(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、近方を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車両、対向車両や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADB機能を有する車両用灯具について説明する。
図1は、比較技術に係るADB機能を有する車両用灯具のブロック図である。なおこの比較技術を公知技術として認定してはならない。
【0005】
車両用灯具1rは、光源10および駆動装置20rを備える。ADBにおいては、ハイビーム照射領域は、複数N個(Nは自然数)のサブ領域に分割される。光源10は、N個のサブ領域に対応づけられる複数の発光ユニット12_1〜12_Nを含む。各発光ユニット12は、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)などの半導体デバイスを含み、それぞれが対応するサブ領域を照射するよう配置される。各発光ユニット12は、単一のデバイスであってもよいし、直列に接続された複数のデバイスを含んでもよい。
駆動装置20rは、複数の発光ユニット12_1〜12_Nそれぞれのオン(点灯)、オフ(消灯)を制御することで、ハイビームの配光を変化させる。あるいは駆動装置20rは、高い周波数で発光ユニット12をPWM(パルス幅変調)制御することで、実効的な輝度を調節する。
【0006】
駆動装置20rは、電流源30、複数のバイパス回路40_1〜40_N、コントローラ50を備える。電流源30は、バッテリ2からスイッチ4を介してバッテリ電圧V
BAT(入力電圧V
INともいう)を受け、光源10に流れる駆動電流I
DRVを、ある目標量に安定化する。
【0007】
複数のバイパス回路40_1〜40_Nは、複数の発光ユニット12_1〜12_Nに対応づけられる。バイパス回路40はオン、オフが切りかえ可能に構成される。i番目のバイパス回路40_iがオン状態となると、駆動電流I
DRVが、発光ユニット12_iではなくバイパス回路40_iに流れ、発光ユニット12_iが消灯し、バイパス回路40_iがオフ状態となると、駆動電流I
DRVが発光ユニット12_iに流れて点灯する。
【0008】
車両用灯具1rを制御する上流のプロセッサ(たとえば電子制御ユニットECU)6は、車両前方の状態にもとづいて、ハイビームにより照射すべきサブ領域を判定し、駆動装置20rのコントローラ50に指示する。コントローラ50は、プロセッサ6からの制御指令にもとづいてバイパス回路40_1〜40_Nの状態を制御する。具体的には、照射すべきサブ領域に対応する発光ユニット12を選択し、選択された発光ユニット12と並列なバイパス回路40をオフ状態とし、残りの発光ユニット12と並列なバイパス回路40をオン状態とする。
【0009】
バイパス回路40をオンからオフを急峻に切りかえると、電流源30の出力電圧V
OUTは小さくなる。電流源30をバックコンバータ、ブーストコンバータ、フライバックコンバータやフォワードコンバータなどの、負荷と並列に接続される大容量の平滑キャパシタを有するトポロジーで構成した場合、出力電圧V
OUTが急峻に小さくなると、平滑キャパシタに蓄えられていた電荷が放電され、発光ユニット12側に流れる駆動電流I
DRVがオーバーシュートする。反対にバイパス回路40をオフからオンを急峻に切りかえると、駆動電流I
DRVがアンダーシュートする。バイパス回路40のオン、オフにともなう駆動電流I
DRVの変動幅が大きいと、発光ユニット12の信頼性に悪影響を及ぼし、あるいはノイズ成分の増大につながる。特に複数のバイパス回路40のオン、オフを同時に切りかえる場合、出力電圧V
OUTの変動幅が大きくなり、この問題は一層顕著となる。この問題を解決するために、バイパス回路40のオン、オフを緩やかに切りかえる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(課題1)
図2は、本発明者らが検討したバイパス回路40rの回路図である。このバイパス回路40rは、特許文献1と同様に、発光ユニット12と並列に設けられたバイパストランジスタM1と、バイパストランジスタM1のオン、オフを指示する制御信号をフィルタリングしてバイパストランジスタM1のゲートに供給するローパスフィルタ(積分回路)42を含む。ローパスフィルタ42の前段には、レベルシフト回路44が設けられる。
【0012】
ローパスフィルタ42は、バイパストランジスタM1のゲート電圧の変化を緩慢とすることにより、バイパストランジスタM1のオン、オフを緩やかに切りかえるために設けられる。
【0013】
本発明者らは、バイパストランジスタM1のゲートソース間にシャントキャパシタを設けた
図2のバイパス回路40rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0014】
図3は、
図2のバイパス回路40rを備える車両用灯具1rの動作波形図である。
