(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1及び
図2は、典型的なVIG窓ユニット1及びVIG窓ユニット1の構成要素を表している。例えば、VIGユニット1は、離隔された2つの実質上平行なガラス基板2,3を備えていてよく、これらガラス基板の間には真空引きした低圧の空間/キャビティを含んでいる。ガラスシート又は基板2,3は外周端部シール4で相互接続されており、外周端部シールは例えば、溶融はんだガラス製であってよい。基板2,3の間に存在する低圧の空間/間隙6を考慮して、支柱/スペーサ5の配列をガラス基板2,3の間に備えてVIGユニット1の基板2,3の間隔を維持することもある。
【0005】
排気管8は、例えば、はんだガラス9によって、一方のガラス基板2の内表面から当該ガラス基板2の外表面にある任意の凹部11の底面に通じる、又は、場合により当該ガラス基板2の外表面にまで及ぶ開口部/穴10に気密封止されていてよい。排気管8に吸引装置を取り付けて、例えば、連続ポンプダウン操作を利用して内部キャビティ6を低圧まで真空引きする。キャビティ6を真空引き後、排気管8の一部(例えば、先端)を溶融することで低圧キャビティ/空間6を真空密封する。この任意の凹部11は、封止された排気管8を保持することができる。場合により、一方のガラス基板、例えば、ガラス基板2の内表面に配置された凹部13にはゲッター材12が含まれていてもよい。ゲッター材12は、キャビティ6を真空引きと封止後に残存している可能性のある特定の残留不純物を吸着する、又は特定の残留不純物に結合するために使用され得る。
【0006】
溶融はんだガラス外周端部シール4の付いたVIGユニットは典型的に、ガラスフリットを溶液状態(例えば、フリットペースト)で基板2(又は基板3)の外縁周囲に配置させることによって製造される。このガラスフリットペーストは最終的にはガラスはんだ端部シール4となる。もう一方の基板(例えば、3)を、2つの基板2,3の間にスペーサ/支柱5とガラスフリット溶液が挟持されるように基板2上に下ろす。次に、ガラス基板2,3、スペーサ/支柱5及びシール材(例えば、溶液又はペースト状態のガラスフリット)を備える組立品全体を少なくとも約500℃の温度まで加熱することで、ガラスフリットが溶融してガラス基板2,3の表面を濡らし、そして最終的に気密性の外縁/端部シール4となる。
【0007】
基板間に端部シール4を形成した後、排気管8を介して真空にすることで基板2,3間に低圧の空間/キャビティ6を形成する。空間6内の圧力は、真空引き工程によって大気圧未満、例えば、約10
−2Torr未満の程度にしてよい。この空間/キャビティ6内の低圧を維持するために、基板2,3を気密封止する。小さな高強度スペーサ/支柱5を基板間に配置することで、大気圧下で基板が互いにほぼ平行に分離したままになる。上述の通り、基板2,3間の空間6を真空引き後、排気管8は、例えば、レーザなどを用いてその先端を溶融させることによって封止してよい。
【0008】
穴又は開口部10に排気管8を取り付ける典型的な方法は、予備成形されたガラス排気管8を、ガラス基板2に(例えば、ドリル加工によって)予め形成した開口部/穴10に挿入する工程を含む。排気管8を開口部/穴10に取り付けた後、接着フリットペーストを排気管8の、典型的にはガラス基板2の外表面に近接した穴10の入口近くの領域に配置する。上述の通り、排気管は、VIGのキャビティの真空引き又はパージ後に封止することができる。
【0009】
キャビティを大気圧未満の圧力まで真空引き後、キャビティを真空引き又はパージするのに使用する排気管の端部を加熱してその入口を溶融させて、その結果VIG窓ユニットのキャビティを封止することにより、排気管の封止工程を行ってもよい。例えば、これに限定されないが、この加熱及び溶融工程は、排気管の先端にレーザを照射することによって行ってもよい。
【0010】
ガラス基板に形成された穴に排気管を適切に封止できない場合もあり得る。その結果、排気管は片方に片寄る又は傾くので、穴が形成されたガラス基板の表面と実質上垂直にならないこともある。そのため、排気管が不適切に取り付けられてガラス基板の表面と望ましくない角度をなす場合、レーザは例えば、角度の付いた排気管最上部の様々な部位とレーザ光源との距離に差があるために排気管の先端を一貫して溶融することができないので、排気管を適切に封止するのは困難である。排気管の最上部が一貫性なく溶融すると封止が不完全なものとなることがあり、シールの品質に応じて急速に又は経時的に徐々に空気漏れが生じる可能性がある。さらに、排気管の傾き程度によっては、レーザが、排気管の最上部ではなく、排気管の壁に当たる可能性もある。レーザが排気管の壁に当たると、レーザが排気管を迂回してフリットに当たる可能性が生じ、フリットを損傷する又はキャビティの中への望ましくないガス放出が生じることがある。したがって、必要なのは、穴の中に排気管を封止して管の傾き量を許容範囲内に抑える方法である。後述するように、特定の実施態様例によれば、このことは、排気管の傾きを軽減するのに役立つ穴の配置及び寸法を規定することによって達成することができる。
【0011】
排気管の傾きに関する上述のような欠点を克服するために、特定の実施態様例によれば、排気管を挿入するガラス基板の穴の少なくとも一部は、ガラスの穴の直径が、排気管を穴に挿入したとき及びその後も実質上垂直方向に保持するのに十分な支持を与える大きさとなるように構成されてよい。例えば、これに限定されないが、特定の実施態様例によれば、排気管を挿入するガラス基板の穴は、例えば、これに限定されないが、穴の内径が排気管の外径よりも実質上最高で約0.1mm大きくなるような大きさであってよく、更に好ましくは、穴に挿入される排気管の端部がガラス基板の内表面と実質上同等(例えば、実質上同一平面)となる。さらなる実施態様例によれば、排気管は、ガラス基板の内表面と同一平面となるほど穴の中に十分に延びていなくてもよく、例えば、これに限定されないが、内表面から最高で約0.1mmの距離だけ内表面からわずかに離しておいてもよい。いずれにしても、排気管がガラス基板の表面を超えてVIG窓ユニットのキャビティの中にまで延びるのは望ましくないことが分かった。更なる実施態様例によれば、穴は、ガラス基板の外表面に形成された、直径が更に大きな凹部を含んでいてもよい。特定の実施態様例によれば、直径が更に大きな穴は、例えば、特定の実施態様例に関連して先に説明したように、例えば、過剰なフリットが挿入プロセスが原因で堆積する可能性のある凹部を形成してもよい。