特許第6282802号(P6282802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282802半芳香族ポリアミド粉粒体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282802
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】半芳香族ポリアミド粉粒体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20180208BHJP
   C08G 69/28 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C08G69/26
   C08G69/28
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-49175(P2013-49175)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-173058(P2014-173058A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木田 尚実
(72)【発明者】
【氏名】中井 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】森本 真梨子
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−508525(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070457(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/014236(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/012218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジアミン成分およびモノカルボン酸成分から構成され、モノカルボン酸成分が、ステアリン酸、カプリル酸、ラウリン酸またはベヘン酸であって、以下の条件(a)〜(d)を満たす半芳香族ポリアミド粉粒体。
(a)モノカルボン酸成分の含有量が、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、0〜3.5モル%である。
(b)脂肪族ジアミン成分が、1,10−デカンジアミンである。
(c)粒子径が50μm以下の粒子が20体積%以下である。
(d)モード径が100μm以上である。
【請求項2】
芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を含有することを特徴とする請求項1に記載の半芳香族ポリアミド粉粒体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド粉粒体を成形してなることを特徴とする成形体。
【請求項4】
原料としてモード径が80μm以上の芳香族ジカルボン酸を用いて、180℃未満の温度を維持しながら、芳香族ジカルボン酸が粉粒体の状態を保つように芳香族ジカルボン酸に液状のモノカルボン酸と脂肪族ジアミンを添加してナイロン塩の粉粒体を作製し、得られたナイロン塩の粉粒体を高分子量化して重合物を得ることを特徴する請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド粉粒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性に優れた半芳香族ポリアミド粉粒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半芳香族ポリアミドは機械的特性に優れていることから、電気・電子部品、自動車部品等の成形部材として広く用いられている。半芳香族ポリアミドは、通常、粉粒体として製造されているが、その粉粒体としての形状のために原料投入口から成形機や混練機に供給する際に滞留が生じたり、成形機や混練機の供給口付近でブリッジが発生したりするという取扱上の問題がある。
【0003】
上記のような問題を解決する方法としては、例えば、粉粒体の各粒子をシリコーン樹脂で覆い、表面状態を改良することにより流動性を改良する方法(特許文献1)や、粒子径の小さい粉粒体を予め除去して粉粒体の流動性を改良する方法が知られている。しかしながら、このような方法は、粉粒体が得られた後に二次加工することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3788695公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術を鑑み、二次加工することなく、流動性に優れた半芳香族ポリアミド粉粒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、モノカルボン酸成分の含有量を特定量とし、180℃未満の温度でナイロン塩粉粒体を合成することにより、流動性に優れた半芳香族ポリアミド粉粒体を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジアミン成分およびモノカルボン酸成分から構成され、モノカルボン酸が、ステアリン酸、カプリル酸、ラウリン酸またはベヘン酸であって、以下の条件(a)〜(d)を満たす半芳香族ポリアミド粉粒体。
(a)モノカルボン酸成分の含有量が、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、0〜3.5モル%である。
(b)脂肪族ジアミン成分が、1,10−デカンジアミンである。
(c)粒子径が50μm以下の粒子が20体積%以下である。
