(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バイオセンサが基板を含み、前記基板上に前記少なくとも2つの電極が配置され、前記少なくとも2つの電極が3つの電極を備え、前記3つのうち1つは参照電極であり、前記3つのうち2つは作用電極である、請求項1に記載のシステム。
前記シーケンスが、kの数のパルスを含み、前記第1の出力電流及び前記第2の出力電流のそれぞれが、kの数のパルスのそれぞれにおける所定時間中に測定された出力電流を含む、請求項6に記載のシステム。
パルスシーケンスが、kの数のパルスを含み、第1の電流が、kパルスシーケンスの各パルスにおける第1の所定時間中の電流出力の合計を含み、kが少なくとも2である任意の整数を含む、請求項2に記載のシステム。
パルスシーケンスが、kの数のパルスを含み、第2の電流が、kパルスシーケンスの各パルスにおける第2の所定時間中の電流出力の平均を含み、kが少なくとも2である任意の整数を含む、請求項2に記載のシステム。
パルスシーケンスが、kの数のパルスを含み、第2の電流が、kパルスシーケンスの各パルスにおける第2の所定時間中の電流出力の合計を含み、kが少なくとも2である任意の整数を含む、請求項2に記載のシステム。
電源及びメモリと連結されたマイクロプロセッサを有する分析物測定器と、少なくとも2つの電極上に配置された試薬を有するバイオセンサとを用いて、生理学的試料中の分析物濃度を測定する方法であって、
前記バイオセンサの前記少なくとも2つの電極に隣接する前記試薬上に、生理学的流体試料を堆積させる工程と、
複数の正及び負の電気パルスを、前記少なくとも2つの電極に、複数の正の電気パルスと共にシーケンスで印加する工程であって、前記シーケンスの最初は正の電気パルスであり、かつ、前記シーケンスの最後から2番目のパルスは少なくとも1つの正の電気パルスであり、前記印加する工程は、
離散時間間隔にわたり及び各間隔中に、前記複数の正の電気パルスを推進する工程であって、前記正の電気パルスのそれぞれの電圧は概ね一定の大きさである、工程と、
少なくとも1つの離散時間間隔にわたり及び前記少なくとも1つの離散間隔中に、少なくとも1つの負の電気パルスを推進する工程であって、前記少なくとも1つの負の電気パルスの電圧は概ね一定の大きさである、工程と、を含む、印加する工程と、
前記シーケンス中の少なくとも1つの正の電気パルスの印加により、前記少なくとも2つの電極から、前記シーケンスの最初の正の電気パルスを印加している時間を除く第1の所定時間中、第1の電流出力を測定する工程と、
前記シーケンス中の少なくとも1つの負の電気パルスの印加により、前記少なくとも2つの電極から、第2の所定時間中、第2の電流出力を測定する工程と、
前記第1及び第2の電流出力のうち少なくとも1つに基づいて、分析物濃度を決定する工程と、
前記決定する工程から、分析物濃度を表示する工程と、を含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明は、図面を参照しつつ読まれるべきもので、異なる図面中、同様の要素は同様の符号にて示してある。図面は必ずしも一定の縮尺を有さず、選択した実施形態を示したものであって、本発明の範囲を限定するものではない。詳細な説明は、本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として説明するものである。この説明文は、当業者による発明の製造及び使用を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例及び使用例を述べるものである。
【0021】
本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその所望の目的に沿って機能することを可能とするような適当な寸法の許容範囲を示すものである。更に、本明細書で用いる「患者」、「ホスト」及び「対象」という用語は、任意のヒト又は動物の対象を指し、システム又は方法をヒトにおける使用に限定することを目的としたものではないが、ヒト患者における本発明の使用は好ましい実施形態を代表するものである。
【0022】
図1は、本明細書で例示及び記述する方法及び技法に基づき製造されたバイオセンサと共に、個人の血液中の分析物レベルを検査するための、分析物測定器200を図示する。分析物測定器200は、ユーザーインターフェース入力装置(206、210、214)を含み、これらのインターフェース入力装置は、データ入力、メニューナビゲーション、及びコマンド実行のために、ボタン形式であってよい。データには、分析物濃度及び/又は個人の日常の生活習慣に関連した情報を表す値を挙げることができる。日常の生活習慣に関連した情報には、個人の食物摂取、医薬使用、健康チェックの実施、全身の健康状態、及び運動レベルを挙げることができる。分析物測定器200はまた、測定された分析物レベルを報告するため、及びライフスタイル関連情報の入力を容易にするために用いることができる、ディスプレイ204を含んでもよい。
【0023】
分析物測定器200は、第1のユーザーインターフェース入力装置206、第2のユーザーインターフェース入力装置210、及び第3のユーザーインターフェース入力装置214を含んでもよい。ユーザーインターフェース入力装置206、210、及び214は、試験デバイス内に保存されたデータの入力及び分析を促進し、利用者がディスプレイ204上に表示されたユーザーインターフェースを介してナビゲートすることが可能になる。ユーザーインターフェース入力装置206、210、及び214は、第1のマーキング208、第2のマーキング212、及び第3のマーキング216を含み、それらは、ユーザーインターフェース入力装置をディスプレイ204上の文字と相互に関連付けるのに役立つ。
【0024】
分析物測定器200は、バイオセンサ100をストリップポートコネクタ220に挿入すること、第1のユーザーインターフェース入力装置206を押し込んで短時間押し続けること、又はデータポート218においてデータトラフィックの検出をすることによって、作動させてもよい。分析物測定器200は、バイオセンサ100を取り外すこと、第1のユーザーインターフェース入力装置206を押し込んで短時間押し続けること、メインメニュー画面からナビゲートして測定器オフの選択肢を選択すること、又は所定時間の間いかなるボタンも押さずにいることによって、動作を停止させてもよい。ディスプレイ104は、任意に、バックライトを含むことができる。
【0025】
