(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
木造軸組構法では、木製建築部材としての横架材と木製の垂直材とを適宜組み合わせ、門型形状又は矩形形状の骨組みが構築される。このような骨組みを構築するため、以下に示すような各種の金物が使用される。なお、横架材及び垂直材は、無垢材及び集成材のどちらであってもよい。
【0010】
1.垂直材接合金物
垂直材接合金物100は、
図1に示すように、矩形形状の金属板からなる接合部材110と、矩形形状の金属板を適宜接合して形成される固定部材120と、を有する。接合部材110は、柱の下面に形成されたスリットに嵌合可能な部材であって、ドリフトピンの軸部が貫通可能な貫通孔110Aが形成されている。固定部材120は、アンカーボルトによってコンクリート基礎に締結可能な部材であって、対向する2面が開口した箱形形状の第1の部材122と、第1の部材122の内部空間に配設され、第1の部材122を補強する第2の部材124と、を有する。
【0011】
ここで、矩形形状及び箱形形状としては、見た目で矩形形状及び箱形形状と認識できる程度でよい。従って、これらの形状を形成する部材の一部に切欠き、小孔などが形成されていてもよい。なお、他の形状についても同様である。
【0012】
第1の部材122の底板には、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトの軸部が貫通可能な貫通孔122Aが複数形成されている。図示の例では、第1の部材122の底板には、内部空間が延びる方向に2列、これと直交する方向に2列の計4個の貫通孔122Aが形成されているが、その個数及び位置は任意である。第2の部材124は、矩形形状の金属板を格子状に組み合わせた部材であって、第1の部材122の内面に溶接などで固着されている。そして、接合部材110の下端部は、固定部材120の上面に溶接などで固着されている。ここで、接合部材110は、第1の部材122の横断面上に板面が位置するように固着されている。なお、各部の寸法などは、例えば、垂直材接合金物100の使用箇所、接合対象物などに応じて適宜決定することができる(以下同様)。
【0013】
2.連結金物
連結金物150は、
図2に示すように、矩形形状の金属板からなり、その長手方向の両端部近傍に、ドリフトピンの軸部が貫通可能な貫通孔150Aが夫々形成されている。なお、連結金物150は、横架材に形成されたスリットと垂直材に形成されたスリットとに嵌合され、これらを相互に接合する。
【0014】
3.タイダウン金物
タイダウン金物200は、
図3に示すように、平面視で、長尺の矩形形状の金属板からなるベース部材210と、ベース部材210の長手方向の両端部からその長手方向の外方へと延びる金属製のボルト部材220と、図示しない締結具と、を有する。ボルト部材220は、ベース部材210に基端部が溶接などで固着され、少なくとも先端部の外周に雄ねじ220Aが形成されている。また、ベース部材210の板面には、
図4に示すように、ドリフトピンの軸部が貫通可能な貫通孔210Aを複数形成することもできる。締結具は、平ワッシャ、スプリングワッシャ及びダブルナットを含み、ボルト部材220の雄ねじ220Aに着脱可能に螺合される。なお、タイダウン金物200は、詳細を後述するように、垂直材としての柱のスリット、パネルのスリットに嵌合される。
【0015】
垂直材としての柱のスリット、パネルのスリットにタイダウン金物200を嵌合する必要がない場合には、ベース部材210は、任意の断面形状、例えば、正方形、円形、三角形などを有する部材とすることもできる。ここで、タイダウン金物200が、平行に配置された2つの構造躯体、即ち、コンクリート基礎、土台や梁などの横架材、柱などの垂直材を含む、構造耐力上の主要な部分が相互に離間することを抑制する拘束金物の一例として挙げられる。
【0016】
4.箱形金物
箱形金物250は、矩形形状の金属板を適宜接合して形成された、
図5に示すような、一面のみが開口する箱形形状の金物である。そして、開口に隣接しつつ対向する2面に、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトの軸部、タイダウン金物200のボルト部材220の軸部が貫通可能な貫通孔250Aが夫々形成されている。