(d)モード径が100μm以上である。
[2]芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を含有することを特徴とする[1]に記載の半芳香族ポリアミド粉粒体。
[3][1]または[2]に記載の半芳香族ポリアミド粉粒体を成形してなることを特徴とする成形体。
[4]原料としてモード径が80μm以上の芳香族ジカルボン酸を用いて、180℃未満の温度を維持しながら、芳香族ジカルボン酸が粉粒体の状態を保つように芳香族ジカルボン酸に液状のモノカルボン酸と脂肪族ジアミンを添加してナイロン塩の粉粒体を作製し、得られたナイロン塩の粉粒体を高分子量化して重合物を得ることを特徴する[1]または[2]に記載の半芳香族ポリアミド粉粒体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動性に優れた半芳香族ポリアミド粉粒体を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、製造時の収率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られた半芳香族ポリアミド粉粒体の粒度分布を示す図である。
図2】比較例2で得られた半芳香族ポリアミド粉粒体の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体は、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とモノカルボン酸成分とから構成される半芳香族ポリアミドの粉粒体である。
【0011】
半芳香族ポリアミドを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられ、中でも、テレフタル酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含有することにより、耐熱性を向上させることができる。芳香族ジカルボン酸成分は、2種以上の芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。
【0012】
ジカルボン酸成分として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を含有してもよい。脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸を含有させる場合、その含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0013】
半芳香族ポリアミドを構成する脂肪族ジアミン成分は、1,10−デカンジアミンであることが必要である。
【0014】
アミン成分として、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンや、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン成分を含有してもよい。脂環式ジアミンや芳香族ジアミンを含有させる場合、その含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0015】
半芳香族ポリアミドには、必要に応じて、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸や11−アミノウンデカン酸等のω−アミノカルボン酸を含有してもよい。
【0016】
本発明において、半芳香族ポリアミドを構成するモノカルボン酸成分の含有量は、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、0〜3.5モル%であることが必要であり、0〜2.5モル%であることが好ましい。モノカルボン酸成分の含有量が3.5モル%を超える場合、半芳香族ポリアミド粉粒体の安息角が大きくなり、流動性が不良になるので好ましくない。また、得られる半芳香族ポリアミド粉粒体の分子量が小さくなり、それを用いた成形体の機械的特性が低下するので好ましくない。なお、前記モノカルボン酸成分の含有量を0.3〜3.5モル%とすることにより、溶融流動性も向上させることができる。
【0017】
半芳香族ポリアミドに用いるモノカルボン酸成分の分子量は、140以上であることが必要で、170以上であることが好ましい。分子量が140以上のモノカルボン酸を用いることにより、安息角をより小さくすることができ、さらに、溶融流動性を向上させたり、高温使用時のアウトガスの発生を抑制したりすることができる。なお、本発明において、モノカルボン酸の分子量は、原料のモノカルボン酸の分子量を指す。
【0018】
モノカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられ、中でも、脂肪族モノカルボン酸が好ましい。分子量が140以上の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。中でも、汎用性が高いことから、ステアリン酸が好ましい。分子量が140以上の脂環族モノカルボン酸としては、例えば、4−エチルシクロヘキサンカルボン酸、4−へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−ラウリルシクロヘキサンカルボン酸が挙げられる。分子量が140以上の芳香族モノカルボン酸としては、例えば、4−エチル安息香酸、4−へキシル安息香酸、4−ラウリル安息香酸、アルキル安息香酸類、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸およびそれらの誘導体が挙げられる。モノカルボン酸成分は、2種以上のモノカルボン酸を併用してもよく、分子量が140未満のモノカルボン酸と併用してもよい。
【0019】
