCATYKLCHPEELVLLGHSLGIPWA
PLSSCPSQALQLAGCLSQLHSGLFLYQGLLQALEGISPELGPTLDTLQLDVADFATTIWQ
QMEELGMAPALQPTQGAMPAFASAFQRRAGGVLVASHLQSFLEVSYRVLRHLAQP
(例えば、Holloway、1994、またはDrugbank Accession No DB00099に記載されている。)
【0053】
ウシG−CSFは以下の通りである。
(配列番号2):
TPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAP
LSSCSSQSLQLRGCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQ
MEDLGAAPAVQPTQG AMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
(例えば、US5849883の図7またはPDB Accession No:1BGC−Aに記載されている。)
【0054】
好ましい態様においてG−CSFは哺乳類G−CSFであり、特に好ましい態様ではヒトG−CSFである。ある好ましい態様において、組換えポリペプチドはメチオニル−G−CSF (Met−G−CSF)、例えばヒトMet−G−CSF (r−met−hu−G−CSF=フィルグラスチム)である。フィルグラスチムの配列は以下の通りである。
(配列番号3):
MTPLGPASSLPQSFLLKCLEQVRKIQGDGAALQEKLCATYKLCHPEELVLLGHSLGIPWA
PLSSCPSQALQLAGCLSQLHSGLFLYQGLLQALEGISPELGPTLDTLQLDVADFATTIWQ
QMEELGMAPALQPTQGAMPAFASAFQRRAGGVLVASHLQSFLEVSYRVLRHLAQP
【0055】
ウシG−CSFは、メチオニル−ウシ G−CSFと同様に得ることができる。本発明の文脈において本明細書で用いている「G−CSF」はG−CSFの機能的変異体を含む。本明細書において「変異体」への言及は、特記しない限り「機能的変異体」への言及を意味する。G−CSFタンパク質の変異体は、G−CSFタンパク質の配列と異なるが、同じ生物活性を有するタンパク質を表す(機能的変異体)。G−CSFタンパク質の「変異体」は、基準G−CSFタンパク質配列(例えばヒトG−CSF配列)と1またはそれ以上のアミノ酸が異なるタンパク質を表す。「変異体」は、あるいはまたはさらに、別の修飾、例えばメチル化、peg化(ペグ化)、スクシニル化、タグまたはラベルの付加などを有する。該変異体は、酵素的または化学的に修飾されたG−CSFでありうる。該変異体は、別のペプチドまたはポリペプチドと融合した融合タンパク質でありうる。
好ましい態様において、G−CSFはペグ化されている。
【0056】
「変異体」は、アレル変異体を含む天然変異体、またはアレル変異体または合成的に生成した変異体を含むスプライス変異体(例えばZsebo 1986参照)でありうる。修飾形のG−CSFが封入体中で発現することが従来技術で示された。例えば、EP0719860は、実施例2および3に、封入体中で発現する修飾ウシG−CSFの構築および産生を開示する。したがって、変異体は、本明細書に記載の方法を用いて得ることができる。
【0057】
ある態様において、G−CSF変異体は、配列番号3 (r−met−hu−G−CSF = フィルグラスチム)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有するタンパク質である。配列同一性は、標準的配列分析ツール、例えばClustal、BLASTなど、またはアラインメントアルゴリズム、例えばNeedleman−Wunsch algorithm、Smith−Waterman algorithmなどを用いて決定することができる。変異体は、1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有しうる。あるアミノ酸が同様の特性を有するアミノ酸で、例えば他の極性アミノ酸が別の極性アミノ酸で、酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸で置換される場合は、アミノ酸置換は保存的である。保存的置換は、化学特性、すなわちタンパク質の機能にあまり影響を与えない。G−CSFに対する「変異体」は、G−CSFの変異体がG−CSFと同じ生物学的機能を有する限り(機能的に等価)、配列番号3に比べて1またはそれ以上のアミノ酸の1またはそれ以上の突然変異、欠失、置換、挿入、および/または修飾を有するタンパク質を含む。変異体は、同じ生物学的機能を有するか否かは、G−CSFの生物活性を測定するアッセイ(以下に記載する)で試験することができる。市販されているG−CSFを基準コントロールとして用いることができる。変異体は、市販のG−CSF基準品の活性の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、or 少なくとも99.5%を有する場合、「同じ生物活性」を有する、すなわち「生物学的に活性」または「活性」であると考えることができる。
すなわち、本明細書において「G−CSF」に対する言及は、ヒトG−CSFの種相同分子種および変異体、すなわち機能的変異体に対する言及を含む。
【0058】
可溶性
IB分画のG−CSFは、可溶化剤の存在下で可溶化する。あらゆる適切な可溶化剤 (すなわち、本明細書に記載のG−CSFの可溶性をもたらすあらゆる物質)を用いることができる。そのような可溶化剤は、例えば(限定されるものではないが)変性剤またはカオトロピック剤の群、例えば (限定されるものではないが) GuHClまたは尿素、もしくは界面活性剤(detergent、tenside、またはsurfactant)の群、例えば、(限定されるものではないが) N−ラウロイルサルコシン(サルコシル)、ラウリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、またはN−セチルトリメチルアンモニウムクロリドなどから選ぶことができる。
【0059】
サルコシルに関して、本発明者らは、しばしば報告される濃度の2%サルコシルではなく、1%(w/v)サルコシルで最大可溶性がすでに達成されることをみいだした。より好都合には、SDSのような他のイオン性界面活性剤と異なり、サルコシルは種々の精製方法による生成物から完全に除去することができることを本発明者らはみいだした。最終的に、本発明者らは、サルコシルの効率的除去後の第2リフォールディング工程が正しくフォールドされたモノマーG−CSFの収量の増加をもたらすことをみいだした。
【0060】
したがって、本発明の好ましい態様において、可溶化剤は、界面活性剤(detergentまたはsurfactant)である。より好ましい態様において、可溶化剤は、可溶化剤は、陰イオン性界面活性剤、最も好ましくはサルコシルである。可溶化時のサルコシルの好ましい濃度は、0.2〜2.0%(w/v)、より好ましい態様において約0.5%〜1%(w/v)、最も好ましくは約1%(w/v)または1%(w/v)である。
【0061】
さらに、他のパラメーター(例えば温度、pH、緩衝液など)の最適化はさらに収量を改善しうる。最適温度、pH、緩衝液などは、本明細書に記載の方法を用いて本明細書の記載に照らして確立することができる。好ましい態様において、可溶化は、アルカリ性pH、例えば、
7〜10、または7〜9、または7.5〜8.5、または7.8〜8.2の範囲内のpHで行う。好ましい態様において、pHは約8または8である。ある態様において、可溶化は、室温、すなわち20〜25℃で行う。可溶化のために特定pH範囲で用いるのに適した緩衝液は当該分野で知られている。例えばTris−HClを用いることができる。好ましくは、可溶化は攪拌下で行う。
【0062】
好ましい態様において、可溶化は、サルコシルを用いてアルカリ性pH、好ましくはpH8で行う。可溶化のための好ましい緩衝液は、Tris−HCl/pH 8、優先的には40mM Tris−HCl/pH 8である。
【0063】
可溶化後に希釈工程を行うことができる(例えば5倍、4倍、または3倍、好ましくは2倍希釈)。希釈のための好ましい溶媒は、低電導性緩衝液、より好ましくは単に水である。低電導度は、少なくとも2mS/cm以下、より好ましくは1mS/cm以下の電導度を意味する。適切な緩衝系は、例えば、濃度10mM Trisまたはそれ以下、pH値7以上のTris/HClである。同じ低電導度およびpHの他の緩衝液を用いることもできる。
第1リフォールディング (酸化的フォールディング)
【0064】
