特許第6282751号(P6282751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282751
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】防錆塗料組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20180208BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20180208BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180208BHJP
   C09D 5/10 20060101ALI20180208BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D183/00
   C09D7/12
   C09D5/10
   C09D5/16
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-550110(P2016-550110)
(86)(22)【出願日】2015年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2015075983
(87)【国際公開番号】WO2016047480
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-197100(P2014-197100)
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌満
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−41937(JP,A)
【文献】 特開昭61−589(JP,A)
【文献】 特開2005−97584(JP,A)
【文献】 特開昭48−22123(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/014063(WO,A1)
【文献】 特開昭59−122556(JP,A)
【文献】 特開昭52−151635(JP,A)
【文献】 特開昭53−119932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 5/10
C09D 5/16
C09D 7/12
C09D 183/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤(a)と、
亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)と、
400〜700℃の軟化点を有するガラス粉末(c)と
を含み、前記亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)に対する前記ガラス粉末(c)の質量比((c)/(b))が0.005〜0.10であることを特徴とする防錆塗料組成物。
【請求項3】
前記結合剤(a)がケイ素系結合剤である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
【請求項4】
前記結合剤(a)がアルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物の縮合物である、請求項1または3に記載の防錆塗料組成物。
【請求項5】
耐熱防錆塗料組成物である、請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
【請求項6】
請求項1及び3〜5のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物から形成された塗膜。
【請求項7】
基板と、前記基板表面に形成された、請求項1及び3〜5のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物からなる塗膜とを有することを特徴とする塗膜付き基板。
【請求項8】
基板表面に、請求項1及び3〜5のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物を塗装する工程、および塗装された前記防錆塗料組成物を硬化させて塗膜を形成する工程を有する塗膜付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板加工工程等に用いられる防錆性等に優れた防錆塗料組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の大型鉄鋼構造物の発錆を防止する目的で、鋼板表面に防錆塗料が塗装されている。このような防錆塗料としては、ウォッシュプライマー、ノンジンクエポキシプライマー、エポキシジンクリッチプライマー等の有機防錆塗料、シロキサン系結合剤および亜鉛粉末を含有する無機ジンク防錆塗料が知られている。これらの防錆塗料のうち、耐熱性に優れた無機ジンク防錆塗料が最も広く用いられている。
【0003】
