(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282749
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】骨伝導スピーカーの音漏れ抑制方法及び骨伝導スピーカー
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20180208BHJP
G10K 11/175 20060101ALI20180208BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
H04R1/00 317
G10K11/175
H04R1/02 101Z
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-545828(P2016-545828)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-502615(P2017-502615A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】CN2014094065
(87)【国際公開番号】WO2015101181
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】201410005804.0
(32)【優先日】2014年1月6日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516203519
【氏名又は名称】シェンヂェン ボクステック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN VOXTECH CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100148356
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 英人
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チー シン
(72)【発明者】
【氏名】リァォ フォンユン
【審査官】
堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−055571(JP,A)
【文献】
特開2013−218248(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/047609(WO,A1)
【文献】
特開2006−332715(JP,A)
【文献】
特開2014−072555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
G10K 11/175
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音漏れ抑制方法であって、
振動パネルと、前記振動パネルを振動させるトランスジューサと、前記振動パネルと前記トランスジューサを収容し、トランスジューサの振動に伴って音漏れの音波を発生する筐体と、前記筺体上に位置すると共に前記筺体内部の音波を前記筺体の外部に導出し、前記導出音波が前記音漏れの音波と干渉を形成し、前記干渉が前記音漏れの音波の振幅を抑制する少なくとも1個の音導孔と、を含み、前記少なくとも1個の音導孔は、ダンパー層を含み、前記ダンパー層が前記導出音波の位相及び振幅を調整するために設けられる骨伝導スピーカーを用意することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1個の音導孔は、前記筺体に位置する2個の音導孔を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記筺体は、底部又は側壁を含み、前記少なくとも1個の音導孔が前記底部又は前記側壁に位置することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記音導孔の位置は、次の要因のうちの少なくとも1つによって决定され、前記要因が前記トランスジューサの振動周波数、前記少なくとも1個の音導孔の形状、前記少なくとも1個の音導孔の数量、前記音漏れの音波の振幅を抑制するターゲットゾーン、或いは前記音漏れの音波の振幅を抑制する周波数範囲を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導出音波は、少なくとも2個の同位相の音波を含み、前記少なくとも2個の同位相の音波が同一波長の音漏れの音波の振幅を抑制することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記導出音波は、少なくとも2個の異なる位相の音波を含み、前記少なくとも2個の異なる位相の音波が波長の異なる音漏れの音波の振幅を抑制することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1個の音導孔は、少なくとも2個の部位を含み、前記少なくとも2個の部位が少なくとも2個の同位相の音波を発生するように設けられると共に同一波長の音漏れの音波の振幅を抑制することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1個の音導孔は、少なくとも2個の異なる部位を含み、前記少なくとも2個の異なる部位が少なくとも2個の異なる位相の音波を発生するように設けられると共に波長の異なる音漏れの音波の振幅を抑制することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
振動パネルと、
前記振動パネルを振動させるトランスジューサと、
前記振動パネルと前記トランスジューサを収容し、トランスジューサの振動に伴って音漏れの音波を発生する筐体と、
