(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力面の不連続部及び前記負圧面の不連続部は、それぞれを境に、前縁部側よりも後縁部側の方が前記羽根の翼厚が急激に大きくなるように形成された階段形状を有する、請求項5又は6に記載の遠心ファン。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の1つにおける遠心式ファンについて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける遠心式ファンを示す平面図である。
図2は、
図1のA−A線における断面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。
【0026】
図1から
図3を参照して、遠心式ファン1は、ケーシング10と、羽根車30と、モータ60とを備えている。遠心式ファン1は、モータ60が取り付けられている部分を除き、全体として、平面視で略正方形の直方体状に構成されている。遠心式ファン1は、上下方向の寸法(高さ)が比較的小さい、薄型のものである。羽根車30は、モータ60のシャフト61とともに回転するロータ63に取り付けられている。遠心式ファン1は、羽根車30をモータ60により回転させる。遠心式ファン1は、羽根車30の回転に伴って、その吸い込み口33から導入した空気(流体の一例)を、羽根車30の側方に排出させる。すなわち、吸い込み口33から導入された空気は、羽根車30の回転に伴う遠心作用による流体力で、羽根車30の羽根51の間を通過し、羽根車30の径外方に向けて吹き出される。空気は、羽根車30の側方にあるケーシング10の吹き出し口19から排出される。
【0027】
モータ60は、例えば、アウターロータ型のブラシレスモータである。モータ60は、下ケーシング21の中央部にねじやボルト等の締結部材で装着されている。モータ60は、下方に向けて開口するカップ状のロータ(ロータヨーク)63を有している。ロータ63の側周部の内面には、環状のマグネット65が取り付けられている。ロータ63の中央部には、シャフト61が取り付けられている。
【0028】
シャフト61は、ベアリングホルダ66に装着された一対のベアリング66aにより回転可能に支持されている。ベアリングホルダ66の外周部には、ステータ67が設けられている。ステータ67は、積層されたステータコアや、ステータコアに装着された、コイルを巻回したインシュレータなどで構成されている。ステータ67は、マグネット65に対して半径方向(
図2において左右方向)に所定のギャップを隔てて対向配置されている。ステータ67は、回路基板69に接続されている。回路基板69は、例えばプリント配線基板である。回路基板69には、モータ60を制御するための電子部品等が実装されており、モータ60の駆動回路が搭載されている。
【0029】
ケーシング10は、上ケーシング11と、下ケーシング21とが組み合わされて構成されている。具体的には、上ケーシング11と下ケーシング21とが、平面視で四隅に位置するねじ14を用いて互いに組み付けられ、ケーシング10が構成されている。ねじ14は、例えば、下ケーシング21側から差し込まれるボルトである。上ケーシング11と下ケーシング21とは、例えば、ねじ14が配される部分で支柱を挟むようにして互いに組み付けられている。なお、このとき、支柱は、上ケーシング11と下ケーシング21とのどちらか一方と一体で構成されていてもよい。吹き出し口19は、例えば、ねじ14を用いた上ケーシング11と下ケーシング21との締結部分を除いたケーシング10の側部であって、上ケーシング11と下ケーシング21との間に設けられている。
【0030】
羽根車30は、ケーシング10内に収められるようにして配置されている。羽根車30の上方には上ケーシング11が配置されており、下方には下ケーシング21が配置されている。すなわち、遠心式ファン1は、上ケーシング11と下ケーシング21との間に羽根車30を挟むように保持して構成されている。
【0031】