【0015】
制御信号S1がハイレベルのとき、レベルシフト回路44のトランジスタQ1はオフであり、バイパストランジスタM1のゲートソース間電圧V
GSはゼロとなって、バイパストランジスタM1はオフ状態となる。この間、発光ユニット12に流れる電流I
LEDは、電流源30が生成する駆動電流I
DRVとなり、発光ユニット12が点灯する。
【0016】
時刻t0に制御信号S1がローレベルに遷移すると、レベルシフト回路44のトランジスタQ1がオンし、バイパストランジスタM1のゲートソース間電圧V
GSが、ローパスフィルタ42の時定数にしたがって上昇する。そしてゲートソース間電圧V
GSがMOSFETのゲートソース間しきい値電圧V
THを超えると、バイパストランジスタM1がターンオンし、バイパストランジスタM1に駆動電流I
DRVが引き込まれ、発光ユニット12に流れる電流I
LEDは減少する。
【0017】
ここで、時刻t1以前のバイパストランジスタM1のオフ状態において、そのドレインソース間電圧は、発光ユニット12の順方向電圧Vfと等しく、したがって3〜10V程度となっている。この状態において、バイパストランジスタM1のゲートソース間電圧V
GSを緩やかに変化させても、バイパストランジスタM1に流れる電流を緩やかに変化させることはできず、したがって発光ユニット12に流れる電流I
LEDを緩やかに変化させることはできない。この構成において電流I
LEDをさらに緩やかに変化させるためには、ローパスフィルタ42のカットオフ周波数を低く(時定数を長く)設定する必要があるが、その場合、制御信号S1が遷移してから、LED電流I
LEDが変化しはじめるまでの遅延時間τが長くなってしまう。
【0018】
(課題2)
平滑キャパシタは大容量であることから、バイパス回路40のターンオン、ターンオフ制御にともなう駆動電流I
DRVの増大を抑制するためには、バイパス回路40のターンオン時間、ターンオフ時間(以下、遷移時間と総称する)を相当長く設定する必要がある。その反面、遷移時間を長くしすぎると、スイッチングロスが増大するため効率が低下する。またバイパス回路40を利用してPWM調光する場合、デューティ比が小さい場合に、遷移時間の影響で調光精度が悪化する。
【0019】
なおこれらの問題は、ADB制御を行う場合のみでなく、
図1の車両用灯具1rを輝度制御に利用した場合などにも同様に発生する。
【0020】
本発明は係るかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、発光ユニットの電流を緩やかに変化させることが可能な車両用灯具およびその駆動装置の提供にある。また別の目的のひとつは、駆動電流の変動を抑制可能な車両用灯具およびその駆動装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(第1の態様)
本発明のある態様は、直列接続された複数の発光ユニットを含む光源とともに使用され、車両用灯具を構成する駆動装置に関する。駆動装置は、光源に駆動電流を供給する電流源と、複数の発光ユニットのうちN個(Nは自然数)の発光ユニットに対応づけられ、それぞれが対応する発光ユニットと並列に設けられ、独立してオン、オフが切りかえ可能に構成されたN個のバイパス回路と、を備える。バイパス回路は、発光ユニットと並列に設けられたバイパストランジスタと、バイパストランジスタのゲートドレイン/ゲートコレクタ間に設けられた帰還キャパシタと、バイパストランジスタのゲートソース/ゲートエミッタ間に制御信号に応じた駆動電圧を供給するゲート駆動回路と、を含む。
【0022】
この態様によると、バイパストランジスタのゲートドレイン間に帰還キャパシタを設けたことにより、ミラー効果によって、ミラー区間の間、ゲートソース/ゲートエミッタ間電圧V
GSがしきい値電圧V
THの近傍でフラットとなり、小さな傾きで変化する。これにより、バイパストランジスタのオン、オフを緩やかに切りかえることができ、発光ユニットに流れる電流を緩やかに遷移させることができる。
【0023】
ゲート駆動回路は、バイパストランジスタのゲート容量および帰還キャパシタへの充電の時定数と放電の時定数が実質的に等しくなるよう構成されてもよい。
これによりバイパストランジスタのターンオン時とターンオフ時の電流の傾きを揃えることができる。
【0024】
ゲート駆動回路は、バイパストランジスタのゲートソース間電圧/ゲートエミッタ間電圧を所定値以下に制限するクランプ素子を含んでもよい。
クランプ電圧は、ゲートソース間しきい値V
THの1.5倍〜3倍の範囲に設定してもよい。これにより、ターンオン時間とターンオフ時間を揃えることができる。
【0025】
ゲート駆動回路は、制御信号を受け、ハイレベル電圧V
Hとゼロ電圧0Vの間を遷移する駆動電圧を生成するレベルシフト回路と、一端がバイパストランジスタのゲートと接続され、他端がレベルシフト回路の出力端子と接続された電流制限抵抗と、そのアノードがバイパストランジスタのゲート側となる向きで電流制限抵抗と並列に設けられたダイオードと、を含んでもよい。
