特許第6282645号(P6282645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282645
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ラセカドトリル脂質組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/265 20060101AFI20180208BHJP
   A61K 31/80 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 31/451 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20180208BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61K31/265
   A61K31/80
   A61K31/451
   A61P1/12
   A61K9/08
   A61K9/28
   A61K9/48
   A61K45/00
   A61K47/24
   A61K47/44
   A61K47/14
   A61K47/12
   A61K47/26
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-520576(P2015-520576)
(86)(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公表番号】特表2015-522031(P2015-522031A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013048593
(87)【国際公開番号】WO2014005032
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】61/665,470
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/787,597
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506105814
【氏名又は名称】ジヨンソン・アンド・ジヨンソン・コンシユーマー・インコーポレーテツド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リー・デア−ヤン
【審査官】 馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−105627(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/076691(WO,A1)
【文献】 薬剤学,薬事日報社,2010年,Vol.70, No.1,p.32-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/265
A61K 9/08
A61K 9/28
A61K 9/48
A61K 31/451
A61K 31/80
A61K 45/00
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/24
A61K 47/26
A61K 47/44
A61P 1/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY
/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己乳化システムである組成物であって、
4.0重量%〜10.0重量%のラセカドトリルと、
88重量%〜95重量%の少なくとも1つの界面活性剤と、
1重量%〜2重量%の脂質と、を含み、
各重量%は100mLの前記組成物を基準とし、
前記組成物が40℃で約3カ月間安定である、
自己乳化システムである組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン、L−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ポリオキシル60硬化ヒマシ油、PEG 300カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG 400カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG 300オレイン酸グリセリド、PEG 300リノール酸グリセリド、ポリオキシル35ヒマシ油、グリセリルカプリレート(モノ及びジグリセリド)、カプリルカプロイルマクロゴールグリセリド、ポリグリコール化グリセリド及びこれらの混合物からなる群から選択されるグリセリドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、前記組成物の100mL当たり合計で88重量%〜91重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂質が、中鎖トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるトリグリセリドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
