(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282832
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/26 20060101AFI20180208BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20180208BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20180208BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20180208BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
H05B33/26 A
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/12 C
H05B33/26 Z
H01L27/32
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-206170(P2013-206170)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-69956(P2015-69956A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】豊田 裕訓
【審査官】
中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−244868(JP,A)
【文献】
特開2007−220513(JP,A)
【文献】
特開2005−235585(JP,A)
【文献】
特開2006−253044(JP,A)
【文献】
特開2005−317476(JP,A)
【文献】
特開2003−282241(JP,A)
【文献】
特開2010−257957(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/113493(WO,A1)
【文献】
特表2013−543013(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/066385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域内にマトリクス状に配置された副画素のそれぞれに形成された導電性無機材料からなる下部電極と、
前記下部電極に接し、発光する発光層を含む複数の異なる有機材料の層からなる発光有機層と、
前記発光有機層に接し、前記表示領域の全体を覆うように形成され、導電性無機材料からなる上部電極と、
前記上部電極に接し、前記表示領域の全体を覆うように形成され、イオンを含み、導電性を有する導電性有機層と、を備え、
前記イオンは、前記導電性有機層の前記上部電極と接しない側よりも前記上部電極と接する側に偏って存在している
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記導電性有機層は、平面視で前記上部電極の内側に形成される、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機EL表示装置において、
前記導電性有機層上において、平面視で、前記導電性有機層及び前記上部電極の外側まで覆う無機材料からなる封止膜を更に備える、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記導電性有機層は、前記上部電極の凹凸を平坦化している、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の有機EL表示装置において、
さらに画素分離膜を備え、
前記画素分離膜により設けられた凹部を有し、
前記凹部内で、前記下部電極、前記発光有機層、前記上部電極、及び前記導電性有機層がこの順で積層し、
前記凹部内における前記導電性有機層の厚みと前記下部電極の厚みとの合計は前記画素分離膜の厚みよりも厚い、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記導電性有機層における前記上部電極が形成される面とは反対側の面に接し、前記表示領域の全体を覆って形成された導電性無機材料からなる導電性無機膜を更に備える、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記導電性有機層は、電荷発生層により形成される、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記発光有機層は、複数の前記発光層がタンデム配置された構成であり、
