(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インクタンクは、前記循環経路上における前記インクジェットヘッドの上流側に設けられ該インクジェットヘッドに供給するインクが一時貯留される上流タンクと、前記循環経路上における前記インクジェットヘッドの下流側に設けられ該インクジェットヘッドから回収した余剰のインクが一時貯留される下流タンクとを有しており、前記インク補給部によるインクの補給先は前記下流タンクであり、前記インク量検出部は、前記上流タンクのインク量の上流タンク下限貯留量への減少及び前記下流タンクのインク量の下流タンク下限貯留量への減少をそれぞれ検出し、前記第1条件は、前記上流タンク及び前記下流タンクのインク量の前記上流タンク下限貯留量及び前記下流タンク下限貯留量への減少であり、前記第2条件は、前記上流タンクのインク量の前記上流タンク下限貯留量への減少であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
前記切替条件は、前記温度検出部による検出温度が所定期間中に基準以上の温度上昇率で前記基準温度に上昇することで成立することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種のインクジェット記録装置では、例えば印字率の高い印刷が続く等してインクの温度が印刷可能範囲の上限温度に達すると、インクの温度を温度調整装置で適温まで冷却する「クールダウン」動作を、印刷動作を中断して割り込み実行する必要がある。このような「クールダウン」動作の実行は、印刷処理の効率を落とし印刷所要時間を長時間化させる原因となってしまう。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、インクの循環経路上のインクジェットヘッドに供給するインクの温度を温度調整装置に極力依存せずに適温にコントロールすることができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置は、
インクの循環経路上のインクジェットヘッドのノズルから吐出するインク液滴によって印刷用紙上に画像を形成するインクジェット記録装置において、
前記循環経路上のインク温度を検出する温度検出部と、
前記循環経路上を循環するインクが一時貯留されるインクタンクのインク量を検出するインク量検出部と、
前記インク量検出部による検出インク量が補給開始条件を成立させる量に減少すると、前記循環経路外から前記インクタンクへのインクの補給を開始するインク補給部と、
前記温度検出部による検出温度が基準温度に上昇して切替条件が成立すると、前記補給開始条件を第1条件から該第1条件よりも成立が容易な第2条件に切り替える補給開始条件切替部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載した本発明のインクジェット記録装置は、請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置において、前記インクタンクは、前記循環経路上における前記インクジェットヘッドの上流側に設けられ該インクジェットヘッドに供給するインクが一時貯留される上流タンクと、前記循環経路上における前記インクジェットヘッドの下流側に設けられ該インクジェットヘッドから回収した余剰のインクが一時貯留される下流タンクとを有しており、前記インク補給部によるインクの補給先は前記下流タンクであり、前記インク量検出部は、前記上流タンクのインク量の上流タンク下限貯留量への減少及び前記下流タンクのインク量の下流タンク下限貯留量への減少をそれぞれ検出し、前記第1条件は、前記上流タンク及び前記下流タンクのインク量の前記上流タンク下限貯留量及び前記下流タンク下限貯留量への減少であり、前記第2条件は、前記上流タンクのインク量の前記上流タンク下限貯留量への減少であることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に記載した本発明のインクジェット記録装置は、請求項1又は2に記載した本発明のインクジェット記録装置において、前記切替条件は、前記温度検出部による検出温度が所定期間中に基準以上の温度上昇率で前記基準温度に上昇することで成立することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクの循環経路上のインクジェットヘッドに供給するインクの温度を温度調整装置に極力依存せずに適温にコントロールすることができる。
【0014】
即ち、請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置によれば、循環経路上のインク温度が基準温度に上昇して切替条件が成立すると、インク補給部による循環経路外からインクタンクへのインクの補給が、第1条件よりも成立が容易な第2条件の成立によって開始されるようになる。