【0026】
レベルシフト回路は、制御信号に応じてオン、オフする入力トランジスタと、直列に接続された2個の抵抗を含み、入力トランジスタの一端の電圧を分圧する分圧抵抗ペアと、を含んでもよい。
【0027】
レベルシフト回路は、制御信号に応じてオン、オフする定電流源と、定電流源が生成する電流の経路上に設けられた電流電圧変換用の抵抗と、を含んでもよい。
【0028】
(第2の態様)
本発明の別の態様も、直列接続された複数の発光ユニットを含む光源とともに使用され、車両用灯具を構成する駆動装置に関する。駆動装置は、光源に駆動電流を供給するコンバータと、複数の発光ユニットのうちN個(Nは自然数)の発光ユニットに対応づけられ、それぞれが対応する発光ユニットと並列に設けられ、独立してオン、オフが切りかえ可能に構成されたN個のバイパス回路と、駆動電流が所定の目標値I
REFに近づくようにコンバータを制御するとともに、N個のバイパス回路のオン、オフを制御するコントローラと、を備える。コンバータは、スイッチングトランジスタと、スイッチングトランジスタのスイッチングに伴うエネルギーを蓄える第1磁性体素子と、を含む1次側回路と、第2磁性体素子を含む2次側回路と、1次側回路と2次側回路を結合する、容量値Cの結合キャパシタと、を備える。バイパス回路のターンオンまたはターンオフに要する遷移時間T
TRNは、ターンオンまたはターンオフの前後での出力電圧の変化幅をΔVとするとき、式(1)を満たす。
ΔV×C<I
REF×T
TRN …(1)
【0029】
コンバータを結合キャパシタを有するトポロジーで構成することにより、大容量の平滑キャパシタが不要となるため、大容量の平滑キャパシタを有するトポロジーに比べて、遷移時間を大幅に短くできる。その上で、式(1)を満たすように遷移時間T
TRNを定めることにより、出力電圧V
OUTをΔV変化させるための電流を、バイパス回路側に流すことができるため、駆動電流がオーバーシュートしたりアンダーシュートするのを抑制できる。
【0030】
第2磁性体素子L12のインダクタンスをL
S、発光ユニットの最大定格電流をI
MAX、スイッチングトランジスタのスイッチング周期をT
SWとするとき、駆動装置は、式(2)を満たすよう構成されてもよい。
I
REF×ΔV×T
SW2/T
ON<L
S×(I
MAX2−I
REF2)/2 …(2)
コンバータのスイッチングトランジスタのスイッチング周期に着目したとき、第2磁性体素子に流れる電流は、スイッチング周期のリップル成分を有する。式(2)を満たすように構成したとき、電流リップルの最大値を発光ユニットの最大定格電流より小さく制限することができ、回路の信頼性を高めることができる。
【0031】
本発明の別の態様もまた、駆動装置である。この装置は、直列接続された複数の発光ユニットを含む光源とともに使用され、車両用灯具を構成する駆動装置であって、光源に駆動電流を供給するコンバータと、複数の発光ユニットのうちN個(Nは自然数)の発光ユニットに対応づけられ、それぞれが対応する発光ユニットと並列に設けられ、独立してオン、オフが切りかえ可能に構成されたN個のバイパス回路と、駆動電流が所定の目標値I
REFに近づくようにコンバータを制御するとともに、N個のバイパス回路のオン、オフを制御するコントローラと、を備える。コンバータは、スイッチングトランジスタと第1磁性体素子と、を含む1次側回路と、第2磁性体素子を含む2次側回路と、1次側回路と2次側回路を結合する結合キャパシタと、を備える。発光ユニットの最大定格電流をI
MAX、スイッチングトランジスタのスイッチング周期をT
SW、第2磁性体素子のインダクタンスをL
Sとするとき、駆動装置は式(2)を満たすよう構成される。
I
REF×ΔV×T
SW2/T
ON<L
S×(I
MAX2−I
REF2)/2 …(2)
【0032】
コンバータのスイッチングトランジスタのスイッチング周期に着目したとき、第2磁性体素子に流れる電流は、スイッチング周期のリップル成分を有する。式(2)を満たすように構成したとき、電流リップルの最大値を発光ユニットの最大定格電流より小さく制限することができ、回路の信頼性を高めることができる。なお磁性体素子は、インダクタやトランスを含む。
【0033】
バイパス回路は、発光ユニットと並列に設けられたバイパストランジスタと、バイパストランジスタのゲートドレイン/ゲートコレクタ間に設けられた帰還キャパシタと、バイパストランジスタのゲートソース間に、制御信号に応じた駆動電圧を供給するゲート駆動回路と、を含んでもよい。
【0034】
本発明の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、直列に接続された複数の発光ユニットを含む光源と、光源を駆動する上述のいずれかの態様の駆動装置と、を備える。
【発明の効果】
【0035】
