【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)西日本ICTフォーラム2013 展示日:平成25年9月18日 展示場所:大阪市中央区本町橋2−5 マイドームおおさか 2階展示場内 (2)つくばフォーラム2013 展示日:平成25年10月17日 展示場所:茨城県つくば市花畑1−7−1 NTTアクセスサービスシステム研究所内
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
外被を除去したケーブルの周囲を覆うパッキンであって、内部空間に充填した樹脂を硬化させて前記外被の除去部分に封止部を形成可能なパッキンと、前記パッキンを圧迫し、前記内部空間を密閉するためのケース本体とを備えた封止構造体であって、前記ケース本体は、弾性部材を有し、前記弾性部材の弾性変形によって前記封止部の変形を吸収することを特徴とする封止構造体が明らかとなる。
このような封止構造体によれば、内部空間で硬化した樹脂(封止部)が膨張・収縮しても、封止部の封止性能を維持できる。
【0013】
前記ケース本体は、前記弾性部材の弾性変形量を調整する調整部を有することが望ましい。これにより、封止性能を維持できる程度に弾性部材の弾性変形量を調整できる。
【0014】
前記ケース本体は、前記パッキンを挟む2つのケースを有し、前記弾性部材の弾性変形によって、前記2つのケースの間隔の変動を吸収することが望ましい。これにより、ケース本体をケーブルに取り付けることが容易になる。
【0015】
架台と、ネジとを有し、前記ネジによって、前記架台と、前記架台とは反対側の前記ケースとの間隔が固定されており、前記架台と前記架台の側の前記ケースとの間で前記弾性部材を圧縮変形させることが可能であることが望ましい。これにより、ネジの締め込みによって樹脂を圧迫しながら弾性部材を圧縮することが可能になる。
【0016】
前記封止部を迂回して下流側の前記ケーブルにガスを流すバイパス部を更に有することが望ましい。これにより、封止部でガスの流れが止められても、ガスを下流側のケーブルに流すことができる。
【0017】
ケーブルの外被を除去する工程と、前記外被の除去部分の周囲をパッキンで覆い、前記パッキンの変形を吸収可能な弾性部材を有するケース本体で前記パッキンの内部空間を密閉する工程と、前記内部空間に樹脂を充填し、前記樹脂を硬化させて封止部を形成する工程と、を有することを特徴とする封止構造体の製造方法が明らかとなる。
このような製造方法によれば、膨張・収縮しても圧迫する力を維持可能な内部空間に封止部を形成できる。
【0018】
前記封止部の形成後、前記弾性部材を圧縮変形させて前記ケース本体で前記封止部を圧迫する工程を更に有することが望ましい。これにより、内部空間で硬化した樹脂(封止部)が膨張・収縮しても、封止部の封止性能を維持できる。
【0019】
===第1実施形態===
<概要>
図1は、第1実施形態の封止構造体1の設置状況の説明図である。
図2は、ケーブル10の断面図である。
【0020】
ケーブル10は、ガス保守可能な構造になっており、ケーブル10内の隙間はガスの通路になっている。ケーブル10に流れるガスは、例えば乾燥空気である。但し、乾燥空気に限られず、不活性ガスや、匂い付きのガスなどであっても良い。
【0021】
ケーブル10は、内側から順に、多数のメタル心線11と、押さえ巻き12と、LAPシース13とを備えている(
図2参照)。LAPシース13は、アルミニウムテープ14(導電性フィルム)と、外被15とから構成されている。ケーブル10は、例えば電話通信用のLAPシースケーブルであり、例えば400対〜1200対のメタル心線11を備えている。メタル心線11と押え巻き12との間にビニール層が配置されることもある。また、シースの下に網テープが配置され、この網テープの下にアルミニウムテープが配置されることもある。
【0022】
ケーブル10の上流にある局舎側からガス(例えば乾燥空気)が大気圧以上の圧力で送り出されている。ケーブル10は、マンホール内のクロージャ8で幹線ケーブルから分岐され、立ち上げケーブルとして地上に導出される。立ち上げケーブル10の端部には地上ダム9が設けられており、局舎側から送り出されたガスは、地上ダム9で封止されている。つまり、局舎側から地上ダム9までの間のケーブル10やクロージャ8内には、ガスが充填されている。
【0023】
津波などの災害発生時に、地上のケーブル10や地上ダム9が損傷し、ケーブル内のガス圧が低下することがある。ケーブル内のガス圧が低下した状況下で、ケーブル10等の損傷部分から水が浸入すると、それまでのガスの通路を伝って水がケーブル10内を流れてしまい、クロージャ8や幹線ケーブルが浸水するおそれがある。架空ケーブルや引き込み線などの復旧は容易であるが、幹線ケーブルが浸水してしまうと、復旧に多大な時間と費用がかかってしまう。
【0024】
そこで、第1実施形態では、封止用ケース2によって被災時にケーブル10内に侵入した水の流れを止めつつ、バイパス部4によってガスの流路を確保している。また、逆止弁7によって、平常時のガスの流れは確保しつつ、被災時にバイパス部4に侵入した水の流れを止めている。
【0025】
図3は、封止構造体1の全体斜視図である。
図4は、封止構造体1の概要断面図である。図中の白抜き矢印はガスの流れる方向を示し、黒塗り矢印は水の流れる方向を示している。
【0026】
以下の説明では、
図3及び
図4に示すように、各方向を定義する。すなわち、ケーブル10の方向を「長さ方向」とする。また、ケーブル10内に流れるガスの方向を基準にして「上流」と「下流」を定義する。また、封止用ケース2の樹脂注入口のある側を「上」とし、逆側を「下」とする。また、長さ方向及び上下方向に垂直な方向を「左右方向」とし、上流側から見たときの右側を「右」とし、逆側を「左」とする。
【0027】
封止構造体1は、封止用ケース2と、バイパス部4とを有する。封止用ケース2の内部には、ケーブル10に封止処理(止水処理)を施した封止部3が形成されている(
図4参照)。封止部3は、ケーブル10の外被除去部分17の周囲を封止用パッキン20で覆い、封止用パッキン20で密閉された内部空間21に樹脂を充填した後に樹脂を硬化させることによって、形成されている。封止部3によって下流側から上流側への水の流れは止められるが、平常時のガスの流れも封止部3によって止められることになる。
