特許第6282666号(P6282666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イエフペ エネルジ ヌヴェルの特許一覧

特許6282666アルミナゲルからの水素化処理触媒、および該触媒の調製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282666
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】アルミナゲルからの水素化処理触媒、および該触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/19 20060101AFI20180208BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20180208BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20180208BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20180208BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180208BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20180208BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20180208BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   B01J27/19 M
   B01J35/10 301B
   B01J35/10 301J
   B01J37/00 D
   B01J37/03 Z
   B01J37/02 101E
   B01J37/08
   B01J37/10
   C10G45/08 Z
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-544514(P2015-544514)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2015-536823(P2015-536823A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】FR2013052861
(87)【国際公開番号】WO2014083273
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】12/03236
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ドーダン アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デヴァース エロディ
(72)【発明者】
【氏名】レリア マルク−アントワーヌ
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531224(JP,A)
【文献】 特表2004−523340(JP,A)
【文献】 特開2002−035590(JP,A)
【文献】 特開2000−176288(JP,A)
【文献】 特開平04−265158(JP,A)
【文献】 特開2004−043579(JP,A)
【文献】 特開2010−149114(JP,A)
【文献】 特開2007−319844(JP,A)
【文献】 特開2001−162168(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0243530(US,A1)
【文献】 米国特許第05246569(US,A)
【文献】 米国特許第06436280(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0155301(US,A1)
【文献】 米国特許第06589908(US,B1)
【文献】 国際公開第02/009870(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C10G 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、周期表の第VIB族から選択される少なくとも1種の金属および第VIII族から選択される少なくとも1種の金属とを含む触媒であって、酸化物として表される、第VIB族金属の量は、全触媒重量に対して6〜25重量%の範囲であり、酸化物として表される、第VIII族金属の量は、全触媒重量に対して0.5〜7重量%の範囲であり、
前記触媒はさらにリンを含み、ここで、
第VIB族金属はモリブデンであり、
第VIII族金属はコバルトであり、
触媒nm当たりのモリブデンの原子数として表される、モリブデンの密度が3〜5の範囲であり、
Co/Mo原子比が0.3〜0.5の範囲であり、
P/Mo原子比が0.1〜0.3の範囲であり、
前記担体は、少なくとも90重量%のアルミナを含み、前記アルミナは、混練され押出されたベーマイトゲルから得られ、