一実施形態では、分析物測定器200は、第1のバイオセンサバッチから第2のバイオセンサバッチに切り替えたときに、例えば任意の外部ソースから、校正入力を受信しないように構成してもよい。それ故、例示的な一実施形態では、測定器は、(入力装置206、210、214などの)ユーザーインターフェース、挿入される試験ストリップ、別個のコードキー又はコードストリップ、データポート218などの外部ソースからの校正入力を受信しないように構成される。このような校正入力は、バイオセンサバッチのすべてが、ほぼ均一な校正特性を有する場合には、必要ない。校正入力は、特定のバイオセンサバッチに属する一連の値としてもよい。例えば、校正入力は、特定のバイオセンサバッチにおけるバッチ勾配及びバッチ切片値を含んでもよい。バッチ傾き及び切片値などの校正入力は、下記に記載するように、測定器内で予備設定されうる。
【0026】
図2を参照すると、分析物測定器200の例示的な内部レイアウトが示されている。分析物測定器200は、プロセッサ300を含んでもよく、これは、本明細書で記述及び図示するいくつかの実施形態では、32−bit RISCマイクロコントローラーである。本明細書に記載及び説明する好ましい実施形態では、プロセッサ300は、テキサス州ダラス所在のテキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments)により製造される超低消費電力マイクロコントローラーのMSP 430ファミリーから選択されることが好ましい。プロセッサは、I/Oポート314を介して、メモリ302に双方向に接続されてもよく、メモリ302は、本明細書に記載及び説明するいくつかの実施形態では、EEPROMである。データポート218、ユーザーインターフェース入力装置206、210、及び214、並びにディスプレイドライバ320もI/Oポート214を介してプロセッサ300に接続される。データポート218は、プロセッサ300に接続されてもよく、それによって、メモリ302とパーソナルコンピュータなどの外部デバイスとの間のデータ転送を可能にする。ユーザーインターフェース入力装置206、210、及び214は、プロセッサ300に直接接続されている。プロセッサ300は、ディスプレイドライバ320を介してディスプレイ204をコントロールする。メモリ302には、分析物測定器200の製造中、バッチ勾配及びバッチ切片の値などの校正情報があらかじめ組み込まれる。このあらかじめ組み込まれた校正情報は、ストリップポートコネクタ220を通じてストリップから好適な信号(電流など)を受信したときに、プロセッサ300がアクセス及び使用することを可能にし、これにより、外部ソースから校正入力を受信することなく、信号及び校正情報を用いて、対応する分析物レベル(血液中の分析物濃度など)の計算が可能となる。
【0027】
本明細書で記述及び図示する実施形態では、分析物測定器200は、特定用途向け集積回路(ASIC)304を含んでもよく、これにより、ストリップポートコネクタ220に挿入されるバイオセンサ100に適用された血液中の分析物レベルの測定に用いる電気回路が提供される。アナログ電圧は、アナログインターフェース306を経由してASIC 304へ及びASIC 304から通過しうる。アナログインターフェース306からのアナログ信号は、A/D変換器316によってデジタル信号に変換することができる。プロセッサ300は更に、コア308、ROM 310(コンピュータコードを含む)、RAM 312及びクロック318を含む。一実施形態では、プロセッサ300は、例えば分析物測定後のある期間中など、ディスプレイユニットによる分析物の値の表示の際に、単一の入力を除くすべてのユーザーインターフェース入力を無効にするように構成(又はプログラム)される。代替的な実施形態では、プロセッサ300は、ディスプレイユニットによる分析物の値の表示の際に、単一の入力を除くすべてのユーザーインターフェース入力装置からの任意の入力を無視するよう構成(又はプログラム)されている。
【0028】
図3Aは、基材5上に配置された7つの層を含みうる、バイオセンサ100の例示的な分解斜視図である。基材5上に配置された7つの層は、(電極層50とも呼ばれ得る)導電層50、絶縁層16、2つの重なる試薬層22a及び22b、接着部分24、26、及び28を含む接着層60、親水層70、並びに最上層80であり得る。バイオセンサ100は、例えば、スクリーン印刷プロセスを用いて、導電性層50、絶縁層16、試薬層22、接着層60が、連続的に基材5上に配置される、一連の工程によって製造されてもよい。親水層70及び最上層80は、ロールストックから配置され、一体化ラミネート、又は別個の層のいずれかとして基材5上に積層されてもよい。バイオセンサ100は、
図3Aに示すように、遠位部分3及び近位部分4を備える。
【0029】
バイオセンサ100は、血液試料の採血が可能となる、試料受け取りチャンバ92を備えてもよい。試料受け取りチャンバ92は、
図3Aに図示するとおり、バイオセンサ100の近位端に入口を、側端に出口を備えうる。分析物が測定できるように、血液試料94を入口に適用して、試料受け取りチャンバ92を充填することが可能である。
図3Aに示すように、第1の接着パッド24及び第2の接着パッド26の側縁は、試薬層22に隣接して位置し、それぞれ試料受け取りチャンバ92の壁を画定している。
図3Aに示すように、試料受け取りチャンバ92の底部、即ち「床」は、基材5、導電層50、及び絶縁層16の一部を含んでもよい。
図3Aに示すように、試料受け取りチャンバ92の頂部、即ち「屋根」は、遠位親水性部分32を含んでもよい。
【0030】
バイオセンサ100について、
図3Aに図示するように、基材5は、引き続いて適用される層の支えに寄与する基部として使用してもよい。基材5は、ポリエチレンテトラフタレート(PET)材料(ミツビシ社(Mitsubishi)により供給されるHostaphan PET)などのポリエステルシートの形態であってもよい。基材5は、公称350マイクロメートル厚×370ミリメートル幅、長さおよそ60メートルのロール形態であってもよい。
【0031】
導電層は、分析物の電気化学的測定に使用できる電極の形成に必要である。導電層50は、基材5上にスクリーン印刷されるカーボンインクから作ることができる。スクリーン印刷プロセスにおいて、カーボンインクはスクリーン上に乗せられ、続いてスキージを用いてスクリーンを通じて転写される。印刷されたカーボンインクは、約140℃の温風で乾燥させることができる。カーボンインクは、VAGH樹脂、カーボンブラック、グラファイト(KS 15)、並びに樹脂、カーボン、及びグラファイト混合物用の1つ以上の溶媒を含みうる。より詳細には、カーボンインクは、カーボンインク中に約2.90:1の比のカーボンブラック:VAGH樹脂、及び、約2.62:1の比のグラファイト:カーボンブラックを含むことができる。
