(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、その操作に対して、制御された少量の水銀を必要とするが、水銀の毒性に起因して、その使用の規制と制限は時間と共により厳しくなってきている。これは、水銀の使用を最小化し、且つ不必要で早期な水銀の放出を避けるためにより安全な工程を有するように、その注入のためのより望ましく、且つより効果的な方法を選択することを要求している。
【0003】
ランプに水銀を導入する改善された方法は、比較的低温では安定であるが、ランプが密封されているときに、固有の熱活性化の方法で水銀を放出することができる水銀化合物に基づくディスペンサーの使用を開発している。特に、直管蛍光ランプの製造が400から500℃まで水銀ディスペンサーの加熱を想定する場合や、同様に環形蛍光ランプのそのような温度が最大600から650℃であり得る場合において、水銀の放出は中間の製造段階において避けるべきである。
【0004】
この関連で、採用された最も早い解法の一つは、本出願人の名にある特許文献1(米国特許第3657589号明細書)において述べられたものであり、これはTi
xZr
yHg
z化合物からなる化合物を示している。この解法は、作られたときは革新的であったが、いくつかの制限と、それに対してその後の数年においてなされた改良点を示した。
【0005】
特に、本出願人の名にある特許文献2(欧州特許第0691670号明細書)及び特許文献3(米国特許第7674428号明細書)は、銅及び追加の元素、すなわち、特許文献2においてはシリコン、同様に特許文献3においてはシリコン、スズ、及びクロムから選択される追加の元素を追加することにより、上述したTi
xZr
yHg
z化合物の改善を開示している。特許文献3で開示されている解法は、水銀と水銀化合物の使用によりもたらされる危険に関して改善を達成しているけれども、この特徴を改善する必要がさらにある。
【0006】
環形蛍光ランプの場合におけるような高温の中間工程段階、すなわち、400から500℃且つ最大で650℃における最大限の範囲の水銀の放出を避けるか、または最小化することは、汚染リスク及び環境災害が最小化されることを確実にする。しかしながら、同時に、温度が一般的に採用される加熱手段(一般的に高周波加熱システム)により一定のしきい値(すなわち、800℃)以上に上昇するとき、水銀の高速で効果的な放出を保証することのできる解法を有することの必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、添加されるべき適切な元素、シリコンを選択することにより、及び特許文献3(米国特許第7674428号明細書)で開示されたものよりも、とても狭く且つ特定の間隔のCu/Ti
質量比を有することで、800℃で90%より高い高水銀収率、及び同時に400から500℃で改善された安定性を得ることを可能にしており、それ故、そのような組成物を用いる産業プロセスの安全性を高めている。
【0014】
本発明の組成物は、水銀を除いて、全ての成分を予合金化し、及びそれから特許文献3(米国特許第7674428号明細書)で開示されているように、そのような予合金化された組成物を水銀に晒すことにより作られてもよく、またはチタン、銅、及びシリコンの粉末を正確な
質量比で混合し、それからそれらを水銀に晒すことにより作られてもよい。
【0015】
本発明により作られた全ての水銀注入組成物は、過剰の水銀の除去のためのコンディショニング工程、例えば、特許文献3(米国特許第7674428号明細書)で開示されている工程の後で得られる。
【0016】
一般的に、コンディショニング工程は、真空下で水銀注入組成物を加熱することを想定している。温度及び特に加熱時間は、一般的に300℃から500℃の範囲の温度で、及び1から300分の範囲の時間で、広く変化し得る。一般的に、より高い温度では、より短い時間が用いられ、且つその逆もある。
【0017】
第2の態様において、本発明は、少なくとも800℃の温度で少なくとも15秒加熱することによる水銀注入のための方法にあり、システムは金属ホルダー、並びにチタン、銅、シリコン、及び水銀からなる水銀注入組成物の少なくとも一つの堆積を備えており、
・水銀は10から35
質量%で含まれており
・シリコンは1から10
質量%で含まれており