【0028】
そこで、封止部3を迂回してガスを流すためのバイパス部4が設けられている。これにより、局舎側から送られてくるガスは、封止用ケース2の上流側のクロージャ8からバイパス部4を経由して、封止用ケース2の下流側のケーブル10に流れることになる。
また、バイパス部4には逆止弁7が設けられている。ケーブル10内のガス圧が低下した状況下でケーブル10の外被15の損傷箇所から水が侵入し、水が封止部3を迂回してバイパス部4に侵入しても、逆止弁7によって上流側への浸水を止めることができる。
【0029】
ところで、封止部3は適度な力で圧迫されることによって、樹脂で形成された封止部3の封止性能が維持される。但し、封止部3は、寒暖差などの温度変化によって膨張・収縮する。そして、温度が上昇して封止部3が膨張し、封止用パッキン20の内部の圧力が高くなると、封止部3が破壊され、封止性能が低下するおそれがある。また、温度が低下して封止部3が収縮すると、樹脂で形成された封止部3を圧迫する力が低下し、この場合も封止性能が低下するおそれがある。
そこで、第1実施形態の封止用ケース2は、バネ332(
図3参照:弾性部材に相当)を有している。これにより、温度変化によって封止部3が膨張・収縮しても、バネ332がその変形を吸収し、封止部3を圧迫する力を維持する。
【0030】
以下、封止構造体1を構成する封止用ケース2及びバイパス部4について説明する。
【0031】
<封止用ケース2の構成>
図5は、封止用ケース2を把持具38から分離した図である。
把持具38は、封止用ケース2の上流側及び下流側でケーブル10を把持する部材である。把持具38は、上流側把持部381、下流側把持部382及び連結部383を有する。上流側把持部381は、封止用ケース2の上流側でケーブル10を把持する部材である。上流側把持部381は、2つの部材が上下からケーブル10を挟持することによって、ケーブル10を把持する。下流側把持部382は、封止用ケース2の下流側でケーブル10を把持する部材である。下流側把持部382は、2つの部材が上下からケーブル10を挟持することによって、ケーブル10を把持する。連結部383は、上流側把持部381と下流側把持部382を連結する部材である。連結部383は、上流側把持部381と下流側把持部382との間でのケーブル10の湾曲を抑制する。
【0032】
図6は、封止用ケース2の分解図である。以下、
図3及び
図4も参照しながら、封止用ケース2の構造を説明する。
【0033】
封止用ケース2に樹脂を充填する前においては、封止用ケース2は、ケーブル10の外被除去部分17の周囲に樹脂充填用の空間を形成しつつ、その空間を密閉する部材である。また、内部に充填した樹脂を硬化させて封止部3を形成した後においては、封止用ケース2は、封止部3を圧迫して封止部3の封止性能を維持する部材である。封止用ケース2は、封止用パッキン20と、ケース本体30とを有する。
【0034】
封止用パッキン20は、筒状のゴム製のパッキンである。封止用パッキン20は、ケーブル10の外被除去部分17の周囲を覆うとともに、内部空間21に樹脂を充填させて封止部3を形成可能である。封止用パッキン20は弾性を有しており、外側(ケース本体30)から圧迫されると、内部の封止部3が圧迫されることになる。封止用パッキン20の左右の側面には2枚のシートが取り付けられている。但し、封止用パッキン20の左右の側面に2枚のシートを取り付ける代わりに、封止用パッキン20とシートとを一体的に形成することも可能である。
【0035】
封止用パッキン20の側面にはスリット22が形成されている(
図6参照)。作業者は、このスリット22を開いて、ケーブル10の外被除去部分17の周囲を封止用パッキン20で覆うことになる。
【0036】
封止用パッキン20の内径は、ケーブル10の外径よりも大きい。このため、封止用パッキン20でケーブル10の周囲を覆うと、封止用パッキン20とケーブル10との間に空間(内部空間21)が形成され、この空間に樹脂が充填されることになる。なお、後述する通り、ケーブル10の外周にエアタイトテープ27が巻かれことによって、封止用パッキン20の端部24とケーブル10との間の隙間が埋められて、内部空間21が密閉されることになる(
図8C参照)。
【0037】
封止用パッキン20の上側には3個の穴23が形成されている。それぞれの穴23には、封止用パッキン20の内側から管継手35の管部が挿入される。管継手35は、封止用パッキン20及びケース本体30(上部ケース)を挟み込むようにして内部空間21の内側からに継手ニップル36の下側に固定されている。
【0038】
ケース本体30は、封止用パッキン20を圧迫する部材である。封止用パッキン20の内部空間21に樹脂を充填する前においては、ケース本体30が封止用パッキン20を圧迫することにより、封止用パッキン20の内部空間21が密閉されることになる。また、封止用パッキン20の内部で樹脂を硬化させて封止部3を形成した後においては、ケース本体30が封止用パッキン20を圧迫することにより封止部3も圧迫され、これにより樹脂で形成された封止部3の封止性能が維持されることになる。
【0039】
ケース本体30は、上ケース31と、下ケース32と、バネ機構33とを有する。上ケース31は、半円筒部311と、左右の縁部312とを有する。同様に、下ケース32も、半円筒部321と、左右の縁部322とを有する。
【0040】
上ケース31の半円筒部311の内周面と、下ケース32の半円筒部321の内周面は、封止用パッキン20の外周面と密着し、ここから封止用パッキン20を圧迫する。上ケース31の半円筒部311と封止用パッキン20の上側は、管継手35と継手ニップル36によって固定されている。上ケース31と封止用パッキン20が取り付けられた状態で、作業者は封止用パッキン20のスリット22を開き、ケーブル10に上ケース31及び封止用パッキン20を取り付け、その後、上ケース31に下ケース32を取り付けることになる。
【0041】