半芳香族ポリアミドは、融点が300℃以上であることが好ましく、310℃以上であることがより好ましい。半芳香族ポリアミドの融点を高くすることにより、より高温環境下における成形体として使用することができる。
【0020】
半芳香族ポリアミドは、96%硫酸中、25℃、濃度1g/dLで測定した場合の相対粘度が、1.8以上であることが好ましく、1.8〜2.8であることがより好ましく、1.9〜2.5であることがさらに好ましい。なお、相対粘度は、分子量の指標とすることができる。
【0021】
本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体は、芳香族ジカルボン酸成分と、脂肪族ジアミン成分と、モノカルボン酸成分とからナイロン塩を得る工程(i)と、得られたナイロン塩を重合する工程(ii)からなる方法により製造することができる。
【0022】
工程(i)においては、180℃未満の温度を維持しながら、芳香族ジカルボン酸が粉粒体の状態を保つように芳香族ジカルボン酸に液状のモノカルボン酸と脂肪族ジアミンを添加してナイロン塩の粉粒体を作製する。工程(i)においては、半芳香族ジカルボン酸は固体、モノカルボン酸と脂肪族ジアミンは液体となっているため、半芳香族ジカルボン酸と、モノカルボン酸および脂肪族ジアミンを容易に反応させることができる。なお、工程(i)においては、水の含有量を芳香族ジカルボン酸粉粒体、モノカルボン酸、脂肪族ジアミンの合計量に対して5質量%以下とすることが好ましい。水の含有量を5質量%以下とすることにより、ゲル化の原因となるトリアミンの副生量を低減することができる。
【0023】
工程(ii)においては、工程(i)で得られたナイロン塩を、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、半芳香族ポリアミド粉粒体を得る。固相重合は、重合温度180〜270℃、反応時間0.5〜10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0024】
本発明においては、工程(ii)の後に、必要に応じて、工程(ii)で得られた重合物から2mm以上の塊状物を取り除いてもよい。塊状物を取り除く方法としては、特に限定されないが、例えば、目開きが2〜5mm程度の篩を用いて取り除く方法が挙げられる。
【0025】
工程(i)および工程(ii)の反応装置としては、特に限定されず、公知の装置を用いればよい。工程(i)と工程(ii)を同じ装置で実施してもよいし、異なる装置で実施してもよい。また、加熱の方法としては、特に限定されないが、水、蒸気、熱媒油等の媒体にて反応容器を加熱する方法、電気ヒーターで反応容器を加熱する方法、攪拌により発生する攪拌熱等内容物の運動に伴う摩擦熱を利用する方法が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0026】
本発明の製造方法においては、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられ、重合触媒の添加量は、通常、原料モノマーの総モル数に対して、2モル%以下で用いることが好ましい。
【0027】
本発明において、工程(i)で用いる芳香族ジカルボン酸粉粒体のモード径は、80μm以上であることが好ましく、100〜150μmであることがより好ましい。本発明の製造方法においては、原料の芳香族ジカルボン酸粉粒体は、ジアミン成分やモノカルボン酸成分と反応して、反応した分だけ粒子径が大きくなったナイロン塩粉粒体を形成し、該ナイロン塩粉粒体は、高分子量化してもほぼ粒子径を維持する傾向がある。そのため、工程(i)で用いる芳香族ジカルボン酸のモード径を80μm以上とすることにより、高分子量化した後の半芳香族ポリアミド粉粒体のモード径を100μm以上とすることができると推測される。
【0028】
また、本発明においては、半芳香族ポリアミド粉粒体の粒子径が50μm以下の粒子の含有量を20体積%以下とすることができる。本発明の製造方法において180℃以上の温度でナイロン塩粉粒体を合成すると、熱によってナイロン塩粉粒体の硬度が低下し、摩擦によってナイロン塩粉粒体の粒子が破砕され、粒子径が50μm以下の粒子が多いナイロン塩粉粒体が合成され、それから得られる半芳香族ポリアミド粉粒体も、粒子径が50μm以下の粒子が多くなる傾向がある。しかし、本発明の製造方法においては、180℃以下の温度でナイロン塩粉粒体の合成をおこなうため、粒子の破砕が低減され、ナイロン塩粉粒体の粒子径が50μm以下の粒子が低減される。その結果、それを高分子量化した半芳香族ポリアミド粉粒体においても、粒子径が50μm以下の粒子を20体積%以下にすることができると推測される。
【0029】
本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体においては、粒子径が50μm以下の粒子を20体積%以下とすることができ、モード径を100μm以上とすることができるので、安息角を40度以下にすることができる。そのため、粉粒体を二次加工する必要もないし、ホッパー下にバイブレーター等の装置を設置して、強制的に成形機や混練機に供給したり、配管に加熱装置を設置して強制的に樹脂が流れるようにする必要がない。粒子径が50μm以下の粒子の含有量が20体積%を超える場合や、モード径が100μm未満の場合は、いずれも、安息角が40度を超えるものとなり、粉粒体として流動性が低下するので好ましくない。
【0030】
本発明の製造方法のように、加熱下で粉粒体の状態を保つようにナイロン塩を合成する方法を採ると、粒度分布に影響を及ぼさない、異物としての塊状物が生成することがある。これらは、例えば目開きが2mmの程度の篩を用いて容易に取り除くことができる。本発明の製造方法によれば、ナイロン塩の合成の温度条件として180℃未満を採用することにより、これらの塊状物の生成が抑制され、粉粒体の収率を向上させることができ、収率を95質量%以上とすることができる。
【0031】
