特許第6282947号(P6282947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282947
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】変速機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20180208BHJP
   F16H 61/34 20060101ALI20180208BHJP
   F16H 59/04 20060101ALI20180208BHJP
   F16H 61/682 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F16H61/12
   F16H61/34
   F16H59/04
   F16H61/682
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-138604(P2014-138604)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-17529(P2016-17529A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】592058315
【氏名又は名称】アイシン・エーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】平賀 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 剛枝
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−263140(JP,A)
【文献】 特開2004−011695(JP,A)
【文献】 特開昭62−278343(JP,A)
【文献】 特開平03−113164(JP,A)
【文献】 特開2002−195405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/36
F16H 61/66−61/70
F16H 63/00−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーク及びフォークヘッドをそれぞれに備え、前記フォークヘッドが並設され且つ互いに略平行に配置された複数のフォーク軸と、
前記複数のフォークヘッドに対応する複数のセレクト位置の間を移動するセレクト動作及び前記フォークヘッドを前記フォーク軸の軸線方向に移動するシフト動作が行えるインナレバーと、
前記インナレバーを前記シフト動作させるシフト機構と、
前記インナレバーを前記セレクト動作させるセレクト機構と、
前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記インナレバーを目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するときに前記インナレバーを前記目的のセレクト位置に移動させることができない異常状態を検知するセレクト監視手段と、
前記セレクト監視手段が前記セレクト機構の前記異常状態を検知したときに、前記シフト動作におけるニュートラル位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るニュートラル領域と前記セレクト動作における前記複数のセレクト位置のうちの最も近いセレクト位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るセレクト領域との双方に至るまで前記インナレバーを移動し、且つ、前記複数のセレクト位置のうち前記インナレバーが最も近いセレクト位置に向けて前記シフト機構及び前記セレクト機構を作動させるセレクト動作復帰手段と、
その後に前記目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて前記インナレバーを再度移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するセレクト動作リトライ手段とをもつ変速機。
【請求項2】
前記セレクト動作復帰手段は、前記シフト動作における前記インナレバーの移動可能位置を前記ニュートラル位置と前記セレクト位置間の複数の境界線とで分けられる複数の基準領域の何れに前記インナレバーが位置するかに応じて、前記インナレバーの移動方向を決める請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
フォーク及びフォークヘッドをそれぞれに備え、前記フォークヘッドが並設され且つ互いに略平行に配置された複数のフォーク軸と、
前記複数のフォークヘッドに対応する複数のセレクト位置の間を移動するセレクト動作及び前記フォークヘッドを前記フォーク軸の軸線方向に移動するシフト動作が行えるインナレバーと、