本発明のある態様によれば、発光ユニットの電流を緩やかに変化させることができる。また別の態様によれば、駆動電流の変動を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0038】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0039】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0040】
(第1の実施の形態)
図4は、第1の実施の形態に係るバイパス回路40の回路図である。このバイパス回路40は、
図1の駆動装置20に使用される。バイパス回路40の周辺回路の構成について、
図1を参照して簡単に説明する。
【0041】
車両用灯具1は、光源10および駆動装置20を備える。光源10は、直列接続された複数の発光ユニット12_1〜12_Nを含む。駆動装置20は、電流源30、N個(Nは自然数)のバイパス回路40_1〜40_N、コントローラ50、を備える。
【0042】
電流源30は、光源10に対して、目標輝度に応じた駆動電流I
DRVを供給する。たとえば電流源30は、昇圧型あるいは降圧型のコンバータおよびその制御回路を含む。制御回路は、駆動電流I
DRVを検出し、検出された駆動電流I
DRVが目標量に近づくように、コンバータのスイッチング状態をフィードバック制御してもよい。コンバータの形式および電流制御の方式は特に限定されず、公知技術を用いればよい。
【0043】
N個のバイパス回路40_1〜40_Nは、複数の発光ユニット12のうちN個の発光ユニット12に対応づけられ、それぞれが対応する発光ユニット12と並列に設けられる。バイパス回路40_iは、制御信号S1_iに応じてオン状態とオフ状態が切りかえ可能であり、オン状態において発光ユニット12_iと並列なバイパス経路を形成するよう構成される。
【0044】
コントローラ50は、通常の点灯制御期間において、N個のバイパス回路40_1〜40_Nを、N個の発光ユニット12_1〜12_Nそれぞれの点灯・消灯の指示にもとづいてオン、オフ制御する。より具体的にはコントローラ50は、制御信号S1_iを発光ユニット12_iの目標輝度に応じてパルス幅変調し、バイパス回路40_iをPWM周期でスイッチングすることにより、発光ユニット12_iを調光する。
【0045】
図4を参照し、バイパス回路40の構成を説明する。
バイパス回路40は、バイパストランジスタM1、帰還キャパシタC1、ゲート駆動回路60を備える。バイパストランジスタM1は、発光ユニット12と並列に設けられる。発光ユニット12のカソードと接続される配線をカソードラインL
K、アノードと接続される配線をL
Aと称する。i番目のバイパス回路40のカソードラインは、i+1番目のバイパス回路40のアノードラインと共通である。
【0046】
バイパストランジスタM1はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、そのソースはカソードラインL
Kと接続され、そのドレインはアノードラインL
Aと接続される。MOSFETに代えてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよく、この場合、ソースをエミッタと、ドレインをコレクタと読み替えればよい。
【0047】
帰還キャパシタC1は、バイパストランジスタM1のゲートドレイン間に設けられる。帰還キャパシタC1の容量は、バイパストランジスタM1に十分大きなミラー効果をもたらすように定められる。通常、ゲートドレイン間容量はMOSFETの応答性を低下させるため忌避されるが、後述のように本実施の形態では、積極的にミラー効果を利用する。帰還キャパシタC1の容量値としては、数百pF〜1000pF程度が好適である。
【0048】
ゲート駆動回路60は、バイパストランジスタM1のゲートソース間に、制御信号S1に応じた駆動電圧V
GSを供給する
【0049】
本実施の形態において、制御信号S1のハイレベルは発光ユニット12の点灯に、ローレベルは消灯に対応づけられる。したがってゲート駆動回路60は、制御信号S1がハイレベルのときゲートソース間の駆動電圧V
GSをゼロとしてバイパストランジスタM1をオフ状態とし、ローレベルのとき駆動電圧V
GSをしきい値V
THより高いハイレベル電圧V
HとしてバイパストランジスタM1をオン状態とする。
【0050】
ゲート駆動回路60は、レベルシフト回路62、電流制限抵抗R1、ダイオードD1を含む。レベルシフト回路62は、制御信号S1の論理レベルを反転し、ハイレベル電圧V
Hとゼロ電圧0Vにレベルシフトする。電流制限抵抗R1はレベルシフト回路62の出力端子64とバイパストランジスタM1のゲートの間に設けられ、バイパストランジスタM1のゲート容量の充電電流を制限する。ダイオードD1は、アノードがバイパストランジスタM1のゲート側となる向きで、電流制限抵抗R1と並列に設けられる。
【0051】
レベルシフト回路62は、ベース抵抗Rb1、Rb2、入力トランジスタQ1、分圧抵抗Rd1、Rd2、ツェナーダイオードZD1を含む。