防腐剤、甘味料、粘度調整剤、着色料、芳香剤、香味剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される任意成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
クエン酸、安息香酸ナトリウム、スクラロース、香味剤及びこれらの混合物からなる群から選択される任意成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を内部に収納する剤形であって、軟質シェル剤形、硬質シェル剤形、又は錠剤剤形である、剤形。
【請求項8】
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準にして3.5重量%未満の総水分量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
消化性健康有効成分である第2の有効成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油とグリセリルカプリレート(モノ及びジグリセリド)の組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
下剤、制酸薬、プロトンポンプ阻害剤、抗ガス剤、制吐薬、H2遮断剤、および下痢止め剤からなる群から選択された消化性健康有効成分である第2の有効成分を更に含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗ガス剤がシメチコンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記下痢止め剤がロペラミドである、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質ベースの自己乳化システムである組成物に関する。より具体的には、本発明は、医薬有効成分を含有する脂質ベースの自己乳化システムである組成物及び当該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下痢は、水様便の頻度の増大を特徴とする腸疾患である。下痢は、細菌又はウイルス誘発性の下痢等、様々な原因から生じ得る。アレルギー、又は脂肪分若しくは香辛料の多い食品のような食品の摂取によって引き起こされる食物不耐性が下痢を生じる場合もある。食中毒も下痢につながる場合がある。場合によっては、下痢は他の状態及び疾患の一症状である可能性がある。
【0003】
下痢は、腸又はその他の身体機能障害の症候である。様々な処方箋及び非処方箋調剤製品を、緩和のために服用することができる。しかしながら、これらの製品の多くは、いくらかの副作用を伴う緩和をもたらす。
【0004】
ラセカドトリルも、下痢の治療に使用される。ラセカドトリルは、(i)腸内腔への水及び電解質の過分泌、(ii)急性下痢の発生率及び持続時間並びに(iii)下痢関連の症状を低減する。
【0005】
加えて、ラセカドトリルは、難溶解性及び低い経口生物学的利用能を示す医薬有効成分である。現在、ラセカドトリルは固体経口剤形で入手可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ラセカドトリルと、少なくとも1つの界面活性剤と、脂質とを含む自己乳化システムである組成物に関する。
【0007】
一実施形態では、本発明の自己乳化システムである組成物は、約0.01重量%〜約24.0重量%のラセカドトリルと、合計で約1重量%〜約95重量%の界面活性剤と、約0.01重量%〜約60重量%の脂質とを含み、この各重量%は100mLの組成物を基準とする。
【0008】
本発明は、下痢を経験する対象者の治療方法であって、ラセカドトリルと、少なくとも1つの界面活性剤と、脂質とを含む組成物を対象者に経口投与する工程を含む、方法も包含する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用するとき、「マイクロエマルション」は、脂質、水及び少なくとも1つの界面活性剤の液体混合物を指す。マイクロエマルションは、透明で、熱力学的に安定で、かつ等方性の外観を特徴とする。
【0010】
本明細書で使用するとき、「安定」は、裸眼で見て透明であり、ラセカドトリルの化学分解、実質的な変色、混濁又は油状液滴が実質的にない組成物を指す。水性及び/又は非水性成分のいずれにも、40℃で少なくとも約3カ月間、相分離が観察されてはならない。より好ましくは、水性及び/又は非水性成分のいずれにも、40℃で少なくとも約6カ月間、相分離が観察されてはならない。一実施形態では、ラセカドトリルの全化学分解生成物は、40℃で3カ月間保管したときに、ラセカドトリルの全重量%を基準にして0.5重量パーセント(重量%)未満、例えば、0.2重量%未満である。別の実施形態では、ラセカドトリルの全化学分解生成物は、40℃で6カ月間保管したときに、ラセカドトリルの全重量%を基準にして0.5重量パーセント(重量%)未満、例えば、0.2重量%未満である。分解生成物のパーセントは、HPLCクロマトグラムでラセカドトリルのピークのピーク面積に対する分解生成物のピークのピーク面積の%を計算することによって決定される。一実施形態では、ラセカドトリルの全化学分解生成物は、40℃で3カ月間保管したときに、ラセカドトリルの全%を基準にして、ラセカドトリルの0.5%未満、例えば、0.2%未満である。
【0011】