前記インナレバーを前記シフト動作させるシフト機構と、
前記インナレバーを前記セレクト動作させるセレクト機構と、
を有する変速機の制御方法であって、
前記インナレバーを目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するときに前記インナレバーを前記目的のセレクト位置に移動させることができない異常状態を検知するセレクト監視ステップと、
前記セレクト監視ステップにて前記セレクト機構の前記異常状態を検知したときに、前記シフト動作におけるニュートラル位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るニュートラル領域と前記セレクト動作における前記複数のセレクト位置のうちの最も近いセレクト位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るセレクト領域との双方に至るまで前記インナレバーを移動し、且つ、前記複数のセレクト位置のうち前記インナレバーが最も近いセレクト位置に向けて前記シフト機構及び前記セレクト機構を作動させるセレクト動作復帰ステップと、
その後に前記目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて前記インナレバーを再度移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するセレクト動作リトライステップとをもつ変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の変速機及びその制御方法に関し、特にシフト及びセレクト操作を自動的に行う変速機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変速機には、操作者のシフト操作及びセレクト操作に応じて複数のフォーク軸のうちいずれかが選択され、選択されたフォーク軸が軸線方向に移動することで、操作によって選択された変速段に変更されるシフト装置を用いた手動式変速機がある。近年、このような手動式変速機に類する変速機において、その操作を機械的に自動で行う構成の自動変速機がある(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−176894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで変速機の変速操作においてバリなどの要因により円滑にセレクト操作を行うことができない場合がある。酷い場合にはそのままセレクト操作が完了できずに走行不能になるおそれもあった。本明細書においてはバリなどの要因によりセレクト操作が円滑にできないことを「セレクトロック」と称する。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み完成したものでありセレクトロック発生時においても正常状態に円滑に復帰できる変速機及びその制御方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決する本発明の変速機は、フォーク及びフォークヘッドをそれぞれに備え、前記フォークヘッドが並設され且つ互いに略平行に配置された複数のフォーク軸と、
前記複数のフォークヘッドに対応する複数のセレクト位置の間を移動するセレクト動作及び前記フォークヘッドを前記フォーク軸の軸線方向に移動するシフト動作が行えるインナレバーと、
前記インナレバーを前記シフト動作させるシフト機構と、
前記インナレバーを前記セレクト動作させるセレクト機構と、
前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記インナレバーを目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するときに前記インナレバーを前記目的のセレクト位置に移動させることができない異常状態を検知するセレクト監視手段と、
前記セレクト監視手段が前記セレクト機構の前記異常状態を検知したときに、前記シフト動作におけるニュートラル位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るニュートラル領域と前記セレクト動作における前記複数のセレクト位置のうちの最も近いセレクト位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るセレクト領域との双方に至るまで前記インナレバーを移動し、且つ、前記複数のセレクト位置のうち前記インナレバーが最も近いセレクト位置に向けて前記シフト機構及び前記セレクト機構を作動させるセレクト動作復帰手段と、
その後に前記目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて前記インナレバーを再度移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するセレクト動作リトライ手段とをもつ。