上ケース31の縁部312は、半円筒部311の端部から外側に突出した部位である。同様に、下ケース32の縁部322も、半円筒部321の端部から外側に突出した部位である。上ケース31に下ケース32を取り付けるとき、上ケース31の縁部312と下ケース32の縁部322とを対向させる。
【0042】
上ケース31と下ケース32は、ほぼ上下対称の形状であるが、上ケース31の半円筒部311には管継手35の管部を挿入するための3個の穴311Aが形成されている。管継手35及び継手ニップル36により、封止用パッキン20がケース本体30(上部ケース)に固定されるとともに、樹脂注入通路や通気通路が形成される。
【0043】
樹脂注入通路及び通気通路は、封止用パッキン20の内部空間21と外部とを連通させる通路である。樹脂注入通路は、真ん中の管継手35及び継手ニップル36によって形成され、封止用パッキン20の内部空間21に樹脂を充填する通路となる。通気通路は、両端の管継手35及び継手ニップル36によって形成され、樹脂の充填時に封止用パッキン20の内部空間21から空気を排出する通路となる。
【0044】
バネ機構33は、上ケース31と下ケース32との間隔の変動を許容しながら、封止用パッキン20(及び封止部3)を圧迫する力を維持する機構である。バネ機構33によって、寒暖差などの温度変化によって封止部3(
図4参照)が膨張・収縮しても、バネ332(後述)がその変形を吸収することによって、封止部3を圧迫する力が維持されて、封止性能が維持される。バネ機構33は、上ケース31の左右の縁部312の上側にそれぞれ設けられている。
【0045】
左右のそれぞれのバネ機構33は、架台331と、バネ332と、3本の調整ネジ333と、2本の軸ネジ334とを有する。
架台331は、バネ332と調整ネジ333(及び軸ネジ334)を支持する板状の台である。架台331は、上ケース31の縁部312の上側に配置されている。架台331から見ると、上ケース31は架台331の側に配置されており、下ケース32は架台331の反対側に配置されている。
バネ332は、封止部3が膨張・収縮したときに、その変形を吸収する弾性部材である。
バネ332が弾性変形することによって、上ケース31と下ケース32との間隔の変動を許容しながら、封止用パッキン20(及び封止部3)を圧迫する力が維持されることになる。バネ332は、架台331と上ケース31の縁部312との間に配置される。なお、架台331を省いて、調整ネジ333の頭部でバネ332の上端を押さえることによって、バネ332を調整ネジ333の頭部とケース本体30(上ケース31)との間に介在させることも可能である。また、バネ332の代わりにゴムなどの他の弾性部材を用いることも可能である。
調整ネジ333及び軸ネジ334は、バネ332の軸となり、バネ332の変形方向を上下方向に制限している。調整ネジ333の頭部(上端)は架台331上あり、上ケース31の縁部312には調整ネジ333を貫通させるための貫通穴(不図示)が形成されており、調整ネジ333の下端は下ケース32の縁部322に固定されており、これにより上ケース31に対して下ケース32が取り付けられている。軸ネジ334の上端は架台331に固定されており、軸ネジ334の下端は自由端になっており、軸ネジ334は上ケース31の縁部312に達しない程度の長さである。軸ネジ334及び軸ネジ334に支持されたバネ332をバネ機構33に追加することによって、バネ機構33のバネ332の数を増やしている。なお、軸ネジ334及び軸ネジ334に支持されたバネ332を省略することも可能である。
【0046】
バネ332は、架台331と上ケース31の縁部312との間で圧縮変形した状態で配置されている。後述するように、樹脂を硬化させて封止部3(
図4参照)が形成された後、調整ネジ333を増し締めすることにより(
図7F参照)、バネ332が架台331と上ケース31の縁部312との間で圧縮変形した状態になる。そして、調整ネジ333がバネ332を介在させてケース本体30を押圧することにより、封止用パッキン20を介して封止部3(
図4参照)が圧迫されることになる。バネ332の反発力は、架台331と上ケース31とを離す方向に働く。一方、調整ネジ333によって、架台331と下ケース32の縁部322との間隔が固定されている。これにより、バネ332の反発力は、上ケース31と下ケース32とを近づける方向に働く。つまり、圧縮変形させたバネ332は、上ケース31と下ケース32に封止用パッキン20(及び封止部3)を圧迫させる力を付与する。なお、調整ネジ333によって架台331と下ケース32の縁部322との間隔が固定された状態でも、バネ332が弾性変形することによって、上ケース31と下ケース32との間隔が変動することは許容されている。
【0047】
また、調整ネジ333によって、架台331と下ケース32の縁部322との間隔を調整(変更)可能であり、これによりバネ332の圧縮変形量を調整可能である。つまり、調整ネジ333は、弾性部材であるバネ332の弾性変形量を調整する調整部である。調整ネジ333によって架台331と下ケース32との間隔を長くし過ぎると、バネ332の圧縮変形量が小さくなり、封止部3が大きく収縮したときに封止部3の変形をバネ332が吸収しきれなくなり、ケース本体30が封止用パッキン20を圧迫する力を維持しにくくなる。逆に、調整ネジ333によって架台331と下ケース32との間隔を短くし過ぎると、バネ332の圧縮変形量が大きくなり、封止部3が大きく膨張したときに封止部3の変形をバネ332が吸収しきれなくなり、封止部3が大きく膨張したときにケース本体30の内部の圧力が高くなるおそれがある。このため、調整ネジ333によって、架台331と下ケース32の縁部322との間隔を適度に調整し、封止部3の変形を吸収できる程度にバネ332の圧縮変形量を調整することになる。
【0048】
なお、調整ネジ333は、上ケース31と下ケース32との間隔を調整する機能も有する。具体的には、調整ネジ333を締めると、上ケース31と下ケース32との間隔が狭くなる(この結果、ケース本体30が封止用パッキン20を圧迫する力が強くなる)。また、調整ネジ333を緩めると、上ケース31と下ケース32との間隔が広がる(この結果、ケース本体30が封止用パッキン20を圧迫する力が弱くなる)。後述するように、樹脂を硬化させて封止部3(
図4参照)が形成された後、調整ネジ333を増し締めすることにより(