前記触媒の比表面積は、60〜150/gの範囲である、ガソリンカットの水素化脱硫用触媒。
【請求項2】
酸化物として表される、第VIB族金属の量は、前記触媒の全重量に対して7〜20重量%の範囲であり、酸化物として表される、第VIII族金属の量は、全触媒重量に対して0.5〜5重量%の範囲である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
アルミナ担体は、ガンマ、デルタ、またはシータアルミナを、単独でまたは混合物として含む、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
ン含有量は、全触媒重量に対してPが1〜10重量%の範囲である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1つに記載の触媒の調製方法であって、以下の工程:
a) 酸性アルミニウム塩の水溶液を、アルカリ性溶液と接触させるか、あるいは塩基性アルミニウム塩の水溶液を、アルミニウムを含有しない酸性溶液と接触させるか、あるいは酸性アルミニウム塩の水溶液を、アルミニウム塩のアルカリ性溶液と接触させるかのいずれかを行い、ベーマイトゲルを形成する工程;
b) 工程a)で得られた前記ゲルを混練して、ペーストを得る工程;
c) 工程b)から得られたペーストを成形して、押出物の形態の担体を形成する工程;
d)工程c)から得られたアルミナ担体を熱処理して、比表面積が60〜300m/gの範囲である担体を得る工程;
e) 工程d)から得られたアルミナ担体に、周期表の第VIB族から選択される金属の少なくとも1種の前駆体と、第VIII族から選択される金属の少なくとも1種の前駆体とを含む溶液を含浸させる工程;および
f) 工程e)から得られた、金属を含浸させられた前記担体を熱処理して、比表面積が60〜150/gの範囲の触媒を得る、工程;
を含み、
工程b)において前記ゲルに少なくとも1種のリン前駆体を加えるか、または工程e)において前記溶液に少なくとも1種のリン前駆体を加える、方法。
【請求項6】
工程d)の熱処理は、少なくとも1回の水熱処理工程と、少なくとも1回の焼成工程とを含み、焼成工程は、水熱処理の後に行われ、水熱処理工程は、容器中、水の存在下で、100〜300℃の範囲の温度で、0.5〜8時間の範囲の期間にわたり行われ、焼成工程は、空気中、400〜1500℃の範囲の温度で、1〜8時間にわたり行われる、請求項に記載の調製方法。
【請求項7】
水熱処理は、担体に酸性水溶液を含浸させる含浸工程を含み、その後、前記含浸済み担体を、容器内の温度にまで昇温させる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)の熱処理は、焼成工程のみであり、空気中で、空気中の含水量が0〜50重量%の範囲で、400〜1500℃の範囲の温度で1〜8時間にわたり行われる、請求項に記載の調製方法。
【請求項9】
工程c)で得られた担体は、熱処理工程d)の前に乾燥させられる、請求項5〜8のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項10】
工程f)の熱処理は、80〜200℃の範囲の温度で、金属を含浸させられた担体を乾燥させる少なくとも1回の工程を含み、場合により、その後に、400℃超の温度での焼成工程が行われる、請求項5〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項11】
水素およびガソリンカットが、請求項1〜4のいずれか1つに記載された、あるいは請求項5〜10のいずれか1つに従って調製される触媒と、200〜400℃の範囲温度、1〜3MPaの範囲の全圧、および1〜10h−1の範囲の毎時空間速度(HSV)で接触させられる、前記ガソリンカットの水素化脱硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水素化脱硫に適用される水素化処理触媒、およびこのタイプの触媒の製造方法に関する。本発明はまた、前記触媒を用いる水素化脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製および石油化学品は、今や新たな制約を受けている。実際、全ての国々が、硫黄に関する厳格な規定を採用する方向に進んでおり、その目標は、例えば、欧州および日本において市販のガソリン中、10重量ppmの硫黄含有量を達成することである。硫黄含有量を低減することに伴う問題は、それが接触分解(FCC、流動接触分解)によって行われるのであれ、あるいは非接触分解(コーキング、ビスブレーキング、水蒸気分解)によって行われるのであれ、分解により得られるガソリン、すなわち、ガソリンプール中の硫黄の主な前駆体に実質上集中している。
【0003】
硫黄含有量を低減するための、当業者に周知の解決策の1つは、水素および不均一触媒の存在下で、炭化水素カット(特に、接触分解ガソリン)の水素化処理(または水素化脱硫)を行うことからなる。しかし、この方法は、用いる触媒が十分な選択性を有しない場合、オクタン価の大幅な低減を引き起こすという重大な不利な点を抱えている。このオクタン価の低減は、水素化脱硫と同時に起こる、このタイプのガソリン中に存在するオレフィンの水素化に主に関連する。
【0004】