【0017】
箱形金物250としては、矩形形状の金属板を適宜接合して形成された、
図6に示すよな、対向する2面が開口する箱形形状の第1の部材252と、第1の部材252の開口の上部及び下部を閉塞して補強する矩形形状の第2の部材254と、を有していてもよい。この箱形金物250においては、第1の部材252の天板及び底板に、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトの軸部、タイダウン金物200のボルト部材220の軸部が貫通可能な貫通孔250Aが夫々形成されている。
【0018】
5.スペーサ金物
スペーサ金物300は、箱形金物250と協働して、コンクリート基礎に対して、タイダウン金物200が一体化された垂直材を接合する金物である。スペーサ金物300は、
図7に示すように、矩形形状の金属板を適宜接合して形成された、対向する2面が開口する箱形形状をなす第1の部材310と、第1の部材310の内部空間の横断面上に板面が位置する、矩形形状の金属板からなる第2の部材320と、を有する。第1の部材310の底板には、その内部空間が延びる方向に沿って、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトの軸部が貫通可能な貫通孔310Aが2つ形成されている。ここで、第1の部材310の底板に形成される貫通孔310Aは、2つに限らず、任意の個数とすることができる。第2の部材320は、第1の部材310の内部空間を均等に二分割する位置に配設され、第1の部材310の内面に溶接などで固着されている。
【0019】
6.第1のせん断金物
第1のせん断金物350は、
図8に示すように、矩形形状の金属板からなる接合部材360と、矩形形状の金属板を適宜接合して形成された固定部材370と、を有する。接合部材360は、パネルに形成されたスリットに嵌合可能な部材であって、ドリフトピンの軸部が貫通可能な貫通孔360Aが複数形成されている。図示の例では、貫通孔360Aは、接合部材360の長手方向に沿った3列の千鳥格子状に形成されているが、その個数及び位置は任意である。固定部材370は、アンカーボルトによってコンクリート基礎に締結可能な部材であって、対向する2面が開口した箱形形状の第1の部材372と、第1の部材372の内部空間に配設され、第1の部材372を補強する第2の部材374と、を有する。
【0020】
第1の部材372の底板には、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトの軸部が貫通可能な貫通孔372Aが複数形成されている。図示の例では、第1の部材372の底板には、内部空間が延びる方向に2列、これと直交する方向に6列の計12個の貫通孔372Aが形成されているが、その個数及び位置は任意である。第2の部材374は、第1の部材372の貫通孔372Aを直交する三方から囲むように、矩形形状の金属板を格子状に組み合わせた部材であって、第1の部材372の内面に溶接などで固着されている。そして、接合部材360の下端部は、固定部材370の上面に溶接などで固着されている。ここで、接合部材360は、第1の部材372の横断面上に板面が位置するように固着されている。
【0021】
7.第2のせん断金物
第2のせん断金物400は、
図9に示すように、矩形形状の金属板からなるベース部材410と、金属円筒からなる2つの円筒部材420と、矩形形状の金属板からなる接合部材430と、を有する。
【0022】
ベース部材410は、骨組みとパネルとの間に配設される部材である。円筒部材420は、土台、梁又はパネルに形成された円孔に嵌合可能な部材である。円筒部材420は、ベース部材410の一面であって、その長手方向に沿って離間した2位置に溶接などで夫々固着(固定)されている。ここで、円筒部材420は、ベース部材410の長手方向に直交する方向において、その板面を均等に2分割する位置に固着されている。円筒部材420の強度を向上させることを目的として、円筒部材420の内周面に矩形形状の金属板からなる補強部材422を溶接などで固着して一体化することもできる。
【0023】