・チタンと銅の合計は55から89
質量%で含まれており、
・銅とチタンの間の
質量比は0.95から1.2で含まれている。
【0018】
本発明による方法は、例えば平坦な金属表面に基づくもののような、粉末ホルダーのように作用するいくつかの種類の支持体の使用が特に有利であるにも関わらず、ホルダーの特定の形態または構造に制限されない。
【0019】
そのような金属支持体は当技術分野で知られており、蛍光ランプ内に水銀源を組み込むのに有利な手段を示しており、それらは、例えば本出願人の名の下にある特許文献4(国際公開第97/019461号)、及び特許文献5(米国特許第5825127号明細書)において記載されており、その技術は参照によりここに組み込まれている。本発明による組成物の一つの利点は、金属支持体上へのこれらの水銀放出粉末の付着が従来技術で知られている組成物のものより良いという事実に関連している。この特徴は、起こり得る粒子損失の問題なしに、よりストレスがなく且つ信頼性のある処理、並びに新規なディスペンサーの活性化を可能にしている。
【0020】
本発明による方法を実行するためのシステムに対して、別の特に有利なホルダー形状は、
図3に示される実施形態に特に関連して、本出願人の名の下にある特許文献6(国際公開第98/053479号)において説明されている。この場合、ホルダーはいわゆるワイヤ形状を有しており、その本体は、二つの側面開口部及び縦スリットを示すように特徴付けられてもよい。
【0021】
他の材料、例えば不純物の除去のためのゲッター材料は、本発明による水銀注入組成物と共に、(ワイヤ形状ホルダーの場合は)ホルダー内に、または(平坦な支持体の場合は)ホルダー上に堆積されてもよい。
【0022】
「堆積」との用語は、本発明による水銀注入組成物が、(平坦な支持体上に)層の形態で、または(ワイヤ形状のホルダー内に)フィラーの形態で存在していてもよいことを意味している集合体のその最大幅の観念であることを意味する。
【0023】
適切なゲッター材料の例は、例えば、特許文献7(米国特許第3203901号明細書)(Zr−Al合金)、特許文献8(米国特許第4306887号明細書)(Zr−Fe合金)、及び特許文献9(米国特許第5961750号明細書)(Zr−Co−希土類元素合金)において説明されている。水銀吸着、特に高温での水銀吸着に対して、特許文献10(国際公開第2007/099575号)及び特許文献11(国際公開第2010/105945号)に記載されているように、イットリウム合金を用いること、または本出願人の名の下にある特許文献12(伊国特許出願第MI2011A001870号明細書)において説明されているように異なるゲッター材料の粉末の適切な混合物を用いることが知られている。上述したゲッター材料は、本発明による水銀注入組成物で好ましく用いられているが、粉末の形態で用いられる任意のゲッター材料がここで開示される発明思想と共に採用されてもよい。
【0024】
本発明による水銀放出組成物を含むシステムからの水銀放出に対する温度を考慮すると、ランプ環境を汚染しうる、または、支持体上または他のランプ部分に存在するゲッター材料の場合においてはそのガス吸収容量を早期に減少させうる支持体の金属部からの著しいガス放出を避けるために、920℃を超えないことが一般的に望ましい。
【0025】
図1Aは、本発明の方法を実行するのに適した形成されたシステム100の第1の実施形態を示している。システム100は、リング状の構造を有しており、それは支持体として作用する金属ストリップ11を曲げること、及び支持体の重なった先端をスポット溶接することにより得られ、そのような溶接点は、参照符号14で示されている。支持体11上に、本発明による水銀放出組成物の圧縮粉末の二つの堆積された円周トラック102、102’及びゲッター材料の一つのトラック103がある。
【0026】
トラック及び支持体のための締め付け手段の数及び配置は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で変更することができる。例えば、第1の可能な等価な変形が
図1Bに示されており、システム110において、水銀注入組成物トラック112、112’、112’’及びゲッタートラック113、113’は、互いに、且つリングの軸に全て平行である。
【0027】
システムの所与の形状に関して、他の有利な変形は、