前記複数の発光層の間には、電荷発生層が配置されている、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記導電性有機層の材料には、導電性を高める無機物質が付加されている、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機EL(Electro-luminescent)表示装置」という。)が実用化されている。この有機EL表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、更なる薄型化が可能となっている。
【0003】
有機EL表示装置のうち、基板の素子が形成される側に光が出射される、いわゆるトップエミッション方式の表示装置においては、発光層を有する有機層を挟む2つの電極である上部電極及び下部電極のうち、上部電極は、有機層が形成された表示領域全面を覆う電極であり、透明の導電性材料により形成される。この上部電極は、光の透過率を向上させるために、より薄く形成されることが望ましいが、薄くなるほど抵抗値が上昇し電圧降下が生じるため、表示領域の端部と中央部との間の輝度ムラが生じやすくなる。
【0004】
特許文献1は、有機EL表示装置において、上部電極である陰極の低抵抗化と狭額縁化を図るため、素子基板に対向して配置される封止基板の表示領域の外側の非表示領域に設けられた引き回し配線と、素子基板の陰極とを接続することについて開示している。特許文献2は、有機EL表示装置において、異なる色の発光層を2つ以上重ねて発光させる際に、発光層間に中間接続層を設けることについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−027504号公報
【特許文献2】特表2008−511100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示された有機EL表示装置は陰極の低抵抗化に有効であると考えられる。しかしながら、製造工程が複雑化されると共に、表示領域の端部と中央部との間の輝度ムラの解消は難しい。
【0007】
本発明は、上述の事情を鑑みてしたものであり、製造工程を複雑化することなく、表示領域の全面に形成される上部電極を低抵抗化した有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機EL表示装置は、表示領域内にマトリクス状に配置された副画素のそれぞれに形成された導電性無機材料からなる下部電極と、前記下部電極に接し、発光する発光層を含む複数の異なる有機材料の層からなる発光有機層と、前記発光有機層に接し、前記表示領域の全体を覆うように形成され、導電性無機材料からなる上部電極と、前記上部電極に接し、前記表示領域の全体を覆うように形成され、導電性有機材料からなる導電性有機層と、を備えることを特徴とする有機EL表示装置である。
【0009】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記導電性有機層は、平面視で前記上部電極の内側に形成されていてもよい。
【0010】
また、本発明の有機EL表示装置は、前記導電性有機層上において、平面視で、前記導電性有機層及び前記上部電極の外側まで覆う無機材料からなる封止膜を更に備えていてもよい。
【0011】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記導電性有機層は、前記上部電極の凹凸を平坦化していてもよい。
【0012】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記導電性有機層における前記上部電極が形成される面とは反対側の面に接し、前記表示領域の全体を覆って形成された導電性無機材料からなる導電性無機膜を更に備えていてもよい。
【0013】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記導電性有機層は、電荷発生層により形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記発光有機層は、複数の前記発光層がタンデム配置された構成であり、前記複数の発光層の間には、電荷発生層が配置されていてもよい。
【0015】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記導電性有機層の材料には、導電性を高める無機物質が付加されていてもよい。
【0016】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記導電性有機層は、成膜後に注入されたイオンを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図1のII−II線における断面を概略的に示す図である。
【
図3】副画素の断面及び端部の断面の詳細構成について示す図である。
【
図4】導電性有機膜、上部電極及びシール剤が配置される領域について模式的に示す平面図である。
【
図5】OLED層に、R発光層、G発光層又はB発光層のいずれかが形成される場合について示す図である。
【
図6】OLED層が、B発光層及びY発光層のタンデム配置である場合について示す図である。
【
図7】OLED層が、B発光層及びR+G発光層のタンデム配置である場合について示す図である。
【
図8】
図5の導電性有機膜においてイオンが注入されている場合について示す図である。
