(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282833
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】吊り天井の回り縁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20180208BHJP
E04B 9/22 20060101ALI20180208BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
E04B9/18 N
E04B9/22 F
E04B9/00 R
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-207567(P2013-207567)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-71882(P2015-71882A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】513247743
【氏名又は名称】株式会社シンワ
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】坂下 正樹
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−095353(JP,A)
【文献】
実開昭60−187241(JP,U)
【文献】
実開昭54−174218(JP,U)
【文献】
特開2001−279858(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0005493(US,A1)
【文献】
米国特許第05619833(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00−9/36
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の上層から垂下された吊下部材により水平に支持した天井下地材(野縁受け)に固定されてその左右の周側端が当該建造物の側壁から所定の間隔を隔てて配置される天井板を備えた吊り天井において、前記天井板の一側端部と他側端部にその下端部をそれぞれ固定して前記側壁に対向して前後方向へ傾倒可能に直立し前記側壁に対向する前記天井下地材の各側端部と天井板の各側端部をそれぞれ被覆する長尺の平板部材からなる左右一対の見切材と、前記側壁にその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に配置され前記見切材の各上端との係合によりそれぞれ水平に支持されて前記側壁と前記天井板の各側端部の間の空間を覆って前記側壁に沿って延在する長尺の平板部材からなる左右一対の目隠部材と、前記側壁の入隅部に対応する前記天井板の隅角部に位置する前記見切材の各端末部を分離可能に接合し、前記天井板の同隅角部に位置する前記目隠部材の各端末部を互いに上下方向へ分離可能に接合して、当該吊り天井が横揺れして前記天井板のいずれか一方の側端部が前記側壁に対向して前後方向に動いて同側壁から離れる方向(後方)に動いたとき一方の前記見切材の上端が一方の前記目隠部材の先端に設けた鈎部に係合して同見切材の下端が後方に引っ張られて傾斜すると共に他方の前記見切材が他方の前記目隠部材の下面に沿って前記見切材と同様に後方に移動し、同吊り天井が上下に揺れて前記天井板が上方に動いたとき前記一対の目隠部材が前記見切材の各上端により押し上げられて分離するようにした吊り天井の回り縁構造。
【請求項2】
建造物の上層から垂下された吊下部材により水平に支持した天井下地材(野縁受け)に固定されてその左右の周側端が当該建造物の側壁から所定の間隔を隔てて配置される天井板を備えた吊り天井において、前記天井板の一側端部と他側端部にその下端部をそれぞれ固定して前記側壁に対向して前後方向へ傾倒可能に直立し前記側壁に対向する前記天井下地材の各側端部と天井板の各側端部をそれぞれ被覆する長尺の平板部材からなる左右一対の第1見切材と、前記側壁にその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に配置され前記第1見切材の各上端との係合により水平に支持されて前記側壁と前記天井板の各側端部の間の空間を覆って前記側壁に沿って延在する長尺の平板部材からなる左右一対の第1目隠部材と、前記側壁の