【0032】
バイオセンサ100について、
図3Aに図示するとおり、導電層50は、参照電極10、第1の作用電極12、第2の作用電極14、第1の接触パッド14、第2の接触パッド15、参照接触パッド11、第1の作用電極トラック8、第2の作用電極トラック9、参照電極トラック7、及びストリップ検出バー17を含んでもよい。この導電層は、カーボンインクから形成されてもよい。第1の接触パッド14、第2の接触パッド15,及び参照接触パッド11は、分析物測定器と電気的に接続するように、適合させてもよい。第1の作用電極トラック8は、第1の作用電極12から第1の接触パッド14に至る電気的に連続した経路を提供する。同様に、第2の作用電極トラック9は、第2の作用電極14から第2の接触パッド15に至る電気的に連続した経路を提供する。同様に、参照電極トラック7は、参照電極10から参照接触パッド11に至る電気的に連続した経路を提供する。ストリップ検出用バー17は、参照接触パッド11に電気的に接続される。
図3Aに図示するとおり、分析物測定器は、参照接触パッド11とストリップ検出バー17との間における連続性を測定することで、バイオセンサ100が適切に挿入されたことを検出しうる。バイオセンサ100の代替型を、バイオセンサ100’として
図3Bに示す。この形態では、最上層38’、親水性フィルム層34’及びスペーサ29が互いに組み合わされて一体化アセンブリを形成し、該アセンブリは基材5に搭載され、試薬層22’は絶縁層16’に隣接して配置されている。
【0033】
図4Aは、例えばグルコース測定器などのような好適な分析物測定器、及び例えばグルコース試験ストリップなどのような好適なバイオセンサを用いて、例えばグルコースなどのような分析物を測定するための、既知の分析物測定技法を例示した図である。この例示的なシステムにおいて、検査電圧がバイオセンサ100に印加された。流体試料をバイオセンサ100に適用する前、分析物測定器200は流体検出モードにあり、約400ミリボルトの検査電圧V
T1が、第2の作用電極14と参照電極10との間に印加される。第1の作用電極12と参照電極10との間に、約400ミリボルトの第2の検査電圧V
T2を同時に印加することが好ましい。あるいは、第1の検査電圧の印加の時間間隔が、第2の検査電圧の印加の時間間隔と重複するように、第2の検査電圧を同時に印加してもよい。分析物測定器は、生理学的流体の検出前の流体検出時間間隔中、流体検出モードであってよい。流体検出モードでは、分析物測定器200は、流体が第2の作用電極14及び参照電極10を浸潤することによって、流体がバイオセンサ100に適用された時点を測定する。例えば、第2の作用電極14において、測定試験電流が十分な増加をしたことを理由として、分析物測定器200が、生理学的流体の適用を認識すると、分析物測定器200は、このいわゆる開始時点に対して、「0」というゼロ秒マーカーを割り当て、試験時間間隔T
1を開始する。試験時間間隔T
1が完了すると、試験電圧が除去される。簡潔にするため、
図4Aは、バイオセンサ100に印加された第1の試験電圧V
T1のみを示す。
【0034】
以下では、
図4Aの試験電圧を既知のバイオセンサ100に印加したときに測定された、既知の電流出力トランジェント(つまり、
図4Bにおける時間関数としての、マイクロアンペアによる測定電流レスポンス)から、グルコース濃度がどのように測定されるかを説明する。
【0035】
図4Aでは、バイオセンサ100に印加する試験電流は、概ね、約+100ミリボルト〜約+600ミリボルトである。電極がカーボンインクを含み、伝達体がフェリシアニドであり、かつ、問題となる分析物がグルコースである一実施形態では、試験電流は約+400ミリボルトである。分析物、伝達体及び電極材料の他の組み合わせでは、異なる試験電圧が必要となるであろう。試験電圧402の持続時間は、概ね、反応時間後の約2〜約4秒であり、典型的には、反応時間後の約3秒である。典型的には、時間T
1は、バイオセンサの電極上で試料が検出された時点に対して相対的に測定される。
図4Aにおいて電圧V
T1がT1の期間中維持され、第1の作用電極において、ゼロ時点を起点として電流トランジェント402が生成される(また同様に、追加電極においても、電流トランジェントがゼロ時点に対して生成されうる)。電流トランジェント402は、近接する最大ピーク時点Tpに至るまで蓄積し、この時点において、電流はゼロ時点後から約5秒が経過するまで徐々に低下する。406の時点において、作用電極における電流値「Ig」が測定される。バイオセンサには複数の作用電極が含まれるため、電流トランジェント402に加えて、複数の電流トランジェントがバイオセンサから提供されうる。作用電極が複数ある場合、サンプリング時点Teにおける電流出力Igが累積して、グルコース濃度測定に用いることができる出力電流を推進する。一実施形態では、時点Tpにおけるピーク電流出力から一定間隔をおいた単一時点(又は時点範囲)として、時点Teが選択される。別の方法としては、時点Teは、試験シーケンスの開始時点0に対して固定された時点であってよい。更に別の方法では、時点Teは、試料の少なくとも1つの物理的特性に相関する表から選択された時点であってよい。この可変的な試験時点の詳細については、代理人整理番号第DDI5220USPSP号にて2011年12月29日に出願された米国仮特許出願第US 61/581,087号;代理人整理番号第DDI5220USPSP1号にて2011年12月29日に出願された同第61/581,089号;代理人整理番号第DDI5220USPSP2号にて2011年12月29日に出願された同第61/581,099号;及び代理人整理番号第DDI5220USPSP号にて2011年12月29日に出願された同第61/581,100号(これらの出願は、参照により本明細書に援用する)において、説明及び記述されている。
【0036】