羽根車30は、大まかに、上側シュラウド31と、下側シュラウド41と、上側シュラウド31と下側シュラウド41との間に配置された複数の羽根51とを有している。羽根車30の中央部には、上方に開口する吸い込み口33が形成されている。吸い込み口33は、上側シュラウド31の内側の上端部35に囲まれることで構成されている。複数の羽根51は、適切な間隔で、円周上に配列されている。
【0032】
各羽根51は、同一の湾曲した形状を有している。すなわち、羽根51は、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状を有している。
図1から
図3においては、羽根51の形状は、簡略化して示されている。羽根51の具体的な形状については、後述する。上側シュラウド31、下側シュラウド41、及び羽根51は、例えば、合成樹脂を用いて一体成形で形成される。
【0033】
羽根車30の中央部には、ロータ63がはめ込まれる下側シュラウド41が配置されている。下側シュラウド41の中央部には、ロータ63が配置されるように形成された円筒部43が設けられている。
【0034】
ロータ63は、下側シュラウド41の中央部に設けられている円筒部43にはめ込まれており、羽根車30を保持している。ロータ63は、吸い込み口33の内部で、吸い込み口33の外に向けて、上方に突出するように配置されている。なお、ロータ63が円筒部43を保持している部分の上下方向の高さは、遠心式ファン1を比較的薄型にしつつ、吸い込み口33から吸引される空気がロータ63によって遮られることがないように、比較的低くなるように設定されている。
【0035】
上ケーシング11は、例えばエンジニアリングプラスチックなどの樹脂を用いて形成されている。上ケーシング11の中央部には、開口部13が形成されている。開口部13は、平面視で円形である。開口部13は、羽根車30に設けられている吸い込み口33に空気が導入されるように形成されている。開口部13は、上側シュラウド31により構成される吸い込み口33よりわずかに大きい内径を有している。すなわち、本実施の形態において、開口部13の大きさは、吸い込み口33の大きさと略同等である。
【0036】
下ケーシング21は、例えば、鉄などの金属板を用いて形成されている。下ケーシング21の中央部には、下方に窪む凹部23が形成されている。凹部23は、椀状に形成されている。
図2に示されるように、本実施の形態において、凹部23には、モータ60と、回路基板69などのモータ60の駆動回路とが装着されている。モータ60は、ねじやボルト等の締結部材で下ケーシング21に装着されているが、締結部材の代わりにベアリングホルダ66の下部を凹部23にかしめ固定して下ケーシング21に装着した構成であってもよい。
【0037】
下ケーシング21の外周部は、軸方向(
図2上下方向)に折り曲げられた側板となっている。側板が設けられていることにより、下ケーシング21の剛性が高められている。
【0038】
下ケーシング21の上面のうち、凹部23の周囲の部分は、羽根車30の下面に面する隔壁部29となっている。隔壁部29は、羽根車30の下面に近接するように平面状に形成されている。
【0039】
図2に示されているように、羽根車30の下側シュラウド41は、各羽根51のうち少なくとも外周側の部位が隔壁部29に面するように、シャフト(羽根車30の回転軸)61寄りの部分にのみ設けられている。すなわち、羽根車30のうち隔壁部29に対面する部位には、各羽根51が露出している。下ケーシング21のうち羽根車30に対向する面は、吸い込み口33から導入された空気を側方に誘導する壁面の一部となっている。羽根51は、軸方向において、隔壁部29と所定のギャップを隔てて対向配置されている。なお、各羽根51の下部は、その少なくとも一部分が隔壁部29側に露出していてもよいし、その全部分が隔壁部29側に露出していてもよい。
【0040】
図3に示されるように、下側シュラウド41の上面の一部は、側断面において下に凸の円弧状の曲線となるような、曲面49となっている。下側シュラウド41のうち外周端部45は、上側シュラウド31の上端部35の鉛直下方近傍に位置している。また、下側シュラウド41のうち内周端部47は、ロータ63の外周上端部63aの近傍に位置している。曲面49は、外周端部45と内周端部47との間に形成されている。曲面49のうち、最も下方にあるのが外周端部45である。