前記筺体上に位置すると共に前記筺体内部の音波を前記筺体の外部に導出し、前記導出した音波が前記音漏れの音波と干渉を形成し、前記干渉が前記音漏れの音波の振幅を抑制する少なくとも1個の音導孔と、
を含み、
前記少なくとも1個の音導孔は、ダンパー層を含み、前記ダンパー層が前記導出音波の位相及び振幅を調整するために設けられることを特徴とする骨伝導スピーカー。
【請求項10】
前記筺体は、底部又は側壁を含み、前記少なくとも1個の音導孔が前記底部又は前記側壁に位置することを特徴とする請求項9に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項11】
前記筺体は、円柱形側壁を含み、前記少なくとも1個の音導孔が前記円柱形側壁に位置することを特徴とする請求項9に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項12】
前記少なくとも1個の音導孔は、2個の音導孔を含むことを特徴とする請求項11に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項13】
前記2個の音導孔は、前記円柱形側壁の軸方向に沿う異なる高さに位置することを特徴とする請求項12に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項14】
前記少なくとも1個の音導孔は、前記底部の中心に位置することを特徴とする請求項10に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項15】
前記ダンパー層は、調音紙、調音材、不織布、シルク、綿布、スポンジ或いはゴムのいずれか1種で製造されることを特徴とする請求項9に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項16】
前記少なくとも1個の音導孔の形状は、円形、楕円形又は四角形とすることを特徴とする請求項9に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項17】
前記トランスジューサは、磁性体とボイスコイルとを含み、或いは前記トランスジューサが圧電セラミックを含むことを特徴とする請求項9に記載の骨伝導スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導装置技術に関し、特に、骨伝導スピーカーの音漏れ抑制方法及び音漏れを抑制できる骨伝導スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
骨伝導スピーカーは、振動スピーカーとも呼ばれ、音声信号と同じ周波数及び対応する幅の機械振動を発生させて人体組織及び骨格を押すことで、蝸牛内の聴覚神経を刺激し、人に音を知覚させる。骨伝導スピーカーは、骨伝導イヤホンとも呼ばれる。
【0003】
骨伝導スピーカーの原理に基づくと、その構造は
図1A及び
図1Bに示すように、一般的に開口状の筐体110と振動パネル121とトランスジューサ122と連結部材123とを含む。トランスジューサ122は、電気信号を機械振動に変換する素子である。振動パネル121とトランスジューサ122とは、互いに固結し、トランスジューサ122の駆動下で、同時に振動する。振動パネル121は、筐体110の開口部から突出し、人体の皮膚に押し当てられる。振動パネル121の振動が人体組織と骨格を通じて聴覚神経に伝わることで、人に音が知覚される。連結部材123は、トランスジューサ122と筐体110との間に設けられ、トランスジューサ122を筐体110内に固定するために用いられる。トランスジューサ122に対する振動の拘束を抑制するため、一般的に、連結部材123は弾性材料で製造される。
【0004】
しかしながら、トランスジューサ122の機械振動は、振動パネル121を振動させるだけではなく、連結部材123を通じて筐体110に伝導し、筐体110の振動をも発生させる。よって、骨伝導スピーカーが発生する機械振動は、人体組織を押し、振動パネル121と筐体110の人体組織に接触していない部分において空気を押すことで、空気音を発生させる。この種の空気音は、音漏れとなる。「音漏れ」は、幾つかの応用場面においては無害であるが、例えば骨伝導スピーカーで通信している時プライバシーを保護したい時、又は音楽を聴いている時他人に迷惑をかけたくない時といった幾つかの応用場面においては、望まれない。
【0005】
音漏れ問題を解決するため、特許文献1は、二重ハウジング及び二重磁界構造の骨伝導スピーカーを開示している。特許文献1が提供するスピーカーは、
図2に示すように、上部開放の第1筐体210と、第1筐体210の外部に離隔して配置され、第1筐体210を取り囲む第2筐体220とを含む。第1筐体210の内部において電気信号を入力できる可動コイル230と、両者間に二重磁界を形成し、可動コイル230を通じて磁界中に置き、吸着力と反発力の作用下で振動する内部磁性体240及び外部磁性体250と、可動コイル230と連接し、可動コイル230の振動を受信できる振動板260と、振動板260の外側から連接し、使用者の皮膚に接触して機械振動を伝達する振動ユニット270と、を含む。特許文献1が提供する方案は、第1筐体210の外側に第2筐体220を包囲することであり、第2筐体220で第1筐体210の振動が外方へ拡散することを阻止し、音漏れを一定程度低減することを目的とする。
【0006】
ただし、特許文献1では、第2筐体220と第1筐体210との固結により、第2筐体220の振動が避けられないことで、第2筐体220は比較的良好な密封効果を奏することが困難であり、実際の音漏れ低減効果が低い。且つ、第2筐体220によりスピーカーの全体的な体積と重量が増え、コストが増加するだけではなく、組立工程も複雑化し、スピーカーの精度と信頼性も低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許第10−2009−0082999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、骨伝導スピーカーの音漏れを効果的に低減することが可能な、骨伝導スピーカーの音漏れ抑制方法及び骨伝導スピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の側面によれば、骨伝導スピーカーの音漏れ抑制方法が提供される。当該方法は、