【0007】
上述した(1)に記載の変速機は以下に記載する(2)の構成を採用することが出来る。
【0008】
(2)前記セレクト動作復帰手段は、前記シフト動作における前記インナレバーの移動可能位置を前記ニュートラル位置と前記セレクト位置間の複数の境界線とで分けられる複数の基準領域の何れに前記インナレバーが位置するかに応じて、前記インナレバーの移動方向を決める。
【0009】
(3)上記課題を解決する本発明の変速機の制御方法は、フォーク及びフォークヘッドをそれぞれに備え、前記フォークヘッドが並設され且つ互いに略平行に配置された複数のフォーク軸と、
前記複数のフォークヘッドに対応する複数のセレクト位置の間を移動するセレクト動作及び前記フォークヘッドを前記フォーク軸の軸線方向に移動するシフト動作が行えるインナレバーと、
前記インナレバーを前記シフト動作させるシフト機構と、
前記インナレバーを前記セレクト動作させるセレクト機構と、
を有する変速機の制御方法であって、
前記インナレバーを目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するときに前記インナレバーを前記目的のセレクト位置に移動させることができない異常状態を検知するセレクト監視ステップと、
前記セレクト監視ステップにて前記セレクト機構の前記異常状態を検知したときに、前記シフト動作におけるニュートラル位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るニュートラル領域と前記セレクト動作における前記複数のセレクト位置のうちの最も近いセレクト位置を含む所定の幅を持つ範囲で有るセレクト領域との双方に至るまで前記インナレバーを移動し、且つ、前記複数のセレクト位置のうち前記インナレバーが最も近いセレクト位置に向けて前記シフト機構及び前記セレクト機構を作動させるセレクト動作復帰ステップと、
その後に前記目的のシフト位置及びセレクト位置に向けて前記インナレバーを再度移動させるように前記シフト機構及び前記セレクト機構を制御するセレクト動作リトライステップとをもつ。
【発明の効果】
【0010】
上述の(1)に記載の変速機及び(3)に記載の制御方法は、セレクトロックが発生したときに、フォークヘッドを操作するインナレバーの位置がどこにあるかによって復帰の動作を決定している。そのため、セレクトロックが発生したときにインナレバーが動くことができる方向を探す動作を行うことなく、インナレバーの位置をニュートラル領域とセレクト領域との双方に至るまで移動させることで確実に速やかにセレクトロックを解消できる。
【0011】
(2)に記載の構成を採用する変速機は、インナレバーの移動可能位置をニュートラル位置とセレクト位置間の複数の境界線とで分けられる複数の基準領域の何れにインナレバーが位置するかに応じて、インナレバーの移動方向を決めるため、確実にセレクトロックを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の変速機の概略を示す模式図である。
図2】本実施形態の変速機において第2速に変速されたときのインナレバーの状態を説明する模式図である。
図3】本実施形態の変速機におけるインナレバーの移動について説明する模式図である。
図4】本実施形態の変速機における制御手段の動作を示すフローチャートである。
図5】本実施形態の変速機におけるインナレバーの移動について説明する模式図である。
図6】本実施形態の変速機におけるインナレバーの移動について説明する模式図である。
図7】本実施形態の変速機におけるインナレバーの位置とセレクト動作復帰手段が作動したときのインナレバーを動作させる方向との関連を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の変速機について以下実施形態に基づき詳細に説明する。本実施形態の変速機は車両に搭載されている。例えば内燃機関を利用する車両に搭載されている。
【0014】
(構成)
本実施形態の変速機は、図1に示すように、フォーク軸11〜13とシフト機構40とセレクト機構50とインナレバー30と制御手段60とをもつ。フォーク軸11〜13はそれぞれフォーク111、121、131とフォークヘッド21〜23とを持つ。フォーク軸11〜13は平行になるように並設されている。本実施形態の変速機は前進5段、後進1段の変速段を持つ。変速段の切り替え操作は機械的に行われる。変速段の選択は車両の状態(車速など)に応じて自動的に行っても良いし、搭乗者の操作により行われても良い。
【0015】
フォーク軸11は変速段のうちの第1速と第2速とのシフト位置の間を切り替えるものである。フォークヘッド21を21a側(図面上方向)に移動させることにより第1速に、21b側(図面下側)に移動させることで第2速に変速する。
【0016】
フォーク軸12は変速段のうちの第3速と第4速とのシフト位置の間を切り替えるものである。フォークヘッド22を22a側(図面上方向)に移動させることにより第3速に、22b側(図面下側)に移動させることで第4速に変速する。