本明細書で使用するとき、「自己マイクロエマルション化薬物送達システム」(SMEDDS)は、油、界面活性剤、及び場合により共溶媒の混合物である。SMEDDSは、高親油性化合物の経口吸収を改良するために、システムの処方に使用することができる。SMEDDSは、水相に導入されたときに穏やかな撹拌を用いて自発的に乳化し、微細な水中油型エマルションを生成する。SMEDDS中の薬剤は、小さい液滴サイズで生じ、増大した溶解性及び浸透性を示す。SMEDDSは、液体又は固体で使用するために処方されてもよい。固体使用の場合、その固体はカプセル又は錠剤にパッケージ化される。液体充填又は半固体充填カプセルは、速度の認知、薬剤組成物の外観及び飲み込み易さから、特定の消費者に好ましい剤形である。
【0012】
本発明は、ラセカドトリルと、少なくとも1つの界面活性剤と、脂質とを含む自己乳化システムである組成物である。
【0013】
様々な研究で、ラセカドトリルが下痢の症状の低減に有効であることが明らかにされている。ラセカドトリルの使用が他の療法よりも優れる1つの利益は、ラセカドトリルは、処置後の便秘のような副作用が少ないことが明らかにされている点である。
【0014】
ラセカドトリルは、室温条件で約10マイクログラム/mLという低い水溶性を有する。本発明の組成物において、ラセカドトリルを組成物中に可溶化してもよい。
【0015】
ラセカドトリルは、自己乳化システムである組成物中に、組成物100mL当たり約0.01重量%〜約24.0重量%の量で包含される。好ましくは、ラセカドトリルは、組成物100mL当たり約0.01重量%〜約18.0重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約12.0重量%、より一層好ましくは、組成物100mL当たり約0.01重量%〜約10.0重量%である。一実施形態では、ラセカドトリルは、組成物100mL当たり約4.0重量%〜約24.0重量%である。別の実施形態では、ラセカドトリルは、組成物100mL当たり約4.0重量%〜約18.0重量%である。更に別の実施形態では、ラセカドトリルは、組成物100mL当たり約4.0重量%〜約12.0重量%である。更にまた別の実施形態では、ラセカドトリルは、組成物100mL当たり約4.0重量%〜約10.0重量%である。
【0016】
本発明の自己乳化システムである組成物は、少なくとも1つの界面活性剤を包含する。界面活性剤は、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はこれらの混合物であってもよい。
【0017】
好適な界面活性剤としては、例えば、親水性−親油性バランス(HLB)値が12未満の非水溶性界面活性剤、及びHLB値が12を超える水溶性界面活性剤が挙げられる。高いHLB及び親水性を有する界面活性剤は、油−水液滴の形成を助ける。界面活性剤は両親媒性の性質であり、比較的大量の疎水性薬剤組成物を溶解又は可溶化することができる。
【0018】
非限定例として、ツイーン(Tween)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、PEG 300、PEG 400、ポロキサマー407、プロピレングリコール、リン脂質、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、L−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ポリオキシル35ヒマシ油(CREMOPHOR EL、CREMOPHOR ELP)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor RH 40)、ポリオキシル60硬化ヒマシ油(CREMOPHOR RH 60)、ポリソルベート20(ツイーン20)、ポリソルベート80(ツイーン80)、d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)、ソルトール(Solutol)HS−15、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN 20)、PEG 300カプリル酸/カプリン酸グリセリド(SOFTIGEN 767)、PEG 400カプリル酸/カプリン酸グリセリド(LABRASOL)、PEG 300オレイン酸グリセリド(LABRAFIL M−1944CS)、ポリオキシル35ヒマシ油(ETOCAS 35)、グリセリルカプリレート(モノ及びジグリセリド)(IMWITOR)、PEG 300リノール酸グリセリド(LABRAFIL M−2125CS)、ポリオキシル8ステアレート(PEG 400モノステアレート(monosterate)、ポリオキシル40ステアレート(PEG 1750モノステアレート(monosterate)、ペパーミント油、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
加えて、好適な界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート、カプリルカプロイルマクロゴールグリセリド、ポリグリコール化グリセリド等のような、モノラウリン酸ソルビタンのポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。
【0020】
一実施形態では、界面活性剤は、ポリオキシル35ヒマシ油とグリセリルカプリレート(モノ及びジグリセリド)NFとの組み合わせである。
【0021】
