(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282888
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車及びそのアシストシステム
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20180208BHJP
B62H 3/02 20060101ALI20180208BHJP
E04H 6/10 20060101ALI20180208BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
B62M6/45
B62H3/02
E04H6/10 B
E04H6/42 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-39821(P2014-39821)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-163497(P2015-163497A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有宗 伸泰
(72)【発明者】
【氏名】宇田 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】根来 正憲
(72)【発明者】
【氏名】金原 悠貴
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−125143(JP,A)
【文献】
特開平10−075535(JP,A)
【文献】
特開2011−221717(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/050610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62H 3/02
E04H 6/10
E04H 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと、乗員の踏力に基づいて前記電動モータを制御するモータコントローラと、を含む駆動ユニットと、
前記電動モータに供給するための電力を蓄えているバッテリと、
駐車ステーションに設置されているロック装置と連結するための被ロック部と、
車両が駐車ステーションに配置されていることを検知できる装置と、を備え、
前記モータコントローラは、車両が駐車ステーションに配置されているときに、前記バッテリと充電装置とを電気的に接続することなく、前記電動モータの駆動を制限する
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
乗員がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと、乗員の踏力に基づいて前記電動モータを制御するモータコントローラと、を含む駆動ユニットと、
前記電動モータに供給するための電力を蓄えており、バッテリコントローラを有しているバッテリと、
駐車ステーションに設置されているロック装置と連結するための被ロック部と、
車両が駐車ステーションに配置されていることを検知できる装置と、を備え、
前記バッテリコントローラは、車両が駐車ステーションに配置されているときに、前記バッテリと充電装置とを電気的に接続することなく、前記バッテリから前記電動モータへの電力供給を制限する
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車において、
車両が駐車ステーションに配置されていることを検知するための前記装置は、前記被ロック部と駐車ステーションに設置されている前記ロック装置との連結を検知するセンサである
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車において、
車両が駐車ステーションに配置されていることを検知するための前記装置は、駐車ステーションに設けられている通信装置と通信する、車体又はバッテリに設けられている通信モジュールである
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリは車体に対して脱着可能であり、
車両が駐車ステーションに配置されたときに利用者にバッテリの取り外しを促す案内を発する通知装置を備える
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項6】
駐車ステーションに設置されるロック装置に連結される被ロック部を備える電動アシスト自転車に搭載するためのアシストシステムであって、
乗員がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと、
乗員の踏力に基づいて電動モータを制御するモータコントローラと、
車両が駐車ステーションに配置されていることを検知するための装置と、を備え、
前記モータコントローラは、車両が駐車ステーションに配置されているときに、前記バッテリと充電装置とを電気的に接続することなく、前記電動モータの駆動を制限する
ことを特徴とする電動アシスト自転車のアシストシステム。
【請求項7】
