特許第6282918号(P6282918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6282918-モータアクチュエータ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282918
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】モータアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/167 20060101AFI20180208BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20180208BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20180208BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   H02K5/167 A
   F16C17/02 Z
   F16C33/10 A
   F16C33/10 Z
   F16C35/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-83636(P2014-83636)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-62328(P2015-62328A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-170440(P2013-170440)
(32)【優先日】2013年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕司
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−118632(JP,A)
【文献】 特開2013−090502(JP,A)
【文献】 実開昭57−141656(JP,U)
【文献】 特開昭62−131734(JP,A)
【文献】 特開平07−233816(JP,A)
【文献】 特開平04−006667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
F16C 17/02
F16C 33/10
F16C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、モータと、前記モータの回転を減速する減速機構が収容されたモータアクチュエータにおいて、
前記モータは、含油軸受が固定された軸受収容部を有するモータケースと、前記軸受収容部から前記モータケースの外部に突出した回転軸を有し、
前記モータケースは、前記ハウジングに弾性部材を介して支持されており、
前記軸受収容部は、前記回転軸の軸方向に突出し前記含油軸受が収容される筒状部と、前記含油軸受の軸方向外端面に対向し前記回転軸が挿通される開口部が形成された鍔部を有し、
前記含油軸受は、軸方向外端面の内周側に面取部を有し、
前記面取部にグリースが塗布されており、
前記開口部の内径は、前記回転軸の外径よりも大きく、且つ、前記面取部の外径よりも小さいことを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項2】
前記鍔部は、前記含油軸受の軸方向外端面に接していることを特徴とする請求項1に記載のモータアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータアクチュエータにおけるグリースの漏れを防止する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置の気流調節弁の駆動源として、モータにより駆動されるモータアクチュエータが知られている。
このようなモータアクチュエータは、一般的に、ケース本体にカバーを組み付けてなる収容ケースに、モータ及びこのモータの減速機構が収容されて構成されている。また、モータは、軸方向に突出した一対のボス部を有するモータハウジングと、一方のボス部からモータハウジングの外部に突出してウォームホイールに噛合されるウォームを装着した回転軸を有している。そして、ケース本体およびカバーには、各ボス部の外周に装着された弾性部材(Oリング)を介してモータを支持する一対のケース側支持片及びカバー側支持片が設けられている。
【0003】
上記のようなモータアクチュエータでは、一方のボス部に設けられている含油軸受での油膜切れを防止するため、含油軸受におけるウォーム側の端面にグリースを塗布することがあるが、モータの回転に伴う振動等によってこのグリースが収納ケース内に飛散し易いといった問題があった。
【0004】
上記の問題を解決するため、例えば特許文献1に記載のモータアクチュエータでは、一方のケース側支持片とカバー側支持片に、一方のボス部に設けられた含油軸受の外端面に対向する対向手段を一体に形成し、この対向手段に設けられた切欠きに回転軸を挿通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−90502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のモータアクチュエータにおいて、グリースの飛散を十分に防止するためには、前記対向手段に設ける切欠きを回転軸の直径よりも僅かに大きなものとし、回転軸と切欠きとの間隙を最小限に設定することが重要である。しかしながら、特許文献1に記載のモータアクチュエータでは、以下のような理由から回転軸と切欠きとの間隙を十分に小さくすることが難しい。
