特許第6282693号(P6282693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282693減圧治療および創面切除用のシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282693
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】減圧治療および創面切除用のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20180208BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20180208BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61M27/00
   A61M1/00 130
   A61F13/00 301J
   A61F13/00 301Z
   A61L15/42 320
   A61L15/44 200
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-128285(P2016-128285)
(22)【出願日】2016年6月29日
(62)【分割の表示】特願2014-528439(P2014-528439)の分割
【原出願日】2012年8月17日
(65)【公開番号】特開2016-214892(P2016-214892A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年6月29日
(31)【優先権主張番号】61/529,510
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー マーク
(72)【発明者】
【氏名】マクナルティ,エイミー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−506878(JP,A)
【文献】 特表2011−503552(JP,A)
【文献】 特表2008−509923(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/132605(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/040020(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/025219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
A61L 15/16 − 15/64
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位の治療領域を創面切除するための減圧治療システムにおいて、
前記治療領域を被覆するように適合された多孔質の親水性発泡体であって、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含む多孔質の親水性発泡体と;
前記多孔質の親水性発泡体を被覆しかつ前記組織部位に減圧を分配するように適合されたマニホールドと;
前記組織部位およびマニホールドを覆って配置するためのシーリングドレープであって、前記組織部位およびマニホールドを覆って流体シールを形成するように適合されたシーリングドレープと
を含むことを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧治療システムにおいて、さらに、前記マニホールドに減圧を供給するための減圧インターフェースを含むことを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の減圧治療システムにおいて、前記ブロック化された酸性創傷清拭剤がαヒドロキシ酸を含むことを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項4】
請求項3に記載の減圧治療システムにおいて、前記ブロック化された酸性創傷清拭剤が乳酸アルギニン、および/またはグリコール酸アルギニンを含むことを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項5】
請求項1または請求項1乃至4の何れか1項に記載の減圧治療システムにおいて、前記多孔質の親水性発泡体が、創傷液にさらされることに応答して、時間が経つにつれて軟化してバラバラになるように適合されていることを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項6】
請求項5または請求項1乃至5の何れか1項に記載の減圧治療システムにおいて、前記多孔質の親水性発泡体が軟化した後で、前記マニホールドが、前記多孔質の親水性発泡体を吸収するように適合されていることを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項7】
請求項1または請求項1乃至6の何れか1項に記載の減圧治療システムにおいて、前記マニホールドが、創面切除された壊死組織を吸収するように適合されていることを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項8】
請求項1または請求項1乃至7の何れか1項に記載の減圧治療システムにおいて、前記多孔質の親水性発泡体が、予め形成されたシートであることを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項9】
請求項1または請求項1乃至8の何れか1項に記載の減圧治療システムにおいて、さらに、前記多孔質の親水性発泡体と前記マニホールドとの間に中間発泡層を含むことを特徴とする、減圧治療システム。
【請求項10】
組織部位を治療しかつ治療領域を創面切除するための減圧創傷ドレッシングの製造方法において、
多孔質の親水性発泡体を提供するステップであって、
前記多孔質の親水性発泡体が前記治療領域を被覆するように適合されており、かつ
前記多孔質の親水性発泡体が、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含むステップと;
マニホールドを提供するステップであって、前記マニホールドが、前記多孔質の親水性発泡体を被覆しかつ前記組織部位に減圧を分配するように適合されているステップと;