この問題を解決するために、すなわち、オレフィンの水素化反応と比較して、向上した水素化脱硫(HDS)活性、および水素化脱硫に対して最大の選択性を有する触媒を提供するために、選択的水素化脱硫触媒が開発されている。
【0005】
通常、このタイプの用途に用いられる触媒は、第VIB族元素(Cr、Mo、W)および第VIII族元素(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Pd、Ni、Pt)を含む遷移金属硫化物をベースとする担持型触媒である。従って、特許文献1は、0.5×10−4〜3×10−4gのMoO/mの範囲の表面濃度を有する触媒により、高い選択性(33%のオレフィン水素化に対して93%の水素化脱硫)がもたらされ得ることを特許請求している。更に、特許文献2および特許文献3によると、オレフィンの水素化を制限する目的で、従来の硫化物相(CoMoS)に、ドーパント(アルカリ、アルカリ土類)を添加することが、有利であり得る。
【0006】
触媒に本来備わっている選択性を向上させる別の方法は、触媒表面上の炭素質堆積物の存在を利用することである。従って、特許文献4は、従来のナフサ水素化処理触媒の前処理を行って、ガソリンの水素化処理のためにそれを用いる前にそれを部分的に失活させることを提案している。同様に、特許文献5は、触媒の前処理を行って、3〜10重量%のコークスを堆積させて、触媒性能を向上させることを示している。この場合、C/H比が0.7以下であるべきことが記載されている。
【0007】
選択性を向上させるために、担体の平方メートル当たりの第VIB族元素の酸化物の密度を最適化することも可能である。従って、特許文献6は、担体のm当たりの第VIB族元素の酸化物が4×10−4〜36×10−4gの範囲である表面密度値を推奨している。
【0008】
該触媒に本来備わっている選択性を向上させる別の方法は、リンを添加することである。特許文献7は、触媒の重量に対して、0.5〜10重量%の割合のリンを添加することを提案しており、特許文献8は、0.1〜10%の割合を提案している。リンはまた、特許文献9および特許文献10に例証されているように、炭化水素供給原料の水素化脱硫活性のためのドーパントとして用いられてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5985136号明細書
【特許文献2】米国特許第4140626号明細書
【特許文献3】米国特許第4774220号明細書
【特許文献4】米国特許第4149965号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0745660号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0007504号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0261124号明細書
【特許文献8】米国特許第6746598号明細書
【特許文献9】米国特許第4880525号明細書
【特許文献10】米国特許第5246569号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、精製業者にとって、更により活性で、かつオレフィンの水素化に対して向上したHDS選択性を有する、ガソリンカットの水素化脱硫のための触媒は、未だ大いに興味深いものであり、それ故に、このような触媒は、一旦用いられたら、オクタン価の実質上の低減を伴わず、低い硫黄含有量を有するガソリンを製造するために用いられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従って、担体と、周期表の第VIB族から選択される少なくとも1種の金属および第VIII族から選択される少なくとも1種の金属とを含む触媒を提案しており、酸化物として表される第VIB族金属の量は、全触媒重量に対して6〜25重量%の範囲であり、酸化物として表される第VIII族金属の量は、全触媒重量に対して0.5〜7重量%の範囲であり、担体は、混練され押出されたベーマイトゲルから得られる少なくとも90重量%のアルミナを含み、前記触媒の比表面積は、60〜250m/gの範囲である。
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、アルミナゲル(またはベーマイトゲル)から得られ、比表面積が60〜250m/gの範囲である、アルミナ担体を有する触媒が、オレフィンの水素化と比較して、向上した水素化脱硫活性を有するだけでなく、向上したHDS選択性をも有することを観察した。
【0013】
本発明に関連して、比表面積は、ASTM規格D3663−03(BET法)によって求めた。
【0014】
本発明の触媒は、ガンマ、デルタ、またはシータ相を、単独または混合物として有するアルミナ担体を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、触媒は、リンを更に含み、リン含有量は、全触媒重量に対して、Pが1〜10重量%の範囲である。
【0016】
好ましくは、第VIB族金属は、モリブデンおよびタングステンから選択され、第VIII族金属は、コバルトおよびニッケルから選択される。
【0017】