図7F参照)、樹脂を硬化させた段階よりも上ケース31と下ケース32との間隔が狭められるため、ケース本体30が封止用パッキン20を圧迫する力が強くなり、封止用パッキン20内で硬化した樹脂(封止部3)が圧迫されることになる。
【0049】
第1実施形態の封止用ケース2によれば、ケース本体30が、バネ332(弾性部材)を有する。封止部3(
図4参照)が寒暖差などの温度変化によって膨張・収縮しても、このバネ332が弾性変形することによって、その変形が吸収されて、封止部3を圧迫する力が維持される。すなわち、温度が上昇して封止部3が膨張した場合には、封止用パッキン20の内部の圧力が高くなるとバネ332が圧縮変形するため、封止用パッキン20の内部の圧力が高くなり過ぎずに済み、封止部3の破壊が抑制される。また、温度が低下して封止部3が収縮した場合には、圧縮変形していたバネ332が若干伸びて、封止用パッキン20が上ケース31と下ケース32との間に挟み込まれた状態が維持されるため、封止部3を圧迫する力が維持される。
【0050】
また、第1実施形態では、ケース本体30の上ケース31及び下ケース32は、封止用パッキン20を挟み込むように設けられている。このため、ケーブル10の端末でなくてもケーブル10の周囲にケース本体30を配置しやすくなる。また、第1実施形態では、バネ332の弾性変形によって、上ケース31と下ケース32との間隔の変動を吸収している。これにより、封止部3が膨張・収縮して、上ケース31と下ケース32との間隔が変動しても、封止部3を圧迫する力が維持される。
【0051】
また、第1実施形態では、調整ネジ333によって架台331と下ケース32(架台331とは反対側のケース)との間隔が固定された状態で、架台331と上ケース31(架台331の側のケース)との間に圧縮変形したバネ332が配置されている。この構成により、後述する
図7Fに示すように、調整ネジ333を増し締めすれば、封止部3を圧迫しながらバネ332を圧縮することが可能になり、硬化した樹脂を圧迫する作業が容易になる。
【0052】
<封止用ケース2の使用方法(封止部3の製造方法)>
図7A〜
図7Fは、封止用ケース2の使用方法の説明図である。まず、作業者は、ケーブル10の前処理を行う(
図7A〜
図7C参照)。
【0053】
作業者は、クロージャ8の下流側における封止用ケース2の取り付け位置を決定し、
図7Aに示すように、所定範囲の外被15を除去する(外被除去部分17を形成する)。このとき、メタル心線11を露出させる必要があるため、作業者は、外被15だけでなく、アルミニウムテープ14及び押さえ巻き12も除去する。
【0054】
次に、作業者は、
図7Bに示すように、外被除去部分17の端において、メタル心線11を束ねるように自己融着テープを巻いても良い。これにより、外被除去部分17の端でメタル心線11が密に束ねられるため、後で封止用ケース2に樹脂を充填したときに、樹脂が外被除去部分17からケーブル10の内部へ漏洩しにくくなる。
【0055】
次に、作業者は、
図7Cに示すように、外被除去部分17の外側の位置であって、後に封止用パッキン20の両端になる位置において、エアタイトテープ27を巻き付ける。エアタイトテープ27は、ケーブル10の外周面と封止用パッキン20の端部24の内周面との間を埋めるためのゴム製のテープである。作業者は、巻き付けたエアタイトテープ27の外径が封止用パッキン20の端部24の内径程度(あるいは若干内径より太くなる程度)になるまで、ケーブル10の外周にエアタイトテープ27を巻き付ける。
【0056】
図8Aは、エアタイトテープ27の参考例の巻き方の説明図である。エアタイトテープ27は厚みがあるため、エアタイトテープ27をケーブル10の外周面に単に巻き付けただけでは、エアタイトテープ27の厚み分の隙間が生じてしまう。例えば、
図8Aには、エアタイトテープ27の内側の端部と、ケーブル10の外周面と、エアタイトテープ27(1層目から2層目に移行する部分)とによって断面三角形状の隙間が形成されている。同様に、エアタイトテープ27の外側の端部においても、不図示の封止用パッキン20との間に隙間が生じてしまう。
これに対し、本実施形態では、
図8Bに示すように、エアタイトテープ27の端ほど薄くなるようにエアタイトテープ27の両端を面取りする。これにより、
図8Aの参考例のような隙間を埋めることが可能になる。なお、エアタイトテープ27の内側及び外側に更にシーリングテープ(不図示)を巻くことによって、ケーブル10とエアタイトテープ27との隙間や、エアタイトテープ27と封止用パッキン20との隙間を埋めても良い。
また、エアタイトテープ27を用いるのではなく、他のゴム部材によってケーブル10の外周面と封止用パッキン20の端部24の内周面との間を埋めても良い。また、第3実施形態(後述)で説明するように、封止用パッキン20の端部の内径をケーブル10の外径に合わせることによって、ケーブル10の外周面と封止用パッキン20の端部24の隙間を無くすことも可能である。
【0057】
ケーブル10の前処理を終えた後、作業者は、
図7Dに示すように、封止用ケース2をケーブル10に取り付ける。このとき、封止用ケース2から下ケース32が外されており、作業者は、上ケース31に固定されている封止用パッキン20の側面のスリット22(
図6参照)を開き、外被除去部分17を封止用パッキン20で覆うようにして、封止用パッキン20及び上ケース31をケーブル10に取り付ける。その後、作業者は、バネ機構33の調整ネジ333を締め付けて、上ケース31に下ケース32を取り付ける。このとき、作業者は、バネ機構33のバネ332が所定変位で圧縮される程度に調整ネジ333を締め付ける。これにより、ケース本体30が封止用パッキン20を圧迫し、封止用パッキン20の内部空間21が密閉される。
【0058】
また、封止用ケース2の取り付け後、作業者は、
図7Dに示すように、把持具38をケーブル10に取り付ける。具体的には、作業者は、封止用ケース2の上流側に上流側把持部381(
図5参照)を取り付け、封止用ケース2の下流側に下流側把持部382を取り付け、上流側把持部381と下流側把持部382とを連結部383で連結する。これにより、ケーブル10の湾曲が抑制され、封止用ケース2とケーブル10との間に隙間ができることが防止される。