前記組織部位およびマニホールドを覆って配置するためのシーリングドレープを提供するステップであって、前記シーリングドレープが、前記組織部位およびマニホールドを覆って流体シールを形成するように適合されているステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、さらに、前記多孔質の親水性発泡体と前記マニホールドとの間に配置する中間発泡層を提供するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、前記ブロック化された酸性創傷清拭剤がαヒドロキシ酸を含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記ブロック化された酸性創傷清拭剤が乳酸アルギニン、および/またはグリコール酸アルギニンを含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項10または請求項11乃至13の何れか1項に記載の方法において、創傷液にさらされることに応答して、前記多孔質の親水性発泡体が、時間が経つにつれて軟化してバラバラになるように適合されていることを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項10または請求項11乃至14の何れか1項に記載の方法において、前記多孔質の親水性発泡体が軟化した後に、前記マニホールドが、前記多孔質の親水性発泡体を吸収するように適合されていることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、35 USC § 119(e)下において、2011年8月31日出願の米国仮特許出願第61/529,510号明細書(「Reduced−Pressure Treatment and Debridement Systems and Methods」)の利益を主張し、この文献をあらゆる目的のために本願明細書に援用する。
【0002】
本開示は、概して治療システムに関し、より詳細には、限定するものではないが、減圧治療およびデブリードマン(debridement)システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験および実習から、組織部位に近接して減圧をもたらすことによって、組織部位における新しい組織の成長を増強および加速することが示されている。この現象の適用は多数あるが、減圧を行うことは、創傷の治療においてかなり成功している。この治療(医学界では「陰圧閉鎖療法」、「減圧療法」、または「真空療法」と呼ばれることが多い)はいくつもの利点を提供し、それら利点には、迅速な治癒や肉芽組織の形成加速化が含まれる。
【発明の概要】
【0004】
例示的実施形態によれば、組織部位の治療領域を創面切除(debriding)するための減圧治療システムが開示されている。減圧治療システムは、治療領域を被覆するように適合されているヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、ブロック化された酸性創傷清拭剤(blocked acid debriding agent)を含む。減圧治療システムは、ヒドロゲルを被覆しかつ組織部位に減圧を分配するように適合されているマニホールドを含む。減圧治療システムはまた、組織部位およびマニホールドを覆って配置しかつ流体シールを形成するためのシーリングドレープを含む。
【0005】
例示的実施形態によれば、組織部位を治療しかつ治療領域を創面切除するための減圧創傷ドレッシングの製造方法が提供される。この方法は、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含みかつ治療領域を被覆するように適合されたヒドロゲルを提供するステップを含む。製造方法は、ヒドロゲルを被覆しかつ組織部位に減圧を分配するように適合されたマニホールドを提供するステップを含む。製造方法はまた、組織部位およびマニホールドを覆って配置するためのシーリングドレープを提供するステップを含む。シーリングドレープは、組織部位およびマニホールドを覆って流体シールを形成するように適合されている。
【0006】
例示的実施形態によれば、患者の組織部位の治療方法も提供される。この方法は、組織部位の一部分にヒドロゲルを適用することによって、治療領域を画定するステップであって、治療領域が、創面切除されるべき組織を含むステップを含む。この方法は、ヒドロゲルを覆ってマニホールドを適用するステップを含む。マニホールドは、組織部位に減圧を供給するように適合されている。この方法は、組織部位およびマニホールドを覆ってシーリングドレープを適用し、組織部位およびマニホールドを覆って流体シールを形成するステップと、マニホールドに減圧をもたらすステップとを含む。
【0007】
例示的実施形態によれば、減圧創傷ドレッシングが開示されている。減圧創傷ドレッシングは、組織部位の治療領域を被覆するように適合されているヒドロゲルを含み、およびヒドロゲルは、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含む。減圧創傷ドレッシングはまた、ヒドロゲルを被覆しかつ組織部位に減圧を分配させるように適合されたマニホールドを含む。さらに、減圧創傷ドレッシングは、組織部位およびマニホールドを覆って配置するためのシーリングドレープを含む。シーリングドレープは、組織部位およびマニホールドを覆って流体シールを形成するように適合されている。
【0008】
例示的実施形態の他の特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を参照することにより、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、創傷から壊死組織を除去するために改良型の自己融解デブリードマンを用いる減圧治療システムの、一部分を断面にして示す、概略的な側面図である。
図2図2は、壊死組織を有する創傷床の、一部分を断面にして示す、概略的な側面斜視図であり、ブロック化された酸性創傷清拭剤の創傷床への適用を示す。
図3図3は、図1の減圧治療システムによって治療されている創傷床の、一部分を断面にして示す、概略的な側面図である。
図4図4は、図1の減圧治療システムによって治療されている創傷床の、一部分を断面にして示す、概略的な側面図であり、ヒドロゲルが軟化した状態を示す。
図5図5は、図1の減圧治療システムによる治療の最後における創傷床の概略的な断面図である。
図6図6は、ブロック化された酸性創傷清拭剤および中間発泡層によって被覆されている壊死組織を有する創傷床の概略的な断面図である。
図7図7は、創傷から壊死組織を除去するために改良型の自己融解デブリードマンを用いる減圧治療システムの概略的な断面図である。
図8図8は、創傷から壊死組織を除去するために改良型の自己融解デブリードマンを用いる減圧治療システムの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の例示的かつ非限定的な実施形態の詳細な説明において、本明細書の一部をなす添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分な程度、詳細に説明し、および本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに、他の実施形態を使用し得ること、および論理的な構造上の、機械的な、電気的なおよび化学的な変更がなされ得ることが理解される。当業者が、本明細書で説明する実施形態を実施できるようにするのに必要ではない詳細に関する説明を避けるために、当業者に公知の特定の情報に関する説明を省略し得る。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定的ととられるべきではなく、例示的実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0011】