駐車ステーションに設置されるロック装置に連結される被ロック部を備える電動アシスト自転車に搭載するためのアシストシステムであって、
乗員がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと、
乗員の踏力に基づいて電動モータを制御するモータコントローラと、
前記電動モータに供給するための電力を蓄えており、バッテリコントローラを有しているバッテリと、
車両が駐車ステーションに配置されていることを検知するための装置と、を備え、
前記バッテリコントローラは、車両が駐車ステーションに配置されているときに、前記バッテリと充電装置とを電気的に接続することなく、前記バッテリから前記電動モータへの電力供給を制限する
ことを特徴とする電動アシスト自転車のアシストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者に貸し出すための電動アシスト自転車とそのアシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員がペダルに加える踏力を補助する電動モータを備えている電動アシスト自転車が利用されている。下記特許文献1には、利用者に貸し出すための電動アシスト自転車と、その自転車が保管される駐車ステーションに設置されている、自転車のロック装置(特許文献1においてロッキングターミナルポスト)とが開示されている。特許文献1では、複数のロック装置が並んで配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−223593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駐車ステーションでは隣り合う自転車の間隔が狭いため、自転車がロック装置に連結されている状態にもかかわらず、利用者が意図せずペダルに乗ってしまうことが考えられる。この場合、電動モータが駆動してしまうために、利用者がペダルに加えた力より大きな力がロック装置や車体に作用する。ロック装置や車体にそのような力に耐え得る構造を適用しようとすると、それらの製造コストの増大を招く可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、駐車ステーションに設置されているロック装置や車体に対する増強の必要性を低減できる電動アシスト自転車及びアシストシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動アシスト自転車は、乗員がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと乗員の踏力に基づいて前記電動モータを制御するモータコントローラとを含む駆動ユニットを含む。また、電動アシスト自転車は、前記電動モータに供給するための電力を蓄えているバッテリと、駐車ステーションに設置されているロック装置と連結するための被ロック部と、車両が駐車ステーションに配置されていることを検知できる装置と、を備える。前記電動モータは、車両が駐車ステーションに配置されているときに、その駆動が制限される。
【0007】
本発明に係るアシストシステムは、駐車ステーションに設置されるロック装置に連結される被ロック部を備える電動アシスト自転車に搭載するためのシステムである。前記アシストシステムは、乗員がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと、乗員の踏力に基づいて電動モータを制御するモータコントローラと、車両が駐車ステーションに配置されていることを検知するための装置と、を備える。前記電動モータは、車両が駐車ステーションに配置されているときに、その駆動が制限される。
【0008】
前記電動アシスト自転車及びアシストシステムによれば、車両が駐車ステーションに配置されているときに、電動モータの駆動に起因する大きな力がロック装置や車体に作用することを抑えることができる、その結果、それらに対する増強の必要性を低減できる。
【0009】
本発明の一形態では、車両が駐車ステーションに配置されていることを検知するための前記装置は、前記被ロック部と駐車ステーションに設置されている前記ロック装置との連結を検知するセンサであってよい。本発明の他の形態では、車両が駐車ステーションに配置されていることを検知するための前記装置は、駐車ステーションに設けられている通信装置と通信する、車体又はバッテリに設けられている通信モジュールであってよい。
【0010】
また、本発明の一形態では、車両が駐車ステーションに配置されているときに、前記電動モータの駆動は前記モータコントローラにより制限されてもよい。本発明の他の形態では、車両が駐車ステーションに配置されているときに、前記バッテリから前記駆動ユニットへの電力供給が制限されてもよい。
【0011】
また、本発明の一形態では、前記バッテリは車体に対して脱着可能であり、利用者により車両が駐車ステーションに配置されたときに利用者にバッテリの取り外しを促す案内を発する通知装置を備えてもよい。これによれば、利用者がバッテリを車体に放置したまま、駐車ステーションを去ってしまうことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、駐車ステーションに配置されている電動アシスト自転車を示す図である。この図の(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【
