(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記自動充填装置は、フィルムをピロー状の袋に成形し、その袋内に前記一軸偏心ねじポンプから圧送された粘性液を充填してなるピロー型包装体を三方シール方式で製造するものであることを特徴とする請求項1に記載の粘性液の自動充填方法。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や化粧品、医薬品などの製造工程では、小袋や容器に粘性液を充填する自動充填装置が使用されている。この種の自動充填装置では、充填用ポンプとしてロータリーポンプや一軸偏心ねじポンプが用いられている。一軸偏心ねじポンプは、雌ねじ状の内面を有するステータと、このステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるロータとを備え、ステータ内でロータが回転することによって、吸入側から吸い込まれた粘性液を吐出側へ圧送するポンプである。この種の充填用ポンプの運転方法としては、ピロー状に成形したフィルムに液が接触した状態からでもシールできる醤油やソース、麺つゆなどは、ポンプの運転は一方向運転で自動充填ができるが、具材を含む液やシャンプーやリンス、ボデーソープのようなフィルムに液が接触した状態ではフィルムのシールが困難な場合は、ポンプの正回転と逆回転を繰り返す正逆運転により、小袋や容器の容量分だけ粘性液を定量圧送する断続充填が行われている。特に、一軸偏心ねじポンプは、ロータリーポンプに比べて圧送時の脈動が少なく定量精度に優れることから、この種の自動充填の用途に多用されている。
【0003】
ここで、一軸偏心ねじポンプとしては、ロータがユニバーサルジョイントを介して駆動軸に連結されているものや(例えば特許文献1参照)、ロータが連結部にピンを使用したフレキシブルジョイントを介して駆動軸に連結されているもの(例えば特許文献2参照)の他、ロータを駆動軸に直結するとともにステータを回転可能に支承して、ステータをロータの回転速度の1/2の回転速度で従属回転させるものも用いられている(例えば特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記一軸偏心ねじポンプで正逆運転を行う際、特許文献1ないし2記載の一軸偏心ねじポンプの場合は、ロータとの連結部にピンやフレキシブルロッドを使用しているため、連結部の強度や耐久性の観点から上記正逆運転時のロータの加減速時の角加速度に制限を設ける必要があり、例えば毎分80ショット程度の断続充填が限界である。これに対し、特許文献3記載の一軸偏心ねじポンプの場合は、ステータを回転可能に支承してロータを駆動軸に直結する構造なので、ユニバーサルジョイントやフレキシブルジョイントが不要なので、例えば毎分120ショット程度の断続充填までの正逆運転が可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献3記載の一軸偏心ねじポンプを用いても、一層の生産性向上のために、上記加減速時のロータの角加速度を、200πrad/s
2を超える角加速度で運転した場合、起動時や停止時に、ロータの回転がステータに衝撃荷重を加えることになり、ロータとステータ相互の位相が正規の位置からずれて過大なトルクが発生してしまうという問題がある。そのため、実用上は、正逆運転による断続充填を行う場合、余裕をみてロータの角加速度を50πrad/s
2よりも遅い角加速度に設定して、毎分120ショット程度を限度としていた。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、粘性液を定量圧送する一軸偏心ねじポンプを備える自動充填装置を用い、袋または容器に粘性液を充填するに際し、過大なトルク発生を抑制し得て、生産性を一層向上させることができる粘性液の自動充填方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る粘性液の自動充填方法は、粘性液を定量圧送する一軸偏心ねじポンプを備える自動充填装置を用い、袋または容器に粘性液を充填する方法であって、前記一軸偏心ねじポンプとして、雌ねじ状の内面を有するステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるロータとを備え、前記ステータは、前記雌ねじ状の内面が一定の肉厚に形成されたエラストマー部を有し、前記ステータが回転可能に支承され、前記ロータが駆動軸に固定されるとともに該ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線から所定距離偏心するように構成されており、前記ステータが前記ロータの回転速度の1/2の回転速度で従属回転することによって、吸入側から吸い込まれた粘性液を吐出側に圧送するものを用い、前記一軸偏心ねじポンプの加減速時の前記ロータの角加速度を、200πrad/s