入力トランジスタQ1はPNP型バイポーラトランジスタであり、そのベースにはベース抵抗Rb1を介して制御信号S1が入力される。ベース抵抗Rb2は入力トランジスタQ1のベースエミッタ間に設けられる。ベース抵抗Rb1、Rb2によって、制御信号S1と電源電圧V
CCが分圧され、入力トランジスタQ1のベースに入力される。
【0052】
分圧抵抗Rd1、Rd2は、入力トランジスタQ1のコレクタ電圧を分圧し、出力端子64に駆動電圧V
GSを発生させる。駆動電圧V
GSのハイレベル電圧V
Hは、入力トランジスタQ1のオン抵抗が十分に小さいとすれば、式(1)で与えられる。
V
H=(V
CC−V
K)×Rd2/(Rd1+Rd2) …(1)
V
Kは、カソードラインL
Kの電位である。
【0053】
ツェナーダイオードZD1は、出力端子64とカソードラインL
Kの間に設けられ、駆動電圧V
GSが所定のクランプ電圧V
CLを超えないよう制限するクランプ素子として機能する。したがってハイレベル電圧V
Hは、式(1)で与えられる電圧とクランプ電圧V
CLのうち、低い電圧となる。
【0054】
バイパストランジスタM1のターンオン時間は、ゲートソース間電圧V
GSが、ゼロ電圧0Vからしきい値V
THに上昇するまでの時間に応じており、そのターンオフ時間は、ゲートソース間電圧V
GSが、ハイレベル電圧V
Hからしきい値V
THに低下するまでの時間に応じている。ターンオン時間とターンオフ時間を揃えるためには、V
H−V
THとV
THが同程度(0.5〜2倍)である必要がある。つまりハイレベル電圧V
H、言い換えればクランプ電圧V
CLは、しきい値V
THの1.5〜3倍とすることが好ましい。
【0055】
なおレベルシフト回路62の電源電圧V
CCは、駆動装置20の構成に応じて定めればよい。たとえば
図1の電流源30が負電圧を生成するコンバータであり、OUTN+1が負電圧であるアプリケーションでは、電源電圧V
CCは5〜10Vとすればよい。
図1の電流源30が昇圧コンバータであり、OUT1に昇圧した電圧が印加されるアプリケーションでは、V
CCをその昇圧した電圧としてもよい。
【0056】
ゲート駆動電圧V
GSをハイレベル電圧V
Hとゼロの間で遷移させるためには、バイパストランジスタM1のゲート容量(不図示)および帰還キャパシタC1を充放電する必要がある。ゲート駆動回路60は、これらの合成容量への充電の時定数と放電の時定数が実質的に等しくなるよう構成することが望ましい。
図4のゲート駆動回路60では、Rd1、R1を含む経路が充電経路となり、D1、Rd2を含む経路が放電経路となる。したがって、Rd1+R1≒Z
D1+Rd2となるように抵抗値を定めてもよい。Z
D1は、ダイオードD1の順方向インピーダンスである。
【0057】
以上がバイパス回路40の構成である。続いてその動作を説明する。
図5は、
図4のバイパス回路40の動作波形図である。比較のために
図2のバイパス回路40rの動作波形を一点鎖線で示す。
時刻t0に制御信号S1がローレベルに遷移すると、入力トランジスタQ1がオンしてゲート電圧V
GSが上昇し始める。そしてゲート電圧V
GSがMOSFETのしきい値V
TH付近に達すると、MOSFETが弱オン状態となって、ドレインソース間電圧V
DSが低下しはじめる。このとき帰還キャパシタC1によって引き起こされるミラー効果によって、ドレインからゲートにフィードバックがかかり、ドレインソース間電圧V
DSの低下速度が遅くなり、ゲート電圧V
GSがしきい値V
TH付近に留まり非常に緩やかに上昇していく。ドレインソース間電圧V
DSが動作安定点まで低下するとドレインからゲートへのフィードバックがなくなり、ゲート電圧V
GSが元の時定数で上昇し始める。ゲート電圧V
GSが緩やかに変化する区間をミラー期間Tmと称する。
【0058】
バイパストランジスタM1に流れるドレイン電流I
M1は、ゲートソース間電圧V
GSおよびドレインソース間電圧V
DSの関数であり、それらが緩やかに変化することにより、ドレイン電流I
M1も緩やかに増大していく。これにより発光ユニット12に流れる電流I
LEDは緩やかに減少していく。
【0059】
時刻t1に制御信号S1がハイレベルに遷移すると、入力トランジスタQ1がオフしてゲート電圧V
GSが低下し始める。そしてバイパストランジスタM1のターンオン時と同様に、ミラー効果によってバイパストランジスタM1が緩やかにターンオフし、その結果、発光ユニット12に流れる電流I
LEDは緩やかに増大していく。
【0060】
以上がバイパス回路40の動作である。
このバイパス回路40によれば、バイパストランジスタM1のゲートドレイン間に帰還キャパシタC1を設けたことにより、ミラー効果によって、ミラー区間Tmの間、ゲートドレイン間電圧V
DSが緩やかに変化し、またゲートソース間電圧V
GSがしきい値電圧V
THの近傍でフラットとなり小さな傾きで変化する。これにより、バイパストランジスタM1のオン、オフを緩やかに切りかえることができ、発光ユニット12に流れる電流I
LEDを緩やかに遷移させることができる。
【0061】
