(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置を示す図である。当該実施形態に係る表示装置は、発光素子として有機EL素子を用いる有機EL表示装置100である。
図1に示すように、有機EL表示装置100は、有機ELパネルを有するTFT基板105を挟むように固定する上フレーム101及び下フレーム102と、表示する情報を生成する回路素子を備える回路基板104と、当該回路基板において生成されたRGBの情報をTFT基板105に伝えるフレキシブル基板103と、により構成される。
【0021】
図2は、当該実施形態に係る表示装置の等価回路を示す図である。
図2は、有機EL表示装置100のうち特に有機ELパネルについて示している。有機ELパネルは、図中縦方向に延在するとともに横方向に並んで配置される複数の信号線SIGと、図中横方向に延在するとともに縦方向に並んで配置される複数の第1制御線φ1と、各第1制御線φ1と並んで配置される複数の第2制御線φ2と、信号線SIGと第1制御線φ1(第2制御線φ2)との交点に対応してマトリクス状に配置されている複数の画素回路PCと、信号線駆動回路XDVと、走査線駆動回路YDVとを含んでいる。信号線SIGは、上端が信号線駆動回路XDVに接続されている。第1制御線φ1及び第2制御線φ2は、走査線駆動回路YDVに接続されている。複数の画素回路PCは表示領域DPを構成している。信号線駆動回路XDVと走査線駆動回路YDVは互いに連携して各画素回路PCを駆動する。
【0022】
接地電圧GNDに接続される第1電源線は第1基準電圧V
Sに維持されている。また、電圧源PSは接続される第2電源線に第2基準電圧V
Dを供給しており、第2基準電圧V
Dは第1基準電圧V
Sより高い電圧である。第1電源線及び第2電源線それぞれは、各画素回路PCに接続されている。すなわち、当該実施形態において、第1基準電圧V
Sは接地電圧であるが、これに限定されることがないのは言うまでもない。また、
図2には、画素回路PCは2×2の4つのみ示されているが、実際は表示解像度に応じた数の画素回路PCが存在する。一般に、n行目、m列目に位置する画素回路はPC(m,n)と表される。例えば左上に存在する画素回路はPC(1,1)と表される。また、m列目の画素回路に接続される信号線は、SIG(m)と表され、n行目の画素回路に接続される第1制御線及び第2制御線はそれぞれφ1(n)及びφ2(n)と表される。
【0023】
図3は、当該実施形態に係る駆動回路の回路図である。
図3に示す駆動回路は、発光素子である有機EL素子OLEDの駆動回路であり、
図2に示す画素回路PCである。当該実施形態に係る駆動回路は、5トランジスタ及び1容量からなる駆動回路である。有機EL素子OLEDは、電流が流れることによって発光する発光素子である。図に示す5つのトランジスタのうち、3つのトランジスタはn型MOS−TFTであり、2つのトランジスタはp型MOS−TFTである。すなわち、CMOS回路を採用している。トランジスタNTDは、有機EL素子OLEDへ流れる電流の量を制御するための駆動トランジスタであり、n型MOS−TFTである。トランジスタPT1及びトランジスタPT2は、それぞれ、第1スイッチングトランジスタ(第1スイッチング素子)及び第2スイッチングトランジスタ(第2スイッチング素子)であり、ともにp型MOS−TFTである。トランジスタNT1及びトランジスタNT2は、それぞれ、第3スイッチングトランジスタ(第3スイッチング素子)及び第4スイッチングトランジスタ(第4スイッチング素子)であり、ともにn型MOS−TFTである。第1基準電圧V
Sと第2基準電圧V
Dとの間に接続される配線上に、有機EL素子OLEDと、トランジスタPT1と、トランジスタNTDと、トランジスタPT2とが、第1基準電圧V
S側からこの順で、直列に接続するよう配置されている。すなわち、トランジスタPT1は、配線上の、有機EL素子OLEDとトランジスタNTDとの間に配置され、トランジスタPT2は、配線上の、トランジスタNTDより第2基準電圧V
