(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、モータの中心軸に沿う方向を「軸方向」と称する。また、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」と称する。また、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と称する。また、軸方向の一方側を「上」、他方側を「下」として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、これは、あくまで説明の便宜のために上下を定義したものであって、本発明に係るモータの使用時の向きを限定するものではない。
【0010】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータ1Aの斜視図である。モータ1Aは、
図1において二点鎖線で描かれた静止部2Aと、
図1において実線で描かれた回転部3Aと、を有する。回転部3Aは、静止部2Aに対して、回転可能に支持されている。
【0011】
回転部3Aは、シャフト31A、環状板52A、複数のコアピース53A、および複数のマグネット54Aを有している。シャフト31Aは、上下に伸びる中心軸9Aに沿って配置されている。環状板52Aは、中心軸9Aに対して径方向および周方向に広がっている。複数のコアピース53Aは、ロータコアを構成している。複数のマグネット54Aは、周方向に配列されている。
【0012】
このモータ1Aでは、マグネット54Aの周方向の両端面が、磁極面となっている。そして、複数のマグネット54Aの同極同士が、周方向に対向している。また、複数のコアピース53Aと複数のマグネット54Aとは、周方向に交互に配列されている。
【0013】
環状板52Aと各コアピース53Aとは、固定部321Aにおいて固定されている。固定部321Aは、環状板52Aとコアピース53Aとの一方に設けられた凹部と他方に設けられた凸部との嵌め合わせ、または、環状板52Aに設けられた第1貫通孔とコアピース53Aに設けられた凸部との嵌め合わせにより、形成されている。固定部321Aによって、複数のコアピース53Aの径方向外側への飛散が、防止されている。
【0014】
また、このモータ1Aでは、各コアピース53Aに貫通孔を形成することなく、環状板52Aに複数のコアピース53Aが固定されている。このため、各コアピース53Aにおける磁気抵抗が、低減されている。
【0015】
<2.第2実施形態>
<2−1.モータの全体構成>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態のモータ1は、例えば、自動車に搭載され、操舵装置の駆動力を発生させるために使用される。ただし、本発明のモータは、他の用途に使用されるものであってもよい。例えば、本発明のモータは、自動車の他の部位、例えばエンジン冷却用ファンの駆動源として使用されるものであってもよい。また、本発明のモータは、産業用機械、家電製品、OA機器、医療機器等に搭載され、各種の駆動力を発生させるものであってもよい。
【0017】
図2は、第2実施形態に係るモータ1の縦断面図である。
図2に示すように、モータ1は、静止部2と回転部3とを、有している。静止部2は、駆動対象となる装置の枠体に、固定される。回転部3は、静止部2に対して、回転可能に支持される。
【0018】
本実施形態の静止部2は、ハウジング21、蓋部22、ステータユニット23、下軸受部24、および上軸受部25を、有している。
【0019】
ハウジング21は、略円筒状の側壁212と、側壁の下部を塞ぐ底部213とを、有している。蓋部22は、ハウジング21の上部の開口を覆っている。ステータユニット23および後述するロータユニット32は、ハウジング21と蓋部22とに囲まれた内部空間に、収容されている。ハウジング21の底部213の中央には、下軸受部24を配置するための凹部211が、設けられている。また、蓋部22の中央には、上軸受部25を配置するための円孔221が、設けられている。
【0020】
ステータユニット23は、駆動電流に応じて磁束を発生させる電機子である。ステータユニット23は、ステータコア41、インシュレータ42、およびコイル43を有する。ステータコア41は、例えば、複数の鋼板が軸方向に積層された積層鋼板により形成されている。ステータコア41は、円環状のコアバック411と、コアバック411から径方向内側へ向けて突出した複数本のティース412と、を有する。コアバック411は、ハウジング21の側壁212の内周面に、固定されている。各ティース412は、周方向に略等間隔に配列されている。
【0021】