更なる実施態様例によれば、凹部の深さは、ガラス基板の厚さの約4分の1〜2分の1であってよく、更に好ましくは、ガラス基板の厚さの約3分の1であってもよい。特定の実施態様例によれば、直径が更に大きな穴の直径は、排気管の外径よりもわずかに約0.1mm大きい長さから、排気管の外径よりも最高1.0mm大きい長さまでの範囲内であってよい。特定の実施態様例によれば、前記を達成するのに許容可能な構造を有する穴は、例えば、これに限定されないが、2段ドリル加工法を利用して構築されてよく、ここで2段ドリル加工法では、穴の第1の部分がガラス基板の外表面から所定の深さまで第1ドリルビットを利用してドリル加工され、そして穴の第2の部分がガラス基板の内表面から所定の高さまで第2ドリルビットを利用してドリル加工される。特定の実施態様例によれば、第1の部分は、穴の深さ(例えば、ガラス基板の厚さ)の約3分の1〜2分の1の深さまでドリル加工される。穴の残りの部分は、第2の部分を下から第2ドリルビットを利用してドリル加工することによって形成される。凹部を形成する実施態様では、第1ビットの直径は第2ビットの直径よりも大きい。
【0012】
場合により、排気管の端部を加熱封止した後、真空雰囲気が低下することが確認された。場合により、空気漏れは短時間であったが、別の場合では、空気漏れは、例えば、数日間にわたるなどの長期間にわたって生じた。排気管とフリットとの間の界面で又はその近くで生じる排気管の亀裂は、VIG窓ユニットのキャビティ内の真空度の低下が実質的な原因であることを見出した。場合により、排気管の上(又は外)端を封止するのに用いられる熱が、排気管ガラスを介してフリットの方へ伝わり、その結果、例えば、フリットとガラス管との温度差によって、フリットと管の界面付近でガラス排気管に熱衝撃が生じ、それによって排気管とフリット材料との間のフリット界面領域で排気管に亀裂が引き起こされることを確認した。上述の通り、排気管の端部を溶融するのに必要とされる温度は、典型的に非常に高い。フリット界面で生じる排気管の亀裂は、VIG窓ユニットの真空度を低下させる可能性のある空気漏れが原因であることを見出した。さらには、熱伝導は排気管の長さに依存していることも分かった。言い換えると、驚くことに、排気管を穴に付着させるのに用いられるフリットと、例えば、レーザ加熱などによって加熱封止される排気管の端部との間の距離が近過ぎると、フリットへ熱伝導が生じる可能性が増大し、その結果、排気管とフリットとの界面において排気管の熱衝撃が生じる可能性も増大することが分かった。したがって場合により、排気管の長さ、特にフリットの最上部から加熱封止される排気管の端部までの長さは、熱衝撃の可能性を軽減して結果として排気管とのフリット界面における排気管の亀裂を軽減する又は実質上回避するように配置する。排気管の長さは短縮できる場合もある。排気管は、典型的にガラスから構成されており、しかも脆弱である。管が長いほど、VIG窓ユニットを完成させるのに使用され得る後続の製造工程中に管が損傷する可能性が高くなる。こうして、管の全長と、排気管の端部から排気管のフリット材料との界面までの距離と間のバランスをうまくとることができる。特定の実施態様例では、外側フリットの排気管との界面(例えば、排気管上の凸部/フリットの山の最上部)から加熱封止すべき排気管の端部までの距離を約4.5〜6mmの範囲内、好ましくは約4.8〜5.5mmの範囲内、更に好ましくは約5.0mmに設定することで、封止中に生じる熱衝撃に関する上述の問題を解決することができることが分かった。さらに、フリット界面より上側のこの管長範囲は、後続の製造プロセス中に管を損傷する可能性又は見込みが実質上増大しないという点から条件を満たしていることも分かった。
【0013】
この利点及び他の利点は、排気管を受容するために穴が中に形成された第1基板を備える、真空断熱ガラス窓ユニットであって、穴の直径は、排気管の外径よりも約0.05〜0.2mmの範囲内で大きい、更に好ましくは排気管の外径よりも約0.05〜0.15mmの範囲内で大きい、なお更に好ましくは排気管の外径よりも約0.1mm大きい、真空断熱ガラス窓ユニットによって提供される。
【0014】
更なる利点は、排気管及びフリット含有ペーストを受容するために穴が中に形成された第1基板を備える、真空断熱ガラス窓ユニットであって、排気管及びフリット含有ペーストを穴の中に配置したときに、フリット含有ペーストの一部が、穴の最上部、すなわち穴が第1基板の出口となる位置に近接しかつ排気管の一部を実質上包囲して、第1基板の表面から測定された高さを有する凸部をフリット含有ペーストから形成し、ここで、フリット含有ペーストからなる凸部の高さと穴の外側から延びる排気管の高さとの差は、約4.5〜6.0mmの範囲内、更に好ましくは約4.8〜5.5mmの範囲内、なお更に好ましくは約5.0mmである、真空断熱ガラス窓ユニットによって提供される。
【0015】
これら及び他の実施態様及び利点を、本明細書では特定の実施態様例に関しそして以下の図面を参照して説明する。図面中、同様の参照符号は同様の要素を指すものとする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では以下の図面を参照して特定の実施態様例を詳述する。図面中、同様の参照符号は同様の要素を指すものとする。本明細書に記載の実施態様は、限定ではなく例示を目的とするものであり、また、当業者は、本明細書に添付する特許請求の範囲の真の趣旨及び全範囲を逸脱することなく様々な変更が可能であると考えることができることが分かるであろう。
【0018】
図4及び
図6を参照すると、VIG窓ユニット例1の概略断面図が示されている。VIG窓ユニット1は、離隔された第1及び第2透明ガラス基板2,3を備えており、これら第1及び第2透明ガラス基板2,3は、端部シール4で相互接続することができ、端部シール4は例えば、これに限定されないが、バナジウム系若しくはVBZ型のシール又ははんだガラス型シールであってもよく、あるいはこれらを含んでいてもよい。バナジウム系又はVBZ型のシール組成物例は、2012年1月20日出願の米国特許出願番号第13/354,963に開示されており、この開示全体を参照として本明細書に組み込む。VBZ(例えば、バナジウム、バリウム、亜鉛)系のシール組成物は、前記公報第13/354,963に記載されており、また、特定の実施態様例では端部シール4及び/又はフリット系管用シール18,26として使用可能である。従来のはんだガラスフリット材料もまた、特定の実施態様例では、端部シール4及び/又はフリット系管用シール18,26として使用可能である。VBZ系のシール組成物を用いる場合は、低温封止用の熱プロファイルを利用して、VIGユニットのガラスの所望のテンパーを維持する。これは、VBZ組成物の焼成温度が、VIGユニットにおいてシールを形成するのに使用可能な特定の他の従来のガラスフリット組成物よりも低い(例えば、<250℃)ためである。本明細書に開示される実施態様も同様に、任意の好適なシール材を用いたVIG構造に適用可能であると考えることができる。