無機ジンク防錆塗料を塗装された鋼板は溶断、溶接、歪取り等の高熱を伴う加熱工事を経て組み立てられていく。その鋼板が加熱工事の際に達する温度は、数100℃から鉄の融点付近の1200℃くらいである。一方、亜鉛の融点は419℃で、この温度を越えると亜鉛は急速に酸化される。このため溶断、溶接、歪取り等の工程において塗膜中の亜鉛は酸化されやすい。塗膜中の亜鉛が酸化されると塗膜表面に酸化亜鉛より成る白錆を生じ、塗膜中の亜鉛が失われることになる。そのため前記塗膜は防錆性が低下し、屋外に曝露されると短期間で発錆する。したがって、前記塗膜には高温に加熱された後でも高い防錆性を有することが要求される。
【0004】
また、酸化亜鉛は白色結晶物であるため、熱により損傷を受けた部分は塗膜の色相が変化する場合がある。このため、単膜での耐熱性と長期防錆性とが必要な場合は、防錆性が低下した部分について、人目に触れる箇所へ塗装された当該塗膜を補修塗装する際に、パワーツールやスウィープブラストのような入念な二次表面処理が必要であった。したがって、前記塗膜は耐熱変色性も備えることが好ましい。
【0005】
特許文献1(特開2005−97584号公報)には、アルカリ金属酸化物を含む非晶質ガラス粉末を用いた一次防錆塗料組成物が開示されており、該塗料組成物で塗装された鋼板に100cm/分以上という高速で溶接を行なっても、その塗膜は防錆性が低下することなく、かつピットやブローホールなどの欠陥の発生を抑制することができることが記載されている。しかしながら、この塗料組成物には、非晶質ガラス粉末が酸性溶液で表面処理される工程や、熱分解性ガスを発生する無機化合物が必要であるなど、様々な制約がある。また、耐熱防錆塗料組成物として求められる、耐熱変色性については記載されていない。
【0006】
特許文献2(特開平7−268216号公報)には、(A)ポリシロキサン、(B)無機充填剤、(C)熔融した状態でフィルムを生じる無機材料を含有する被覆用組成物が開示されている。前記組成物には、さらに亜鉛粉末を含有してもよいことが記載されている。しかし、亜鉛の酸化防止については記載されていない。
【0007】
特許文献3(特開平8−27424号公報)には、耐熱性、防錆性が改善される効果がある(A)シリコーンエマルジョン、(B)コロイダルシリカ、(C)チタン酸アルカリを配合してなる無機質コーティング材が開示されている。前記コーティング材には、防錆材として亜鉛を含有してよいことが記載されている。しかし、亜鉛の酸化防止については記載されていない。
【0008】
特許文献4(特表平11−510536号公報)には、(A)ポリシロキサン、(B)反応性無機充填材、(C)溶融物としてフィルムを形成する無機材料、(D)顔料および/または非反応性無機充填材、(E)反応性(オリゴ)シラン、(F)触媒、(G)その他添加剤を含有するコーティング混合物が開示されている。また、前記コーティング混合物には、亜鉛末を含有してもよいことが記載されている。しかし、亜鉛の酸化防止については記載されていない。
【0009】
特許文献5(特開2000−309748号公報)には、全組成物中の鉄化合物含有量が0.5重量%以下である耐熱変色性および耐燃性に優れた鋼材用耐熱性塗料組成物が開示されている。塗料の構成要素として、(A)アルキルシリケート、(B)体質顔料、(C)亜鉛末、(D)酸化亜鉛または/および酸化チタン粉が記載されているが、亜鉛の酸化防止については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−97584号公報
【特許文献2】特開平7−268216号公報
【特許文献3】特開平8−27424号公報
【特許文献4】特表平11−510536号公報
【特許文献5】特開2000−309748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上述した従来技術に伴う課題を解決することであって、高温、例えば400〜900℃に加熱された後でも優れた防錆性を有する防錆塗膜、さらには耐熱変色性を有する防錆塗膜を形成することが可能な防錆塗料組成物、ならびにその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく、結合剤と亜鉛粉末とガラス粉末とを含有する防錆塗料組成物について、ガラス粉末が前記塗料組成物から形成された塗膜に及ぼす影響を検討したところ、ガラス粉末の軟化点などが上記課題解決に寄与し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
結合剤(a)と、
亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)と、
400〜700℃の軟化点を有するガラス粉末(c)と
を含むことを特徴とする防錆塗料組成物である。
【0014】
前記防錆塗料組成物において、前記結合剤(a)はケイ素系結合剤であることが好ましく、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物の縮合物であることがさらに好ましい。
【0015】
前記防錆塗料組成物において、前記亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)に対する前記ガラス粉末(c)の質量比((c)/(b))が0.005〜0.1であることが好ましい。
【0016】
前記防錆塗料組成物は、たとえば耐熱防錆塗料組成物である。
【0017】
本発明は、前記防錆塗料組成物から形成された塗膜であり、また、基板と、前記基板表面に形成された前記防錆塗料組成物からなる塗膜とを有する塗膜付き基板である。
【0018】