人体の皮膚に押し当てられると共に振動を伝達する振動パネルと、トランスジューサと、少なくとも一部分に少なくとも1個の音導孔が設けられた筐体とを備える骨伝導スピーカーを提供するステップと、
トランスジューサにより振動パネルを振動させるステップと、
筐体をもトランスジューサにより振動させると共に筐体外の空気を押して空気中に伝播する音漏れの音波を形成するステップと、
筐体内の空気が押されることで形成された筐体内の音波を音導孔から前記筐体の外部に導出し、当該音波と音漏れの音波との干渉を生成することで、骨伝導スピーカーの音漏れを抑制するステップと、を含む。
【0010】
上記方法において、前記音導孔を、前記筐体の側壁の上部、中部、下部及び/又は底部に設けることが好適である。
【0011】
上記方法において、音波の位相及び振幅を調整するため、前記音導孔の開口部にダンパー層を設けることが好適である。
【0012】
上記方法において、異なる前記音導孔の間に同じ位相が存在するように前記音導孔を設けることで、同一波長の前記音漏れの音波を抑制し、或いは、異なる前記音導孔の間に異なる位相が存在するように前記音導孔を設けることで、異なる波長の前記音漏れの音波を抑制することが好適である。
【0013】
上記方法において、同一の前記音導孔の異なる部位の間に同じ位相が存在するように前記音導孔を設けることで、同一波長の前記音漏れの音波を抑制し、或いは、同一の前記音導孔の異なる部位の間に異なる位相が存在するように前記音導孔を設けることで、異なる波長の前記音漏れの音波を抑制することが好適である。
【0014】
本発明の第二の側面によれば、筐体と振動パネルとトランスジューサとを含む骨伝導スピーカーが提供される。当該骨伝導スピーカーにおいて、
前記トランスジューサは、振動を発生させるために用いられ、前記筐体の内部に収容され、
前記振動パネルは、皮膚に押し当てられると共に振動を伝達するために用いられ、
前記筐体の少なくとも一部分に少なくとも1個の音導孔が設けられており、
前記筐体の内部の空気振動により形成された前記筐体内の音波を前記音導孔から前記筐体の外部に導出し、当該音波と前記筐体の振動により押された前記筐体外の空気で形成される音漏れの音波との干渉を生成することで、前記音漏れの音波の振幅を下げる。
【0015】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記筐体は、側壁と底壁とを備え、前記音導孔が前記側壁及び/又は前記底壁に設けられていることが好適である。
【0016】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記音導孔は、前記側壁の上部、中部及び/又は下部に設けられていることが好適である。
【0017】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記側壁は、円柱形であり、前記側壁に設けられた前記音導孔は、少なくとも2個であり、前記側壁の周方向に環状に均一又は不均一に分布していることが好適である。前記筐体は、その他の形状とすることもできる。
【0018】
上記骨伝導スピーカーにおいて、円柱形の前記側壁の軸方向に沿った高さが異なる位置に、前記音導孔が設けられていることが好適である。
【0019】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記底壁に設けられた前記音導孔は、少なくとも2個であり、前記底壁の中心を円心として環状に均一に分布し、或いは、前記底壁に設けられた前記音導孔は、前記底壁の中心にある1個の孔であることが好適である。
【0020】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記音導孔は、貫通孔であり、又は、開口部がダンパー層で覆われていることが好適である。
【0021】
上記骨伝導スピーカーにおいて、異なる音導孔の間又は同一音導孔の異なる部位の間に異なる移動さ又は同じ位相差が存在するように前記音導孔が設けられていることが好適である。
【0022】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記ダンパー層は、調音紙、調音材、不織布、シルク、綿布、スポンジ又はゴムであることが好適である。
【0023】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記音導孔の形状は、円形、楕円形、矩形又はスティック形であり、複数の前記音導孔が互いに同じ形状又は互いに異なる形状を有することが好適である。
【0024】
上記骨伝導スピーカーにおいて、前記トランスジューサは、磁性体とボイスコイルとを含み、又は、圧電セラミックを含むことが好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、音波干渉原理を利用し、筐体に音導孔を設けることにより、骨伝導スピーカーの筐体内の振動音波を筐体外に導出し、当該音波と筐体の振動により発生した音漏れの音波との干渉を生成して振幅を減衰することで、音漏れ低減効果を奏する。本発明は、音漏れ抑制効果が良好だけではなく、実現が簡単で、骨伝導スピーカーの体積及び重量が増えず、製品コストもほとんど増加しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】従来技術における骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図1B】従来技術における骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図2】従来技術における別の骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例に適用される音響学的干渉の原理を示す模式図である。