【
図9】
図6の導電性有機膜においてイオンが注入されている場合について示す図である。
【
図10】
図7の導電性有機膜においてイオンが注入されている場合について示す図である。
【
図11】導電性有機膜の厚さを変化させた場合について示す図である。
【
図12】導電性有機膜の厚さを変化させた別の場合について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置100が概略的に示されている。この図に示されるように、有機EL表示装置100は、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板120及び対向基板150の2枚の基板を有し、これらの基板の間には透明樹脂の充填剤221(
図2参照)が封止されている。有機EL表示装置100のTFT基板120及び対向基板150には、マトリクス状に配置された画素210からなる表示領域205が形成され、画素210はR(赤)G(緑)B(青)の3色に対応する光が出射される3つの副画素212から構成されている。
【0020】
また、TFT基板120には、画素210のそれぞれに配置された画素トランジスタの走査信号線に対してソース・ドレイン間を導通させるための電位を印加すると共に、各画素トランジスタのデータ信号線に対して画素の階調値に対応する電圧を印加する駆動回路である駆動IC(Integrated Circuit)182が載置され、外部から画像信号等を入力するためのFPC(Flexible Printed Circuits)181が取付けられている。また、本実施形態においては、各副画素212は、白色を発光する有機EL素子を有し、対向基板150に配置された各色に対応するカラーフィルタを用いて、各色に対応する波長領域を有する光を出射するものとするが、画素毎に異なる色を発光するOLEDを有している構成としてもよい。また、本実施形態においては、図の矢印に示されるように、TFT基板120の発光層が形成された側に光を出射するトップエミッション型の有機EL表示装置としているが、ボトムエミッション型の有機EL表示装置であってもよい。
【0021】
図2は、
図1のII−II線における断面を概略的に示す図である。この断面図に示されるように、TFT基板120には、TFT回路が形成されたTFT回路層121と、TFT回路層121上に形成された複数の有機EL素子130と、有機EL素子130を覆って水分を遮断する封止膜125と、を有している。有機EL素子130は、副画素212の数だけ形成されるが、
図2では説明を分かりやすくするため、省略して記載している。また、対向基板150には、RGBのカラーフィルタ及び各副画素212の境界から出射される光を遮断する遮光膜であるブラックマトリクスが形成されたカラーフィルタ・ブラックマトリクス層151が形成されている。TFT基板120と対向基板150との間の充填剤221は、シール剤222により封止されている。
【0022】
図3は、有機EL表示装置100の副画素212の断面及び端部の断面の詳細な構成について示す図である。この図に示されるように、副画素212は、TFT基板120上のTFT回路層121上に形成されたパッシベーション膜122と、パッシベーション膜122上に形成された有機材料からなる平坦化膜123と、平坦化膜123上に形成され、TFT回路層121の電極と電気的に接続された下部電極131と、絶縁膜で下部電極131の端部を覆うことにより、副画素212間を分離する画素分離膜124と、下部電極131及び画素分離膜124上で、表示領域205を覆うように形成された発光層を含む有機層を有する発光有機層132と、発光有機層132上に表示領域205を覆うように形成され、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜からなる上部電極133と、上部電極133に接するように形成され、導電性の有機材料からなる導電性有機膜134と、絶縁性有機膜又は絶縁性有機膜と無機膜との複数層からなる封止膜125と、を有している。ここで、封止膜125を構成する複数の層は、SiNやSiOxの無機材料からなる第1無機封止膜231と、第1無機封止膜232の凹部の角部分に成膜されたアクリル等の樹脂からなる有機封止膜232と、その上に形成された無機材料からなる第2無機封止膜233とから構成される。しかしながら、封止膜125は複数層から構成されるものに限られず、単一の層から構成されるものであってもよい。また、発光有機層132は表示領域205の全面に形成されることとしているが、発光有機層132がRGBの各色に対応する副画素212毎に形成されることとしてもよく、この場合にはカラーフィルタ・ブラックマトリクス層151は形成されていなくてもよい。
【0023】