D側に配置される。なお、トランジスタPT1のゲートは、第1制御線φ1に接続されており、トランジスタPT2のゲートは、第2制御線φ2に接続されている。トランジスタNTDのゲートと、トランジスタPT2の第2基準電圧V
D側の端子(ここでは、ソース)との間には、第1容量である容量C1が接続されている。
【0024】
トランジスタNT1は、トランジスタNTDのゲートとドレインとの間に接続されている。トランジスタNT2は、トランジスタNTDのソースと信号線SIGとの間に接続されている。トランジスタNT1のゲートは、第1制御線φ1に接続されており、トランジスタNT2のゲートは、第2制御線φ2に接続されている。トランジスタNTDのドレイン(トランジスタPT1のドレイン:第1基準電圧V
S側の端子)の電圧がノードN1であり、トランジスタNTDのゲートの電圧がノードN2であり、トランジスタNTDのソース(トランジスタPT1のソース:第2基準電圧V
D側の端子)の電圧がノードN3である。
【0025】
図4は、当該実施形態に係る駆動回路の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図4には、信号線SIG、第1制御線φ1、第2制御線φ2、ノードN1、ノードN2、及びノードN3の電圧の変化が時系列に示されている。図に示す時刻をそれぞれ時刻t1〜時刻t7とすると、時刻t3〜時刻t4の期間が、当該駆動回路に備えられる駆動トランジスタ(トランジスタNTD)に表示データに対応する信号電圧V
aを書き込む信号書込み期間であり、時刻t4以降の期間が、当該有機EL素子OLEDが当該表示データを表示する発光期間(表示期間)である。なお、時刻t2以前の期間は、第1の期間であり、前の表示データを表示する発光期間であり、時刻t2〜時刻t3の期間が、第2の期間であり、当該駆動回路に備えられる駆動トランジスタ(トランジスタNTD)に書き込まれた電圧をリセットするリセット期間である。
図4では、信号線SIGの電圧は、順に変化しているが、それぞれの電圧は、順に信号を書き込む複数の画素回路PC(駆動回路)の信号電圧を表しており、複数の画素回路は
図3に縦方向に1列に並ぶ画素回路PCに対応している。
【0026】
時刻t2以前(第1の期間)には、第1制御線φ1及び第2制御線φ2は、ともにロー電圧V
Lに維持されている。ここで、駆動回路に含まれるn型MOS−TFTにとって、ロー電圧V
Lはオフ電圧であり、ハイ電圧V
Hはオン電圧である。特に、ハイ電圧V
Hは、n型MOS−TFTをオンすることが出来る十分に高い電圧である。また、駆動回路に含まれるp型MOS−TFTにとって、ハイ電圧V
Hはオフ電圧であり、ロー電圧V
Lはオン電圧である。特に、ロー電圧V
Lは、p型MOS−TFTをオンすることが出来る十分に低い電圧である。簡単のために、駆動回路に含まれる4つのスイッチング素子(トランジスタ)の閾値電圧の絶対値が等しく、電圧V
TH0する。ハイ電圧V
Hは、第2基準電圧V
Dと電圧V
TH0に対して、V
H>V
D+V
TH0の関係を満たしている。なお、ハイ電圧V
HはV
D+V
TH0よりも十分に高いのが望ましい。同様に、ロー電圧V
Lは、第1基準電圧V
Sと電圧V
TH0に対して、V
L<V
S−V
TH0の関係を満たしている。なお、ロー電圧V
LはV
S−V
TH0よりも十分に低いのが望ましい。第1制御線φ1及び第2制御線φ2がともにロー電圧V
Lに維持されていることにより、時刻t2以前には、トランジスタPT1及びトランジスタPT2はオン状態に、トランジスタNT1及びトランジスタNT2はオフ状態に、それぞれ維持されている。トランジスタPT2が十分にオンされているので、ノードN1は、第2基準電圧V
Dとなっている。また、ノードN2は電圧V
bpに、ノードN3は電圧V
1pに、それぞれ維持されている。
【0027】
リセット期間(第2の期間)開始時である時刻t2に、第1制御線φ1の電圧がロー電圧V
Lからハイ電圧V
Hに変化する。これにより、トランジスタPT1はオフ状態に、トランジスタNT1はオン状態となる。なお、リセット期間には、第2制御線φ2はロー電圧V