インシュレータ42は、絶縁体である樹脂からなり、ティース412に取り付けられている。各ティース412は、径方向内側の端面が露出した状態で、インシュレータ42に覆われている。また、コイル43は、インシュレータ42に巻かれた導線により、構成されている。インシュレータ42は、ティース412とコイル43との間に介在することによって、ティース412とコイル43とが電気的に短絡することを、防止している。なお、ティース412とコイル43との絶縁に関しては、インシュレータ42を使用せず、ティース412の表面に絶縁塗装を施す構成を採用してもよい。
【0022】
下軸受部24および上軸受部25は、ハウジング21および蓋部22と、回転部3側のシャフト31との間に配置されている。本実施形態の下軸受部24および上軸受部25には、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングが、使用されている。ただし、ボールベアリングに代えて、すべり軸受や流体軸受等の他方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0023】
下軸受部24の外輪241は、ハウジング21の凹部211内に配置されて、ハウジング21に固定されている。また、上軸受部25の外輪251は、蓋部22の円孔221内に配置されて、蓋部22に固定されている。一方、下軸受部24および上軸受部25の内輪242,252は、シャフト31に固定されている。これにより、シャフト31は、ハウジング21および蓋部22に対して、回転可能に支持されている。
【0024】
図3は、回転部3の縦断面図である。
図4は、回転部3の横断面図である。なお、
図2および
図3に示された回転部3の断面は、
図4中のA−A断面に相当する。
図2〜
図4に示すように、本実施形態の回転部3は、シャフト31とロータユニット32とを、有している。
【0025】
シャフト31は、中心軸9に沿って伸びる柱状の金属部材である。シャフト31は、上述した下軸受部24および上軸受部25に支持されつつ、中心軸9を中心として回転する。また、
図2に示すように、シャフト31は、蓋部22より上方に突出した頭部311を有する。頭部311は、ギア等の動力伝達機構を介して、自動車の操舵装置等に連結される。
【0026】
ロータユニット32は、ステータユニット23の径方向内側に配置されて、シャフト31とともに回転する。本実施形態のロータユニット32は、円筒部材51、環状板52、複数のコアピース53、複数のマグネット54、および樹脂モールド部55を有する。ロータユニット32の各部の詳細な構造については、後述する。
【0027】
このようなモータ1において、静止部2のコイル43に駆動電流を与えると、ステータコア41の複数のティース412に、径方向の磁束が生じる。そして、ティース412とマグネット54との間の磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、静止部2に対して回転部3が、中心軸9を中心として回転する。
【0028】
<2−2.ロータユニットについて>
図5は、ロータユニット32の斜視図である。
図6は、円筒部材51と樹脂モールド部55とを省略したロータユニット32の斜視図である。
図7は、環状板52、複数のコアピース53、およびマグネット54の分解斜視図である。以下では、
図3〜
図7を参照しつつ、ロータユニット32のより詳細な構造について、説明する。
【0029】
円筒部材51は、軸方向に円筒状に伸びる金属製の部材である。
図3〜
図5に示すように、円筒部材51は、シャフト31の外周面に取り付けられている。円筒部材51の内側に、シャフト31が圧入されている。
【0030】
環状板52は、円筒部材51の径方向外側において、径方向および周方向に略円板状に広がっている。環状板52は、中央に円孔520を有し、当該円孔520に円筒部材51が挿入されている。また、環状板52は、円孔520の径方向外側に、複数の第1貫通孔521と、複数の第2貫通孔522とを有する。環状板52の材料には、例えば、非磁性の金属であるアルミニウム、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼、または銅合金が、使用される。
【0031】
複数のコアピース53は、環状板52の上側および下側において、それぞれ周方向に等間隔に配列されている。各コアピース53は、略扇形の鋼板530が軸方向に積層された積層鋼板により形成されている。鋼板530の素材としては、電磁鋼板を用いている。環状板52の外周面と、コアピース53の外周面とは、略同一の径方向位置に配置されている。鋼板530の各々は凸部531Bを備え、該凸部531Bの裏側は凹部になっている。鋼板の凸部531Bは軸方向に隣接する隣の鋼板の凹部に圧入され嵌まっている。この構造によって、複数の鋼板530が互いに締結され、コアピース53を構成している。凸部を凹部に圧入して嵌めることにより二つの部材が結び付けられた結合構造を、以下、かしめ部、と呼ぶ。鋼板の凸部531Bはプレス加工によって形成されている。このため、鋼板の凸部531Bの逆側には凹部が位置している。凸部や凹部を備えた鋼板を、切削加工にて作ることも出来る。その場合は、凸部の逆側を凹部にする必要は無く、凸部と凹部は任意の場所に配置できる。