【0019】
特定の実施態様では、透明ガラス基板2,3はほぼ同じ寸法であってよい。ただし、特定の実施態様例では、一方のガラス基板が他方よりも大きく、例えば、ほぼL字型のステップをVIGユニットの端部に近接して付与する場合もある。ガラス基板2,3の一方又は両方は更に場合により、例えば、これに限定されないが、低Eコーティングなどのコーティング材(図示せず)を少なくとも1つ含んでいてもよい。ガラス基板2,3の少なくとも一方の内表面には様々なコーティングが含まれていてもよく、そしてかかるコーティングはVIG窓ユニット1に様々な有益な性能特性をもたらすと考えることもできる。特定の実施態様例では、VIG窓ユニットの可視透過率は、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、更に好ましくは少なくとも50%、なお更に好ましくは少なくとも約60%又は70%である。
【0020】
さらに、ガラス基板2,3間のキャビティに大気圧未満の圧力が最終的に付与されることを考慮すると、基板同士の間隔を維持するためにガラス基板2,3間は支柱/スペーサ5の配列を更に含んでいてもよい。特定の実施態様例では、スペーサの高さは、例えば、約0.1〜1.0mm、より好ましくは約0.2〜0.4mmであってよい。スペーサの高さが真空キャビティ6の高さを決める場合もある。上述の通り、スペーサ5の寸法は、好ましくは、視覚的に目立たないほど十分に小さい。特定の実施態様例によれば、スペーサは、はんだガラス、ガラス、セラミック、金属、ポリマー又は任意の他の好適な材料から作製されていてもよく、またはこれらを含んでいてもよい。さらに、スペーサ5は例えば、おおむね円筒形、丸形、球形、ダイム形、C形、まくら形又は任意の他の好適な形であってよい。
【0021】
排気管16は、一方のガラス基板(例えば、基板2)の内表面からガラス基板2を貫通してその外表面の向こう側にまで及ぶ穴22を通じて供給され、例えば、はんだガラスを用いて気密封止されていてもよい。排気管16は、例えば、真空ポンプを排気管16に接続してキャビティを低圧(例えば、大気圧未満の圧力)まで真空引きすることにより、基板2,3間のキャビティ6を真空引きする方法において用いられる。好ましい例では、キャビティ6内の圧力は、例えば、好ましくは約10
−2Torr未満、より好ましくは約10
−3Torr未満、なお更に好ましくは約5x10
−4Torr未満である。キャビティ6を真空引き後、排気管16は、例えば、当該排気管16の先端を例えば、レーザなどの任意の好適な手段で溶融することによって封止してもよい。VIG窓ユニットは、例えば、これに限定されないが、家庭用住居、オフィスビル、共同住宅、ドアなどの窓として使用され得る。
【0022】
特定の実施態様例によれば、VIG窓ユニットの製造方法を開示している。フリット材料が排気管の過度に高いところまで付着するのを抑制又は回避する方法でVIG窓ユニットのガラス基板の穴に排気管を取り付ける特定の方法例を提供している。特定の実施態様例によれば、VIG窓ユニットのガラス基板に形成された穴に既に挿入されている排気管に湿潤フリット材料を配置する代わりに、湿潤フリット材料を先ず排気管の下部に配置してから穴に挿入してもよい。排気管の下部に湿潤フリットを配置した後、次いで、当該下部に湿潤フリット材料が付着した排気管を穴に挿入し、この排気管の下部は穴に挿入するが、排気管の上部は露出したままにしておく(例えば、穴の外側に出したままにする)。このやり方で排気管取り付ける工程は、フリット材料を穴の近く又は近接した位置に留めておき、更にはフリット材料が穴の中及び内部側壁に沿って有益に付着するのも促して、穴の中の排気管と基板とに更に有利な気密性シールを提供する。さらに、穴の中に固定できない特定量の過剰フリット材料は、穴から押し出されて、穴が基板の外表面から出ている部分(例えば、排気管が穴に入る部分)と近接した領域で当該領域内の排気管の一部を包囲してフリット材料の凸部又はショルダーを形成してもよい。この凸部/ショルダーの高さを本明細書では、フリットの高さという。この追加量のフリット材料をガラス基板の穴の外側入口の周囲に供給して穴の外側入口を塞ぐことにより、排気管シールに更に有利な気密性シールが提供される。本明細書で説明される様々な実施態様と同様に、排気管を基板の穴に挿入する前に排気管に配置されるフリットに関する実施態様は、本明細書に開示する他の実施態様例と組み合わせても組み合わせなくてもよい。
【0023】
特定の実施態様例によれば、フリットペーストは、排気管の下部の外周を実質上包囲するように、例えば、おおむね円環形(例えば、これに限定されないが、環又は中空円筒形など)で排気管の下部に配置されてよい。このことは、例えば、これに限定されないが、フリットペーストを回転させながら排気管に配置して、例えば、これに限定されないが、排気管の外周を実質上包囲する湿潤フリットの領域を排気管の下部に形成することによって行うことができ、前記領域は、例えば、これに限定されないが、おおむね円環形であってよい。配置された湿潤フリットペーストを含む排気管をその後、ガラス基板に形成された穴に(フリットペースト端部から)挿入してよい。特定の実施態様例によれば、排気管の端部に配置されるフリットペースト材の量は、穴の間隙(例えば、排気管の外表面とガラス基板に形成された穴の側壁との間の間隙)を塞ぎかつガラス基板の最上部にフリットの凸部又はショルダーを形成して、これに限定されないが排気管の周り及びガラス基板の最上部を焼成した後で良好な気密性シールが形成されることを含む、上述の利益が提供されるほど十分でなければならない。更なる実施態様例によれば、排気管の挿入後にフリットを乾燥させて、排気管を焼成するまで所定の位置でしっかりと留まるほど十分な接着強度を付与することが好ましい場合がある。かかる乾燥工程としては、例えば、これに限定されないが、空気乾燥及び/又は加熱を挙げることができる。
【0024】
図3は、実施態様例による、フリットペーストが配置された排気管の例を表す、概略部分断面図である。