また、本発明は、基板表面に、前記防錆塗料組成物を塗装する工程、および塗装された前記防錆塗料組成物を硬化させて塗膜を形成する工程を有する塗膜付き基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた溶接性を有する防錆塗膜を形成することができ、該防錆塗膜が高温、例えば400〜900℃で加熱された後でも亜鉛等の酸化を防止することにより、防錆性に優れた防錆塗膜、さらに耐熱変色性に優れた防錆塗膜を形成することができる防錆塗料組成物を提供することができ、また該防錆塗料組成物を用いた用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の防錆塗料組成物(以下「塗料組成物」ともいう。)、防錆塗膜、防錆塗膜付き基板およびその製造方法について、好適な態様を含めて詳細に説明する。
【0021】
〔防錆塗料組成物〕
本発明の防錆塗料組成物は、結合剤(a)と亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)と400〜700℃の軟化点を有するガラス粉末(c)を含有する。また、前記組成物は、前記結合剤(a)以外のその他の結合剤、前記亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)ならびに前記ガラス粉末(c)以外のその他の顔料、モリブデン、モリブデン化合物、着色顔料、添加剤、溶剤等から選択される1種または2種以上をさらに含有してもよい。
【0022】
また、本発明の防錆塗料組成物は2液型組成物として通常用いられる。すなわち、前記塗料組成物は、通常、主剤(ビヒクル)成分と顔料成分とから構成される。使用前は主剤成分と顔料成分とを別容器に保存しておき、使用直前にこれらを充分に撹拌、混合して、防錆塗料組成物を調製することが好ましい。
【0023】
主剤成分は、結合剤(a)および溶剤を通常含有する。場合によっては、その他の結合剤、添加剤から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
【0024】
顔料成分は、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)と400〜700℃の軟化点を有するガラス粉末(c)を通常含有する。また、必要に応じて、その他の顔料、モリブデン、モリブデン化合物、着色顔料、添加剤、有機溶剤から選択される少なくとも1種を含有してもよく、常法に従って混合して調製される。
〈結合剤(a)〉
本発明の防錆塗料組成物は、結合剤(a)を必須成分として含有する。
【0025】
結合剤(a)としては、例えば、アルキルシリケートの縮合物、メチルトリアルコキシシランの縮合物などのケイ素系結合剤等が挙げられる。
【0026】
アルキルシリケートとしては、例えば、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラ−n−プロピルオルトシリケート、テトラ−i−プロピルオルトシリケート、テトラ−n−ブチルオルトシリケート、テトラ−sec−ブチルオルトシリケート等の化合物;メチルポリシリケート、エチルポリシリケート等の化合物が挙げられる。
【0027】
メチルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の化合物が挙げられる。
【0028】
アルキルシリケートの縮合物、メチルトリアルコキシシランの縮合物の中でも、アルキルシリケートの縮合物が好ましく、テトラエチルオルトシリケートの縮合物がより好ましく、テトラエチルオルトシリケートの初期縮合物であるエチルシリケート40(商品名;コルコート(株)製)の部分加水分解縮合物が特に好ましい。
【0029】
結合剤(a)は従来公知の方法によって製造することができる。結合剤(a)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
結合剤(a)に含まれる固形分の、防錆塗料組成物中の不揮発分に対する含有量は、通常2〜70質量%、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは4〜30質量%である。ここで、塗料組成物の加熱残分(不揮発分)は、JIS K5601 1−2の規格(加熱温度:125℃、加熱時間:60分)に従い測定することができる。
〈亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)〉
本発明の防錆塗料組成物は、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)を必須成分として含有する。
【0031】
前記亜鉛粉末および亜鉛合金粉末は、鋼板の発錆を防止する防錆顔料として作用する。
【0032】
亜鉛合金としては、例えば、亜鉛とアルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金が挙げられ、好ましくは亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−錫合金が挙げられる。
【0033】
亜鉛粉末および亜鉛合金粉末としては、球状や鱗片状などの様々な形状のものを用いることができる。
【0034】
「球状」とは、球に近似した形状を指し、アスペクト比は、特に規定された範囲は存在しないが、通常1〜3であることが好ましい。
【0035】
球状亜鉛粉末の市販品としては、例えば、F−2000(商品名;本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0036】