Lに維持されており、トランジスタPT2はオン状態に、トランジスタNT2はオフ状態に、それぞれ維持される。トランジスタPT1がオフ状態となることにより、有機EL素子OLEDへの電流供給が遮断される。トランジスタNT1がオン状態となることにより、ノードN1とノードN2が接続する。トランジスタNT1は十分にオンされており、容量C1が放電をされる方向に電流がトランジスタNT1に流れ、ノードN2は、ノードN1と等しくなり、第2基準電圧V
Dへ上昇して、安定状態となる。安定状態になると、トランジスタNT1に流れる電流は0である。ここで、駆動トランジスタであるトランジスタNTDの閾値電圧の絶対値をV
thとする。ノードN2が第2基準電圧V
Dへ上昇するのに伴って、ノードN3は、V
D−V
thまで上昇する。
【0028】
信号書込み期間開始時である時刻t3に、第2制御線φ2の電圧がロー電圧V
Lからハイ電圧V
Hに変化する。これにより、トランジスタPT2はオフ状態に、トランジスタNT2はオン状態となる。なお、信号書込み期間には、第1制御線φ1はハイ電圧V
Hに維持されており、トランジスタPT1はオフ状態に、トランジスタNT1はオン状態に、それぞれ維持される。トランジスタPT2がオフ状態となることにより、ノードN1が第2基準電圧V
Dから遮断される。時刻t3に、次の発光期間に当該有機EL素子OLEDが表示する表示データに対応する信号電圧V
aが信号線SIGに印加される。よって、オン状態となるトランジスタNT2を介して、トランジスタNTDのソース(ノードN3)が信号電圧V
aとなっている信号線SIGと接続され、ノードN3は信号電圧V
aへ低下する。すなわち、トランジスタNT2は、信号書込み期間にオン状態となって、信号電圧V
aをトランジスタNTDのソースに供給する。ノードN3が信号電圧V
aに低下するのに伴って、容量C1が充電をされる方向に電流がトランジスタNT1に流れ、トランジスタNTDのゲート(ノードN2)は、V
a+V
thとなる電圧へ低下して、安定状態となる。安定状態になると、トランジスタNT1に流れる電流は0である。このとき、ノードN1はノードN2と短絡しているので、ノードN1はノードN2と同様に、V
a+V
thとなる電圧となっている。すなわち、信号線SIGに印加される信号電圧V
aがトランジスタNTDのソースに供給され、それに伴って、トランジスタNTDのゲートがV
a+V
thとなる電圧に変化する。ここで、信号電圧V
aの最大値をV
maxとすると、第2基準電圧V
Dは、信号書込み期間(そして、後の発光期間)におけるノードN2の最大値であるV
max+V
thより高い電圧である必要がある。すなわち、V
D>V
max+V
thを満たす必要がある。
【0029】
信号書込み期間終了後、発光期間の開始時である時刻t4に、第1制御線φ1及び第2制御線φ2がともに、ハイ電圧V
Hからロー電圧V
Lに変化する。これにより、トランジスタPT1及びトランジスタPT2はともにオン状態となり、トランジスタNT1及びトランジスタNT2はともにオフ状態となる。トランジスタNT1がオフ状態となることにより、ノードN2はノードN1から遮断され、ノードN2はフローティングノードとなる。また、トランジスタNT2がオフ状態となることにより、ノードN3は信号線SIGから遮断される。トランジスタPT1及びトランジスタPT2がともにオン状態となることにより、第2基準電圧V
Dと駆動トランジスタであるトランジスタNTD、及びトランジスタNTDと有機EL素子OLEDが、それぞれ接続され、駆動トランジスタであるトランジスタNTDのゲートに印加される電圧により、有機EL素子OLEDに流れる電流の量が制御される。
【0030】
このとき、トランジスタNTDのソース(ノードN3)は、電圧V
1であり、電圧V
1は、次に示す(数式1)によって表される。
【0031】
V
1 〜 V
S + V
OLED + V
PT1 ・・・(数式1)
【0032】
ここで、V
OLEDは、有機EL素子OLEDのダイオードとしての閾値電圧であり、V
