【発明が解決しようとする課題】
【0016】
<第1の問題点>
上述したように、従来では、実際の反射波電力を検出し、検出した反射波電力検出値Prに基づいて反射保護制御を行うか否かを判定していた。そのため、例えば、高周波電源装置の進行波電力の定格出力が3000W、反射保護レベル設定値PPsetが300Wの場合には、次の(1)及び(2)のいずれの場合にも反射保護制御を行うことになる。
(1)進行波電力検出値Pf:3000W、反射波電力検出値Pr:900W
(2)進行波電力検出値Pf:1500W、反射波電力検出値Pr:900W
【0017】
上記の場合、反射波電力検出値Prは、両方とも900Wで同じであるが、進行波電力を含めた定在波として考えると、(1)の方が進行波電力出力部内の増幅素子等に与える影響が大きく、保護対象である増幅素子等の破損リスクが高い。
すなわち、反射波電力検出値Prが同じでも、進行波電力出力部10から出力させる進行波電力が定格出力値(最大値)に近いほど、保護対象(増幅素子等)の安全余裕が小さくなる。反射保護の考え方としては、より安全な方向で反射保護レベル設定値PPsetの閾値を設定することになるので、従来の反射保護制御では、進行波電力の定格出力時における反射波電力検出値Prを基準にすることになる。その結果、上記(2)のように、進行波電力検出値Pfが定格出力値よりも小さい場合は、まだ余裕があるにも関わらず反射保護制御を行ってしまうことになる。そのため、進行波電力出力部10から出力させる進行波電力を抑制しすぎる場合が生じてしまう。
【0018】
例えば、プラズマ処理装置の内部で発生するプラズマ等の負荷は不安定であるため、進行波電力出力部10から出力させる進行波電力を抑制しすぎると、さらに不安定になって、プラズマが消滅する場合があるため、従来の反射保護制御では問題がある。
【0019】
<第2の問題点>
従来のような反射保護制御を行う場合は、次のように2重のフィードバック制御ループを有することになる。
(1)出力設定値PFsetから出力抑制信号Presを減算したものと進行波電力検出値Pfとの比較結果に基づいて、出力制御部120の補償器121から出力制御信号Pcntを出力し、進行波電力出力部10から出力する進行波電力を変化させる第1のフィードバック制御ループ
(2)反射保護レベル設定値PPsetと反射波電力検出値Prとの比較結果に基づいて、反射保護制御部140の補償器141から出力抑制信号Presを出力し、実質的に出力設定値PFsetを小さくさせる第2のフィードバック制御ループ
【0020】
このような場合、上記第2のフィードバック制御ループの応答性は、第1のフィードバック制御ループの応答性を上回ることができないため、フィードバック制御ループが1重の場合に比べて、制御系全体の応答性が遅くなる。
また、制御系の安定性を高めるために、補償器141におけるゲインを小さくした方が好ましい。そうなると、第2のフィードバック制御ループの応答性がさらに遅くなる。場合によっては、フィードバック制御ループが1重の場合に比べて、応答性が1/10程度になってしまう。
【0021】
本発明は、従来よりも進行波電力出力部から出力させる進行波電力を抑制しすぎないようにすること、さらに、従来よりも応答性が速い高周波電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の発明によって提供される高周波電源装置は、
負荷に向けて進行波電力を出力する高周波電源装置において、
直流電源、増幅素子及び発振部を内部に有し、前記発振部から出力する高周波信号を、前記直流電源から出力される直流電力を用いて前記増幅素子によって増幅し、進行波電力として出力する進行波電力出力手段と、
前記進行波電力出力手段と負荷との間に挿入されて、その挿入された位置における電気情報を検出する電気情報検出手段と、
前記電気情報検出手段で検出された検出信号に基づいて、進行波電力検出値及び反射波電力検出値のうち、少なくとも進行波電力検出値を演算する電力値演算手段と、
前記電気情報検出手段の出力に基づいて求まる反射係数又は負荷側インピーダンスを負荷状態情報とし、且つ前記負荷状態情報によって異なる前記進行波電力出力手段から出力可能な進行波電力値を出力可能電力値として定義したときに、前記負荷状態情報と前記出力可能電力値との対応関係を示す情報を予め記憶しておくとともに、前記対応関係を示す情報の中から、現時点の負荷状態情報に対応する出力可能電力値を現時点の出力可能電力値として出力する出力可能電力値設定手段と、
前記進行波電力出力手段から出力させる進行波電力の第1の出力設定値を設定する第1の出力設定手段と、
前記第1の出力設定値と前記現時点の出力可能電力値とを比較して、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値以下の場合は、前記第1の出力設定値を第2の出力設定値として出力し、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値よりも大きい場合は、前記現時点の出力可能電力値を第2の出力設定値として出力する第2の出力設定手段と、
前記進行波電力検出値が前記第2の出力設定値と等しくなるように前記進行波電力出力手段を制御する出力電力制御手段と、
を備えている。
【0023】
第2の発明によって提供される高周波電源装置は、
負荷に向けて進行波電力を出力する高周波電源装置において、
直流電源、増幅素子及び発振部を内部に有し、前記発振部から出力する高周波信号を、前記直流電源から出力される直流電力を用いて前記増幅素子によって増幅し、進行波電力として出力する進行波電力出力手段と、
