特許第6282644号(P6282644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282644
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ラセカドトリル液体組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/265 20060101AFI20180208BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61K31/265
   A61P1/12
   A61K9/08
   A61K9/28
   A61K9/48
   A61K45/00
   A61K47/26
   A61K47/02
   A61K47/22
   A61K47/18
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/14
   A61K47/40
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-520571(P2015-520571)
(86)(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公表番号】特表2015-522030(P2015-522030A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013048573
(87)【国際公開番号】WO2014005021
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】61/665,458
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/787,496
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506105814
【氏名又は名称】ジヨンソン・アンド・ジヨンソン・コンシユーマー・インコーポレーテツド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リー・デア−ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ムクハージー・トゥシャーモウリ
【審査官】 馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−105627(JP,A)
【文献】 特開2009−013140(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/076691(WO,A1)
【文献】 特表昭61−500788(JP,A)
【文献】 Drug Development and Industrial Pharmacy,1998年,Volume 24, Issue 9,p.863-867, Abstract
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/265
A61K 9/08
A61K 9/28
A61K 9/48
A61K 45/00
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/26
A61K 47/40
A61P 1/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY
/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラセカドトリルとβ−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体とを含む液体組成物において、
前記ラセカドトリルが、前記液体組成物100mL当たり0.10グラム〜0.30グラムの量で存在し、
前記β−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体は、前記液体組成物100mL当たり5グラム〜50グラムの量で存在し、
前記組成物は、さらに、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、およびこれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤を含む、液体組成物。
【請求項2】
前記ラセカドトリルがRSラセミ体又はR体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、ソルビトール、高果糖コーンシロップ、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、スクロース、およびこれらの混合物からなる群から選択された甘味料を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、プロピルパラベン、メチルパラベン、ブチルパラベン、およびこれらの混合物からなる群から選択された防腐剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物を含む剤形であって、液体経口剤形、請求項1に記載の組成物を内部に収納する軟質シェル固体剤形、請求項1に記載の組成物を内部に収納する硬質シェル固体剤形又は請求項1に記載の組成物を内部に収納する錠剤剤形である、剤形。
【請求項6】