図3から分かるように、排気管の例16には、排気管16の下部16aを実質上包囲する、例えば、ある量の湿潤フリット材料18が付着していてよい。上述の通り、非限定的な図の例によれば、フリット材料18は、排気管16の下部16aに、排気管16を回転させるか又はその逆(例えば、フリットペーストアプリケーターを排気管の周りで回転させること)と同時にフリット材料18を配置することによって配置されてよい。言うまでもないが、フリット材料18が排気管16の下部16aに付着して排気管16を実質上包囲するのであれば、フリット材料18を排気管16の下部16aに配置する他のどのような方法を用いてもよい。湿潤フリット材料18を排気管16の下部16aに配置した後、次いで、排気管−ペースト組立品20をVIG窓ユニットのガラス基板2に形成された穴22に挿入してもよい。特定の実施態様例によれば、フリットペーストは、実質上、排気管の下から約4分の1〜2分の1の部分の周囲に、更に好ましくは排気管の下から約4分の1〜3分の1の部分の周囲に、また、なお更に好ましくは排気管の下から約4分の1の部分の周囲に付着させることが好ましい場合がある。
【0025】
図4を参照すると、実施態様例によるVIG窓ユニットのガラス基板2に形成された穴22に挿入された排気管の例16を表す、概略部分断面図が示されている。特定の実施態様例によれば、湿潤フリット18を排気管16の下部16aに配置した後、下部に付着された湿潤フリット材料18を含む排気管16を次いで、ガラス基板2に形成された穴22に挿入する。特定の実施態様例によれば、排気管16の下部16aの全部又は一部を穴22に挿入して、排気管16の上部は露出したままにする(例えば、穴22の外側に出したままにする)。このやり方で排気管を取り付ける工程は、
図4に示すように、フリット材料18を穴の近く又は近接した位置に留めて、更にはフリット材料18が穴22の中及び穴22の内部側壁24に沿って有益に付着するのを促して、穴22の中の排気管16と基板2とに更に有利な気密性シールを提供する。さらに、ある特定量の過剰フリット材料18は、挿入プロセス中に穴22から押し出されて、排気管が基板2の外表面から出ている部分(例えば、排気管が穴に入る部分)と近接した領域で当該領域内の排気管の一部を包囲してフリット材料の凸部又はショルダー26を形成してもよい。この凸部/ショルダー26の高さを本明細書では、フリットの高さという。この追加量のフリット材料18をガラス基板2の穴22の外側入口の周囲に供給して穴22の外側入口を塞ぐことにより、焼成後に、排気管の更なる有利な気密性シールが提供される。
図4では排気管16をガラス基板2に挿入しているが、本発明の別の実施態様例では、その代わりに、排気管16をガラス基板3の同様の穴に挿入してもよいことが分かるであろう。
【0026】
図5は、特定の実施態様例によるVIG窓ユニットの作製における排気管の挿入及び封止方法を表すフローチャートである。
図5に示す方法は主に、排気管の挿入とVIG窓ユニットの基板に形成された穴にフリットペーストを付着させることとに関するものであるが、これはVIG窓ユニットの作製方法全体の一部であると考えることができる。
図5を参照すると、S1では、例えば、(好ましくはガラス製の)排気管16を供給する。S3では、穴22が中に形成されたガラス基板2を供給する。基板2は、単独で供給されてもよく、又は部分的に完成したVIG窓ユニット組立品の一部として供給されてもよいと考えることができる。次いで、上述と同様に、湿潤フリットペースト18を排気管16の下部16aに配置する(S5)。例えば、これに限定されないが、湿潤フリットペースト18を、上述の
図3に示すように排気管16の下部16aを実質上包囲するように配置する。特定の実施態様例によれば、フリットペースト18は、排気管16を回転させながら配置して湿潤フリットペースト18を排気管の外周の周りに実質上配置させてもよく、又はその逆であってもよい。こうして得られる配置された湿潤フリットペースト18の形は、例えば、ドーナツ形状、中空円筒形などのような、おおむね円環形であってよい。特定の実施態様例によれば、フリットペーストは、排気管の下から約4分の1〜2分の1までの部分の周囲に、更に好ましくは排気管の下から約4分の1〜3分の1までの部分の周囲に、また、なお更に好ましくは排気管の下から約4分の1の部分の周囲に付着させることが好ましい場合がある。湿潤フリット18を排気管16に配置した(S5)後、次いで、下部16aにフリット18が付いた排気管−フリットペースト組立品20の排気管16をガラス基板2に形成された穴22にフリットの端部から挿入する(S7)。言い換えると、特定の実施態様例によれば、湿潤フリットペースト18が配置された排気管16の端部16aを、ガラス基板2の穴22に挿入する(S7)。フリットペースト18は、穴22の排気管16で塞がれていない領域を十分に塞ぎ、しかも好ましい実施例では、穴22の側面を覆うほど十分な量であってよい。さらに、フリットペースト18の量は、好ましい実施例によれば、穴22の最上部入口において排気管16を包囲しかつ穴を覆って凸部又はショルダー26を形成してもよい。上述の通り、この凸部又はショルダー26は、組立品を焼成したときにシール効果を与えることができる。ガラス基板2と共に排気管及びフリット材料を備えた部分組立品20はその後、乾燥させてもよい。特定の実施態様例によれば、フリット接着材は、排気管16を焼成するまで所定の位置に保持するほど十分な生強度を付与することが好ましい場合がある。この点において、特定の実施態様例によれば、フリットペースト18は、空気乾燥させてもよく、又は場合により加熱によって乾燥させてもよく、或いはこれら両方の方法の任意の組み合わせによって乾燥させてもよい。フリットペーストを乾燥させた(S9)後、特定の実施態様例によれば、穴22の中にありかつ排気管16及び穴の表面を包囲するフリットペースト18(例えば、はんだガラス系フリット、又はVBZ形フリット)を焼成することで、フリットペーストによって、排気管16の周りに及び穴22の側壁に沿って穴22の中に気密性シール(例えば、ガラス系シール)が形成される。その後、例えば、ガラス基板同士の間のキャビティを真空引きする工程と排気管の最上部を後述するように封止する工程とを含む追加工程を行うことで最終製品であるVIG窓ユニットが製造され得る。特定の実施態様例における前記のやり方で排気管を供給することにより、排気管の上部に残留している残留フリットであって、VIG窓ユニットのキャビティ6を排気管を介して真空引き後で排気管を封止するための後続のプロセスを妨げる残留フリットペーストに関する問題が解決され得る。前記方法は更に、排気管とガラス基板との間に良好な気密性シールをも提供する。
【0027】