【
図4A】本発明の実施例1に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図4B】本発明の実施例1に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図4C】本発明の実施例1に係る骨伝導スピーカーの物理モデルである。
【
図4D】本発明の実施例1に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制効果図である。
【
図5】本発明の実施例に適用する等ラウドネス曲線図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制方法のフローチャートである。
【
図7A】本発明の実施例3に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図7B】本発明の実施例3に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図7C】本発明の実施例3に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制効果図である。
【
図8A】本発明の実施例4に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図8B】本発明の実施例4に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図8C】本発明の実施例4に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制効果図である。
【
図9A】本発明の実施例5に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図9B】本発明の実施例5に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図9C】本発明の実施例5に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制効果図である。
【
図10A】本発明の実施例6に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図10B】本発明の実施例6に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図10C】本発明の実施例6に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制効果図である。
【
図11A】本発明の実施例7に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図11B】本発明の実施例7に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図11C】本発明の実施例7に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制効果図である。
【
図12A】本発明の実施例8に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図12B】本発明の実施例8に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図13A】本発明の実施例9に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【
図13B】本発明の実施例9に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面及び実施例を組み合わせて本発明について詳細な説明を行う。ここで記述する具体的実施例は、あくまでも本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではないことを理解すべきである。また、記述上の便宜のため、添付図面内に全部の構造ではなく、本発明と関係する部分のみを例示する。
【0028】
まず、本発明に基づく設計原理を紹介する。
図3は、本発明の実施例に適用される音響学的干渉原理を示す模式図である。音波の2つの重要なパラメータは、周波数及び振幅で、周波数が同じ2つの音波が空間中に干渉を生成し、つまり2つの音波の振幅が互いに重なり合う。
図3に示すように、空間の異なる位置に音源1及び音源2が存在し、且つ両音源の周波数が同じである。両音源から発生した音波が、空間のA点でぶつかる。両音源の音波のA点における位相がちょうど同一の場合、A点において同位相の振幅が累積し、A点における音波信号が増大する。逆に、両音源の音波のA点における位相が逆の場合、A点において振幅が減衰し、A点における音波信号が減少する。
【0029】
本発明は、上記音波干渉原理を骨伝導スピーカー内に運用して音漏れを低減できる骨伝導スピーカーを提供する。
【実施例1】
【0030】
図4A及び
図4Bは、本発明の実施例1に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。当該骨伝導スピーカーは、筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。トランスジューサ22は、振動を発生させるために用いられ、筐体10の内部に収容されている。筐体10の少なくとも一部分に、少なくとも1個の音導孔30が設けられている。筐体10の内部の空気振動により形成された筐体内の音波を音導孔30から筐体10の外部に導出し、当該音波と筐体10の振動により押された筐体外の空気で形成される音漏れの音波との干渉を生成することで、音漏れの音波の振幅を下げる。