特定のバイオセンサ100の校正コードオフセット及び勾配を知ることで、グルコース濃度の計算が可能となる。「切片」及び「勾配」は、試験ストリップのバッチから校正データを測定することにより得られる値である。典型的には、およそ1500個のストリップがランダムにロット又はバッチから選択される。提供者からの体液は、様々な分析物レベル、典型的には6つの異なるグルコース濃度までスパイクされる。典型的には、12人の異なる提供者からの血液が、6つのレベルのそれぞれまでスパイクされる。8個のストリップが同一の提供者及びレベルから血液を与えられ、したがってそのロットに関して合計12×6×8=576試験が行われる。これらは、Yellow Spring Instrument(「YSI」)などの標準研究室用分析器を用いてこれらを測定することによって、実際の分析物レベル(例えば、血中グルコース濃度)に対してベンチマークでテストされる。測定されたグルコース濃度のグラフが、実際のグルコース濃度に対してプロットされる(又は、YSI電流に対する測定された電流)。測定されたグルコース濃度のグラフが、実際のグルコース濃度に対してプロットされ(又は、YSI電流に対する測定された電流)、このグラフに適合された式y=mx+c最小二乗法が、このロット又はバッチからの残りのストリップについてのバッチ勾配m及びバッチ切片cに関する値を提供する。
【0037】
バイオセンサ100(
図3A)の分析物(例えば、グルコース)計算の例として、
図4Bでは、第1の作用電極の412においてサンプリングされた電流値は1600マイクロアンペアであり、第2の作用電極の412における電流値は1400であり、バイオセンサの校正コードにおける切片は500マイクロアンペアであり、傾斜は18マイクロアンペア/mg/dLであることが前提とされている。グルコース濃度Gは、等式3から以下のように決定され得る。
G=[(Ig)−切片]/勾配 等式3
式中、
Igは、電極(
図4B)から測定された電流、又は電極から測定された電流の合計であり、
勾配は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値であり、
切片は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値である。
等式3から G=[(1600+1400)−500]/18であり、したがってG=143.33ナノアンペア〜133mg/dLである。
【0038】
測定器200の電気回路における誤差又は遅延時間を説明するため、各作用電極の電流値に対して、一定のオフセットが提供されうることが注目される。温度補償も用いられて、結果が例えば摂氏約20度の室温などの参照温度に校正されることを確実にしうる。
【0039】
出願人は、「干渉物質」を有する血液試料について、グルコース測定値を歪曲して(又は技術分野においては「バイアスをかけて」)そのYSI実験室の値からかけ離れた値にする、これらの干渉物質による影響が少ないグルコース測定値を獲得できることを発見した。出願人のアプローチは、不可逆的かつ電気科学的な活性干渉化合物の酸化に起因する誤差電流の低減に関する既知のアプローチと比較して、有利である。本明細書で使用する「干渉物質」とは、例えば、尿酸、アセトアミノフェン、ドーパミン、アスコルビン酸など、生物学的システムにおける生化学的反応の結果として生じる物質であって、生理学的流体試料にとって固有のものではない物質をいう。
【0040】
既知のアプローチでは、それらの電流を専用の電極で直接的に測定すること、及び最終的なグルコース測定値に対する補正適用のためにそれらの測定された電流を使用することにより、干渉物質の歪曲効果を低減しうる。既知のアプローチは、追加電極のストリップの存在を必要とする。追加電極の存在は、より大きな試験チャンバを必要とし、同様に、試料もより多くの量を必要とする。したがって、出願者の電圧パルスによる技法は、直接的な測定及び補正のアプローチに比べて、試験チャンバの容量に対する必要性を低減させる。
【0041】
具体的には、出願者の新しい技法は、出願者が発見した新規かつ非自明の方法において、少なくとも2つの電極に複数の正及び負の電気パルスを印加することにより、生理学的試料中のグルコース濃度を測定することに関わる。
図5Aに示すとおり、入力電圧500は、離散時間間隔において、正及び負のパルス(502、504、506、及び508)のシーケンス500の形で提供される。正のパルス(例えば、502、506)のそれぞれは、離間した間隔「d」を通して、及び各間隔「d」中において、印加され、正の電気パルスのそれぞれの電圧は、概ね、一定の大きさに維持されている。間隔は、約0.2秒〜約6秒であってよい。負のパルス(例えば、504)は、離間した間隔「d」における正のパルス間で印加される。少なくとも1つの離散間隔「d」中、少なくとも1つの負の電気パルスの電圧は、概ね一定の大きさである。負のパルス504は、約0.2秒〜約6秒でありうる間隔について、概ね一定の大きさで維持されてよい。正及び負のパルスのそれぞれは、交互シーケンスにあり、第1のパルスは第1の極性であってよく、第2のパルスはその反対の極性であってよい。好ましい実施形態では、第1の極性は、正極性であってよく、正及び負の電気パルスは、少なくとも2つの電極にシーケンスで印加される。
【0042】
出願者のアプローチでは、複数の正の電気パルスは、パルスシーケンス中、第1のパルス及び最後から2番目のパルス(例えば、502及び506)を含んでもよい。パルスシーケンス中、最後から2番目である、少なくとも1つの負の電気パルス(例えば、パルス504)が存在する。最後のパルスは、好ましくは、負のパルス(例えば、508)である。複数の正の電気パルスは、離散かつ離隔された時間的間隔を通して印加され、これらの各間隔において、正の電気パルスの電圧は、概ね一定の大きさに維持されていることに留意すべきである。少なくとも1つの負のパルス、例えば、負のパルス504又は508(
図5A)が、少なくとも1つの離散時間間隔を通して印加され、各間隔中、負の電気パルスの電圧は一定の大きさに維持されている。
【0043】
例示的な
図5Bに関して、バイオセンサに印加(
図5A)された各パルスは、バイオセンサ中の分析物(この場合、グルコース)及び試薬に出力パルス510を生成させ(出力トランジェント波形を示す
図5B)、対応する出力パルスは各入力パルスの開始時においてピーク(512a、512b、512c、及び512d)に達する(
図5A)。出力トランジェント510は、ここでは時間の経過に伴う電流出力として示され、かつ、ここではいくつかの減衰トランジェント510a、510b、510c、及び510dとして表示され、各トランジェントは、対応するピーク512a、512b、512c、及び512dから減衰している。特に、システムは、電気パルス502、504、及び506のシーケンス500における第1のパルス502を除く、少なくとも1つの電気パルスの印加に起因して、バイオセンサの少なくとも2つの電極から、電流出力I
Pを(例えば、電流トランジェントのサンプリング又は測定によって)獲得する。電流出力I