PT1は、オン状態にあるトランジスタPT1の抵抗(ON抵抗)による電圧降下量である。
【0033】
また、トランジスタNTDのゲート(ノードN2)は、容量C1の電圧により、電圧V
bに維持される。トランジスタNTDのソース・ゲート間に発生する容量を容量C
gsとする。信号書込み期間に信号電圧V
aとなっているノードN3が、発光期間に電圧V
1に変化したことに伴って、容量C
gsにより、ノードN2の電圧V
bは、厳密には、次に示す(数式2)によって表される。
【0034】
V
b 〜 V
a + V
th − (V
a+V
th−V
1)×{C
gs/(C
gs+C1)} ・・・(数式2)
【0035】
しかしながら、簡単のために、容量C
gsは容量C1よりも十分に小さい(C
gs<<C1)と仮定すれば、電圧V
bは、V
a+V
thに近似される。よって、信号書込み期間と同様に、時刻t4以降も、ノードN2の電圧V
bは、V
b=V
a+V
thに維持される。
【0036】
以上より、駆動トランジスタであるトランジスタNTDのソース・ゲート間の電圧V
gsは、次に示す(数式3)によって表される。
【0037】
V
gs = V
b − V
1 = V
a + V
th − V
1 ・・・(数式3)
【0038】
すなわち、トランジスタNTDの実効的なチャネル電圧V
chは、閾値電圧V
thを減じて、V
ch=V
a−V
1となり、トランジスタNTDの閾値電圧V
th及びそのばらつきを補正することが出来る。
【0039】
本発明に係る駆動回路では、駆動トランジスタのソースに第4スイッチング素子が接続されており、信号書込み期間に、オン状態となる第4スイッチング素子が信号電圧を駆動トランジスタのソースに供給している。信号電圧が駆動トランジスタのゲートに供給されない構成とすることにより、定電圧である第2基準電圧V
D(有機EL素子OLEDへの電源)を用いて、駆動トランジスタのゲートに印加される電圧をリセット(初期化)することを可能としている。これにより、第1基準電圧V
S及び第2基準電圧V
Dを定電圧としつつ、リセット電源を削除することが出来ている。
【0040】
当該実施形態に係る駆動回路では、駆動トランジスタに加えて、4つのスイッチング素子と、1つの容量と、簡単な回路構成で、発光素子を駆動することが出来ている。さらに、当該実施形態に係る駆動回路の駆動方法では、4つのスイッチング素子を以下の通り駆動している。すなわち、
図4に示す時刻t2に、第1スイッチング素子をオフ状態とし、第3スイッチング素子をオン状態とし、時刻t3に、第2スイッチング素子をオフ状態とし、第4スイッチング素子をオフ状態とし、時刻t4に、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子をオン状態とし、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子をオフ状態とする。当該実施形態に係る駆動回路が簡単な回路構成で実現出来ているにもかかわらず、かかる簡単な駆動方法により、駆動トランジスタの閾値電圧の補正を含む駆動回路の駆動を可能としている。
【0041】
特に、当該実施形態に係る駆動回路では、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子にp型トランジスタを用いて、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子に、n型トランジスタを用いている。第1スイッチング素子をオン(オフ)するタイミングと、第3スイッチング素子をオフ(オン)するタイミングは、同じでも構わないので、第1スイッチング素子をp型トランジスタと、第3スイッチング素子をn型トランジスタとすることにより、第1スイッチング素子の制御端子(ゲート)と第3スイッチング素子の制御端子(ゲート)に、第1制御線φ1を接続し、第1制御線φ1を用いて、第1スイッチング素子及び第3スイッチング素子を制御することが出来る。なお、第1スイッチング素子をn型トランジスタと、第3スイッチング素子をp型トランジスタとしてもよい。この場合、第1制御線φ1は、