本発明の組成物において、界面活性剤の全重量パーセントは、組成物100mL当たり約1重量%〜約95重量%である。好ましくは、界面活性剤は、組成物100mL当たり約25重量%〜約95重量%であり、より好ましくは、約30重量%〜約90重量%である。一実施形態では、界面活性剤は、組成物100mL当たり約45重量%〜約95重量%である。
【0022】
脂質は、本発明の組成物の別の必須成分である。脂質は、ラセカドトリルの可溶化を助け、自己乳化プロセスも促進する。好適な脂質としては、例えば、植物油(変性及び/又は加水分解)、異なる飽和度を有する長鎖トリグリセリド及び中鎖トリグリセリド、並びにこれらの組み合わせを使用してもよい。
【0023】
更に、親油性で水に不溶であるモノグリセリド、ジグリセリド、及び/又はトリグリセリド乳化剤(脂肪及び油)(Abitec Corporationより、CAPMUL(登録商標)の商標名で販売されている)を脂質として使用してもよい。例えば、蜜蝋、オレイン酸、大豆脂肪酸、d−α−トコフェロール(ビタミンE)、コーン油モノ−ジ−トリジグリセリド、中鎖(C8/C10)モノ及びジグリセリド、長鎖トリグリセリド、ヒマシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、硬化大豆油、硬化植物油、中鎖トリグリセリド、ココナッツ油から誘導されるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、パーム種子油、及びこれらの組み合わせである。
【0024】
脂質は、組成物中に、組成物100mL当たり約0.01重量%〜約60重量%の量で包含される。好ましくは、脂質は約0.01重量%〜約50重量%である。別の実施形態では、脂質は組成物100mL当たり約1重量%〜約20重量%であり、より好ましくは、組成物100mL当たり約1重量%〜約15重量%、更により好ましくは、組成物100mL当たり約1重量%〜約10重量%である。特定の実施形態では、脂質は、組成物100mL当たり約1重量%〜約2重量%である。
【0025】
組成物中の水の量を最小限に抑えることが望ましい。組成物中の水の量は、主に組成物に包含される各構成成分の含水量によって決定されるであろう。一実施形態では、組成物の含水量は、組成物の全重量%を基準にして、約3.5重量%未満である。別の実施形態では、組成物の含水量は、組成物の全重量%を基準にして、約2.5重量%未満である。更に別の実施形態では、組成物の含水量は、組成物の全重量%を基準にして、約0.5重量%未満である。更にまた別の実施形態では、組成物の含水量は、組成物の全重量%を基準にして、約0.2重量%未満である。
【0026】
任意追加的に、本発明の自己乳化システムである組成物には種々の成分が包含されてもよい。
【0027】
食品又は医薬製品への使用に好適ないかなる着色剤も本発明に使用してもよい。典型的な着色剤としては、例えば、アゾ染料、キノフタロン(quinopthalone)染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、インジゴイド染料、鉄酸化物、鉄水酸化物、二酸化チタン、天然染料、及びこれらの混合物が挙げられる。より詳細には、好適な着色剤には、パテントブルーV、アシッドブリリアントグリーンBS、レッド2G、アゾルビン、ポンソー4R、アマランス、D&Cレッド33、D&Cレッド22、D&Cレッド26、D&Cレッド28、D&Cイエロー10、FD&Cイエロー5、FD&Cイエロー6、FD&Cレッド3、FD&Cレッド40、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cグリーン3、ブリリアントブラックBN、カーボンブラック、酸化鉄ブラック、酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、二酸化チタン、リボフラビン、カロチン、アントシアニン(antyhocyanines)、ウコン、コチニール抽出物、クロロフィリン(clorophyllin)、カンタキサンチン、カラメル、ベタニン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
同様に、香味剤が本発明の自己乳化システムである組成物に包含されてもよい。組成物に添加される香味剤の量は、所望の味覚特性に依存する。
【0029】
組成物は、他の成分又は構成成分、例えば、芳香剤;スクラロース、ソルビトール、高果糖コーンシロップ、糖のような甘味料;キサンタンガムのような粘度調整剤;安息香酸ナトリウムNFのような防腐剤、クエン酸及び/又は塩化ナトリウムのような緩衝剤;又はこれらの混合物を含有してもよい。
【0030】
本発明の自己乳化システムである組成物は、所望の組成物が得られる限り、当業者に既知のいかなる方法で作製されてもよい。
【0031】
好適な方法としては、例えば、各成分を混合釜内で組み合わせる方法が挙げられ、その際成分は、連続的に添加されてもよく、又は意図する結果が達成される限り、いかなる方法でも添加されてもよい。更に、混合作用は、各成分を組成物に組み込むのに十分なものとすべきである。
【0032】
組成物の安定性を評価する主要手段は、分析的分解解析に基づく。自己乳化の効率は、乳化速度、液滴サイズ分布及び濁度測定によって推定できる。
【0033】
更に、安定性は、組成物の濁度を測定することによって評価してもよい。この評価は、組成物が素早く、再現可能な時間で、平衡に達するか否かを判断する助けとなる。