還元システインの酸化およびジスルフィド形成はG−CSFの正しいフォールディングに必要である。古典的アプローチは、還元剤/酸化剤ペアの存在下の酸化である (Rudolph 1990、Rudolph 1996、背景技術参照)。多くのin vitroリフォールディング技術が公表されている。これらのリフォールディングプロトコールに基づいて、本発明者らは、封入体中に発現したジスルフィド含有タンパク質に共通のいくつかの一般的原理を得た。該タンパク質は還元状態でありアンフォールドであるので、そのようなリフォールディング方法の背後にある該メカニズムは、主として、システインペアのスルフィドリル基間に天然のジスルフィド架橋を形成することによる天然コンフォメーションへのポリペプチド鎖の酸化的フォールディングである。典型的リフォールディングプロセスにおいて、可溶化剤 (カオトロピック剤または界面活性剤)の濃度は、最初に、しばしば段階希釈、透析、またはゲルクロマトグラフィ(例えばSephadex G−25を用いる)により変性濃度以下に低下する。酸化剤(例えばCuSO4)または酸化還元系(例えばグルタチオンred/ox (GSH/GSSG))の存在は、リフォールディングインキュベーション時のジスルフィド形成を促進する。一般的に、該インキュベーションは、室温で数時間〜数日間行われた。所望により該タンパク質の可溶性を増加し、および/または凝集を防ぐために用いることができる種々のさらなる添加物が記載された。特に部分的にフォールドされた中間体の凝集は、リフォールディング時の大きな問題であり、タンパク質濃度を臨海レベル以下に希釈することによって防止する(Rudolph 1990、Rudolph 1996)。従来技術は、G−CSFについて、CuSO4をサルコシルと組み合わせて用いることによる酸化も開示している。該リフォールディングは、酸化剤および可溶化剤の存在下で行った(Zsebo 1986、WO8701132、WO8910932、Lu 1992、Heidari 2001)。
【0065】
本発明者らは、可溶化剤(例えばサルコシル)の存在下でG−CSFのフォールディングが完全に達成できないことをみいだした。すなわち、そのような酸化およびフォールディング工程は、G−CSFの部分的リフォールディングをもたらすだけである。本発明者らは、可溶化剤の完全な除去、次いで可溶化剤非存在下の第2フォールディング工程が収量の改善をもたらすことをみいだした。本発明者らは、該可溶化剤を除去するための最適化した方法も考案した(下記参照)。不完全なフォールディングに関与しうる他の夾雑物も除去される。あらゆる適切な酸化剤、例えば酸素または気流(気泡)、GSSG (グルタチオン−ox)、金属イオン(Cu2+、Fe2+、Zn2+,..)パーオキシド(H2O2)を用いることができる。好ましい態様において、酸化剤はCuSO4である。CuSO4の他に他の銅塩も用いることができる(例えばCuCl2)。
【0066】
可溶化剤は有効量で用いる。当業者は、該有効量、すなわちG−CSFの効率的な可溶化を達成する可溶化剤の量を容易に決定および最適化することができる。可溶化G−CSFの量を決定する方法をさらに以下に記載する(例えば実施例13.3参照)。
【0067】
第1リフォールディング工程時の可溶化剤の好ましい濃度は、0.2〜2.0% (w/v)、より好ましくは0.2%〜1% (w/v)、最も好ましくは約0.5% (w/v)または0.5% (w/v)である。サルコシルを用いる場合は、好ましい態様において、サルコシルの濃度は、1% (w/v)以下、優先的には0.5 % (w/v)である。
【0068】
本発明者らは、さらに、長い酸化時間はRP−HPLCクロマトグラムに余分な2〜3ピークの出現をもたらしうることをみいだした。これらのさらなるピークは、G−CSFのメチオニン残基の酸化によるようである。そのような酸化形は、望ましくない生成物関連物質であり、それらを適切なクロマトグラフィで除去することは困難である。
【0069】
ある態様において、酸化的リフォールディング (すなわち、該酸化および第1リフォールディング工程)は、1−30時間、2−25時間、6−25時間、10−25時間、12−25時間、14−25時間、16−25時間、18−22時間、または19−21もしくは20−24時間行う。ある態様において、G−CSFの酸化および部分的リフォールディングは、2時間以上、優先的には12時間以上、好ましくは20時間以上、最も好ましくは20−24時間行う。
【0070】
好ましい態様において、酸化リフォールディング工程 (すなわち、酸化および第1リフォールディング工程)は、7〜10、7〜9、7.5〜8.5、または7.8〜8.2の範囲内のpHで行う。好ましい態様において、pHは約8または8である。ある態様において、第1リフォールディング工程のpH値はpH 7以上、好ましくは pH 8である。
【0071】
酸化リフォールディング工程は、すでに(部分的に)精製されたG−CSFを用いて行うこともできる。ある態様において、酸化的リフォールディングに用いるG−CSFの純度は、50%以上、優先的には約60〜70%またはそれ以上である。
【0072】
酸化的リフォールディングは、好ましくは冷却せずに、好ましくは室温で、好ましくは18〜30℃、好ましくは20〜28℃、好ましくは20〜26℃、好ましくは20〜24℃、好ましくは21〜23℃、最も好ましくは約22℃または22℃で行う。
酸化的リフォールディングは連続気流下で行うことができる。
【0073】
種々の最適化実験に基づく酸化的リフォールディング (酸化および第1リフォールディング工程)の最も好ましい条件は、表1のカラム「第1リフォールディング」の欄に示す。
【0074】
酸化的リフォールディング工程は、停止剤(例えばEDTAなど)を加えて停止させることができる。ある態様において、該酸化は、EDTAを好ましくは最終濃度約1mMで加えて停止させるが、他の濃度を用いることができる。EDTAはCu2+イオン(CuSO4を用いる場合は酸化剤)を除去し、酸化を止める。EDTA以外の他のCu2+錯化剤および/または他の濃度を用いることができる。酸化剤に応じて、例えば以下の他のキレート剤を用いることができる:三座リガンド、例えばN−ピコリノイル−エチレンジアミン、グリシン−2−ピリジルメチルアミド、Nα−(2−ピリジルメチル)−グリシンアミド、およびNα−(2−ピリジルメチル)−グリシン−エチルアミド。
【0075】
上記のごとく、本発明者らは、サルコシルの存在がG−CSFのかなりの部分が完全にリフォールドされるのを防ぐことをみいだした。本発明者らは、これは、一部、可溶化剤存在下でよりゆっくりとリフォールディングされることにより生じるかもしれないと考える。しかしながら、上記のように、生成物の品質はインキュベーション時間をより長くすると許容できないレベルになり得るため、インキュベーション時間を延長することはできない。
【0076】
本発明者らは、驚くべきことに、該リフォールディングを、可溶化剤および酸化剤の完全な除去後に第2インキュベーションにより最適化し完結することにより、予期せず、可溶性で純粋な生物活性を有するG−CSFを高収量で得ることができることをみいだした。
可溶化剤および酸化剤の除去、および他の夾雑物の除去
【0077】
中間体の精製工程において、酸化され部分的にリフォールドされたG−CSFをさらに精製する。重要なことは、可溶化剤を、該第2リフォールディング工程を行う前に完全に除去しなければならないことである。酸化剤および部分的にさらに夾雑物/不純物も除去する。
【0078】
透析/限外ろ過またはクロマトグラフィ法により可溶化剤および酸化剤を除去するための種々の方法が従来技術に開示されている。しかしながら、本発明者らは、1つのバッチ吸収工程では可溶化剤(例えばサルコシル)の除去を達成することができないことをみいだした。本発明者らが行った実験では、サルコシルはこの工程後に0.01〜0.04 mg/mlの濃度で残存し(表III)、正しくフォールドされたG−CSFの収量に悪影響を及ぼすことがわかった。
【0079】
可溶性で活性なG−CSFの収量を改善するため、可溶化剤は、完全に、すなわち、本明細書に記載の検出方法の検出レベル以下まで除去しなければならない。例えば、残存する可溶化剤の濃度は、HPLCで測定し、UVで検出することができる。本発明者らが行ったアッセイの検出限界は0.01 mg/mlであった。該方法は、Burgess、R. R. 1996. Purification of over produced E. coli RNA polymerase σ factors by solubilizing inclusion bodies and refolding from sarkosyl. Methods Enzymol. 273:145−149により詳細に記載されている。
【0080】
あらゆる適切な除去方法を用いることができる。例えば、イオン交換樹脂吸着および/または酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィにより充分な除去を達成することができる。本発明にしたがってこれら技術のいずれかまたは組み合わせを適用し、該第2リフォールディング工程におけるリフォールディングに干渉または阻害しない可溶化剤(例えばサルコシル)の濃度(好ましくは0.01 mg/ml以下、好ましくは検出限界以下)をもたらす。これら精製工程は、可溶化剤の完全な除去をもたらす限り、あらゆる順序および/またはあらゆる組み合わせで適用することができる。他の適切な精製方法を用いることもできる。すなわち、本明細書に記載の方法は、可溶化剤を完全に除去する工程を含む。すなわち、可溶化剤は、残存量が該第2リフォールディング工程に干渉または阻害しない程度に充分に除去される。したがって、該第2リフォールディング工程は可溶化剤の非存在下で行われ、すなわち、可溶化剤は該第2リフォールディング工程に干渉しない量で存在し、すなわち、可溶化剤は検出限界以下である。