ここで主に図1を参照すると、組織部位102、例えば創傷104を治療する減圧治療システム100が示されている。創傷、すなわち組織の損傷部位の病因は、外傷、手術、または別の原因であり、1つまたは複数の創傷の適切な処置が、結果にとって重要である。創傷104は、限定されるものではないが、組織でのなんらかの不規則さ、例えば開放創、外科的切開、または病変組織を含み得る。減圧治療システム100を、表皮106、すなわち一般的に皮膚、および真皮108を通過して、皮下組織(hypodermisまたはsubcutaneous tissue)110に達する創傷104を含む組織部位102との関連で示す。減圧治療システム100を使用して、あらゆる深さの創傷ならびに開放創または他の組織部位を含む多くの異なるタイプの創傷を治療し得る。組織部位102は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯、または任意の他の組織を含む、任意のヒト、動物、または他の生物の体の組織とし得る。組織部位102の治療は、流体、例えば滲出液や腹水の除去を含み得る。他に指定のない限り、本明細書において、「または」は相互排他性である必要はない。
【0012】
創傷104は壊死組織112を含んでもよく、および多くの場合、創傷104の治癒を促進するために壊死組織112を除去することが望ましいとし得る。例示的かつ非限定的な実施形態では、創傷内に局所的なまたは分離した別個の壊死組織112の領域を有する創傷104との関連で、減圧治療システム100を示す。減圧治療システム100を、望ましくない組織を有するいずれかの組織部位を含む、広い意味で使用してもよい。そのような望ましくない組織は、壊死組織、損傷組織、感染組織、汚染組織、または癒着組織、創傷104内の異物を含み、かつ創傷104の全表面を被覆する壊死組織112の層を含み得る。同時に、創傷104に減圧を行うことが望ましい。
【0013】
減圧治療システム100は、減圧創傷ドレッシング101および減圧サブシステム118を含む。減圧創傷ドレッシング101は、マニホールド114およびシーリングすなわちシーリングドレープ116を含む。減圧創傷ドレッシング101はまた、シーリングドレープ116を患者の表皮106に付着させる取付装置120を含み得る。シーリングドレープ116はまた、取付装置を必要とせずに患者の表皮106に直接シールする接着面を含み得る。マニホールド114は、シーリングドレープ116の組織対向面122と組織部位102との間に位置決め可能である。
【0014】
マニホールド114は、組織部位102に対して減圧を行う、流体を供給する、または組織部位102から流体を除去するのを支援するために設けられる物体または構造である。マニホールド114は、一般に、マニホールド114の周りの組織部位102に提供されかつそこから除去される流体を分配する複数の流路または流れ経路を含む。例示的かつ一実施形態では、流路または流れ経路は相互に接続されて、組織部位102に提供されるまたはそこから除去される流体の分配を改善する。マニホールド114は、組織部位102と接触して配置されかつ組織部位102に減圧を分配することができる生体適合性材料としてもよく、および、限定されるものではないが、流路を形成するように配置された構造要素などを有する装置、例えば、気泡質の発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、および流路を含むまたは硬化して流路を含む発泡体など;発泡体、ガーゼ;フェルトのマット;または特定の生物学的適用に好適な任意の他の材料を含み得る。一実施形態では、マニホールド114は多孔質発泡体であり、かつ流路の機能を果たす複数の連続気泡または細孔を含む。多孔質発泡体は、ポリウレタンの連続気泡の網状発泡体、例えばKinetic Concepts,Incorporated(San Antonio、Texas)製のGranuFoam(登録商標)材とし得る。場合によっては、マニホールド114は、薬剤、抗菌薬、成長因子、および様々な溶液などの流体を組織部位102に分配するためにも使用し得る。マニホールド114にまたはマニホールド114上に、吸収材料、ウィッキング材料、疎水性材料、および親水性材料などの他の層も含まれ得る。
【0015】
例示的かつ非限定的な一実施形態では、マニホールド114は、減圧創傷ドレッシング101の使用後に患者の体に置いたままにしてもよい生体再吸収性材料から構成され得る。好適な生体再吸収性材料は、限定されるものではないが、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのポリマーブレンドを含み得る。ポリマーブレンドはまた、限定されるものではないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、およびカプララクトン(capralactone)を含み得る。マニホールド114は、新しい細胞増殖のための足場としての機能をさらに果たしてもよいし、または細胞増殖を促進するためにマニホールド114と足場材料が一緒に使用されてもよい。足場は、細胞増殖または組織形成を増進させるまたは促進するのに使用される物体または構造であり、例えば、細胞増殖のテンプレートを提供する三次元の多孔質構造である。足場材料の例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルヒドロキシアパタイト(coral hydroxy apatite)、カーボネート、または加工された同種移植片材料を含む。
【0016】
減圧創傷ドレッシング101は、好ましくは、ブロック化された酸性創傷清拭剤を有するヒドロゲル126を含む。ヒドロゲル126は、壊死組織112を含む治療領域130の上側を覆って適用される。ここで、「治療領域」は、ヒドロゲル126によって被覆される組織部位の部分を指す。ヒドロゲル126は、創傷の健康状態を改善するために壊死組織112の創面切除を支援する。例示的かつ非限定的な実施形態では、ヒドロゲル126は、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含む。ヒドロゲル126は、様々な水溶性または水膨潤性ポリマー、例えばガム(例えば、キサンタンおよびグアー)、またはセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシセルロース)、または他の合成ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ならびにカルボキシまたはヒドロキシ変性アクリルおよびポリウレタン)から形成し得る。一実施形態では、ヒドロゲルは、プロピレングリコール中でポロキサマーとカルボキシメチルセルロースを一緒にスラリーにしてから、水を添加することによって形成され得る。スラリーは、高速で混合されてもよく、および遠心分離機を使用することにより、混合物から気泡を除去できる。所望により、1種または複数種の創傷清拭剤をゲル混合物に添加できる。
【0017】
本明細書では、用語「創面切除」、「創傷清拭」、および「デブリードマン」は、望ましくない組織、例えば焼痂組織、壊死組織、損傷組織、感染組織、汚染組織、または癒着組織、または組織部位からの異物を除去する行為またはそれらの除去に関連する。壊死組織112を有する創傷104を治療するためには、外科的デブリードマン、機械的デブリードマン、化学的デブリードマン、および自己融解デブリードマンを含む創面切除のいくつかの方法を用い得る。
【0018】