入隅部に対応する前記天井板の隅角部にその下端部を固定して前記側壁に対向して直立し前記第1見切材の各端末部に分離可能に接合されて前記側壁の入隅部に対向する前記天井下地材の隅角側端部と天井板の隅角側端部を被覆する隅角形状の第2見切材と、前記側壁の入隅部にその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に配置され前記第2見切材の上端との係合により水平に支持されて互いに上下方向へ分離可能に接合すると共に前記第1目隠部材の各端末部に接合して前記側壁の入隅部と前記天井板の隅角部の間の空間を覆う一対の平板部材からなる第2目隠部材とを備え、当該吊り天井が横揺れして前記天井板のいずれか一方の側端部が前記側壁に対向して前後方向に動いて同側壁から離れる方向(後方)に動いたとき一方の前記第1見切材の上端が前記第1目隠部材の先端に設けた鈎部に係合して同第1見切材の下端が後方に引っ張られて傾斜すると共に前記第2見切材が前記第2目隠部材の下面に沿って前記第1見切材と同様に後方に移動し、同吊り天井が上下に揺れて前記天井板が上方に動いたとき前記第1目隠部材が前記第1見切材の上端により押し上げられると共に前記一対の第2目隠部材が前記第2見切材の上端により押し上げられて分離するようにした吊り天井の回り縁構造。
【請求項3】
前記側壁の入隅部に位置する前記左右の見切材の端末部は、斜めに切断した端面にて上下に分離可能に接合され、同側壁の入隅部に位置する前記左右の目隠部材は斜めに切断した端面にて上下に分離可能に接合されている請求項1に記載した吊り天井の回り縁構造。
【請求項4】
前記側壁の入隅部に位置する前記一対の第2目隠部材の一方の端末部分を斜めに切断して三角形の接合部分を形成して、同接合部分の上面に他方の方形の端末部分を重ね合わせて、前記第2目隠部材が押し上げられたとき分離するようにした請求項2に記載した吊り天井の回り縁構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の吊り天井における回り縁構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震によって吊り天井が上下に揺れたり横に揺れたとき、天井下地材と天井板が当該建造物の側壁に衝突して落下するのを防止するため、建築基準法の趣旨に沿って様々な対策が講じられている。その一例として、下記の特許文献1においては、
図4に示したように、建造物の側壁Wから間隔L
1を隔てて吊下部材50に吊下げ支持された天井下地材10と、同天井下地材に支持された天井板20と、前記天井下地材に固定されて前記側壁に対向する天井下地材の側端部と天井板の側端部を被覆する見切材30と、前記側壁と見切材との隙間よりも上方において前記側壁Wから水平に突出する目隠部材40とにより構成した吊り天井の回り縁構造が提案されている。この回り縁構造においては、見切材30が天井下地材10に固定されているので、見切材用吊下部材が必要なくなり、目隠部材40を天井下地材10の上方に配置することが可能となり、見切材30と側壁Wとの隙間から天井裏が露出することを防ぎつつ、当該隙間を天井裏空間に向かって開口させることができる利点があるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−95353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した先行技術の解決課題と同様な課題に対処するため、特に側壁の入隅部において側壁に対向する吊り天井の横揺れと上下の揺れを的確に許容すると共に入隅部における施工が容易であって美麗に仕上げることができる吊り天井の回り縁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するため、その一実施形態において、建造物の上層から垂下された吊下部材により水平に支持した天井下地材(野縁受け)に固定されてその
左右の周側端が当該建造物の側壁から所定の間隔を隔てて配置される天井板を備えた吊り天井において、前記天井板の一側端部と他側端部にその下端部をそれぞれ固定して前後方向へ傾倒可能に直立し前記側壁に対向する前記天井下地材の各側端部と天井板の各側端部をそれぞれ被覆する長尺の平板部材からなる左右一対の見切材と、前記側壁にその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に配置され前記見切材の各上端との係合によりそれぞれ水平に支持されて前記側壁と前記天井板の各側端部の間の空間を覆って前記側壁に沿って延在する長尺の平板部材からなる左右一対の目隠部材と、前記側壁の入隅部に対応する前記天井板の隅角部に位置する前記見切材の各端末部を分離可能に接合し、前記天井板の同隅角部に位置する前記目隠部材の各端末部を互いに上下方向へ分離可能に接合して、当該吊り天井が横揺れして前記天井板