【0034】
安定性は、過飽和(沈殿)を確認することによっても評価される。試験は、1mLの製剤を、0.1NのHCLが250mL入ったビーカーに入れることによって実施する。沈殿が形成される場合、そのシステムは過飽和である。
【0035】
本発明の一実施形態では、自己乳化システムである組成物は、直接経口消費用のパッケージ化された組成物として投与される。別の実施形態では、自己乳化システムである組成物は、自己乳化システムである組成物を含有する経口軟質ゼラチンカプセルで投与される。更に別の実施形態では、自己乳化システムである組成物は、自己乳化システムである組成物を含有する複数のマイクロゲルビーズで投与される。更にまた別の実施形態では、自己乳化システムである組成物は、自己乳化システムである組成物を含有する硬質ゼラチンカプセルで投与される。自己乳化システムである組成物が硬質ゼラチンカプセルに含有される場合、その硬質ゼラチンカプセルはバンド固定されてもよい。更にまた別の実施形態では、自己乳化システムである組成物は、自己乳化システムである組成物を含有する坐薬又は浣腸で投与される。
【0036】
任意追加的に、本発明の自己乳化システムである組成物は、第2の有効成分を含む。一実施形態では、第2の有効成分は消化性健康有効成分である。非限定例としては、例えば、下剤、制酸薬、プロトンポンプ阻害剤、抗ガス剤、制吐薬、H2遮断剤、又は第2の下痢止め剤が挙げられる。
【0037】
一実施形態では、第2の有効成分は、自己乳化システムである組成物に組み込まれる。別の実施形態では、第2の有効成分は、自己乳化システムである組成物とは別の剤形組成物の別の部分に存在する。更に別の実施形態では、第2の有効成分は、マイクロカプセル化される。
【0038】
好適な抗ガス剤としては、限定するものではないが、シメチコンが挙げられる。
【0039】
好適な追加の下痢止め剤としては、限定するものではないが、ロペラミドが挙げられる。
【0040】
一実施形態では、本発明の自己乳化システムである組成物は、約8.0重量%〜約10.0重量%のラセカドトリルと、合計で約88重量%〜約91重量%の界面活性剤と、約1重量%〜約2重量%の脂質とを含み、この各重量%は100mLの組成物を基準とする。
【0041】
この実施形態では、本発明の自己乳化システムである組成物は、約0.01重量%〜約24.0重量%のラセカドトリルと、合計で約1重量%〜約95重量%の界面活性剤と、約0.01重量%〜約60重量%の脂質とを含み、この各重量%は100mLの組成物を基準とする。
【0042】
更に別の実施形態では、本発明の自己乳化システムである組成物は、約3.0重量%〜約7.0重量%のラセカドトリルと、合計で約40重量%〜約53重量%の界面活性剤と、約40重量%〜約53重量%の脂質とを含み、この各重量%は100mLの組成物を基準とする。
【0043】
本発明の自己乳化システムである組成物は、いかなる好適な送達システムで送達されてもよい。例えば、一実施形態では、自己乳化システムである組成物は経口的に送達される。別の実施形態では、自己乳化システムである組成物は軟質シェル剤形で送達される。更に別の実施形態では、自己乳化システムである組成物は硬質シェル剤形で送達される。更にまた別の実施形態では、錠剤剤形が自己乳化システムである組成物の送達に使用される。
【0044】
本発明は、下痢を経験する対象者の治療方法であって、ラセカドトリルと、少なくとも1つの界面活性剤と、脂質とを含む組成物を対象者に経口投与する工程を含む、方法も包含する。
【0045】
以下の実施例は、本発明の組成物及び方法を更に例示するために提供される。本発明は記載された実施例に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
濃縮ラセカドトリル脂質組成物:液体充填ゼラチンカプセル用
【0047】
【表1】
1:CRODA HealthcareからETOCAS(登録商標)35 USP/NF、EP、JPとして入手可能
2:CREMERからIMWITOR(登録商標)988 USP/NF、EP、JPとして入手可能
3:CREMERからMIGLYOL(登録商標)810N(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;70:30/C8:C10)USP/NF、EP、JPとして入手可能
【0048】
【表2】
1:CRODA HealthcareからETOCAS(登録商標)35 USP/NF、EP、JPとして入手可能
2:CREMERからIMWITOR(登録商標)988 USP/NF、EP、JPとして入手可能
3:CREMERからMIGLYOL(登録商標)812N(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;60:40/C8:C10)USP/NF、EP、JPとして入手可能
【0049】
表1及び表2の材料を使用して、以下の混合工程を実施して、自己乳化システムである組成物を形成した。3種類の比を、それぞれMIGLYOL 810N(表1)及びMIGLYOL 812N(表2)を用いて調製して、6種類の混合物を調製した。
【0050】
工程1:好適な容器内で、ポリオキシル35ヒマシ油(ETOCAS(登録商標)35)、グリセリルカプリレート(IMWITOR(登録商標)988)及び中鎖トリグリセリド(MIGLYOL(登録商標)810N及び812N)の混合物を、次の重量比の3種類の混合物として調製した:88:10:2(比1)、58:40:2(比2)、及び30:68:2(比3)。