他の特定の実施態様例は、排気管を穴に付着するのに用いられるフリットの最上部と後続の加熱封止に付され排気管の端部との間の距離を制御することに関する。本明細書で述べる様々な実施態様と同様に、この距離を制御することに関する実施態様は、既に上にシール材が付着した排気管を穴に挿入するなどの他の実施態様と組み合わせて用いてもよく、又は組み合わせずに使用してよい。場合により、排気管の端部を加熱封止した後で真空雰囲気が低下することが確認された。場合により、空気漏れは急速であったが、別の場合では、空気漏れは、例えば、数日間にわたるなど、長期間にわたって生じた。例えば、フリットの最上部が排気管のガラスと接触する部分などの排気管とフリットとの界面領域又はその近くの領域で生じた排気管の亀裂が、VIG窓ユニットのキャビティ内の真空低下の実質的な原因であることを見出した。実態調査を行った後、場合により、排気管の上(又は外)端を封止するのに用いられる熱が、排気管ガラスを通じてフリットの方へ伝わり、その結果、例えば、フリットとガラス製排気管との温度差によって、フリットと排気管との界面付近でガラス排気管に熱衝撃が生じ、それによって排気管とフリット材料との間のフリット界面領域で排気管に亀裂が生じることを確認した。上述の通り、排気管の端部を溶融するのに必要とされる温度は、典型的に非常に高い。フリット界面で生じる排気管の亀裂は、VIG窓ユニットの真空度を低下させる可能性のある空気漏れが原因であることを見出した。さらには、熱伝導は排気管の長さに依存していることも分かった。言い換えると、驚くことに、排気管を穴に接着するのに用いられるフリットと例えば、レーザ加熱などによって加熱封止される排気管の端部との間の距離が近過ぎると、フリットへ熱伝導が生じる可能性が増大し、その結果、排気管とフリットとの間の界面で排気管に熱衝撃が生じる可能性も増大することが分かった。したがって、特定の実施態様例によれば、排気管の長さ、特にフリットの最上部から加熱封止される排気管の端部までの長さは熱衝撃の可能性が軽減されるように設定され、そうすることでフリットの排気管との界面で生じる排気管の亀裂が軽減される又は実質上回避された、VIG窓ユニット構造が提供される。特定の実施態様例では、排気管の長さはそれほど長いわけでもない。排気管は、例えば、ガラスから構成されており、しかも脆弱な場合がある。排気管が長いほど、VIG窓ユニットを完成させるのに使用され得る後続の製造工程中に排気管が損傷する可能性が高くなる。こうして、排気管の全長と、排気管の端部から排気管のフリット材料との界面までの距離と間のバランスをうまくとることができる。特定の非限定的な実施態様例によれば、排気管のフリット界面から加熱封止される排気管の端部までの距離設定は、好ましくは約4.5〜6mmの範囲内、更に好ましくは約4.8〜5.5mmの範囲内、そして好ましくは約5.0mmである。本明細書に開示する特定の実施態様例に従って、封止される排気管の端部から排気管のフリット材料との界面までの距離を有するVIG窓ユニットを構築することで、加熱封止中に生じる熱衝撃に関する上記問題を解決するのに役立つ可能性があることが分かった。さらに、フリット界面よりも上側の排気管のこの例示的な長さ範囲は、後続の製造プロセス中に排気管16に損傷を与える可能性又は見込みを実質上増大させないという意味で条件を満たしていることも分かった。
【0028】
図6を参照すると、実施態様例によるVIG窓ユニットのガラス基板に挿入された排気管の例を表す、概略部分断面図が示されている。
図6の実施態様は、
図3〜
図5の実施態様及び/又は
図7〜
図10の実施態様などの他の実施態様と組み合わせて使用してもよく、又は組み合わせずに使用してよい。VIG窓ユニットは、VIG窓ユニットのガラス基板2に形成された穴22に挿入された排気管16を備えている。排気管16は、好ましい非限定例では、ガラスから構成されており、
図6に示すように焼成することでガラスはんだ材料を形成し得るフリット接着材18によって穴22の中の所定の位置に封止される。
図3〜
図5に示す実施態様例についての上述と同様に、フリットペースト18は、排気管16の一部を包囲し、穴22を覆いかつフリット高さBを有する凸部/ショルダー26を形成し得る。フリットショルダー26とガラス製排気管16の界面は、例えば、これに限定されないが、
図6に示すようにフリットショルダー26が排気管16と接触する場所28に位置する。上述の通り、この界面28で生じる排気管16の亀裂は、熱衝撃そしてガラスとフリットとの温度差が原因で生じる場合もあり得る。先に説明したように、界面28で生じる熱衝撃問題の解決策が見つかった。例えば、排気管16の露出部分の高さAをフリットショルダー26のフリット高さBと比較して特定の範囲内に制御することで、排気管の加熱封止中に排気管16とフリット界面28との間で生じる熱伝導も制御されることが分かった。この熱伝導制御により、熱衝撃及びその結果生じる界面28での排気管16の亀裂が大幅に軽減及び/又は回避され得ることが分かった。特定の実施態様例によれば、フリット高さBと排気管の露出部の高さAの高さの差(A−B)を、例えば、これに限定されないが、約4.5〜6mmの範囲内、又は好ましくは約4.8〜5.5mmの範囲内、更に好ましくは約5.0mmとなるように設定すると、排気管の加熱封止中に生じる熱亀裂をかなり軽減することができる。
図5に関する前記VIG窓ユニットの作製方法例は、例えば、排気管の高さを選択して前記の好ましい高さの差の範囲を満たす追加工程と併用してもよい。
【0029】
上述の通り、VIG窓のキャビティ6を真空引き/パージした後に排気管16を封止してよい。排気管の封止工程は、キャビティ6を真空引き/パージするのに用いられる排気管16の端部を加熱してその入口を溶融させることでVIG窓ユニットのキャビティ6を封止することによって行われてもよい。この加熱及び溶融工程は、特定の実施例では排気管の先端にレーザ照射することによって行われてもよく、この実施態様は
図3〜