【0041】
なお、ケーシング10の中に収納される羽根車30の外径寸法は、ケーシング10の一辺の寸法より小さく設定されている。これにより、回転する羽根車30がケーシング10の外縁より突出することがなく、羽根車30の他部材との接触や、接触による破損等が防止されている。
【0042】
下ケーシング21は、羽根車30において空気をガイドする主板としての機能を兼ねると共に、ケーシング10の基板としての機能も有している。このため、羽根車30と隔壁部29との間に形成されたギャップの設定は重要である。ギャップが大きすぎる場合、吸い込み口33から吸入された空気は、羽根51の間を通過すると共に、ギャップにも流れてしまう。この結果、羽根車30から吹き出された空気の圧力が低減し、送風特性が低下する。一方で、ギャップが小さすぎる場合には、次のような問題がある。すなわち、各部品の寸法精度のバラツキが生じると、羽根51が隔壁部29に接触してしまう可能性がある。このような接触を防止するためには、各部品の寸法精度を高精度に管理する必要が生じ、遠心式ファン1の製造コストが上昇してしまう。羽根車30と隔壁部29との間のギャップは、このような問題点を鑑み、適切に設定されている。
【0044】
次に、羽根車30の構造について、より具体的に説明する。
【0045】
図4は、羽根車30の側面図である。
図5は、羽根車30の底面図である。
図6は、
図5のB−B線における断面図である。
【0046】
図4から
図6を参照して、羽根車30は、全体として円盤形状を有する、薄型のものである。これにより、遠心式ファン1は、薄型に構成できる。
図5に示されるように、羽根車30には、例えば7つの羽根51が配置されている。それぞれの羽根51は、圧力面53と負圧面54とを有している。圧力面53は、羽根車30の回転方向(
図5において、時計回り方向の反対方向:矢印Rで示す方向)の前側に面している。負圧面54は、圧力面53とは逆側に面している。
【0047】
羽根51は、後向き羽根で、いわゆるターボ型である。羽根51は、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状を有している。各羽根51の具体的な形状は、例えば次のようである。すなわち、後述する
図7に示されるように、羽根車30の回転軸の伸びる方向から圧力面53をみたとき、その形は、大まかに、3種類の円弧をつなげた形状を有している。これらの円弧は、隣り合う円弧同士が正接するようにして接続されている。
【0048】
羽根51は、羽根車30の回転軸側すなわち吸い込み口33側が前縁となり、羽根車30の側周面側が後縁となる。
図6に示されるように、各羽根51の前縁は、上側シュラウド31から下側シュラウド41に近づくにつれて、羽根車30の回転軸に近づくようなテーパ形状に構成されている。各羽根51の前縁と下側シュラウド41とは、前縁部51aで接続されている。羽根51の後縁は、羽根車30の回転軸と略垂直な形状を有している(後縁部51b)。
【0049】
図7は、羽根51の圧力面53の形状について説明する図である。
【0050】
本実施の形態において、羽根51の入口角、出口角、及び反り角は、それぞれ、45度程度、30度程度、55度程度になっている。なお、羽根51の入口角や出口角、及び反り角は、このような値に限られるものではない。なお、入口角とは、
図7に示されている圧力面53を示す曲線と内周縁(底面視で、羽根車30の回転軸を中心とし羽根51の前縁がその円周上に位置するような円)とが接する点における、圧力面53を示す曲線の接線と内周縁の接線とがなす角であって、90度以下となる側の角をいう。他方、出口角とは、圧力面53を示す曲線と外周縁(底面視で、羽根車30の回転軸を中心とし羽根51の後縁がその円周上に位置するような円)とが接する点における、圧力面53を示す曲線の接線と外周縁の接線とがなす角であって、90度以下となる側の角をいう。反り角は、底面視で、羽根51の前縁と羽根車30の回転軸とを結ぶ線と、羽根51の後縁と回転軸とを結ぶ線とがなす角である。