消化性健康有効成分である第2の有効成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が経口的に送達される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、25℃で3〜5のpHを有する、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物を含む剤形であって、液体経口剤形、前記組成物を内部に収納する軟質シェル固体剤形、前記組成物を内部に収納する硬質シェル固体剤形又は前記組成物を内部に収納する錠剤剤形である、剤形。
【請求項10】
消化性健康有効成分である第2の有効成分を更に含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
液体組成物であって、
0.1重量%〜0.3重量%のラセカドトリルと、
6重量%〜8重量%のβ−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体と、
16重量%〜19重量%のソルビトールと、
45重量%〜55重量%の高果糖コーンシロップと、
0.1重量%〜0.4重量%の塩化ナトリウムと、
0.1重量%〜0.8重量%のポリエチレングリコールと、
15重量%〜30重量%の水と、
0重量%〜0.5重量%の香味剤と、を含み、
各重量%は100mLの前記組成物を基準とする、液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体組成物に関する。より具体的には、本発明は、ラセカドトリルを含有する液体組成物及び当該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下痢は、水様便の頻度の増大を特徴とする腸疾患である。下痢は、細菌又はウイルス誘発性の下痢等、様々な原因から生じ得る。アレルギー、又は脂肪分若しくは香辛料の多い食品のような食品の摂取によって引き起こされる食物不耐性が下痢を生じる場合もある。食中毒も下痢につながる場合がある。場合によっては、下痢は他の状態及び疾患の一症状である可能性がある。
【0003】
下痢は、腸又はその他の身体機能障害の症候である。様々な処方箋及び非処方箋調剤製品を、緩和のために服用することができる。しかしながら、これらの製品の多くは、いくらかの副作用を伴う緩和をもたらす。
【0004】
ラセカドトリルも、下痢の治療に使用される。ラセカドトリルは、(i)腸内腔への水及び電解質の過分泌、(ii)急性下痢の発生率及び持続時間並びに(iii)下痢関連の症状を低減する。
【0005】
現在、ラセカドトリルは固体経口剤形で入手可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ラセカドトリルとシクロデキストリンとを含む液体組成物に関する。
【0007】
一実施形態では、本発明の組成物は、約0.01重量%〜約24.0重量%のラセカドトリルと、約1重量%〜約95重量%のシクロデキストリンとを含み、この各重量%は100mLの組成物を基準とする。
【0008】
本発明は、下痢を経験する対象者の治療方法であって、ラセカドトリルとシクロデキストリンとを含む組成物を対象者に経口投与する工程を含む、方法も包含する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用するとき、「安定」は、ラセカドトリルの化学分解又は実質的な変色が実質的にない液体組成物を指す。一実施形態では、ラセカドトリルの全化学分解生成物は、40℃で3カ月間保管したときに、ラセカドトリルの全重量%を基準にして0.2重量パーセント(重量%)未満、例えば、0.1重量%未満である。別の実施形態では、ラセカドトリルの全化学分解生成物は、40℃で6カ月間保管したときに、ラセカドトリルの全重量%を基準にして0.2重量パーセント(重量%)未満、例えば、0.1重量%未満である。
【0010】
分解生成物のパーセントは、HPLCクロマトグラムでラセカドトリルのピークのピーク面積に対する分解生成物のピークのピーク面積の%を計算することによって決定される。一実施形態では、ラセカドトリルの全化学分解生成物は、40℃で3カ月間保管したときに、ラセカドトリルの全%を基準にして、ラセカドトリルの5%未満、例えば、0.2%未満である。
【0011】
本発明は、ラセカドトリルとシクロデキストリンとを含む液体組成物である。
【0012】
下痢の症状低減におけるラセカドトリルの有効性は、様々な研究で実証されている。ラセカドトリルが他の療法よりも優れる利点の1つは、比較試験で、ラセカドトリルは処置後の便秘のような副作用が少ないことが明らかにされている点である。
【0013】
本発明において、ラセカドトリルは安定な液体組成物に包含される。
【0014】
ラセカドトリルは低水溶性の化合物であり、そのため液体組成物に処方することが困難である。しかしながら、経口液体組成物は、医薬品を小児集団に投与するための最も好ましい剤形である。
【0015】
一実施形態では、ラセカドトリルのRSラセミ体が使用される。別の実施形態では、ラセカドトリルのR体が使用される。
【0016】
ラセカドトリルは、液体組成物中に、液体組成物100mL当たり約0.01グラム〜約0.5グラムの量で包含される。好ましくは、ラセカドトリルは、液体組成物100mL当たり約0.05グラム〜約0.4グラム、より好ましくは、約0.1グラム〜約0.3グラムである。一実施形態では、ラセカドトリルは、液体組成物100mL当たり約0.25グラムである。
【0017】
一実施形態では、液体組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定したときに、室温(25℃)で約1〜約500センチポアズである。
【0018】
液体組成物のpHは約1〜約6である。好ましくは、pHは約3〜約5である。より好ましくは、pHは約4.5である。
【0019】
一実施形態では、pHを前記値又は所望の範囲内に維持するために緩衝系を包含してもよい。緩衝剤は、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、又はこれらの混合物であってもよい。好ましくは、酢酸塩緩衝剤が使用される。