図6の実施態様と組み合わせて使用してもよく、又は組み合わせずに使用してよい。特定の実施態様例では、排気管の先端へのレーザエネルギーの付与を制御して更に信頼性の高い封止を行うのが有利であることも分かった。上述の通り、排気管の端部からフリット界面28への熱伝導問題によって、フリット界面において望ましくないことに排気管に亀裂が生じることがあり、このことがVIG窓ユニットのキャビティ6内の真空度を低下さえる可能性がある。ガラス排気管16へのレーザの暴露を軽減しそして排気管を介して熱が伝わる時間を短縮することでフリットへの熱伝導が生じる可能性を軽減し、しかも排気管とフリットの界面で亀裂が生じる可能性も軽減させる目的で、より迅速なレーザ加工を使用してもよい。ただし、迅速なレーザ加工及び高出力レーザは、排気管のガラスを過熱する可能性及びガラス製排気管の最上層を蒸発させる可能性といった欠点を抱えていることもある。ガラス排気管の最上層を蒸発させると、かなりの量のガス放出が生じる可能性がある。このガス放出は、望ましくないことに、VIG窓ユニットのキャビティ内で既に設定された真空度を低下させる可能性があり、その結果得られるVIG窓ユニットの断熱性(又は「R」)値が不適切にも低下する可能性がある。したがって、特定の実施態様例では、排気管の端部を溶融させるのに十分なエネルギーを与えると同時に封止工程中にガラス製排気管の端部の蒸発を防いで有害なガス放出が生じる可能性を回避するようにガラス製排気管16の端部を封止する方法が提供される。さらに、上述の通り、排気管の端部は、排気管/フリット界面での排気管の亀裂を防止できるような方法で加熱することも好ましい。
【0030】
例えば、迅速な高出力の封止方法を用いる代わりに、例えば、これに限定されないが、特定の実施態様例によれば、可変出力設定、連続して縮小するレーザ経路又はトレースの直径及び/又は制御された暴露時間を用いてレーザエネルギーを連続複数回付与する方法により、排気管ガラスの溶融が更にうまく制御され、その結果、ガス放出が減少する。排気管の封止実施態様は、
図3〜
図6及び
図8〜
図10の実施態様などの他の実施態様と結合して/組み合わせて使用されてもよく、又は結合せず/組み合わせずに使用されてよい。特定の実施態様例による方法は緩慢なので排気管からの熱伝導が更に増大する可能性があるが、この方法は、前述の排気管の長さ制御工程とバランスをとることでフリット28の最上部から排気管16の最上部までの距離を制御することができる。実施態様例によれば、排気管16を様々なエネルギーレベルのレーザに制御された時間にわたって繰り返し暴露させるサイクルは、更なる効果をもたらし、しかもガス放出を回避、軽減及び/又は防止するのにも役立つ。例えば、これに限定されないが、複数回の溶融(又は「チップオフ(tip off)」)を行う方法には、予備(pre)溶融サイクルと、主(core)加熱サイクルと、排気管の先端を最終的に溶融して密封する複数回の追加(chase)サイクルと、が含まれていてよい。本明細書に開示する特定の実施態様例によれば、出力と反復回数とサイクル数を様々に組み合わせて実行できる。
【0031】
特定の実施態様例によれば、本明細書に開示されている管封止形態例で用いられる好ましいレーザは、例えば、これに限定されないが、20WのYAGレーザなどのYAGレーザであってよい。YAGレーザは、例えば、VIG窓ユニットの排気管16の封止などのガラスの加工に特に適した波長を提供することが分かった。特定の実施態様例によれば、排気管の最上部又は先端(例えば、VIG窓ユニットのキャビティから外側に延びた排気管の端部)にレーザを複数回連続して付与することは、可変制御された出力設定、可変反復回数、及び制御された時間にわたって可変の直径を用いて行われる。例えば、これに限定されないが、表1は、特定の実施態様例による、レーザを複数回連続して付与することで排気管を封止するアプリケーションを表している。
【0033】
表1を参照すると、実施態様例によれば、例えば、20WのYAGレーザなどを利用した第1アプリケーションは、80%出力(20Wレーザの場合、出力設定16Wとなる)で反復回数(例えば、レーザが排気管の先端の外周を移動する回数)10回にわたって25インチ/秒までのクロック速度及びレーザでトレースされる円の直径約0.1350mmで付与される。この非限定的な実施態様例による第1サイクルは、予備処理サイクル(例えば、PRE)とよばれ、更なる連続低速封止のために排気管の最上部を予熱して調製するために提供される。例えば、PREサイクルは、表面汚染物質及び他の残留物質を燃焼させることによって排気管の最上部の不要なものを除去して排気管の加熱を開始することで後続の溶融プロセスを助長する。PREアプリケーションに続いて、上記表1中のサイクル番号2のCOREアプリケーションを表1に記載の設定例で行う。COREサイクルは、排気管の最上部に、排気管ガラスの溶融を開始するほど十分なエネルギーを供給する。好ましい実施例によれば、COREプロセスは溶融プロセスの大部分を支えている。COREサイクルに続いて、連続して縮小するトレース直径とより少ない反復回数を規定する連続CHASEサイクル(例えば、この例では3回)を行ってよい。CHASEサイクルは、排気管の最上部を溶融させて溶融物の流れを排気管の最上部の中央(例えば、スランプ)へ逐次向け続けることで、最終的に排気管を封止する。他の非限定的な実施態様例を以下の表2〜4に示す。表2〜4のユニットは、上記表1で使用したものと同じである。要約すれば、PREプロセス又はPREサイクルとは、排気管の最上部の不要なものを除去して排気管の最上部を予熱することで溶融プロセスを開始する、予熱/予備処理を指す。COREプロセス又はCOREサイクルは、溶融プロセスの大部分を支えており、また、CHASEプロセス又はCHASEサイクルは、溶融物の流れを排気管の溶融最上部の中央へ逐次/次第に向けて排気管を封止する。
【0037】
図7は、VIG窓ユニットの製造方法を表すフローチャートであって、具体的には、表1〜4を参照して上述の方法を対象にしている。
図7の実施態様は、
図4〜
図6及び
図8〜
図10の実施態様のいずれかと組み合わせて使用してもよく、又は組み合わせずに使用してもよい。
図7を参照すると、最初に、S71では、封止の準備が整った排気管16を有するVIG窓ユニットを供給する。S73では、例えば、これに限定されないが20WのYAGレーザなどの熱源を利用してPRE処理を行ってよい。上述の通り、PRE処理S71は、排気管16の最上部を予熱して不純物、汚染物質、残留物質などを除去するため、及び溶融工程に備えて排気管の最上部を予熱するために行われる。このPRE処理は、場合により、様々な出力、反復回数及びレーザトレースの直径を用いて繰り返し行ってもよい。PRE処理を行った(S73)後、S75ではCORE処理を行ってよい。先に説明したように、CORE処理は溶融プロセスの大部分を支えている。この実施例では、好適な出力、反復回数及びレーザトレースの直径などを有する20WのYAGレーザを用いてCORE処理を行う。CORE処理(S75)に続いて、S77では一連のCHASE 処理を行ってよい。上述の通り、特定の非限定的な実施態様例によれば、CHASE処理(S77)は、様々な出力及び反復回数で一連の連続して縮小する直径のレーザを付与することを含んでいてよい。CHASE処理(S77)を利用して、溶融物の流れを排気管の溶融最上部の中央へ逐次向けて排気管を封止する。CHASEプロセス(S77)は、様々な設定で任意の好適な回数繰り返されてよい。CHASEプロセス(S77)の完了後に/完了時に、S79ではVIG窓ユニットの封止を行う。