【0031】
本実施例は、各種典型的な構造を有する骨伝導スピーカーに適用できる。骨伝導スピーカーのトランスジューサ22は、某種原理に基づいて電気信号を機械振動に変換できる素子である。よく見られるのは、オーディオ電気信号をボイスコイルに入力し、ボイスコイルを磁界内に置き、電磁相互作用を通じて、ボイスコイルの振動を発生させることができる。或いは、圧電セラミック原理を用いてトランスジューサ22を製作し、電気信号をセラミック部材の形状変化に変換して振動を発生させることができる。
【0032】
本実施例において、振動パネル21とトランスジューサ22とは、互いに固結し、トランスジューサ22の駆動下で、同時に振動する。振動パネル21は、筐体10の開口部から突出し、人体の皮膚に押し当てられる。振動パネル21の振動が人体組織と骨格を通じて聴覚神経に伝わることで、人に音が知覚される。連結部材23は、トランスジューサ22と筐体10との間に設けられ、トランスジューサ22を筐体10内に固定するために用いられる。
【0033】
本実施例において、連結部材23は、1個又は複数の独立した部材とすることができ、トランスジューサ22又は筐体10と一体に設けてもよい。トランスジューサ22に対する振動の拘束を抑制するため、一般的に、連結部材23は弾性材料で製造される。
【0034】
トランスジューサ22は、振動パネル21を振動させる。トランスジューサ22自体も1つの振動源であり、筐体10の内部に収容されたトランスジューサ22の表面振動により、筐体10内の空気が振動して形成された音波は、筐体10内部にあり、筐体内の音波と称することができる。振動パネル21とトランスジューサ22とは連結部材23を通じて筐体10上に固定され、振動が筐体10上に作用して筐体10を同時に振動させる。そのため、筐体10が筐体10外の空気を押して振動すると、音漏れの音波が形成される。音漏れの音波が筐体10外へ伝播すると、音漏れが生じる。
【0035】
筐体内の音波及び音漏れの音波は、
図3に示す2つの音源に相当する。本実施例では、筐体の壁面上に、当該壁を貫通する音導孔30が設けられており、筐体内の音波を音導孔30から筐体外に伝播し、当該音波を音漏れの音波と一緒に空気中に伝播し、これら音波の干渉を生成することで、音漏れの音波の振幅を下げ、音漏れを低減する。よって、本実施例では、筐体上に音導孔を設けるという便利な改良を通じて、音漏れ問題を一定程度解決し、骨伝導スピーカーの体積及び重量も増えない。
【0036】
本実施例において、音導孔30は、例示的に、側壁の上部(つまり、側壁の頂部(振動パネル)から側壁の高さの1/3の部分)に設けられている。
【0037】
図4Cは、実施例1に係る骨伝導スピーカーの物理モデルである。骨伝導スピーカーの簡素化構造は、実施例1に示すように、更に力学素子として抽象化できる。
図4Cに示すように、筐体10の側壁と振動パネル21との間にある連結部材23は、並列連結する弾性部材とダンパー部材として抽象化できる。振動パネル21とトランスジューサ22との間の連接関係は、弾性部材24として抽象化できる。
【0038】
筐体10外に漏れる音の低減量の正比例は、下式(1)で表わされる。
【数1】
筐体10内の圧力Pは、下式(2)で表わされる。
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
筐体外の任意の点において筐体の振動で発生する音圧は、下式(12)で表わされる。
【数12】
【数13】
【0039】
筐体10上は、振動パネル21が人体組織に押し当てられるため、その出力エネルギーが人体組織に吸収され、d面のみにおいて筐体10外部の空気が押されて振動し、音漏れを形成する。
【0040】
我々の狙いは、XとYとの大きさを等しく、方向を逆にすることで、音漏れの低減効果を奏することである。装置の基本構造は、Yが調整できない量を確定した場合、Xを調整してYを相殺する。Xは、完全な位相及び幅の情報を含み、その位相及び幅は、骨伝導スピーカーの筐体寸法、トランスジューサの振動周波数、音導孔の形成位置・形状・数・寸法及び孔上にダンパーがあるかどうかと密接な関係がある。これは、音導孔の形成位置・形状・数及び/又はダンパーの増加及び/又はダンパー材料の調整によって音漏れの抑制目的を達成できる。
【0041】
本発明に係る骨伝導イヤホンは、従来の気導イヤホンの基本構造及び作用メカニズムと異なり、発明者が導出した上記公式は、本発明に係る骨伝導スピーカーのみに適用できる。従来の気導イヤホンの空気室内の空気は、全体としてその位相が位置に対して敏感ではない点において本発明に係る骨伝導スピーカーと異なるため、気導スピーカーを上記公式に適用できない。
【0042】
本願発明者が導出した上記公式によれば、当業者は、音漏れの音波の消去効果が骨伝導スピーカーの筐体寸法、トランスジューサの振動周波数、音導孔の形成位置・形状・数、寸法及び孔上にダンパーがあるかどうかと密接関係があることを理解できるであろう。よって、音導孔の形成位置・形状・数・孔上のダンパー材料等は、需要に応じて様々に変更可能である。
【0043】
図5は、本発明の実施例に適用される等ラウドネス曲線図である。
図5に示すように、横座標は周波数で、縦座標が音圧レベルである。音圧とは、大気圧が擾乱を受けた後で発生した変化で、つまり大気圧からの圧力変化分であり、大気圧力上に重ね合わせた1つの擾乱で起きた圧力変化に相当するため、音圧が音波の振幅の大きさを反映できる。
図5内の各曲線上の異なる周波数に対応する音圧レベルは、異なるが、人耳に感じた強弱の応答が同じで、各曲線上に数値を注記し、この曲線のラウドネスを示す。等ラウドネス曲線図から分かるように、ラウドネス(音圧の振幅)が比較的小さい時、人の耳の高低周波音に対する感覚は敏感ではなく、ラウドネスが比較的大きい時、高低周波音に対する感覚は、比較的敏感である。骨伝導スピーカーは、更に中低音の周波数帯域(例えば、1000Hz〜4000Hz、好適には1000Hz〜4000Hz又は1000Hz〜3500Hz、好適には1000Hz〜3000Hz又は1500Hz〜3000Hz)に寄与する。この周波数帯域の音漏れは、先に消去される。