【0020】
一実施形態では、ラセカドトリルは液体組成物中に溶解される。
【0021】
シクロデキストリンは、多種多様な製品に使用される化合物で、その例としては医薬品、食品、消費者製品及び化学製品が挙げられる。シクロデキストリンは、デンプンから酵素反応によって合成される。
【0022】
好適なシクロデキストリンとしては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
一実施形態では、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの供給源の1つは、International Speciality Products Corporation(ISP)から入手可能なCAVASOL W7である。
【0024】
別の実施形態では、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体であり、CaptisolからCAPTISOLの商標名で販売されている。
【0025】
シクロデキストリンは、組成物中に、その液体組成物100mL当たり約1グラム〜約70グラムの量で包含される。好ましくは、シクロデキストリンは、液体組成物100mL当たり約5グラム〜約60グラム、より好ましくは、約5グラム〜約50グラムである。
【0026】
一実施形態では、シクロデキストリンは、液体組成物100mL当たり約40グラム〜約60グラムである。
【0027】
別の実施形態では、シクロデキストリンは、液体組成物100mL当たり約15グラム〜約30グラムである。
【0028】
液体組成物は水も有する。水は、他の成分が全て添加された後に、不足分を埋める溶媒である。水は、組成物を所望の体積量にするために添加されることから、包含される水の量は変動する。
【0029】
任意追加的に、本発明の液体組成物には種々の成分が包含されてもよい。
【0030】
例えば、プロピレングリコールが液体組成物に包含されてもよい。プロピレングリコールは、例えば、食品及び医薬品の保湿剤、並びに食品着色剤及び香味剤の溶媒として等、多数の使用法がある。プロピレングリコールは、無色、ほぼ無臭、透明で、かすかな甘味のある粘稠液体で、吸湿性であり、水、アセトン、及びクロロホルムと混和する。
【0031】
食品又は医薬製品への使用に好適ないかなる着色剤も本発明の組成物に使用してもよい。典型的な着色剤としては、例えば、アゾ染料、キノフタロン(quinopthalone)染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、インジゴイド染料、鉄酸化物、鉄水酸化物、二酸化チタン、天然染料、及びこれらの混合物が挙げられる。より詳細には、好適な着色剤には、パテントブルーV、アシッドブリリアントグリーンBS、レッド2G、アゾルビン、ポンソー4R、アマランス、D&Cレッド33、D&Cレッド22、D&Cレッド26、D&Cレッド28、D&Cイエロー10、FD&Cイエロー5、FD&Cイエロー6、FD&Cレッド3、FD&Cレッド40、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cグリーン3、ブリリアントブラックBN、カーボンブラック、酸化鉄ブラック、酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、二酸化チタン、リボフラビン、カロチン、アントシアニン(antyhocyanines)、ウコン、コチニール抽出物、クロロフィリン(clorophyllin)、カンタキサンチン、カラメル、ベタニン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
同様に、香味剤が本発明の液体組成物に包含されてもよい。組成物に添加される香味剤の量は、所望の味覚特性に依存するであろう。
【0033】
組成物は、他の成分又は構成成分、例えば、芳香剤;ソルビトール、高果糖コーンシロップ、糖のような甘味料、並びにスクラロース、アスパルテーム及びサッカリン等のような強力甘味料;キサンタンガムのような粘度調整剤;安息香酸ナトリウムNFのような防腐剤、クエン酸及び/又は塩化ナトリウムのような緩衝剤;ポリソルベート80及び/若しくはラウリル硫酸ナトリウムのような界面活性剤又はこれらの混合物を含有してもよい。
【0034】
一実施形態では、本発明の液体組成物は、約0.1重量%〜約0.3重量%のラセカドトリルと、約40重量%〜約65重量%のシクロデキストリンとを包含し、この各重量%は100mLの組成物を基準とする。
【0035】
別の実施形態では、本発明の液体組成物は、約0.1重量%〜約0.3重量%のラセカドトリルと、約10重量%〜約40重量%のシクロデキストリンとを包含し、この各重量%は100mLの組成物を基準とする。
【0036】
本発明の組成物中のラセカドトリルの溶解度は約1.5〜約4.0mg/mLである。
【0037】
本発明の液体組成物は、所望の組成物が得られる限り、当業者に既知のいかなる方法で作製されてもよい。
【0038】
好適な方法としては、例えば、各成分を混合釜内で組み合わせる方法が挙げられ、その際成分は、連続的に添加されてもよく、又は意図する結果が達成される限り、いかなる方法で添加されてもよい。更に、混合作用は、各成分を組成物に組み込むのに十分であるべきである。
【0039】
一実施形態では、本発明の液体は、第2の有効成分を含む。第2の有効成分は、例えば、懸濁状態で存在してもよく、又は液体組成物中に可溶化されてもよい。一実施形態では、第2の有効成分は消化性健康有効成分であり、例えば、下剤、制酸薬、プロトンポンプ阻害剤、抗ガス剤、制吐薬、H2遮断剤、第2の下痢止め剤等であってもよい。一実施形態では、第2の有効成分は、マイクロカプセル化される。