【0051】
圧力面53の形状は、例えば、次のようにして定められている。すなわち、設計仕様やモータのサイズなどに応じて、内周縁及び外周縁の大きさが決まる。また、設計仕様やNZ音などの騒音値を低下させることを鑑みて、入口角、出口角、及び反り角が決定される。そして、底面視で、圧力面53が通る第1の点〜第4の点が決定される。すなわち、
図7に示されるように、第1の点P1は、後縁の位置を示し、出口角の頂点となる。第4の点P4は、前縁の位置を示し、入口角の頂点となる。第2の点P2は、外周縁を示す円C1の同心円であって円C1に対して3/4のサイズを有する第1の円C2と、回転軸から第4の点P4に伸びる直線L4に対して反り角の3/10の角度A2をなす直線L2との交点である。第3の点P3は、上記第1の円C2の同心円であって円C2と内周縁を示す円C4との中間に位置する第2の円C3と、直線L4に対して反り角の3/20の角度A3をなす直線L3との交点である。そして、第1の点P1と第2の点P2との間、第2の点P2と第3の点P3との間、第3の点P3と第4の点P4との間を、それぞれ円弧R1,R2,R3で結ぶ。このとき、3つの円弧R1,R2,R3は、入口角、出口角が所定の角度になるように、かつ、互いに接続される2つの円弧R1,R2、及び円弧R2,R3同士が正接関係(2つの円弧の接続点における2つの円弧の接線同士が重なる関係)となるように、描かれる。これにより、圧力面53の形状が定まる。
【0052】
負圧面54は、底面視で、圧力面53との間隔が羽根車30の回転軸から離れるにつれて小さくなるように、大まかに圧力面53に沿うような湾曲形状を有している。これにより、羽根51は、翼形状の外径を有している。
【0053】
なお、羽根車30の回転軸の伸びる方向から圧力面53をみたとき、その形は、3点を通る複数の高次関数を組み合わせて示される形状を有していてもよい。
【0054】
このように、本実施の形態において、羽根51の圧力面53の形状が、底面視で3つの円弧により構成されている。これにより、遠心式ファンの高流量化、高静圧化、低騒音化を進めることができる。
【0055】
なお、本実施の形態において、各羽根51の厚みすなわち各羽根51における圧力面53と負圧面54との間隔は、上側シュラウド31から回転軸に平行な方向に離れるに従って、小さくなっている。換言すると、羽根51は、隔壁部29に近づくに従って薄くなるように形成されている。これにより、羽根51の圧力面53と、その羽根51に隣り合う羽根51の負圧面54との距離が、隔壁部29に近づくにつれて大きくなっている。
【0056】
図8は、羽根51の断面を模式的に示す図である。
【0057】
図8において示されている断面は、回転軸に対して垂直な水平面に対して垂直であって底面視で圧力面53に対して略垂直な断面におけるものである。すなわち、
図8において示されている断面は、
図5のC−C線におけるものに対応する。
図8においてハッチングは省略されている。矢印Zは、羽根車30の回転軸に平行な方向(上方)を示す。
【0058】
圧力面53は、上側シュラウド31に近づくにつれて羽根51の外周側(
図8において左側)に近づくように負圧面54から離れている。換言すると、羽根51は、テーパ状の圧力面53を有している。すべての羽根51の、内側から外側までの全域において、このようなテーパ状となるように圧力面53が設けられている。
【0059】
図8において、角度θは、羽根車30の回転軸に対する、圧力面53の傾きすなわちテーパ角を示す。テーパ角θは、例えば、4度〜8度程度に設定されている。羽根51のうち、負圧面54は、
図8に示されるような断面において回転軸に略平行になっている。すなわち、負圧面54は、羽根車30の回転軸に垂直な水平面に対して、垂直な面となるように形成されている。羽根51の下端部は、
図8に示される断面において、略水平(
図8の矢印Zに垂直な平面に対して平行)になっている。これにより、羽根51は、
図8や
図8に示されているような断面において、台形形状を有している。
【0060】