【0007】
まず、上記のようなモータアクチュエータでは、モータの回転に伴う振動が収容ケースに伝達するのを避けるために、弾性部材を介してモータを収容ケースに支持することが重要である。そして、このようにモータを収容ケースに弾性部材を介して支持した場合、ウォームホイールからの反力により、ウォームとともにモータ全体がウォームホイールから離れる方向に変位(傾動)しやすい。
一方、特許文献1に記載のモータアクチュエータでは、グリースの飛散を防止するための対向手段がケース側支持片とカバー側支持片に一体に形成されているため、回転軸も含めてモータ全体が傾動しても、対向手段は傾動しない。このため、回転軸と切欠きの間隙が小さいと、回転軸が対向手段に接触し、異音が生じたり所定の駆動力が得られなくなる虞がある。
【0008】
そこで本発明は、従来技術が抱える上記課題を解決し得るモータアクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく成された本発明は、ハウジング内に、モータと、前記モータの回転を減速する減速機構が収容されたモータアクチュエータにおいて、
前記モータは、含油軸受が固定された軸受収容部を有するモータケースと、前記軸受収容部から前記モータケースの外部に突出した回転軸を有し、
前記モータケースは、前記ハウジングに弾性部材を介して支持されており、
前記軸受収容部は、前記回転軸の軸方向に突出し前記含油軸受が収容される筒状部と、前記含油軸受の軸方向外端面に対向し前記回転軸が挿通される開口部が形成された鍔部を有し、
前記含油軸受は、軸方向外端面の内周側に面取部を有し、
前記面取部にグリースが塗布されており、
前記開口部の内径は、前記回転軸の外径よりも大きく、且つ、前記面取部の外径よりも小さいことを特徴とするものである。
本発明のモータアクチュエータでは、前記鍔部は、前記含油軸受の軸方向外端面に接していることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸受収容部の鍔部に形成された開口部の内径は、グリースが塗布された含油軸受の面取部の外径よりも小さいため、ハウジング内へのグリースの飛散を効果的に防止することができる。
また、グリースの飛散を防止するための鍔部がモータケースに一体に形成されているため、モータ全体が減速機構から離れる方向に傾動したとしても、鍔部に形成された開口部の周縁と回転軸との間隙はほとんど変化しない。
よって、開口部の周縁と回転軸との間隙を最小限に設定することが可能になり、ハウジング内へのグリースの飛散を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るモータアクチュエータのハウジング内の構成を示す平面図であり、上ケース11を外した状態を示している。
図2】(a)は図1の切断線A−Aにおける断面図であり、(b)は(a)中のグリースの飛散防止構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0013】
(実施形態例)
図1および図2に示すように、本例のモータアクチュエータ1は、自動車などの車両に用いられる空調装置の気流調節弁の駆動源などに用いられ、内部に空間を有するハウジング10内に、モータ20と、このモータ20の回転を減速する減速機構40が収容される。
【0014】
ハウジング10は、硬質樹脂で形成された上ケース11と下ケース12を有し、上ケース11と下ケース12の開口端部が互いに嵌合して所定の内部空間を有する箱状に形成されている。なお、上ケース11と下ケース12の嵌合構造は本発明の本質部分ではないため、図面では省略している。
【0015】
本例のモータ20は、ブラシ付の直流モータにより構成されており、内部に空間を有するモータケース23と回転軸21を有する。回転軸21の一端はモータケース23の外部に突出しており、この突出した部分に回転軸21と一体に回転するウォーム22が固定されている。
【0016】
モータケース23は、金属材料により形成された有底円筒状のモータケース本体24と、樹脂材料等の絶縁材料によって形成されてモータケース本体24の開口端を閉塞する円板状のモータケース蓋26を有する。
【0017】
モータケース本体24には、回転軸21の軸方向に沿って外側(図2(a)における右側)に突出する軸受収容部25が形成されており、この軸受収容部25には含油軸受28が圧入等によって固定されている。
モータケース蓋26には、回転軸21の軸方向に沿って外側(図2(a)における左側)に突出する軸受収容部27が形成されており、この軸受収容部27には不図示の含油軸受が圧入等によって固定されている。
回転軸21は、軸受収容部25と軸受収容部27に固定されている2つの含油軸受によって回転自在に軸支されている。なお、これらの含油軸受は、焼結金属等の多孔質材料に潤滑油を含浸させてなるものである。
【0018】
モータケース23は、ハウジング10に弾性部材を介して支持されている。具体的には、上ケース11に、回転軸21の軸方向に間隔を設けて一対の上ケース側支持片11aが形成されている。また、下ケース12に、上ケース側支持片11aと対向する位置に、一対の下ケース側支持片12aが形成されている。この一対の上ケース側支持片11aと一対の下ケース側支持片12aが、一対の軸受収容部25、27の外周に装着された弾性部材であるOリング30、31を上下から挟み込んで支持することにより、モータ20は上ケース11と下ケース12に弾性的に支持される。これにより、モータ20の振動に基づく騒音が抑制される。