化学的、または酵素的デブリードマンは、化学的な酵素を使用して、壊死組織を瘡蓋に変えることを含む。化学的デブリードマンは即効性があり、かつ化学薬品が適切に適用される場合には、健康な組織への損傷を最小限に抑え得る。しかし、化学的デブリードマンには欠点もある。プロセスが高価になる可能性があり、かつ低pHシステムのような伝統的な化学的デブリードマンの方法およびシステムは、患者に痛みを与え得る。パパインのような他の創傷清拭剤は、健康に及ぼす他の影響を与える可能性があり、かつ法律によって制限された、限られた使用法のみを有する。他の作用物質、例えば医療グレードのはちみつなどを使用してもよいが、限られた効能しか示さない可能性があり、かつ創傷滲出液などの流体が存在しかつ負圧が適用されると、急速に移動性の高いものとなり得る。
【0019】
自己融解デブリードマン、または自己分解は、水分と共に、体自体の酵素および白血球を使用して、壊死組織112および瘡蓋を水和させて(hydrate)液化させる必要がある。自己融解デブリードマンは自然発生的なプロセスであるため、比較的痛みがなく、かつ健康な組織を損傷させる危険を冒さない。さらに、自己融解デブリードマンは、創傷液を壊死組織112と接触したままにする必要がなく、およびフィルム、親水コロイド、およびヒドロゲルを使用することによって、促進され得る。自己融解デブリードマンの欠点は、自己融解デブリードマンは、他のタイプの創面切除よりも時間がかかることであり、創傷が感染しやすくなることである。
【0020】
自然発生的な創面切除プロセスを加速し、それにより促進する、創面切除プロセスが必要とされている。さらに、減圧治療を生じることができるようにするシステムおよび方法を有することが望まれている。さらに、患者が経験する痛みの緩和が引き続き望まれる。図1〜8の例示的かつ非限定的な実施形態に対応する創面切除のシステムおよび方法は、創傷の創面切除および治癒を促進する。本明細書で説明する改良型の自己融解創面切除システムおよび方法は、伝統的な創面切除方法の、痛みの小さいまたは緩和された代替案を提供し、これは、減圧治療と併用され得るが、依然として自己融解デブリードマンの有利な面を用いる。
【0021】
実施形態では、ヒドロゲル126は、減圧下における創傷104からの壊死組織112の除去を容易にする。ヒドロゲル126は、治療領域130に湿潤環境を保持するまたは作り上げることによって、自己融解デブリードマンを促進するように適合されている。場合によっては、ヒドロゲル126は、さらに、創傷清拭剤、例えばブロック化された酸性創傷清拭剤を治療領域130に注入することによって、自然な創面切除プロセスを促進する。
【0022】
ヒドロゲル材料は、水とポリマーの組み合わせであり、それにより、ヒドロゲル126が適用される組織部位102の湿潤環境を保持する。ヒドロゲル126は治療領域130と直接接触するため、ヒドロゲルは、親水性としてもよく、かつ創傷滲出液を吸収するように適合され得る。ヒドロゲル126の吸収特性により、治療領域130に潤いを保つ一方、余分な流体が組織部位102に貯留しないようにする。ヒドロゲル126はまた、治療領域130における瘡蓋または壊死組織112を含む組織部位102に再水和し、自己融解デブリードマンプロセスを促進し得る。ヒドロゲル材料の他の有益な特徴は、ヒドロゲル材料は、一般的にガス透過性としてもよく、かつ組織部位102に付着しないことである。それゆえ、ヒドロゲル126を除去することにより、組織部位102または治療領域130に損傷を与える、または患者に痛みを引き起こすことはない。
【0023】
ヒドロゲル126は概して非多孔性であるため、ヒドロゲル126は、壊死組織112を含む治療領域130をマニホールド114から隔離し得る。壊死組織112を隔離することによって、ヒドロゲル126は、減圧をマニホールド114によって治療領域130へ伝達しないようにする。減圧が特定の箇所に適用されないようにするヒドロゲル126の能力は有益とし得る。治療領域130が特に刺激に反応しやすい場合、ヒドロゲル126によって治療領域130を隔離することによって、介護者は組織部位102の大部分に減圧を行う一方、創傷の刺激に反応しやすい部分には減圧を行わないようにすることができる。
【0024】
ヒドロゲル126はまた、創傷104への浸透圧効果を有し得る。一部の実施形態では、ヒドロゲル126は、治療領域130において創傷104から流体を引き出す浸透圧を発生させ、それにより、治療領域130において、自己融解デブリードマンの助けとなる湿潤環境を促進する。浸透圧は、ヒドロゲル126のイオン含有量、または水分吸収材料(例えば水溶性材料)を含むヒドロゲル126によって生じ得る。いずれの場合にも、浸透圧は、組織表面に水分を行き渡らせる。
【0025】
追加的な水分が望まれる場合、介護者は、追加的な半透過性膜(図示せず)を、ヒドロゲル126の真下で、治療領域130に接触させて、配置し得る。例えば、片面に塩を有する膜は、追加的な浸透圧を発生させて、流体が、治療領域130にある組織表面にわたってヒドロゲル126まで移動するようにし得る。
【0026】
ヒドロゲル126は、図2に示すようなチューブ128または他の適用器からゲル形態で適用された非晶質ヒドロゲルとし得る。あるいは、ヒドロゲル126は、可撓性シートまたは1つまたは複数の帯状の射出(casted)ヒドロゲルとし得る。ヒドロゲル126が、予め形成されたシートである場合、ヒドロゲル126を形成するシートは、非粘着性の裏打ち材から剥がされて、介護者によって手動で治療領域130に適用され得る。非粘着層は、適用中にヒドロゲルが介護者にくっつかないようにすることが望ましいとし得る。ヒドロゲル126の作製は、粘着性ゲルから可撓性シートまでの様々な硬さのヒドロゲルを生じるように操作し得る。
【0027】
ヒドロゲル126が、創傷液にさらされて、時間をかけてそれを吸収するにつれ、ヒドロゲル126は軟化するかまたは粘性が低くなる。軟化したヒドロゲル126は、長い時間減圧下にあると、構造的完全性をなくし、バラバラになり、マニホールド114に吸収され、かつ減圧サブシステム118によって組織部位102から除去される。同様に、壊死組織112が軟化するにつれ、壊死組織112およびヒドロゲル126に経路が生じ、それにより、創面切除された壊死組織112およびヒドロゲル126を、マニホールド114の発泡体の細孔に引き入れることができる。次いで、創面切除された壊死組織112は、減圧源142によって組織部位102から排出され得るか、または図5に示すようにマニホールド114に引き込まれて、減圧創傷ドレッシング101と共に除去され得る。同様に、壊死組織112は、場合によっては創面切除プロセスによって液化され、かつマニホールド114を通って減圧源142の創傷液収集キャニスター148まで引き込まれ得る。この方法の創面切除によって、水分の多い条件下で壊死組織112を引き離すことができ、これは、患者にとって痛みが少ない。
【0028】