2を超える角加速度で運転して粘性液を充填することを特徴とする。
ここで、本発明の一態様に係る粘性液の自動充填方法において、前記自動充填装置は、フィルムをピロー状の袋に成形し、その袋内に前記一軸偏心ねじポンプから圧送された粘性液を充填してなるピロー型包装体を三方シール方式で製造するものであることは好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動充填装置の一軸偏心ねじポンプとして、ステータを回転可能に支承してロータを駆動軸に直結する構造で、ステータの雌ねじ状の内面が一定の肉厚に形成されたエラストマー部を有する一軸偏心ねじポンプを用い、この一軸偏心ねじポンプの加減速時のロータの角加速度を、200πrad/s
2を超える角加速度で運転して粘性液を充填するので、仮にロータからステータへの回転力を伝達するときの起動時の衝撃が大きい場合でも、一定の肉厚に形成されたエラストマー部が軸方向全体に亘って均一に弾性変形することで衝撃を吸収することができ、ロータとステータとの本来の正確な位相関係を保つことができる。したがって、過大なトルク発生を抑制し得て、200πrad/s
2を超える角加速度で運転することで生産性を一層向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
本実施形態は、フィルムをピロー状の小袋に成形し、その小袋内に一軸偏心ねじポンプから定量圧送された粘性液を定量充填してなるピロー型包装体を三方シール方式で製造する自動充填装置の例について説明する。なお、包装に適する流動性を有する粘性液の例としては、例えば、飲料、液体スープ、たれ、ソース、醤油、ケチャップ、カレー、味噌、シチュー、ジャム、ゼリー、マヨネーズ、ドレッシング、あん類、魚肉練り、畜肉練りなどの液体及び流動性食品や、これら食品以外にも、医薬品、化粧品、化学薬品や、シャンプー、リンスなど衛生品等の液体及び流動性物質の充填包装も可能である。
【0012】
詳しくは、
図1に示すように、この自動充填装置60は、連続式の縦型自動充填装置であり、箱型筐体を有する充填装置本体61を備えている。充填装置本体61の内部には不図示のコントローラが装備され、自動充填装置60全体がコントローラによって制御される。充填装置本体61前面の右上側には、必要な操作入力が可能な操作パネル62が設けられている。そして、この充填装置本体61の上部に粘性液を定量圧送する一軸偏心ねじポンプ1が載置固定されている。
【0013】
一軸偏心ねじポンプ1は、ねじポンプ部40を有する。ねじポンプ部40の吸込み側にはケーシング30が設けられ、ケーシング30の上部には漏斗状のホッパ31が付設されている。また、ケーシング30の後方には、モータを内蔵したブラケット部20が設けられている。ねじポンプ部40の吐出側となる吐出部50の端部には投入ノズル55が接続されている。モータは、上記コントローラによって所定の正逆運転制御がなされ、モータの正逆運転に応じた、ねじポンプ部40のポンプ作用により、投入ノズル55から粘性液が断続的に定量圧送されるようになっている。
【0014】
また、充填装置本体61の上部には、原反ロール63が載置されている。原反ロール63から送り出されるシート状のフィルム70は、不図示のガイドを介することで投入ノズル55の外周部を囲繞するように筒状に形成されつつ送り出されるようになっている。そして、筒状にされたフィルム70は、充填装置本体61のフィルム送り方向下流側に設けられた縦シールロール64によってフィルム70を挟み込んで送りつつ、その重ね合わされた端部を熱シールして縦シールを形成可能になっている。また、縦シールロール64の下方には、筒状にされたフィルム70を挟み込んで送る横シールロール65が設けられている。横シールロール65は、筒状にされたフィルム70を挟み込んで送りつつ、熱シールして横シールを形成するものであり、上側の縦シールロール64の回転に同期して回転され、これにより、上部に開口するピロー状に成形された小袋が形成されるようになっている。さらに、横シールロール65の下方には、横シール部位を冷却しつつ順次に切断するための切断ロール66が配置されている。