【0032】
各コアピース53の環状板52に接する面、すなわち、環状板52の上側に配置された各コアピース53の下面、および、環状板52の下側に配置された各コアピース53の上面には、それぞれ、一対の凸部531が設けられている。この凸部531は、コアピース53を構成する鋼板530の各々が持つ鋼板の凸部531Bの内、環状板52に隣接する鋼板530の凸部である。本実施形態では、各コアピース53が、複数の鋼板530を固定するためのかしめ部を、2箇所に有している。当該かしめ部によって、各コアピース53の端面に、一対の凸部531が形成されている。なお、各コアピース53の端面に形成される凸部531の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0033】
一方、
図7に示すように、環状板52の複数の第1貫通孔521は、周方向に等間隔に配列されている。各コアピース53の凸部531は、環状板52の第1貫通孔521に、圧入されている。これにより、環状板52に対して各コアピース53が固定されるとともに、各コアピース53が、周方向および径方向に位置決めされている。モータ1を駆動させると、コアピース53に遠心力が掛かるが、上述した凸部531と貫通孔521との嵌め合わせによって、コアピース53の径方向外側への飛散が防止される。
【0034】
仮に、環状板とコアピースとを、軸方向に貫くピンで固定しようとすると、コアピースに、ピンを挿入するための貫通孔を形成する必要がある。そうすると、当該貫通孔によって、各コアピースの磁気抵抗が増大する。しかしながら、上述のような凸部531の嵌め合わせによって、環状板52にコアピース53を固定すれば、各コアピース53に貫通孔を形成する必要はない。したがって、各コアピース53の磁気抵抗を低減できる。
【0035】
また、本実施形態では、環状板52の各第1貫通孔521に、上側に配置されたコアピース53の凸部531と、下側に配置されたコアピース53の凸部531と、の双方が圧入されてかしめ部を構成している。すなわち、環状板52は第1貫通孔521を有し、コアピース53を構成する鋼板530は凸部531Bを有し、その内この環状板52に軸方向に隣接する鋼板530が有する凸部531が第1貫通孔521に圧入にて嵌められている。また、上下のコアピース53を固定するために、共通の第1貫通孔521が使用されている。これにより、環状板52に形成される第1貫通孔521の数を減らしている。その結果、第1貫通孔521による環状板52の剛性の低下が、緩和されている。なお、第1貫通孔521に換えて凹部を環状板52に形成し、そこにコアピース53の凸部531を嵌めても良い。また、環状板52の側に凸部を設け、コアピースには凹部を設け、この二つを嵌め合わせても良い。
【0036】
複数のマグネット54は、周方向に等間隔に配列されている。各マグネット54は、周方向の両端面が磁極面となっている。複数のマグネット54は、同極の磁極面同士が周方向に対向するように配置されている。また、
図4に示すように、複数のコアピース53と複数のマグネット54とは、平面視において、周方向に交互に配列されている。各コアピース53は、その両側に配置されたマグネット54により磁化される。その結果、コアピース53の径方向外側の面が、磁極面となる。つまり、マグネット54から生じる磁束は、コアピース53を通って、コアピース53の径方向外側へ延びる。
【0037】
上述の通り、各コアピース53は、積層鋼板により形成されている。積層鋼板を構成する各鋼板530の表面は、絶縁被膜で覆われている。これにより、各コアピース53における渦電流損が低減されている。また、本実施形態では、ロータコアが、上下2段に配置された複数のコアピース53により、構成されている。そして、上段のコアピース53と下段のコアピース53との間に、環状板52が配置されている。環状板52は、非磁性体で形成されていることが好ましい。この環状板52によって、ロータコアにおける渦電流損が、さらに抑制されている。
【0038】
また、複数のコアピース53を軸方向に多段に配置すれば、ロータコアの軸方向の寸法を、容易に拡大できる。したがって、ロータコア内の磁路を拡大し、モータ1のトルクをより高めることができる。
【0039】
図7に示すように、環状板52の複数の第2貫通孔522は、周方向に等間隔に配列されている。本実施形態では、各マグネット54が、環状板52の第2貫通孔522を通って、軸方向に伸びている。このようにすれば、環状板52の上下に別個のマグネットを配置する場合より、マグネット54の個数を削減できる。したがって、マグネット54の加工費や、ロータユニット32の組立工数が削減できる。
