(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282804
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】かぶり厚測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/14 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
G01B5/14
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-78107(P2013-78107)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-202569(P2014-202569A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】594144980
【氏名又は名称】株式会社東京計測
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100083792
【弁理士】
【氏名又は名称】羽村 行弘
(72)【発明者】
【氏名】大田中 勉
(72)【発明者】
【氏名】永野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中島 昭彦
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−042902(JP,U)
【文献】
特開2011−163083(JP,A)
【文献】
特開昭56−074603(JP,A)
【文献】
特開平05−272960(JP,A)
【文献】
特開2007−108014(JP,A)
【文献】
特開2005−214958(JP,A)
【文献】
実開昭64−019122(JP,U)
【文献】
特開平09−236473(JP,A)
【文献】
実開平04−117919(JP,U)
【文献】
特開2003−214841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアシリンダの作動に連動して拡開するパンタグラフ式部材を介して対向設置された測定板、該測定板の外面間を測距するように設定されたエンコーダを備えた測定器と、
該測定器のエンコーダからの信号を受領して数値表示する表示盤、前記エアシリンダを作動させるエアポンプの接続口を備えた手元器とを、
エア路と信号路を備え、形状と長さとを任意に設定可能なフレキシブル管を介して連繋し、
前記測定板の一方に先端が取り付けられたワイヤと、
前記測定板の他方に設けられ前記ワイヤを送出するリールと、を有し、
前記エンコーダは、前記リールから引き出した前記ワイヤの長さを測距する
ことを特徴とするかぶり厚測定装置。
【請求項2】
前記手元器が、吊り紐を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載のかぶり厚測定装置。
【請求項3】
前記パンタグラフ式部材が、前記エアシリンダに掛けた圧に連動して拡大するようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のかぶり厚測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋に対するかぶり厚(鉄筋と型枠との間隔)を、測定点をずらしつつ数値にて測定できるようにしたかぶり厚測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物における鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚は、鉄筋の腐食の防止又は抑制するためにも重要である。このかぶり厚の測定するものとして実用新案登録第3134672号公報があった。これは型枠内面に当てる型枠側基準部と、かぶりを測定する鉄筋に当てる鉄筋側基準部と、器具を操作する持ち手大と、持ち手小とを備え、型枠側基準部を型枠内面に当てた状態で、鉄筋側基準部を鉄筋の任意の位置にスライドさせることによりかぶり厚を測定できるようにしていた。
【特許文献1】実用新案登録第3134672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のものは、持ち手大と持ち手小とを手に持ち、まず、型枠側基準部を当て、次いで、持ち手大をスライドさせて鉄筋側基準部を鉄筋に当てる。これにより両方の基準部間の距離(間隔)を、持ち手大に付したマークが指す、持ち手小に付した目盛りを読むことによりかぶり厚の測定ができるようになっているため、手の届く範囲(深さを含む)しか測定できないという難点があった。
【0004】