鱗片状の亜鉛粉末および亜鉛合金粉末は、メディアン径(D50)が30μm以下であり、かつ平均厚さが1μm以下のものが好ましい。
【0037】
鱗片状亜鉛粉末の市販品としては、例えば、STANDART Zinc flake GTT、STANDART Zinc flake G(商品名;ECKART GmbH製)が挙げられる。鱗片状亜鉛合金粉末の市販品としては、例えば、STAPA 4 ZNAL7(亜鉛とアルミニウムとの合金;商品名;ECKART GmbH製)、STAPA 4 ZNSN30(亜鉛と錫との合金;商品名;ECKART GmbH製)が挙げられる。
【0038】
亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)としては、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末の一方または両方を用いることができ、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末のそれぞれも1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)の含有量は、防錆塗料組成物中の不揮発分に対して、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは25〜70質量%である。
〈ガラス粉末(c)〉
本発明の防錆塗料組成物は、400〜700℃の軟化点を有するガラス粉末(c)を必須成分として含有する。前記ガラス粉末(c)は、塗膜が高温、例えば400〜900℃で加熱された際に亜鉛の酸化防止剤として作用する。
【0040】
ガラス粉末は、例えば、ガラスを構成する化合物を約1000〜1100℃で所定の時間加熱溶融し、冷却後、粉砕装置で粉末状に整粒したものである。ガラスを構成する成分としては、一般的にSiO2、B23、Al23、ZnO、BaO、MgO、CaO、SrO、Bi23、Li2O、Na2O、K2O、PbO、P25、In23、SnO、CuO、Ag2O、V25、TeO2等が挙げられる。PbOもガラスを構成する化合物として用いることができるが、環境に対し悪影響となる恐れがあるので、用いないことが望ましい。
【0041】
ガラス粉末(c)には、軟化点、熱膨張係数、誘電率、透明度、色相等、様々なガラスの特性を出すために上述の化合物が所望の割合で含有される。
【0042】
本発明において用いられるガラス粉末(c)の重要な特性は、400〜700℃の軟化点を有することである。
【0043】
ガラス粉末(c)の軟化点は400〜700℃であり、好ましくは450〜650℃、さらに好ましくは500〜620℃である。ガラス粉末(c)の軟化点が前記の範囲にあることにより、本塗料組成物から形成された塗膜が例えば400〜900℃の高温で処理されても、溶融したガラス粉末が亜鉛および亜鉛合金の表面を被覆し、亜鉛の酸化が抑制され、その結果、塗膜は、400〜900℃で加熱された後であっても、優秀な防錆性を発揮することができる。ガラス粉末の軟化点が400℃を下回る場合、亜鉛および亜鉛合金よりも先にガラス粉末が溶融するので、十分に亜鉛の表面を被覆できない。一方、ガラス粉末の軟化点が高すぎると、亜鉛および亜鉛合金の融点を超えてからその軟化点の温度に達する間に、溶融したガラスが亜鉛および亜鉛合金表面を被覆することによる効果が得られず、亜鉛の酸化が進行してしまう。ガラス粉末の軟化点は800℃程度でも上記防錆性は得られるが、700℃以下であるとより好適に上記防錆性が得られる。
【0044】
また、ガラス粉末(c)の軟化点が前記の範囲にあることにより、本塗料組成物から耐熱変色性に優れた塗膜を得ることが可能になる。ガラス粉末の軟化点が400℃を下回る場合、700℃を上回る場合ともに良好な耐熱変色性は得られない。
【0045】
ガラス粉末(c)の軟化点は、リトルトン粘度計を用い、粘度係数ηが107.6に達したときの温度で判別する方法により求められる。
【0046】
ガラス粉末(c)の市販品としては、例えば、NB122A(商品名;セントラル硝子(株)製,軟化点400℃)、B20(商品名;セントラル硝子(株)製,軟化点480℃)、AZ739(商品名;セントラル硝子(株)製,軟化点605℃)、PFL20(商品名;セントラル硝子(株)製,軟化点700℃)が挙げられる。
また、ガラスを構成する成分の一つであるB23は、それ単独で軟化点が約450℃のガラス状の物質であり、本発明のガラス粉末(c)として用いることができる。B23の市販品としては、例えば、酸化ほう素(商品名;関東化学(株)製,鹿1級試薬)が挙げられる。
一般的に複数の構成成分から成るガラス粉末は、様々な構成成分の組合せや配合量を調整することで、所望の軟化点、耐水性、安定性、熱膨張性、透明性などの諸特性を得ることができる。一方、単一成分のガラス粉末ではこれらの諸性能を複数同時に得ることは困難である。例えば、B23は水への溶解性が高いので、防錆塗膜がB23を含む場合、特に屋外暴露時において、降雨などによって塗膜成分の溶解が起こり、塗膜の耐久性、さらには防食性に問題が出てくる場合がある。
【0047】
ガラス粉末(c)の含有量は、防錆塗料組成物中の不揮発分に対して、通常0.01〜20質量%、好ましくは0.10〜15質量%、より好ましくは0.20〜10質量%である。
【0048】
ガラス粉末(c)のメディアン径(D50)は、通常1〜10μm、好ましくは1.5〜8μm、より好ましくは2〜6μmである。