【0059】
図8Cは、下流側把持部382の近傍の断面図である。下流側把持部382は、その上流側に側壁部382Aを有する。側壁部382Aは、長さ方向に垂直な面を有し、エアタイトテープ27を下流側から押さえる機能を有する。これにより、ケーブル10に巻き付けられたエアタイトテープ27が外側(下流側)に崩れ倒れることを防止している。封止用パッキン20の中央部は端部24より肉厚に形成されており、封止用パッキン20の内周面に段差が形成されている。この段差がエアタイトテープ27を上流側から押さえることによって、ケーブル10に巻き付けられたエアタイトテープ27が内側(上流側)に崩れ倒れることを防止している。つまり、エアタイトテープ27は、封止用パッキン20の内周面の段差と下流側把持部382の側壁部382Aとの間に挟まれることによって、崩れ倒れることが防止されている。不図示であるが、上流側把持部381の近傍においても同様である(エアタイトテープ27は、封止用パッキン20の内周面の段差と上流側把持部381の側壁部との間に挟まれている)。
【0060】
次に、作業者は、
図7Eに示すように、封止用ケース2に樹脂を注入する。このとき、作業者は、3つの継手ニップル36の栓(ネジ)を外し、中央の継手ニップル36には樹脂注入のためのチューブを連結する。チューブの他端には樹脂パックが取り付けられており、中央の継手ニップル36及び管継手35から構成された樹脂注入通路から樹脂パック内の樹脂を封止用ケース2に注入する。残りの2つの継手ニップル36は通気のために栓を外したままにする。
【0061】
このとき、作業者は、樹脂パックを封止用ケース2よりも高くなるようにつり下げて、樹脂パックの樹脂を封止用ケース2に注入する。樹脂パックの位置が低すぎると、樹脂を充填する圧力が低くなり、外被除去部分17のメタル心線11(
図2参照)の間に樹脂が十分に浸透せず、メタル心線の間に隙間が残り、封止処理が不十分になるおそれがある。このため、作業者は、樹脂パックを所定の高さに保つため、樹脂パックを吊り金具に吊り下げておくことが望ましい。
【0062】
なお、本実施形態では、封止部3を圧迫することによって封止性能を維持している。このため、封止部3を形成する樹脂は、硬化後に弾性を有する樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ウレタン樹脂やシリコン樹脂などの弾性樹脂を使用可能である。
【0063】
封止用ケース2の封止用パッキン20の内部空間21に樹脂が充填されると、通気用の継手ニップル36から樹脂が溢れ出てくるので、作業者は、樹脂の出てきた継手ニップル36に栓(ネジ)をセットして、通気通路を塞ぐ。この段階では、外被除去部分17のメタル心線11の間に樹脂が未だ十分浸透していないおそれがある。このため、作業者は、樹脂が硬化する所定時間(例えば1日)が経過するまで、封止用ケース2の中央の継手ニップル36に樹脂パックを接続したままにしておき、樹脂の注入を継続しておく。また、作業者は、樹脂が十分浸透して流動性がなくなるまでの間、樹脂パックを吊り金具に吊り下げておき、樹脂パックを所定の高さに保つようにする。
【0064】
樹脂注入から所定時間経過後、作業者は、樹脂パックに残った樹脂が硬化しているか否かを確認する。樹脂パックの樹脂が硬化していれば、封止用ケース2の封止用パッキン20の内部空間21に充填された樹脂も硬化し、封止処理が施されたと考えられる。つまり、この段階で、封止部3(
図4参照)が形成されたと考えられる。樹脂の硬化確認後、作業者は、中央の継手ニップル36に栓(ネジ)をセットして、樹脂注入通路を塞ぐ。
【0065】
樹脂の硬化後、作業者は、
図7Fに示すように、封止用ケース2のバネ機構33の調整ネジ333を更に締め付けて増し締めする。このとき、作業者は、バネ機構33のバネ332が所定変位で圧縮される程度に調整ネジ333を締め付ける。この増し締めによって、樹脂を硬化させた段階よりもバネ332が更に圧縮変形するとともに、上ケース31と下ケース32との間隔が狭められ、封止用パッキン20内で硬化した樹脂(封止部3)が圧迫され、封止部3の封止機能が維持される。
【0066】
<バイパス部4の構成>
図9は、バイパス部4のバイパス用ケース5を把持具68から分離した図である。図に示す通り、バイパス部4は、バイパス用ケース5と、把持具68とを有する。また、バイパス部4は、
図3及び
図4に示す通り、バイパス管6を有する。
【0067】
把持具68は、バイパス用ケース5の上流側及び下流側でケーブル10を把持する部材である。把持具68は、上流側把持部681、下流側把持部682及び連結部683を有する。バイパス部4の把持具68の構成は、封止用ケース2の把持具38(
図5参照)とほぼ同様である。
【0068】
図10は、バイパス用ケース5の分解図である。以下、
図3及び
図4も参照しながら、バイパス用ケース5の構造を説明する。
バイパス用ケース5は、クロージャ8から供給されてくるガスを下流側のケーブル10に供給するための部材である。バイパス用ケース5は、バイパス用パッキン50と、バイパスケース本体60とを有する。
【0069】
バイパス用パッキン50は、筒状のゴム製のパッキンである。バイパス用パッキン50は、ケーブル10の外被除去部分19の周囲を覆う部材である。バイパス用パッキン50は弾性を有している。バイパス用パッキン50の側面にも、封止用パッキン20と同様にスリット(不図示)が形成されている。作業者は、このスリットを開いて、ケーブル10の外被除去部分19の周囲をバイパス用パッキン50で覆うことになる。
【0070】
バイパス用パッキン50の内径は、ケーブル10の外形よりも大きい。このため、バイパス用パッキン50でケーブル10を覆うと、バイパス用パッキン50とケーブル10との間に空間が形成され、この空間がガスの通路になる(
図4参照)。
なお、封止用パッキン20の場合(
図8C参照)と同様に、ケーブル10の外周にエアタイトテープ57(
図4参照)が巻かれることによって、バイパス用パッキン50の端部とケーブル10との間の隙間が埋められて、バイパス用パッキン50の内部の空間が密閉される。また、封止用パッキン20の場合(