【0040】
また、コアピース53は、マグネット54の径方向外側において周方向に突出する一対の外側爪部532と、マグネット54の径方向内側において周方向に突出する一対の内側爪部533と、を有している。マグネット54は、隣り合うコアピース53の間に配置され、コアピース53の周方向の端面、外側爪部532の径方向内側の面、および内側爪部533の径方向外側の面に、接触している。すなわち、マグネット54の周方向の両端部は、外側爪部532および内側爪部533と、径方向に重なっている。
【0041】
これにより、コアピース53に対してマグネット54が固定されるとともに、各マグネット54が径方向および周方向に位置決めされている。モータ1を駆動させると、マグネット54に遠心力が掛かるが、上述した外側爪部532との接触によって、マグネット54の径方向外側への飛散が防止される。
【0042】
樹脂モールド部55は、円筒部材51、環状板52、複数のコアピース53、および複数のマグネット54の周囲に、インサート成型により形成されている。
図3〜
図5に示すように、樹脂モールド部55は、内側樹脂部551、上面樹脂部552、下面樹脂部553、および外側樹脂部554を有している。
【0043】
内側樹脂部551は、コアピース53およびマグネット54の径方向内側、かつ、円筒部材51の径方向外側に、形成されている。このモータ1では、複数のコアピース53が径方向内側において繋がっておらず、それに代えて、非磁性の内側樹脂部551が、複数のコアピース53および複数のマグネット54の径方向内側の領域を、満たしている。これにより、コアピース53およびマグネット54から径方向内側への磁束の漏れが、抑制されている。このため、マグネット54から得られる磁束は、効率よくステータユニット23側へ向かう。したがって、より効率よくトルクを発生させることができる。
【0044】
内側樹脂部551の内周面は、円筒部材51の外周面に、接触している。円筒部材51の外周面の直径は、シャフト31の外周面の直径より、大きい。したがって、シャフト31の外周面に内側樹脂部を接触させるより、円筒部材51の外周面に内側樹脂部551を接触させる方が、金属と樹脂との接触面積が広くなる。したがって、円筒部材51に対して内側樹脂部551が強固に固定される。なお、円筒部材51の外周面に凹凸を設けることによって、円筒部材51と内側樹脂部551との接触面積を、さらに増大させるようにしてもよい。
【0045】
上面樹脂部552は、内側樹脂部551の上端部から径方向外側へ広がっている。下面樹脂部553は、内側樹脂部551の下端部から径方向外側へ広がっている。複数のコアピース53および複数のマグネット54は、上面樹脂部552と下面樹脂部553との間に、配置されている。これにより、コアピース53およびマグネット54の上方または下方への抜けが、防止されている。
【0046】
外側樹脂部554は、複数のコアピース53および複数のマグネット54の径方向外側において、筒状に広がっている。外側樹脂部554の上端部は、上面樹脂部552の径方向外側の端縁部と、繋がっている。外側樹脂部554の下端部は、下面樹脂部553の径方向外側の端縁部と、繋がっている。また、外側樹脂部554の径方向内側の面は、コアピース53およびマグネット54の径方向外側の面に、接触している。
【0047】
ここで、外側樹脂部554の厚みは、上側樹脂部552および内側樹脂部551よりも薄い。外側樹脂部が薄ければ薄いほど、コアピース53とティース412との距離が縮まり、磁束が、効率よくコアピース53からティース412へ向かう。
【0048】
樹脂モールド部55を成型するときには、まず、一対の金型によって形成される空洞に、円筒部材51、環状板52、複数のコアピース53、および複数のマグネット54を配置する。金型の内部における複数のコアピース53の位置は、環状板52によって定められる。また、金型の内部における複数のマグネット54の位置は、複数のコアピース53によって定められる。このため、金型自体に、個々のコアピース53や個々のマグネット54を位置決めするための構造を、設ける必要はない。
【0049】
次に、金型内の空洞に、溶融樹脂を流入させる。溶融樹脂は、円筒部材51、環状板52、複数のコアピース53、および複数のマグネット54の表面に沿って広がる。その後、溶融樹脂を硬化させる。これにより、内側樹脂部551、上面樹脂部552、下面樹脂部553、および外側樹脂部554を有する樹脂モールド部55が、成型される。
【0050】