またゲート駆動回路60を、バイパストランジスタM1へのゲート容量への充電経路と放電経路の時定数が実質的に等しくなるように構成した。これにより、ターンオン動作とターンオフ動作の遅延および電流I
LEDの傾きを揃えることができる。
【0062】
またクランプ素子であるツェナーダイオードZD1のツェナー電圧は、MOSFETのしきい値V
THの1.5〜3倍の範囲に含まれる。これにより、駆動電圧V
GSのハイレベル電圧V
Hがしきい値V
THと同程度となり、ターンオン時間とターンオフ時間を揃えることができる。
【0063】
バイパス回路40によれば、ターンオン時間、ターンオフ時間は、ゲート容量の充放電経路の時定数、すなわち抵抗R1、Rd1、Rd2およびダイオードD1のインピーダンスZ
D1に応じて調節可能である。ターンオン時間、ターンオフ時間が短すぎると、オーバーシュートやアンダーシュートの抑制の効果が薄れる反面、それらが長すぎるとバイパストランジスタM1の損失が大きくなる。したがってターンオン時間、ターンオフ時間は、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制可能な範囲でなるべく短くすることが望ましい。
【0064】
続いて車両用灯具1の用途を説明する。
図6は、実施の形態に係る車両用灯具1を備えるランプユニット(ランプアッシー)500の斜視図である。ランプユニット500は、透明のカバー502、ハイビームユニット504、ロービームユニット506、筐体508を備える。上述の車両用灯具1は、たとえばハイビームユニット504に用いることができる。複数の発光ユニット12は、それぞれが異なる領域を照射するように、たとえば横方向に一列に配置される。そして、車両の走行状態において、車両側のコントローラ、たとえばECU(電子制御ユニット)により、照射すべき領域が適応的に選択される。車両用灯具1には、照射すべき領域を指示するデータが入力され、車両用灯具1は、指示された領域に対応する光源10(発光ユニット12)を点灯させる。
【0065】
以上、本発明のある態様について、第1の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0066】
(第1変形例)
図7は、第1変形例に係るバイパス回路40aの回路図である。バイパス回路40aは、レベルシフト回路62aの構成が
図4のそれと異なっている。レベルシフト回路62aは、定電流源66、電流電圧変換用の抵抗Rd3、ツェナーダイオードZD1を含む。定電流源66は、制御信号S1に応じてオンオフが切りかえ可能であり、オン状態において定電流Icを生成する。定電流源66の構成は特に限定されないが、たとえば入力トランジスタQ1のエミッタに抵抗Re1を挿入することで簡易的な定電流源を構成できる。制御信号S1がローレベルのときの入力トランジスタQ1のベース電圧をV
BLとすれば、定電流Icは式(2)で表される。
Ic={V
CC−(V
BL+V
BE)}/Re1 …(2)
V
BEは、入力トランジスタQ1のベースエミッタ間電圧であり約0.6Vの定数である。
【0067】
抵抗Rd3は定電流Icの経路に設けられる。抵抗Rd3の電圧降下Rd3×Icが、出力端子64から駆動電圧V
GSとして出力される。ツェナーダイオードZD1は、クランプ電圧V
CLを超えないように駆動電圧V
GSをクランプする。なおこの変形例では、V
CL<Rd3×Icを満たすように回路定数を定めるとよい。
【0068】
この変形例によっても実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(第2変形例)
光源10としては、LEDの他に、LD(レーザダイオード)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)などの半導体光源を用いてもよい。
【0070】
(第3変形例)
図6のランプユニット500では、ハイビームユニット504に
図3の車両用灯具1を使用する場合を説明したが、それに代えて、あるいはそれに加えて、ロービームユニット506に車両用灯具1を用いてもよい。
【0071】
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態に係る車両用灯具のブロック図である。
【0072】
車両用灯具1は、光源10および駆動装置20aを備える。光源10は、N個のサブ領域に対応づけられる複数の発光ユニット12_1〜12_Nを含む。
【0073】
駆動装置20aは、コンバータ30a、フィルタ36、N個のバイパス回路40_1〜40_N、コントローラ50aを備える。バイパス回路40の構成は特に限定されるものではないが、
図4や
図7のように構成するとよい。
【0074】
コンバータ30aおよびコントローラ50aの一部は、第1の実施の形態における電流源30に対応する。コンバータ30aは、光源10に駆動電流I
DRVを供給する。コントローラ50aは、電流コントローラ52およびバイパスコントローラ54を含む。電流コントローラ52は、駆動電流I
DRVが所定の目標値I