【0051】
工程2:工程1で得られた混合物を、ボルテックスミキサーを用いて混合した。
【0052】
工程3:ボルテックスミキサーを用い、ラセカドトリルを、工程2で得られた混合物にゆっくりと添加し、5分間混合した。
【0053】
工程4:工程3で得られた混合物を、実験室用振とう器内に置き、透明な溶液が形成されるまで36時間混合した。
【0054】
ラセカドトリル脂質製剤の安定性
実施例1で調製した製剤の化学的安定性を、封止瓶内で40℃にて3カ月間保管したときのラセカドトリル分解に関して試験した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
:処方:
1.88%のSuper Refined Etocas 35、10%のImwitor 988、2%のMiglyol 810N(比1)
2.88%のSuper Refined Etocas 35、10%のImwitor 988、2%のMiglyol 812N(比1)
3.58%のSuper Refined Etocas 35、40%のImwitor 988、2%のMiglyol 810N(比2)
4.58%のSuper Refined Etocas 35、40%のImwitor 988、2%のMiglyol 812N(比2)
5.30%のSuper Refined Etocas 35、68%のImwitor 988、2%のMiglyol 810N(比3)
6.30%のSuper Refined Etocas 35、68%のImwitor 988、2%のMiglyol 812N(比3)
ND−検出不可能
【0056】
【表4】
【0057】
各処方の密度に基づく変換:
処方1/処方2:1.042g/mL
処方3/処方4:1.028g/mL
処方5/処方6:1.016g/mL
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
(実施例2)
濃縮ラセカドトリル脂質組成物:液体充填ゼラチンカプセル用
【0061】
【表7】
1:CREMERからIMWITOR 742(登録商標)USP/NF、EP、JPとして入手可能
2:CREMERからMIGLYOL(登録商標)810N(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;70:30/C8:C10)USP/NF、EP、JPとして入手可能
3:CREMERからMIGLYOL(登録商標)812N(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;60:40/C8:C10)USP/NF、EP、JPとして入手可能
【0062】
【表8】
1:CREMERからIMWITOR 988(登録商標)USP/NF、EP、JPとして入手可能
2:CREMERからMIGLYOL(登録商標)810N(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;70:30/C8:C10)USP/NF、EP、JPとして入手可能
3:CREMERからMIGLYOL(登録商標)812N(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;60:40/C8:C10)USP/NF、EP、JPとして入手可能
【0063】
試験方法:
試料調製:(アセトニトリル中)
1.1mLのラセカドトリル脂質溶液を、ピペットで100mLメスフラスコ(V.F.)に入れる。
2.アセトニトリルで全量まで希釈する。必要であれば、約20mLのジメチルアセトアミドを添加する。
3.必要であれば、試料溶液をアセトニトリルで更に希釈して約0.1mg/mLとする。
【0064】
試料分析
参照標準(0.1mg/mLのラセカドトリルのアセトニトリル溶液)及び試料を、下記条件と類似の条件下で、好適なHPLCシステムに注入する。パラメータは、クロマトグラフィーを最適化するために変更されてもよい。
【0065】
試験中の試料溶液のラセカドトリルピーク面積を、標準溶液のラセカドトリルピーク面積と比較して用い、ラセカドトリルの濃度を決定する。分解生成物の割合は、ラセカドトリルのピークを基準としたピーク面積の%によって決定される。
【0066】
【表9】
【0067】
【表10】
【0068】
移動相A:リン酸緩衝液、pH 2.5(緩衝液調製:1gのリン酸二水素カリウムを水に溶解し、リン酸でpH 2.5に調節し、水で1000mLに希釈する)
移動相B:100%アセトニトリル
【0069】
以上、本発明をその具体的な実施形態を参照しながら説明したが、本明細書中に開示される新規な着想から逸脱することなく多くの変更、改変、及び変形を行うことが可能であることは明らかである。したがって、こうした変更、改変、及び変形は全て、付属の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲に包含されるものとする。本明細書で引用する全ての特許出願、特許、及び他の刊行物は、それらの全容を援用するものである。
【0070】
〔実施の態様〕
(1) ラセカドトリルと、少なくとも1つの界面活性剤と、脂質と、を含む、自己乳化システムである組成物。
) 前記組成物が40℃で約3カ月間安定である、実施態様1に記載の組成物。
) 前記界面活性剤が、非イオン性、カチオン性、アニオン性、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1に記載の組成物。