のいずれか一方の側端部が前記側壁に対向して前後方向に動いて同側壁から離れる方向(後方)に動いたとき一方の前記見切材の上端が一方の前記目隠部材の先端に設けた鈎部に係合して同見切材の下端が後方に引っ張られて傾斜すると共に他方の前記見切材が他方の前記目隠部材の下面に沿って
前記見切材と同様に後方に移動し、同吊り天井が上下に揺れて前記天井板が上方に動いたとき前記一対の目隠部材が前記見切材の各上端により押し上げられて分離するようにした吊り天井の回り縁構造を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した吊り天井の回り縁構造においては、当該吊り天井が横揺れして前記天井板が前方(前記側壁に向かう方向)に動いたとき前記見切材がそれぞれ前記目隠部材の下面に沿って前記側壁に向けて移動し、同吊り天井が上下に揺れて前記天井板が下方に動いたとき前記見切材が前記一対の目隠部材から下方に移動して同目隠部材が共に下方に傾く。
【0007】
本発明の上記実施形態において、前記目隠部材の各横幅は地震発生時における最大震度を考慮して定めた当該建造物の側壁と前記見切材の間の間隔よりも大きく定め、同目隠部材の長さは側壁の長さに応じて適宜な長さにすればよい。また、側壁の入隅部にて互いに分離可能に接合される前記目隠部材の各端末部の角度は同入隅部の角度に応じて定めればよい。なお、前記一対の目隠部材の端末部は互いに上下方向に分離可能に重ね合わせて接合してもよい。
【0008】
本発明の他の実施形態においては、建造物の上層から垂下された吊下部材により水平に支持した天井下地材(野縁受け)に固定されてその周側端が当該建造物の側壁から所定の間隔を隔てて配置される天井板を備えた吊り天井において、前記天井板の一側端部と他側端部にその下端部をそれぞれ固定して
前記側壁に対向して前後方向へ傾倒可能に直立し前記側壁に対向する前記天井下地材の各側端部と天井板の各側端部をそれぞれ被覆する長尺の平板部材からなる左右一対の第1見切材と、前記側壁にその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に配置され前記第1見切材の各上端との係合により水平に支持されて前記側壁と前記天井板の各側端部の間の空間を覆って前記側壁に沿って延在する長尺の平板部材からなる左右一対の第1目隠部材と、前記側壁の入隅部に対応する前記天井板の隅角部にその下端部を固定して
前記側壁に対向して直立し前記第1見切材の各端末部に分離可能に接合されて前記側壁の入隅部に対向する前記天井下地材の隅角側端部と天井板の隅角側端部を被覆する隅角形状の第2見切材と、前記側壁の入隅部にその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に配置され前記第2見切材の上端との係合により水平に支持されて互いに上下方向へ分離可能に接合すると共に前記第1目隠部材の各端末部に接合して前記側壁の入隅部と前記天井板の隅角部の間の空間を覆う一対の平板部材からなる第2目隠部材とを備え、当該吊り天井が横揺れして前記天井板の
いずれか一方の側端部が前記側壁に対向して前後方向に動いて同側壁から離れる方向(後方)に動いたとき前記第1見切材の上端が前記第1目隠部材の先端に設けた鈎部に係合して同第1見切材の下端が後方に引っ張られて傾斜すると共に前記第2見切材が前記第2目隠部材から後方に移動し、同吊り天井が上下に揺れて前記天井板が上方に動いたとき前記第1目隠部材が前記第1見切材の上端により押し上げられると共に前記一対の第2目隠部材が
前記第2見切材の上端により押し上げられて分離するようにした吊り天井の回り縁構造を提供してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態における吊り天井の回り縁構造の施工においては、天井の高さと前記見切材の高さを考慮して定めた墨出し位置を当該建造物の側壁に表記して、同墨出し位置に沿って前記目隠部材の各基端部を前記側壁に固定し、一方前記見切材の各基端部を当該天井板の側端部に固定した状態にて天井下地材を同建造物の上方躯体に吊り下げて固定すれば、前記目隠部材が天井板の側端部にて直立した前記見切材の各上端との係合により水平に支持されて側壁と両見切材との間の空間を覆う。これにより、吊り天井の回り縁が側壁から所定の間隔(地震の最大震度を考慮して定めた間隔)を隔てて的確に施工され、地震によって吊り天井が激しく横揺れしたり上下に揺れても天井板が側壁との衝突により破損して落下する恐れがなくなる。