【0015】
インクタンクへのインクの補給が開始されると、循環経路内のインクよりも低温のインクが外部から循環経路に流入することになる。また、循環経路上のインク循環量が増加し、循環経路上で自身よりも低温の部分と接触するインク量が増えて、それによるインクの冷却効果が促進されるようになる。したがって、循環経路上のインクジェットヘッドに供給するインクの温度を温度調整装置による冷却に極力依存せずに適温にコントロールすることができる。
【0016】
また、請求項2に記載した本発明のインクジェット記録装置によれば、請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置において、循環経路上のインク温度が上昇して切替条件が成立すると、上流タンク及び下流タンクのインク量が上流タンク下限貯留量及び下流タンク下限貯留量までそれぞれ減少しなくても、上流タンクのインク量が上流タンク下限貯留量まで減少すれば、インク補給部による循環経路外からインクタンクへのインクの補給が開始されるようになる。
【0017】
このため、循環経路のインク温度が上昇した場合は、インクジェットヘッドに供給するインクが貯留される上流タンクのインク量が下限貯留量を割り込まないようにして、上流タンクからインクジェットヘッドに供給されるインクが加熱により温度上昇しやすい状況の発生を抑制することができる。
【0018】
さらに、請求項3に記載した本発明のインクジェット記録装置によれば、請求項1又は2に記載した本発明のインクジェット記録装置において、温度検出部による検出温度が基準温度に上昇したときの所定期間中における温度上昇率が基準未満であれば、循環経路のインク温度の上昇ペースが鈍いことになる。この場合は、循環経路のインク温度がさらに上昇を続けても、「クールダウン」動作が開始される温度に上昇するまでには相応の時間がかかり、あるいは、その温度に達する前に温度上昇が終わる可能性がある。
【0019】
そこで、この場合は切替条件を第1条件から第2条件に切り替えないようにして、基準温度を超えて「クールダウン」動作が開始される温度に近づくまでインク温度が上昇していないにもかかわらず、インクの補給が容易に行われる状態に移行されてしまうのを、防ぐことができる。
【0020】
なお、請求項1又は2に記載した本発明のインクジェット記録装置において、循環経路外からインクタンクへのインクの補給を開始する補給開始条件を成立が容易な第2条件に切り替える切替条件は、前記温度検出部による検出温度が前記基準温度以上である状態が所定期間連続することで成立するものとすることができる。
【0021】
この場合は、インク温度が一時的に基準温度以上に上昇しただけでは切替条件が第1条件から第2条件に切り替えられないようにして、「クールダウン」動作が開始される温度に達する前に温度上昇が終わる可能性が大きいにもかかわらず、インクの補給が容易に行われる状態に移行されてしまうのを、防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す説明図である。
図1に示す本実施形態のインクジェット記録装置1は、上流タンク3からインクジェットヘッド5を経て下流タンク7に至るインク流路9と、下流タンク7から循環ポンプ11を経て上流タンク3に至るインク流路13とにより構成される、インク循環経路15を有している。
【0024】
前記上流タンク3には、内部のインク液面の上限値と下限値とをそれぞれ検出する2つの液面センサ31,33が設けられている。このうち、液面センサ33で検出される下限値が、請求項中の上流タンク下限貯留量に相当する。
【0025】
なお、第1実施形態の以下の説明において、上流タンク3のインクが上限値まで増えたことを液面センサ31が検出することを、「液面センサ31がオンになる」と称し、上流タンク3のインクが下限値まで減ったことを液面センサ33が検出することを、「液面センサ33がオフになる」と称することがある。
【0026】
前記インクジェットヘッド5は、印刷する画像に応じたパターンでインク液滴を吐出するノズル(図示せず)が設けられたブロックを複数有しており、上流タンク3よりもインク循環経路15(インク流路9)における下流側に配置されている。インクジェットヘッド5の各ノズルには、上流タンク3のインク液面とノズルのインクメニスカスとの水頭差に応じた圧力で、インク流路9を介して上流タンク3からインクが供給される。インクジェットヘッド5には、インクジェットヘッド5に供給されたインクの温度を検出する温度センサ51(請求項中の温度検出部に相当)が設けられている。
【0027】