) 前記界面活性剤が、ツイーン(Tween)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、PEG 300、PEG 400、ポロキサマー407、プロピレングリコール、リン脂質、水素添加大豆ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン、L−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ポリオキシル60硬化ヒマシ油、ポリソルベート20、ポリソルベート80、d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート、ソルトール(Solutol) HS−15、モノオレイン酸ソルビタン、PEG 300カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG 400カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG 300オレイン酸グリセリド、PEG 300リノール酸グリセリド、ポリオキシル35ヒマシ油、グリセリルカプリレート(モノ及びジグリセリド)、ポリオキシル8ステアレート(PEG 400モノステアレート(PEG 400 monosterate))、ポリオキシル40ステアレート(PEG 1750モノステアレート)、ポリソルベートのようなモノラウリン酸ソルビタンのポリオキシエチレン誘導体、カプリルカプロイルマクロゴールグリセリド、ポリグリコール化グリセリド(polyglycolyzed glycerides)及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1に記載の組成物。
【0071】
) 前記少なくとも1つの界面活性剤が、前記組成物の100mL当たり合計で約1重量%〜約95重量%の量で存在する、実施態様1に記載の組成物。
) 前記脂質が、植物油(変性及び/又は加水分解)、異なる飽和度を有する長鎖トリグリセリド及び中鎖トリグリセリド、親油性及び非水溶性のモノグリセリド、ジグリセリド、及び/又はトリグリセリド乳化剤(脂肪及び油)、蜜蝋、オレイン酸、大豆脂肪酸、d−α−トコフェロール(ビタミンE)、コーン油モノ−ジ−トリジグリセリド、中鎖(C8/C10)モノ及びジグリセリド、長鎖トリグリセリド、ヒマシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、硬化大豆油、硬化植物油、中鎖トリグリセリド、ココナッツ油から誘導されるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、パーム種子油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1に記載の組成物。
) 前記脂質が、前記組成物の100mL当たり約0.01重量%〜約60重量%の量で存在する、実施態様1に記載の組成物。
) 防腐剤、甘味料、粘度調整剤、着色料、芳香剤、香味剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される任意成分を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
) クエン酸、安息香酸ナトリウム、スクラロース、香味剤及びこれらの混合物からなる群から選択される任意成分を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
【0072】
10) 実施態様1に記載の組成物を含む剤形であって、軟質シェル剤形、硬質シェル剤形、又は錠剤剤形である、剤形。
11) 前記組成物が、前記組成物の総重量を基準にして約3.5重量%未満の総水分量を有する、実施態様1に記載の組成物。
12) 消化性健康有効成分である第2の有効成分を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
13) 前記界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油とグリセリルカプリレート(モノ及びジグリセリド)の組み合わせである、実施態様1に記載の組成物。
14自己乳化システムである組成物であって、
約0.01重量%〜約24.0重量%のラセカドトリルと、
合計で約1重量%〜約95重量%の界面活性剤と、
約0.01重量%〜約60重量%の脂質と、を含み、
各重量%は100mLの前記組成物を基準とする、自己乳化システムである組成物。
【0073】
15) 実施態様14に記載の組成物を含む剤形であって、軟質シェル剤形、硬質シェル剤形、又は錠剤剤形である、剤形。
16) 前記組成物が40℃で約3カ月間安定である、実施態様14に記載の組成物。
17自己乳化システムである組成物であって、
約3.0重量%〜約7.0重量%のラセカドトリルと、
合計で約40重量%〜約53重量%の界面活性剤と、
約40重量%〜約53重量%の脂質と、を含み、
各重量%は100mLの前記組成物を基準とする、自己乳化システムである組成物。
18) 実施態様17に記載の組成物を含む剤形であって、軟質シェル剤形、硬質シェル剤形、又は錠剤剤形である、剤形。
19) 下痢を経験する対象者の治療方法であって、ラセカドトリルと、少なくとも1つの界面活性剤と、脂質とを含む組成物を前記対象者に経口投与する工程を含む、方法。