【0049】
本発明の防錆塗料組成物において、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)に対するガラス粉末(c)の質量比((c)/(b))は好ましくは0.005〜0.10、より好ましくは0.010〜0.09、さらに好ましくは0.015〜0.08に調整する。亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)に対するガラス粉末(c)の質量比((c)/(b))が前記範囲にあると、ガラス粉末(c)の軟化点が400〜700℃であることに基づき得られる高温処理後の高い防錆性に加えて高い耐熱変色性を塗膜に付与することができ、塗膜を加熱した場合および加熱しない場合の両方の防錆性、さらに塗膜を加熱した場合の耐熱変色性が良好に保たれる。
〈その他の結合剤〉
本発明の防錆塗料組成物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、結合剤(a)以外のその他の結合剤を含有してもよい。他の結合剤としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。
【0050】
ポリビニルブチラール樹脂としては、例えば、エスレックBM−1(商品名;積水化学(株)製)、エスレックBL−1(商品名;積水化学(株)製)が挙げられる。
〈その他の顔料〉
本発明の防錆塗料組成物は、様々な塗膜特性を確保する目的で、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)およびガラス粉末(c)以外のその他顔料を含有してもよい。
【0051】
例えば、補助的に塗膜の防錆性を確保する目的で、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)以外の防錆顔料を含有してもよい。防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、シアナミド亜鉛系化合物、ホウ酸塩化合物、ニトロ化合物、複合酸化物が挙げられる。
【0052】
防錆顔料の市販品としては、例えば、リン酸亜鉛系(アルミニウム)化合物としてLFボウセイCP−Z(商品名;キクチカラー(株)製)、亜リン酸亜鉛系(カルシウム)化合物としてプロテクスYM−70(商品名;太平化学産業(株)製)、亜リン酸亜鉛系(ストロンチウム)化合物としてプロテクスYM−92NS(商品名;太平化学産業(株)製)、トリポリリン酸アルミニウム系化合物としてKホワイト#84(商品名;テイカ(株)製)、シアナミド亜鉛系化合物としてLFボウセイZK−32(キクチカラー(株)製)が挙げられる。
【0053】
防錆顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
さらに、金属粉末(ただし、亜鉛粉末、亜鉛合金粉末およびモリブデン粉末を除く。)、亜鉛化合物粉末(ただし、リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、シアナミド亜鉛系化合物を除く。)、鉱物粉末、および熱分解ガスを発生する無機化合物粉末から選択される少なくとも1種の無機粉末を含有していてもよい。
【0055】
金属粉末は、導電性を有し、鉄イオンや亜鉛イオンの移動を容易にして塗膜の防錆効果を高めるという作用を有する。金属粉末としては、例えば、Fe−Si粉、Fe−Mn粉、Fe−Cr粉、磁鉄粉、リン化鉄が挙げられる。金属粉末の市販品としては、例えば、フェロシリコン(商品名;キンセイマテック(株)製)、フェロマンガン(商品名;キンセイマテック(株)製)、フェロクロム(商品名;キンセイマテック(株)製)、砂鉄粉(キンセイマテック(株)製)、フェロフォス2132(オキシデンタル ケミカルコーポレーション製)が挙げられる。
【0056】
亜鉛化合物粉末は、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)のイオン化(Zn2+の生成)の程度等の、酸化反応の活性度を調整する作用があると考えられている。本発明の防錆塗料組成物が亜鉛化合物粉末を含有する場合、前記組成物にさらに適切な防錆性を付与することができる。亜鉛化合物粉末としては、例えば、塩化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛等の粉末が挙げられる。亜鉛化合物粉末の市販品としては、例えば、酸化亜鉛1種(堺化学工業(株)製)、酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製、堺化学工業(株)製)、Sachtolich HD (硫化亜鉛;商品名;Sachleben Chemie GmbH製)、塩化亜鉛((株)長井製薬所製)が挙げられる。
【0057】
鉱物粉末としては、例えば、チタン鉱物粉、シリカ粉、ソーダ長石、カリ長石、珪酸ジルコニウム、珪灰石、珪藻土が挙げられる。鉱物粉末の市販品としては、例えば、ルチルフラワーS(キンセイマテック(株)製)、イルメナイト粉(キンセイマテック(株)製)、A−PAX 45M(キンセイマテック(株)製)、セラミックパウダーOF−T(キンセイマテック(株)製)、アプライト(キンセイマテック(株)製)、シリカMC−O(丸尾カルシウム(株)製)、バライトBA(堺化学(株)製)、ラジオライト(昭和化学工業(株))、セライト545(ジョンマンビル社製)が挙げられる。