図4に示す第1制御線φ1の電圧と逆相の電圧とすればよい。すなわち、第1スイッチング素子と第3スイッチング素子の一方がp型トランジスタであり、他方がn型トランジスタであるのが望ましい。
【0042】
第2スイッチング素子と第4スイッチング素子についても同様である。第2スイッチング素子をオン(オフ)するタイミングと、第4スイッチング素子をオフ(オン)するタイミングは、同じでも構わないので、第2スイッチング素子と第4スイッチング素子の一方がp型トランジスタであり、他方がn型トランジスタであるのが望ましい。第2スイッチング素子の制御端子(ゲート)と第4スイッチング素子の制御端子(ゲート)に、第2制御線φ2を接続し、第2制御線φ2を用いて、第2スイッチング素子及び第4スイッチング素子を制御することが出来る。
【0043】
当該実施形態に係る駆動回路では、2本の制御線により、4つのスイッチング素子の駆動を可能としており、制御線の本数削減が実現出来ている。制御線の本数を削減することにより、回路規模を縮小することができ、表示装置の高精細化が実現される。なお、制御線の本数削減の観点からは、第1スイッチング素子と第3スイッチング素子が同じタイミングで制御され、第2スイッチング素子と第4スイッチング素子が同じタイミングで制御されるのが望ましい。しかし、これに限定されることはなく、第1スイッチング素子と第3スイッチング素子は独立に制御されてもよい。また、第2スイッチング素子と第4スイッチング素子は独立に制御されてもよい。
【0044】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る表示装置は、発光素子の駆動回路の構成が異なる以外は、第1の実施形態に係る表示装置と同じ構造をしている。
【0045】
図5は、当該実施形態に係る駆動回路の回路図である。
図5に示す駆動回路は、発光素子である有機EL素子OLEDの駆動回路であり、
図2に示す画素回路PCである。
図3に示す第1の実施形態に係る駆動回路と異なり、駆動トランジスタにp型MOS−TFTであるトランジスタPTDが用いられている。第1基準電圧V
Sと第2基準電圧V
Dとの間に接続される配線上に、有機EL素子OLEDと、トランジスタPT1と、トランジスタPTDと、トランジスタPT2とが、第1基準電圧V
S側からこの順で、直列に接続するよう配置されている。
【0046】
トランジスタPTDは、p型トランジスタであるので、トランジスタPTDのドレインは、第1基準電圧V
S側の端子であり、トランジスタPT1と接続している。トランジスタPTDのソースは第2基準電圧V
D側の端子であり、トランジスタPT2と接続している。それゆえ、トランジスタPTDのドレインの電圧であるノードN1と、トランジスタPTDのソースの電圧であるノードN3は、
図3に示すノードN1とノードN3と比べて、それぞれ、上下逆に位置している。それゆえ、トランジスタPTDのゲートとドレインとの間に接続されるトランジスタNT1の配置と、トランジスタPTDのソースに接続されるトランジスタNT2の配置とが、第1の実施形態と異なっている。当該実施形態に係る駆動回路おいて、駆動トランジスタにp型トランジスタを用いているが、かかる場合であっても、第1の実施形態と同様の効果を奏している。
【0047】
当該実施形態に係る駆動方法は、第1の実施形態と同様であり、
図4に示す第1制御線φ1と第2制御線φ2の電圧変化と同じ制御によって、信号電圧が書き込まれる。ただし、駆動トランジスタがp型トランジスタであることにより、ある表示データを表示するための信号電圧の値が第1の実施形態と異なっている。
【0048】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る表示装置は、発光素子の駆動回路の構成が異なる以外は、第1又は第2の実施形態に係る表示装置と同じ構造をしている。
【0049】
図6は、当該実施形態に係る駆動回路の回路図である。