本発明は、上記の問題を解消したもので、その目的とするところは、鉄筋コンクリート構造物の鉄筋と型枠との間隔によりかぶり厚を、手の届く範囲に限らず、いかなる深さにおいても正確に測定できるようにしたかぶり厚測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のかぶり厚測定装置は、エアシリンダの作動に連動して拡開するパンタグラフ式部材を介して対向設置された測定板、該測定板の外面間を測距するように設定されたエンコーダを備えた測定器と、該測定器のエンコーダからの信号を受領して数値表示する表示盤、前記エアシリンダを作動させるエアポンプの接続口を備えた手元器とを、エア路と信号路を備え、形状と長さとを任意に設定可能なフレキシブル管を介して連繋したことを特徴とし、手元器に形状と長さとが任意に設定されたフレキシブル管により繋がれた測定器を縮小した状態で任意の深さの測定場所まで挿入し、その深さにおける値を手元器に正確に伝えられるように構成した。
また、
本発明のかぶり厚測定装置は、前記測定板の一方に先端が取り付けられたワイヤと、前記測定板の他方に設けられ前記ワイヤを送出するリールと、
を有し、前記エンコーダは、前記リールから引き出した前記ワイヤの長さを測距することを特徴とし、測定
板のそれぞれの外面が当接したときに、その外面間(かぶり厚)が測距できるように構成した。
【0006】
また、請求項
2に記載のかぶり厚測定装置は、前記手元器が、吊り紐を備えたものであることを特徴とし、手元器を首又は肩に吊り下げた作業者が極めて近くで測定値を読み取れるように構成した。
【0007】
さらに、請求項
3に記載のかぶり厚測定装置は、前記パンタグラフ式部材が、前記エアシリンダに掛けた圧に連動して拡大するようになっていることを特徴とし、エアシリンダに圧を掛けると測定板を測定できるように拡開し、エアシリンダへの圧を解除すると測定板を縮小できるように構成している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手元器に繋いだエアポンプの操作でパンタグラフ式部材を介して対向設置された測定板を鉄筋と型枠とに当るように拡開し、その拡開時の値をエンコーダにより確実かつ正確に求め、これを手元器の表示盤に正確に表示できるようにしている。また、手元器と測定器とを連繋したエア路と信号路を備えたフレキシブル管はその長さは任意に設定でき限界がないため、測定器で測定した数値は手元器の表示盤に正確に表示でき、しかも、その数値は手元において正確に読み取ることができるなど、各種の優れた効果を奏するものである。
【0009】
また、請求項2の発明によれば、測定者は、測定時に手元器を首や肩に吊り下げて身近におくことができ、測定値を目視により正確に読み取り作業ができるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
また、請求項3の発明によれば、エアシリンダに圧を掛けると測定板を測定できるように拡開し、エアシリンダへの圧を解除すると測定板を縮小できるから、エアポンプの操作により測定場所を点々と変えながら測定できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。
図1は本願装置全体の略示的な一部切欠斜視図、
図2は測定器の拡開時の側面図、
図3は測定器の縮小時の側面図である。
【0012】
本願装置1は、
図1の如く、手元器2と測定器3とを備えている。該手元器2には、吊り紐(ベルトないしバンドを含む)4が固定(着脱可能でもよい)されている。該吊り紐4を首に掛けるか肩に掛けることにより手元器2は人体の前面(腹部)又は脇部に吊り下げることができ、その状態における上面には測定器3からの測定信号を表示できる表示盤5が設けられている。
【0013】
前記表示盤5は、前記手元器2に内蔵されている電池室6内に収納した電池もしくは充電池(図示せず)を電源とし、手元スイッチ6aをオンすることにより作動する。前記手元器2にはエアポンプ7が、内蔵されているエア接続器8の入力端8aにチューブ7aの先端ノズル7bを接続できるようになっている。前記エアポンプ7は、図示の場合は、手で繰り返し掴む操作によりエア吸入口7cから逆止弁(図示せず)を通してエアをエア接続器8の出力端8bより前記測定器3側へ向けて送り出すようになっている。前記エア吸入口7cにはエア排出コック7dも備えられている。
【0014】
前記エアポンプ7の操作により押し出されたエアは、フレキシブル管9に備えたエア路aを通して前記測定部3のエアシリンダ10に供給される。該エアシリンダ10に掛かった圧は手元器2の上面に設けたランプ11を点灯させることにより確認がとれる。
【0015】
前記測定器3は、前記エアポンプ7からの圧がエアシリンダ10に掛かると拡大するパンタグラフ式部材12を介して測定板13、13′を支持している。該パンタグラフ式部材12のうち、第1リンク14、14′と、第2リンク15、15′とで作ったヒシ形の上端部は、エアシリンダ10の延長枠16の上ピン17に枢着し、また、ヒシ形の下端部は、エアシリンダ10のピストン10′の先端具18から延長したシャフト19の先端ピン20に枢着し、さらに、ヒシ形の左右部は、前記測定板13、13′の内面中央部に固定した縦枠21の上位ピン22に枢着している。
【0016】
前記パンタグラフ式部材12のうち、第3リンク23、23′で作られた山形の基端部は、前記エアシリンダ11の延長枠16の下ピン24に枢着し、山形の先端部は、前記測定板13、13′の内面中央部に固定した縦枠21の下位ピン25に枢着している。