インサート成型時には、溶融樹脂の圧力によって、各部材に圧力が掛かる。特に、複数のコアピース53および複数のマグネット54は、径方向内側と径方向外側との双方に溶融樹脂が充填されるため、これらの溶融樹脂から径方向の圧力を受けやすい。しかしながら、複数のコアピース53は、環状板52の第1貫通孔521に凸部531を圧入することによって、径方向の位置が固定されている。したがって、溶融樹脂から圧力を受けたときにも、コアピース53の径方向の位置ずれは、生じにくい。
【0051】
また、マグネット54は、コアピース53の外側爪部532と内側爪部533とによって、径方向の位置が固定されている。マグネット54が、径方向内側に充填される溶融樹脂によって、径方向外側への圧力を受けたとしても、マグネット54の径方向外側への位置ずれは、外側爪部532により防止される。また、マグネット54が、径方向外側に充填される溶融樹脂によって、径方向内側への圧力を受けたとしても、マグネット54の径方向内側への位置ずれは、内側爪部533により防止される。
【0052】
なお、環状板52の円孔520の縁と、円筒部材51の外周面との間に、溶融樹脂が通るスペースが設けられていてもよい。
図3においては、環状板52の円孔520の縁と、円筒部材51の外周面とは接触している。樹脂ゲート口が、上面樹脂部552側に設けられた場合、溶融樹脂は、下面樹脂部553および環状板52の軸方向下側における内側樹脂部551にまで行き渡らない虞がある。すなわち、溶融樹脂は、環状板52によって、環状板52の軸方向上側から、下側に流れることを遮られ、溶融樹脂はコアピース53およびマグネット54の外周面のみしか通れない。この場合、上記外周面において溶融樹脂が通る隙間は小さいので、樹脂の流れが悪くなり、下面樹脂部553および環状板52の軸方向下側における内側樹脂部551にまで溶融樹脂が行き渡らない虞がある。したがって、環状板52の円孔520の縁と、円筒部材51の外周面との間には、溶融樹脂が通るスペースを設けるのが好ましい。
【0053】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0054】
図8は、一変形例に係るロータユニット32Bの斜視図である。
図8の例では、複数のマグネット54Bが、上下2段に配置されている。すなわち、
図8の複数のマグネット54Bは、環状板52Bの上側において周方向に配列された上段マグネット群541Bと、環状板52Bの下側において周方向に配列された下段マグネット群542Bと、を含んでいる。また、コアピース53Bも、上下2段に配置されており、環状板52Bの上側において周方向に配列された上段コアピース群534Bと、環状板52Bの下側において周方向に配列された下段コアピース群535Bと、を含んでいる。このようにすれば、環状板52Bに、マグネット54Bを通すための貫通孔を設ける必要がない。このため、環状板52Bの剛性をさらに高めることができる。
【0055】
また、
図8の例では、上段マグネット群541Bと、下段マグネット群542Bとが、互いに周方向の位置をずらした状態で、配置されている。この状態は、上段コアピース群534Bと、下段コアピース群535Bとが、互いに周方向の位置をずらした状態で、配置されている、とも表現できる。このようにすれば、ロータユニット32Bの全体において、周方向の磁束の切り替わりが、なだらかとなる。したがって、トルクリップルやコギングが低減される。
【0056】
図9は、他の変形例に係るロータユニット32Cの斜視図である。
図9の例では、上下のコアピース53Cの間だけではなく、上段に配置されたコアピース53Cの上側や、下段に配置されたコアピース53Cの下側にも、環状板52Cが配置されている。そして、各コアピース53Cが、3枚の環状板52Cのいずれかに対して、固定されている。このように、環状板は、ロータコアの最上部、最下部、または多段に配置されたコアピースの間に配置されて、各コアピースを固定していればよい。
【0057】
なお、コアピースは、3段以上に配置されていてもよい。例えば、
図10のロータユニット32Dのように、複数のコアピース53Dが、上段、中段、下段の3段に配置されていてもよい。
図10の例では、最上段に配置された複数のコアピース53Dの上側、最下段に配置されたコアピース53Dの下側、および各段の間に、それぞれ環状板52Dが配置されている。そして、各コアピース53Dが、4枚の環状板52Dのいずれかに対して、固定されている。
【0058】
図11は、他の変形例に係る環状板52Eの上面図である。
図11では、複数のマグネット54Eが、二点鎖線で示されている。
図11の環状板52Eは、複数の第2貫通孔に代えて、複数の切り欠き522Eを有している。複数のマグネット54Eは、これらの切り欠き522Eの内部に配置される。このような形状であっても、環状板52Eを軸方向に貫いて、マグネット54Eを配置することができる。ただし、環状板の剛性をより高める観点においては、上記の実施形態のように、複数の第2貫通孔を設けて、マグネットの径方向内側まで環状板を広げる方が、好ましい。