【0038】
更なる実施態様を参照すると、時には、ガラス基板に形成された穴に適切に排気管を封止できないこともある。そのため、排気管は片方に傾くので、穴が形成されたガラス基板の表面と実質上垂直ではない場合がある。結果的に、排気管が不適切に取り付けられてガラス基板の表面と望ましくない角度をなす場合、レーザは例えば、角度の付いた排気管の様々な部位とレーザ光源との距離の差が原因で排気管の先端を一貫して溶融することができないので、排気管を適切に封止するのは困難である。排気管の最上部の一貫性のない溶融工程によって封止が不完全なものとなるので、封止の品質に応じて急速に又は経時的に徐々に空気漏れが生じる可能性がある。さらに、排気管の傾き程度によっては、レーザが、排気管の最上部の代わりに排気管の壁に当たる可能性もある。レーザが排気管の壁に当たると、レーザが排気管を迂回してフリットに当たる可能性が生じ、フリットを損傷する又はキャビティの中への望ましくないガス放出が生じることがある。排気管を穴に取り付けて排気管の傾き程度を許容範囲内に抑える方法が必要である。後述するように、特定の実施態様例によれば、このことは、排気管の傾きを軽減するのに役立つ穴の配置及び寸法を規定することによって行うことができる。かかる穴の配置/寸法実施態様は、
図3〜
図7及び/又は10の実施態様のいずれかと組み合わせて使用してもよく、又は組み合わせずに使用してよい。
【0039】
特定の穴の配置/寸法の実施態様例によれば、排気管16を挿入するガラス基板2の穴22の少なくとも一部は、ガラスの穴の直径が排気管を穴に挿入したとき及びその後も実質上垂直方向に保持するのに十分な支持を与える大きさとなるように構成されてよい。例えば、これに限定されないが、特定の実施態様例によれば、排気管を挿入するガラス基板の穴は、例えば、これに限定されないが、穴の内径が排気管16の外径よりも実質上最高約0.1mm大きな大きくなるような寸法であってよく、更に好ましくは、排気管は、排気管の下端(例えば、穴に挿入された端部)がガラス基板の内表面と実質上同等(例えば、実質上同一平面)となるような深さまで穴に挿入する。さらなる実施態様例によれば、排気管は、ガラス基板の内表面と同一平面となるまで穴の中に十分に延びていても延びていなくてもよく、例えば、これに限定されないが、内表面から最高約0.1mmの距離だけ内表面にかろうじて達しない状態であってもよい。いずれにしても、特定の実施態様例では、排気管がガラス基板の内表面を超えてVIG窓ユニットのキャビティ6の中にまで延びるのは望ましくない場合があることが分かった。特定の実施態様例によれば、穴22は、ガラス基板の外表面に形成された、直径が更に大きな凹部を含んでいてもよい。特定の実施態様例によれば、穴の直径が更に大きな部分は、例えば、特定の実施態様例に関連して先に説明したように、例えば、挿入プロセスが原因で過剰なフリットが堆積する可能性のある凹部を形成していてもよい。更なる実施態様例によれば、凹部の深さは、ガラス基板の厚さの約4分の1〜2分の1であってよく、更に好ましくは、ガラス基板の厚さの約3分の1であってもよい。特定の実施態様例によれば、穴の直径が更に大きな部分の直径は、排気管の外径よりもわずかに約0.1mm大きい長さから、排気管の外径よりも最高1.0mm大きい長さまでの範囲内であってよい。特定の実施態様例によれば、前記を達成するのに許容可能な構造を有する穴は、例えば、これに限定されないが、2段ドリル加工法を利用して構築されてよく、ここで2段ドリル加工法では、穴の第1の部分はガラス基板の外表面から所定の深さまで第1ドリルビットを利用してドリル加工され、そして穴の第2の部分はガラス基板の内表面から所定の高さまで第2ドリルビットを利用してドリル加工されてよい。特定の実施態様例によれば、第1の部分は、穴の深さ(例えば、ガラス基板の厚さ)の約3分の1〜2分の1の深さまでドリル加工する。穴の残りの部分は、第2の部分を下から第2ドリルビットを用いてドリル加工することによって形成される。特定の実施態様例によれば、ドリルビットの直径は、このドリルビットを利用して形成される穴の内径に相当し得る。凹部を形成する実施態様では、第1ビットの直径は第2ビットの直径よりも大きい。
【0040】
図8〜
図9の実施態様は、互いに組み合わせて使用してもよく、又は組み合わせずに使用してもよく、また
図3〜
図7及び/又は10のいずれかと組み合わせて使用してもよく、又は組み合わせずに使用してもよい。
図8は、実施態様例による排気管16及び排気管を受容するための穴22の例を表す、概略部分断面図である。VIG窓ユニットのガラス基板22に形成された穴22に挿入された、外径D1の排気管16が示されている。上述の通り、穴22は、穴22に挿入したときに排気管16の望ましくない傾きを軽減又は回避するほど十分に支持するのに役立つ寸法を有する。特定の実施態様例によれば、VIGユニットのガラス基板2に形成された穴22の内径D2は、排気管16の外径D1よりも約0.05〜0.2mmの範囲内で大きくてよく、更に好ましくはD2は、D1よりも約0.05〜0.015mmの範囲内で大きくてよく、そしてなお更に好ましくはD2はD1よりも約0.01mm大きくてよい。さらに、特定の実施態様例によれば、基板22に形成された穴22の深さD5は、排気管16の長さの約4分の1〜2分の1の範囲内であってよく、好ましくは基板22に形成された穴の深さD5は、排気管16の長さの約3分の1〜2分の1の範囲内であってよく、また、更に好ましくは基板2に形成された穴22の深さD5は、排気管16の長さの約3分の1であってよい。
【0041】
図9は、別の実施態様例による排気管及び排気管を受容するための穴の例を表す、概略部分断面図である。
図8を参照して先に記載したように、排気管16に適合するように基板22に形成された穴22に加えて、
図9に示す実施態様は、ガラス基板2の外表面に形成された任意の凹部28を備えている。この凹部28の直径D3は、例えば、排気管16を挿入する穴22の直径D2よりも大きくてよい。特定の実施態様によれば、凹部28の直径D3は、好ましくは排気管16の直径D1よりも0.20〜2mmの範囲内で大きくてよく、又は更に好ましくは凹部28の直径D3は、排気管16の直径D1よりも約0.5〜1.5mmの範囲内で大きくてよく、又はなお更に好ましくは凹部28の直径D3は、排気管16の直径D1よりも約1.0〜2.0mm大きくてもよい。特定の実施態様例によれば、穴22に挿入される排気管16部分の長さD5は、好ましくは、