図6に示す駆動回路は、発光素子である有機EL素子OLEDの駆動回路であり、
図2に示す画素回路PCである。
図6に示す当該実施形態に係る駆動回路は、
図3に示す第1の実施形態に係る駆動回路に、駆動トランジスタ(トランジスタNTD)のゲートとソース(第2基準電圧V
S側の端子)との間に接続される容量C2(第2容量)を追加したものである。
【0050】
図7は、当該実施形態に係る駆動回路の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図7には、
図4と同様に、信号線SIG、第1制御線φ1、第2制御線φ2、ノードN1、ノードN2、及びノードN3の電圧の変化が時系列に示されている。第1制御線φ1及び第2制御線φ2の電圧変化は、
図4に示す第1の実施形態に係る駆動回路の駆動方法と同じである。時刻t2以前(第1の期間)、リセット期間(第2の期間)、及び信号書込み期間それぞれにおける、ノードN1、ノードN2、及びノードN3の電圧変化も、
図4に示す第1の実施形態に係るノードN1、ノードN2、及びノードN3の電圧変化と同じである。
【0051】
信号書込み期間終了後、発光期間の開始時である時刻t4に、第1制御線φ1及び第2制御線φ2がともに、ハイ電圧V
Hからロー電圧V
Lに変化する。これにより、トランジスタPT1及びトランジスタPT2はともにオン状態となり、トランジスタNT1及びトランジスタNT2はともにオフ状態となる。第1の実施形態と同様に、トランジスタNTDのソース(ノードN3)は(数式1)で表される電圧V
1となる。ノードN3が電圧V
aから電圧V
1へ変化するのに伴って、容量C1及び容量C2により、トランジスタNTDのゲート(ノードN2)は変化して、電圧V
bとなる。簡単のため、第1の実施形態と同様に、トランジスタNTDの容量C
gsが容量C1(及び容量C2)よりも十分に小さい(C
gs<<C1,C
gs<<C2)と仮定すると、電圧V
bは、次に示す(数式4)によって表される。
【0052】
V
b 〜 V
a + V
th − (V
a−V
1)×{C2/(C1+C2)} ・・・(数式4)
【0053】
(数式4)を整理すると、次に示す(数式5)となる。
【0054】
V
b 〜 V
a×{C1/(C1+C2)}+ V
th + V
1×{C2/(C1+C2)} ・・・(数式5)
【0055】
以上より、駆動トランジスタであるトランジスタNTDのソース・ゲート間の電圧V
gsは、次に示す(数式6)によって表される。
【0056】
V
gs = V
b − V
1 = (V
a−V
1)×{C1/(C1+C2)}+ V
th ・・・(数式6)
【0057】
すなわち、トランジスタNTDの実効的なチャネル電圧V
chは、閾値電圧V
thを減じて、次に示す(数式7)によって表される。
【0058】
V
ch =(V
a−V
1)×{C1/(C1+C2)} ・・・(数式7)
【0059】
よって、当該実施形態に係る駆動回路では、第1の実施形態と同様に、駆動トランジスタ(トランジスタNTD)の閾値電圧およびそのばらつきを補正することが出来る。
【0060】
さらに、当該実施形態に係る駆動回路では、第1の実施形態に係る駆動回路によって実現されるチャネル電圧V
chと比べると、チャネル電圧V
chが{C1/(C1+C2)}倍に圧縮されている。表示装置が高精細化し、各画素回路が専有できる面積が小さくなると、駆動トランジスタであるトランジスタNTDの素子サイズを小さく(チャネル長Lを短く)せざるを得なくなる。この場合、電圧変化に対する電流効率が上昇するので、使用できる信号電圧範囲が小さくなる。それに伴って、外部(信号線駆動回路XDV)から供給される信号電圧の範囲を小さくすると、該範囲に階調数それぞれに応じた階調電圧が割り当てられるので、隣り合う階調値の電圧の差が小さくなり、階調表示が困難となる。しかし、当該実施形態では、外部から供給される信号電圧の範囲を大きくすることが出来、階調表示が安定化されるという顕著な効果を奏する。
【0061】