Pは、時点Tp2において測定することができ、Tp2の時点から、減衰トランジェントの終了まで、又は次のパルスの開始までの出力電流の平均又は合計である(
図5B)。システムは、502、504、506、及び508のパルスシーケンスにおいて、時点T
N1における最初の負のパルス504(
図5A)の印加に起因する、バイオセンサからの出力電流I
N1、及び時点T
N2における最後の電気パルス(例えば、パルス508)の印加に起因する、別の出力電流I
N2も獲得する。出力電流I
N1及びI
N2の合計(又は、別の方法としては、平均)は、電流出力I
Nとして示しうる。出力電流I
N1及びI
N2のそれぞれは、対応する時点T
N1及びT
N2において測定しうることに留意すべきである。別の方法としては、T
N1及びT
N2の対応する各時点から、減衰トランジェントの終了(又は次のパルスの開始)T
NEまでの電流出力の平均又は合計であって、その持続時間は、ここでは両矢印として示される。
【0044】
システムは、第1及び第2の電流出力I
P及びI
Nを用いて、次の形の等式4により、グルコース濃度を測定しうる:
【0045】
【数4】
式中、
I
Eは、第1の電流出力I
P及び第2の電流出力I
Nの平均であってよく、
I
Pは、少なくとも1つの電流出力、又は第1の正のパルスを除く正のパルスのそれぞれから測定された第1の出力電流(I
P2、I
P3、I
P4、I
P5...I
Pkここで、k=パルスの合計数)の平均電流出力であってよく、
I
Nは、少なくとも1つの電流出力、又はシーケンス中の負のパルスのそれぞれから測定された第2の出力電流(I
N1、I
N2、I
N3...I
Nk)の平均電流出力であってよく、
勾配は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値であってよく、
切片は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値であってよい。
【0046】
別の方法としては、バイオセンサが2つの作用電極を含む場合、システムは、等式3によってグルコース濃度を測定してもよく、電流出力I
P及び電流出力I
Nのそれぞれは、各作用電極から獲得しうる。複数の電流出力が存在する場合、各作用電極からの正の出力電流I
P2、I
P3、I
P4、I
P5...I
Pk(ここで、k=パルスの合計数)の平均を、各作用電極からの負の出力電流I
N1、I
N2、I
N3...I
Nk(ここで、k=パルスの合計)の平均と共に、上記等式3の電流Iとして利用しうる。類似の語句であるI
P、I
P2、I
P3、I
P4、I
P5...I
Pkの間で区別をするため、出願者は、I
P(又はI
N)を「電流出力」と呼び、I
P2、I
P3、I
P4、I
P5...I
Pk(又はI
N1、I
N2、I
N3、I
N4...I
Nk)の一組を「出力電流」と呼ぶ。
【0047】
出願者は、グルコース計算において少なくとも最後の負の電流を用いた場合、特定の干渉物質に関して、グルコース測定値と、YSI実験室設備を通じた参照グルコース測定値との間の誤差(又は「バイアス」)が低減されることを発見した。例えば、
図11において示されるように、干渉物質がアスコルビン酸であり、波形が「1」であるときは、波形0における対照(参照YSI値よりも約10mg/dL大きい)と比較して、正のパルス(約7mg/dL)よりも負のパルス(約5mg/dL)における方が、バイアスの低減が大きい。選択された特定の負のパルスの利用を通じて、一定の干渉物質におけるバイアスが低減されることを出願者は発見したが、更に、特定の干渉物質を説明するときに、選択された正の電流又は選択された負の電流による一定のグルコース濃度を、別々に利用することが好ましく、これら2つのグルコース測定値(対応する正及び負のパルスによる測定値)のうち1つを、ユーザーに対して表示するグルコース測定値として用いることができる。例えば、マイクロプロセッサは、選択された負のパルスの出力を用いて、次の形の等式5によって、グルコース濃度を計算するように構成されてもよい:
【0048】
【数5】
式中、
I
Nは、シーケンスの最後の電気パルスから測定された第2の電流出力を含んでもよく、
勾配は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値を含んでもよく、
切片は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値を含んでもよい。
【0049】
他方で、マイクロプロセッサは、次の形の等式6によって、グルコース濃度を計算するように構成されてもよい:
【0050】
【数6】
式中、
I
Pは、パルスシーケンスの第1の正のパルスを除くパルスについて、測定された最初の電流出力を含んでもよく、
勾配は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値を含んでもよく、
切片は、この特定のバイオセンサが由来するバイオセンサバッチの校正検査から得られた値を含んでもよい。
【0051】
別の方法としては、等式5及び6における双方のグルコース測定値(対応する正及び負のパルスによる)の平均を求めて、グルコース濃度としてユーザーに提供してもよい。
【0052】
また、別の実施形態を、
図6A及び6Bに示す。
図6Aにおいては、システムは、「k」の数の電気パルスのシーケンス600を生成し、これには、離間した間隔による正のパルス602、606、610と、正の電気パルスの離間した間隔の間における負のパルス604及び608とを含む。バイオセンサ100に提供された電気パルスのシーケンス600は、ピーク620a、620b、620c、620d、620e、及び620fを含む電流トランジェント620を生成する。トランジェント620の各ピークは、対応する減衰トランジェント622a、622b、622c、622d、622e、及び622fを含む。
【0053】
図5A及び5Bの実施形態におけるように、システムは、
図6A及び6Bに関して、電気パルス601、602、603、604、605、及び606のシーケンス600における最後の電気パルス(例えば、正のパルス610)の印加に起因して、バイオセンサから電流出力I
Pを獲得する(例えば、電流トランジェントのサンプリング又は測定による)。別の方法としては、一連の出力電流を、電流出力の代替として用いてもよい。特に、出力電流I
P2、I
P3のそれぞれを、対応する時間T
p2及びT
p3において測定しうる。時点T
p2及びT