【0010】
同様に、本発明の他の実施形態における吊り天井の回り縁構造の施工においては、天井の高さと前記第1見切材及び第2見切材の高さを考慮して定めた墨出し位置を当該建造物の側壁に表記して、同墨出し位置に沿って前記第1目隠部材と第2目隠部材をその端末部分にて互いに接合した状態にてその各基端部を前記側壁に固定し、一方前記第1見切材と第2見切材の各基端部を当該天井板の側端部に固定した状態にて天井下地材を同建造物の上方躯体に吊り下げて固定すれば、前記第1目隠部材と第2目隠部材が天井板の側端部にて直立した前記第1見切材と第2見切材の各上端との係合により水平に支持されて側壁と両見切材との間の空間を覆う。これにより、吊り天井の回り縁が側壁から所定の間隔(地震の最大震度を考慮して定めた間隔)を隔てて的確に施工され、地震によって吊り天井が激しく横揺れしたり上下に揺れても天井板が側壁との衝突により破損して落下する恐れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】吊り天井の側壁に沿って施工した第1実施形態における回り縁構造の縦断面図
【
図1(a)】天井板が側壁に向けて動いたときの見切材の状態図
【
図1(b)】天井板が側壁から離れる方向に動いたとき見切材の状態図
【
図1(c)】天井板が上方に動いたときの見切材の状態図
【
図1(d)】天井板が下方に動いたときの見切材の状態図
【
図2C】吊り天井の入隅部における目隠部材の平面図
【
図2(a)】天井板が側壁に向けて動いたときの見切材の状態図
【
図2(b)】天井板が側壁から離れる方向に動いたときの見切材の状態図
【
図2(c)】天井板が上方に動いたときの目隠部材の状態図
【
図2(d)】天井板が下方に動いたときの目隠部材の状態図
【
図3A】吊り天井の入隅部における第2見切材の平面図
【
図3C】吊り天井の入隅部における第2目隠部材の平面図
【
図3(a)】天井板が側壁に向けて動いたときの第2見切材の状態図
【
図3(b)】天井板が側壁から離れる方向に動いたときの第2見切材の状態図
【
図3(c)】天井板が上方に動いたときの第2目隠部材の状態図
【
図3(d)】天井板が下方に動いたときの第3目隠部材の状態図
【
図4】先に提案された吊り天井の回り縁構造の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は建造物の上層躯体から垂下された吊り下げボルト11によって水平に支持される吊り天井の側壁に沿って施工した回り縁構造の縦断面図、
図2Aは前記吊り天井の入隅部における見切材の平面図、
図2Bは
図2Aに示した見切材の正面図、
図2Cは前記吊り天井の入隅部における目隠部材の平面図、
図2Dは
図2Cに示した目隠部材の正面図である。
【0013】
図1に示した吊り天井10は、建造物の上層躯体に上端部を固定して垂下する吊りボルト11に上下に調節可能に連結したハンガー12によって水平に支持された天井下地材(野縁受け)13と。野縁14を介してビス15により天井下地材13に水平に固定した天井仕上げ材である天井板16とにより構成されている。天井板16は当該建造物の側壁Wの長さに対応する側端部と同側壁の入隅部にそれぞれ対応する側端部を有している。
【0014】
本発明による吊り天井の回り縁構造は、側壁Wに対向して位置する天井板16の側端部にその下端部を固定して前後方向(図示左右方向)へ傾倒可能に直立する見切材21と側壁Wにその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に張り出し見切材21の上端との係合により水平に支持される目隠部材31を備えている。
【0015】
見切材21は、天井板16の一方の側端部と他方の側端部にそれぞれ固定して使用される左右一対の部材である。 これらの各見切材21は、天井板16の側端部に沿って延在する長さと天井下地材13の側端面と天井板16の側端面を被覆する縦幅を有する合成樹脂製(或いはアルミニウム製)の長尺の平板部材であって、その下端部に天井板16の側端部に嵌合して固定される断面コ字状のリブ21aが一体に形成されその上端部に目隠部材31の下面に移動可能に当接して同目隠部材31を水平に支持する爪部21bが一体に形成されている。なお、各見切材21はリブ21a