【0040】
好適な抗ガス剤としては、限定するものではないが、シメチコンが挙げられる。
【0041】
好適な追加の下痢止め剤としては、限定するものではないが、ロペラミドが挙げられる。
【0042】
本発明の液体組成物は、いかなる好適な送達システムで送達されてもよい。例えば、一実施形態では、液体組成物は経口的に送達される。別の実施形態では、組成物は、液体経口剤形である。更に別の実施形態では、軟質シェル固体剤形が液体組成物の送達に使用される。更にまた別の実施形態では、硬質シェル固体剤形が液体組成物の送達に使用される。更にまた別の実施形態では、錠剤剤形が液体組成物の送達に使用される。
【0043】
本発明は、下痢を経験する対象者の治療方法であって、ラセカドトリルとシクロデキストリンとを含む組成物を対象者に経口投与する工程を含む、方法も包含する。
【0044】
以下の実施例は、本発明の組成物及び方法を更に例示するために提供される。本発明は記載された実施例に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
ラセカドトリル経口液体製剤
経口ラセカドトリル液のための組成物を表1に示す。表1の材料を使用し、以下の混合工程を用いた:
工程1:精製水とヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンとを、好適な容器内で、実験室用ミキサーで混合することによって溶液を生成した。
【0046】
工程2:ラセカドトリルを工程1の溶液に添加し、実験室用振とう器内で少なくとも12時間混合し、透明な溶液を生成した。
【0047】
工程3:クエン酸、ソルビトール溶液、高果糖コーンシロップ、及び塩化ナトリウムを混合して溶液を生成し、溶解するまで実験室用ミキサーを用いて混合した。
【0048】
工程4:好適な容器内で香味剤をポリエチレングリコール400内に混合することによって、別の混合物を調製した。続いて、この混合物を、工程3で得られた溶液と混合し、精製水で全量まで希釈した。
【0049】
【表1】
1:ISPからCAVASOL W7として市販されている
【0050】
実施例2:濃縮ラセカドトリル水性組成物
ラセカドトリルの水性酢酸塩緩衝液の製剤を3種類調製し、ラセカドトリルの水性クエン酸塩緩衝液の製剤を3種類調製した。これらの製剤は、ラセカドトリルのβ−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体(Captisol(登録商標))中混合物を使用して調製したものであり、それを表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2の材料を使用して、以下の混合工程を実施して、溶液を生成した。
【0053】
工程1:好適なガラス瓶に、Captisol(登録商標)を、それぞれ60%、70%及び78%のpH 4.5酢酸塩緩衝溶液として、秤量、混合及び調製した(処方1、3及び5)。更に、Captisol(登録商標)を、それぞれ60%、69%及び80%のpH 4.5クエン酸塩緩衝溶液として、秤量、混合及び調製した(処方2、4及び6)。
【0054】
工程2:氷酢酸(17.4M)又はクエン酸(3M)のいずれかを用いて、各瓶のpHをpH 4.5に調節した。
【0055】
工程3:ラセカドトリルを工程2の各瓶にゆっくりと添加し、ボルテックスミキサーを用いて5分間混合した後、各瓶を実験室用振とう器内に置き、溶液が形成されるまで24時間混合した。
【0056】
水溶液中でのラセカドトリルの安定性
比較の目的で、ラセカドトリルの安定性を室温及び40℃で試験した。
【0057】
【表3】
【0058】
これらの結果は、室温及び40℃の条件において、ラセカドトリルは12時間後に不安定であることを示す。更に、1週間の時点で、ラセカドトリルは1%未満存在する。
【0059】
緩衝液中でのラセカドトリルの安定性
比較の目的で、pH 4.5酢酸塩緩衝液及びpH 4.5クエン酸塩緩衝液中で可溶化したときのラセカドトリルの安定性を分析した(表4)。
【0060】
【表4】
【0061】
データは、40℃及び4週間で、安定性は多少損なわれるものの、水中よりも緩衝液中の方が安定であることを示す。データは、ラセカドトリルは水中よりも緩衝液中の方が安定であることも実証する。
【0062】
β−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン(β−HPCD)中でのラセカドトリルの安定性
β−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン中のラセカドトリルの製剤を評価した(表5)。
【0063】
【表5】
【0064】
データは、安定性は緩衝剤のみの場合に近いが、β−HPCDを使用するとより高い安定性が達成されることを示す。
【0065】
β−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体溶液中でのラセカドトリルの安定性
上記実施例2で調製した試料の安定性を、β−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体(Captisol(登録商標))溶液を用いて分析した。データを表6に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
処方
1−pH 4.5酢酸塩緩衝液中、Captisol(登録商標)60%w/w
2−pH 4.5クエン酸塩緩衝液中、Captisol(登録商標)60%w/w
3−pH 4.5酢酸塩緩衝液中、Captisol(登録商標)70%w/w
4−pH 4.5クエン酸塩緩衝液中、Captisol(登録商標)69%w/w
5−pH 4.5酢酸塩緩衝液中、Captisol(登録商標)78%w/w