図2】電動アシスト自転車が備えるアシストシステムの構成を示すブロック図である。
【
図3】アシストシステムの他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る、駐車ステーションに配置されている電動アシスト自転車1を示す図である。
図1(a)は側面図であり、
図1(b)は平面図である。
【0014】
図1(a)に示すように、電動アシスト自転車1はペダル2と、乗員がペダル2を踏むことにより回転するペダルクランク3とを有している。また、電動アシスト自転車1は乗員がペダル2に加える踏力をアシストするための電動モータ22を有している。ペダル2からペダルクランク3に加えられるトルクと電動モータ22のトルクの合力が後輪5に伝えられる。電動アシスト自転車の一例では、ペダルクランク3はチェーン6などの後輪5への動力伝達部材に連結され、電動モータ22は減速機構を介して動力伝達部材に連結される。この場合、ペダルクランク3に加えられるトルクと電動モータ22のトルクとが動力伝達部材において組み合わされる。動力伝達部材に伝えられた力は変速機構を介して後輪5に加えられる。ペダルクランク3から後輪5に至る動力伝達経路おける電動モータ22の位置は、種々の変更が可能である。例えば、電動モータ22は動力伝達経路において上述のチェーン6や変速機構よりも下流に配置されてもよい。この場合、電動モータ22は例えば後輪5のハブ5aに設けられてもよい。電動モータ22は前輪4のハブに設けられてもよい。
【0015】
電動アシスト自転車1は、電動モータ22にその駆動電力を供給するためのバッテリ30と、バッテリ30が脱着可能なバッテリ収容部7とを有している。
図1(a)に示す例では、バッテリ収容部7はハンドルステムを支持するヘッドパイプ8aに固定されているが、その位置はこれに限られない。例えば、バッテリ収容部7はサドル9を支持するサドルポスト8bに固定されてもよい。
【0016】
電動アシスト自転車1は予め登録された利用者に貸し出すための自転車である。
図1(b)に示されるように、複数の電動アシスト自転車1が街中に設置された駐車ステーションにおいて保管されている。一例では、バッテリ30は個々の利用者によって所有され、利用者は自身が所有するバッテリ30をバッテリ収容部7に設置することにより、電動アシスト自転車1を利用できる。
【0017】
図1(b)に示すように、駐車ステーションには複数のロック装置90が設置されている。電動アシスト自転車1はロック装置90に連結するための被ロック部8dを有している。ロック装置90と被ロック部8dは、好ましくは、電動アシスト自転車1の位置及び姿勢が固定されるように構成される。被ロック部8dの一例は、
図1(b)に示すように、車体フレーム8(より具体的には、
図1(b)においてはヘッドパイプ8aから後方かつ下方に斜めに伸びているチューブ8c)から側方に伸びている。被ロック部8dはロック装置90に形成されているロック部(受け部)90aに嵌められる。そして、被ロック部8dは、ロック部90aがその内部に有するロック機構によってロック(保持)される。電動アシスト自転車1のロック構造はこれに限られない。例えば、ロック装置90はチェーンを有し、このチェーンを介して電動アシスト自転車1の前輪4や後輪5がロック装置90に連結されてもよい。すなわち、前輪4や後輪5が被ロック部として利用されてもよい。
【0018】
図2は電動アシスト自転車1が備えるアシストシステム10の構成を示すブロック図である。アシストシステム10は、上述の電動モータ22を含む駆動ユニット20と、バッテリ30とを有している。
【0019】
バッテリ30は電動モータ22に加える電力を蓄える複数のバッテリセルを含むバッテリ本体31を有している。バッテリ30はバッテリマネージメントコントローラ(BMC)32を有している。BMC32はマイクロプロセッサや、マイクロプロセッサで実行されるプログラムを有している。BMC32はバッテリ本体31の状態(例えば、バッテリセルの電圧や、電流、温度)を監視したり、電流値と充放電時間とに基づいてバッテリ本体31の残量を算出したりする。BMC32はバッテリ本体31について取得した種々の情報(例えば、残量や充放電回数)をメモリに格納してもよい。また、BMC32はバッテリ本体31の充放電を制御する。一例では、BMC32は、バッテリ本体31への充電とバッテリ本体31からの放電を制御するためのスイッチング素子を含む。
【0020】
駆動ユニット20は、電動モータ22に加えて、モータコントローラ21と、モータ駆動回路23とを有している。モータコントローラ21はマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサが実行するプログラムが格納されているメモリとを有している。モータコントローラ21は乗員がペダル2に加える踏力に基づいて電動モータ22を制御する。
【0021】
アシストシステム10の一例は、
図2に示すように、ペダルクランク3に加えられるトルクを検知するためのトルクセンサ24Aと、車速を検知するための車速センサ24Bとを有している。車速センサ24Bは例えば前輪4の回転速度に応じた信号を出力するが、後輪5の回転速度に応じた信号を出力してもよい。アシストシステム10は、さらに電動モータ22の回転速度を検知するためのモータ回転センサ24Cと、ペダルクランク3の回転速度を検知するためのクランク回転センサ24Dとを有している。