図8C参照)と同様に、バイパス用パッキン50の中央部は端部より肉厚に形成されており、バイパス用パッキン50の内周面に段差が形成されている。そして、封止用パッキン20の場合(
図8C参照)と同様に、ケーブル10に巻き付けられたエアタイトテープ57は、バイパス用パッキン50の内周面の段差と把持部の側壁部との間に挟まれることになる。
【0071】
バイパス用パッキン50の上側には1個の穴(不図示)が形成されている。この穴には、バイパス用パッキン50の内側から管継手65の管部が挿入される。管継手65は、バイパス用パッキン50及びバイパスケース本体60(上部ケース)を挟み込むようにして、バイパス用継手66に固定される。
【0072】
管継手65には、アース線72の一端が電気的に接続されている。アース線72の他端は、ケーブル10のアルミニウムテープ14と電気的に接続されることになる(
図4参照)。管継手65及びバイパス用継手66は導電性の金属で構成されており、バイパス用継手66とクロージャ8との間を別のアース線73で電気的に接続することになる(
図3、
図4参照)。バイパス用継手66とクロージャ8との間を接続するアース線73は、管継手65に接続されたアース線72とは別体であるため、ケーブル10やバイパス用パッキン50の内部に水が浸入してアース線72に水が浸入しても、アース線73やクロージャ8には水が浸入しない。
【0073】
バイパス用継手66には、測圧バルブ661が取り付けられている。測圧バルブ661に測圧計(後述の
図11D参照)を取り付けるための測圧バルブ用アダプタが取り付けられていないとき、測圧バルブ661は閉じている。測圧バルブ用アダプタを介して測圧計を測圧バルブ661に取り付けると、測圧バルブ661が開き、測圧計がバイパス用パッキン50の内部の圧力を測定できる。
【0074】
また、バイパス用継手66には、逆止弁7が取り付けられている。ここでは、逆止弁7は、バイパス管6(
図3及び
図4参照)の端部に配置され、バイパス用継手66に直接的に接続されている。但し、逆止弁7をバイパス用継手66に直接的に接続するのではなく、バイパス管6(
図3及び
図4参照)の途中に逆止弁7を配置し、バイパス管6の端部がバイパス用継手66に接続されていても良い。
【0075】
バイパスケース本体60は、バイパス用パッキン50を圧迫する部材である。バイパスケース本体60がバイパス用パッキン50を圧迫することにより、バイパス用パッキン50の内部空間が密閉されることになる。バイパスケース本体60は、上バイパスケース61と、下バイパスケース62と、固定ネジ63とを有する。
【0076】
上バイパスケース61は、封止用ケース2の上ケース31と同様に、半円筒部611と、左右の縁部612とを有する。同様に、下バイパスケース62も、半円筒部621と、左右の縁部622とを有する。上バイパスケース61と下バイパスケース62は、ほぼ上下対称の形状であるが、上バイパスケース61の半円筒部611には管継手65の管部を挿入するための穴(不図示)が形成されている。管継手65及びバイパス用継手66により、バイパス用パッキン50がバイパスケース本体60(上部ケース)に固定されるとともに、ガス通路が形成される。
【0077】
ガス通路は、バイパス用パッキン50の内側の空間と外部とを連通させる通路である。ガス通路は、管継手65及びバイパス用継手66によって形成され、クロージャ8から供給されてくるガスをバイパス用ケース5(バイパス用パッキン50)の内部に供給する通路となる。
【0078】
上バイパスケース61の半円筒部611の内周面と、下バイパスケース62の半円筒部621の内周面は、バイパス用パッキン50の外周面と密着し、ここからバイパス用パッキン50を圧迫する。上バイパスケース61の半円筒部611とバイパス用パッキン50の上側は、管継手65とバイパス用継手66によって固定されている。上バイパスケース61とバイパス用パッキン50が取り付けられた状態(
図10に示す状態)で、作業者はバイパス用パッキン50のスリットを開き、ケーブル10に上バイパスケース61及びバイパス用パッキン50を取り付け、その後、上バイパスケース61に下バイパスケース62を取り付けることになる。
【0079】
上バイパスケース61に下バイパスケース62を取り付けるとき、上バイパスケース61の縁部612と下バイパスケース62の縁部622とを対向させ、固定ネジ63によってネジ止めする。
【0080】
バイパス管6は、封止部3を迂回してガスを下流側に流すための配管である(
図3及び
図4参照)。バイパス管6の上流端はクロージャ8に接続されている。バイパス管6の下流端はバイパス用ケース5のバイパス用継手66に接続されている。これにより、バイパス管6は、クロージャ8内のガスをバイパス用ケース5へ送ることができる。
【0081】
バイパス管6には逆止弁7が設けられている。逆止弁7は、上流側から下流側へのガスの流れは止めずに、下流側から上流側への水の流れは止める弁である。逆止弁7は、一方向へのガスの流れを許容しつつ、逆方向への水の流れを止める機能があれば、種々の方式のものを適宜採用することができる。また、逆止弁7は、逆方向へのガスの流れを止めるものでも良いし、逆方向へのガスの流れは許容するものでも良い。
【0082】
また、バイパス管6には、T型バルブ71が設けられている。T型バルブ71は、例えばクロージャ8へのガスの供給に用いられる。なお、バイパス管6にT型バルブ71が無くても良い。また、T型バルブ71の用途は、クロージャ8へのガスの供給に限られるものではない。
【0083】
通常の状態では、クロージャ8内のガスは、バイパス管6に送られて、逆止弁7を通過する(
図4参照)。逆止弁7を通過したガスは、バイパス用ケース5のガス通路(管継手65及びバイパス用継手66)を介してバイパス用ケース5のバイパス用パッキン50の内部に送られる。バイパス用パッキン50の内部にはケーブル10の外被除去部分19があり、ガスは、この外被除去部分19からケーブル10に侵入し、ケーブル10の下流側に供給される。このようにして、通常の状態では、ケーブル10を流れるガスが、封止部3を迂回して下流側へ流れる。
【0084】