接合部材430は、土台、梁又はパネルに形成されたスリットに嵌合可能な部材であって、ドリフトピンの軸部が貫通可能な貫通孔430Aが複数形成されている。図示の例では、貫通孔430Aは、接合部材430の長手方向に沿った3列の千鳥格子状に形成されているが、その個数及び位置は任意である。そして、接合部材430は、ベース部材410の長手方向に沿って、これと直交するように、ベース部材410の他面に溶接などで固着(固定)されている。
【0024】
8.第3のせん断金物
第3のせん断金物450は、
図10に示すように、金属円筒からなる2つの円筒部材460と、矩形形状の金属板を適宜接合して形成された固定部材470と、を有する。
【0025】
円筒部材460は、パネルに形成された円孔に嵌合可能な部材であって、固定部材470の上面において、その長手方向に沿って離間した2位置に溶接などで夫々固着(固定)されている。ここで、円筒部材460は、固定部材470の長手方向に直交する方向において、その上面を均等に2分割する位置に固着されている。円筒部材460の強度を向上させることを目的として、円筒部材460の内周面に矩形形状の金属板からなる補強部材462を溶接などで固着して一体化することもできる。
【0026】
固定部材470は、アンカーボルトによってコンクリート基礎に締結可能な部材であって、対向する2面が開口した箱形形状の第1の部材472と、第1の部材472の内部空間に配設され、第1の部材472を補強する第2の部材474と、を有する。第1の部材472の底板には、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトの軸部が貫通可能な貫通孔472Aが複数形成されている。図示の例では、第1の部材472の底板には、内部空間が延びる方向に2列、これと直交する方向に6列の計12個の貫通孔472Aが形成されているが、その個数及び位置は任意である。第2の部材474は、第1の部材472の貫通孔472Aを直交する三方から囲むように、矩形形状の金属板を格子状に組み合わせた部材であって、第1の部材472の内面に溶接などで固着されている。
【0027】
なお、固定部材470は、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトを介して、コンクリート基礎に締結される部材であって、少なくとも上面が矩形形状の水平面をなしていればよい。
【0028】
9.第4のせん断金物
第4のせん断金物500は、
図11に示すように、矩形形状の金属板からなるベース部材510と、金属円筒からなる4つの円筒部材520と、を有する。
【0029】
ベース部材510は、骨組みとパネルとの間に配設される部材である。円筒部材520は、土台、梁又はパネルに形成された円孔に嵌合可能な部材である。円筒部材520は、ベース部材510の両面であって、その長手方向に沿って離間した2位置に溶接などで固着(固定)されている。ここで、円筒部材520は、ベース部材510の長手方向に直交する方向において、その板面を均等に2分割する位置に固着されている。円筒部材520の強度を向上させることを目的として、円筒部材520の内周面に矩形形状の金属板からなる補強部材522を溶接などで固着して一体化することもできる。
【0030】
次に、横架材と垂直材とを適宜組み合わせて構築した門型形状又は矩形形状の骨組みに対して、各種の金物を使用して、単板積層材、直交集成材などのパネルを嵌め込んで接合した構造体について説明する。
【0031】
[第1実施形態]
図12は、木造建築物の1階を前提とした、構造体の第1実施形態を示す。
第1実施形態における構造体では、2つの垂直材接合金物100及び2つの連結金物150を使用して、コンクリート基礎BSに対して、2本の柱PT及び1本の梁BMからなる門型形状の骨組みが構築される。そして、2つのタイダウン金物200、4つの箱形金物250、1つの第1のせん断金物350及び1つの第2のせん断金物400を使用して、門型形状の骨組みに対して嵌め込まれる矩形形状のパネルPNが接合される。
【0032】
柱PTの上面及び下面の中央には、コンクリート基礎BSの延設方向に沿って、連結金物150及び垂直材接合金物100の接合部材110が嵌合可能な、スリットSL1が夫々形成されている。また、柱PTの一側面には、連結金物150の貫通孔150A及び接合部材110の貫通孔110Aにドリフトピンを打ちこむための小孔(図示せず)が夫々形成されている。