【0081】
ある態様において、本発明は可溶化剤が1またはそれ以上の以下の工程により除去される方法を提供する:
i) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、および/または
ii)可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルーに止まるか、また逆に、G−CSFが該樹脂と結合し、可溶化剤がフロースルーに止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ。
【0082】
ある態様において、本発明は、可溶化剤 (または他の不純物)を1またはそれ以上の以下の工程により除去する方法を提供する:
i) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、および/または
ii)酸沈殿。
【0083】
ある態様において、本発明は、可溶化剤(または他の不純物)を1またはそれ以上の以下の工程により除去する方法を提供する:
i) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、および/または
ii)酸沈殿、および/または
iii) 可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルーに止まるか、また逆に、G−CSFが該樹脂と結合し、可溶化剤がフロースルーに止まる条件下でのイオン交換クロマトグラフィ。
【0084】
好ましい態様において、可溶化剤(または他の不純物)は以下の工程の連続適用により除去される:
a) G−CSF溶液を懸濁樹脂物質と混合して可溶化剤を陰イオン交換樹脂物質に結合させ、次いでろ過して該樹脂物質を除去する、
b)pHをpH5以下に下げて不純物を沈殿させ、次いでろ過して沈殿物を除去し、
c) 残存可溶化剤が該樹脂と結合し、G−CSFがフロースルー中に止まる条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、
d) G−CSFが該樹脂と結合し、残存可溶化剤がフロースルーに止まる条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、
e) 増加したpHおよび塩濃度の溶出緩衝液を用いる段階または勾配放出により結合したG−CSFを陽イオン交換樹脂から溶出。
イオン交換樹脂吸着
【0085】
イオン交換樹脂吸着を用いて可溶化剤を除去することができる。
可溶化剤を除去する第1工程として、イオン交換樹脂吸着を行うことができる。適切な方法が当該分野で知られている。上記のごとく、可溶化剤(例えばサルコシル)を除去するための方法には、Dowex 陰イオン交換樹脂 (Dow Chemicals、USA)、好ましくはDowex 1X4へのバッチ吸着がある(WO8910932、Lu1992、Heidari 2001)。結合した界面活性剤を捕捉する樹脂はろ過して除去する。Dowex樹脂と非常に似た製品に、同様に用いることができるBioRadのAG樹脂 (例えばAG−1X8)がある。
【0086】
上記方法は、溶液中で荷電しているすべての可溶化剤に適用される。多くの界面活性剤は両親媒性であり、他に陰イオン性または陽イオン性のものがある。可溶化剤および該溶液のpH値に応じて、荷電は陽性または陰性でありうる。AEX物質、例えばDowexまたはAG−1の使用は、負に荷電した可溶化剤、例えばサルコシルまたはSDSに依存する。これに対し、樹脂のタイプの選択に応じたイオン交換クロマトグラフィは、陰性または陽性に荷電した可溶化剤の両方と結合することができる。負に荷電した可溶化剤は、AEX樹脂と結合し、CEX樹脂とは結合しない。陽性に荷電した物質はその反対の挙動を示す。例えば、陽イオン性脂質、セチルトリメチルアンモニア、またはアルギニンは、陽イオン交換クロマトグラフィにより除去することができる。可溶化剤に加え、他の夾雑物も該方法により少なくとも一部除去される。これらの他の夾雑物/不純物は、プロセス関連不純物、例えば宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA/RNA、エンドトキシン(例えばLPS)、酸化剤(例えば、Cu2+)、プロセス関連化学物質(例えば、EDTA)、および生成物関連不純物(例えば凝集物)などを含みうる。
【0087】
ある態様において、該可溶化剤は、バッチ法でAEX樹脂に吸着する陰イオン性界面活性剤(detergentまたはtenside)である。好ましくは、該界面活性剤はサルコシルである。ある態様において、該サルコシルは、分析グレード(AG)AEX樹脂 (BioRad、USA)、好ましくはAG 1−Xシリーズの樹脂、最も好ましくはAG 1−X8と吸着する。ある態様において、該樹脂はディスポーザブル物質として用いる。
【0088】
好ましい態様において、該可溶化剤とAG 1−X樹脂とのバッチ吸着は、アルカリ性pH、優先的には約pH 8の緩衝液中で行う。適切な緩衝系は、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、Tris、HEPES、MOPS、HEPPS、EPPS、CAPS、CAPSO、CHES、TES、BES、TAPS、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリシン、ビシン、アセトアミドグリシン、グリシンアミド、またはpKa7以上の他の生体適合性緩衝物質に基づきうる。該吸着のための好ましい緩衝液は、Tris−HCl/pH 8、優先的には20mM Tris−HCl/pH 8である。Tris−HCl/pH8+1mM EDTAが最も好ましい。
【0089】
好ましくはAG 1−X8の量は、10〜60g乾燥樹脂/gサルコシル、最も好ましくは20g/gサルコシルである。ある態様において、初期サルコシル濃度は0.5%である。
好ましい態様において、該イオン交換樹脂吸着工程は、該可溶化剤を90%以上、95%、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、より好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.3%以上、より好ましくは99.4%以上、より好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.6%以上、より好ましくは99.7%以上、より好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上除去する。好ましい態様において、該可溶化剤はサルコシルである。ある態様において、該イオン交換樹脂吸着工程は、AG 1−X8バッチ吸着抗知恵によりサルコシルを95%以上、より好ましくは少なくとも99%除去する。ある態様において、捕捉されたサルコシルを有するAG 1−X8樹脂は、該溶液からろ過により除去される。好ましくは、該ろ過工程は、100μmのステンレススチールメッシュを用いる。より好ましくは、該ろ過工程は、100μmナイロンバッグフィルターメッシュを用いる。
【0090】
該イオン交換樹脂吸着工程は、該可溶化剤の充分に完全な除去をもたらさなければ、さらに酸沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィなどの精製工程を行うことができる。
酸沈殿
【0091】
所望により、酸沈殿工程を行い、他の存在しうる夾雑物を除去することができる。驚くべきことに、本発明者らは、単純な酸賃でによりかなりの部分の夾雑物を除去することができる。G−CSF、特にフィルグラスチムは、酸性pHで最良の可溶性と安定性を有することが知られており、等電点(フィルグラスチムのpI=5.65)以下のpHに下げることにより可溶性のままである。夾雑物の酸沈殿は、pHを6.5〜6.0、6.0〜5.5、5.5〜5.0、5.0〜4.5、4.5〜4.0、4.4〜3.5、3.5〜3.0などに下げることにより行うことができる。
【0092】
残存可溶化剤の存在にも関わらず、本発明者らは、尿素の添加は沈殿プロセスにさらなる有利な効果をもたらし得ることをみいだした。pH値を低下させることにより、G−CSFの非特異的な望ましくない共沈殿が生じることがあり、これは最終収量の望ましくない減少をもたらしうる。本発明者らは、この欠点をpH調整前に該溶液にサブ変性濃度の尿素を加えて用いることにより克服することができることをみいだした。尿素はG−CSFの共沈殿を有効に抑制する。この工程の最適化は、pHを酢酸または酢酸ナトリウムを用いて徐々に着実に低下させることにより最良の結果が得られた。5.0以下のpH値はすでに有効であった。かなり低濃度の尿素(すなわち約1M)で充分である。
【0093】
ある態様において、酸沈殿前の残存サルコシル濃度は0.01〜0.04 mg/mlである。ある態様において、ある態様において、pH値を濃酢酸ナトリウムまたは酢酸を加えて低下させる。好ましい態様において、pH値をpH 5.0以下、好ましくは4.8以下、最も好ましくはpH 4.3〜4.5に低下させる。ある態様において、酸性化は、尿素、好ましくは3M以下の濃度の尿素、最も好ましくは1M尿素の存在下で行う。ある態様において、該沈殿物は深層ろ過により除去される。