一部の実施形態では、ヒドロゲル126は、軟化して、マニホールドによって吸収される前に、比較的長い期間、水分および減圧に耐えるように配合され得る。例えば、創傷104は、比較的長い創面切除プロセスの発生を経た後まで軟化してバラバラにならないヒドロゲルを使用して、より良好に治療され得る。非限定的な例として、ヒドロゲルは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、またはそれよりも長く、軟化せず、バラバラにならない。より硬い、またはより粘度の高い、ヒドロゲルの組成物は、軟化および分解に対する初期の耐性が高い。さらに、ヒドロゲル126の多くの特性、例えば粘性およびヒドロゲル材料が軟化する速度は、初めにヒドロゲル中の水分を変化させることによって、制御できる。それゆえ、ヒドロゲルを創傷104に配置する前(例えば、作製時)のヒドロゲル中の水分を変化させることによって、ヒドロゲルは、創傷104内で元の状態のままにされ、予め選択された期間の自己融解デブリードマンを促進し得る。より硬い低含水量のヒドロゲルは、より多いレベルの水を含有するヒドロゲルよりも、所与の含水量(それゆえ所与の粘性)に達するのに長い時間がかかる。ヒドロゲルはまた、より高い粘性をもたらすためにより高いレベルに架橋されることがあり、および架橋は、ヒドロゲル中のポリマーが対応できる膨張量を制御することによって、水吸収率を低下させる。
【0029】
減圧が、ヒドロゲル126を覆っているマニホールド114に供給されることを考えれば、ヒドロゲル126および創面切除された壊死組織112を漸次軟化させて除去するという別の効果は、創面切除プロセスが終わると、ヒドロゲル126によって被覆されていた治療領域130が、次第に減圧にさらされることである。初めは、ヒドロゲル126が、ヒドロゲル126との境界面にあるマニホールド114の細孔を塞いでいることによって、治療領域130への減圧の伝達を阻止している。ヒドロゲル126が軟化してバラバラになるにつれ、減圧下でヒドロゲル126の複数の部分がマニホールド114に引き入れられ、組織部位102から引き離される。その結果、前もって被覆されていた治療領域130が徐々に減圧にさらされるようになる。他の手段はまた、組織部位102に減圧が供給される速度を制御する働きをし得る。比較的硬いヒドロゲルを使用することに加え、マニホールド114は、より小さな細孔を備えて形成され得る。細孔がより小さいマニホールド114は、ヒドロゲル126によって、長期間、詰まったままにされる。なぜなら、ヒドロゲル126がさらに軟化されるまで、ヒドロゲル126は、より小さな細孔に浸透しないためである。
【0030】
別の実施形態では、有孔フィルム(図示せず)を使用して、組織部位102の前もって被覆された部分に減圧を行う速度を調整できる。フィルムは、溶解しないポリウレタンまたはポリビニル材料とし得る。フィルムはまた、ポリグルカネート(polyglucanate)(PGA)などの生分解性材料とし得る。さらに、有孔フィルムを、様々なヒドロゲル組成物(例えばより硬いヒドロゲル組成物)と併用して、ヒドロゲル層126がバラバラになる速度を制御し得る。より硬いヒドロゲル組成物と共に有孔フィルムを使用することにより、また、治療領域130の追加的な部分を減圧にさらす速度を制御し得る。例えば、生分解性材料の有孔フィルムは、比較的硬いヒドロゲルと共に使用されて、治療領域130に行われる減圧の速度を遅らせる。
【0031】
ヒドロゲル126の材料はまた、1種または複数種の創傷清拭剤、例えばパパイン、サブチリシン(subtilysin)、ブロマイン(bromain)、コラゲナーゼ、フィシン、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、任意の好適な昆虫の幼虫から分離した酵素、または1つまたは複数のそれらの類似物を含み得る。さらに、ヒドロゲル126は、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含み得る。ブロック化された酸性創傷清拭剤はαヒドロキシ酸とし得る。αヒドロキシ酸は、一般に低pHでありかつアルギニンアミノ基などのブロッキング物質に緩く結合され得るグリコール酸または乳酸とし得る。上記で詳述したヒドロゲル126などの組成物に混合されると、様々なαヒドロキシ酸は、アルギニンと組み合わせて、創傷清拭剤の著しい有効性を示すことができる。そのようなブロック化された酸性創傷清拭剤は、典型的な創傷のpHと非常に異なるpHを有することがなく、それゆえ、患者に痛みおよび不快感を引き起こす可能性が少ない。
【0032】
一般に、開放創のpHは、わずかにアルカリ性であるかまたは中性であり、6.5〜8.5の範囲である。創傷が治癒するにつれ、pHは、正常な皮膚のpH(約5.9)になる傾向がある。反対に、αヒドロキシ酸(創傷清拭剤として使用され得る)を含有する組成物は、実質的により低いpH値を有し得る。例えば、7.6%のグリコール酸または9%の乳酸を含有する典型的な配合物のpHは、それぞれ、1.9である。比較的高いpHの創傷を、より低いpHの組成物にさらすことにより、刺激および不快症状を引き起こし得る。患者の快適さのために、pHが低すぎる創傷清拭剤に治療領域130をさらさないヒドロゲル材料を用いることが望ましい。
【0033】
ヒドロゲル126中に、ブロック化/錯化された酸性創傷清拭剤を使用することにより、創傷清拭剤が壊死組織112と相互作用する速度を適度にする。同じ創傷清拭剤、例えばグリコール酸または乳酸が、壊死組織112に直接適用された場合、治療領域130におけるpHの変化の大きさおよび速度は著しいため、患者に痛みおよび刺激を引き起こし得る。ブロック化された酸性創傷清拭剤は、アルギニンなどのブロック剤または錯化剤をαヒドロキシ酸などの創傷清拭剤に緩く結合させることによって、形成される。創傷液の存在下で、ブロック化された酸性創傷清拭剤はゆっくりと解離し、それにより、治療領域130においてpHを急激に変化させることなく、創傷清拭剤を治療領域130に徐々に供給する。その結果、治療領域130に適用されるpHの変化の速度は、ブロック剤によって調整され得る。より緩やかなpHの変化によって、患者に対する刺すような感覚を防止することを助ける。
【0034】
ヒドロゲル126は、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含み得る。ブロック化された酸性創傷清拭剤は、ヒドロゲル126が壊死組織と相互作用するときの、治療領域130のpHの低下速度を適度にする効果を有する。ヒドロゲル126のpHは、適用時、典型的な創傷床のpHの50%以内(例えば、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%以内、または述べた範囲内の任意の他の数字)とし得る。例えば、ブロック化された酸性創傷清拭剤を含むヒドロゲル126の初期pHは約3.5とし得る。ヒドロゲル126が水を吸収しかつ壊死組織と反応するにつれ、ヒドロゲル126のpHは、7に向かって上昇する。これは、創傷床の初期pHが7(「健康な」創傷床は6という低さであり、および慢性創傷床は、8を上回り得る)であると仮定している。
【0035】
ヒドロゲル126は、両性組成物中にブロック化された酸性創傷清拭剤を有するように形成され得る。両性組成物は、少なくとも1種のαヒドロキシ酸、例えば乳酸またはグリコール酸を含有し得る。両性組成物を含むヒドロゲルのpHは、同様の非両性ヒドロゲルよりも、創傷のpHに近く、および活性型のαヒドロキシ酸を創傷清拭剤として治療領域130に徐々に放出し得る。
【0036】