【0022】
モータコントローラ21は、これらのセンサから入力される信号に基づいて電動モータ22を制御する。例えば、モータコントローラ21は、車速センサ24Bの出力信号とモータ回転センサ24Cの出力信号とに基づいて、変速段(変速機構における変速比)を算出する。また、モータコントローラ21は、トルクセンサ24Aの出力信号に基づいて乗員の踏力を検知し、クランク回転センサ24Dの出力信号に基づいてペダルクランク3の回転速度を算出する。そして、モータコントローラ21は、乗員の踏力と、変速段と、ペダルクランク3の回転速度とに基づいて、電動モータ22が出力すべきトルク(補助力)を算出する。換言すると、モータコントローラ21はモータ駆動回路23が電動モータ22に加える電流の指令値を算出する。モータ駆動回路23はバッテリ30から電力を受け、モータコントローラ21からの指令値に応じた電流を電動モータ22に供給する。バッテリ30と駆動ユニット20のそれぞれは、バッテリ本体31の電力をモータ駆動回路23に供給するためのコネクタ(不図示)を有している。さらに、バッテリ30と駆動ユニット20のそれぞれは、BMC32とモータコントローラ21との通信に利用される通信インターフェース(不図示)も有している。
【0023】
本実施形態では、アシストシステム10は、
図2に示すように、電動アシスト自転車1が駐車ステーションに配置されていることを検知できる装置15を有している(以下ではこの装置を駐車検知装置と称する)。電動モータ22は、電動アシスト自転車1が駐車ステーションに配置されているときに、その駆動が制限される。好ましくは、車両が駐車ステーションに配置されているときに、電動モータ22の駆動が禁止される(出力トルクが0とされる)。こうすることにより、電動アシスト自転車1がロック装置90に連結されている状態で利用者が自転車に試乗したり、ペダルに乗ったりした場合でも、電動モータ22の駆動に起因する大きな力がロック装置90や車体に作用することを抑えることができる。なお、電動アシスト自転車1が駐車ステーションに配置されているときには、車両が駐車ステーションに配置されていないときよりも、電動モータ22に許容される最大トルクが低く設定されるだけでもよい。
【0024】
駐車検知装置15の一例は電動アシスト自転車1の被ロック部8dに設けられるセンサである。この場合、被ロック部8dがロック装置90のロック機構によってロックされたときに、或いは、被ロック部8dがロック部90aに嵌まっているときに、駐車検知装置15はそれを示す信号をモータコントローラ21に入力する。
【0025】
駐車検知装置15は非接触式センサでもよいし、接触式センサでもよい。非接触式センサとしては、例えば、リードスイッチや、ホールIC、光電センサ、磁気誘導型或いは静電容量型の近接センサなどを用いることができる。また、接触式センサとしては、ロック装置90に設けられたロック機構によって押下されるスイッチでもよいし、ロック機構に設けられた接点に接触することによりショートする回路でもよい。
【0026】
駐車検知装置15の位置は被ロック部8dに限られない。例えば、駐車検知装置15は車体の底部に設けられてもよい。この場合、駐車ステーションの地面に検知対象が埋め込まれていてもよい。この場合の駐車検知装置15としては非接触式センサ(例えば、駐車ステーションの地面に設けられている磁石と反応するホールICや磁気誘導型の近接センサ)を用いることができる。このような駐車検知装置15を利用する場合、電動アシスト自転車1が駐車ステーションにある場合には、車体がロック装置90に未だロックされていない状態にあっても、車両が駐車ステーションにあることを示す信号がモータコントローラ21に入力される。後において説明するように、駐車検知装置15の信号はBMC32に入力されてもよい。
【0027】
駐車検知装置15の他の例は、駐車ステーションに設置された通信装置と通信可能な通信モジュールである。通信としては近距離無線通信や有線通信を利用できる。近距離無線通信が利用される場合、例えば、駐車ステーション側の通信装置が所定の信号を発信する(以下では、駐車ステーション側の通信装置が発信する信号をステーション信号と称する)。そして、駐車検知装置15が駐車ステーション側の通信装置からステーション信号を受信すると、駐車検知装置15はその旨を表す信号をモータコントローラ21に入力する。
【0028】
近距離無線通信を利用する場合、駐車検知装置15として機能する通信モジュールは、電動アシスト自転車1がロック装置90に連結されているときに駐車ステーション側の通信装置と通信可能な位置に取り付けられる。一例では、駐車検知装置15は電動アシスト自転車1の被ロック部8dに設けられ、駐車ステーション側の通信装置はロック装置90に設けられる。駐車検知装置15は被ロック部8dとは異なる場所に設けられていてもよい。駐車ステーション側の通信装置もロック装置90とは異なる位置に設けれてもよい。通信のプロトコルとしては種々のものが利用できる。通信のプロトコルは、駐車検知装置15の車体への取付位置と、駐車ステーション側の通信装置の位置との距離などを考慮して適宜選択されてよい。