図8を参照して先に説明した範囲内である。特定の実施態様例によれば、凹部28の深さD4は、好ましくは、ガラス基板2の厚さD6の約4分の1〜2分の1の範囲内であってよく、又は更に好ましくは凹部28の深さD4は、ガラス基板の厚さD6の約3分の1〜2分の1の範囲内であってよく、そしてなお更に好ましくは凹部28の深さD4は、ガラス基板2の厚さD6の約3分の1であってよい。上述の通り、好ましくは、排気管16の下端はガラス基板の内表面と実質上同一平面である。排気管16はまた、排気管16の下端がガラス基板2の内表面にかろうじて達しない状態で挿入されていてもよい。例えば、排気管16の下端は、ガラス基板の内表面から約0.01〜1.0mmの範囲内で凹んでいてもよく、又は更に好ましくは約0.05〜0.5mmの範囲内で凹んでいてもよく、又はなお更に好ましくは約0.1mm凹んでいてもよい。いずれにしても、排気管16の下端が、ガラス基板2の内表面を超えてVIG窓ユニットのキャビティの中にまで及ぶのは望ましくない。
【0042】
図10は、特定の実施態様例によるVIG窓ユニットの製造方法を表す、フローチャートである。
図10の実施態様は、
図3〜
図9の実施態様のいずれかと組み合わせて使用してもよく、又は組み合わせずに使用してよい。
図10のフローチャートは、特定の実施態様例によれば、ガラス基板2に穴22及び/又は凹部28を形成すること、及び排気管16を穴22へ挿入することと、に重点を置いている。S101では、ガラス基板2を(VIG窓ユニットの形成の一部として及び/又はその形成前に)供給する。好ましい実施態様によれば、デュアルドリル法を用いて穴22及び/又は凹部28をドリル加工してよい。デュアルドリル法は、特にガラス基板22の内表面にガラスが吹き出すのを実質上抑制するので、好ましい場合がある。デュアルドリルプロセスS103は、先ず、ガラス基板2の外表面から始めてガラス基板の内表面に向かって所定の直径D2(又は、例えば、凹部28を形成する実施態様ではD3)を有する穴22をドリル加工すること(S103a)で開始する。この第1ドリル加工S103aに用いられるビットの直径は、好ましくは穴22の内径D2(又は、例えば、凹部28を形成する実施態様ではD3)に相当する。次いで、第2の穴を、S103aでドリル加工された穴と接触するように基板2の内表面から上へ向かってドリル加工する(S103b)。この第2ドリル加工S103bに用いられるビットの直径は、好ましくは内径D2に相当する。例えば、
図8に示すような単一直径の穴の場合、ドリル加工プロセスS103a及びS103bはいずれも同じ大きさのビットを利用して行われる。しかし、凹部28を形成しようとする場合は、S103bにおいて大きい方のビットを利用してよい。穴及び/又は凹部の相対寸法は、
図8及び
図9を参照して先に説明している。ドリル加工工程S103a及びS103bの順序は、入れ替えてもよく、どの順序で行ってもよいと考えることができる。次いで、排気管16を、上述の通り、好適な深さまで穴22に挿入する(S105)。場合により、排気管は、
図2〜
図5を参照して先に説明したように、穴22に挿入する前にその下部にフリットを配置する(the tube by have frit applied)。
【0043】
本発明の特定の実施態様例では、排気管を受容する穴が中に形成された第1基板を備える、真空断熱ガラス(VIG)窓ユニットであって、穴の直径は排気管の外径よりも約0.05〜0.2mmの範囲内で大きい、VIG窓ユニットが提供される。
【0044】
直前の段落に記載のVIG窓ユニットにおいて、穴の直径は、排気管の外径よりも約0.1〜0.15mmの範囲内で大きくてよい。
【0045】
前記2つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、穴の直径は、排気管の外径よりも約0.1mm大きくてもよい。
【0046】
前記3つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、第1基板は、ガラスから構成されていてよく、ガラスを含んでいてもよい。
【0047】
前記4つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットは、第2基板と、複数のスペーサと、端部シールと、を更に備えていてもよく、第1基板及び第2基板は、複数のスペーサ及びそれらの間の端部シールを挟持することで第1基板と第2基板との間にキャビティを形成するように配置されており、キャビティは、排気管を介して大気圧未満の圧力まで真空引きされる。
【0048】
前記5つの段落のいずれかに記載のVIG窓ユニットにおいて、第1基板の穴は、(i)排気管の外径よりも約0.05〜0.2mmの範囲内で大きい直径を有する部分と、(ii)排気管の外径よりも約0.5〜2.0mmの範囲内で大きい直径を有する別の部分と、を含んでいてよい。
【0049】
本発明の特定の実施態様では、排気管を受容するための穴が中に形成された第1基板を備える、真空断熱ガラス窓ユニットが提供され、穴は、第1部分及び第2部分を含み、第1部分の直径は第2部分よりも大きく、第1部分は、第1基板の外表面周辺にあり、第2部分は、第1部分の周辺でかつ第1基板の内表面周辺にあり、第2部分は、排気管の外径よりも約0.05〜0.2mmの範囲内で大きい直径を有し、そして第1部分は、排気管の外径よりも約0.5〜2.0mmの範囲内で大きい直径を有する。
【0050】
直前の段落に記載のVIG窓ユニットにおいて、穴の第1部分の深さは、第1基板の厚さの約4分の1〜2分の1の範囲内であってよく、穴の第2部分の深さは、第1基板の厚さの約2分の1〜4分の3の範囲内であってよい。
【0051】
前記2つの段落のいずれかに記載の真空断熱ガラスは、第1基板に形成された穴の第1部分及び第2部分の両方に少なくとも部分的に配置された排気管と、第2基板と、複数のスペーサと、外周端部シールと、を更に備えていてもよく、第1基板及び第2基板は、少なくとも複数のスペーサ及びそれらの間の端部シールを挟持することで第1基板と第2基板との間にキャビティを形成するように配置されており、キャビティの圧力は大気圧未満である。
【0052】
本明細書では特定の実施形態について説明及び開示してきたが、本明細書に記載の実施態様は、限定ではなく例示を目的とするものであり、また、当業者は、本明細書に添付する特許請求の範囲の真の趣旨及び全範囲を逸脱することなく様々な変更が可能であると考えることができることが分かるであろう。