両性物質は、酸および塩基の双方の特徴を有する物質であり、および無機化合物または有機化合物とし得る。有機両性化合物分子は、例えば、少なくとも1つの塩基性基および1つの(アニオン性の)酸性基を含む。カチオン基は、アミノ基(例えばアルギニン)、またはイミノまたはグアニド(guanido)基を含み得る。酸性基は、カルボン酸基、リン酸基、またはスルホン酸基を含み得る。有機両性化合物の例は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、およびクレアチンを含む。さらなる例は、アミノアルドン酸(aminoaldonic acids)、アミノウロン酸(aminouronic acids)、ラウリルアミノプロピルグリシン、アミノアルダル酸(aminoaldaric acids)、ノイラミン酸、脱硫酸化ヘパリン、脱アセチル化ヒアルロン酸、ヒアロビウロン酸、コンドロシン、および脱アセチル化コンドロイチンを含む。酸化亜鉛および酸化アルミニウムが無機両性化合物の例である。
【0037】
両性組成物は、例えば、カチオン化合物(例えば、アルギニン)と組み合わされたαヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸または乳酸)とし得る。αヒドロキシ酸を含有する両性組成物の使用は、組成物全体のpHが上昇するため、有益とし得る。上昇したpHは、治療領域130のpHに近くなり、創傷清拭剤が治療領域130と接触するときの刺激およびそれに関連する不快感をあまり生じなくする。さらに、いくつかのαヒドロキシ酸分子が両性化合物と反応してイオン結合型錯体を形成し、それが、治療領域130への遊離(解離していない)αヒドロキシ酸の放出を制御する緩衝系の機能を果たし得る。緩衝系は、さらに、刺激および不快感を制限するが、依然として創傷清拭剤としての有効性は保持する。
【0038】
両性組成物はヒドロゲルとして配合され得る。ヒドロゲルは、両性化合物と、αヒドロキシ酸またはそれに関連する化合物のうちの一方とを混和する。化合物は、例えば容積比がそれぞれ40:40:20のエタノール、水、およびプロピレングリコールの混合物中に、溶解され得る。混合物は、0.1〜4パーセントのゲル化剤、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、またはグリチルリチン酸アンモニウム(ammoniated glycyrrhizinate)を含み、撹拌しながら添加される。
【0039】
両性組成物の第1の例は、1Mの2−ヒドロキシエタン酸および0.5MのL−アルギニンを溶液形態で含有し、かつ、以下の通り配合され得る:2−ヒドロキシエタン酸(グリコール酸)7.6gを、水60mlおよびプロピレングリコール20mlに溶解する。L−アルギニン8.7gを、結晶が全て溶解されるまで、かき混ぜながら溶液に添加する。エタノールを、全容積が溶液100mlとなるまで添加する。そのように配合された両性組成物のpHは3.0である。1Mの2−ヒドロキシエタン酸および1MのL−アルギニンが配合された両性組成物のpHは6.3である。両性化合物が混和されていない場合、溶液のpHは1.9である。
【0040】
第2の両性組成物は、1Mの2−ヒドロキシプロパン酸および0.5MのL−アルギニンを溶液形態で含有し、かつ、多少同じように配合され得る:2−ヒドロキシプロパン酸(DL−乳酸)のアメリカ薬局方(USP)グレード9.0gを、水60mlおよびプロピレングリコール20mlに溶解する。L−アルギニン8.7gを、結晶が全て溶解されるまで、かき混ぜながら溶液に添加する。エタノールを、全容積が溶液100mlとなるまで添加する。そのように配合された両性組成物のpHは3.1である。1Mの2−ヒドロキシプロパン酸および1MのL−アルギニンが配合された両性組成物のpHは6.9である。両性化合物が混和されていない場合、溶液のpHは1.9である。
【0041】
再度図1を参照して説明すると、シーリングドレープ116は、第1の面140および組織対向面122を含む。シーリングドレープ116のサイズは、ドレープ延長部138が創傷104の外縁を越えて延在するように、シーリングドレープ116が創傷104に重なり合うようなサイズにされ得る。シーリングドレープ116は、流体シールをもたらす任意の材料とし得る。シーリングドレープ116は、例えば、不透過性または半透過性のエラストマー材料とし得る。半透過性材料の場合、透過度は、所与の減圧源に対して、所望の減圧を維持し得るように十分に低い必要がある。シーリングドレープ116は、特定の減圧源または関連のサブシステムによって与えられる減圧を所望の部位に維持する流体シールをもたらす任意の材料とし得る。
【0042】
取付装置120を使用して、シーリングドレープ116を患者の表皮106または別の層、例えばガスケットまたは追加的なシーリングドレープに当ててもよい。取付装置120は多数の形態をとり得る。例えば、取付装置120は、シーリングドレープ116の外縁の周り、シーリングドレープの一部分、またはシーリングドレープ全体に延在する、医学的に容認できる感圧接着剤とし得る。追加的な例として、取付装置120は、両面ドレープテープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、または他のシール装置または要素とし得る。
【0043】
減圧サブシステム118は、多くの異なる形態をとり得る減圧源142を含む。減圧源142は、減圧治療システム100の一部として減圧をもたらす。減圧は、治療が施されている組織部位における周囲圧力を下回る圧力を指す。ほとんどの場合、この減圧は、患者がいる場所の気圧を下回る。あるいは、減圧は、組織部位の静水圧を下回り得る。他に指定のない限り、本明細書で述べる圧力の値は、ゲージ圧である。供給される減圧は、静圧であってもまたは動圧であっても(パターン化またはランダム)よく、かつ連続的にまたは断続的に供給され得る。本明細書での使用に一致して、減圧または真空圧の上昇は、一般に、絶対圧の相対的な低下を指す。
【0044】
減圧サブシステム118は減圧をもたらす。減圧サブシステム118は、減圧を供給する任意の手段とし得る減圧源142を含む。減圧源142は、減圧を供給する任意の装置、例えば真空ポンプ、壁面吸い込み、マイクロポンプ、または他の減圧源とし得る。マイクロポンプを利用する場合、ドレッシング101自体中にまたはそれ自体上に含まれ得る。
【0045】
組織部位に行われる減圧の量および性質は、一般に適用に応じて変動するが、減圧は、典型的には−5mm Hg(−667Pa)〜−500mm Hg(−66.7 kPa)、より典型的には−75mm Hg(−9.9kPa)〜−300mm Hg(−39.9kPa)である。例えば、および限定するものではないが、圧力は、−12、−12.5、−13、−13.5、−14、−14.5、−15、−15.5、−16、−16.5、−17、−17.5、−18、−18.5、−19、−19.5、−20、−20.5、−21、−21.5、−22、−22.5、−23、−23.5、−24、−24.5、−25、−25.5、−26、−26.5kPaまたは別の圧力とし得る。
【0046】
図1の例示的かつ非限定的な実施形態では、減圧源142は、バッテリー収納部146と、キャニスター148とを有し、キャニスターは、キャニスター148内の流体のレベルを可視的に分かるようにする窓150を備える。減圧導管144と減圧源142との間に、介在型薄膜フィルタ、例えば疎水性または疎油性フィルタが挿入され得る。
【0047】