前記進行波電力出力手段と負荷との間に挿入されて、前記進行波電力出力手段から出力される進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び前記負荷で反射された反射波電力の情報を含む反射波検出信号を検出する電力情報検出手段と、
前記進行波検出信号に基づいて進行波電力検出値を演算する進行波電力値演算手段と、
前記反射波検出信号に基づいて反射波電力検出値を演算する反射波電力値演算手段と、
前記進行波電力検出値および前記反射波電力検出値に基づいて、現時点の反射係数の絶対値を演算する反射係数演算手段と、
反射係数の絶対値によって異なる前記進行波電力出力手段から出力可能な進行波電力値を出力可能電力値として定義したときに、反射係数の絶対値と前記出力可能電力値との対応関係を示す情報を予め記憶した記憶手段と、
前記現時点の反射係数の絶対値に対応する出力可能電力値を前記記憶手段から読み出して、現時点の出力可能電力値として出力する最大電力値設定手段と、
前記進行波電力出力手段から出力させる進行波電力の第1の出力設定値を設定する第1の出力設定手段と、
前記第1の出力設定値と前記現時点の出力可能電力値とを比較して、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値以下の場合は、前記第1の出力設定値を第2の出力設定値として出力し、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値よりも大きい場合は、前記現時点の出力可能電力値を第2の出力設定値として出力する第2の出力設定手段と、
前記進行波電力検出値が前記第2の出力設定値と等しくなるように前記進行波電力出力手段を制御する出力電力制御手段と、
を備えている。
【0024】
第3の発明によって提供される高周波電源装置は、
負荷に向けて進行波電力を出力する高周波電源装置において、
直流電源、増幅素子及び発振部を内部に有し、前記発振部から出力する高周波信号を、前記直流電源から出力される直流電力を用いて前記増幅素子によって増幅し、進行波電力として出力する進行波電力出力手段と、
前記進行波電力出力手段と負荷との間に挿入されて、前記進行波電力出力手段から出力される進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び前記負荷で反射された反射波電力の情報を含む反射波検出信号を検出する電力情報検出手段と、
前記進行波検出信号に基づいて進行波電力検出値を演算する進行波電力値演算手段と、
前記進行波検出信号および前記反射波検出信号に基づいて、現時点の反射係数の絶対値を演算する反射係数演算手段と、
反射係数の絶対値によって異なる前記進行波電力出力手段から出力可能な進行波電力値を出力可能電力値として定義したときに、反射係数の絶対値と前記出力可能電力値との対応関係を示す情報を予め記憶した記憶手段と、
前記現時点の反射係数の絶対値に対応する出力可能電力値を前記記憶手段から読み出して、現時点の出力可能電力値として出力する最大電力値設定手段と、
前記進行波電力出力手段から出力させる進行波電力の第1の出力設定値を設定する第1の出力設定手段と、
前記第1の出力設定値と前記現時点の出力可能電力値とを比較して、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値以下の場合は、前記第1の出力設定値を第2の出力設定値として出力し、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値よりも大きい場合は、前記現時点の出力可能電力値を第2の出力設定値として出力する第2の出力設定手段と、
前記進行波電力検出値が前記第2の出力設定値と等しくなるように前記進行波電力出力手段を制御する出力電力制御手段と、
を備えている。
【0025】
第4の発明によって提供される高周波電源装置は、
負荷に向けて進行波電力を出力する高周波電源装置において、
直流電源、増幅素子及び発振部を内部に有し、前記発振部から出力する高周波信号を、前記直流電源から出力される直流電力を用いて前記増幅素子によって増幅し、進行波電力として出力する進行波電力出力手段と、
前記進行波電力出力手段と負荷との間に挿入されて、前記進行波電力出力手段から出力される進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び前記負荷で反射された反射波電力の情報を含む反射波検出信号を検出する電力情報検出手段と、
前記進行波検出信号に基づいて進行波電力検出値を演算する進行波電力値演算手段と、
前記進行波検出信号および前記反射波検出信号に基づいて、現時点の反射係数の絶対値及び位相角を演算する反射係数演算手段と、
反射係数の絶対値及び位相角によって異なる前記進行波電力出力手段から出力可能な進行波電力値を出力可能電力値として定義したときに、反射係数の絶対値及び位相角と前記出力可能電力値との対応関係を示す情報を予め記憶した記憶手段と、
前記現時点の反射係数の絶対値及び位相角に対応する出力可能電力値を前記記憶手段から読み出して、現時点の出力可能電力値として出力する最大電力値設定手段と、
前記進行波電力出力手段から出力させる進行波電力の第1の出力設定値を設定する第1の出力設定手段と、