p3のそれぞれは、ピークから開始して、T
p2〜Tp
E(
図6B)及びT
p3〜Tp
Eの合計電流出力によるまでの、電流トランジェントの合計持続時間の約75%である時点でありうる。また、システムは、電流出力I
Nを、出力電流I
N1、I
N2、I
N3の平均又は合計として、獲得しうる。前に述べたように、システムは、等式4、5、6のうち1つ又はそれらの組み合わせにより、第1及び第2の電流出力I
P及びI
Nを用いて、グルコース濃度を測定しうる。別の方法としては、バイオセンサが2つの作用電極を含む場合、システムは、等式3によってグルコース濃度を測定してもよく、電流I
P及び電流I
Nのそれぞれは、各作用電極から獲得しうる。特に、各作用電極からの電流I
Pの平均は、各作用電極からの電流I
Nの平均と共に、上記の等式3における電流Iとして用いてもよい。
【0054】
図7A及び7Bは、システムが電気信号のパルスシーケンスを利用してグルコース濃度を獲得する、更に別の実施形態を示す。
図7Aのシーケンスにおいて、間隔「d」は、
図5A又は
図6Aの持続時間又は間隔における場合よりも長い。特に、持続時間「d」は、
図5A又は
図6Aにおける場合の2倍であり、その結果、グルコース反応が測定される全時間を、約4秒から約7秒に延長する。
【0055】
図7Aに関して、複数の正の電気パルスは、パルスシーケンス中、第1のパルス及び最後から2番目のパルス(例えば、702及び706)を含んでもよい。パルスシーケンス中、最後のパルスである、少なくとも1つの負の電気パルス(例えば、パルス708)が存在する。複数の正の電気パルスは、離散かつ離隔された時間的間隔「d」を通して印加され、これらの各間隔において、正の電気パルスの電圧は、概ね一定の大きさに維持されていることに留意すべきである。少なくとも1つの負のパルス、例えば、負のパルス704又は708(
図7A)が、少なくとも1つの離散時間間隔を通して印加され、各間隔中、負の電気パルスの電圧は一定の大きさに維持されている。
【0056】
例示的な
図7Bに関して、バイオセンサに印加(
図7A)された各パルスは、グルコース及び試薬の関与する物理的転換を生じさせ、出力トランジェント710(
図7B)と、各出力パルスの開始時における対応するピーク(
図7A)とを、(バイオセンサ100内において)もたらす。ピークは、ここで712a、712b、712c、及び712dとして示される。出力電流トランジェント710は、ここで、時間の経過に伴う電流出力として表され、いくつかのトランジェント710a、710b、710c、及び710dとして示されており、各トランジェントは、対応するピーク712a、712b、712c、及び712dから減衰している。特に、システムは、電気パルス702、704、706、及び708のシーケンス700における第1のパルスを除く電気パルスの印加に起因して、少なくとも2つの電極から電流出力I
Pを(例えば、電流トランジェントのサンプリング又は測定によって)獲得する。この場合、ここで用いる正のパルスは、第1の正のパルス702以外でなければならず、ここではパルス706である。電流出力I
Pは、時点T
p2において測定することができ、T
p2〜T
pE(
図7B)の各時点における出力電流の合計によって、出力電流識別名I
P2として示される。また、システムは、パルス702、704、706、及び708のシーケンスにおける最後の電気パルス(例えば、パルス708)の印加に起因する、電流出力I
Nをバイオセンサから獲得する。2つの負のパルスが存在するため、電流出力I
Nは、時点T
N1及びT
N2における平均、又は出力電流I
N1及びI
N2の合計(T
N1又はT
N2から対応するT
nEまで測定)とされる。その後、システムは、等式4、5、6のうち1つ又はそれらの組み合わせにより、第1及び第2の電流出力I
P及びI
Nを用いて、グルコース濃度を測定しうる。システムが2つ又はそれ以上の作用電極を用いている場合、システムは、等式3〜6のうち1つ又はそれらの組み合わせにより、各作用電極から獲得した2つの電流の平均を利用しうる。
【0057】
図8A及び8Bは、システムが電荷800のパルスシーケンスを利用してグルコース濃度を獲得する、更に別の実施形態を示す。この実施形態では、電荷800は、10のパルスの形でバイオセンサにもたらされ、これらのパルスのうち5つ(801、803、805、807、809)は正であり、これらのパルスのうち5つ(802、804、806、808、810)は負である。4つの正のパルスの持続時間は、概ね、約0.5秒に等しく、最後の正のパルス809の持続時間は、約1秒であり、最後の負のパルスの持続時間は、約4秒である。バイオセンサからの出力は、電流トランジェント811であり、これは、ピーク812a、812b、812c、812d、812e、812f、812g、812h、812i及び812jと、減衰電流トランジェント811a、811b、811c、811d、811e、811f、811g、811h、811i及び811とを含む。
【0058】
例示的な
図8Bに関して、バイオセンサに印加(
図8A)された各パルスは、バイオセンサ100内でグルコース及び試薬の関与する反応を生じさせ、出力トランジェント811a〜811j(
図8B)と、各出力パルスの開始時における対応するピーク812a〜812jとをもたらす(
図8A)。出力トランジェント810は、ここでは時間の経過に伴う電流出力として示され、かつ、ここではいくつかの減衰トランジェント811a〜811jとして表示され、各トランジェントは、対応するピーク812a〜812jから減衰している。特に、システムは、電気パルス808及び809のシーケンス800における最後の電気パルス(例えば、706)の印加に起因して、バイオセンサの少なくとも2つの電極から、電流出力I
Pを(例えば、電流トランジェントのサンプリング又は測定によって)獲得する。上述の実施形態におけるように、システムは、グルコース測定のために、最後の正のパルスの電流出力、又は最後の負のパルスの電流出力のうち1つ又は1つのみを獲得してもよい。システムは、グルコース測定のために、最後の正のパルスの電流出力及び最後の負のパルスの電流出力の双方の平均を獲得してもよい。
【0059】
別の方法としては、システムは、グルコース濃度の測定をするため、第1のパルスを除くすべてのパルス(正及び負)の出力電流の平均を獲得してもよい。出力電流I
P2、I
P3、I
P4、I
P5は、各パルスについて、対応する時点T
p2...T
p4で、又は所定の時点Tp2...T
p4(若しくは持続時間)における合計出力電流により、測定しうる(