なお、当該実施形態に係る駆動回路は、駆動トランジスタにp型トランジスタを用いてもよい。その場合、当該実施形態に係る駆動回路は、
図5に示す第2の実施形態に係る駆動回路に、駆動トランジスタ(トランジスタPTD)のゲートとドレイン(第2基準電圧V
S側の端子)との間に接続される容量C2を追加したものである。
【0062】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る表示装置は、発光素子の駆動回路の構成が異なる以外は、第1乃至第3のいずれかの実施形態に係る表示装置と同じ構造をしている。また、発光素子の駆動方法も同じである。
【0063】
図8は、当該実施形態に係る駆動回路の回路図である。
図3に示す第1の実施形態に係る駆動回路は、第3スイッチング素子としてトランジスタNT1を、第4スイッチング素子としてトランジスタNT2を、それぞれ備えている。これに対して、当該実施形態に係る駆動回路では、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子がマルチゲート構造を有するトランジスタで構成されている。当該実施形態では、マルチゲート構造を有するトランジスタの一例として、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子に、ダブルゲート構造を有する薄膜トランジスタを用いている。
図8には、第3スイッチング素子として、直列に接続されている2個のトランジスタNT1A,NT1Bが、第4スイッチング素子として、直列に接続されている2個のトランジスタNT2A,NT2Bが、それぞれ示されている。それ以外については、当該実施形態に係る駆動回路は、第1の実施形態に係る駆動回路と同じである。
【0064】
ここで、
図3に示す第1の実施形態に係る駆動回路について考察する。発光期間において、トランジスタNT1はオフ状態となっており、ノードN2はノードN1から遮断され、フローティングノードとなっている。また、トランジスタNT2はオフ状態となっており、ノードN3は信号線SIGから遮断されている。トランジスタNT1にリーク電流が流れると、ノードN2(トランジスタNTDのゲート)の電圧が変化するので、表示品質が低下することとなる。また、トランジスタNT2にリーク電流が流れると、ノードN3(トランジスタNTDのソース)の電圧が変化するので、同様に表示品質が低下することとなる。特に、トランジスタNT1及びトランジスタNT2を低温ポリシリコンTFTで形成する場合、リーク電流が問題となる。これに対して、当該実施形態に係る駆動回路では、ダブルゲート構造を有する薄膜トランジスタで第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を構成することにより、発光期間におけるリーク電流が抑制される。それにより、トランジスタNTDの電流制御の安定化が実現し、スメア等の画質不良を低減することが出来るという格別の効果を奏する。
【0065】
リーク電流低減の観点からは、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子がともに、マルチゲート構造を有するトランジスタで構成されていることが望ましい。しかし、いずれか一方のスイッチング素子がマルチゲート構造を有するトランジスタで構成されていてもよい。かかるスイッチング素子について、リーク電流の低減が実現されるという効果を奏する。
【0066】
図8に示す駆動回路は、
図3に示す第1の実施形態に係る駆動回路の第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を、マルチゲート構造を有するトランジスタに置き換えたものであるが、これに限定されることはない。第2又は第3の実施形態に係る駆動回路の第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を、マルチゲート構造を有するトランジスタに置き換えたものであってもよい。また、第3スイッチング素子又は第4スイッチング素子のいずれか一方を、マルチゲート構造を有するトランジスタに置き換えたものであってもよい。かかる駆動回路においても、リーク電流の低減が実現されるという効果を奏する。