【0017】
フォーク軸13は変速段のうちの第5速と後進段とのシフト位置の間を切り替えるものである。フォークヘッド23を23a側(図面上方向)に移動させることにより第5速に、23b側(図面下側)に移動させることで後進段に変速する。
【0018】
シフト機構40はインナレバー30をフォーク軸11〜13の軸線方向(シフト動作:図面上下方向)に移動させる機構で有り、インナレバー30の現在の位置も検知できる。セレクト機構50はインナレバー30をフォーク軸11〜13の軸線方向に垂直な方向(セレクト動作:フォーク軸11〜13が並設される方向:図面左右方向)に移動させる機構で有り、インナレバー30の現在の位置も検知できる。
【0019】
制御手段60はシフト機構40及びセレクト機構50からインナレバー30の位置を取得しながらインナレバー30の位置を目的の位置になるようにシフト機構40及びセレクト機構50を駆動する手段である。制御手段60はセレクト監視手段とセレクト動作復帰手段とセレクト動作リトライ手段とをもつ。セレクト監視手段はインナレバー30の位置が目的のセレクト位置に移動させることができない異常状態(セレクトロック状態)になったことを検知する手段である。セレクト動作復帰手段はセレクトロック状態を検知したときにインナレバー30を所定の方向に移動させてセレクトロック状態を解除する手段である。セレクト動作リトライ手段はセレクトロック状態を解除した後に再度セレクト動作を行う手段である。
【0020】
(作用効果)
以下に本実施形態の変速機の動作について説明する(図4)。制御手段は車両の状態や搭乗者の操作により適正な変速段を選択する(S1)。例えば車両の状態(車速、傾きなど)、搭乗者の操作(アクセル、ブレーキ、操舵輪、変速用のスイッチなど)、道路の状態により適正な変速段が選択できる。適正な変速段の選択を制御手段にて行う場合には適正な変速段を選択する適正なロジックである変速段選択手段により行う。選択された適正な変速段が現在の変速段と異なるときには変速段の切り替えを行う(S2)。
【0021】
変速段の切り替えはフォーク軸11〜13をインナレバー30により操作することで行う(S3)。例えば図1の状態から変速段として第2速を選択した状態にする場合には、図2に示すように、セレクト機構50にてインナレバー30の位置をフォーク軸11側に移動させた後にシフト機構40にてインナレバー30の位置をフォークヘッド21b側に移動させる。すると、フォーク軸11が第2速側(図面下方)に移動する。フォーク軸11にはフォーク111が固定されているため、フォーク111もフォーク軸11に連れて第2速側に移動し変速動作が完了する(S5)。
【0022】
この変速段の切り替え時におけるインナレバー30の位置の変化を図3において模式的に表す。図3における上下方向はインナレバー30がシフト機構40により操作される方向を表しており、左右方向はインナレバー30がセレクト機構50により操作される方向を表す。インナレバー30の位置がこの変速段(1)〜(5)及び(R)の位置に至ることにより対応する変速段に変速される。
【0023】
各変速段(1)〜(5)及び(R)の間の切り替えは以下のように行う。まずインナレバー30をシフト方向にニュートラル位置Nに向けて移動させる。その後、3つのセレクト位置S1〜S3のうち目指す変速段が存在するセレクト位置に向けてインナレバー30をセレクト機構50により移動させる。そして、目指す変速段の方向に向けてインナレバー30をシフト機構40により移動させる。例えば第2速から第3速に変速段を切り替えるときにはセレクト位置S1の下方にある第2速の位置(2)からニュートラル位置Nへとシフト機構40にて移動させた後、セレクト位置S2にまでセレクト機構50により移動させ、更にニュートラル位置Nから第3速の位置(3)にシフト機構40にて移動させる。
【0024】
その他の変速段の間の切り替えについても一旦シフト機構40によりニュートラル位置Nにした上でセレクト機構50により目指す変速段が存在するセレクト位置に移動させ、その後、シフト機構40により目的の変速段に向けて移動させるという一連の動作によりある変速段から目的の変速段に向けて変速段の切り替え動作が行われる。シフト動作とセレクト動作は1つの動作が完了後次の動作に移るように順次行っても良いし、セレクト動作をしながらシフト動作を行うように重複して行っても良い。
【0025】
次に何らかの原因によりセレクト動作が阻害されたときについて説明する。インナレバー30がセレクト動作によりフォークヘッド21〜23の間を移動するときに、インナレバー30とフォークヘッド21〜23とが何らかの原因により干渉する異常状態が発生することが想定される。そうするとそのままの動作を継続してもセレクト動作は完了できない(セレクトロック状態の発生)。
【0026】