前記第1の出力設定値と前記現時点の出力可能電力値とを比較して、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値以下の場合は、前記第1の出力設定値を第2の出力設定値として出力し、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値よりも大きい場合は、前記現時点の出力可能電力値を第2の出力設定値として出力する第2の出力設定手段と、
前記進行波電力検出値が前記第2の出力設定値と等しくなるように前記進行波電力出力手段を制御する出力電力制御手段と、
を備えている。
【0026】
第5の発明によって提供される高周波電源装置は、
負荷に向けて進行波電力を出力する高周波電源装置において、
直流電源、増幅素子及び発振部を内部に有し、前記発振部から出力する高周波信号を、前記直流電源から出力される直流電力を用いて前記増幅素子によって増幅し、進行波電力として出力する進行波電力出力手段と、
前記進行波電力出力手段と負荷との間に挿入されて、前記進行波電力出力手段から出力される進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び前記負荷で反射された反射波電力の情報を含む反射波検出信号を検出する電力情報検出手段と、
前記進行波検出信号に基づいて進行波電力検出値を演算する進行波電力値演算手段と、
前記進行波検出信号および前記反射波検出信号に基づいて、現時点の負荷側インピーダンスを演算する負荷側インピーダンス演算手段と、
負荷側インピーダンスによって異なる前記進行波電力出力手段から出力可能な進行波電力値を出力可能電力値として定義したときに、負荷側インピーダンスと前記出力可能電力値との対応関係を示す情報を予め記憶した記憶手段と、
前記現時点の負荷側インピーダンスに対応する出力可能電力値を前記記憶手段から読み出して、現時点の出力可能電力値として出力する最大電力値設定手段と、
前記進行波電力出力手段から出力させる進行波電力の第1の出力設定値を設定する第1の出力設定手段と、
前記第1の出力設定値と前記現時点の出力可能電力値とを比較して、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値以下の場合は、前記第1の出力設定値を第2の出力設定値として出力し、前記第1の出力設定値が前記現時点の出力可能電力値よりも大きい場合は、前記現時点の出力可能電力値を第2の出力設定値として出力する第2の出力設定手段と、
前記進行波電力検出値が前記第2の出力設定値と等しくなるように前記進行波電力出力手段を制御する出力電力制御手段と、
を備えている。
【0027】
第6の発明によって提供される高周波電源装置は、前記出力可能電力値に関するものであり、
前記出力可能電力値は、前記進行波電力出力手段から進行波電力を出力させたときに、前記増幅素子で生じる損失が規定値を超えないように、且つ前記進行波電力出力手段に含まれる増幅素子にかかる電圧が耐電圧値を超えないように、且つ増幅素子に流れる電流が耐電流値を超えないように、反射係数毎に定めた進行波電力値の最大値である。
【0028】
第7の発明によって提供される高周波電源装置は、前記出力可能電力値に関するものであり、
前記出力可能電力値は、前記進行波電力出力手段から進行波電力を出力させたときに、前記増幅素子で生じる損失が規定値を超えないように、且つ前記進行波電力出力手段に含まれる増幅素子にかかる電圧が耐電圧値を超えないように、且つ増幅素子に流れる電流が耐電流値を超えないように、且つ、限界値に対して裕度を持たせて反射係数毎に定めた進行波電力値の最大値である。
【0029】
第8の発明によって提供される高周波電源装置は、前記出力可能電力値に関するものであり、
前記出力可能電力値は、前記進行波電力出力手段から進行波電力を出力させたときに、前記増幅素子で生じる損失が規定値を超えないように、且つ前記進行波電力出力手段に含まれる増幅素子にかかる電圧が耐電圧値を超えないように、且つ増幅素子に流れる電流が耐電流値を超えないように、負荷側インピーダンス毎に定めた進行波電力値の最大値である。
【0030】
第9の発明によって提供される高周波電源装置は、前記出力可能電力値に関するものであり、
前記出力可能電力値は、前記進行波電力出力手段から進行波電力を出力させたときに、前記増幅素子で生じる損失が規定値を超えないように、且つ前記進行波電力出力手段に含まれる増幅素子にかかる電圧が耐電圧値を超えないように、且つ増幅素子に流れる電流が耐電流値を超えないように、且つ、限界値に対して裕度を持たせて負荷側インピーダンス毎に定めた進行波電力値の最大値である。
【0031】
第10の発明によって提供される高周波電源装置は、前記第1の出力設定値に関するものであり、
前記第1の出力設定値は、負荷に向けて出力する進行波電力を一定にする制御を行うために設定される設定値である。
【0032】
第11の発明によって提供される高周波電源装置は、前記第1の出力設定値に関するものであり、
負荷に向けて出力する進行波電力から反射波電力を減算した電力を負荷側電力と定義したときに、前記第1の出力設定値は、前記負荷側電力を一定にする制御を行うために設定される設定値である。
【0033】
第12の発明によって提供される高周波電源装置は、前記第1の出力設定値に関するものであり、
前記第1の出力設定値は、前記負荷側電力の設定値と現時点の反射係数の情報とを用いて演算される。
【0034】
第13の発明によって提供される高周波電源装置は、
前記進行波電力出力手段と前記
電気情報検出手段
又は前記電力情報検出手段との間に、前記進行波電力出力手段の出力から高調波成分を除去するローパスフィルタを更に備えている。