【0017】
前記エアシリンダ10は、これにエア圧が掛かると、前記ピストン10′が引かれ、その先端具18から延長したシャフト19の先端ピン20の上動に伴ってパンタグラフ式部材12が拡大して鉄筋Aと型枠Bの内面に、前記測定板13、13′のそれぞれの外面を当接させ、
図2の状態になる。一方、前記エアシリンダ10に掛かっていたエア圧がなくなると、前記測定板13、13′の重さで、パンタグラフ式部材12が、
図3の如く、折り畳まれ、縮小するようになっている。
【0018】
前記測定板13、13′の一方の内面には、エンコーダ26が設けられ、他方の内面には、前記エンコーダ26に内蔵したリール27から引き出したワイヤ28の先端が結着具29に結着されている。しかして、前述の如く測定板13、13′が拡開し、前記鉄筋Aと型枠Bの内面に、それぞれの外面が当接したときには、その外面間(かぶり厚)Cが測距できるように設定されている。なお、前記エンコーダ26のリール27はワイヤ28を巻取り方向にバネ(図示せず)付勢されている。
【0019】
前記エンコーダ26を作動するための電源は、前記手元器2に内蔵した電池室6内の電池もしくは充電池からフレキシブル管9内を縦通した信号路bを通して給電される。また、前記エンコーダ26が作動して測距した数値は、前記フレキシブル管9内の信号路bを通して前記手元器2の表示盤5に表示されるようになっている。
【0020】
次に、本願装置の作用を説明する。まず、作業者(測定者)は、手元器2の下面に設けたエアの入力端8aにエアポンプ7の先端ノズル7bを接続する。また、測定器3のエアシリンダ10に繋がっているフレキシブル管9を手元器2の下面に設けた出力端8bに接続する。この場合、フレキシブル管9に備えたエア路aと通信路bはそれぞれ接続されるようになっている。
【0021】
次に、作業者は吊り紐4により前記手元器2を首(又は肩)に掛けたならば、縮小状態になっている測定器3を、エアシリンダ10とともに、鉄筋Aと型枠Bとの間にフレキシブル管9を、そのフレキシブル性を利用して上から下に向けて挿入する。この挿入位置(深さ)は、前記フレキシブル管9の表面にたとえば1メートル毎に数字や色等で表示した目印にて決めてもよい。なお、フレキシブル管9はその長さは限定されないが、3〜6メートル程度でよい。
【0022】
次いで、作業者は、エアポンプ7を繰り返し掴むように操作してエアを、前記エアシリンダ10に注入すると、ピストン10′が引かれ、その先端具18から延長されたシャフト19を上動し、パンタグラフ式部材12を拡開して、測定板13、13′を拡大方向に平行に開いて前記鉄筋Aと型枠Bに内面に当接する。
【0023】
この測定板13、13′の外面間(かぶり厚)Cは、エンコーダ26からワイヤ27が引出され、その引出し量により測距され、その信号がフレキシブル管9を通して手元器2の表示盤5に送られる。この表示盤5の表示は、作業者をして吊り紐4により首又は肩に掛けられている手元器2の上面にあるため即時(リアルタイム)に確認できる。
【0024】
かくして、作業者は、エアポンプ7からエアを送らず、エアポンプ7のエアを抜く操作をしてパンタグラフ式部材12は前記測定板13、13′の重さにより折り畳まれ、測定板13、13′を縮小させる。しかして、測定器3は、その縮小状態では鉄筋Aと型枠Bとの間を自由に移動できる。かくして別の場所(深さも含む)に移動させた後、その場所の深さを確認してから、エアポンプ7を操作して再びパンタグラフ式部材9を拡開し、測定板13、13′を拡大方向に平行に開いて鉄筋Aと型枠Bに当接させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願装置は、エアポンプの操作によりパンタグラフ式部材を介して測定板を拡開し、その拡開により測定板の外面を鉄筋と型枠に当接させると、エンコーダから引き出したワイヤの引出し量によりかぶり厚を、測定場所を次つぎとかえつつ即時に正確に求められることができるかぶり厚測定装置であり、コンクリートを敷設する建築工事、道路工事、トンネル工事、堤防工事などの産業に広く応用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本願装置全体の略示的な一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 本願装置
2 手元器
3 測定器
4 吊り紐(ベルトないしバンドを含む)
5 表示盤
6 電池室
7 エアポンプ
7a チューブ
7b 先端ノズル
8 エア接続器
8a 入力端
8b 出力端
9 フレキシブル管
11 ランプ
10 エアシリンダ
10′ ピストン
12 パンタグラフ式部材
13、13′ 測定板
14、14′ 第1リンク
15、15′ 第2リンク
16 延長枠
17 上ピン
18 先端具
19 シャフト
20 先端ピン
21 縦枠
22 上位ピン
23、23′ 第3リンク
24 下ピン
25 下位ピン
26 エンコーダ
27 リール
28 コード
29 結束具
a エア路
b 通信路