イオン交換クロマトグラフィ
【0094】
イオン交換を用いて可溶化剤を除去することもできる。可溶化剤を除去する工程は1またはそれ以上のイオン交換工程を含みうる。
イオン交換樹脂吸着 (酸沈殿を用いるかまたは用いない)を用いても可溶化剤が完全に除去されなかった場合は、1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィ工程を行って可溶化剤を完全に除去することができる。該イオン交換工程は、AEXおよび/またはCEXをあらゆる順番で含みうる。あらゆる他の適切なイオン交換技術を用いることができる。
【0095】
G−CSFを精製するためのイオン交換クロマトグラフィの使用は従来技術に記載されている。多くのプロセスが、AEXおよびCEX、または両方法をあらゆる順序で、またはIEX工程をHIC、IMAC、SEC、またはRP−HPLCなどの他のクロマトグラフィ法と組み合わせて用いる (背景技術参照)。
【0096】
サルコシルに関して、本発明者らは、AEXバッチ吸着および酸沈殿後にも低濃度のサルコシルが残存したままである場合、それを続くイオン交換工程で完全に除去することができることをみいだした。
【0097】
本発明者らは、酸化沈殿工程後にG−CSFが上清中に存在したままであり、pHがそのpI以下であることをみいだした。これらのpH条件下でG−CSFは陽イオン性であり、CEXと結合し、AEX樹脂とは結合しないであろう。実験でこれを確認した。
【0098】
ある態様において、該イオン交換工程は、AEX、次いでCEXを含む。AEXを非結合モード(フロースルー中にG−CSF)で用いることができ、残存可溶化剤やDNAなどの夾雑物は樹脂に結合したままであるという知見は、本発明者らに本発明のある態様として、AEX、次いでCEXの順序で連続的に組み合わせた2つのカラムの直列工程の開発を促した。AEX樹脂の主な機能は残存サルコシルを結合し、CEX樹脂の主な機能は緩衝液交換 (第2リフォールディングに備えての)である。第1カラムを通過したG−CSFは、次いで第2樹脂と結合し、該タンパク質は適切な方法によりCEXカラムから溶出させることができる。そのような方法は当業者に知られている。結合G−CSFを脱離させるための溶出方法は、段階溶出または勾配溶出のいずれかによる塩濃度の増加を含みうるか、または、G−CSFの溶出は、例えば、pH値をpI以上に増加させることにより達成することができる。さらに、これは段階溶出またはpH勾配により達成することができる。pH段階溶出を適用すると、これはさらに急速緩衝液およびpH交換の可能性をもたらす。
【0099】
ポリペプチドのクロマトグラフィに用いるAEX樹脂のための適切な官能基が知られている。これらの基は、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチル (TMAE)、 第4級アミノメチル(Q)、および第4級アミノエチル (QAE)を含む。これらにはバイオクロマトグラフィプロセスに一般に用いる官能陰イオン交換基がある。適切な市販生成物には、例えば以下のものが含まれる:Macro−Prep High Q、Macro−Prep DEAE、Nuvia Q (BioRad、USA)、TOYOPEARL DEAE−650、TOYOPEARL SuperQ−650、TOYOPEARL QAE−550 (Tosoh Bioscience、Japan)、Fractogel EMD DEAE、Fractogel EMD TMAE (Merck、Germany)、Biosepra Q Ceramic HyperD、Biosepra DEAE Ceramic HyperD (Pall Corporation、USA)、DEAE−Sepharose FF、DEAE−Sepharose CL−4B、Q−Sepharose FF、Q−Sepharose CL−4B、Q−Sepharose HP、Q−Sepharose XL、Q−Sepharose Big Beads、QAE−Sephadex、DEAE−Sephadex、Capto DEAE、Capto Q、Capto Q ImpRes、Source 15Q、Source 30Q、およびDEAE Sephacel (GE Healthcare、USA)。
【0100】
好ましい態様において、AEX樹脂はDEAEである。DEAEは、古典的弱陰イオン交換基であり、本発明らの実験において、優れた分解および高速平衡プロフィールを示した。
【0101】
CEX樹脂に用いる適切な官能基には、カルボキシメチル(CM)、スルホネート(S)、スルホプロピル(SP)、およびスルホエチル(SE)が含まれる。これらはバイオクロマトグラフィプロセスに一般的に用いられる陽イオン交換官能基である。適切な市販製品には例えば以下のものが含まれる:Macro−Prep High S、Macro−Prep CM、Nuvia S (BioRad、USA)、TOYOPEARL CM−650、TOYOPEARL SP−650、TOYOPEARL SP−550 (Tosoh Bioscience、Japan)、Fractogel EMD COO−、Fractoゲル EMD SO3− (Merck、Germany)、Biosepra CM Ceramic HyperD、Biosepra S Ceramic HyperD (Pall Corperation、USA)、CM−Sepharose FF、SP−Sepharose FF、 S−Sepharose FF、SP−Sepharose HP、SP−Sepharose XL、SP−Sepharose Big Beads、CM−Sephadex、Capto S、Capto SP ImpRes、Source 15S、Source 30S (GE Healthcare、USA)。
【0102】
好ましい態様において、CEX樹脂は、官能基としてSPを有する樹脂である。SPは古典的強陽イオン交換基であり、本発明者らの実験において、優れた分解、高速平衡、および優れた再現性を示した。
【0103】
したがって、本発明のある態様において、可溶化剤の除去 (および酸化剤および他の酸化剤の除去)に用いるAEXクロマトグラフィは非結合法で行われ、得られるフロースルーは、いかなる凝集もなく次のカラムに直接流れる。
【0104】
好ましい態様において、2つのカラム (AEX+CEX)を直接接続し、G−CSFがCEX樹脂と結合する。本発明のある態様において、AEX樹脂は弱陰イオン交換体であり、好ましくはDEAE官能基を有する。最も好ましくは該樹脂はDEAE Macro−Prep (BioRad、USA)である。ある態様において、サンプルのロードはpH5以下、好ましくは4.3〜4.5で、最も好ましくはpH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液中で行う。
【0105】
本発明のある態様において、CEX樹脂は強陽イオン交換体であり、好ましくはSP官能基を有する。最も好ましくは、該樹脂はToyopearl SP−650 (Tosoh、Tokio)である。好ましい態様において、CEX樹脂からのG−CSFの溶出は、溶出緩衝液中のpH値を増加させることにより行う。より好ましくは、該溶出はpH段階勾配で行う。
【0106】
ある態様において、CEX溶媒緩衝液は、アルカリ性pH、好ましくはpH 8を有し、最も好ましくは該溶出緩衝液は20mM Tris−HCl/pH 8である。
【0107】
最も好ましい態様において、DEAE Macro−PrepカラムをToyoperl SP−650カラムと直接接続し、サンプルのロードをpH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液中で行い、G−CSFの溶出をTris−HCl緩衝液pH 8を用いるpH工程により行った。
【0108】
本明細書に記載の方法のある態様において、可溶化剤および他の不純物を下記工程の連続適用により除去する:
a) AEX、
b) 酸沈殿、
c) AEX、および
d) CEX。
【0109】
工程a)において、該可溶化剤は陰イオン交換樹脂と結合する。該樹脂物質はろ過により除去することができる。
【0110】
工程b)において、pHはpH5以下、例えば4〜5でありうる。沈殿物はろ過により除去することができる。
【0111】
工程c)において、残存可溶化剤は該樹脂と結合する。G−CSFはフロースルー中にとどまる。
【0112】
工程d)において、G−CSFは該樹脂と結合する。残存可溶化剤はフロースルー中にとどまる。
【0113】
これに、結合したG−CSF、その機能的変異体を段階または勾配溶出によりCEX樹脂から溶出する工程が続きうる。溶出緩衝液は、増加したpHまたは塩濃度を有しうる。増加したpHとは工程b)より高いpH、すなわち、pH5以上、または6以上、または7以上を意味する。
第2リフォールディング (フォールディングの完結)
【0114】
すでに記載したように、驚くべきことに、モノマーの可溶性で活性なG−CSFの収量は、リフォールディングの第2サイクルを行うと顕著に増加させることができることがわかった。該実験は、「古典的」サルコシル/CuSO4法を用いて得られたG−CSFが完全にはリフォールドされなかったことを示唆する。