【0033】
パネルPNの左右側面の中央には、その上端部から下端部にかけて、タイダウン金物200が嵌合可能なスリットSL2が夫々形成されている。ここで、パネルPNのスリットSL2の上端部及び下端部は、タイダウン金物200のボルト部材220が嵌合可能なように、その幅が中央部より拡幅する段付形状に形成されている。また、パネルPNの上面及び下面の中央には、その板面が延びる方向に、第2のせん断金物400の接合部材430及び第1のせん断金物350の接合部材360が夫々嵌合可能な、スリットSL3及びスリットSL4が形成されている。
【0034】
梁BMの下面の所定位置には、その軸線が延びる方向に沿って、連結金物150が嵌合可能な2つのスリットSL5、及び、第2のせん断金物400の円筒部材420が嵌合可能な2つの円孔CH1が夫々形成されている。また、梁BMの所定位置には、その上面から下面へと貫通するように、タイダウン金物200のボルト部材220の軸部が貫通可能な2つの貫通孔TH1が夫々形成されている。
【0035】
そして、パネルPNのスリットSL2にタイダウン金物200が嵌合され、例えば、接着剤などにより一体化されている。ここで、タイダウン金物200のベース部材210に貫通孔210Aが形成されている場合には、接着剤などに代えて、パネルPNの一面からドリフトピンを打ちこみ、その軸部を貫通孔210Aに貫通させることで、パネルPNとタイダウン金物200とを一体化することができる。また、パネルPNのスリットSL3に第2のせん断金物400の接合部材430が嵌合され、パネルPNの一面からドリフトピンを打ちこみ、その軸部を貫通孔430Aに貫通させることで、パネルPNと第2のせん断金物400とを一体化することができる。なお、パネルPNに対するタイダウン金物200及び第2のせん断金物400の一体化は、構造体を構築するときに行なってもよい。
【0036】
コンクリート基礎BSの上面には、その上面から上方へと突出するアンカーボルトAB、並びに、その先端部に螺合する平ワッシャ、スプリングワッシャ及びダブルナットを含む締結具FMを介して、図中の右方から左方にかけて、垂直材接合金物100、箱形金物250、第1のせん断金物350、箱形金物250及び垂直材接合金物100がこの順番で締結されている。即ち、垂直材接合金物100、箱形金物250及び第1のせん断金物350は、その貫通孔122A、貫通孔250A及び貫通孔372AがアンカーボルトABの軸部を貫通した状態でコンクリート基礎BSの上面に夫々載置され、その底板から突出するアンカーボルトABの軸部に締結具FMを螺合することで締結されている。
【0037】
垂直材接合金物100には、その接合部材110が柱PTの下面に形成されたスリットSL1に嵌合することで、柱PTの下面が接合されている。このとき、垂直材接合金物100に対する柱PTの接合を確実ならしめるため、柱PTの一側面からドリフトピンが打ちこまれ、その軸部が接合部材110の貫通孔110Aに貫通されている。
【0038】
箱形金物250及び第1のせん断金物350には、タイダウン金物200が一体化されたパネルPNの下面が接合されている。即ち、箱形金物250には、その貫通孔250Aにタイダウン金物200のボルト部材220の軸部が貫通し、その雄ねじ220Aに締結具FMが螺合することで、タイダウン金物200の下端部が接合されている。また、第1のせん断金物350には、その接合部材360がパネルPNの下面に形成されたスリットSL4に嵌合され、パネルPNの一面からドリフトピンを打ちこみ、その軸部を貫通孔360Aに貫通させることで、第1のせん断金物350にパネルPNの下面が接合されている。
【0039】
左右の柱PT及びパネルPNの上面には、連結金物150及び第2のせん断金物400を介して、梁BMの下面が接合されている。即ち、柱PTの上面に形成されたスリットSL1と、梁BMの下面に形成されたスリットSL5と、に亘って連結金物150が嵌合され、柱PT及び梁BMの一面からドリフトピンが夫々打ちこまれ、その軸部が連結金物150の貫通孔150Aに夫々貫通されている。また、パネルPNと一体化された第2のせん断金物400の円筒部材420が梁BMの円孔CH1に嵌合されている。さらに、パネルPNと一体化されたタイダウン金物200のボルト部材220の軸部が梁BMの貫通孔TH1に貫通され、梁BMの上面から突出したボルト部材220が箱形金物250の底面に形成された貫通孔250Aに貫通されている。箱形金物250の底板から突出したボルト部材220の雄ねじ220Aには、締結具FMが螺合されている。