本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体には、必要に応じて、各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、繊維状強化材、板状強化材、耐衝撃改良材、帯電防止剤、導電付与剤、熱伝導性充填材、脂肪族ポリアミド、非晶性ポリアミド、熱安定剤、光安定剤、摺動性改良材、難燃剤、難燃助剤、顔料が挙げられる。添加剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0032】
繊維状強化材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維、セピオライト、パリゴルスカイトが挙げられる。繊維状強化材を添加することにより、機械的強度を向上させることができる。中でも、耐熱性が高く、入手しやすいことからガラス繊維、炭素繊維、金属繊維が好ましい。繊維状強化材は2種以上併用してもよい。繊維状強化材は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系が挙げられ、半芳香族ポリアミドとの密着性が高いことから、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
【0033】
繊維状強化材の平均繊維長は、0.1〜7mmであることが好ましく、0.5〜6mmであることがより好ましい。繊維状強化材の平均繊維長が0.1〜7mmであることにより、成形性に悪影響を及ぼすことなく、半芳香族ポリアミドの機械的特性を向上させることができる。また、平均繊維径は3〜20μmであることが好ましく、5〜13μmであることがより好ましい。平均繊維径を3〜20μmとすることにより、溶融混練時に折損を減らしながらも、半芳香族ポリアミドの機械的特性を向上させることができる。断面形状は、円形断面であることが好ましいが、必要に応じて、長方形、楕円(偏平)、それ以外の異形断面であってもよい。
【0034】
繊維状強化材を用いる場合、その含有量は、半芳香族ポリアミド100質量部に対し、5〜200質量部とすることが好ましく、10〜180質量部とすることがより好ましく、20〜150質量部とすることがさらに好ましく、30〜130質量部とすることが最も好ましい。
【0035】
上記添加剤の添加方法は特に限定されないが、二軸混練機を用いた溶融混練法が好適に用いられる。混練温度は、半芳香族ポリアミドの融点以上とすることが必要であり、(融点+100℃)未満とすることが好ましい。混練温度を半芳香族ポリアミドの融点以上、(融点+100℃)未満とすることにより、混練機が過負荷となり、ベントアップすることを抑制しながらも、半芳香族ポリアミドの分解、黄変を抑制することができる。混練した樹脂組成物はストランドとし、ペレット化することが好ましい。
【0036】
本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体やそれを用いてなる樹脂組成物を射出成形することにより、成形体とすることができる。射出成形に用いる射出成形機としては、特に限定されないが、例えば、スクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融された半芳香族ポリアミドやその樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、半芳香族ポリアミドの融点以上とすることが必要であり、(融点+100℃)未満とすることが好ましい。なお、半芳香族ポリアミド粉粒体を射出成形に用いる場合は、半芳香族ポリアミド粉粒体は十分に乾燥していることが好ましい。水分率の高い粉粒体は、流動性を悪化させ、喰い込み不良が生じたり、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いる半芳香族ポリアミド粉粒体の水分率は、0.3質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。
【0037】
本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体は、Tダイ押出、インフレーション成形等の公知の製膜方法により、フィルムやシートに成形することができる。本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体を成形してなるフィルムやシートは、例えば、スピーカー振動板、フィルムコンデンサの用途に用いることができる。
【0038】
また、本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体は、溶融紡糸法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法等の公知の紡糸方法により、各種繊維に成形することができる。本発明の半芳香族ポリアミド粉粒体を成形してなる繊維は、例えば、エアーバッグ基布、耐熱フィルター、ラジエータホース用補強用繊維、ブラシ用ブリッスル、釣糸、タイヤコード、人工芝、絨毯、魚網、ロープ、フィルター用繊維、座席シート用繊維の用途に用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
1.分析方法
半芳香族ポリアミドの物性測定は以下の方法によりおこなった。
【0040】
(1)モード径、粒子径が50μm以下の粒子の割合
目開きが2mmの篩を用いて塊状物を取り除いた粉粒体を、蒸留水に分散させ、超音波を1分かけて凝集を解除した。その後、HORIBA製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用い、吸光度が適正範囲になる濃度で、モード径と粒子径が50μm以下の粒子の割合を測定した。
【0041】
(2)収率
塊状物を取り除く前と後の質量から計算した。