【0058】
熱分解ガスを発生する無機化合物粉末とは、熱分解、例えば500〜1500℃での熱分解によってガス、例えばCO2ガス、F2ガスを発生する無機化合物の粉末である。前記無機化合物粉末は、これを含有する防錆塗料組成物から形成された塗膜を有する鋼板を溶接する際に、溶接時の溶融プール内において、結合剤等に含まれる有機分から発生したガスから生じた気泡を、前記無機化合物粉末由来のガスとともに、溶融プール内から除去する作用を有する。前記無機化合物粉末としては、例えば、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムが挙げられる。前記無機化合物粉末の市販品としては、例えば、蛍石400メッシュ(キンセイマテック(株)製)、NS#400(日東粉化工業(株)製)、炭酸マグネシウム(富田製薬(株)製)、炭酸ストロンチウムA(本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0059】
その他の顔料のうち、より塗膜の耐熱安定性を得るという観点からは、本発明の防錆塗料組成物は、珪酸ジルコニウムを含有することが好ましい。珪酸ジルコニウムのモース硬度は7.5と高く、防錆塗料組成物に用いることで塗膜の強度を高くすることができる。さらに珪酸ジルコニウムの融点は2430℃と高く、加熱された場合においても極めて安定である。よって、珪酸ジルコニウムを本発明の防錆塗料組成物に用いることにより、加熱工事の際に達する数100℃から1200℃のような高温で塗膜が加熱された場合でも塗膜は安定であり、塗膜強度も維持される。
【0060】
珪酸ジルコニウムを用いる場合、珪酸ジルコニウムの含有量は、防錆塗料組成物中の不揮発分に対して、通常2〜50質量%、好ましくは5〜45質量%、より好ましくは10〜40質量%である。含有量が前記範囲にある場合、塗膜が高温で加熱される場合においても、塗膜の耐熱安定性を得ることができる。
【0061】
〈モリブデン、モリブデン化合物〉
本発明の防錆塗料組成物は、モリブデン(金属モリブデン)、モリブデン化合物の一方または双方を含有することができる。これらは、亜鉛の酸化防止剤(いわゆる白錆抑制剤)として作用する。
【0062】
白錆の発生を低減することができるという観点からは、本発明の防錆塗料組成物は、亜鉛の酸化防止剤(いわゆる白錆抑制剤)として、モリブデン(金属モリブデン)、モリブデン化合物の一方または双方を含有することが好ましい。
【0063】
モリブデン化合物としては、例えば、三酸化モリブデン等のモリブデン酸化物、硫化モリブデン、モリブデンハロゲン化物、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、珪モリブデン酸、モリブデン酸のアルカリ金属塩、リンモリブデン酸のアルカリ金属塩、珪モリブデン酸のアルカリ金属塩、モリブデン酸のアルカリ土類金属塩、リンモリブデン酸のアルカリ土類金属塩、珪モリブデン酸のアルカリ土類金属塩、モリブデン酸のマンガン塩、リンモリブデン酸のマンガン塩、珪モリブデン酸のマンガン塩、モリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩、リンモリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩、珪モリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩が挙げられる。
【0064】
モリブデン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
モリブデン、モリブデン化合物の一方または双方を用いる場合、モリブデンおよびモリブデン化合物の含有量の合計は、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)100質量部に対して、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.3〜3.0質量部、さらに好ましくは0.5〜2.0質量部である。含有量が前記範囲にある場合、充分な亜鉛の酸化防止作用が得られるとともに、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)の防錆能力の活性の低下を防ぎ、塗膜の防錆性を維持することができる。
【0066】
〈着色顔料〉
本発明の防錆塗料組成物は、塗膜に所望の色相を付与することを目的として、着色顔料を含有してもよい。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、弁柄、カーボンブラック、銅クロム系黒色顔料、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルーが挙げられる。着色顔料の市販品としては、例えば、TITONE R−5N(堺化学工工業(株)製)、弁柄No.404(森下弁柄工業(株)製)、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、ダイピロキサイド ブラック #9510(大日精化工業(株)製)、Heliogen Green L8690(BASFジャパン(株)製)、FASTOGEN Blue 5485(DIC(株)製)が挙げられる。
【0067】
着色顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