【0040】
なお、締結具FMを締め付けるとき、梁BMに対して箱形金物250がめり込むことを抑制するため、箱形金物250と梁BMとの間に、箱形金物250の底板よりも大きな平面を有する、例えば、矩形形状の金属板からなるプレート(座金)PTを介在させてもよい。また、梁BMに対するタイダウン金物200の締結は、箱形金物250に限らず、プレートPTのみ、底板にのみ貫通孔が形成されたスペーサ金物300などで行ってもよい。
【0041】
かかる構造体の第1実施形態によれば、2本の柱PT及び梁BMからなる門型形状の骨組みに、例えば、地震や台風による水平力が作用すると、これが平行四辺形的に変形しようとする。門型形状の骨組みが変形するとき、その骨組みには矩形形状のパネルPNが嵌め込まれているため、柱PTがパネルPNの側面に接触し、その変形を抑制することができる。この場合、パネルPNの上面と梁BMとの間には、梁BMの軸方向に延びるせん断力が作用するが、そのせん断力は第2のせん断金物400の円筒部材420で受け止められ、骨組みの変形が過度に大きくなることを抑制することができる。また、門型形状の骨組みに上下方向の荷重が作用した場合、第2のせん断金物400の円筒部材420と梁BMの円孔CH1とが相対変位可能なことから、梁BMからパネルPNへと作用する荷重が遮断される。このため、パネルPNで荷重を支持する必要がなく、門型形状の骨組みの構造設計を容易にすることができる。
【0042】
門型形状の骨組みが平行四辺形的変形を生じるとき、これがパネルPNに当接することで、平行に配置されたコンクリート基礎BSと梁BMとが相互に離間する、浮き上がりが発生してしまう。しかし、パネルPNと一体化されたタイダウン金物200を介して、コンクリート基礎BSと梁BMとが連結されているため、コンクリート基礎BSに対する梁BMの相対変位が抑制され、コンクリート基礎BSと梁BMとが相互に離間する、梁BMの浮き上がりを抑制することができる。なお、タイダウン金物200は、コンクリート基礎BSと梁BMとを連結する構成に限らず、例えば、土台と梁、2つの梁、2つの柱など、平行に配置された2つの構造躯体を連結することもできる。
【0043】
ところで、水平力の作用によって門型形状の骨組みに平行四辺形的変形が生じたとき、タイダウン金物200によりコンクリート基礎BSに対する梁BMの変位が抑制されているため、梁BMの上面に位置する箱形金物250などが梁BMにめり込んでしまうおそれがある。そこで、
図13に示すような補強金物550を使用し、箱形金物250などの梁BMへのめり込みを抑制する。
【0044】
補強金物550は、平面視で矩形形状の金属板からなる第1の板部材560と、金属円筒からなる円筒部材570と、平面視で矩形形状の金属板からなる第2の板部材580と、締結具FMと、を有する。第1の板部材560は、その板面にタイダウン金物200のボルト部材220の軸部が貫通可能な貫通孔560Aが形成され、その一辺(短辺)が下方に向けて90°折り曲げられた形状をなしている。なお、第1の板部材560は、単純な矩形形状、円形形状、多角形状など任意の形状であってもよい。円筒部材570は、梁BMの上下方向の寸法(高さ)と同一の全長を有している。第2の板部材580は、その板面にタイダウン金物200のボルト部材220の軸部が貫通可能な貫通孔580Aが形成されている。
【0045】
そして、第1の板部材560は、ボルト部材220の軸部が貫通孔560Aに貫通された状態で、パネルPNと梁BMとの間に配設されている。このとき、第1の板部材560の一辺が下方に向けて折り曲げられているため、この部分がパネルPNの肩部に係止し、パネルPNに対して第1の板部材560が回転することが抑制される。また、円筒部材570は、梁BMの貫通孔TH1に嵌挿された状態で、その内径にボルト部材220の軸部が貫通されている。第2の板部材580は、円筒部材570から上方に突出したボルト部材220の軸部が貫通孔580Aに貫通された状態で、梁BMの上面に載置されている。ここで、梁BMに対する第2の板部材580の回転を抑制するため、梁BMの上面に第2の板部材580が嵌合する矩形形状の凹部CPを形成することもできる。そして、第2の板部材580から突出したボルト部材220の雄ねじ220Aに、例えば、平ワッシャ、スプリングワッシャ及びダブルナットを含む締結具FMが螺合されている。なお、第1の板部材560が単純な矩形形状をなしている場合、梁BMの下面に第1の板部材560が嵌合する矩形形状の凹部(図示せず)を形成し、第1の板部材560の回転を抑制することもできる。