【0015】
次に、
図2を適宜参照しつつ、上記一軸偏心ねじポンプ1についてより詳しく説明する。
図2に示すように、この一軸偏心ねじポンプ1は、上記ねじポンプ部40の吸込み側14に、上述したケーシング30が設けられている。ケーシング30は、自身側面(この例では回転軸線L2よりも上部)に吸込口12を有し、この吸込口12が上記ホッパ31内部と連通されている。ねじポンプ部40のハウジング46とケーシング30の吐出側14(ねじポンプ部40の吸込み側でもある)とは、へルールクランプ43によって着脱可能に連結されている。また、ハウジング46の吐出側46tには、上記吐出部50がへルールクランプ44によって着脱可能に連結されている。なお、ハウジング46の吐出側46tと吐出部50との当接部は、シール部材52によってシールされている。
【0016】
そして、ケーシング30に対し、ねじポンプ部40とは反対の側から、不図示の締めねじによって上記ブラケット部20が連結されている。なお、ブラケット部20は、内蔵するモータの駆動軸8の途中部分を、軸方向に離間した二つの転がり軸受(不図示)によって回転自在に支承している。駆動軸8は、その先端側であってケーシング30側の端面が水中軸受22およびシール部材24によって軸封されている。
【0017】
さらに、ねじポンプ部40は、円筒状のハウジング46内に、雄ねじ状のロータ42と、雌ねじ状の内面をもつステータ41とを備えている。ロータ42は、先端側の螺旋部42aと、直線状の基端部42bとから構成されている。基端部42bは、ユニバーサルジョイントを用いることなく、水平に配置された駆動軸8の先端に直接連結されている。そして、螺旋部42aは、自身の回転軸線L2に対して偏心した長円形断面を有しており、この螺旋部42aが、雌ねじ状の内面を形成したステータ41に内挿されている。そして、このステータ41の回転軸線L1に対して、上記ロータ42の回転軸線L2は、所定の偏心量Eだけ偏心して配置されている。
【0018】
ステータ41は、その雌ねじ状のピッチがロータ42の螺旋部42aの2倍である。ステータ41は、その両端が、すべり軸受としての、円環状の自己潤滑軸受47、48を介して上記ハウジング46内に回転自在に支承されている。ここで、この例では、ステータ41は、ステータ内筒41aと、このステータ内筒41aを軸方向の両側から挟み込むように形成された段付き形状の二つのステータ外筒41b,41cとを有して構成されている。
【0019】
さらに、ステータ内筒41aは、雌ねじ状の内面に沿って一定の肉厚にモールド形成されたエラストマー部41gと、このエラストマー部41gの外周面を覆って一体に形成された支持部41hとを有し、上記雌ねじ状の内面がこのエラストマー部41g内周部によって構成されている。また、支持部41hは、その両端に、径方向外側に向けて円環状に張り出したフランジ41fを有し、等厚のエラストマー部41gは、前記二つのステータ外筒41b,41cの段付き形状に対向して前記フランジ41fの軸方向両端面まで延設されている。さらに、二つのステータ外筒41b,41cは、相互が対向する端部に、互いに螺合するねじ部41m、41nを有し、当該ねじ部41m、41nを軸方向に閉め込むことによって前記段付き形状との協働によりステータ内筒41aをその軸方向の両側から挟み込むようになっている。
【0020】
そして、ケーシング30とハウジング46とには、相互が対向する側の内面に、凹の段部30d、46dがそれぞれ形成されている。さらに、ステータ41の外周面には、各ステータ外筒41b,41cによって凸の段部41tが形成されており、各ステータ外筒41b,41cに、その凸の段部41tの両端部に自己潤滑軸受47、48が当接させつつ外嵌され、ケーシング30とハウジング46とをヘルールクランプ43によって組み付けることでケーシング30とハウジング46相互の内面に形成された凹の段部30d、46dの内側面が自己潤滑軸受47、48の軸方向への移動を拘束しつつ、ステータ41を回転自在に支持するように構成されている。これにより、ステータ外筒41b,41cとステータ内筒41aとは、上記ねじ部41m、41nと段付き形状との協働によって固定されて全体として一体のステータ41として回転するようになっている。
【0021】