このように羽根51が形成されていることにより、圧力面53のテーパ角が0度である場合(すなわちテーパ角がない場合)と比べて、高静圧を確保しつつ、騒音値を低減できる。なお、羽根51には、このようなテーパ角が設けられていなくてもよい。
【0062】
本実施の形態において、各羽根51において、圧力面53と負圧面54とのそれぞれには、階段部57,58(不連続部の一例)が形成されている。
【0063】
図9は、羽根車30の底面側を示す斜視図である。
図10は、羽根車30の上面側を示す斜視図である。
【0064】
図9に示されるように、各羽根51の圧力面53のうち、羽根51の前縁部51a側には、第1階段部57が設けられている。また、
図10に示されるように、負圧面54のうち、前縁部51a側には、第2階段部58が設けられている。本実施の形態において、圧力面53、負圧面54のそれぞれは、第1階段部57、第2階段部58において1段の段差形状を有している。すなわち、圧力面53、負圧面54のそれぞれは、第1階段部57、第2階段部58において部分的になめらかさが失われた(以下、不連続であるということがある。)形状を有している。
【0065】
図11は、
図4のG−G線における断面図である。
【0066】
図11に示されている断面は、羽根車30の回転軸に垂直な、各羽根51の前縁部51aすなわち各羽根51の下側シュラウド41との接続部を通る平面におけるものである。
図11に示されるように、各羽根51の第1階段部57は、羽根車30の回転軸からの距離が互いに等しくなるような位置に形成されている。同様に、各羽根51の第2階段部58も、羽根車30の回転軸からの距離が互いに等しくなるような位置に形成されている。
【0067】
第1階段部57や第2階段部58は、各羽根51において、前縁部51a側に近い所定の範囲内に納まる位置に形成されている。より具体的には、第1階段部57や第2階段部58は、次のような位置に形成されている。すなわち、羽根51の前縁部51aを通り羽根車30の回転軸を通る、羽根51の内周円C11の直径を翼内径dとする。また、後縁部51bを通り羽根車30の回転軸を通る、羽根51の外周円C12の直径を翼外径Dとする。なお、
図11で示される前縁部51aを通る断面において、内周円C11と外周円C12とは、
図7において示される円C4、円C1にそれぞれ略一致する。
【0068】
本実施の形態において、第1階段部57及び第2階段部58のそれぞれについて、それを通り羽根車30の回転軸を中心とする円の直径(段差位置)rは、次式で示される範囲内にある。
【0070】
すなわち、第1階段部57及び第2階段部58のそれぞれは、前縁部51aから所定の距離だけ径方向に離れた位置よりも内側となる範囲(円C13より内側の範囲)に位置している。ここで、所定の距離とは、前縁部51aから後縁部51bまでの羽根車30の径方向の距離の、40パーセントとなる距離である。
【0072】
図12に示されるように、第1階段部57及び第2階段部58は、その部分で、羽根51の翼型において翼厚が急激に変化し、それぞれ圧力面53や負圧面54において段差ができるように形成されている。本実施の形態では、第1階段部57及び第2階段部58のそれぞれを境に、前縁部51a側よりも後縁部51b側の方が翼厚が急激に大きくなるように、段差が形成されている。
【0073】
第1階段部57及び第2階段部58のそれぞれは、例えば、羽根車30の回転軸方向に沿って段差ができるように形成されている。換言すると、第1階段部57及び第2階段部58のそれぞれは、羽根車30の回転軸と略平行な段差である。これにより、羽根車30を比較的容易に成型することができる。すなわち、羽根車30を成型するための金型として、比較的簡素な構造のものを用いることができる。
【0074】
本実施の形態においては、このように階段部57,58が設けられていることにより、羽根車30の回転時に、騒音の発生や効率の低下の原因となる、各羽根51における渦の発生が軽減される。すなわち、第1階段部57や第2階段部58が設けられていることにより、遠心式ファン1の動作時に騒音が低下し、効率が上昇する。
【0075】