【0115】
該第2リフォールディング工程は、部分的にリフォールドされたG−CSFの希釈、次いでインキュベーションを含む。
【0116】
該希釈用の好ましい溶媒は、低電導性緩衝液、またはより好ましくは水である。該希釈は、5倍、または4倍、または3倍、好ましくは2倍希釈でありうる。低電導度は、少なくとも2mS/cm以下、より好ましくは1mS/cm以下の電導度を意味する。適切な緩衝系は、例えば、濃度10mM Trisまたはそれ以下またはpH値が7以上のTris/HClである。同じ低電導度およびpHの他の緩衝液を用いることもできる。
【0117】
いかなる理論にも縛られるものではないが、本発明者らは以下の検討をおこなった。先の論文(Lu 1992)で知られているように、G−CSFの該第2ジスルフィド架橋の形成は、比較的遅い動力学を有する。還元遊離システイン部分を有する完全にはリフォールドされていない中間体は、凝集および/または沈殿のリスクがある(Rudolph 1990、Rudolph 1996)。G−CSFの場合、3個の対になっていないシステインを有する中間体は、Cu2+濃度および温度に応じてかなり長時間存在し得る (Lu 1992)。凝集および沈殿は、ろ過およびクロマトグラフィ工程中にG−CSFの損失を生じる。本発明者らは、改善されたフォールディング効果は下流プロセスにおける収量の増加をもたらすと仮定した。本発明者らは、第2リフォールディング工程が収量を改善することをみいだした。
【0118】
本発明者らは、驚くべきことに、弱アルカリ性pHでの該第2リフォールディング工程のインキュベーションが有益であることをみいだした。これは、G−CSF、特にフィルグラスチムがそのpI (5.65)以上のpH値で可溶性および安定性が低い比較的疎水性のタンパク質であることから特に驚くべきことである。pH4またはそれ以下の酸環境で最も可溶性および安定である。したがって、古典的精製方法(例えばクロマトグラフィ)は、より低いpHと、好ましくは酢酸緩衝液中pH 4〜5.5で行われる。これに対して、本発明者らは、アルカリ性pHでインキュベーションするとさらに収量増加を促すことをみいだした。本発明者らは、酸化剤非存在下のアルカリ性pHがスルホヒドリルの完全な酸化、すなわち、G−CSFの両天然ジスルフィド架橋の形成に重要であると考える。
【0119】
したがって、該第2リフォールディング工程は、アルカリ性pH、すなわちpH7またはそれ以上で行うことができる。pHは7以上でありうる。該第2リフォールディング工程は、pH7〜10、または7〜9、または7〜8.5、または7〜8、または7.5〜10、または7.5〜9、または7.5〜8.5、またはpH 約8、またはpH8で行うことができる。
【0120】
該第2リフォールディング工程のインキュベーションは、可溶化剤非存在下で行う。
好ましい態様
【0121】
該第2リフォールディング工程は、例えば以下の緩衝液の一つ中で行うことができる:リン酸塩、ホウ酸塩、Tris(トリス)、HEPES、MOPS、HEPPS、EPPS、CAPS、CAPSO、CHES、TES、BES、TAPS、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリシン、ビシン、アセトアミドグリシン、グリシンアミド、またはpKa7以上の他の生体適合性緩衝物質。該第2リフォールディング工程のための好ましい緩衝液は、Tris−HCl/pH 8、好ましくは10mM Tris−HCl/pH 8である。
【0122】
該第2リフォールディング工程は、低濃度の残存界面活性剤(例えば0.01 mg/mlまたはそれ以下)で行うことができる。
【0123】
該第2リフォールディング工程は、例えば、0.02 mol/lまたはそれ以下の溶液のイオン強度で行うことができる。
【0124】
該第2リフォールディング工程は、例えば、0〜20℃、または2〜8℃、または2〜5℃の温度範囲で行うことができる。
【0125】
該第2リフォールディング工程は、例えば、少なくとも24 h、または24 h以上、または30〜48 h、または32〜42 hのインキュベーション時間で行うことができる。
【0126】
該第2リフォールディング工程は、溶液の低い電導度、例えば0.1〜2mS/cm、または0.2〜1.5mS/cm、または0.5〜1.0mS/cmで行うことができる。
【0127】
該第2リフォールディング工程は冷却下で行うことができる。
【0128】
該第2リフォールディング工程は連続攪拌下で行うことができる。
【0129】
これらのパラメーターの1またはそれ以上を本明細書に記載の方法に用いることができる。
【0130】
ある態様において、部分精製された(優先的には純度約80〜90%の)G−CSFを用いてリフォールディングを完結する。
【0131】
好ましくは、リフォールディングは、12時間、冷却条件下の低電導性緩衝液中で部分的に離フォールドされたG−CSFをインキュベーションすることにより完結する。
【0132】
好ましくは、リフォールディングの完結は、2mS/cm以下の電導度、最も好ましくは1mS/cm以下の電導度で行う。
【0133】
ある態様において、リフォールディングの完結は、pH7以上、好ましくは (約) pH8で行う。
【0134】
該第2フォールディングインキュベーション用の緩衝液は、好ましくは(約)pH 8の10mM Tris−HClである。
【0135】
ある態様において、該第2フォールディングのためのインキュベーションは、冷却条件下(優先的には2〜8℃)で行う。
【0136】
好ましい態様において、第2フォールディングのインキュベーション時間は、12時間以上、より好ましくは24時間以上、最も好ましくは32〜42時間である。
【0137】
種々の最適化実験に基づくフォールディング(第2リフォールディング)を完結するための特に好ましい条件は、表Iの「第2リフォールディング」の欄に示したものである。
最終精製(ポリッシング工程)
【0138】
および第2リフォールディング工程の上記組み合わせは、活性モノマーG−CSFの収量の増加をもたらす。
【0139】
所望により、得られたG−CSFの意図する用途に応じて、続く下流プロセス、1またはそれ以上のポリッシング工程を行うことができる。本明細書に記載の方法は、さらに、1またはそれ以上のポリッシング工程(s)を含みうる。該ポリッシング工程は、該第2リフォールディング工程後のリフォールドされたG−CSFのさらなる精製をもたらす。
【0140】
続く下流プロセス(ポリッシング)は、AEXおよびCEXクロマトグラフィ、またはG−CSFポリッシング/精製、例えばHIC、IMAC、SEC、またはRP−HPLCのために当該分野で用いられる他の方法 (背景技術の参考文献参照)の使用を含みうる。該ポリッシング工程は、これらの方法の2またはそれ以上の組み合わせも含み得る。
【0141】
該第2フォールディング工程後のG−CSFの純度は典型的には80〜90%である(表III)。これは医薬品質に適合しない。該生成物を活性医薬成分として用いる場合は、求める純度を達成するために少なくとも1のさらなるポリッシング工程を行う。そのようなポリッシング工程は、宿主または該プロセスから生じる残存夾雑物を除去する。さらに、あらゆる生成物関連物質および関連不純物を除去する。
AEX
【0142】
該下流ポリッシングは、1またはそれ以上のAEX工程を含みうる。該ポリッシング工程はAEXを含みうる。
【0143】
当業者は適切なAEXを選ぶことができる。該樹脂の選択は、求める分離性能、プロセス時間、クリーニングロバスト性、再現性、結合能、ロット間の一貫性、および全体的経済性などに基づいて行うことができる。好ましい態様では官能基DEAEを用いる。当業者は、該官能基の他に、AEX樹脂の主鎖の性質とビーズのサイズを考慮する必要があると認識するだろう。特に好ましい態様において、メタクリレート誘導体に基づくマトリックス(例えばMacro−Prep(登録商標)およびToyopearl(登録商標))を用いる。そのようなマトリックスは、特に良好な分解性と再現性を示した。メタクリレート物質は、より強固であり、例えば、よく用いられる架橋アガロースマトリックス(例えばSepharose(登録商標))より良好な寿命サイクルを有する。AEXは、(可溶化剤を除去するための先の工程と異なり)直ちに結合法に用いることができるので、段階的もしくは勾配により塩濃度を増加させるか、または段階的または勾配により溶出緩衝液のpHを低下させることによりもたらされる選択的溶出条件を用いることができる。
【0144】
AEX樹脂物質は上記したとおりである。
【0145】
当業者は、緩衝液などの先に用いた条件に応じて適切な下流ポリッシング法を選ぶことができる。例えば、好ましい態様において、該第2リフォールディング工程は、約pH8の低電導性緩衝液中で行う。これは、結合法のAEXポリッシング工程には理想的な初期状況であり、夾雑物のさらなる除去と所望により低pH緩衝液への容易な緩衝液交換(G−CSFはより可溶性でより安定である)を可能にする。
CEX
【0146】
下流ポリッシングは1またはそれ以上のCEX ポリッシング工程を含みうる。該ポリッシング工程はCEXを含みうる。