と一体に形成した支持部21cの肩部にて前後方向(図示左右方向)へ折曲可能に形成されている。
【0016】
目隠部材31は、天井板16の両側に位置する側壁Wにビス止め固定して使用される左右一対の部材である。これらの各目隠部材31は、左右の各側壁Wに沿って延在する所定の長さと同側壁Wと見切材21の間の間隔(地震発生時における最大震度を考慮して定めた間隔)よりも大きい横幅を有する断面L字形状の合成樹脂製(或いはアルミニウム製)の長尺の平板部材であって、その先端に鉤部31aが一体に形成されている。この鉤部31aは、地震発生時に吊り天井が横揺れして天井板16が側壁Wから離れる方向に動いたときいずれか一方の見切材21の爪部21bに係合する。
【0017】
図2A と
図2Bに示したように、側壁Wの入隅部に位置する左右の見切材21の端末部は斜めに切断した端面にて分離可能に接合されている。一方、
図2Cと2Dに示したように、側壁Wの入隅部に位置する左右の目隠部材31の端末部は斜めに切断した端面にて上下方向に分離可能に接合されている。
【0018】
上記の構成部材かなる吊り天井の回り縁構造の施工においては、天井の高さと見切材21の高さを考慮して定めた墨出し位置を当該建造物の側壁に表記して、同墨出し位置に沿って左右の目隠部材31の各基端部を前記側壁Wに固定し、一方左右の見切材21の各基端部を当該天井板の側端部に固定した状態にて天井下地材13を同建造物の上方躯体に吊り下げて固定すれば、各目隠部材31が天井板16の側端部にて直立した各見切材21の上端との係合により水平に支持されて側壁Wと各見切材21との間の空間を覆う。これにより、吊り天井の回り縁が側壁Wから所定の間隔(地震の最大震度を考慮して定めた間隔)を隔てて的確に施工され、地震によって吊り天井が激しく横揺れしたり上下に揺れても天井板16が側壁Wとの衝突により破損して落下する恐れがなくなる。
【0019】
仮に、巨大地震が発生して、吊り天井が横揺れして天井板16が前方(側壁Wに向かう方向)に動いたときには、
図1(a)に示したように、見切材21が共に目隠部材31の下面に沿って側壁Wに向けて移動し、天井板16が後方(側壁Wから離れる方向)に動いたときには、
図1(b)に示したように、いずれか一方の見切材21の上端に設けた爪部21bが目隠部材31の先端に設けた鉤部31aに係合して同見切材21の下端が後方に引っ張られて傾斜すると共に
図2(b)に示したように他方の見切材21が他方の目隠部材31の下面に沿って後方に移動する。また、吊り天井が上下に揺れて天井板16が上方に動いたときには、
図1(c)に示したように、左右の目隠部材31が各見切材21の上端により押し上げられて同目隠部材31の接合部分が2(c)に示したように開離する。また、天井板16が下方に動いたときには、
図1(d)に示したように、左右の見切材21が共に各目隠部材31から下方に移動して同目隠部材31が下方に傾く。
【0020】
本発明の実施にあたって、目隠部材31の横幅は地震発生時における最大震度を考慮して定めた当該建造物の側壁Wと見切材21の間の間隔よりも大きく定め、同目隠部材31の長さは側壁Wの長さに応じて適宜な長さにすればよい。また、側壁Wの入隅部にて互いに接合される目隠部材31の端末部の切断角度は当該入隅部の角度に応じて定めればよい。
【0021】
本発明の他の実施形態における吊り天井の回り縁構造は、
図1に示したように、側壁Wに対向して位置する天井板16の側端部にその下端部を固定して前後方向(図示左右方向)へ傾倒可能に直立する第1見切材21(先の実施形態における見切材21に相当する部材)と側壁Wにその基端部を固定して上下方向へ傾倒可能に張り出し第1見切材21の上端との係合により水平に支持される第1目隠部材31(先の実施形態における目隠部材31に相当する部材)を備えている。
【0022】
第1見切材21は、天井板16の側端部に沿って延在する長さと天井下地材13の側端面と天井板16の側端面を被覆する縦幅を有する合成樹脂製の長尺の平板部材であって、その下端部に天井板16の側端部に嵌合して固定される断面コ字状のリブ21aが一体に形成されその上端部に第1目隠部材31の下面に移動可能に当接して同第1目隠部材31を水平に支持する爪部21bが一体に形成されている。なお、第1見切材21はリブ21aの肩部にて前後方向(図示左右方向)へ折曲可能に形成されている。
【0023】