ケーブル内のガス圧が低下した状況下でケーブル10の外被15の損傷箇所から水が浸入した場合、ガスの通路であったケーブル10内の隙間を水が逆流(走水)することがある。逆流した水がバイパス用ケース5に達すると、バイパス用ケース5内の外被除去部分19から水が漏れ出す。バイパス用ケース5の内部空間は密閉されているため、ケーブル10から漏れ出した水は、バイパス用ケース5内に溜まり、バイパス用ケース5のガス通路(管継手65及びバイパス用継手66)を流れる。但し、バイパス管6に逆止弁7が設けられているため、バイパス用ケース5のガス通路まで達した水の流れは、逆止弁7によって止められて、それ以上に上流側へ逆流することが防止される。
【0085】
<バイパス部4の取り付け方法>
図11A〜
図11Eは、バイパス部4の取り付けの説明図である。
【0086】
最初に、作業者は、ケーブル10の前処理を行う(
図11A参照)。このとき、まず作業者は、所定範囲の外被15(及びアルミニウムテープ14)を除去する。封止部3の製造時のケーブル10の前処理(
図7A参照)の場合とは異なり、押え巻き12は残しておく。押え巻き12を残す理由は、封止部3の形成時の樹脂がケーブル10内を伝って外被除去部分19から漏れ出ることを防ぐためである。次に、作業者は、封止部3の製造時のケーブル10の前処理(
図7B参照)の場合と同様に、外被除去部分19の外側の位置であって、後にバイパス用パッキン50の両端になる位置において、エアタイトテープ57を巻き付ける。
【0087】
ケーブル10の前処理を終えた後、作業者は、
図11Bに示すように、外被除去部分19の下流側のケーブル10のアルミニウムテープ14にアース線72の端部を接続する。なお、アース線72の逆側の端部は、バイパス用パッキン50の内側の管継手65に接続されている(
図4、
図10参照)。
【0088】
次に、作業者は、
図11Cに示すように、バイパス用ケース5をケーブル10に取り付ける。このとき、
図10に示すようにバイパス用ケース5から下バイパスケース62が外されており、作業者は、上バイパスケース61に固定されているバイパス用パッキン50の側面のスリットを開き、外被除去部分19をバイパス用パッキン50で覆うようにして、バイパス用パッキン50及び上バイパスケース61をケーブル10に取り付ける。その後、作業者は、固定ネジ63を所定トルクで締め付けて、上バイパスケース61に下バイパスケース62を取り付ける。これにより、バイパスケース本体60がバイパス用パッキン50を圧迫し、バイパス用パッキン50の内部の空間が密閉される。
【0089】
また、バイパス用ケース5の取り付け後、作業者は、
図11Cに示すように、把持具68をケーブル10に取り付ける。これにより、ケーブル10の湾曲が抑制され、バイパス用ケース5とケーブル10との間に隙間ができることが防止される。なお、
図8Cに示す封止用ケース2の場合と同様に、把持部をケーブル10に取り付けると、エアタイトテープ57は、バイパス用パッキン50の内周面の段差と下流側把持部682又は上流側把持部681の側壁部との間に挟まれることによって、崩れ倒れることが防止される。
【0090】
なお、バイパス用ケース5及び把持具68の取り付け後、封止部3の封止性能の検査をすることが可能である。この場合、作業者は、
図11Dに示すように、バイパス用ケース5の測圧バルブ661に測圧計を接続し、バイパス管6のT型バルブ71からガスを供給してクロージャ8内の気圧を高める。このとき、封止用ケース2の封止部3によるケーブル10の封止が不十分な場合、クロージャ8内のガスは、ケーブル10の内部を流れて、封止用ケース2の封止用パッキン20の内部空間21に流れ込み、更にケーブル10の内部を流れてバイパス用ケース5のバイパス用パッキン50の内部の空間に流れ込み、この結果、バイパス用ケース5の気圧が高くなる。したがって、作業者は、クロージャ8内の気圧を高めたときの測圧計の圧力変化に基づいて、封止部3の封止性能を検査できる。
【0091】
バイパス用ケース5及び把持具68の取り付け後、作業者は、
図11Eに示すように、バイパス管6を取り付ける。これにより、バイパス部4の組み立てが完了する。
【0092】
===第2実施形態===
第1実施形態では、封止用ケース2の上ケース31の上側にバネ332が配置されていた。但し、バネ機構33のバネ332の配置は、これに限られるものではない。
【0093】
図12は、第2実施形態の封止用ケース2の説明図である。
第2実施形態のバネ機構33は、上架台331Aと、下架台331Bと、上バネ332Aと、下バネ332Bと、調整ネジ333及び軸ネジ334とを有する。
【0094】
上架台331Aは、上バネ332Aと調整ネジ333(及び軸ネジ334)を支持する板状の台であり、上ケース31の縁部312の上側に配置されている。下架台331Bは、下バネ332Bと調整ネジ333(及び軸ネジ334)を支持する板状の台であり、下ケース32の縁部322の下側に配置されている。
上バネ332A及び下バネ332Bは、封止部3が膨張・収縮したときに、その変形を吸収する弾性部材である。上バネ332A及び下バネ332Bが弾性変形することによって、上ケース31と下ケース32との間隔の変動を許容しながら、封止用パッキン20(及び封止部3)を圧迫する力が維持されることになる。上バネ332Aは、上架台331Aと上ケース31の縁部312との間で圧縮変形した状態で配置される。下バネ332Bは、下架台331Bと下ケース32の縁部322との間で圧縮変形した状態で配置される。
調整ネジ333の頭部(上端)は上架台331A上にあり、上ケース31の縁部312と下ケース32の縁部322には調整ネジ333を貫通させるための貫通穴(不図示)がそれぞれ形成されており、調整ネジ333の下端は下ケース32の縁部322に固定されている。
【0095】
また、調整ネジ333によって、上架台331Aと下架台331Bとの間隔を調整(変更)可能である。また、調整ネジ333によって上バネ332A及び下バネ332Bの圧縮変形量を調整可能である。また、調整ネジ333は、上ケース31と下ケース32との間隔を調整する機能も有する。
【0096】
第2実施形態においても、封止用ケース2の封止用パッキン20の内部空間21に樹脂を充填し、樹脂を硬化させて封止部3(