着色顔料の含有量は、防錆塗料組成物中の不揮発分に対して、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、より好ましくは0.3〜10質量%である。
【0069】
〈添加剤〉
本発明の防錆塗料組成物は、添加剤を含有してもよい。添加剤とは、塗料や塗膜の性能を向上させ、または保持するために用いられる材料である。添加剤としては、例えば、沈降防止剤、乾燥剤、流動性調整剤、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤が挙げられる。添加剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0070】
沈降防止剤としては、例えば、有機ベントナイト系、酸化ポリエチレン系、ヒュームドシリカ系、アマイド系等の沈降防止剤が挙げられる。沈降防止剤の市販品としては、例えば、TIXOGEL MPZ(商品名;BYK Additives GmbH製)、ディスパロン4200−20(商品名;楠本化成(株)製)、ディスパロンA630−20X(商品名;楠本化成(株)製)、AEROSIL 200(商品名;日本アエロジル(株)製)が挙げられる。
【0071】
沈降防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
沈降防止剤の含有量は、防錆塗料組成物中の不揮発分に対して、通常0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.3〜8質量%である。
【0073】
〈溶剤〉
本発明の防錆塗料組成物は、主剤成分の希釈溶剤または顔料等の分散溶剤として、有機溶剤を用いることができる。
【0074】
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、グリコール系溶剤等の塗料分野で通常使用されている溶剤を用いることができる。
【0075】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。芳香族系溶剤としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエンが挙げられる。グリコール系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の防錆塗料組成物において、溶剤の含有量は、通常10〜90質量%、好ましくは15〜85質量%、より好ましくは20〜80質量%である。
〔防錆塗料組成物の用途〕
本発明の防錆塗料組成物は、好ましくは耐熱防錆塗料組成物である。
【0077】
本発明の防錆塗料組成物は、鋼板加工工程等に用いられる耐熱防錆塗料としての使用に適している。耐熱防錆塗料は、建造工程の溶断、溶接などに支障を与えることなく、鋼材を錆から守ることが求められる目的に加え、加熱時の亜鉛の酸化による色相の変化が小さいことが求められる。本発明の防錆塗料組成物は、前述の条件を解決する優れた防錆性および耐熱変色性を有する。
【0078】
〔防錆塗膜および防錆塗膜付き基板〕
本発明の防錆塗膜は、上述の防錆塗料組成物から形成され、また、本発明の防錆塗膜付き基板は、鋼板等の基板と、前記基板表面に形成された、上述の防錆塗料組成物からなる防錆塗膜とを有する。
【0079】
通常、防錆塗料組成物が塗装される基板は、ISO 8501−1における除錆度Sa2 1/2以上に相当する条件で、ブラスト処理が行われる。
【0080】
上記防錆塗膜の平均乾燥膜厚は、通常40μm以下、好ましくは5〜35μmである。平均乾燥膜厚は電磁式膜厚計を用いることによって測定される。
【0081】
〔防錆塗膜付き基板の製造方法〕
本発明の防錆塗膜付き基板の製造方法は、鋼板等の基板表面に、上述の防錆塗料組成物を塗装する工程(塗装工程)、および塗装された前記防錆塗料組成物を硬化させて防錆塗膜を形成する工程(硬化工程)を有する。
【0082】
塗装工程では、本発明の防錆塗料組成物(2液型組成物の場合は、主剤成分と顔料成分とを混合してなる塗料)を、エアスプレー、エアレススプレー等の従来公知の方法により鋼板等の基板表面に塗装し、未硬化の塗膜を形成する。塗装機としては、一般的に造船所、製鉄所等で塗料を塗装する場合、主にエアレススプレーやライン塗装機が用いられる。ライン塗装機は、ライン速度、塗装機内部に設置されたエアスプレー、エアレススプレー等の塗装圧力、スプレーチップのサイズ(口径)の塗装条件によって、膜厚の管理をしている。
【0083】
硬化工程における硬化温度(乾燥温度)は、通常5〜40℃、好ましくは10〜30℃であり;硬化時間(乾燥時間)は、通常3〜20分、好ましくは5〜15分である。また、本発明では、防錆塗膜付き基板を加熱した場合でも、優れた防錆性と耐熱変色性を発揮する。すなわち、本発明の防錆塗膜付き基板は、高温、例えば、400〜900℃に加熱後の防錆性と耐熱変色性の向上を同時に達成することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0085】
〔調製例1〕アルキルシリケートの縮合物の調製
エチルシリケート40(コルコート(株)製)38g、工業用エタノール18g、脱イオン水4g、および35%塩酸0.03gを容器に仕込み、50℃で3時間攪拌した後、イソプロピルアルコール40gを加えて、アルキルシリケートの縮合物の溶液を調製した。
【0086】
〔調製例2〕顔料ペースト成分の調製