このような構成の一軸偏心ねじポンプ1は、モータの回転力によって駆動軸8が一体で回転すると、この駆動軸8に直接接続されたロータ42が回転する。そして、ねじポンプ部40は、ロータ42がその回転軸線L2を中心として回転し、ロータ42の螺旋部42aの動きに伴ってステータ41もその回転軸線L1を中心としてロータ42の回転と同期してロータ42の二分の一の回転数で従動回転することにより、ホッパ31から供給された粘性液を吸込口12から吐出口16に向けて圧送するようになっている。
【0022】
次に、この自動充填装置60の動作(つまり、自動充填装置60を用いた粘性液の自動充填方法でもある)およびその作用効果について説明する。
この自動充填装置60でピロー型包装体を製造する際は、オペレータが操作パネル62から必要な操作を行って自動充填装置60を運転すると、まず、シート状フィルム70が上流側で筒状とされつつ搬送されるとともに、縦シールロール64がフィルム70を挟み込んで送りつつ、端部に縦シールを形成する。次に、その下流側の横シールロール65がフィルム70を挟み込んで送りつつ、熱シールして横シールを形成する。これにより、上部に開口するピロー状に成形された小袋が形成される。
【0023】
次いで、上記コントローラによって一軸偏心ねじポンプ1のモータに対して所定の正逆運転制御がなされ、上記一軸偏心ねじポンプ1が所定タイミングで正逆運転による断続運転されることで、ピロー状に成形された小袋内に、その開口部側から所定量の粘性液を投入ノズル55を介して充填する。
次に、シールロール65がフィルム70を挟み込んで送りつつ、上記の開口部の位置を横シール形成装置66で熱シールして横シールを形成する。最後に、切断ロール66によりフィルム70の送り方向で連続した状態のピロー型包装体80を横シール部中央で順次に切り離していく。これにより、この自動充填装置60によれば、三方シール方式で成形された小袋内に粘性液を充填したピロー型包装体80を連続して製造することができる。
【0024】
ここで、上記自動充填装置60の運転において、一軸偏心ねじポンプ1の加減速時のロータ42の角加速度は、200πrad/s
2を超える角加速度で運転して粘性液を充填している。本実施形態の例では、設定値として、ロータ回転数が500min
−1であり、正回転は1回転とし逆回転は0.1回転としている。また、停止時間は0.1sec.とし、1ショットの充填量が23cc、ロータの角加速度を280πrad/s
2として運転している。これにより、実働として毎分200ショットの断続圧送を行った。
図3に当該条件における運転結果を示す。
【0025】
このように、この自動充填装置60を用いた粘性液の自動充填では、使用する一軸偏心ねじポンプ1として、ステータ41を回転可能に支承してロータ42を駆動軸8に直結する構造であって、ステータ41の雌ねじ状の内面が一定の肉厚に形成された等厚のエラストマー部41gを有するものを用い、この一軸偏心ねじポンプ1の加減速時のロータ42の角加速度を、200πrad/s
2を超える角加速度(上記の例では280πrad/s
2)で運転して粘性液を充填するので、仮にロータ42からステータ41への回転力を伝達するときの起動時の衝撃が大きい場合でも、一定の肉厚に形成されたエラストマー部41gが軸方向全体に亘って均一に弾性変形することで衝撃を吸収することができ、ロータ42とステータ41との本来の正確な位相関係を保つことができる。
【0026】
したがって、
図3に実施例を示すように、200πrad/s
2を超える角加速度であっても過大なトルク発生を抑制し得て、200πrad/s
2を超える角加速度で運転することで生産性を一層向上させることができる。よって、ピロー型包装体等の小袋や容器への充填速度を飛躍的に高め、時間あたりの生産量が格段に大きな高性能の自動充填装置による粘性液の自動充填方法を提供することができる。
【0027】
なお、本発明に係る粘性液の自動充填方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、自動充填装置60は、フィルムをピロー状の袋に成形し、その袋内に一軸偏心ねじポンプ1から圧送された粘性液を充填してピロー型包装体を三方シール方式で製造する例で説明したが、これに限定されず、本発明に係る粘性液の自動充填方法は、粘性液を定量圧送する一軸偏心ねじポンプを備える自動充填装置を用い、袋または容器に粘性液を充填する種々の充填用途に適用することができる。