第VIB族金属の量は、その酸化物が、全触媒重量に対して、好ましくは7〜20重量%の範囲、より好ましくは10〜18重量%の範囲であり、第VIII族金属の量は、その酸化物が、全触媒重量に対して、0.5〜5重量%の範囲である。
【0018】
非常に好ましい実施形態によると、触媒は、押出によって成形されたアルミナゲルから得られる担体と、コバルト、モリブデン、およびリンを含む活性金属相とを含む。好ましくは、触媒のnm当たりのモリブデンの原子数として表されるモリブデンの密度は、3〜5の範囲であり、Co/Mo原子比は、0.3〜0.5の範囲であり、P/Mo原子比は、0.1〜0.3の範囲である。
【0019】
本発明の触媒は、好ましくは、ASTM法D4284を用いて求められる全細孔容積が、0.60〜1.00mL/gの範囲、好ましくは0.70〜0.90mL/gの範囲である。
【0020】
本発明の触媒は、好ましくは、(ASTM法D4284を用いて得られる)平均細孔径が、8nm超、好ましくは10〜50nmの範囲である。
【0021】
本発明の第1の態様によると、向上した選択性を有するHDS触媒が得られる場合、触媒の比表面積は、好ましくは60〜150m/gの範囲である。このように、本発明の第1の態様の好ましい実施形態によると、オレフィンの水素化と比較して向上したHDS選択性を有する水素化脱硫触媒は、押出によって成形されるアルミナゲルから得られる担体と、活性金属相とを含む。この活性金属相は、コバルト、モリブデン、およびリンを含有し、触媒のnm当たりのモリブデンの原子数として表される、モリブデンの密度は、3〜5の範囲であり、Co/Mo原子比は0.3〜0.5の範囲であり、P/Mo原子比は、0.1〜0.3の範囲であり、触媒の比表面積は、60〜150m/gの範囲、好ましくは60〜130m/gの範囲、より好ましくは70〜90m/gの範囲である。
【0022】
本発明の別の態様によると、良好な選択性およびHDS活性の両方を有する触媒が得られる場合、触媒の比表面積は、好ましくは150〜200m/gの範囲である。
【0023】
最後に、本発明の別の態様によると、前記触媒のHDS活性が、その選択性より優先される場合、触媒の比表面積は、好ましくは200〜250m/gの範囲である。
【0024】
このように、本出願人は、一群の新規な水素化脱硫触媒を開発してきた。この触媒の特性は、選択性および活性の観点で、実質的にその比表面積によって容易に改変され得、特に、処理されるべき供給原料および/または工業的制約に応じて、合理的な方法で触媒が選択されるようになされる。例として、高い比表面積(例えば200〜250m/gの範囲)を有し、それ故に水素化脱硫活性を有する触媒は、方法が長期間にわたり操作される場合、有利に働く。実際、活性な触媒を用いることは、同じ供給原料に対して同等の脱硫比を得るために、低温で操作され得ることを意味する。実際、低温で操作することより、一般に、高温で有利に働く触媒上でのコークスの形成による、触媒の失活が制限される。
【0025】
これに対し、処理されるべきガソリンが、殆ど硫黄を含まないが大量のオレフィンを含む場合、代わりに、低い比表面積(例えば60〜150m/g)を有し、それ故にとりわけ選択的である触媒を用いることが可能であり、これにより、オレフィンの水素化が可能な限り制限され、従って、オクタン価が保持される。
【0026】
本発明はまた、触媒の調製方法に関し、これは、以下の工程を含む:
a) 酸性アルミニウム塩の水溶液を、アルカリ性溶液と接触させるか、あるいは塩基性アルミニウム塩の水溶液を、アルミニウムを含有しない酸性溶液と接触させるか、あるいは酸性アルミニウム塩の水溶液を、アルミニウム塩のアルカリ性溶液と接触させるかのいずれかを行って、ベーマイトゲルを形成する工程;
b) 工程a)で得られた前記ゲルを、酸性または塩基性の媒体中で混練する工程;
c) 工程b)で得られた混練済みのゲルを成形して、押出物の形態の担体を形成する工程;
d) 工程c)で得られたアルミナ担体を熱処理して、60〜300m/gの範囲の比表面積の担体を得る工程;
e) 工程d)で得られたアルミナ担体に、周期表の第VIB族から選択された金属の少なくとも1種の前駆体と第VIII族から選択された金属の少なくとも1種の前駆体とを含む水溶液を含浸させる工程;
f) 工程e)で得られた、金属と含浸させられた前記担体を熱処理して、60〜250m/gの範囲の比表面積の触媒を得る工程。
【0027】
好ましい実施形態によると、工程d)の熱処理は、少なくとも1回の水熱処理工程と少なくとも1回の焼成工程とを含み、水熱処理工程は、水の存在下、容器中で、100〜300℃の範囲の温度で0.5〜8時間にわたり行われ、焼成工程は、水熱処理工程の後、空気中、400〜1500℃の範囲の温度で1〜8時間にわたり行われる。
【0028】
本発明の水熱処理は、担体に、酸性水溶液を含浸させる工程を含んでよく、その後、前記含浸済み担体を容器中の温度にまで昇温させる。
【0029】
別の実施形態によると、工程d)の熱処理は、空気中、空気中の含水量が0〜50重量%の範囲で、400〜1500℃の範囲の温度で、1〜8時間にわたり行われる焼成工程である。
【0030】
好ましくは、成形された担体は、熱処理工程d)の前に乾燥させられる。
【0031】