図1Cに示されており、形成された支持体120は、互いに、且つ支持体の軸に平行なトラックを有して四角形状を有しているが、水銀注入組成物122、122’、122’’とゲッター材料トラック123は支持体の異なる側面にある。
【0028】
本発明による水銀注入組成物のトラック及びゲッター材料の任意のトラックは、その最終的な形状を与える前に、支持体の平坦な金属表面上に様々な方法で堆積させることができる。支持体を製造するための好ましい方法の一つは、冷間圧延技術によりトラックを堆積することであり、すなわち、基板上に粉末形態で材料のトラックを堆積し、及びそれから圧縮ロールに通す。支持体はそれから所望の長さに切断されて、最終的な形状を与える。基板は一般的に、金属材料で作られており、例えば適切な材料は、ニッケルめっき鉄、ニッケル鉄合金、ステンレス鋼である。
【0029】
この技術では、(粉末の最大横軸寸法を意図している)300μm以下の粉末のサイズを有することは特に有利である。そのような粉末の粒子サイズは、シンプルなふるい操作によって容易に選択されることができ、より小さな開口を有するふるいの使用は、より小さい粒子サイズの粒子分布を選択することを可能にしている。
【0030】
トラックの幅に関して、これは1から10mmが有利的に含まれており、離散粒子によって定義されているという事実に起因してわずかに非均一であるために、平均的な幅を意図している。トラックの高さに関して、これは有利的に0.5mm未満であり、最小の限度は、粒子単層の高さによって与えられる。
【0031】
支持体の他の変形は
図2Aにおいて示されており、システム210の支持体211の最終的に形成された形状は、支持体211の金属基部上に深く引き込むことにより得られ、そこには圧縮された水銀放出粉末212の層が位置しているくぼみと共に、正方形または長方形である。
【0032】
図2Bは、システム220のための別の可能な構成の上面図を示しており、この場合において、支持体221は、環状キャビティ内に圧縮された粉末の形態で存在している水銀注入組成物と共に、環状の形状を有している。
図2Cから観察することができるように、システム220の断面を示しており、水銀注入組成物222は、利用可能な体積で支持体を部分的に充填するだけでもよく、すなわち、圧縮された粉末の高さは支持体のリング高さより低い。
図2A、並びに2B及び2Cの二つの実施形態において、ゲッター材料(図示せず)は水銀注入組成物に添加されることも可能である。この場合において、ゲッター材料は圧縮された粉末の下部層及び/または重複層として追加されてもよいけれども、それを挿入する最も有益な方法は、本発明による水銀注入組成物と混合することである。
【0033】
本発明による方法を実行するための水銀注入組成物を備えているシステム30のための別の有利な変形は、
図3において示されている。この場合において、支持体の金属ベース31は、おおよそ中心で曲げることによってV字型で与えられ、及び本発明による水銀放出粉末のトラック32がその上に堆積され、別の変形(図示せず)において、V字型の支持体31は、水銀放出粉末及びゲッター合金のトラックを受けることができる。
【0034】
図4は、本発明による方法において使用されるのに適したワイヤ形状のシステム40を示しており、システムは、水銀注入組成物の圧縮された粉末42を含む台形状を有する金属ホルダー41で作られている。ホルダーは二つの側面開口43及び43’、及び金属ホルダーの面の内の一つに沿って走るスリットの形態にある第3の開口44を示している。
図4に描写された金属ホルダーの台形状は、非限定の例であり、他の形状は、四角または円筒状のように、機能的に等価である。
【0035】
それに関して第3の態様において、本発明は、チタン、銅、シリコン、及び水銀からなる水銀注入組成物の堆積を保持する金属ホルダーを備えているシステムを含むランプにあり、ここで、
・水銀は10から35
質量%で含まれており
・シリコンは1から10
質量%で含まれており
・チタンと銅の合計は55から89
質量%で含まれており、
・銅とチタンの間の
質量比は0.95から1.2で含まれている。
【0036】
システムは他の材料、有利的には前に定義されたようなゲッター材料を備えていてもよい。支持体は、最も有益なものが前に述べられたが、様々な外形及び形状を有してもよい。
【0037】
特に、