セレクト監視手段(S4)はこのようなセレクト動作の異常状態の発生を検知する手段である。異常状態の発生の検知はセレクト機構50への電力供給状態の変動やセレクト機構50から取得できるインナレバー30の位置情報などから検知できる。例えばセレクト機構50への電力供給量に異常が発生したときに異常状態にあると判断したり、目的のセレクト位置にまで所定時間内に到達できないときに異常状態が発生したものと判断したりすることができる。異常状態が発生していないときにはそのまま変速動作(S5)を継続し、異常状態が発生しているときには以下の動作(S6、S7)を行う。
【0027】
セレクト動作復帰手段(ステップ)S6はシフト機構40によってインナレバー30をニュートラル位置Nに向けてシフト動作する。同時にセレクト機構50によりセレクト動作も行う。セレクト動作を行う方向は3つのセレクト位置S1〜S3のうち最も近いセレクト位置に向けて行う。ここでインナレバー30の位置はニュートラル位置Nに到達するか超えるまで移動し、且つ、最も近いセレクト位置に到達するか超えるまで移動する。
【0028】
この動作を図3、5,6を用いて説明する。第2速から第3速に向けてインナレバー30の位置を移動させる過程において図5におけるような位置L1にてセレクトロック状態が発生したときにはニュートラル位置Nは図面下方にあるためインナレバー30は下方に移動し、最も近いセレクト位置はセレクト位置S1で図面左方に存在するためインナレバー30は図面左方に移動する(両者を合わせて矢印F1の方向)。インナレバー30の位置は、ニュートラル位置Nを超え最も近いセレクト位置S1をも超える位置L2まで移動する。ここで、インナレバー30の位置はニュートラル位置N及び最も近いセレクト位置S1の双方を超えるまでセレクト動作復帰手段S6により移動しなくとも領域Mに至るまで移動したことでセレクト動作復帰手段S6を終了しても良い。この領域Mはニュートラル位置Nを含む所定の幅をもつシフト領域を含み、且つ、最も近いセレクト位置S1を含む所定の幅をもつセレクト位置領域を含む領域である。図6では楕円を領域Mとして設定している。
【0029】
その後、セレクト動作リトライ手段(ステップ)S7により当初目的としていた変速段である第3速に向けてインナレバー30の位置を移動させる(位置L3を経由して変速段(3)に向けて移動する:図6)。
【0030】
このセレクト動作復帰手段(ステップ)S6の動作を簡単に説明する。まず、セレクトロック状態が発生したときのインナレバー30の位置を考えると、図3における領域1〜4の何れかを対応させることができる。ここで、領域1〜4とはその領域にインナレバー30の位置があるときにセレクト動作復帰手段S6がどのように動くかの動作の種類が4つ有ることから4つの領域に分けている。例えばセレクトロック状態が発生したときのインナレバー30の位置が領域1にあるときには、図7に示すように、右上の方向に向けてインナレバー30を移動させる。同様に、領域2では左上、領域3では左下、領域4では右下に向けてインナレバー30を移動させる。これはそれぞれの領域におけるニュートラル位置Nの方向と、最も近いセレクト位置の方向とから一義的に導出される。このようにセレクトロック状態が発生したときのインナレバー30の位置がどの領域に存在するかによって最も確実にセレクトロック状態を解除できるであろうインナレバー30の動作方向を設定できる。この方向はインナレバー30の位置を基準としてニュートラル位置Nの方向と最も近いセレクト位置の方向とにより決定されている。
【0031】
最も近いセレクト位置は境界線Aを跨いで左右方向のどちら側にあるのか、また、境界線Bを跨いで左右方向のどちら側にあるのかにより決定できる。つまりインナレバー30の位置が境界線Aよりも左にあるときにはセレクト位置S1が、境界線Aよりも右で境界線Bよりも左であるときにはセレクト位置S2が、境界線Bよりも右にあるときにはセレクト位置S3が最も近いセレクト位置である。
【0032】
インナレバー30の位置が丁度境界線A、Bのいずれかに重なる場合には最も近いセレクト位置の候補は2つありどちらを選択しても良いが、それまでインナレバー30がセレクト機構50により動作させられていた方向とは逆の方向にあるセレクト位置を最も近いセレクト位置とすることが望ましい。例えば第2速から第3速への変速過程ではセレクト動作は図面左方から右方に向けて行われるため、境界線A上にインナレバー30の位置があるときには最も近いのはセレクト位置S1として図面左方側に向けてセレクト動作復帰手段S6を作動させることが望ましい。
【0033】
なお、本実施形態の変速機は上記形態に限定されることなく本発明の思想が実現できる範囲でその構成要素を変更することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
11〜13…フォーク軸 111,121、131…フォーク 21〜23…フォークヘッド 30…インナレバー 40…シフト機構 50…セレクト機構 60…制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7