処理工程f)は、80〜200℃の範囲の温度で、金属を含浸させられた担体を乾燥させる少なくとも1回の工程を含み、場合により、その後、400℃超の温度で焼成する工程が行われる。好ましい実施形態によると、担体上への金属の含浸後、本発明の触媒調製方法は、熱処理工程を含み、これは、80〜200℃の範囲の温度での乾燥工程を含み、その後、400℃超の温度での焼成工程が行われる。
【0032】
最後に、本発明は、ガソリンカットの水素化脱硫方法に関し、該方法において、水素および前記ガソリンカットは、200〜400℃の範囲の温度、1〜3MPaの範囲の全圧で、毎時空間速度(HSV、触媒の体積に対する供給原料の体積流量として規定される)が1〜10h−1の範囲で、本発明による触媒と接触させられる。好ましくは、本発明の触媒、特に、オレフィンの水素化と比較して高いHDS選択性を有する触媒を用いる、ガソリンの水素化脱硫は、以下の条件下で行われる:
・230〜330℃の範囲の温度;
・1.5〜2.5MPaの範囲の全圧;
・2〜6h−1の範囲の毎時空間速度(HSV);
・100〜500NL/Lの範囲の、水素/ガソリン供給原料の体積比。
【0033】
本発明の触媒は、水素化脱硫方法において用いられる前に、硫化工程に付されて、酸化物形態の金属が、硫化物形態に変えられる。この活性化工程は、有利には、スルホ−還元雰囲気(sulpho-reducing atmosphere)中で行われ、これは、当業者に知られる任意の方法を用いて、現場で(水素化脱硫装置内で)または現場外で(水素化脱硫装置外で)行われる。例として、現場での硫化は、水素および供給原料の存在下で行われ、供給原料は、硫化水素の形態の硫黄を遊離させることが可能な硫化剤からなる。
【0034】
水素化脱硫方法は、接触分解装置から得られるガソリン(FCCガソリン)を処理するのに特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
アルミナゲルを得る方法(触媒調製方法の工程a))
本発明の触媒は、ベーマイトとしても知られる、アルミニウムオキシ水酸化物(aluminium oxy(hydroxide))(AlO(OH))タイプの前駆体を実質的に含有するゲル化アルミナ(またはアルミナゲル)から得られるアルミナ担体を含む。
【0036】
本発明によると、アルミナゲル(ベーマイトゲルとしても知られる)は、pHの変化によって誘発されるアルミニウム塩の塩基性および/または酸性溶液の沈殿によって、あるいは当業者に知られる任意の方法によって合成される(P. Euzen、 P. Raybaud、 X. Krokidis、 H. Toulhoat、 J.L. Le Loarer、 J.P. Jolivet、 C. Froidefond、 Alumina、 in Handbook of Porous Solids、 Eds F. Schuth、 K.S.W. Sing、 J. Weitkamp、 Wiley-VCH、 Weinheim、 Germany、 2002、 pp. 1591-1677)。
【0037】
通常、沈殿反応は、5〜80℃の範囲の温度、および6〜10の範囲のpHで行われる。好ましくは、温度は35〜70℃の範囲であり、pHは6〜10の範囲である。
【0038】
1つの実施形態によると、アルミナゲルは、酸性アルミニウム塩の水溶液を、塩基性溶液と接触させることにより得られる。例として、酸性アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、または塩化アルミニウムによって構成される群から選択され;好ましくは、前記酸性塩は、硫酸アルミニウムである。塩基性溶液は、好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択される。
【0039】
あるいは、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムによって構成される群から選択されてよいアルミニウム塩のアルカリ性溶液は、酸性溶液と接触させられてよい。非常に好ましい変形例において、ゲルは、アルミン酸ナトリウム溶液を、硝酸と接触させることによって得られる。アルミン酸ナトリウム溶液は、有利には、10−5〜10−1モル/Lの範囲の濃度を有し;好ましくは、この濃度は、10−4〜10−2モル/Lの範囲である。
【0040】
別の実施形態によると、アルミナゲルは、酸性アルミニウム塩の水溶液を、アルミニウム塩のアルカリ性溶液と接触させることによって得られる。
アルミナゲルの混練(触媒調製方法の工程b))
沈殿工程後に得られたアルミナゲルは、次いで、好ましくは酸性媒体中で混練工程に付される。用いられる酸は、例えば硝酸であってよい。
【0041】
この工程は、Zアーム式混合器(Z arm mixers)、粉砕・混合器、ならびに連続式の単軸または二軸スクリュー等の知られたツールを用いて行われ、これにより、ゲルは、粘稠性を有するペーストの生産物に変えられる。
【0042】
有利な実施形態によると、「細孔形成剤」として知られる1種以上の化合物を、混合媒体に添加してよい。これらの化合物は、加熱時分解し、それ故に担体中に多孔性を生じさせる特性を有する。例として、木粉、木炭、タール、またはプラスチック材料を用いることが可能である。
ペーストの成形(触媒調製方法の工程c))