【0147】
AEX工程の代替物として(またはそれに加えて)、CEXクロマトグラフィを効率的なポリッシング工程として用いることもできる。この方法では、結合法においてクロマトグラフィを可能にするために、試料をロードする前にpHを5.5以下に適合させる必要があり、これはンパク質を充分に分離するために重要である。官能的陽イオン交換基および該マトリックスをAEXについて記載したのと同じ基準に従って選択することができる。好ましい態様において、メタクリレート主鎖上のSPおよびCM官能基(Toyopearl(登録商標)、Macro−Prep(登録商標))を用いる。特に好ましい態様では、Toyopearl CM−650を用い、より好ましくはToyopearl SP−650を用いる。
【0148】
CEX樹脂物質は上記の通りである。
【0149】
CEX樹脂と結合するとG−CSFは、段階的または勾配により塩濃度を増加させるか、または段階的または勾配により溶出緩衝液中のpHを増加させることによりもたらされる選択的条件下で溶出することができる。
【0150】
当業者は、クロマトグラフィの分解性を最適化する方法を知っている。
【0151】
ある態様において、G−CSF生成物の望む品質を達成するには1クロマトグラフィ工程、AEXまたはCEXで充分である。
【0152】
他の態様において、該下流プロセスは、2またはそれ以上のポリッシング工程を含む。例えば、該ポリッシングは、2またはそれ以上のクロマトグラフィ工程を含みうる。すなわち、所望によるかまたは必要であれば、2またはそれ以上のイオン交換ポリッシング工程を行うことができる。2つのポリッシング工程を用いる場合はAEX、次いでCEXを用いるのが好ましい。そのような場合は、両工程は、結合モードで行う。この順番の利点の1つは、G−CSFが最終的に酸性pHで得られることであり、例えば濃縮G−CSFの長期保存を可能にする。2つのIEXポリッシング工程の使用は、特に高純度をもたらすことが証明された(表IV)。
【0153】
該下流ポリッシング工程は、G−CSFの以下の純度をもたらす:少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、または99.5%。
【0154】
本発明において純度を計算するために(実施例13参照)、HPLCクロマトグラムを用い、主要ピーク(面積)を統合した。あらゆる残存「不純物」がいわゆる「生成物関連不純物」であり、これはそれらが修飾、例えば酸化 (異なる種)、脱アミド、二量化、凝集、または今までのところ構造的に解明されていない異性化を有するG−CSF分子であることを意味する(表IV)。もちろんこれら生成物関連物質は微量存在するだけである。最終精製G−CSF調製物中の「生成物関連不純物」、例えばHCP、DNA、または細菌エンドトキシンは、非常に低いppmレベルで検出可能であるか、全く検出不能であることに注目すべきである(表IV)。そのような純度は、他の箇所では見かけ上均質であると報告されるだろう。純度を測定するための分析方法は実施例13に開示している。図3は、基準として用いた市販のEU承認医薬製品(3A)と比較した精製したG−CSFバッチ(3B)のSEC−HPLCクロマトグラムの例を示す。微量の凝集物が主要ピークの左側にみられる。主要ピークの右側のピークは、不純物ではなく溶媒によって生じたものである。これらのクロマトグラムは、記載した方法にしたがって精製したG−CSFが充分な品質(医薬グレードであることも)であることを示す。
【0155】
本発明のある態様において、完全にリフォールドしたG−CSFは、さらに1またはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィなどにより精製される。好ましくは、該イオン交換クロマトグラフィは、陰イオン交換クロマトグラフィ、次いで陽イオン交換クロマトグラフィを含む。ある態様において、純度約80〜90%の部分精製されたG−CSFは、さらに2つのポリッシング工程:AEXおよびCEXにより95%以上に精製される。ある態様において、該AEX工程の次にCEX工程を行う。好ましくは両工程は結合モードで行う。
【0156】
本明細書に記載の方法を用いて、G−CSFを医薬グレード品質で得ることができる。そのようなG−CSF調製物は、治療的適用に適しているか、または例えばポリエチレングリコールを用いる続くコンジュゲーションの中間体として用いることができる。
【0157】
ある局面において、本発明はG−CSFの精製方法を提供する。該方法は、本明細書に記載の第1リフォールディング工程と第2リフォールディング工程の間の可溶化剤の除去に用いることもできる。本発明は、以下の工程を含む、G−CSFの精製方法、および/または封入体からG−CSFを可溶化するために用いる可溶化剤の除去方法を提供する:
e) G−CSFが該樹脂と結合する条件下で行う陰イオン交換クロマトグラフィ、および
f) 増加したpHまたは増加した塩濃度の溶出緩衝液を用いる段階または勾配溶出による結合G−CSFの溶出、および
g) G−CSFが該樹脂と結合する条件下で行う陽イオン交換クロマトグラフィ、および
h) 増加したpHまたは塩濃度の溶出緩衝液を用いる段階または勾配溶出による結合G−CSFの溶出。
【0158】
「低下した/増加したpH」または「増加した塩濃度」は、カラム平衡化、サンプルローディングまたは洗浄用の緩衝液と比べて溶出に用いる緩衝液に言及する。AEXおよびCEXに関する適切な物質および条件は先に述べた。好ましい態様において、該方法は、陰イオンおよび陽イオン交換樹脂両方の主鎖ポリマーがメタクリレート誘導体を含むことを特徴とする。ある態様において、AEX樹脂の官能基はジエチルアミノエチル(DEAE)基である。ある態様において、CEX樹脂の官能基は、カルボキシメチル(CM)基である。
【0159】
ある態様において、陰イオンおよび陽イオン交換樹脂の主鎖ポリマーは、架橋アガロース、例えば、Sepharose(登録商標)を含まない。好ましい態様において、AEXおよび/またはCEX 陰イオンおよび/または陽イオン交換樹脂の主鎖ポリマーは、メタクリレート誘導体を含む。より好ましい態様において、AEX樹脂は、DEAE Macro−Prep (BioRad)であり、CEX樹脂はToyopearl CM−650 (Tosoh)である。ある態様において、AEXカラムは、pH7以上の低電導性緩衝液、好ましくは10mM Tris−HCl/pH 8で平衡化する。
【0160】
ある態様において、G−CSFは、好ましくは勾配、最も好ましくは直線勾配で塩濃度を増加させることによりAEXカラムから溶出する。好ましくは、該溶出は、Tris−HCl/pH 8緩衝液中の直線NaCl勾配を用いて行われる。ある態様において、CEX工程前に、AEXカラムから溶出したG−CSFのpH値を調節し、好ましくは該pHをpH5.5以下、最も好ましくは(約)pH 4.5に調節する。優先的には、AEXカラムから溶出したG−CSFを、水で2倍に希釈し、pHを50%酢酸で滴定して(約)4.5に調節する。ある態様において、CEXカラムを、pH5.5以下の低電導性緩衝液、好ましくは20mM酢酸ナトリウム/pH 5.3で平衡化する。
【0161】
ある態様において、G−CSFを、好ましくは勾配、最も好ましくは直線勾配で塩を増加させてCEXカラムから溶出した。優先的には、CEXカラムからのG−CSFの溶出は、pH5.3の直線酢酸ナトリウム勾配を用いて行う。
【0162】
好ましい態様において、G−CSFをIBから可溶化し、リフォールし、図2の精製スキームに記載の工程の順序に従って精製する。
【0163】
本発明のある態様において、ポリッシング後の最終精製G−CSFを、好ましくはSephadex G−25を用いるゲルクロマトグラフィにより処方する。
【0164】
ある態様において、処方用緩衝液は、ソルビトールおよびポリソルベートを含み、より好ましくは該処方用緩衝液は、10mM酢酸ナトリウム/pH 4/5%(w/v)ソルビトール/0.006% (w/v)ポリソルベート80を含む。
【図面の簡単な説明】
【0165】
図1】生物活性を有するG−CSFを製造するための、所望により下流ポリッシング工程を含む2段階リフォールディング戦略を示す。実施例にさらなる詳細を示す。
図2】好ましい態様、すなわち、G−CSF含有封入体から出発し、完全にリフォールドした精製G−CSFを得る工程の順序を示す。実施例にさらなる詳細を示す。
図3
【0166】
基準として用いた市販のフィルグラスチム薬剤製品(3A)および図2に示す順序に従って精製した生成物(3B)の純度分析で得られたSEC−HPLCクロマトグラムを比較したものである。実施例にさらなる詳細な方法を示す。
(表の簡単な説明)
【0167】
表Iは、2つのリフォールディング工程の好ましい条件の一覧表である。第1リフォールディングインキュベーションにおける濃度は、可溶化G−CSFの水による2倍希釈から得られる。第2リフォールディングインキュベーションは、第1リフォールディングから試薬サルコシルおよびCuSO4を欠く。実施例にさらなる詳細な方法を示す。
【0168】
表IIは、650gの洗浄し凍結した封入体から出発する3回の生成操作の収量と純度を示す。収量の計算値は、封入体の湿重量を表す。最終純度は、生成物関連物質(G−CSF異性体)および生成物関連不純物を除くRP−HPLCの主要ピーク面積から計算する。実施例にさらなる詳細な方法を示す。