【0042】
(3)安息角
蔵持科学機器製作所製嵩比重測定器(JISK6721準拠)を用いて、水平面上に上方から100cmの半芳香族ポリアミド粉粒体を流出させて円錐状に堆積させた。堆積物の高さと底辺の長さを測定し、二等辺三角形を作図し、堆積物の表面の傾斜角として、二等辺三角形の底角を測定した。
【0043】
(4)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温した。25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点とした。
【0044】
(5)相対粘度
96%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で、相対粘度を測定した。
【0045】
(6)メルトフローレート(MFR)
JISK7210に準拠して、荷重1.2kgf/cm、温度350℃の条件下、測定した。
【0046】
2.原材料
用いた原材料を以下に示す。
(1)芳香族ジカルボン酸成分
・TPA:テレフタル酸(融点:300℃以上、モード径130μm)
・IPA:イソフタル酸(融点:300℃以上、モード径100μm)
【0047】
(2)脂肪族ジアミン成分
・DDA:1,10−デカンジアミン(融点:62℃)
・HMDA:1,6−ヘキサンジアミン(融点:42℃)
・NDA:1,9−ノナンジアミン(融点:36℃)
【0048】
(3)モノカルボン酸成分
・STA:ステアリン酸(分子量:284、融点:70℃)
・CP:カプリル酸(分子量:144、融点:15〜17℃)
・LA:ラウリン酸(分子量:200、融点:44〜46℃)
・BHA:ベヘン酸(分子量:341、融点:74〜78℃)
・BA:安息香酸(分子量:122、融点:122℃)
・CA:カプロン酸(分子量:116、融点:−3℃)
【0049】
実施例1
芳香族ジカルボン酸成分として粉末状のTPA4.70kgと、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物9.3gとを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら150℃に加熱した。その後、温度を150℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、脂肪族ジアミン成分として120℃に加温したDDA5.15kgと、モノカルボン酸成分として分子量284のSTA0.15kgを、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加しナイロン塩を得た。原料のモノマー比は、TPA:DDA:STA=48.0:50.0:2.0であった。ナイロン塩の作製時、反応熱による温度上昇を制御し、温度を173℃で保持した。
得られたナイロン塩を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間加熱して重合し、重合物を得た。
得られた重合物を、目開きが2mmの篩を用いて、塊状物を取り除き、半芳香族ポリアミド粉粒体を得た。
【0050】
実施例2〜10、参考例1〜10、比較例1〜3
各成分の種類、含有量、ナイロン塩の生成温度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして半芳香族ポリアミド粉粒体を得た。
【0051】
比較例4
比較例1の半芳香族ポリアミド粉粒体を、篩目開きを50μmとして、ダルトン社製ダルトン振動篩機を用いて分級を行い、篩の上に残った粉粒体を回収した。
【0052】
実施例1〜10、参考例1〜10、比較例1〜4で得られた半芳香族ポリアミド粉粒体の樹脂組成、製造条件、粉粒体特性、樹脂特性を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1〜10の半芳香族ポリアミド粉粒体は、モノカルボン酸成分の含有量を特定量以下とし、180℃未満の温度でナイロン塩を合成したため、いずれも、モード径が100μm以上であり、粒子径が50μm以下の粒子が20体積%以下であった。その結果、安息角は40度以下であり、流動性が良好であった。また、製造時の粉粒体の収率は95%以上と高かった。
実施例1〜9、参考例1、2と、参考例3〜9との対比から、分子量が140以上のモノカルボン酸を用いた半芳香族ポリアミドは、安息香酸を用いた半芳香族ポリアミドと対比して、安息角が小さく、また、MFRは5g/10分以上高いことがわかる。
実施例1、2と参考例1との対比から、脂肪族ジアミン成分として、1,10−デカンジアミンを用いた方が1,9−ノナンジアミンよりも、融点が高くなることがわかる。
実施例1、2、6〜9と実施例10の対比から、モノカルボン酸成分の含有量が0.3モル%未満の場合はMFRが小さくなることがかわる。
実施例1〜5と参考例10の対比から、モノカルボン酸成分として分子量が140未満のモノカルボン酸を用いた場合はMFRが高くなることがわかる。
【0055】
比較例1、2の半芳香族ポリアミド粉粒体は、180℃以下の温度でナイロン塩を合成したため、粒子径が50μm以下の粒子が20体積%を超え、モード径が100μmであった。そのため、安息角が40度以上であった。また、収率が低かった。
比較例3の半芳香族ポリアミド粉粒体は、モノカルボン酸成分の含有量が多かったため、粒子径が50μm以下の粒子が20体積%を超えていた。そのため、安息角が大きかった。また、モノカルボン酸により末端封鎖されたものが多かったため、相対粘度が低かった。
比較例4の半芳香族芳香族ポリアミド粉粒体は、比較例1の半芳香族ポリアミド粉粒体を、篩目開きを50μmとして分級をおこない、篩の上に残った粉粒体である。粉粒体において、50μm以下の粒子の割合は20体積%以下となったが、モード径が100μm以下であったため、安息角は40度以上であった。また、収率が低かった。
図1
図2