減圧源142によってもたらされた減圧は、減圧導管144を通って、L字継手ポート154とし得る減圧インターフェース152まで供給される。例示的一実施形態では、減圧インターフェース152は、KCI(San Antonio、Texas)から入手可能なT.R.A.C.(登録商標)PadまたはSensa T.R.A.C.(登録商標)Padである。減圧インターフェース152は、シーリングドレープ116まで減圧を供給できるようにし、かつシーリングドレープ116の内部およびマニホールド114を減圧にし得る。この例示的かつ非限定的な実施形態では、L字継手ポート154は、シーリングドレープ116を通ってマニホールド114まで延在するが、多数の配置構成が可能である。
【0048】
例示的一実施形態によれば、動作時、下記でさらに説明するようにヒドロゲル126を適用し、およびマニホールド114を、組織部位102、例えば創傷104に近接させて配置する。マニホールド114は創傷104内に配置されてもよいし、または創傷104の一部分の一面を覆って(overlay)もよい。シーリングドレープ116はマニホールド114を覆って配置されて、ドレープ延長部138が創傷104の外縁を越えて延在するようにする。ドレープ延長部138は、取付装置120によって患者の表皮106に固定されて、患者の表皮106とシーリングドレープ116との間に流体シールを形成し得る。
【0049】
その後、減圧インターフェース152がまだ設置されていない場合、減圧インターフェースを適用し、かつ減圧導管144を減圧インターフェース152に流体的に結合し得る。減圧インターフェース152はまた、省略してもよく、減圧導管144をマニホールド114に直接差し込んでもよい。減圧導管144は減圧源142に流体的に結合される。その後、減圧源142を起動して、減圧をシーリングドレープ116の内部およびマニホールド114に供給する。別の実施形態では、減圧源142は、ドレッシング101内またはその上にあるマイクロポンプとし得る。
【0050】
図1の例示的なシステムに関して、減圧の適用によって、ヒドロゲル126を壊死組織112に確実にごく接近させる。減圧がマニホールド114に供給されると、マニホールド114は、治療領域130を囲む創傷104に減圧を伝達し、図3に矢印164で示すように、治療領域は、マニホールド114の方へ内向きに引き込まれる。次に、治療領域130および関連の壊死組織112がヒドロゲル126に対して押圧されて、ヒドロゲル126が、確実に、湿潤環境をもたらして自己融解デブリードマンを促進するようにする。
【0051】
創面切除プロセスは、治療領域130を含む創傷104が生成する滲出液量を増加させる。ヒドロゲル126の存在により、また、創傷滲出液を増加させ得る。減圧治療システム100は、マニホールド114を通って減圧源142のキャニスター148まで滲出液を引き寄せることによって、滲出液を吸い出すように動作可能である。過量の流体が創傷に残らないようにすることに加え、流体を除去するために減圧を適用することはまた、自己融解デブリードマンによって発生し得る創傷部位における毒素レベルを低下させる働きをする。
【0052】
ここで主に図4を参照して説明すると、滲出液が存在することにより、時間が経つにつれてヒドロゲル126が軟化してバラバラになる。ヒドロゲル126がバラバラになるにつれて、マニホールド114および減圧源142は、図4の方向矢印166で提案するように、軟化したヒドロゲル126を創傷104から除去するように働く。同様に、ヒドロゲル126が創傷から除去されるにつれ、創面切除された組織、または壊死組織112は、ヒドロゲルで被覆されていない状態にされ、および減圧創傷ドレッシング101のマニホールド114に引き込まれ得る。創面切除された組織、例えば壊死組織112がマニホールド114に引き込まれた後、図5に示すように、創面切除された組織は、マニホールド114と共に組織部位から除去され得る。それゆえ、減圧治療システム100は、治療領域130を創面切除するために自己融解デブリードマンを使用し、創面切除された軟化した組織の加速された痛みのない除去を可能にするドレッシングとして機能し、および同時に創傷104に負圧療法を行うという利点を有する。
【0053】
例えば、図1の減圧治療システム100を使用する、組織部位102における治療領域130の創面切除を行う例示的な方法では、介護者が、灌注を用いて、緩んだ物質を全て除去することによって、創傷104の準備を行い得る。介護者は、図2に示すように、創面切除されるべき領域、すなわち治療領域130を特定し、かつその領域をヒドロゲル126で被覆する。創傷104は、さらに、マニホールド114およびシーリングドレープ116で被覆されて、減圧創傷療法を行うのを容易にする。マニホールド114は、減圧インターフェース152および減圧導管144を介して減圧源142に流体的に結合される。ヒドロゲル126は、治療領域130における湿潤環境を促進するのを助け、それにより、自己融解デブリードマンを促進する。
【0054】
さらに、減圧源142による減圧の適用によって、ヒドロゲル126を治療領域130において壊死組織112に確実に近接近させる。減圧の適用によって、ヒドロゲル126が軟化するにつれて、ヒドロゲル126をマニホールド114の発泡体の細孔構造に徐々に引き入れる。さらに、創面切除プロセスによって緩められた、軟化した壊死組織112、例えば、軟化した焼痂がまた、減圧によってマニホールド114の発泡体の細孔に引き入れられ得る。ある期間を経過した後(例えば、2〜5日)でドレッシングを除去して、プロセスを必要に応じて繰り返す。ヒドロゲル126が減圧創傷ドレッシング101によって吸収されるまで、ヒドロゲル126は、壊死組織112をマニホールド114の多孔質発泡体から隔離する。非多孔性ヒドロゲルは負圧を伝達しないため、治療領域130の壊死組織112の周りに水分を集中させるのを助け得る。壊死組織112が軟化するにつれて経路が生じ、その経路が、軟化した壊死組織112およびヒドロゲル126をマニホールド114の発泡体の細孔に押し込むのを助け得る。創面切除プロセスによって壊死組織112が液化される場合、液化した組織をマニホールド114により深く引き込み、かつ減圧源142の創傷液収集キャニスター148に入れることができる。
【0055】
ここで主に図6を参照すると、マニホールド114と直接接触しないようにヒドロゲル層226を隔離する、例示的実施形態が示されている。ここでは、ヒドロゲル226を実質的に被覆するように分配マニホールド(明示せず)を適用する前に、中間発泡層232がヒドロゲル226に隣接して配置され得る。中間発泡層232は、ヒドロゲル226が軟化し始めた後でも、治療領域130からのヒドロゲル226の除去を遅らせる働きをする。
【0056】
中間発泡層232は、熱湿交換(HME)発泡体とし得る。さらに、中間発泡層232は、親水性ポリウレタンとしてもよく、およびマニホールド114よりも実質的に小さな細孔サイズを有する。中間発泡層232の細孔サイズは、1インチ当たりの細孔数(PPI)を60〜100とし得るため、マニホールド114よりも簡単にヒドロゲル226によって塞がれ得る。そのような実施形態では、ヒドロゲル226が大きな細孔を有するマニホールド114に浸透し得る前のヒドロゲルの軟化と比べて、ヒドロゲル226が中間発泡層232に浸透できる前に、ヒドロゲル226はより軟化する。塞がれた発泡体はまた、減圧の伝達に抵抗し、それにより、中間発泡層232が、さらに、減圧の適用から治療領域130を隔離できるようにする。