混練後に得られたペーストは、押出ダイ中を通過させられる。通常、押出物の直径は、0.4〜100mmの範囲であり、好ましくは0.5〜100mmの範囲、より好ましくは0.5〜10mmの範囲、より一層好ましくは0.4〜4mmの範囲である。これらの押出物は、円柱状または多葉状(例えば三葉状または四葉状)であってよい。
【0043】
成形後、担体は、方法の工程d)の熱処理に付される前に、場合により乾燥させられる。例として、乾燥は、100〜200℃の範囲の温度で行われる。
アルミナ担体の熱処理(触媒調製方法の工程d))
押出済みの担体は、次いで、熱処理工程に付される。この工程は、想定される用途に適した物理的特性を有する担体を提供するために用いられ得る。
【0044】
従って、本発明によると、熱処理は、ASTM規格D3663−03を用いて測定される比表面積が、一般に60〜300m/gの範囲である担体を得るために用いられ得る。
【0045】
第1の実施形態によると、熱処理は、少なくとも1回の水熱処理工程と、少なくとも1回の焼成工程とを含み、焼成工程は、水熱処理工程の後に行われる。
【0046】
用語「水熱処理」は、水の存在下、周囲温度を超える温度で、オートクレーブ中を通過させることによる処理を示すために用いられる。
【0047】
この水熱処理中、成形済みのアルミナは、様々な方法で処理されてよい。従って、アルミナをオートクレーブ中に通過させる前に、アルミナに酸性溶液を含浸させてよく、アルミナの水熱処理は、蒸気相中または液相中のいずれかで行われてよく;オートクレーブの該蒸気相または液相は、酸性であってもなくてもよい。水熱処理前の、この含浸は、乾式で、あるいはアルミナを酸性水溶液中に浸すことによって行われてよい。用語「乾式含浸」は、アルミナを、処理されるアルミナの全細孔容積以下の容積の溶液と接触させることを意味するために用いられる。好ましくは、含浸は、乾式で行われる。
【0048】
押出済みの担体を、酸性溶液との事前含浸を行わずに処理することも可能であり、この場合、酸度は、オートクレーブの水性液体によって提供される。
【0049】
酸性水溶液は、押出物のアルミナの少なくとも一部を溶解することが可能な酸性化合物を少なくとも1種含む。用語「押出物のアルミナの少なくとも一部を溶解することが可能な酸性化合物」とは、アルミナ押出物と接触させられると、アルミニウムイオンの少なくとも一部を溶解させる、任意の酸性化合物を意味する。好ましくは、その酸が、アルミナ押出物中のアルミナの少なくとも0.5重量%を溶解させるものとする。
【0050】
好ましくは、この酸は、硝酸、塩酸、過塩素酸、または硫酸などの強い酸、あるいは、酢酸などの弱い酸、もしくは、これらの酸の混合物から選択され、その水溶液が4未満のpHを有するような濃度で用いられる。
【0051】
好ましい実施形態によると、水熱処理は、単独または混合物として用いられる、硝酸および酢酸の存在下で行われる。オートクレーブは、好ましくは、特許出願EP−A−0387109に規定されたような回転バスケット型オートクレーブである。
【0052】
水熱処理は、飽和蒸気圧下、または処理温度に相当する飽和蒸気圧の少なくとも70%に等しい水蒸気の分圧下で行われてもよい。
【0053】
好ましくは、水熱処理は、100〜300℃の範囲の温度で0.5〜8時間にわたり行われる。
【0054】
この第1の実施形態のオートクレーブ処理の後に行われる焼成工程は、一般に400〜1500℃の範囲、好ましくは800〜1300℃の範囲の温度で、1〜8時間にわたり空気中で、一般に0〜50重量%の範囲の含水量で行われる。
【0055】
例として、熱処理工程d)のこの第1の実施形態を例証するために、工程c)から得られた乾燥済みの担体は、連続して、第1の焼成工程、その後の水熱処理工程、および最後の第2の焼成工程に付される。
【0056】
工程d)の、変形例としての、第2の実施形態によると、成形後、担体は、焼成熱処理のみに付され、すなわち、この焼成の前後には水熱処理がない。これは、一般に400〜1500℃の範囲、好ましくは500〜1200℃の範囲の温度で、1〜8時間にわたり空気中で、一般に0〜50重量%の範囲の含水量で行われる。この実施形態において、所望の最終焼成温度に到達するまで温度段階を上昇させる際に、焼成工程を数回行うことも可能である。
【0057】
最後に、工程d)の熱処理の終了時には、担体の比表面積は、一般に60〜300m/gの範囲である。担体は、デルタ、ガンマ、またはシータアルミナ型の結晶学的(crystallographic)構造を、単独であるいは混合物として、有する。異なる結晶学的構造の存在は、主に、工程d)の熱処理を行うための条件、とりわけ最終焼成温度に関連付けられる。
担体上への金属の担持(方法の工程e))
この工程は、少なくとも1種の第VIII族金属および少なくとも1種の第VIB族金属を、例えば、選択された担体上へのこれらの元素の含浸によって担持させることからなる。この含浸は、例えば、乾式含浸として当業者に知られる様式を用いて行ってよく、ここで、所望量の元素が、選択された溶媒、例えば鉱質除去水中に可溶な塩の形態で導入され、これにより、できる限り正確に担体の細孔が満たされる。このようにして溶液で満たされた担体は、好ましくは、周囲温度で、水で飽和された閉鎖型の容器中で熟成させられ、これにより、担体の細孔中に含まれる含浸溶液の均一な分散が可能となる。