図5はランプ50を示しており、水銀注入システム51は、ランプのいわゆる第3の電極52上へ固定され、並びにランプフィラメント53及び終端接続部54、54’を、これらの三つの要素のどれとも接触することなく囲っている。システム51は、ランプ操作の間に、被覆ランプガラス筐体55を黒くするかまたは暗くし得る、フィラメント53によって放出された材料に対する遮蔽作用を提供する。ランプ50において、
図1Cで示されたようなシステムが用いられているが、異なるホルダー形状を有する任意の他の適切なシステムが用いられてもよく、且つそのようなシステムが、
図2及び3において示されたものを特に、且つ非排他的に参照して、ランプ内の異なる場所に位置していても、備え付けられてもよい。
【0038】
本発明は、以下の非限定的な実施例の助けを借りてさらに説明される。
【0039】
[実施例]
32.2
質量%のTi、36.4
質量%のCu、1.4
質量%のSi、30
質量%のHgで作られた、本発明による100グラムの水銀注入組成物S1が以下の工程によって準備される。
−それぞれ46
質量%、52
質量%、及び2
質量%のチタン顆粒、銅粉末、及びシリコン粉末が不活性雰囲気にある誘導炉内で溶融され、得られたインゴットがそれから粉砕される。
−作られた粉末は、そのサイズが125μmより小さい粒子だけを選択するためにふるいにかけられ、これらの粉末70グラムが31グラムの液体水銀と機械的に混合され、アルゴン雰囲気下にある坩堝内に導入され密封される。
−坩堝はそれから炉内に挿入され、500℃と600℃のいくつかの加熱ステップを有して、最大で700℃、3時間の加熱を受け、並びに約6時間の中で室温までの自然冷却を受ける。
【0040】
炉を開けた後で、組成物のコンパクトな塊が坩堝から抽出される。最後に、水銀注入組成物は、非結合の水銀の除去のための処理を受け、公表された
質量比を得る。そのような処理は、約6時間の長い増強(ramp−up)時間の後で、真空下で320℃、4時間の加熱(1×10
−3未満の圧力)からなる。
【0041】
本発明により作られた別の水銀注入組成物S2の試料、並びに比較試料C1、C2及びC3を得るために、同一の工程が用いられ、これらの特徴は以下の表1に公表される。
【0043】
試料S1及びS2は、本発明によるCu/Ti
質量比を有しており、同時に、試料C1及びC2は、Cu/Ti
質量比が1.2より高いので比較例であり、C3は、Cu/Ti
質量比が0.95より低いので同様に比較例である。
【0044】
5つの組成物は、それから800℃でのHg収量と400℃でのHg損失の点で評価される。Hg収量及びHg損失を測定するために、各々の組成物に対する6つの標本が、小さな金属のリング内で粉末を圧縮することにより準備される。各々の組成物に対して、3つの標本が、10秒の増強時間の後で、真空下で800℃、20秒の間、ガラスバルブ内で誘導的に加熱(1×10
−3未満の圧力)される。適用された加熱工程の後での試料の
質量差は、水銀放出を示しており、初期のHg含有量を知ることで、Hg収量がそれから決定される。
【0045】
それぞれの組成物に対する他の三つの標本に対して、Hg損失は
質量差により同じ方法で決定され、この場合において、リングは、10秒の増強時間の後で、真空下で400℃、2分の間、ガラスバルブ内で加熱される。
質量差測定技術の感度限界は約0.3%であり、いくつかの場合において、Hg損失テストの結果はこの限界未満である。800℃での活性化の間に得られた平均Hg収量、及び400℃での平均Hg損失のデータが、表2に報告される。
【0047】
Hg収量が90%未満であるC3を除いて、全ての試料は非常に良いHg収量を示している。しかしながら本発明により作られた試料だけが、400℃で無視できるほどの水銀損失と組み合わさって、93%より高いHg収量を示している。
【0048】
比較例C1及びC2は、前述の特許文献3(米国特許第7674428号明細書)に従って、事前調整(pre−conditioning)の段階がより穏やかであったという相違(500℃の代わりに320℃)だけを有する実施例1に従って作られたことが強調されるべきである。
【0049】
これは、本発明の合金が、事前調整の段階の特徴に依存しておらず、より安定な合金をもたらし、この結果が800℃での収量を妥協することなく達成されることを示している。