【0067】
図9は、当該実施形態に係る他の実施例の駆動回路の回路図である。
図9に示す駆動回路は、
図6に示す第3の実施形態に係る駆動回路の第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を、マルチゲート構造を有するトランジスタに置き換えたものである。また、図示はしないが、
図5に示す第2の実施形態に係る駆動回路や、第3の実施形態に係る駆動回路であって駆動トランジスタにp型トランジスタを用いる駆動回路についても、同様である。
【0068】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る表示装置は、発光素子の駆動回路の構成が異なる以外は、第4の実施形態に係る表示装置と同じ構造をしている。
【0069】
図10は、当該実施形態に係る駆動回路の回路図である。
図8に示す第4の実施形態に係る駆動回路は、第4スイッチング素子として、直列に接続されるトランジスタNT2A及びトランジスタNT2Bを有している。トランジスタNT2Aのゲート及びトランジスタNT2Bのゲートはともに、第2制御線φ2に接続されている。これに対して、当該実施形態に係る駆動回路では、2個のトランジスタのうち、トランジスタNT2Aのゲートが第1制御線φ1に接続されている。それ以外については、当該実施形態に係る駆動回路は、
図8に示す第4の実施形態に係る駆動回路と同じである。
【0070】
当該実施形態に係る駆動回路の駆動方法は、
図4や
図7に示す駆動方法と同様であり、第1制御線φ1は、時刻t2〜時刻t4の期間にハイ電圧V
Hとなり、それ以外の期間ではロー電圧V
Lとなっており、第2制御線φ2は、時刻t3〜時刻t4の期間にハイ電圧V
Hとなり、それ以外の期間ではロー電圧V
Lとなっている。第4スイッチング素子がオン状態となるのは、直列に接続されているトランジスタNT2A及びトランジスタNT2Bの両方がオン状態となっているときであり、時刻t3〜時刻t4の期間である。また、それ以外の期間では、第4スイッチング素子はオフ状態となっている。
【0071】
当該実施形態に係る駆動回路においても、第4の実施形態に係る駆動回路と同様に、リーク電流の低減が実現されるという効果を奏する。さらに、当該実施形態に係る駆動回路では、設計の自由度が増加しており、高精細画素レイアウト時に有用となる配置を可能にするという格別の効果を奏する。
図10に示す駆動回路は、
図8に示す第4の実施形態に係る駆動回路のトランジスタNT2Aのゲートの接続先を第2制御線φ2から第1制御線φ1に変更したものであるが、これに限定されることはない。
【0072】
図11は、当該実施形態に係る他の実施例の駆動回路の回路図である。
図11に示す駆動回路は、
図9に示す第4の実施形態に係る駆動回路のトランジスタNT2Aのゲートの接続先を第1制御線φ1に変更したものであり、高精細画素レイアウト時に有用となる配置を可能にするという格別の効果を奏している。また、図示しないが、駆動トランジスタにp型トランジスタを用いる駆動回路についても、同様である。
【0073】
以上、本発明の実施形態に係る駆動回路、表示装置、及び、駆動方法について、説明した。CMOS回路を採用することにより、駆動回路に備えられるトランジスタはp型MOS−TFT又はn型MOS−TFTとしているが、これに限定されることはなく、他のトランジスタであってもよいし、他のスイッチング素子であってもよい。なお、実施形態において、有機EL素子OLEDを発光素子の例として説明したが、これに限定されることはなく、本発明に係る駆動回路は、流れる電流の量によって発光量が制御される発光素子の駆動回路に、広く適用することが出来る。本発明に係る駆動回路を表示装置が備えることにより、高精細化に対応する表示装置の小型化が実現する。しかし、本発明に係る駆動回路は、表示装置に限定されることなく、他の装置にも適用することが出来る。