【0058】
第VIII族金属(元素周期分類の新表記法の第8、9、または10族:Handbook of Chemistry and Physics, 76thedition, 1995-1996)は、好ましくはコバルトおよびニッケルから選択される。
【0059】
第VIB族金属(元素周期分類の新表記法の第6族:Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition,1995-1996)は、好ましくはモリブデンおよびタングステンから選択される。
【0060】
例として、担持に用いられてよい第VIB族および第VIII族からの金属の塩は、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、七モリブデン酸アンモニウム、またはメタタングステン酸アンモニウムである。しかし、十分な溶解性を有する任意の別の前駆体も用いられてよい。また、金属の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、およびカルボン酸塩を用いることも可能である。
【0061】
好ましい実施形態によると、触媒は、リンを更に含む。リン元素は、例えば、リン酸の形態で提供されてよく、例えば、第VIII族および第VIB族の金属を含む含浸溶液に添加されてよく、あるいはまた、担体の合成時に添加されてよい(例えば、共混合(co-mixing)によって)。
【0062】
含浸溶液中の金属前駆体の溶解を促進するために、1種以上の有機酸、例えば、酢酸、クエン酸、シュウ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはトリニトロ酢酸(NTA)が、前記溶液に添加されてよい。
方法の金属を含む触媒の熱処理(工程f)
この工程は、含浸工程e)の後、触媒を乾燥させることからなり、これにより、担体の細孔中に存在する残留水が除去される。乾燥は、80〜200℃の間で行われる。
【0063】
400℃超の温度での、任意の最終の焼成工程は、乾燥工程後に適用されてよい。この最終工程は、窒素酸化物の形態の、硝酸コバルトおよび/または七モリブデン酸アンモニウムのタイプの前駆体の使用中に存在する、窒素含有種を除去するために特に用いられてよい。
【0064】
最後に、調製方法は、比表面積が60〜250m/gの範囲であり、以下の量の金属を含む、触媒を得るために用いられ得る:
・全触媒重量に対して6〜25重量%の第VIB族金属の酸化物;
・全触媒重量に対して0.5〜7重量%の酸化物の第VIII族金属;
・全触媒重量に対して1〜10重量%のP
【実施例】
【0065】
実施例1(比較例):ハイドラージライト(hydrargillite)の迅速な分解によるアルミナS1、S2、およびS3(フラッシュ(flash)アルミナとして知られる)の調製、成形および熱処理の条件
第1の工程は、高温(800℃)かつ短い接触時間(0.8秒)での、ギブス石(gibbsite)の迅速な脱水からなり、これにより、カイ(Khi)遷移アルミナ粉末を得た。水による洗浄を行って、NaO含有量を低減させ(3kg/(Alのkg))、その後、先行する処理と同様の、第2の迅速な脱水処理を行い、これによりアルミナ粉末を得た。この粉末を、次いでボウル造粒機中でビーズ状に成形した。このようにして得たビーズを、150℃で乾燥させ、次いで500℃で焼成し、担体S1を得た。
【0066】
乾燥後のこの担体を、水の高い分圧(100%)で8時間にわたり水熱処理を施し、その後、それぞれ650℃および850℃で焼成することにより、担体S2およびS3を得た。
【0067】
ASTM規格D3663−03に従って、窒素中で、担体S1、S2、およびS3の比表面積を求めた。ASTM規格D4284−03に従って(濡れ角は140°)、水銀ポロシメトリにより全細孔容積を求めた。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例2(本発明に合致する):沈殿によるアルミナS4〜S8(アルミナゲルと称される)の調製、成形および熱処理条件
アルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムの混合物によってアルミナゲルを合成した。沈殿反応を、60℃の温度、9のpHで、60分間にわたり200rpmで撹拌しながら行った。これにより得たゲルを、Zアーム式混合器で混練に付し、これによりペーストを得た。このペーストを、直径1.6mmのオリフィスが設けられたダイ中に通過させることによって押出を行い、三葉状の形態の押出物を得た。このようにして得た押出物を、150℃で乾燥させ、次いで乾燥空気中、450℃で焼成した。この担体をS4と表示した。
【0070】
我々は、担体S4から出発し、担体S5、S6、S7、およびS8を調製した。
【0071】
担体S4を、650℃で、6.5重量%の酢酸水溶液の存在下、3時間にわたりオートクレーブ中で水熱処理した後、乾燥空気中、1000℃で2時間にわたり管型反応器中で焼成して、担体S5を得た。
【0072】
担体S4を、担体S5の条件と同一条件下で水熱処理した後、乾燥空気中、850℃で2時間にわたり管型反応器中で焼成して、担体S6を得た。