亜鉛末(球状亜鉛粉末、鱗片状亜鉛粉末、鱗片状亜鉛合金粉末)を除いた、表1〜3に記載の実施例および比較例において顔料ペースト成分として示した原材料をそれぞれポリエチレン製容器に仕込み、ガラスビーズを加えてペイントシェーカーにて3時間振とうした後、亜鉛末を加えて5分間振とうして顔料を分散させた。80メッシュのフィルターを用いてガラスビーズを除去して顔料ペースト成分を調製し、後述する実施例1〜16、比較例1〜3に用いた。
【0087】
〔実施例1〜16、比較例1〜3〕
主剤成分である調製例1のアルキルシリケートの縮合物と、顔料ペースト成分である調製例2の顔料ペースト成分とを、含有成分の比率が表1〜3記載の割合(質量基準)となるように、ポリエチレン製容器に仕込み、ハイスピードディスパーにて10分間分散させて防錆塗料組成物を調製した。
【0088】
表1〜3に示した成分の概要は以下のとおりである。
アルキルシリケートの縮合物の溶液:調製例1で調製されたアルキルシリケートの縮合物の溶液(固形分濃度:15.2質量%)
球状亜鉛粉末:F−2000(本荘ケミカル(株)製)
鱗片状亜鉛粉末:STANDART Zinc flake GTT(ECKART GmbH製)
鱗片状亜鉛合金粉末:STAPA 4 ZNAL7(亜鉛とアルミニウムの合金、ECKART GmbH製)
沈降防止剤:AEROSIL 200(日本アエロジル(株)製)
黒色顔料:ダイピロキサイド ブラック #9510(大日精化工業(株)製)
酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製)
カリ長石:セラミックスパウダーOF−T(キンセイマテック(株)製)
珪酸ジルコニウム:A−PAX 45M(キンセイマテック(株)製)
ガラス粉末1(軟化点389℃):DPS300(旭硝子(株)製 )
ガラス粉末2(軟化点400℃):NB122A(セントラル硝子(株)製)
ガラス粉末3(軟化点480℃):B20(セントラル硝子(株)製)
ガラス粉末4(軟化点510℃):TA149(セントラル硝子(株)製)
ガラス粉末5(軟化点605℃):AZ739(セントラル硝子(株)製)
ガラス粉末6(軟化点700℃):PFL20(セントラル硝子(株)製)
ガラス粉末7(軟化点450℃):酸化ほう素 鹿1級(関東化学(株)製 )
ガラス粉末8(軟化点750℃):APS325((株)ピュアミック製)
〔評価方法・評価基準〕
(1)防錆塗膜の防錆性(発錆)
サンドブラスト処理板(JIS G3101,SS400、寸法:150mm×70mm×2.3mm)のブラスト処理面に、ライン塗装機を用いて防錆塗料組成物を塗装した。次いで、防錆塗料組成物を塗装したサンドブラスト処理板をJIS K5600 1−6の規格に従い、温度23℃、相対湿度50%の恒温室内で1週間乾燥させて、表1〜3記載の平均乾燥膜厚を有する防錆塗膜と前記処理板とからなる試験板を作製した。平均乾燥膜厚は、電磁式膜厚計「LE−370」(商品名;(株)ケット科学研究所製)を用いて測定した。
【0089】
表1〜3に記載の温度(400〜1000℃)に保持したマッフル炉に前記試験板を入れ、3分間加熱した後、取り出して、常温まで冷却させた。この試験板を人工海水(塩分3%)に2週間浸漬した。
【0090】
ASTM D610に準拠して、2週間浸漬した後の試験板の全面に対する発錆面積の比率(%)を求め、発錆の状態を評価した。評価基準は下記のとおりである。結果を表1〜3に示した。
【0091】
[発錆の状態の評価基準(ASTM D610)]
10:発錆無し、または発錆面積が試験板の全面積の0.01%以下
9:発錆面積が試験板の全面積の0.01%を超え0.03%以下
8:発錆面積が試験板の全面積の0.03%を超え0.1%以下
7:発錆面積が試験板の全面積の0.1%を超え0.3%以下
6:発錆面積が試験板の全面積の0.3%を超え1%以下
5:発錆面積が試験板の全面積の1%を超え3%以下
4:発錆面積が試験板の全面積の3%を超え10%以下
3:発錆面積が試験板の全面積の10%を超え16%以下
2:発錆面積が試験板の全面積の16%を超え33%以下
1:発錆面積が試験板の全面積の33%を超え50%以下
0:発錆面積が試験板の全面積の50%を超え100%まで
(2)防錆塗膜の耐熱変色性
サンドブラスト処理板(JIS G3101,SS400、寸法:150mm×70mm×2.3mm)のブラスト処理面に、ライン塗装機を用いて防錆塗料組成物を塗装した。次いで、防錆塗料組成物を塗装したサンドブラスト処理板をJIS K5600 1−6の規格に従い、温度23℃、相対湿度50%の恒温室内で1週間放置して、表1〜3記載の平均乾燥膜厚を有する防錆塗膜と前記処理板とからなる試験板を各防錆塗料組成物につきそれぞれ2枚作製した。
【0092】
その内1枚の試験板を表1〜3に記載の温度(400〜1000℃)に保持したマッフル炉に入れ、3分間加熱した後、取り出して、常温まで冷却させた。加熱処理を施していないもう1枚の試験板の防錆塗膜を基準とし、前述の加熱処理を施した防錆塗膜について、色差[ΔE]を分光色差計(SD−5000;日本電色工業(株)製)により求めた。得られた色差[ΔE]が1.0以下である場合、耐熱変色性が良好であると評価した。なお色差[ΔE]1.0とは、5名の判定者が肉眼で防錆塗膜の色相変化を判定した場合、判定者全員に色相の変化が無いと判断された最大の色差である。
【0093】
【表1】























【0094】
【表2】













【0095】
【表3】