図4参照)が形成される。樹脂の硬化後、作業者は、調整ネジ333を更に締め付けて増し締めする。この増し締めによって、樹脂を硬化させた段階よりもバネ332が更に圧縮変形するとともに、上ケース31と下ケース32との間隔が狭められ、封止用パッキン20内で硬化した樹脂(封止部3)が圧迫され、封止部3の封止機能が維持される。
【0097】
第2実施形態の封止用ケース2においても、ケース本体30が、弾性部材(上バネ332A及び下バネ332B)を有する。封止部3(
図4参照)が温度変化によって膨張・収縮しても弾性部材(上バネ332A及び下バネ332B)の弾性変形によって、封止部3の変形が吸収されて、封止部3を圧迫する力が維持される。
【0098】
また、第2実施形態の封止用ケース2によれば、第1実施形態の封止用ケース2と比べて、弾性部材の弾性変形量(上バネ332A及び下バネ332Bの圧縮変形量の合計)を大きくできる。このため、第2実施形態の封止用ケース2は、封止部3の膨張量又は収縮量が大きくても、バネ332がその変形を吸収しつつ、封止部3を圧迫する力を維持することが可能である。
【0099】
===第3実施形態===
上記の実施形態では、封止用ケース2の左右の両側にバネ機構33が設けられていた。但し、バネ機構33が、左右のいずれか一方だけに設けられていても良い。
【0100】
図13は、第3実施形態の封止用ケース2の説明図である。
ケース本体30は、半円筒状の上ケース31及び下ケース32を有する。上ケース31と下ケース32はヒンジで左側が連結されている。ヒンジと反対側にはバネ機構33が設けられ、調整ネジ333によって上ケース31の縁部312と下ケース32の縁部322とが留められている。
【0101】
バネ332は、架台331と上ケース31の縁部312との間で圧縮変形した状態で配置されている。ここでは、バネ332が上ケース31の上側に配置されているが、第2実施形態のように下ケース32の下側にもバネ332を配置しても良い。
【0102】
第3実施形態においても、封止用ケース2の封止用パッキン20の内部空間21に樹脂を充填し、樹脂を硬化させて封止部3(
図4参照)が形成される。樹脂の硬化後、作業者は、調整ネジ333を更に締め付けて増し締めする。この増し締めによって、樹脂を硬化させた段階よりもバネ332が更に圧縮変形するとともに、上ケース31と下ケース32との間隔が狭められ、封止用パッキン20内で硬化した樹脂(封止部3)が圧迫され、封止部3の封止機能が維持される。
【0103】
第3実施形態の封止用ケース2においても、ケース本体30が、バネ332を有する。封止部3(
図4参照)が温度変化によって膨張・収縮してもバネ332の弾性変形によって、封止部3の変形が吸収されて、封止部3を圧迫する力が維持される。
【0104】
ところで、前述の実施形態では、ケーブル10の外周面にエアタイトテープ27が巻かれることによって、封止用パッキン20の端部とケーブル10との間の隙間が埋められて、内部空間21が密閉されていた(
図8C)。これに対し、第3実施形態では、封止用パッキン20の中央部の内径はケーブル10の外径よりも大きくしつつ、封止用パッキン20の端部24の内径はケーブル10の外径と同程度にしている。これにより、ケーブル10に封止用パッキン20を取り付けたとき、封止用パッキン20の端部の内面がケーブル10の外周と密着するため、エアタイトテープ27が不要になる。但し、この場合、異なる径のケーブル10ごとに、端部の内径の異なる封止用パッキン20を用意する必要がある(前述の実施形態のようにエアタイトテープ27をケーブル10に巻き付ければ、ケーブル10の径が異なっても、同じ封止用パッキン20を使用可能である)。
【0105】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0106】
<封止構造体1について>
前述の封止構造体1は、クロージャ8のすぐ下流側に設けられていた。但し、封止構造体1を設ける場所は、このような場所に限られるものではない。例えば、ケーブル10の端部でガスを封止する地上ダム9(
図1参照)に、封止用ケース2を配置しても良い。この場合、ケーブル10の端部でガスを封止する目的であるため、封止構造体1にはバイパス部4は不要である。
【0107】
<ケーブル10について>
前述のケーブル10は、多数のメタル心線11と、押さえ巻き12と、アルミニウムテープ14と、外被15とから構成されている。但し、ケーブル10は、この構成に限られるものではない。例えば、ケーブルが光ファイバ心線を備えても良いし、押さえ巻きの内側又は外側にフィルム等が配置されていても良い。また、ケーブルが押さえ巻きやアルミニウムテープを備えていなくても良い。
また、前述のケーブル10は、ガス保守可能なケーブルであったが、封止構造体を取り付ける対象となるケーブルは、ガス保守可能なケーブルでなくても良い。ケーブルの外被除去部分の保護やケーブルの止水を目的として、前述の封止構造体をケーブルに設けても良い。
【0108】
<ケース本体30について>
前述のケース本体30は、2つのケース(上ケース31及び下ケース32)から構成されており、この2つのケースが封止用パッキン20を挟むように配置されていた。但し、ケース本体30を構成するケースは、2つに限られるものではなく、3つ以上でも良い。3つ以上のケースでケース本体30が構成された場合においても、封止部3の膨張・収縮をバネ(弾性部材)が吸収すれば、封止部3を圧迫する力を維持できる。
【0109】
また、ケース本体30は、複数のケースで構成されるものに限られず、1つのケースで構成しても良い。例えば、
図13の上ケース31及び下ケース32をヒンジで連結するのではなく、上ケース31及び下ケース32が一体となったC字形状の1つのケースにしても良い。この場合、封止用パッキン20の内部空間21で樹脂を硬化させて封止部3を形成した後、調整ネジ333を更に締め付けて増し締めすることによって、C字形状のケースを変形させて縁部同士の間隔を狭くすれば、封止用パッキン20内で硬化した樹脂(封止部3)を圧迫し、封止部3の封止機能を維持することが可能である。
【0110】
<弾性部材について>
前述のバネ332は圧縮変形した状態で配置されていた。但し、伸び変形させたバネを用いて封止部3の変形量を吸収するようにケース本体30を構成しても良い。