【0073】
担体S4を、乾燥空気中、1050℃で2時間にわたり管型反応器中で焼成することにより、担体S7を得た。
【0074】
担体S4を、湿潤空気(50%の水分/乾燥空気のkg)中、850℃で2時間にわたり管型反応器中で焼成した後に、担体S8を得た。
【0075】
ASTM規格D3663に従って、窒素中で担体の比表面積を求めた。ASTM規格D4284(濡れ角は140°)に従って、水銀ポロシメトリにより担体の全細孔容積を求めた。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例3(比較例):CoMoP/フラッシュアルミナ触媒A1、A2、およびA3の合成
酸化モリブデン、水酸化コバルト、およびリン酸から調製した水溶液の乾式含浸によって、触媒A1、A2、およびA3を得た。コバルト、モリブデン、およびリン前駆体を含有する前記溶液の体積は、アルミナ担体質量の細孔容積に厳密に等しかった。水溶液中の前駆体の濃度を調節して:
・触媒のnm当たりのモリブデン原子が約4個である、モリブデンの表面密度、および
・それぞれ、0.3および0.15に等しい、Co/Mo原子比およびP/Mo原子比、
を得た。
【0078】
12時間にわたる熟成工程の後、固体を、120℃で12時間にわたり乾燥させた。次いで固体を、450℃で2時間にわたり焼成した。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例4:CoMoP/アルミナゲル触媒(本発明に合致する)の合成
酸化モリブデン、水酸化コバルト、およびリン酸から調製した水溶液の乾式含浸によって、触媒A4、A5、A6、A7、およびA8を得た。コバルト、モリブデン、およびリン前駆体を含有する前記溶液の体積は、アルミナ担体質量の細孔容積に厳密に等しかった。水溶液中の前駆体の濃度を調節して:
・触媒のnm当たりのモリブデン原子が約4個である、モリブデンの表面密度、および
・それぞれ、0.3および0.15に等しい、Co/Mo原子比およびP/Mo原子比、
を得た。
【0081】
12時間にわたる熟成工程後、固体を、120℃で12時間にわたり乾燥させた。次いで、固体を、450℃で2時間にわたり焼成した。
【0082】
【表4】
【0083】
実施例5:触媒A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、およびA8の評価
10重量%の2,3−ジメチルブタ−2−エンおよび0.33重量%の3−メチルチオフェン(すなわち、供給原料中1000重量ppmの硫黄)を含有する接触分解ガソリン(FCC)を表すモデル供給原料を用いて、各触媒の触媒性能を評価した。用いた溶媒はヘプタンであった。
【0084】
全圧1.5MPaの固定横断床反応器中、210℃で、4mLの触媒の存在下HSV=6h−1(HSV=供給原料の体積流量/触媒体積)で、水素化脱硫(HDS)反応を操作した。HDS反応の前に、触媒を、現場で、450℃で2時間にわたり、15モル%のHSを含有するHの流れ中、大気圧で硫化した。
【0085】
各触媒を、前記反応器内に相次いで置いた。種々の時間間隔でサンプルを取り出し、気相クロマトグラフィーによって分析し、試薬の消失および生成物の形成を観察した。
【0086】
触媒活性および選択性から、触媒の触媒性能を評価した。HDS活性は、硫黄含有化合物について一次反応速度則を想定して、導入した触媒の体積によって正規化した3−メチルチオフェンのHDS反応の反応速度定数(kHDS)を用いて表した。活性HydOは、オレフィンについて一次反応速度則を想定して、導入した触媒の体積によって正規化したオレフィン水素化反応(HydO)(すなわち今回の場合、2,3−ジメチルブタ−2−エンの水素化反応)の反応速度定数(kHydO)を用いて表した。
【0087】
触媒選択性は、反応速度定数を正規化した比、kHDS/kHydOとして表した。比kHDS/kHydOは、触媒がより選択的である場合、より高くなるであろう。このことは、2,3−ジメチルブタ−2−エンの制限された水素化を表す。
【0088】
担持触媒のHDS活性および選択性を表5および6に示す。触媒A1を基準として用いて、値を正規化した。すなわち、触媒A2〜A8のHDS活性および選択性を、触媒A1のHDS活性および選択性を100と定めて、比較した。
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
触媒A4〜A8(本発明に合致する)に関し、高い比表面積を有する触媒(A4)は、低および中程度の比表面積を有する触媒(A5〜A8)と比較して、僅かに低い選択性を有していることを観測した。これに対し、触媒A4は、低および中程度の比表面積を有するホモロジーと比較して、より高い水素化脱硫活性を有している。
【0092】
高い比表面積を有する触媒A4(本発明に合致する)は、実質上同等の比表面積を有するがフラッシュアルミナ担体を有する触媒A1と比較すると、選択性およびHDS活性の観点で、より良好であるであることが分かるであろう。
【0093】
低い比表面積を有する本発明の触媒(A5、A6、A7、A8)を、従来技術の触媒A2およびA3(フラッシュアルミナ担体)と比較すると、本発明の触媒の選択性および活性が向上していることがわかるであろう。