REFに近づくようにパルス信号S2を生成し、コンバータ30aを制御する。バイパスコントローラ54は、N個のバイパス回路40_1〜40_Nそれぞれのオン、オフを制御する。
【0075】
コンバータ30aと光源10の間にはフィルタ36が挿入される。フィルタ36は、出力電流I
OUTのリップル成分あるいはノイズ成分を除去し、駆動電流I
DRVを光源10に供給する。
【0076】
コンバータ30aの構成を説明する。コンバータ30aは、Cukコンバータであり、スイッチングトランジスタM11、第1磁性体素子L11、第2磁性体素子L12、結合キャパシタC11、入力キャパシタC12、検出抵抗R11を備える。入力キャパシタC12は省略してもよい。検出抵抗R11は、コンバータ30aが生成する電流I
OUTの経路上に設けられ、電流I
OUTに比例した電圧降下を発生させる。電流コントローラ52は、検出抵抗R11の電圧降下にもとづいて電流I
OUT(すなわち駆動電流I
DRV)検出し、バイパストランジスタM1を制御する。Cukコンバータでは、出力電圧V
OUTが負となることに留意されたい。
【0077】
入力キャパシタC12、スイッチングトランジスタM11、第1磁性体素子L11は、1次側回路32を構成する。ダイオードD11、第2磁性体素子L12は2次側回路34を構成する。第2磁性体素子L12のインダクタンスをL
Sと記す。1次側回路32と2次側回路34は、容量値Cである結合キャパシタC11を介して結合される。
【0078】
第1磁性体素子L11は、スイッチングトランジスタM11がオン時間にエネルギーを蓄え、オフ時間にエネルギーを放出する。放出されたエネルギーは、結合キャパシタC11を介して2次側回路34に伝送される。このエネルギー(電流)はダイオードD11および第2磁性体素子L12により整流される。第2磁性体素子L12のインダクタンスL
Sに応じて、コンバータ30aの出力電流I
OUTの上昇、低下速度が定まる。
【0079】
バイパス回路40のターンオンまたはターンオフに要する遷移時間T
TRNは、ターンオンまたはターンオフの前後での出力電圧の変化幅をΔVとするとき、式(1)を満たすよう定められる。
ΔV×C<I
REF×T
TRN …(1)
同時にターンオンするバイパス回路40の個数をn
ONと、同時にターンオフするバイパス回路40の個数をn
OFFとすれば、ΔV=|(n
ON−n
OFF)|×Vfとなる。つまりΔVは、同時に制御されるバイパス回路40の個数に応じて異なる値をとる。ΔVが取り得る最大値をΔV
MAXとすれば、関係式(1a)を得る。
ΔV
MAX×C/I
REF<T
TRN …(1a)
【0080】
n個のバイパス回路40のうち最大でk個が同時にオン、オフ切りかえが可能であるとする。この場合、ΔVの最大値は、k個のバイパス回路40が同時にオフからオフに遷移したとき、あるいはその反対のときに最大となる。したがってΔVの最大値ΔV
MAXは、発光ユニット12に駆動電流I
DRVが流れるときの順方向電圧Vfを用いて、ΔV
MAX=k×Vfで与えられる。
【0081】
なお後述のように、式(1)は、発光ユニット12の保護のための条件であるところ、n個のバイパス回路40のすべてが同時にオン、オフ切りかえ可能である場合には、保護すべき発光ユニット12が存在しないこととなり、意味をなさない。したがってこの場合には、ΔV
MAX=(n−1)×Vfとしてもよい。
【0082】
たとえばΔV
MAX=50V、C=1.0μF、I
REF=1.0Aとしたときには、T
TRN>50μsとすればよい。
なお後述する過電流の抑制効果は、結合キャパシタC11の容量Cを小さくするほど、また遷移時間T
TRNを長くするほど有効となる。しかしながら容量Cが小さ過ぎると発振しやすくなったり、1次側回路32から2次側回路34へのエネルギーの伝送量が低下してコンバータ30aの出力電力が低下する。また遷移時間T
TRNを長くし過ぎると、バイパス回路40における電力損失が増大したり、PWM調光に遅延が生じ、調光精度が悪化する。したがって遷移時間T
TRNは、式(1)を満たしつつ、効率や耐発振性を考慮して定めればよい。
【0083】
またコンバータ30aは、発光ユニット12の最大定格電流をI
MAX、スイッチングトランジスタM11のスイッチング周期をT
SW、第2磁性体素子L12のインダクタンスをL
Sするとき、式(2)を満たすように構成される。
I
REF×ΔV×T
SW2/T
ON<L
S×(I
MAX2−I
REF2)/2 …(2)
【0084】
以上が第2の実施の形態に係る車両用灯具1aの構成である。続いてその動作を説明する。
図9(a)、(b)は、バイパス回路40のターンオン動作に関する波形図である。
図9(a)は式(1)を満たす場合、
図9(b)は式(1)を満たさない場合を示す。
【0085】
Cukコンバータでは、結合キャパシタC11の両端間電圧が、出力電圧V
OUTとなる。したがって出力電圧V
OUTをΔV変化させるには、結合キャパシタC11の電荷を、ΔV×C、充電もしくは放電する必要がある。ΔVの変化速度は、バイパス回路40の遷移時間T