図13は、羽根車30の回転時における圧力面53側の渦の発生領域を示す図である。
図14は、羽根車30の回転時における負圧面54側の渦の発生領域を示す図である。
図15は、階段部57,58が設けられていない羽根車における圧力面53側の渦の発生領域を示す図である。
図16は、階段部57,58が設けられていない羽根車における負圧面54側の渦の発生領域を示す図である。
【0076】
図13から
図16においては、羽根車30で空気を送風する場合に羽根車30の周りで発生する空気の渦について、互いに同条件でシミュレーションを行った結果が示されている。各図において、灰色で示される部分は、発生した渦を示している。
図13及び
図14については、本実施の形態に係る、階段部57,58が形成された羽根51が示されている。他方、
図15及び
図16については、比較例として、階段部57,58が形成されていない羽根651が示されている。
【0077】
図13と
図15とを比較してわかるように、本実施の形態においては、圧力面53に第1階段部57が形成されていることにより、特に第1階段部57の下流側(後縁部51bに近い側)において渦の発生が少なく、空気の流れの剥離が発生しにくくなっていることがわかる。同様に、
図14と
図16とを比較してわかるように、負圧面54に第2階段部58が形成されていることにより、特に第2階段部58の下流側において渦の発生が少なくなっていることがわかる。
【0078】
なお、
図15を参照して、圧力面53において、第1階段部57が形成されていない場合、前縁部51aから、底面視で羽根車30の径方向に40パーセントを超えて離れた位置において、渦の発生がみられる(
図14において符号Vで示される領域。)。すなわち、圧力面53において、底面視で円弧C13から円弧C12までの間の領域において、渦が発生しやすい。したがって、この領域よりも手前の領域、すなわち前縁部51aから後縁部51bまでの羽根車30の径方向の距離の40パーセントとなる位置(円弧C13で示される位置)よりも前縁部51a側の範囲に、第1階段部57を設けることで、効果的に渦の発生を低減させることができる。負圧面54においても、同様の領域において渦が発生しやすいので、前縁部51aから後縁部51bまでの羽根車30の径方向の距離の40パーセントとなる位置よりも前縁部51a側の範囲に、第2階段部58を設けることで、効果的に渦の発生を低減させることができる。
【0079】
図17は、遠心式ファン1の騒音レベルを示すグラフである。
【0080】
図17においては、遠心式ファン1を駆動させたときに発生するノイズの測定結果が、階段部57,58が設けられていない遠心式ファン(比較例)を駆動させたときの同測定結果と比較して示されているものである。グラフからわかるように、本実施の形態に係る遠心式ファン1では、周波数が高い一部の領域を除き、通常使用される広い周波数領域で、比較例よりも騒音レベルが低下していることがわかる。特に、騒音レベルが比較的大きい低回転域における騒音レベルの低下が顕著である。騒音特性図のオーバーオール値として比較すると、遠心ファン1では、比較例に対して1.2dBAの騒音値の低減効果が得られる。
【0081】
図18は、遠心式ファン1のP−Q線図である。
【0082】
図18においては、遠心式ファン1と、階段部57,58が設けられていない遠心式ファン(比較例)とのそれぞれのP−Q線図が示されている。グラフからわかるように、本実施の形態に係る遠心式ファン1は、最大流量時から最大静圧時まで、略全域にわたり、比較例と比較して、良好な特性を有している。すなわち、遠心式ファン1は、高い効率を有するといえる。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態においては、遠心式ファン1の各羽根51には階段部57,58が形成されている。これにより、遠心式ファン1を高効率化することができ、静音化を進めることができる。したがって、遠心式ファン1を用いた製品を、低騒音化することができる。このような遠心式ファン1は、特に吸い込み冷却を要する製品(例えば、家電、パーソナルコンピュータ、OA機器、車載機器等)に広く適応可能である。