【0029】
有線通信を利用する場合、通信モジュールである駐車検知装置15は、例えば被ロック部8dに設けられている端子と接続される。ロック装置90の通信装置は、被ロック部8dの端子と接続するための端子が設けられる。
【0030】
駐車検知装置15として通信モジュールが利用される場合、駐車検知装置15は上述のステーション信号を受信するだけでなく、電動アシスト自転車1やバッテリ30に関する種々の情報をステーション側の通信装置との間で送受信してもよい。本実施形態の電動アシスト自転車1は利用者に貸し出すための自転車である。例えば、複数の電動アシスト自転車1のそれぞれの利用状況を管理するために固有のID情報が各電動アシスト自転車1に付与されている場合には、駐車検知装置15と駐車ステーション側の通信装置との間で、そのID情報が送受信されてもよい。また、利用者が所有しているバッテリ30に固有のID情報が付与されている場合には、モータコントローラ21はBMC32からそのID情報を取得し、駐車検知装置15と駐車ステーション側の通信装置との間でID情報が送受信されてもよい。さらに、BMC32のメモリにバッテリ30の充放電回数や使用時間、故障情報が格納されている場合には、モータコントローラ21はBMC32からそれらの情報を取得し、駐車ステーション側の通信装置に送信してもよい。駐車ステーション側の通信装置が受信した各種情報は、例えば駐車ステーションを管理するホスト装置に送信される。なお、このような形態で駐車検知装置15が利用される場合には、駐車検知装置15の位置とロック装置90に設けられている通信装置の位置は、別のロック装置90の通信装置と駐車検知装置15との間での通信が生じにくい、すなわち混線が生じにくい位置が望ましい。
【0031】
上述したように、モータコントローラ21は、駐車検知装置15から入力される信号に基づいて車両が駐車ステーションに配置されていることを検知した場合、電動モータ22の駆動を制限する。
【0032】
図2に示す例のモータコントローラ21は、駐車判定部21aと、モータ制御部21bとを有している。これらは、モータコントローラ21のマイクロプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより実現される。
【0033】
駐車判定部21aは駐車検知装置15から入力される信号に基づいて車両が駐車ステーションに配置されているか否かを判断する。より具体的には、駐車検知装置15が被ロック部8dに取り付けられているセンサである場合、駐車判定部21aは駐車検知装置15の信号に基づいて車体がロック装置90によってロックされているか否かを判断する。駐車検知装置15が上述の通信モジュールである場合、上述のステーション信号を駐車検知装置15が受信しているか否かを示す信号に基づいて、駐車判定部21aは車両が駐車ステーションに配置されているか否かを判断する。
【0034】
車両が駐車ステーションに配置されていると駐車判定部21aが判断した場合、電動モータ22の駆動が制限される。電動モータ22の駆動制限は種々の方法により行うことができる。一例では、モータ制御部21bが、モータ駆動回路23への電流指令値として、電動モータ22が出力するトルクが0になる値を出力する。車両が駐車ステーションに配置されていないと駐車判定部21aが判断した場合には、モータ制御部21bは電動モータ22の駆動制限を解除し、乗員の踏力や変速段に基づく上述した電動モータ22の制御を実行する。
【0035】
他の例では、駐車判定部21aは車両が駐車ステーションに配置されていると判断した場合、その旨の信号をBMC32に送信する。そして、BMC32はバッテリ本体31からモータ駆動回路23への電力供給(バッテリ本体31の放電)を停止する。BMC32は、そのような信号を受信していない場合に、バッテリ本体31からモータ駆動回路23への電力供給を許容する。駐車判定部21aは、車両が駐車ステーションに配置されていないと判断した場合には、その旨を示す情報をBMC32に送信してもよい。
【0036】
アシストシステム10の一例は、
図2に示すように、モータコントローラ21に接続されている通知装置24Eを有している。通知装置24Eは利用者に対して種々の通知を発するための装置であり、モータコントローラ21は通知装置24Eを制御する通知制御部21cを有している。
【0037】
上述したように、ここで説明する例では、電動アシスト自転車1は予め登録された利用者に対して貸し出すための自転車である。バッテリ30は利用者に所有される。一例では、電動アシスト自転車1が利用者によって駐車ステーションに配置されたとき(電動アシスト自転車1が返却されたとき)、通知制御部21cはバッテリ30の車体からの取り外しを促す案内を通知装置24Eを通して利用者に発する(以下においてこの案内を、バッテリ取外案内通知と称する)。こうすることにより、利用者がバッテリ30を車体に放置したまま駐車ステーションから去ることを抑えることができる。通知制御部21cは駐車検知装置15の信号に基づいて車両が返却されたか否かを判断し、車両が返却された場合にバッテリ取外案内通知を発する。また、通知制御部21cは、車両が返却され且つバッテリ30が車体に搭載されている場合に、バッテリ取外案内通知を発してもよい。
【0038】