【0057】
壊死組織112を含む分離した別個の治療領域130を治療するとしてヒドロゲル226および中間発泡層232を図6に示すが、ヒドロゲル226および中間発泡層232はまた、創傷104の全体を含む、組織部位102の他の部分にも適用され得ることに留意されたい。図1のヒドロゲル126は、同様に適用され得る。場合によっては、創傷床の大部分または全てが、創傷の健康状態を改善するために創面切除する必要のある壊死組織112の層を有し得る。
【0058】
ここで主に図7および図8を参照して説明すると、別の例示的実施形態では、ヒドロゲル326、426は、減圧創傷ドレッシング301、401が組織部位102に適用された後で、治療領域130において創傷104に注入され得る。図7および図8は、減圧創傷ドレッシング301、401の適用後に、介護者がヒドロゲル326、426を注入して改良型の自己融解デブリードマンを促進できるようにする、例示的な減圧創面切除システムを示す。
【0059】
ここで主に図7を参照すると、マニホールド114が既に組織部位102に適用されているシステム300が示されている。システム300は、シーリングドレープ316と、マニホールド114を減圧源に流体的に結合する減圧インターフェース352とを含む。第2のインターフェース356はシーリングドレープ316に付着されて、第2のポート358および第2の導管350がヒドロゲル326を治療領域130に供給できるようにする。ヒドロゲル326は、組織部位102の治療領域130に供給されるときにはあまり粘性がないとし得る。ヒドロゲル326は、流体を吸収するように適合され、かつヒドロゲル326が創傷104から滲出する流体と接触すると、より粘性が増加するようにし得る。別の実施形態では、ヒドロゲル326は、適用針を備える注射器(図示せず)を使用して、組織部位に導入され得る。液体(例えば水)と接触すると粘性を増加させるように適合されたヒドロゲル326の例は、パラフィン内に分散した超吸収性ポリマーである。
【0060】
ここで主に図8を参照すると、多くの点で図7のシステム300と同様のシステム400が示されている。図8は、ヒドロゲル426が減圧インターフェース452を通して組織部位102の治療領域130に供給され得るシステム400を示す。減圧インターフェース452は、シーリングドレープ416に結合されたL字継手ポート454または同様のポートを通してデュアルルーメン導管444を収容する。デュアルルーメン導管444は、第1のルーメン460および第2のルーメン462を含む。第1のルーメン460は、組織部位102に減圧を供給する。第2のルーメン462は、ヒドロゲル426を組織部位102に供給して、治療領域130を画定するように適合されている。ここでも、ヒドロゲル426は、非吸収性液体キャリア、例えばパラフィンに懸濁され(すなわちヒドロゲルは、キャリア液体を吸収しない)、それにより、懸濁されたヒドロゲルは、創傷液と接触すると増粘し得、それにより、ヒドロゲル426の粘性を増加させ、かつヒドロゲル426を、水分の多い環境でありそれゆえ創面切除の助けとなる治療領域130を画定するように、適合させ得る。同時に、減圧が組織部位102に供給されて、組織部位102の残りの部分に減圧創傷療法を施し得る。
【0061】
別の例示的実施形態では、ヒドロゲルは、創面切除プロセスを加速させる1種または複数種の化学物質が含浸されているか、または抗菌剤が注入されており、創面切除を避けたほうがよい感染創傷を治療し得る。別の実施形態では、ヒドロゲルを多孔質の親水性発泡体で置き換える。多孔質の親水性発泡体は、湿潤環境を維持して、自己融解デブリードマンを促進させると同時に、治療領域に減圧を行うのを助ける。治療領域における親水性発泡体の使用は、創面切除を必要とする高滲出性の創傷において流体を制御する能力を高め得る。
【0062】
本明細書で説明した創傷ドレッシングおよびシステムは、患者および介護者にいくつもの利点を提示し得る。例えば、本明細書で説明した創傷ドレッシングおよびシステムは、他の創面切除技術、例えば、機械的または化学的デブリードマン法によって患者に痛みを与える問題に対処しており、それにより、麻酔をかける必要性を減らし得る。例示的な方法、システムおよび創傷ドレッシングは、壊死組織のみを創面切除の対象とし、かつ創傷の健康な部分に負圧療法を行う。さらに、伝統的な創傷清拭剤とは異なり、ブロック化された酸性創傷清拭剤を有するヒドロゲルを健康な組織に適用することは、有害反応を引き起こさない。さらに、本明細書で説明したシステムおよび方法は、既に創傷を治療および保護しているかもしれない減圧創傷ドレッシング材料を使用して作業を完了することにより、介護者が創面切除の特定の作業にかける時間を少なくし得る。患者の観点からは、例示的な改良型の自己融解デブリードマン方法に伴う痛みは少なく、およびこの方法は、創面切除法のために手術室に行く必要のある回数が1回減る。
【0063】
別の例示的実施形態によれば、先に提示したものと類似の自蔵式創傷ドレッシングは、外部減圧源、減圧導管、または外部流体収集キャニスターを必要とせずに、使用され得る。例えば、創傷ドレッシングは、減圧源、例えばマイクロポンプを含んで、組織部位に減圧を生成するように形成され、それにより、外部減圧源の必要性をなくし得る。さらに、ドレッシングは、1つまたは複数のウィッキング層によってマニホールドから隔離される吸収性または超吸収性パウチを含み、図1の流体収集キャニスター148の機能を果たし得る。創傷ドレッシングの内部に収集液溜め、および減圧源を有する実施形態では、それ以外は図1の例示的なシステムと類似しているシステムは、減圧創傷ドレッシング内に全体的に収容され得る。
【0064】
本発明およびその利点を、特定の例示的かつ非限定的な実施形態に照らして開示したが、添付の特許請求の範囲で定義した本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更、代替、置換、および修正をなし得ることを理解されたい。いずれか一つの実施形態に関連して説明された任意の特徴はまた、任意の他の実施形態にも適用可能であり得ることを理解されたい。
【0065】
上述の利益および利点は、一実施形態に関連し得ること、またはいくつかの実施形態に関連し得ることを理解されたい。「1つの(an)」品目への言及は、1つまたは複数のそれら品目を指すことをさらに理解されたい。
【0066】
本明細書で説明した方法のステップは、任意の好適な順序で、または適切な場合には同時に実施し得る。
【0067】
適切な場合には、上述の実施形態のいずれかの態様を、説明の任意の他の実施形態の態様と組み合わせて、類似のまたは異なる特性を有しかつ同じまたは異なる問題に対処する別の例を形成する。
【0068】
好ましい実施形態の上述の説明は例示にすぎず、当業者は様々な修正をなし得ることを理解されたい。上述の明細書、例、およびデータは、本発明の例示的な実施形態の構造および使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態を、ある程度詳細に、または1つまたは複数の個々の実施形態を参照して上記で説明したが、当業者は、特許請求の範囲から逸脱せずに、開示の実施形態に多数の修正をなすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8