【0084】
階段部57,58は、上述のように、効果的に羽根51周りに発生する渦を抑制できる位置に配置されている。したがって、効果的に、遠心式ファン1の効率を向上させることができる。
【0085】
遠心式ファン1は、羽根51の圧力面53にテーパ角が設けられ、圧力面53がテーパ状になるように構成されている。圧力面53をテーパ状にすることにより、羽根車30を用いた遠心式ファン1において、最大静圧を高くし、騒音の発生を抑えることができる。したがって、遠心式ファン1を、薄型であって、効率が高く、かつ、騒音の発生が抑えられたものとすることができる。
【0086】
各羽根51は、圧力面53が底面視で3以上の円弧の組合せ、又は高次間数曲線となるように構成されている。したがって、空気の流れに沿った効率の良い羽根形状の作成が可能となり、高流量・高静圧化・低騒音化につながるという効果がある。
【0088】
なお、羽根51には、上述の第1階段部57及び第2階段部58のような階段形状の段差に代えて、例えば複数の段差からなる溝など、他種の段差形状を有する不連続部が設けられていればよい。また、不連続部は、複数の階段、溝で構成されていてもよい。このような不連続部は、羽根51の圧力面53及び負圧面54の両方又はいずれか一方のうち、羽根51の前縁部51a側に形成されていればよい。すなわち、不連続部が設けられている面において、流体の流れの剥離が発生しにくくなるため、上述と同様の効果を得ることができる。
【0089】
不連続部は、羽根車30の回転軸に平行な方向に沿って、圧力面53や負圧面54が起伏するように設けられていればよい。これにより、羽根車30を形成する側の金型を簡素な構造とすることができ、羽根車30を容易に製造できる。例えば、金型を、可動側と固定側との2分割構造で構成することができる。
【0090】
図19は、本実施の形態の第1の変型例に係る遠心式ファン1の羽根車を示す斜視図である。
図20は、第1の変型例に係る遠心式ファン1の羽根車の羽根形状を説明する図である。
【0091】
図19に示されるように、羽根車130の基本的な構造は、上述の羽根車30のそれと同様である。羽根車130においては、階段部57,58が形成された羽根51に代えて、溝部(不連続部の一例)157,158(第1溝部157、第2溝部158)が形成された羽根151が設けられている。
【0092】
図20は、羽根車130において、
図11と同じ平面における断面を示すものである。
図20に示されるように、溝部157,158は、それぞれ、圧力面53、負圧面54に、3つの溝を有している。各溝は、本実施の形態において、羽根151の前縁部51a付近から後縁部51b側に向けて略等間隔に並ぶように設けられている。溝部157,158が形成されていることにより、圧力面53や負圧面54は、不連続となっている。
【0093】
このように溝部157,158が設けられていることにより、上述と同様の効果を得ることができる。すなわち、溝部157,158に影響されることにより、羽根151の周りでは、流体の流れの剥離が生じにくくなる。したがって、このような羽根車130を有する遠心式ファン1においても、高効率化、低騒音化を実現できる。
【0094】
図21は、本実施の形態の第2の変型例に係る遠心式ファン1の羽根車を示す斜視図である。
図22は、第2の変型例に係る遠心式ファン1の羽根車の羽根形状を説明する図である。
【0095】
図21に示されるように、羽根車230の基本的な構造も、上述の羽根車30のそれと同様である。羽根車230においては、階段部57,58が形成された羽根51に代えて、階段部(不連続部の一例)257,258(第1階段部257、第2階段部258)が形成された羽根251が設けられている。
【0096】
図22は、羽根車130において、
図11と同じ平面における断面を示すものである。
図22に示されるように、階段部257,258は、それぞれ、圧力面53、負圧面54に、2つの段差を有している。各段差は、本実施の形態において、羽根251の前縁部51a付近から後縁部51b側に向けて、段階的に羽根251の翼厚が増加するように設けられている。このような階段状の階段部257,258が形成されていることにより、圧力面53や負圧面54は、不連続となっている。