【0019】
本例の減速機構40は、ウォームホイール41と中間ギア42と出力ギア43を有する。ウォームホイール41は、回転軸21に固定されたウォーム22に噛合される。中間ギア42はウォームホール41に噛合され、出力ギア43は中間ギア42に噛合される。そして、出力ギア43の一端が上ケース11から外部に突出して空調装置の気流調節弁に連結されてモータの回転が伝達される。
【0020】
本例のモータアクチュエータでは、軸受収容部25に設けられている含油軸受28の油膜切れを防止するため、含油軸受28のウォーム22側端面にグリース29を塗布しているが、このグリースの飛散防止構造について図2を用いて詳細に説明する。
【0021】
本例の軸受収容部25は、回転軸21の軸方向に突出した筒状部25aと、鍔部25bを有する。筒状部25aは、円筒状を呈し、内部に含油軸受28が固定されている。鍔部25bは、円板状を呈し、筒状部25aの一端から径方向内側に一体に形成されており、含油軸受28の軸方向外端面28aに対向している。なお、本例では、鍔部25bは、含油軸受28の軸方向外端面28aに接して配されている。
【0022】
鍔部25bの中心には、円形断面を有する回転軸21が挿通される円形の開口部25cが形成されている。回転軸21の一端側は開口部25cを通してモータケース23の外部に突出されている。
【0023】
含油軸受28は、厚肉の円筒状を呈し、軸方向外端面28aの外周側に形成された第一面取部28dと、軸方向外端面28aの内周側に形成された第二面取部28eを有する。
第一面取部28dは、含油軸受28の軸方向外端面28aと外周面28bの交差する角部を、全周に渡って略45°の傾斜面として形成されている。
第二面取部28eは、含油軸受28の軸方向外端面28aと内周面28cの交差する角部を、全周に渡って略45°の傾斜面として形成されている。
本例では、第二面取部28eに、含油軸受28の油膜切れを防止するためにグリース29が塗布されている。
【0024】
回転軸21と第二面取部28eと開口部25cは同軸上(同心状)に配されており、開口部25cの内径d1は、回転軸21の外径d2よりも大きく、且つ、第二面取部28eの外径d3よりも小さく形成されている。そして、第二面取部28eと鍔部25bとの間に、グリース29を保持するグリース保持空間25dが形成されている。
また、グリース29の飛散を防止するための鍔部25bがモータケース23に一体に形成されているため、ウォームホイール41からの反力により、ウォーム22とともにモータ全体がウォームホイール41から離れる方向(図1の下方向)に傾動したとしても、開口部25cの周縁と回転軸21との間隙はほとんど変化しない。
このため、開口部25cの周縁と回転軸21との間隙が非常に狭くても、モータ20の傾動時に回転軸21が開口部25cの周縁に接触することがない。
よって、開口部25cの周縁と回転軸21との間隙を、回転軸21が開口部25cの周縁に接触しない範囲で最小限に設定することが可能になり、ハウジング10内へのグリース29の飛散を最小限に抑えることができる。
【0025】
また本例では、鍔部25bは、含油軸受28の軸方向外端面28aに接して配されているため、鍔部25bの剛性が高まり、鍔部25bが含油軸受28の軸方向外端面28aに間隙を設けて配されている場合に比べて、モータの回転に伴う振動が生じにくくなる。
【0026】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態例を適宜に変形可能である。
【0027】
例えば、上記実施形態例では軸受収容部25、27の外周に装着されたOリング30、31を上ケース側支持片11aと下ケース側支持片12aによって上下から挟み込んでモータ20を支持しているが、モータ20の振動が直接ハウジング10に伝わらないようにモータを弾性的に支持できる構造であれば、モータ20の支持構造は特に限定されるものではない。
【0028】
また、上記実施形態例では第二面取部28eを45°の傾斜面として形成しているが、第二面取部28eと鍔部25bとの間に所定量のグリースを保持する空間が設けられていれば、第二面取部28eを例えば任意角度の傾斜面や湾曲面として形成することができる。
【0029】
また、上記実施形態例では含油軸受28の軸方向外端面28aを鍔部25bに接して配置しているが、グリース保持空間25dを大きくするため、含油軸受28の軸方向外端面28aと鍔部25bの間に若干の間隙を設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 モータアクチュエータ
10 ハウジング
11 上ケース
11a 上ケース側支持片
12 下ケース
12a 下ケース側支持片
20 モータ
21 回転軸
22 ウォーム
23 モータケース
24 モータケース本体
25 軸受収容部
25a 筒状部
25b 鍔部
25c 開口部
25d グリース保持空間
26 モータケース蓋
27 軸受収容部
28 含油軸受
28a 軸方向外端面
28b 外周面
28c 内周面
28d 第一面取部
28e 第二面取部
29 グリース
30 Oリング
31 Oリング
40 減速機構
41 ウォームホイール
42 中間ギア
43 出力ギア
d1 開口部の内径
d2 回転軸の外径
d3 第二面取部の外径
図1
図2