TRNであるから、遷移時間T
TRNの間に出力電圧V
OUTにΔVの電圧変化が発生するとき、結合キャパシタC11の充放電電流I
OUTは、
I
OUT=ΔV×C/T
TRN
となる。I
OUT>I
REFとなると、I
REFを超える電流I
OUTが光源10に流れることとなり、過電流状態となる。したがって
図9(b)に示すように、式(1)を満たさない遷移時間T
TRNにしたがって、バイパス回路40を高速にターンオフさせると、出力電流I
OUTがオーバーシュートし、発光ユニット12に過電流が流れてしまう。
【0086】
これに対して、式(1)を満たすように結合キャパシタC11の容量Cおよび遷移時間T
TRNを定めれば、結合キャパシタC11の両端間電圧をΔV変化させるときの電流I
OUTは、目標値I
REFを超えない。したがって出力電流I
OUTのオーバーシュートを抑制でき、発光ユニット12に大電流が流れるのを防止できる。
【0087】
図10は、スイッチングトランジスタM11のスイッチング動作に関する波形図である。
図9に示すバイパス回路40の遷移時間T
TRNに応じた電流変動が、数十μsの時間スケールであるのに対して、ここで説明するバイパストランジスタM1のスイッチングにともなう電流変動は、数μsとより短い時間スケールである。
【0088】
コンバータ30aの出力電流I
OUTが目標電流I
REFに安定化されているとき、バイパス回路40の制御にともなって、出力電圧V
OUTが遷移時間T
TRNにわたってΔV
MAX低下したとする。このとき、バイパス回路40の切りかえの後に、コンバータ30aの1次側回路32には、ΔV
MAX×I
REFに応じた余剰エネルギーが発生する。
【0089】
電流コントローラ52が、電流I
OUTをヒステリシス制御する場合、出力電流I
OUTが目標値I
REFを超えるとスイッチングが停止する。したがってエネルギーがたまる最大時間は1回のスイッチング周期T
SWである。このスイッチング周期T
SWの間に出力電圧V
OUTは、ΔV’=ΔV
MAX×T
SW/T
TRN変化する。つまり余剰エネルギーW
EXは、式(3)で与えられる。
W
EX=I
REF×ΔV’×T
SW=I
REF×ΔV
MAX×T
SW2/T
TRN …(3)
【0090】
この余剰エネルギーW
EXが1次側回路32から2次側回路34に伝送され、余剰エネルギーにより出力電流I
OUTが増大する。いま、出力電流I
OUTがI
REFからI
PEAKまで増大するとすると、エネルギー保存則から式(4)が成り立つ。
W
EX=L
S×(I
PEAK2−I
REF2)/2 …(4)
【0091】
発光ユニット12の信頼性を確保するためには、上昇後の電流量I
PEAKが、発光ユニット12の最大定格電流I
MAXよりも小さければよい。
したがって、式(5)が成り立っていれば、出力電流I
OUTは発光ユニット12の最大定格電流I
MAXより小さいことが補償される。
W
EX<L
S×(I
MAX2−I
REF2)/2 …(5)
式(5)に式(3)を代入すると、式(2)を得る。
I
REF×ΔV
MAX×T
SW2/T
ON<L
S×(I
MAX2−I
REF2)/2 …(2)
【0092】
つまり、式(2)を満たすように回路を設計することで、発光ユニット12を保護することができる。
【0093】
たとえばΔV
MAX=50V、I
REF=1.0A、T
SW=4μs、T
TRN=100μs、I
MAX=1.2Aであるとき、L
S>29μHとすればよい。
【0094】
なお、第2磁性体素子L12のインダクタンスL
Sを大きくするほど、過電流やノイズ成分を抑制できるが、磁性体素子が大型となり、また部品コストも高くなる。したがってサイズおよびコストの観点からは、第2磁性体素子L12のインダクタンスL
Sは式(2)を満たす範囲で小さくすることが望ましい。ここでフィルタ36がインダクタを含む場合、第2磁性体素子L12とフィルタのインダクタの合成インダクタンスによって、出力電流I
OUTの変動が抑制される。したがって第2磁性体素子L12のインダクタンスは、式(2)から決定される値から、フィルタ36のインダクタンスを減じた値とすることができる。
【0095】
以上、本発明のある態様について、第2の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0096】
(第4変形例)
第2の実施の形態では、Cukコンバータを例に説明したが、本発明はそれには限定されない。コンバータ30aとしては、第1磁性体素子L11およびスイッチングトランジスタM11を含む1次側回路32、第2磁性体素子L12を含む2次側回路34、1次側回路32と2次側回路34を結合する結合キャパシタC11を備えるトポロジーであればよい。こうしたコンバータ30aとしては、Zetaコンバータなどが知られている。
【0097】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。