【0046】
このようにすれば、梁BMの貫通孔TH1が形成されている部分は、第1の板部材560、円筒部材570及び第2の板部材580により補強されるため、タイダウン金物200の締結力が作用しても、梁BMの上面に位置する締結具FMが梁BMにめり込んでしまうことを抑制できる。
【0047】
なお、箱形金物250などを介して、第2の板部材580から突出したボルト部材220を締結する場合にも、補強金物550を使用することで、箱形金物250などが梁BMにめり込んでしまうことを抑制できる。また、補強金物550は、
図12に示す構造体に限らず、他の構造体にも使用することができる。さらに、補強金物550は、梁BMに限らず、柱PTなどの木製建築部材にも使用することができる。
【0048】
パネルPNの上面と梁BMの下面とを接合する第2のせん断金物400は、
図14に示すように配設することもできる。即ち、梁BMの下面には、円孔CH1に代えて、第2のせん断金物400の接合部材430が嵌合可能なスリットSL6が形成されている。また、パネルPNの上面には、スリットSL3に代えて、第2のせん断金物400の円筒部材420が嵌合する2つの円孔CH2が形成されている。
【0049】
そして、第2のせん断金物400の接合部材430が梁BMのスリットSL6に嵌合された状態で、梁BMの一面からドリフトピンが打ちこまれ、その軸部が接合部材430の貫通孔430Aが貫通されることで、梁BMと第2のせん断金物400とが一体化されている。また、第2のせん断金物400の円筒部材420は、その下方に位置するパネルPNの円孔CH2に嵌合することで、パネルPNに作用するせん断力を受けている。なお、かかる構成の作用及び効果は、先に説明した例と同様であるので、その説明は省略するものとする(以下同様)。
【0050】
タイダウン金物200は、パネルPNと一体化される構成に限らず、
図15に示すように、柱PTと一体化されてもよい。即ち、柱PTの一側面には、その全長に亘ってタイダウン金物200が嵌合可能な段付形状のスリットSL7が形成されている。そして、柱PTのスリットSL7には、タイダウン金物200が嵌合され、例えば、接着剤又はドリフトピンにより、柱PTとタイダウン金物200とが一体化されている。
【0051】
この場合、柱PTの下面は、タイダウン金物200が嵌合された突出部分と、タイダウン金物200が嵌合されていない平坦部分と、に二分割される。このため、柱PTの下面を支持するため、垂直材接合金物100に代えて、箱形金物250及びスペーサ金物300を使用する。即ち、柱PTの平坦部分は、スペーサ金物300で支持され、その突出部分は、箱形金物250を介してコンクリート基礎BSに締結されている。なお、コンクリート基礎BSに対するスペーサ金物300の締結手順は、箱形金物250の締結手順と同一であるので、その説明は省略する(以下同様)。また、柱PTの平坦部分は、スペーサ金物300に代えて、箱形金物250で支持することもできる。
【0052】
このようにすれば、タイダウン金物200は、柱PTの内部に埋め込むことができる。そして、柱PTの外周面は平坦となるため、例えば、柱PTの横断面を形成する4つの側面を、例えば、耐火性能に優れる石膏ボードで覆い、その周囲を更に木製の被覆材で覆うことで、見た目が良く、耐火性能を有する建築部材とすることができる。柱PTの上面と梁BMの下面とは、柱PTと一体化されたタイダウン金物200で接合されるため、連結金物150が不要となり、柱PT及び梁BMにスリットSL1及びスリットSL5を形成する工数を削減することができる。
【0053】
さらに、コンクリート基礎BSに対してパネルPNの下面を接合する接合金物としては、第1のせん断金物350に代えて、