6−pH 4.5クエン酸塩緩衝液中、Captisol(登録商標)80%w/w
【0068】
試験方法
試料調製:
1.1mLのラセカドトリル溶液を、ピペットで100mLメスフラスコ(V.F.)に入れる。
2.溶液調製に使用した緩衝液と同じ緩衝液で、全量まで希釈する。
3.必要であれば、試料溶液を更に希釈して約0.1mg/mLとする。
【0069】
試料分析
標準(0.1mg/mLのラセカドトリルのアセトニトリル溶液)及び試料を、下記条件と類似の条件下で、好適なHPLCシステムに注入する。パラメータは、クロマトグラフィーを最適化するために変更されてもよい。
【0070】
注入した外部標準を用いて、ラセカドトリルの濃度を決定する。分解生成物の割合は、ラセカドトリルのピークを基準としたピーク面積の%によって決定される。
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
移動相A:リン酸緩衝液、pH 2.5(緩衝液調製:1gのリン酸二水素カリウムを水に溶解し、リン酸でpH 2.5に調節し、水で1000mLに希釈する)
移動相B:100%アセトニトリル
【0074】
β−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン(β−HPCD)中でのラセカドトリルの安定性
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
【表12】
【0079】
以上、本発明をその具体的な実施形態を参照しながら説明したが、本明細書中に開示される新規な着想から逸脱することなく多くの変更、改変、及び変形を行うことが可能であることは明らかである。したがって、こうした変更、改変、及び変形はすべて、付属の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲に包含されるものとする。本明細書で引用するすべての特許出願、特許、及び他の刊行物は、それらの全容を援用するものである。
【0080】
〔実施の態様〕
(1) ラセカドトリルとシクロデキストリンとを含む液体組成物。
(2) 前記ラセカドトリルがRSラセミ体又はR体である、実施態様1に記載の組成物。
(3) 前記ラセカドトリルが、前記液体組成物100mL当たり約0.10グラム〜約0.30グラムの量で存在する、実施態様1に記載の組成物。
(4) 前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、又はこれらの混合物である、実施態様1に記載の組成物。
(5) 前記シクロデキストリンが、前記液体組成物100mL当たり約40重量%〜約65重量%の量で存在する、実施態様1に記載の組成物。
【0081】
(6) 緩衝剤、防腐剤、甘味料、粘度調整剤、着色料、芳香剤、香味剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される任意成分を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(7) 前記緩衝剤がクエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、又はこれらの混合物である、実施態様6に記載の組成物。
(8) 前記甘味料が、ソルビトール、高果糖コーンシロップ、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、スクロース、又はこれらの混合物である、実施態様6に記載の組成物。
(9) 前記防腐剤が、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、プロピルパラベン、メチルパラベン、ブチルパラベン、又はこれらの混合物である、実施態様6に記載の組成物。
(10) 前記シクロデキストリンがβ−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体である、実施態様1に記載の組成物。
【0082】
(11) 実施態様1に記載の組成物を含む剤形であって、液体経口剤形、軟質シェル固体剤形、硬質シェル固体剤形又は錠剤剤形である、剤形。
(12) 消化性健康有効成分である第2の有効成分を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(13) 前記組成物が経口的に送達される、実施態様1に記載の組成物。
(14) 前記組成物が液体経口剤形である、実施態様1に記載の組成物。
(15) ラセカドトリルを含む液体組成物であって、25℃で約3〜約5のpHを有する、液体組成物。
【0083】
(16) 実施態様15に記載の組成物を含む剤形であって、液体経口剤形、軟質シェル固体剤形、硬質シェル固体剤形又は錠剤剤形である、剤形。
(17) 消化性健康有効成分である第2の有効成分を更に含む、実施態様15に記載の組成物。
(18) 液体組成物であって、
約0.1重量%〜約0.3重量%のラセカドトリルと、
約6重量%〜約8重量%のシクロデキストリンと、
約16重量%〜約19重量%のソルビトールと、
約45重量%〜約55重量%の高果糖コーンシロップと、
約0.1重量%〜約0.4重量%の塩化ナトリウムと、
約0.1重量%〜約0.8重量%のポリエチレングリコールと、
約15重量%〜約30重量%の水と、
約0重量%〜約0.5重量%の香味剤と、を含み、
各重量%は100mLの前記組成物を基準とする、液体組成物。
(19) 前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、又はこれらの混合物である、実施態様18に記載の組成物。
(20) 下痢を経験する対象者の治療方法であって、ラセカドトリルとシクロデキストリンとを含む組成物を前記対象者に経口投与する工程を含む、方法。