【0169】
表IIIは、G−CSFの生成時の総純度と2つの選択したプロセス関連不純物(サルコシル、エンドトキシン)の値を示す。該範囲は、種々の分析方法を用いた3回のG−CSF生成物ロットの分析結果を示す。実施例にさらなる詳細な方法を示す。
【0170】
表IVは、3連続G−CSF製造ロットの特定の不純物および生物活性に関する種々の方法の分析結果を示す。該データは、常套的バッチ放出試験から得られる。実施例にさらなる詳細な方法を示す。
【実施例1】
【0171】
発酵および発現
G−CSF(フィルグラスチム)を組換えE. coli C2523 T7 pol pRG/GCSFaクローン (G−CSFを含む発現ベクターで形質転換したE. coli)を用いて製造した。無菌条件下で製造したシード培養液に、液体窒素で保存し、解凍した機能細胞バンクバイアルから得た0.10〜0.15cm3細胞サスペンジョンを接種した。接種したシード培養フラスコを、旋回振盪インキュベーター中で37℃、185rpmで24〜28時間インキュベーションした。6振盪フラスコ培養の600nm (OD)での光学密度の平均値が0.9〜1.1に達したら、フラスコの内容をシリコンチューブを装着した無菌5dm3ガラスフラスコに回収した。回収した3dm3容量のシード培養を、WM323U/Rポンプで、無菌の添加製造培地(GBA、炭素源としてグリセロールを含む合成培地)を最大75dm3充填した100dm3発酵槽に移した。37℃の水中(submerged)培養中、厳密な好気条件下で培養を行った。炭素源が培地中から枯渇したら、グリセロールフィーディング溶液を適切な速度で該培養に加えた。溶解酸素圧を全培養期間中30%以上のレベルに維持した。培養のOD値が30に達したら、温度を32℃に下げ、0.33mM IPTGを加えてG−CSFの発現を誘導した。該細菌をG−CSFを産生させるためにODが80〜95になるまで5時間さらに培養した。
【実施例2】
【0172】
細菌の集菌
攪拌、通気、および炭素源の供給を止め、培養を15℃以下に冷却し、細菌を11000gで分離して回収した。細胞をローターに沈殿させ、次いで水で洗い流した(排出)。細菌細胞濃縮物を回収し、水でその半分量に希釈し戻し、次いで0.5M NaH2PO4を最終濃度10mMとなるように加えた。湿細菌細胞(バイオマス)の総量は約10〜11.5kgであった。
【実施例3】
【0173】
細菌の溶解および封入体の調製
分離し洗浄した細菌を、加圧下(100MPa)でホモゲナイザーを3回通して破壊した。封入体を、11000gで分離器中に沈殿させて細胞デブリから分離した。沈殿した封入体を、5mM DTT、10mM NaH2PO4、5mM EDTA、および2%Tween20(pH7.2)を含む洗浄用緩衝液中に排出させた。濃縮IBサスペンジョンを同じ緩衝液で2倍に希釈し、再度沈殿させた。この洗浄手順を、10mM NaH2PO4緩衝液を用いて2回反復し、該第2手順の終了時は希釈しなかった。IBの最終沈殿物を−80℃で凍結保存した。
【実施例4】
【0174】
封入体の可溶化
凍結封入体 (湿質量650g)を解凍し、32.5dm3の総容量中40mM Tris−HClおよび1%(w/v) N−ラウロイルサルコシン(サルコシル)を含む可溶化剤(pH 8)で可溶化した。該サスペンジョンを連続攪拌下、室温でインキュベーションした。
【実施例5】
【0175】
酸化的リフォールディング (第1リフォールディング)
可溶化IB懸濁液を水で2倍に希釈し、総容量65dm3中の最終濃度を0.5%サルコシルおよび20mM Tris−HClとした。CuSO4を最終濃度40μMで加えた。G−CSFを、室温で少なくとも20時間、連続的に攪拌および頭部スペースに気流を流して酸化し、部分的にリフォールドさせた。EDTAを最終濃度1mMで加えて酸化を止めた。
【実施例6】
【0176】
AEXバッチ吸着によるサルコシルの除去
サルコシルをバッチモードで陰イオン交換 (AEX)樹脂に吸着させた。20g AG 1−X8樹脂 (BioRad、USA)/gサルコシルの量を該溶液に適用し、加えた。該サスペンジョンを2時間攪拌し、ほとんどのサルコシルを結合させた。該樹脂を、100μmポアサイズのナイロンバッグフィルターメッシュを通してろ過して除去した。濾液中の残存サルコシルを続く生成工程(実施例7および8)で生成物から完全に除去した。
【実施例7】
【0177】
夾雑物の酸pHによる沈殿
pH 4.3〜4.5の酸性沈殿により、G−CSFは可溶性のままで、いくらかの不純物は容易に除去された。G−CSFのあらゆる潜在的な非特異的で望ましくない共沈殿を最終濃度1Mの尿素を加えて抑制した。尿素を6Mストック溶液で提供し、実施例6の濾液に1dm3/minの速度で徐々に加えた。次いで、pHを1/20容量の1M酢酸ナトリウム(pH 4.8)を加えて下げた。pHをさらに50%酢酸で滴定して 4.3〜4.5に下げた。少なくとも1時間沈殿させた。次に、沈殿した物質を深層ろ紙(Pall K700/KS50二重層)を通すろ過により除去した。
【実施例8】
【0178】
直列接続AEX+CEXクロマトグラフィによる残存サルコシルの除去および緩衝液交換
酢酸ナトリウム50mM/pH4.5緩衝液を以下を平衡化するために用いた:1) DEAE Macro−Prep (Bio−Rad、USA) AEX樹脂を充填した4dm3カラム、および2)Toyopearl SP−650C (Tosoh、Japan) CEX樹脂を充填した8dm3カラム。両カラムを直列配列でAeKTAプロセスクロマトグラフィシステム(GE Healthcare、Sweden)と直接接続した。0.2μm無菌フィルターを通して浄化後、実施例7の濾液を第1カラムにロードした。残存サルコシルはDEAE樹脂に結合し、G−CSFは非結合(非結合モード)のままであり、第1カラムのフロースルーに出現した。このフロースルーを該第2カラム(SP樹脂)に直接ロードし、G−CSFを結合させた(結合モード)。. A simple step elution with 20mM Tris−HCl/pH 8を用いる簡単な段階溶出により該樹脂からG−CSFを脱離させた。残存サルコシルの除去に加えて、この方法では酢酸ナトリウム/pH 4.5からTris−HCl/pH 8への緩衝液交換も達成された。
【実施例9】
【0179】
第2リフォールディング(フォールディングの完結)
この段階で該タンパク質分画の約半分のフォールディングが完結したが、残りのタンパク質は不完全にフォードするか、ミスフォールドした。G−CSF溶液を、Toyopearl SP−650Cから20mM Tris−HCl(pH 8)で溶出し、0.2μm無菌フィルターを通してステンレススチール容器に入れた。ろ過した溶液を水で2倍に希釈した。タンパク質フォールディングのための第2インキュベーション(第2リフォールディング)を、2〜8℃の冷却下で32〜42時間、pH8の低電導度環境(<1mS/cm)で行った。
【実施例10】
【0180】
AEXクロマトグラフィによる精製(ポリッシング工程 1)
カラムにDEAE Macro−Prep (Bio−Rad、USA)を充填し、10mM Tris−HCl/pH8で平衡化した。第2リフォールディングから得た溶液(実施例9)をDEAE カラムにロードした。正しくフォールドしたG−CSFを、10mM Tris−HCl/pH 8中の0mM〜200mMの増加する直線NaCl勾配により溶出させた。溶出したG−CSFをプール子、水で2倍希釈した。pHを50%酢酸で滴定して4.5に調節した。
【実施例11】
【0181】
CEXクロマトグラフィによる精製(ポリッシング工程 2)
最終ポリッシング工程では、正しくフォールドしたタンパク質からなるAEXクロマトグラフィから回収したG−CSFプール(実施例10)をToyopearl CM−650S樹脂を充填したCEX カラムに直接流した。該カラムを20mM酢酸ナトリウム(pH5.3)で平衡化した。結合G−CSFを24カラム容量以内で20mM〜400mM酢酸ナトリウム(pH 5.3)の増加する直線塩勾配により溶出した。精製G−CSFを含む分画を回収し、処方用にプールした。
【実施例12】
【0182】
ゲルクロマトグラフィによる精製G−CSFの処方
CEXカラムから溶出した精製G−CSF(実施例11)を0.2μm無菌フィルターでろ過し、次いで処方用緩衝液(10mM酢酸ナトリウム、pH4.5%ソルビトール、および0.006%ポリソルベート80)で平衡化したSephadex G−25微粒子樹脂を充填した14dm3カラムを通した。同じ緩衝液をランニング緩衝液として用い、G−CSFを処方用緩衝液のボイド容積に溶出した。全バッチ(35〜48g G−CSF)について、Sephadex G−25を用いる3回連続処方操作(それぞれろ過CEX溶出液の3分の1)を行った。処方化G−CSFを処方用緩衝液で希釈して0.9〜1.0mg/mlの濃度に調整し、最終的に0.2μm無菌ろ過カプセルを通した。無菌溶液としての処方化G−CSFは非常に安定であり、何ヶ月間(数年ではないかもしれないが)にもわたり2〜8°で保存することができた。
【実施例13】
【0183】
分析方法