図16に示すように、第3のせん断金物450を使用することもできる。この場合、パネルPNの下面には、スリットSL4に代えて、第3のせん断金物450の円筒部材460が嵌合可能な、2つの円孔CH3が形成されている。そして、パネルPNの円孔CH3が第3のせん断金物450の円筒部材460に嵌合することで、パネルPNの下面がコンクリート基礎BSに接合されている。なお、この場合、第3のせん断金物450は、パネルPNの上下方向の荷重を受けつつ、これが水平方向に移動しようとする水平力を受けることができる。
【0054】
パネルPNの上面と梁BMの下面とを接合する接合金物としては、第2のせん断金物400に代えて、
図16に示すように、第4のせん断金物500を使用することもできる。この場合、パネルPNの上面には、スリットSL3に代えて、第4のせん断金物500の円筒部材520が嵌合可能な、2つの円孔CH2が形成されている。そして、パネルPNの上面に形成された円孔CH2が第4のせん断金物500の円筒部材520に嵌合することで、パネルPNの上面と梁BMの下面とが接合されている。
【0055】
[第2実施形態]
図17は、木造建築物の2階を前提とした、構造体の第2実施形態を示す。
第2実施形態における構造体では、4つの連結金物150を使用して、2本の梁BM及び2本の柱PTからなる矩形形状の骨組みが構築される。そして、2つのタイダウン金物200、4つの箱形金物250及び2つの第2のせん断金物400を使用して、矩形形状の骨組みに対して嵌め込まれる矩形形状のパネルPNが接合される。
【0056】
柱PTの上面及び下面の中央には、梁BMの軸方向に沿って、連結金物150が嵌合可能な、スリットSL1が夫々形成されている。また、柱PTの一側面には、連結金物150の貫通孔150Aにドリフトピンを打ちこむための小孔(図示せず)が形成されている。一方、下方に位置する梁BMの上面及び上方に位置する梁BMの下面の所定位置には、連結金物150及び第2のせん断金物400の接合部材430が嵌合可能な、スリットSL5及びスリットSL6が夫々形成されている。さらに、パネルPNの左右側面には、先の実施形態と同様に、タイダウン金物200が一体化されており、また、パネルPNの上面及び下面には、第2のせん断金物400の円筒部材420が嵌合可能な、2つの円孔CH2が夫々形成されている。
【0057】
下方に位置する梁BMの上面の所定位置には、その上面から上方へと突出するアンカーボルトAB、並びに、その先端部に螺合する平ワッシャ、スプリングワッシャ及びダブルナットを含む締結具FMを介して、2つの箱形金物250が締結されている。即ち、箱形金物250は、その貫通孔250AがアンカーボルトABの軸部を貫通した状態で梁BMの上面に載置され、その底板から突出するアンカーボルトABの軸部に締結具FMを螺合することで締結されている。
【0058】
下方に位置する梁BMの上面と柱PTの下面とは、梁BMのスリットSL5と柱PTのスリットSL1とに連結金物150が嵌合することで接合されている。このとき、梁BMに対する柱PTの接合を確実ならしめるため、梁BM及び柱PTの一側面からドリフトピンが打ちこまれ、その軸部が連結金物150の貫通孔150Aに貫通されている。
【0059】
箱形金物250及び梁BMの上面には、タイダウン金物200が一体化されたパネルPNの下面が接合されている。即ち、箱形金物250の貫通孔250Aには、タイダウン金物200のボルト部材220の軸部が貫通し、その雄ねじ220Aに締結具FMが螺合することで、箱形金物250に対してタイダウン金物200の下端部が接合されている。このとき、パネルPNの下方に位置する両隅部と箱形金物250が干渉しないように、パネルPNの下方の両隅部が矩形形状に切欠き形成されている。また、下方に位置する梁BMの上面には、そのスリットSL6に第2のせん断金物400の接合部材430が嵌合することで、第2のせん断金物400が接合されている。このとき、梁BMに対する第2のせん断金物400の接合を確実ならしめるため、梁BMの一面からドリフトピンが打ちこまれ、その軸部が接合部材430の貫通孔430Aに貫通されている。さらに、第2のせん断金物400には、その円筒部材420がパネルPNの下面に形成された円孔CH2に嵌合することで、パネルPNの下端部が接合されている。
【0060】