【0059】
また、他の変形例として、樹脂モールド部の内側樹脂部を、非磁性の金属に変更してもよい。すなわち、コアピースおよびマグネットの径方向内側、かつ、シャフトの径方向外側に、非磁性の内側金属部を設けてもよい。内側金属部の材料には、例えば、非磁性のステンレスを使用すればよい。非磁性であれば、コアピースおよびマグネットから径方向内側への磁束の漏れを、抑制できる。
【0060】
図12は、内側金属部60を有する回転部の横断面図である。また、
図13は、
図12のB−B位置から見た回転部の縦断面図である。
図12または
図13のように、内側金属部60Fの内部に、溶融樹脂が軸方向上側から下側にまで流れるような隙間61Fを設けてもよい。このような隙間61Fが無ければ、樹脂ゲート口が、上面樹脂部側に設けられた場合、溶融樹脂は、下面樹脂部にまで行き渡らない虞がある。溶融樹脂が、隙間の小さいコアピースおよびマグネットの外周面を通り、溶融樹脂の流れが悪くなるからである。内側金属部60Fの内部に軸方向に伸びる隙間61Fを設けておけば、溶融樹脂を下面樹脂部にまで行き渡らせることができる。なお、隙間61Fは、内側金属部60Fの周囲に設けられていてもよい。
【0061】
また、
図14は、他の変形例に係る回転部の横断面図である。
図14のように、中心軸に直交する断面において、マグネット54Gの形状が、径方向外側へ向かうにつれて周方向の幅が縮小する台形状となっていてもよい。このような場合、外側爪部を設けなくても、マグネット54Gは、径方向外側へ飛散する虞がない。
【0062】
また、
図15は、更に他の変形例に係る環状板、複数のコアピース、およびマグネットの分解斜視図である。ロータユニット32Hは、環状板52Hを上下に2枚備え、その間にコアピース53Hが配置される。図中、各コアピース53Hは上面に2つの凹部5212をそれぞれ備える。上側の環状板52Hは、図で下側を向く凸部531を複数備える。これは、素材となるオーステナイト系ステンレス鋼板に対してプレス加工を加えて形成した凸部であり、上面側には凹部が見える。
【0063】
凸部531はコアピース53Hの凹部5212に圧入して嵌め込まれる。コアピース53Hの下面には図示しない凸部が複数ある。この凸部は下側の環状面の凹部5211に圧入して嵌め込まれる。これら二つの環状板52Hによってコアピース53Hが相互に締結される。マグネット54Hは、隣接する二つのコアピース53H,53Hに挟まれて固定される。コアピース53Hを上側又は下側の環状板52Hに固定した後、マグネット54Hをコアピース53H,53Hに挿入する。その後、残る一枚の環状板53Hをコアピースに取り付ける。
【0064】
この変形例では、コアピース53Hの上下を環状板52Hによって固定する為、強度の高いロータユニットを得る事ができる。なお、下側の環状板52Hの凹部5211に替えて、第1貫通孔としても良い。ロータユニットの下側に凸部が現れるのを避ける事ができる。
【0065】
また、他の変形例として、環状板の第1貫通孔を凹部に変更し、当該凹部にコアピースの凸部を嵌め合わせるようにしてもよい。また、環状板側に凸部を設け、当該凸部を、コアピース側の凹部に嵌め合わせるようにしてもよい。すなわち、環状板と各コアピースとは、これらの一方に設けられた凹部と他方に設けられた凸部との嵌め合わせによって、固定されていてもよい。また、凸部の形状は、円柱状に限らず、矩形状やV字状であってもよい。
【0066】
また、樹脂モールド部は、必ずしも、内側樹脂部、上面樹脂部、下面樹脂部、および外側樹脂部の全てを含んでいなくてもよい。例えば、樹脂モールド部が、内側樹脂部、上面樹脂部、および下面樹脂部のみで構成されていてもよい。
【0067】
また、他の変形例として、ロータユニットに、樹脂を一切使わなくてもよい。その場合、ロータユニットの上端面、下端面、および、コアバックの外周面を覆うロータカバーを装着してもよい。
【0068】
また、マグネットの材料は、フェライトであってもよく、ネオジムであってもよい。ただし、近年では、レアアースであるネオジムの価格が高騰し、ネオジムマグネットを使用することが困難となっている。このため、フェライトマグネットを使用しつつ、強い磁力を得たいという技術的要求が高い。この点、上記の実施形態のように、マグネットとコアピースとを周方向に交互に配置すれば、ロータユニットにおけるマグネットの体積比率を、高めることができる。したがって、フェライトマグネットを使用しつつ、強い磁力を得ることが可能となる。
【0069】
また、マグネットの径方向外側において周方向に突出する外側爪部は、一つのみでもよい。すなわち、マグネットの周方向の両端部のうち少なくとも一端部が、外側爪部と径方向に重なっていればよい。
【0070】
その他、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。