【0097】
このように階段部257,258が設けられていることにより、上述と同様の効果を得ることができる。すなわち、階段部257,258に影響されることにより、羽根251の周りでは、流体の流れの剥離が生じにくくなる。したがって、このような羽根車230を有する遠心式ファン1においても、高効率化、低騒音化を実現できる。
【0098】
なお、上述のように、各羽根51,151,251において、テーパ状の圧力面53が形成されているところ、第1階段部57,257や第1溝部157は、圧力面53の表面に沿うようにして段差や溝が形成されているものであってもよい。他方、第1階段部57,257や第1溝部157は、その圧力面53の表面からの段差の高さや溝の深さが、回転軸方向に沿って変化するように形成されていてもよい。いずれの場合でも、遠心式ファン1の高効率化及び低騒音化を実現することができ、かつ、羽根車30,130,230を容易に成形することができる。
【0100】
なお、階段部や溝部などの不連続部は、圧力面側と負圧面側の両側に設けられているものに限られない。例えば、圧力面側のみに不連続部が設けられていたり、負圧面側のみに不連続部が設けられていたりしてもよい。
【0101】
不連続部に設けられている段差や溝部の数は、前縁部から後縁部にかけて数えて、1以上であればよい。また、圧力面又は負圧面に、不連続部として、1以上の段差と1以上の溝部とが並んで設けられていてもよい。
【0102】
羽根は、テーパ状の圧力面を有するものに限られない。羽根の内側から外側までの領域のうち、一部分のみにおいて、圧力面がテーパ状になっていてもよい。また、羽根の下端部(隔壁部側の部位)においては圧力面が負圧面と略同様に水平面に略垂直な面となり、圧力面のうち上側シュラウドに近い部位のみがテーパ状となるように構成されていてもよい。また、複数の羽根のうち、いくつかの数の羽根においてのみ、圧力面がテーパ状となるように構成されていてもよい。
【0103】
羽根の圧力面は、上述の
図8のような断面において直線的に示されるようなテーパ状のものに限られない。例えば、圧力面が、上述のような断面において、若干湾曲しながら、隔壁部に近づくにつれて負圧面に近づくように形成されていてもよい。
【0104】
底面視における羽根の圧力面の大まかな形状は、上述のような3つの円弧をつなげた形状でなくてもよいし、3点を通る高次関数を組み合わせたものではなくてもよい。適宜、所望の要件を満足するような形状となるように羽根が形成されていればよい。
【0105】
負圧面は、上述のように水平面に対して略水平になっていなくてもよい。例えば、負圧面も、圧力面と同様に、若干傾いていてもよい。
【0106】
ケーシングの形状は、平面視で略正四角形に限定されるものではない。ケーシングは、多角形、円形、非対称形状を含め、任意のどのような形状であってもよい。上ケーシングと下ケーシングとの締結箇所は、平面視で上ケーシングの四隅の内側に限られない。例えば、上ケーシングの平面視で略正方形をなす外周縁から外方に突出するように、上ケーシングに連接して設けられた箇所に、上ケーシングと下ケーシングとを結合するためのねじや支柱等が設けられていてもよい。
【0107】
なお、上ケーシングと下ケーシングとを締結する箇所において、上ケーシングと下ケーシングとの間に支柱を設ける場合には、支柱の形状は、例えば次のようにすればよい。すなわち、支柱は、上ケーシングと下ケーシングとを結合するためのねじを貫通させることができる程度の大きさを有する略円筒形状とすればよい。このような形状の支柱を用いることにより、羽根車から吹き出された空気が、ほとんど抵抗を受けることなく、ケーシングの側面から外方に吹き出されるので、遠心式ファンの低騒音化を図ることができる。
【0108】
下ケーシングは、例えば樹脂材料など、金属板以外を用いて構成されていてもよい。上ケーシングと下ケーシングとは一体に形成されていてもよい。
【0109】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。