左右の柱PT及びパネルPNの上面には、連結金物150及び第2のせん断金物400を介して、上方に位置する梁BMの下面が接合されている。即ち、柱PTの上面に形成されたスリットSL1と、梁BMの下面に形成されたスリットSL5と、に亘って連結金物150が嵌合され、柱PT及び梁BMの一面からドリフトピンが夫々打ちこまれ、その軸部が連結金物150の貫通孔150Aに夫々貫通されている。また、梁BMと一体化された第2のせん断金物400の円筒部材420がパネルPNの円孔CH2に嵌合されている。さらに、パネルPNと一体化されたタイダウン金物200のボルト部材220の軸部が梁BMの貫通孔TH1に貫通され、梁BMの上面から突出したボルト部材220が箱形金物250の底面に形成された貫通孔250Aに貫通されている。箱形金物250の底板から突出したボルト部材220の雄ねじ220Aには、締結具FMが螺合されている。
【0061】
なお、締結具FMを締め付けるとき、梁BMに対して箱形金物250がめり込むことを抑制するため、箱形金物250と梁BMとの間に、箱形金物250の底板よりも大きな平面を有する、例えば、矩形形状の金属板からなるプレート(座金)PTを介在させてもよい。また、梁BMに対するタイダウン金物200の締結は、箱形金物250に限らず、プレートPTのみ、底板にのみ貫通孔が形成されたスペーサ金物300などで行ってもよい。さらに、梁BMの貫通孔TH1を補強するため、先の実施形態と同様に、補強金物550を使用することもできる。
【0062】
かかる構造体の第2実施形態によれば、2本の柱PT及び2本の梁BMからなる矩形形状の骨組みに、例えば、地震や台風による水平力が作用すると、これが平行四辺形的に変形しようとする。矩形形状の骨組みが変形するとき、その骨組みには矩形形状のパネルPNが嵌め込まれているため、柱PTがパネルPNの側面に接触し、その変形を抑制することができる。この場合、パネルPNの上面と梁BMとの間には、梁BMの軸方向に延びるせん断力が作用するが、そのせん断力は第2のせん断金物400の円筒部材420で受け止められ、骨組みの変形が過度に大きくなることを抑制することができる。また、矩形形状の骨組みに上下方向の荷重が作用した場合、第2のせん断金物400の円筒部材420とパネルPNの円孔CH2とが相対変位可能なことから、梁BMからパネルPNへと作用する荷重が遮断される。このため、パネルPNで荷重を支持する必要がなく、門型形状の骨組みの構造設計を容易にすることができる。
【0063】
なお、第2実施形態においても、
図18に示すように、第2のせん断金物400の上下方向を反転させることができる。また、梁BMとパネルPNとを接合する接合金物として、第2のせん断金物400に代えて、
図19に示すように、梁BMの円孔CH1及びパネルPNの円孔CH2に4つの円筒部材520が嵌合可能な、第4のせん断金物500を使用することができる。さらに、タイダウン金物200は、パネルPNと一体化される構成に限らず、
図19に示すように、柱PTと一体化することもできる。
【0064】
なお、第1実施形態及び第2実施形態においては、門型形状又は矩形形状の骨組みに対してパネルPNを接合する接合金物は、パネルPNの上面及び下面に限らず、パネルPNの左右側面に配設することもできる。
【0065】
第1実施形態において、コンクリート基礎BSの上面に横架材としての土台を締結し、第2実施形態で使用した各種の金物を使用して、矩形形状の骨組みを構築することもできる。また、第1実施形態及び第2実施形態で説明した技術的特徴について、これらを適宜組み合わせたり、任意に置換することもできる。
【解決手段】平行に配置された2つの構造躯体が相互に離間することを抑制する拘束金物としてのタイダウン金物200は、長尺形状の金属製のベース部材210と、ベース部材210の長手方向の両端部に固定されるボルト部材220と、締結具と、を備える。ベース部材210は、構造躯体に形成されたスリットに嵌合可能なように、例えば、平面視で矩形形状を有する金属板からなる。ボルト部材220は、ベース部材210の長手方向に延び、少なくとも先端部の外周に雄ねじ220Aが形成されている。締結具は、例えば、平ワッシャ、スプリングワッシャ及びダブルナットを含み、ボルト部材220の雄ねじ220Aに螺合することができる。そして、平行に配置された2つの構造躯体をタイダウン金物200で連結し、これらが相互に離間することを抑制する。