【0044】
図4Dは、音漏れ抑制効果図(数値計算と実測結果は、上記周波数帯域において比較的接近する)である。選択したものは、円柱形の筐体10の場合、側壁と底壁とを有することができる。
図4A及び
図4Bに示すような骨伝導スピーカーは、好適な実例で、筐体10が円柱状、寸法が半径22mm、側壁の高さが14mmであり、それぞれ矩形である複数の音導孔30が筐体10の側壁の上部において均一に分布している。筐体10の底壁の外側50cmの箇所を音漏れ消去待ちのターゲットゾーンとして設定し、音漏れの音波がターゲットゾーンに伝達する距離と、筐体内の音波がトランスジューサ22の表面から音導孔30を経由して当該ターゲットゾーンに伝達する距離との間の差は、180度に近い。この構成を通じて、筐体10の底壁で発生した音漏れの音波は、音漏れ消去待ちゾーンにおいて明らかに低減させ、更に消去させることもできる。
【0045】
本発明によれば、試験結果から、音導孔形成後の音漏れ抑制効果が顕著であることが分かる。
図4Dに示すように、音導孔を形成していない状態に比べて、音導孔の形成により顕著な音漏れ抑制効果を生じることが分かる。
【0046】
テストするスペクトル範囲内において、音導孔を形成した後、音漏れが平均で約10dB低減した。1500Hz〜3000Hzの周波数帯域において、抑制される音漏れは基本的に10dBを超えた。特に、2000Hz〜2500Hzの周波数帯域において、筐体の側面の上部に音導孔を形成した場合、音導孔を形成しない場合に比べて、20dB以上音漏れが低減した。
【0047】
当業者は、上記公式から、骨伝導スピーカーの寸法、音漏れを消去するターゲットゾーン、音波の周波数に応じて、形成位置・形状・数が異なる音導孔を設ける必要ことを理解すべきであろう。
【0048】
典型的な円柱形の筐体を例とすると、需要に応じて、音導孔30を、筐体の側壁11及び/又は底壁12に設けることができる。音導孔30は、筐体の側壁11の上部及び/又は下部に設けることが好適である。筐体の側壁11に設けられる音導孔の数は、少なくとも2個でよく、側壁11の周方向に環状に均一に分布することが好適である。筐体の底壁12に設けられる音導孔の数は、少なくとも2個でよく、底壁の中心を円心として環状に均一に分布する。環状に分布する音導孔は、少なくとも1周り設けてよい。筐体の底壁12に設けられる音導孔の数は、1個のみでもよく、当該1個の音導孔を底壁12の中央部に設けてよい。
【0049】
音導孔の数は、1個又は複数でもよい。好適には、複数の音導孔を、均一に配置する。環状に配置される複数の音導孔について、1周りの音導孔の数を、例えば6〜8個とすることができる。
【0050】
音導孔の形状は、円形、楕円形、矩形、スティック形等とすることができる。スティック形は、一般的に直線、曲線又は円弧線に沿ったスティック状を指す。骨伝導スピーカー上において、互いに同じ又は互いに異なる形状の音導孔を設けてもよい。
【0051】
当業者は、需要に応じて、筐体の側壁が円柱形でないものでもよく、複数の音導孔が不均一に分布してもよいことを理解すべきだろう。音導孔の形状、数及び形成位置は、様々な組み合わせ方式がある。以下、添付図面を組み合わせて若干の他の好適な実施例を提供する。
【実施例2】
【0052】
図6は、本発明の実施例2に係る骨伝導スピーカーの音漏れ抑制方法を示す。
当該方法は、本発明の各実施例で提供する骨伝導スピーカー内の音漏れ抑制に適し、
人体の皮膚に押し当てられると共に振動を伝達する振動パネル21と、トランスジューサ22と、少なくとも一部分に少なくとも1個の音導孔30が設けられた筐体10とを備える骨伝導スピーカーを提供するステップ1と、
トランスジューサ22により振動パネル21を振動させるステップ2と、
筐体10をもトランスジューサ22により振動させると共に筐体10外の空気を押して空気中に伝播する音漏れの音波を形成するステップ3と、
筐体10内の空気が押されることで形成された筐体10内の音波を音導孔30から筐体10の外部に導出し、当該音波と音漏れの音波との干渉を生成することで、骨伝導スピーカーの音漏れを抑制するステップ4と、を含む。
【0053】
上記方法において、筐体の異なる位置に音導孔30を設けることが好適である。
【0054】
上記方法において、実施例1内の公式及び方法を用いて音漏れ効果を確認し、音導孔の位置を設計することが好適である。
【0055】
上記方法において、音波の位相及び振幅を調整するため、音導孔30の前にダンパー層を設けることが好適である。
【0056】
上記方法において、異なる音導孔の間に同じ位相が存在するように音導孔を設けることで、同一波長の音漏れの音波を抑制し、或いは、異なる前記音導孔の間に異なる位相が存在するように音導孔を設けることで、異なる波長の音漏れの音波を抑制することが好適である。
【0057】
上記方法において、同一の音導孔の異なる部位の間に同じ位相が存在するように音導孔を設けることで、同一波長の音漏れの音波を抑制し、或いは、同一の音導孔の異なる部位の間に異なる位相が存在するように音導孔を設けることで、異なる波長の音漏れの音波を抑制することが好適である。
【0058】
このほか、上記の干渉を行う前に、筐体内の音波を処理して、筐体内の音波の大きさを音漏れの音波の大きさと基本的に等しくし、位相を基本的に逆にし、音漏れを更に減少させる。
【実施例3】
【0059】
図7A及び
図7Bは、本発明の実施例3に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。本実施例で提供する骨伝導スピーカーは、開口状の筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。筐体10は、円柱状で、筐体10の側壁の下部(側壁の高さの2/3から底部までの部分)に、当該壁を貫通する音導孔30が設けられている。音導孔30は、例えば8個で、例えば矩形であり、筐体10の側壁上に環状に均一に分布している。