第1目隠部材31は、側壁Wに沿って延在する所定の長さと側壁Wと第1見切材21の間の間隔(地震発生時における最大震度を考慮して定めた間隔)よりも大きい横幅を有する断面L字形状の合成樹脂製の長手形状の平板部材であって、その先端に鉤部31aが一体に形成されている。この鉤部31aは、地震発生時に吊り天井が横揺れして天井板16が側壁Wから離れる方向に動いたとき第1見切材21の爪部21bに係合する。
【0024】
図3Aと
図3Bに示したように、側壁Wの入隅部に用いる第2見切材22は、側壁Wの入隅部に対応する天井板16の隅角部分の上面に固定される平面視L字形状の基板部22aと同基板部の両側端から垂直に立ち上がる見切部22bを合成樹脂により一体に形成した隅角部材である。見切部22bの図示左側の端末部分と右側の端末部分は
図1に示した第1見切材21の端末部分とそれぞれ分離可能に接合される。一方、天井板16の隅角部に固定した第2見切材22の各外側面と側壁Wの入隅部内面との間の空間を覆う第2目隠部材32は、
図3Cと
図3Dに示したように、側壁Wの入隅部に固定される基端部32aと同基端部の下端にて上下方向へ傾倒可能に張り出して上記のように天井板16の隅角部分の上面に立設した第2見切材22の上端との当接により水平に支持され互いに分離可能に接合した合成樹脂製の一対の平板部材32bにより構成されている。この実施形態においては、一方の平板部材32bの端末部分を斜めに切断して形成した三角形の接合部分32b
1の上面に他方の平板部材32bの端末部分(長方形の部分)を重ね合わせて、一対の平板部材32bが押し上げられたとき分離するようにしてある。なお、第2目隠部材32は側壁Wにその基端部32aにて固定されたときその両端末部分にて側壁Wに沿って延在する第1目隠部材31の端末部分に分離可能に接合される。
【0025】
上記の構成部材かなる吊り天井の回り縁構造の施工においては、天井の高さと第1見切材21及び第2見切材22の高さを考慮して定めた墨出し位置を当該建造物の側壁に表記して、同墨出し位置に沿って第1目隠部材31と第2目隠部材32をその端末部分にて互いに接合した状態にてその各基端部を前記側壁Wに固定し、一方第1見切材21と第2見切材22の各基端部を当該天井板の側端部に固定した状態にて天井下地材13を同建造物の上方躯体に吊り下げて固定すれば、第1目隠部材31と第2目隠部材32が天井板16の側端部にて直立した第1見切材21と第2見切材22の各上端との係合により水平に支持されて側壁Wと両見切材21、22との間の空間を覆う。これにより、吊り天井の回り縁が側壁Wから所定の間隔(地震の最大震度を考慮して定めた間隔)を隔てて的確に施工され、地震によって吊り天井が激しく横揺れしたり上下に揺れても天井板16が側壁Wとの衝突により破損して落下する恐れがなくなる。
【0026】
仮に、巨大地震が発生して、吊り天井が横揺れして天井板16が前方(側壁Wに向かう方向)に動いたときには、
図1(a)に示したように、第1見切材21と第2見切材22が共に第1目隠部材31と第2目隠部材32の下面に沿って側壁Wに向けて移動し、天井板16が後方(側壁Wから離れる方向)に動いたときには、
図1(b)に示したように、第1見切材21の上端に設けた爪部21bが第1目隠部材31の先端に設けた鉤部31aに係合して同第1見切材21の下端が後方に引っ張られて同第1見切材21が傾斜すると共に第2見切材22が
図3(b)に示したように第2目隠部材32の下面に沿って後方に移動する。また、吊り天井が上下に揺れて天井板16が上方に動いたときには、
図1(c)に示したように、第1目隠部材31が第1見切材21の上端により押し上げられると共に一対の第2目隠部材32が第2見切材22の上端により押し上げられ
図3(c)に示したように開離する。また、天井板16が下方に動いたときには、
図1(d)に示したように、第1見切材21と第2見切材22が共に第1目隠部材31と第2目隠部材32から下方に移動して同第1目隠部材31と第2目隠部材32が共に下方に傾く。
【0027】
本発明の実施にあたって、第1目隠部材21の横幅は地震発生時における最大震度を考慮して定めた当該建造物の側壁Wと第1見切材21の間の間隔よりも大きく定め、同第1目隠部材21の長さは側壁Wの長さに応じて適宜な長さにすればよい。また、側壁Wの入隅部又は出隅部にて互いに接合される第2目隠部材32の重合部分の大きさと角度は同入隅部又は出隅部の角度に応じて定めればよい。
【符号の説明】
【0028】
13・・天井下地材、16・・天井板、W・・側壁、21・・第1見切材、
22・・第2見切材、31・・第1目隠部材、32・・第2目隠部材、