例えば、発光有機層132の発光層が複数で、いわゆるタンデム配置とするときに発光層間には、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)が成膜されることがあるが、導電性有機膜134には、これと同様の材料からなる電荷発生層を用いることができる。この場合には、発光有機層132がタンデム配置であっても、そうでない場合であっても用いることができる。また、導電性の有機材料として、ポリマーアセチレン、ポリチオフェン類及びポリマーコンポジットを用いることができる。また、PEDOT:PSS[Poly(3,4-ethylenedioxythiophene):Poly(styrenesulfonate)]を用いてもよい。更に、導電性有機材料又は非導電性有機材料に、導電性のある無機物質を同時形成又は共蒸着することにより付加し、導電性有機膜134の材料としてもよい。ここで導電性のある無機物質は、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブとすることができる。また、量子ドットを形成することとしてもよい。また、成膜後に、例えばプロトン等のイオン打ち込みを行うことも導電性の向上に有効である。
【0024】
なお、
図3に示される有機EL表示装置100の端部の断面を示す図では、TFT基板120のパッシベーション膜122上において、封止膜125が端部まで形成され、上部電極133は端部より内側まで形成され、導電性有機膜134は上部電極133の端部より内側まで形成される様子が示されている。
【0025】
図4は、導電性有機膜134、上部電極133及びシール剤222が配置される領域について模式的に示す平面図である。この図に示されるように、上部電極133が成膜される領域は、表示領域205の外側でシール剤222が配置される領域よりも内側である。また、導電性有機膜134が成膜される領域は、表示領域205の外側で上部電極133の端よりも内側である。このようにすることにより、上部電極133上に導電性有機膜134のような有機材料が配置されることとなっても、封止膜125と上部電極133との間に導電性有機膜134が封じ込められるため、水分が入り込まないようにすることができる。さらに、上部電極133形成後に導電性有機膜134を形成するために、導電性有機膜134の端部にて上部電極133を跨ぐことがなくなり、上部電極133による段差が導電性有機膜134に発生することがなくなる。よって、段差によるクラックが発生することが防がれる。また、導電性有機膜134は、上部電極133を形成するITO等の透明電極よりも導電性を高くすることができるため、上部電極133と接して形成されることにより、上部電極133の抵抗を実質的に低くすることができる。したがって、上部電極133上に表示領域205を覆って導電性有機膜134を形成することにより、上部電極133が実質的に低抵抗化されるため、多くの電流を必要とする明るい画面であっても陰極の電位を保つことができ、画質の向上を図ることができる。
【0026】
図5〜10には、副画素212の発光有機層132及び発光有機層132に重ねられる層の構成の例について模式的に示す図である。なお、これらの図において、正孔輸送層(HTL:Hole Transport Layer)及び電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)の記載は省略されている。
図5は、発光有機層132に、R発光層、G発光層又はB発光層のいずれかが形成される場合について示す図である。この図に示されるように、上部電極133上には導電性有機膜134が形成されているため、上部電極133の導電性を実質的に高めることができる。
【0027】
図6は、発光有機層132が、B発光層141及びY(黄)発光層143のタンデム配置である場合について示している。この場合にはB発光層141及びY発光層143の間に、電荷発生層142を配置することにより、B発光層141及びY発光層143のそれぞれを同時発光させることができる。この場合においても上部電極133上に導電性有機膜134を形成し、上部電極133の導電性が実質的に高められている。また、この場合には、導電性有機膜134は、電荷発生層142と同じ材料により形成されていてもよい。
【0028】
図7は、発光有機層132が、B発光層141及びR+G発光層144のタンデム配置である場合について示している。この場合にはB発光層141及びR+G発光層144の間に、電荷発生層142を配置することにより、B発光層141及びR+G発光層144のそれぞれを同時に発光させることができる。この場合においても上部電極133上に導電性有機膜134を形成し、上部電極133の導電性を実質的に高められている。また、
図6と同様に、導電性有機膜134は、電荷発生層142と同じ材料により形成されてもよい。
【0029】
図8〜10は、それぞれ
図5〜7の導電性有機膜134においてイオン148が注入されている場合について示す図である。ここでイオン148には例えばプロトンを用いることができる。このような構成とすることにより、より導電性有機膜134の導電性を高めることができ、これにより、実質的に導電性有機膜134と接している上部電極133の抵抗を更に低くすることができる。
【0030】
図11は、導電性有機膜134の厚さを変化させた場合について示す図である。
図11における導電性有機膜134は、画素分離膜124によって生じた段差を埋めるように厚く形成されており、導電性有機膜134が厚く形成されることにより、低抵抗となり導電性を高めることとなるため、実質的に導電性有機膜134と接している上部電極133を更に低抵抗化することができる。