よく知られた標準分析方法を、欧州薬局方(European Pharmacopoeia (Ph. Eur.):具体的分析方法を説明するフィルグラスチムのための文献を含む(European Directorate for the Quality of Medicines & Health Care (EDQM) (2010):Filgrastim concentrated solution. European Pharmacopoeia 7.0、2015−2018))に従って行った。基本技術については欧州薬局方内の他の章の文献参照。該技術のより詳細な説明を提供するこれらが具体的に言及する章は、下記実施例中に角括弧で示す。用いた参照標準は、医薬用途に欧州連合が承認した市販の認可された薬剤製品(フィルグラスチム)またはこれら市販標準を用いて較正した社内標準であった。国際単位(IU)について相対効力を分析するために、世界保険機構(WHO)の国際G−CSF標準をさらに用いた。純度、特定の不純物、G−CSF関連タンパク質、および生物活性(効力)を分析するために用いる試験方法は、欧州薬局方の記載にしたがって用いた(わずかだけ修飾した)。したがって、当該分野で知られているこれら標準分析法を以下に簡単に記載する。
実施例13.1
【0184】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS−PAGE):[Ph. Eur. 7、2.2.31]。SDS−PAGEを用いてG−CSFの分子サイズ、同一性、および純度を決定した。ゲルは12%PAであり、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。該方法を還元条件下および非還元条件下で用いた。ゲルをSyproルビーで染色した。比較的分子量(Mr)を計算するために、確定した分子量のマーカータンパク質のパネルを用いた。
実施例13.2
【0185】
高性能サイズ排除クロマトグラフィ (SEC−HPLC):[Ph. Eur. 7、2.2.30]。SECを用いて、フィルグラスチム (ダイマー、凝集物)より高い分子量を有する不純物またはG−CSF関連物質を検出した。該タンパク質の検出はUV吸収に基づいた。純度(主ピーク)および不純物(ダイマー、凝集物)は、各成分の活性物質の面積%で表現した。試験結果を反復測定値の平均から計算した。図3は、参照基準(3A)と比較した精製G−CSFバッチのSECクロマトグラム(3B)の例を示す。微量の凝集物が主ピークの左側にみえる。主ピークの右側のピークは溶媒によって生じ、不純物ではない。
実施例13.3
【0186】
逆相高圧液体クロマトグラフィ(RP−HPLC):[Ph. Eur. 7、2.2.29]。RP−HPLCを用いて、G−CSFの同一性を決定し、G−CSF含有量および純度を計算した。また、該方法を用いて生成物関連物質を同定および定量した。該タンパク質の検出はUV吸収に基づいた。関連タンパク質不純物は、活性物質のパーセンテージ(%面積)で表した。試験結果は、反復測定値の平均から計算した。
実施例13.4
【0187】
等電点フォーカシングゲル電気泳動 (IEF): [Ph. Eur. 7、2.2.54]。この方法を用いて、G−CSFと異なる荷電の不純物または生成物関連物質(例えば脱アミド化G−CSF)を検出した。分離は、両性電解質に基づく固定pH勾配を含むポリアクリルアミドゲル中で行った。さらに、各タンパク質バンドの等電点 (pI)を明確なpIを有するマーカータンパク質のセットを用いて計算した。
実施例13.5
【0188】
酵素免疫測定法(ELISA):この方法を、E. coli宿主細胞タンパク質(HCP)レベルの定量的測定に用いた。本方法を、市販の(ジェネリック)酵素免疫アッセイキット(Cygnus Technologies、no. F410)を用いて行った。マイクロタイターストリップの固相をアフィニティ精製ポリクローナル抗E. coli抗体でコートし、試験試料からHCPを捕捉した。ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)標識トレーサー抗E. coli抗体をHCPと同時に結合させ、得られたサンドウィッチは洗浄手順に耐えた。各HRPと結合したHCPを、過酸化水素存在下、基質テトラメチルベンチジン(TMB)の酸化により検出した。光学密度をELISAリーダーにより測定した。種々の濃度のHCPキャリブレーター(キットで提供)を測定することにより得られた較正グラフを用いて定量を行った。該方法は使用説明書に従って正しく行った。HCP濃度をng/mlまたはng/mg (ppm)で表した。
実施例13.6
【0189】
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR):このアッセイを用いてE.coli宿主細胞DNAを測定した。市販のキット「resDNASEQ(登録商標)E. coli Residual DNA Quantitation System」(リアルタイムTaqMan(登録商標) qPCR技術(Applied Biosystems)に基づく)を用いた。該方法は、DNA夾雑物の検出において非常に感度が高く、特異的である。該アッセイは、該アッセイは、配列特異的プライマー(SSP)および蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブ(TaqMan(登録商標))を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による明確なDNA断片の配列特異的増幅およびリアルタイム蛍光検出に基づく。器具類、試薬、サンプリング、およびソフトウエアに基づく計算を含むすべての方法は、使用説明書に従っておこなった。
実施例13.7
【0190】
細菌エンドトキシン: [Ph. Eur. 7、2.6.14、method C]。グラム陰性細菌エンドトキシンの検出法は、カブトガニ(Limulus polyphemus)由来の変形細胞溶解物に基づく世界強調標準法である。このリムルス試験(「LAL試験」)は欧州薬局方に従って比濁速度論的技術(方法C)を用いて行った。該結果は、世界エンドトキシン標準BRPに関する国際単位(IU)で表した。
実施例13.8
【0191】
生物活性アッセイ(相対効力):G−CSF試料の生物活性は、下記変更を伴うフィルグラスチム文献に記載の細胞ベースのin vitro増殖アッセイにおいて試験した。バイオアッセイ法は、ネズミ骨髄芽球細胞株由来のNFS−60細胞の細胞増殖変化を比較することに基づいた。NFS−60細胞を、試験試料の希釈系列および同時に基準溶液で処理した。NFS−60細胞の増殖は、G−CSFで顕著に特異的に刺激することができる。該細胞の増殖は、マイクロテストプレート中で72時間行った。該増殖効果は、基質レサズリン(alamar(登録商標)ブルー)を用いて検出し、これを生細胞により蛍光色素レソルフィンに変換した。蛍光シグナルは高感度で検出可能であった。用量反応曲線のパラレルラインアッセイ計算(該曲線の直線部分の少なくとも3点で行う)を統計評価に用いた。許容範囲は基準溶液に比べて80%〜125%であった。相対効力は、フィルグラスチムに対する国際WHO標準に対して較正した内部標準により定義した国際単位(IU)により表した。完全に活性な純粋ヒトG−CSFは、1.0×108 IU/mgの比生物活性を有する。
実施例13.9
【0192】
ペプチドマッピング:[Ph. Eur. 7、2.2.55]。ペプチドマッピング、次いで質量分析法(MS)をジスルフィド架橋の分析に用いた。ペプチド結合手順の酵素的開裂をフィルグラスチムに関する欧州薬局方に基づいて行った。開裂に用いたプロテアーゼは、グルタミルエンドペプチダーゼ(EndoGlu−C)であった。インキュベーションは37℃で24時間行い、8M GuHClの添加および煮沸により止めた。ペプチドマッピング手順は還元条件および非還元条件下で行った。還元条件および非還元条件でのペプチドプロフィールのMSスペクトルにおける得られた差は、ジスルフィド結合の位置を証明した。完全にフォールドした完全なG−CSF (フィルグラスチム)は、Cys37−Cys43位およびCys65−Cys75位に2個のジスルフィド架橋を有し、1個のシステイン残基が18位にない。あるいはまた、タンパク質分解後にG−CSF試料から得られたペプチドをRP−HPLCシステムで分離し、UVで検出した。この方法は、試験溶液で得られた指紋的クロマトグラムは、標準物質を用いて得られたクロマトグラムと比較する比較データを提供する。
(参考文献)
【0193】
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【0194】
表I:
2つのリフォールディング工程の好ましい条件
【0195】
表II:
3G−CSF生成ロットの収量
【0196】
表III:
プロセスコントロールにおいて選択したG−CSFの精製:(3つの生成ロットの範囲)
(#)計算値;n.d.=検出不能/検出限界以下;n.t=試験せず
【0197】
表IV:
3つのG−CSF生成ロットの純度および生物活性

n.d.=検出不能/検出限界以下。
図1
図2
図3A
図3B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]