【0060】
本実施例において、トランスジューサは、好適には電磁変換原理に基づいて実現され、ポールピース、ボイスコイル等の部材(均して筐体内に収容され、同じ周波数の振動を同時に発生させる部材)を包括する。
【0061】
図7Cは、音漏れ抑制効果図である。簡単な分析を概括すると、1400Hz〜4000Hzの周波数帯域において、音漏れ低減値は均しく5dBより高く、2250Hz〜2500Hzの周波数帯域において音漏れ抑制効果が最も顕著で、低減値が20dBより高い。
【実施例4】
【0062】
図8A及び
図8Bは、本発明の実施例4に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。本実施例で提供する骨伝導スピーカーは、開口状の筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。筐体10は、円柱状で、筐体10の側壁の中部(側壁の高さの1/3から高さの2/3までの部分)に、当該壁を貫通する音導孔30が設けられている。音導孔30は、8個で、形状が矩形であり、筐体10の側壁上に環状に均一に分布している。
【0063】
本実施例において、トランスジューサは、好適には電磁変換原理に基づいて実現され、ポールピース、ボイスコイル等の部材(均して筐体内に収容され、同じ周波数の振動を同時に発生させる部材)を包括する。
【0064】
図8Cは、音漏れ抑制効果図である。簡単な分析を概括すると、1000Hz〜4000Hzにおいて、本実施例の音漏れ抑制効果は顕著であり、1400Hz〜2900Hzにおいて、音漏れ低減値は10dBを超え、2200Hz〜2500Hzの周波数帯域において音漏れ抑制効果が最も顕著で、低減値が20dBより高い。実施例3に比べると、本実施例の各周波数帯域における音漏れ低減効果は、比較的均一であるが、音漏れ低減効果が最も良好な周波数帯域は実施例3と一致する。
【0065】
これは、多くのパラメータが維持される状況において、音導孔の位置を変えるだけで音漏れ低減効果を調整できることを示している。
【実施例5】
【0066】
図9A及び
図9Bは、本発明の実施例5に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。本実施例で提供する骨伝導スピーカーは、開口状の筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。筐体10は、円柱状で、筐体10の底壁の周方向に、当該壁を貫通する音導孔30が設けられている。音導孔30は、例えば8個で、例えば矩形であり、筐体10の底壁上に環状に均一に分布している。
【0067】
本実施例において、トランスジューサは、好適には電磁変換原理に基づいて実現され、ポールピース、ボイスコイル等の部材(均して筐体内に収容され、同じ周波数の振動を同時に発生させる部材)を包括する。
【0068】
図9Cは、音漏れ抑制効果図である。簡単な分析を概括すると、1000Hz〜3000Hzにおいて、本実施例の音漏れ抑制効果は顕著であり、1700Hz〜2700Hz範囲内において、音漏れ低減値は10dBを超え、2200Hz〜2400Hzの周波数帯域において音漏れ抑制効果が最も顕著で、低減値が20dBより高い。実施例3に比べると、本実施例の各周波数帯域における音漏れ低減効果は、比較的均一であるが、音漏れ低減効果が最も良好な周波数帯域は実施例3と一致する。本実施例の1000Hz〜2200Hzにおける音漏れ低減効果は、実施例4と類似し、実施例3より良好である。一方、本実施例の2200Hz〜4000Hzにおける音漏れ低減効果は、実施例4及び実施例3より低い。
【実施例6】
【0069】
図10A及び
図10Bは、本発明の実施例6に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。本実施例で提供する骨伝導スピーカーは、開口状の筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。本実施例と実施例3との相違点は、筐体10側壁の上部と下部とに各々当該壁を貫通する音導孔30が設けられていることである。音導孔30は、筐体10側壁の上部と下部に環状に均一に分布し、1周りの音導孔30の数が8個である。上部と下部とにおいて、音導孔30は、筐体10の中心の高さの断面に対して対称に設けられている。各音導孔30の形状は円形である。
【0070】
側壁の上部と下部とにおける音導孔の形状は、互いに異なってもよく、内部のダンパー層が、互いに同一又は互いに異なる波長(周波数)の音波の音漏れを抑制するように設けることができる。
【0071】
図10Cは、音漏れ抑制効果図である。簡単な分析を概括すると、1000Hz〜4000Hzの周波数帯域において、本実施例の音漏れに対する抑制効果は顕著であり、1600Hz〜2700Hzにおいて音漏れ低減値は15dBを超え、2200Hz〜2500Hzにおいて音漏れ抑制効果が最も顕著で、低減値が20dBより高い。実施例3に比べると、本実施例の各周波数帯域における音漏れ低減効果は、比較的均一である。本実施例の効果は、実施例3、4、5のように同一の高さに開孔する構成に比べ、良好である。
【実施例7】
【0072】
図11A及び
図11Bは、本発明の実施例7に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。本実施例で提供する骨伝導スピーカーは、開口状の筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。本実施例と実施例3との相違点は、筐体10の側壁の上部と下部及び筐体10の底壁に各々当該壁を貫通する音導孔30が設けられていることである。筐体10の側壁に設けられている音導孔30は、側壁の上部と下部とに環状に均一に分布し、1周りの数が8個である。上部と下部とにおいて、音導孔30は、筐体10の中心の高さの断面に対して対称に設けられている。側壁に設けられた各音導孔30は、矩形である。底壁に設けられた音導孔30は、円弧線に沿ったスティック形である。4個の音導孔30が、底壁の中心を円心として環状に均一に分布している。底壁に設けられた音導孔30は、底壁の中央部に設けられた円形のスルーホールを更に含む。