【0031】
図12は、導電性有機膜134の厚さを変化させた別の場合について示す図である。この場合には、
図11の場合と異なり、導電性有機膜134は、画素分離膜124によって生じた段差を埋めるだけでなく、平坦化され、更に導電性有機膜134上にITO等の導電性無機材料からなる透明導電膜135が表示領域205を覆うように形成されている。このような構成とすることにより、上部電極133を実質的に低抵抗化することができると共に、平坦化することができる。ここで、平坦化されることにより、封止膜125が複数層で形成されていた場合等には、封止膜125を構成する層の数を減らすこともできる。
【0032】
尚、本実施形態において、封止膜125を構成する複数の層は、第1無機封止膜231と、有機封止膜232と、第2無機封止膜233とから構成されると説明したが、導電性有機膜134を採用することにより、有機封止膜232と第1無機封止膜231を削除することもできる。理由は以下の通りである。第1無機封止膜231は基本的には外部からの水分を発光有機層132に侵入することを防ぐが、第1無機封止膜231を形成すべき表面に異物等がある場合はその箇所には十分に第1無機封止膜231が形成されず、水分が侵入する恐れがある。同じく画素分離膜124による角による凹み部の周りにも十分に第1無機封止膜231が形成されないことがる。そこでこのような異物近辺や画素分離膜124による角による凹み部のような第1無機封止膜231が十分に形成されない箇所に対する膜の付き周りがいい有機封止膜232が形成される。その上に第2無機封止膜233を形成すれば異物周りや角による凹み部等の段差が有機封止膜232によってなだらかにされるので、第2無機封止膜233が十分に形成されない箇所がなくなり、外部からの水分が十分に防がれる形となる。また、第1無機封止膜231は有機封止膜232自身の水分が発光有機層132に悪影響を及ぼすのを防いでいる。
【0033】
本実施の形態において、導電性有機膜134が存在している。この導電性有機膜134は異物近辺や画素分離膜124による角による凹み部のような第1無機封止膜231が十分に形成されない箇所に対する付き周りがいい。よって有機封止膜232を削除することができる。さらに有機封止膜232からの水分も気にする必要が無くなるために、第1無機封止膜231を削除することができる。特に導電性有機膜134を上述した材料、ポリマーアセチレン、ポリチオフェン類、ポリマーコンポジット、PEDOT:PSS、および導電性電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)等のうちのいずれかにて形成した場合は導電性有機膜134からの水分はほとんど発生しないために発光有機層132に対する寿命や特性、および信頼性も向上する。
【0034】
特に
図11や12のように導電性有機膜134により平坦化を図った場合は、異物や画素分離膜124による角による凹み部による封止膜125の形成不足が発生しなくなり、水分に対するバリア性が向上するために第1無機封止膜231や有機封止膜232を除去しても何らの問題も発生しない形となる。
【0035】
なお、導電性有機膜134による平坦化作用や異物近傍の付き周りにより、異物や画素分離膜124による角による凹み部による封止膜125の形成不足がカバーできない場合は、第1無機封止膜231や有機封止膜232があってもよい。導電性有機膜134による平坦化作用や異物近傍の付き周りにより、異物や画素分離膜124による角による凹み部による封止膜125の形成不足がカバーできないが、有機封止膜232からの水分による悪影響が無視できる程度であれば、封止膜125は第2無機封止膜233と有機封止膜232で構成されてもよい。
【0036】
上記の実施形態は封止膜を設けた構造に限らず、封止膜を用いない構成においても適用可能である。さらに、導電性有機膜134には特定の波長の光を吸収ないし反射する機能をもたせてもよい。エネルギー線(例えば紫外線や赤外線、電子線等)に対して遮蔽する作用をもたせることで、製造時および使用時の外光成分から、発光有機層132に悪影響を及ぼすエネルギー線の影響を低減し、素子を長寿命化および安定化させることが可能である。また、発光有機層132から発生した光が、上部電極133、導電性有機膜134と進む過程で、屈折率がなめらかに変化させることで光取り出し効率が改善され、より高効率の素子を実現することができる。
【符号の説明】
【0037】
100 表示装置、120 TFT基板、121 TFT回路層、122 パッシベーション膜、123 平坦化膜、124 画素分離膜、125 封止膜、130 有機EL素子、131 下部電極、132 発光有機層、133 上部電極、134 導電性有機膜、135 透明導電膜、141 B発光層、142 電荷発生層、143 Y発光層、144 R+G発光層、148 イオン、150 対向基板、151 カラーフィルタ層、182 駆動IC、183 FPC、205 表示領域、210 画素、212 副画素、221 充填剤、222 シール剤。