図8B)。また、システムは、パルス801〜810のシーケンスにおける最後から2番目の電気パルス(例えば、パルス808)の印加に起因する、バイオセンサからの電流出力I
Nを獲得する。電流出力I
Nは、最後の負のパルス811jの電流出力であってよい。別の方法としては、電流出力I
Nは、時点T
N1...T
N5において測定された出力電流の平均として表してもよい。また、電流出力I
Nは、T
N1〜T
NE、T
N2〜T
NE、T
N3〜T
NE、T
N4〜T
NE、及びT
N5〜T
NE(各持続時間は、両矢印で示されている)からの電流出力の平均又は合計として表してもよい。その後、システムは、等式4、5、6のうち1つ又はそれらの組み合わせにより、第1及び第2の電流出力I
P及びI
Nを用いて、グルコース濃度を測定しうる。システムが2つ又はそれ以上の作用電極を用いている場合、システムは、等式3〜6のうち1つ又はそれらの組み合わせにより、各作用電極から獲得した2つの電流の平均を利用しうる。
【0060】
このシステムでは、バイオセンサ100は、基材を備えていてもよく、基材上に少なくとも2つの電極が3つの電極と共に配置されており、3つのうち1つの電極は、参照電極であり、3つのうち2つの電極は、作用電極である。パルスは、3〜約10のうち任意の数の交互パルスであってよく、正の電気パルスの大きさは、約200ミリボルト〜約600ミリボルトであってよく、負の電気パルスの大きさは、約−200ミリボルト〜約−600ミリボルトであってよく、正又は負の電気パルスの持続時間は、約0.25秒〜約2秒の任意の持続時間であってよい。
【0061】
波形1〜4の校正曲線を獲得して、既知の技法と比較した場合の、新技法の誤差又はバイアスを評価するために、
図5〜8における電流トランジェントに類似する電流トランジェントが、公称血中グルコース濃度50〜600mg/dLの範囲において測定された。電流トランジェントは、次のように分析された。
図4Aにおける既知の定電圧推進電圧の場合、グルコース測定の開始から4.81〜5.00秒の間の平均電流が、グルコース濃度の測定に用いられ、パルス波形1〜3の場合には、2つの電流値が抽出された。第1に、各時間間隔における所定時間(例えば、最後の負のパルスにおける最後の約200ミリ秒)中に測定された平均電流が獲得された。第2に、各時間間隔における所定時間中に測定された平均電流(例えば、最終の正のパルスの最後の約200ミリ秒)が獲得された。これらの電流値は、グルコースの基準測定値を得るために、YSI 2700臨床器具(http://www.ysilifesciences.com/index.php?page=ysi−2700−select−bioprocess−monitoring)を通してYSI LifeSciencesから入手可能)を用いて実施したグルコースの基準測定と共に利用され、この基準測定値と、センサに基づく測定値とが比較されることにより、バイアスデータの提供及びグルコース校正曲線の構築が可能となる(これらの技法は当業者にとって周知であり、簡略化のためにこれ以上の詳細は記述しない)。
【0062】
約70mg/dLの公称血中グルコース濃度において、血液試料に干渉化合物(具体的には、アセトアミノフェン、尿酸、アスコルビン酸及びドーパミン)を混ぜた(
図10〜13)。干渉物質を混ぜた各溶液中において、グルコース値が測定された。波形1の最後の負のパルスを用いて、かつ、波形2,3、及び4の最後の正及び負のパルスを用いて、対照となる校正曲線が獲得され、波形1〜4の正及び負のパルスのそれぞれについて、グルコース濃度が計算された。電流と基準グルコース測定値との相関における非線形性により、すべてのパルス波形の場合に、二次校正が用いられた。
【0063】
対応するグルコース校正曲線を用いて、基準グルコース測定値と比較した誤差又は「バイアス」が、干渉化合物のそれぞれについて測定された。バイアス測定値を、
図10A及び10〜12に示す。更に、干渉物質濃度(尿酸の場合)の増加が、誤差電流低減(mg/dLグルコースにて示される)の有効性に対して与える影響が分析され、その結果が
図10Bに示される。「バイアス」は、YSI基準データムと比較した場合の、グルコース測定値における相対誤差の概算であり、次の形の式によって測定しうる:
式7 バイアス
abs=G
計算−G
参照
75mg/dLグルコース濃度より低いG
参照について。
【0064】
図10A、11〜13、及び10Bに示される結果からは、「パルス状」波形(波形1〜4)の場合においては、単一かつ正の電圧パルス(波形0)の印加から生じる電流反応を用いたグルコース測定の場合に比較して、血液試料中の不可逆的かつ電気化学的な活性干渉化合物の存在に起因する誤差電流、つまりグルコース測定における測定誤差(又は「バイアス」)が低減されていることが分かる。更に、パルス波形の使用は、尿酸レベルをおよそ12mg/dLに添加するまで、尿酸に起因する過誤電流の低減に有効であったが、このレベルを超えた場合には、それ以上の低減は観察されなかった。上述した、それ以上の低減が観察されなくなる上限は、ヒトの血液において典型的に見られる尿酸濃度である3−9mg/dLの範囲を上回っている。
【0065】
尿酸に起因するバイアスについて分析を行った
図10Aに関して、既知の波形「0」は、約40ミリグラムパーデシリットル(「mg/dL」)であり、波形「1」、「2」、「3」及び「4」(各波形は、正の最後のパルス及び最後から2番目の負のパルスを含む)については、パーセントの数字において有利であると出願者が考えるバイアス減少(矢印として表示)が存在している。例えば、
図10Aにおいて、バイアスにおける最大の減少率は、波形4についての約50%であり、最低の減少率は波形3についての約10%である。
図10Aにおける波形1及び2の双方では、約28%のバイアス減少である。更に、出願者は、
図10Bに見られるように、このバイアス減少は、グルコース試料に添加された尿酸量に対して直線的に改善し、1デシリットル当たり約15mgの濃度で限界に達すると思われることに注目する。
【0066】
波形1〜4の試料に尿酸を5.9mg尿酸/dL(又は12.5mg尿酸/dL)で添加した場合、尿酸に起因するバイアスを減少させる能力は、