通知装置24Eの一例は音声発生装置とその駆動回路である。この場合、通知装置24Eは、利用者によって電動アシスト自転車1が駐車ステーションに配置されたときに、所定の音声をバッテリ取外案内通知として発する。所定の音声は、例えば、バッテリ30を車体から取り外すことを促す音声メッセージやビープ音などである。また、通知装置24Eの他の例は、表示画面やLEDなどのインジケータとその駆動回路である。この場合、通知装置24E、電動アシスト自転車1の返却時に所定のメッセージを表示したり、所定の態様で点灯したりする。
【0039】
図3はアシストシステム10の変形例を示す図である。この図では、これまで説明した箇所と同一装置には同一符合を付している。
【0040】
図3に示すアシストシステム110では、駐車検知装置15の信号はBMC32に入力される。この例においても、駐車検知装置15としては、電動アシスト自転車1の被ロック部8dに設けられるセンサや、駐車ステーションに設けられている通信装置と通信可能な通信モジュールを利用できる。
【0041】
図3の例では、BMC32は駐車判定部32aと放電制御部32bとを有している。これらは、BMC32のマイクロプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより実現される。
【0042】
駐車判定部32aは、上述の駐車判定部21aと同様に、駐車検知装置15から入力される信号に基づいて車両が駐車ステーションに配置されているか否かを判断する。一例では、車両が駐車ステーションに配置されていると判断された場合、放電制御部32bはバッテリ本体31からモータ駆動回路23への電力供給(バッテリ本体31の放電)を停止する。車両が駐車ステーションに配置されていないと駐車判定部32aが判断した場合に、放電制御部32bはバッテリ本体31からモータ駆動回路23への電力供給を許容する。
【0043】
他の例としては、モータコントローラ21がバッテリ30からの電力によって駆動している場合(すなわち、バッテリ30がモータコントローラ21の電源である場合)、放電制御部32bはモータコントローラ21への電力供給を停止してもよい。これによれば、モータコントローラ21の駆動が停止する結果、電動モータ22の駆動も停止する。放電制御部32bは、車両が駐車ステーションに配置されていないと判断された場合に、モータコントローラ21へ電力を供給する。その結果、モータコントローラ21は、乗員の踏力や変速段に基づく上述した電動モータ22の制御を実行できるようになる。
【0044】
さらに他の例では、駐車判定部32aは車両が駐車ステーションに配置されていると判断した場合、その旨の信号をモータコントローラ21に送信してもよい。この場合、モータコントローラ21が電動モータ22の駆動を制限する。
【0045】
アシストシステム110において、駐車検知装置15として通信モジュールが利用される場合、アシストシステム10と同様に、駐車検知装置15は、電動アシスト自転車1やバッテリ30に関する種々の情報をステーション側の通信装置との間で送受信してもよい。
【0046】
以上説明したように、電動アシスト自転車1は、乗員がペダルに加える踏力を補助するための電動モータ22と乗員の踏力に基づいて電動モータ22を制御するモータコントローラ21とを含む駆動ユニット20を有している。また、電動アシスト自転車1は、電動モータ22に供給するための電力を蓄えているバッテリ30と、駐車ステーションに設置されているロック装置90と連結するための被ロック部8dと、車両が駐車ステーションに配置されていることを検知できる装置15とを備えている。電動モータ22は、車両が駐車ステーションに配置されているときに、その駆動が制限される。これにより、車両が駐車ステーションに配置されているときに、電動モータ22の駆動に起因する大きな力がロック装置90や車体に作用することを抑えることができる。その結果、ロック装置90や電動アシスト自転車1の車体に対する増強の必要性を低減できる。
【0047】
本発明は、以上説明した電動アシスト自転車1やアシストシステム10、110に限られず、種々の変更がなされてもよい。
【0048】
例えば、電動アシスト自転車1には、駐車ステーション以外の場所で車体の移動を規制するための機構が設けられてもよい。例えば、電動アシスト自転車1には、チェーンやワイヤーの端部が脱着可能なロック機構が設けられていてもよい。こうすることにより、自身が借りている電動アシスト自転車1から利用者が一時的に離れるときに、チェーンやワイヤーをその場所に設置されている電柱などの公共物に掛けて、チェーンやワイヤーをロック機構に固定することにより、電動アシスト自転車1をその場所に固定できる。電動アシスト自転車1がこのようなロック機構を有する場合、そのロック機構の作動を検知するセンサが車体に設けられてもよい。そして、そのようなロック機構が作動している場合、電動モータ22の駆動が制限されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 電動アシスト自転車、7 バッテリ収容部、8d 被ロック部、10 アシストシステム、15 通車検知装置、20 駆動ユニット、21 モータコントローラ、22 電動モータ、24E 通知装置、30 バッテリ、32 バッテリマネージメントコントローラ、90 ロック装置、10,110 アシストシステム。