【0073】
図11Cは、音漏れ抑制効果図である。簡単な分析を概括すると、1000Hz〜4000Hzの周波数帯域において、本実施例の音漏れに対する抑制効果は顕著であり、1300Hz〜3000Hzにおいて音漏れ低減値は10dBを超え、2200Hz〜2700Hzにおいて音漏れ抑制効果が最も顕著で、低減値が20dBより高い。実施例3に比べると、本実施例の各周波数帯域における音漏れ低減効果は、いずれも比較的均一である。本実施例の効果は、実施例3、4、5のように同一の高さに開孔する構成に比べ、良好である。本実施例の1000Hz〜1700Hz及び2500Hz〜4000Hz周波数帯域における音漏れ抑制効果は、実施例6より良好である。
【実施例8】
【0074】
図12A及び
図12Bは、本発明の実施例8に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。本実施例で提供する骨伝導スピーカーは、開口状の筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。筐体10側壁の上部に、当該壁を貫通する音導孔30が設けられている。音導孔30は、例えば8個であり、筐体10側壁の上部に環状に均一に分布している。本実施例と実施例3との相違点は、本実施例における音導孔30の形状が円形であることである。
【0075】
数値計算及び実験・テストの比較を通じて、本実施例8は、実施例1の効果とほぼ同じであり、音漏れを効果的に抑制することができる。
【実施例9】
【0076】
図13A及び
図13Bは、本発明の実施例9に係る骨伝導スピーカーの構造を示す模式図である。本実施例で提供する骨伝導スピーカーは、開口状の筐体10と振動パネル21とトランスジューサ22とを含む。
【0077】
本実施例と実施例3との相違点は、音漏れ抑制のより良好な効果を示すため、側壁11の上部、中部及び下部に各々音導孔30を周方向に均一に分布し、筐体10底壁12にも1周りの音導孔30が周方向に設けられていることである。各音導孔30の孔径の大きさ及び孔の個数は均しく同一である。
【0078】
本実施例の効果は、同一の高さ、位置に開孔する構成に比べ、各周波数帯域における音漏れ低減効果が均しく比較的均一であり、実施例3、4、5のように同一の高さに開孔する構成に比べ、良好である。
【実施例10】
【0079】
本実施例は、実施例1乃至実施例9において音導孔30を遮蔽のない貫通孔としたものである。
【0080】
ただし、筐体内の音波が音導孔30から伝播する効果を制御するため、音導孔30の開口部にダンパー層(図示せず)を設けて音波の位相及び振幅を調整することで、筐体内の音波のガイド効果を修正できる。
【0081】
ダンパー層の材料選択と設置位置は、様々な方式がある。例えば、ダンパー層は、調音紙、調音材、不織布、シルク、綿布、スポンジ、ゴム等の音質伝導に対し一定の減衰を有する材料からなるってよい例えば、音導孔30の内壁にダンパー層を貼付し、或いは、音導孔30の孔口外側をダンパー層で覆ってよい。
【0082】
より好適には、ダンパー層は、異なる音導孔の間に対応する時、異なる音導孔の間に同じ位相差が存在するように設けることで、同一波長の音漏れを抑制でき、或いは、異なる音導孔30の間に異なる位相差が存在するように設けることで、異なる波長の音漏れ(つまり特定の周波数帯域の音漏れ)を抑制できる。
【0083】
より好適には、同一の音導孔30の異なる部位の間に同じ位相が存在するように(例えば、予め設計済みの階段又はステップ状のダンパー層を使用して)ダンパー層を設けることで、同一波長の音漏れの音波を抑制し、或いは、同一の音導孔30の異なる部位の間に異なる位相が存在するようにダンパー層を設けることで、異なる波長の音漏れの音波を抑制する。
【0084】
上記実施例では、音導孔の骨伝導スピーカー筐体上における好適な設置案を提供したが、当業者は音導孔の設置がこれに限られるものではないことを理解すべきだろう。
【産業上の利用可能性】
【0085】
過去の全ての骨伝導スピーカーの設計において、骨伝導スピーカーの筐体は均しく閉鎖しているものであるため、筐体内の音源が筐体内に封止されている。本発明は、筐体の適切な位置に開孔して、筐体内の音波及び音漏れの音波で発生した2つの音の空間における大きさをできる限り等しくなるよう接近させ、位相をできる限り逆に接近させることで、良好な干渉効果を生じ、骨伝導スピーカーの音漏れを明らかに低減し、且つ体積や重量を増やさず、製品の信頼性に影響を及ぼさず、ほとんどコストも増えない。本発明は、簡単で信頼性があり、音漏れ低減効果が高い。
【0086】
以上に述べたのは、本発明の好ましい実施例及び運用する技術原理であって、本発明が上記のような特定実施例にのみ狭義に解釈されるべきものではないことについて当業者には明らかである。当業者にとって、様々な顕著な変更、再調整及び代替を行うことができるが、本発明の保護範囲から逸脱しない。よって、上記実施例を通じて本発明について比較的詳細な説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されることなく、本発明の構想から逸脱しない場合において、更に多くのこれと同じ効果を持つ他の実施例を含むことができ、本発明の範囲は添付する特許請求の範囲で決定する。
【符号の説明】
【0087】
10 筐体
11 側壁
12 底壁
110 筐体
121 振動パネル
122 トランスジューサ
123 連結部材
21 振動パネル
22 トランスジューサ
23 連結部材
24 弾性部材
210 第1筐体
220 第2筐体
230 可動コイル
240 内部磁性体
250 外部磁性体
260 振動板
270 振動ユニット
30 音導孔