図10Bにおける波形1〜4のそれぞれにおいて異なる形であることが分かる。波形1について、誤差又はバイアスの減少は、ほぼ1:1の対応関係で、約6mg/dL(又は12mg/dLのバイアス減少)である。波形2について、約5mg/dL〜20mg/dLの量の尿酸が、この波形で用いる試料に添加された場合、1:1よりも更に大きな改善が見られる。それにもかかわらず、波形1及び2の双方において限界があり、約15mg/dLを超える量の尿酸によっては、バイアスの減少において、更なる改善が見られない。波形3は良好なバイアス減少を示す(約12mg/dLの尿酸濃度で約3mg/dL、25mg/dLの尿酸濃度で8mg/dL)一方で、波形1及び2ほど良好ではない。波形4は、13mg/dLまでの尿酸濃度までは、バイアス減少が波形1及び2と概ね一致する。しかしながら、波形4は、尿酸濃度が13mg/dLを超えると、波形1及び2のパフォーマンスに届くことができず、波形3のバイアス減少にほぼ匹敵するのみとなる。
【0067】
グルコース濃度の測定値を基準YSI値よりも低くする傾向のある干渉物質(例えば、ドーパミン)について、誤差の減少(
図11の波形1〜4のそれぞれについて、矢印で示される)は、再び相当に大きくなり、ドーパミンに起因するバイアスが、ほぼすべての波形において少なくとも70%の減少をしたのは、出願者にとって予期しないことであった。例えば、波形1において、基準YSI値よりも約3mg/dL低いグルコース測定値が示される一方で、既知の技法(波形0)では、YSIよりも約14mg/dL低いグルコース測定値が示され、75%のバイアス減少であった。
【0068】
他の干渉物質が検査され、これらの干渉物質についての基準YSIと比較した場合、グルコース測定値又はグルコース測定値のバイアスにおける減少も大きく、予期しないものであった。
図12に示されるとおり、アセトアミノフェン(15mg/dLの濃度)について、波形1、2及び4のグルコース測定値のバイアスにおいて(基準と比較して)少なくとも約20%の減少があった。干渉物質としてのアセトアミノフェン(15mg/dLの濃度)については、バイアスの減少は、最大で約75%(波形4)、及び最小で約50%(波形3)であり、非常に大きい。ここに
図13で示される、干渉物質としてのアスコルビン酸については、バイアスは波形1、2及び4で少なくとも20%減少している。
【0069】
本明細書で記述するシステムによって、グルコース濃度の測定方法が実現されうる。例示的な論理図を
図14に示す。この方法における工程では、工程1402において、バイオセンサの少なくとも2つの電極に近接する試薬上で生理学的流体試料を堆積させることを含みうる。典型的には、流体試料をバイオセンサの試薬と反応させるように、バイオセンサを構成する。特に、初期ポイズ遅延は、開回路の形態で提供される。このポイズ遅延の目的は、初期電圧パルス(正の極性でありうる)の印加前に、試料がグルコース検出反応をウェットアウトするようにして、ピーク電流反応の測定につなげることである。例示的な波形1〜4のそれぞれにおいて、ポイズ遅延が約1秒の持続時間で印加された。しかしながら、グルコース検出反応のウェッティング率によって、例えば、約0.5〜約5秒のポイズ遅延が適切でありうる。工程1404では、この方法は、複数の正及び負の電気パルスを、少なくとも2つの電極に、複数の正の電気パルスと共にシーケンスで印加する工程を含み、シーケンスの最初は正の電気パルスであり、かつ、シーケンスの最後から2番目のパルスは少なくとも1つの正の電気パルスである。好ましい実施形態では、約0.5秒〜約5秒の持続時間を有する正の初期電圧パルスがもたらされることに留意すべきである。このパルスの印加に起因する電流反応は、血中における干渉化合物の直接的酸化を通じて生成される誤差電流を含むと考えられる。正の初期パルス後、システムは、約0.5秒〜約5秒の持続時間を有する少なくとも1つの負の電圧へと切り替わってよい。これらのパルスの印加に起因する電流反応は、血中における干渉化合物の直接的酸化を通じて生成される、低減された誤差電流を含むと考えられる。後続の正及び負のパルス(例えば、
図5A、6A、7A、又は8A)に関して、これらのパルスの印加に起因する電流反応(例えば、
図5B、6B、7B、又は8B)は、血中の干渉化合物の直接的酸化を通じて生成される、低減された誤差電流を含むと考えられる。
【0070】
再び
図14に関して、印加工程1404は、離散時間間隔を通して複数の正の電気パルスを推進し、かつ、各間隔中に、正の電気パルスのそれぞれの電圧が概ね一定の大きさである、工程1406と、少なくとも1つの離散時間間隔を通して少なくとも1つの負の電気パルスを推進し、かつ、少なくとも1つの離散間隔中、少なくとも1つの負の電気パルスの電圧が概ね一定の大きさである、工程1408を更に含むことに留意すべきであり、例示の目的で、
図5A、6A、7A、及び8Aに示す。システムは、その分析物測定において、工程1410若しくは1412のうち1つのみ、又は1410及び1412の双方を用いるように構成されうる。前者の構成で、システムは、工程1410を考慮に入れてよく、システムは、シーケンス中の少なくとも1つの負の電気パルスの印加に起因する、第1の所定時間中のバイオセンサからの第1の電流出力(
図5B、6B、7B、及び8B)の測定をする工程を実行する。別の方法としては、システムは、工程1412のみを考慮に入れてよく、ロジックが、シーケンス中の少なくとも1つの負の電気パルスの印加に起因する、第2の所定時間中のバイオセンサからの第2の電流出力の測定をする工程を実行する。後者の構成においては、システムは、システムが工程1414に移行するにあたり、工程1410及び1412の双方を考慮に入れる。工程1414では、ロジックは、第1及び第2の電流出力のうち少なくとも1つに基づき、グルコース濃度を測定し、工程1416の結果の表示をする(工程1418)。測定工程1416では、試薬との反応において転換した実際のグルコースの比率を代表する、好適な相関関係により、グルコース濃度を測定しうる。この好適な相関関係は、等式3又は等式4を含みうる。本明細書で使用する用語である「表示する」又は「表示」及びその語幹に基づく変形形態は、文章、音声、映像又はそれらのあらゆる情報伝達手段の組み合わせを通じて、ユーザー、ユーザーの介護者、又は医療従事者に対して表示がされうることを意味する。
【0071】
本発明を特定の変形例及び説明図に関して述べたが、当業者には本発明が上述された変形例又は図に限定されないことが認識されよう。加えて、上述した方法及び工程が、所定の順序で起こる所定の事象を示す場合、所定の工程は記載した順序で行われる必要はなく、工程がそれらの意図される目的のために機能できる限り、任意の順序で行われることが意図される。したがって、本開示の趣旨又は特許請求の範囲に見出される本発明の同等物の範囲内にある本発明の変形が存在する範囲では、本特許がこうした変形例をも包含することが意図されるところである。