前記下流タンク7は、インクジェットヘッド5よりもインク循環経路15(インク流路9)における下流側に配置されており、インクジェットヘッド5から余剰のインクが自重により回収される。下流タンク7には圧力調整器71が接続されている。この圧力調整器71は、例えばベローズで構成され、必要に応じて下流タンク7の内部に負圧をかけるように構成されている。
【0028】
さらに、下流タンク7には、内部のインク液面の上限値と下限値とをそれぞれ検出する液面センサ73,75が設けられている。このうち、液面センサ75で検出される下限値が、請求項中の下流タンク下限貯留量に相当する。
【0029】
なお、第1実施形態の以下の説明において、下流タンク7のインクが上限値まで増えたことを液面センサ73が検出することを、「液面センサ73がオンになる」と称し、下流タンク7のインクが下限値まで減ったことを液面センサ75が検出することを、「液面センサ75がオフになる」と称することがある。
【0030】
前記循環ポンプ11は、下流タンク7のインクをインク流路13を介して上流タンク3に還流させる。このインク流路13の途中には温度調整器25(請求項中の温度調整部に相当)が設けられている。この温度調整器25は、循環ポンプ11により下流タンク7から上流タンク3に還流されるインクの温度を、インクジェットヘッド5においてインク液滴がノズルから適切な吐出速度で吐出される適正温度に調節するものである。そのために温度調整器25は、加熱用のヒータ251と冷却用のファン253及びヒートシンクを有している。
【0031】
なお、上述した温度調整器25の代わりに、あるいは、温度調整器25とは別に、同様の構成の温度調整器を前記インク流路9の途中に設けてもよい。
【0032】
上述した本実施形態のインクジェット記録装置1では、印刷ジョブの発生を待つ待機中には、インク循環経路15におけるインクの循環が停止され、印刷ジョブが発生した場合には、インク循環経路15におけるインクの循環が行われる。そして、これらの各動作中にインクジェットヘッド5のインクメニスカスに適正な負圧がかかるように、下流タンク7の圧力調整器71が作動される。
【0033】
ところで、上述した構成のインクジェットプリンタ1において印刷ジョブ待ちの待機中が続くと、インク循環経路15中のインクの温度が適正温度(例えば、27℃〜45℃)の下限よりも低下する。インクジェットヘッド5に供給されるインクの温度が下がるとインクの粘度が上がり、適正温度以下のインクのレベルまで粘度が上がると、インクジェットヘッド5のノズルを通常の制御で駆動しても適切な吐出速度でインク液滴を吐出させることが困難になってしまう。
【0034】
そこで、次に印刷ジョブが発生してインク循環経路15におけるインクの循環が再開された場合に、インクジェットヘッド5の温度センサ51で検出されるインクの温度が適正温度よりも低いと、インクジェット記録装置1がウォームアップ動作に入る。
【0035】
このウォームアップ動作では、インク循環経路15を流れるインクが温度調整器25のヒータ251によって適正温度の範囲内に加熱される。インクが適正温度に加熱されると、ウォームアップ動作を終えてインクジェット記録装置1は印刷動作に入り、インクジェットヘッド5のノズルからインク液滴を吐出して印刷ジョブによる印字を行う。
【0036】
また、インクジェット記録装置1において、例えば、印字率の高い画像の印刷が長く続くと、インク循環経路15中のインクの温度が適正温度の上限よりも上昇する。インクジェットヘッド5に供給されるインクの温度が上がるとインクの粘度が下がり、適正温度以上のインクのレベルまで粘度が下がると、インクジェットヘッド5のノズルを通常の制御で駆動しても適切な吐出速度でインク液滴を吐出させることが困難になってしまう。
【0037】
そのため、インクジェットヘッド5の温度センサ51が検出するインクの温度が適正温度の上限である温度調整開始温度(例えば、45℃)に上昇すると、インクジェットヘッド5からのインク液滴の吐出を印刷途中であっても中断して、クールダウン動作に入る。このクールダウン動作では、循環ポンプ11によりインク循環経路15にインクを循環させながら、温度調整器25のファン253及びヒートシンクを用いてインクを冷却する。
【0038】
このクールダウン動作は、温度センサ51が検出するインクの温度が適正温度の範囲内の温度調整終了温度(例えば、43℃)に低下すると終了する。印刷途中でクールダウン動作に入った場合は、クールダウン動作の終了後に印刷が再開される。
【0039】
上述したインク循環経路15には、インクの消費に伴いインクが補給される。本実施形態では、補給用インク流路19と開閉弁21とを介して補給用インクタンク23に接続された下流タンク7にインクが補給される。開閉弁21は、上流タンク3の液面センサ31,33や下流タンク7の液面センサ73,75のオンオフ状態に応じて開閉され、開閉弁21の開弁中に下流タンク7にインクが補給される。なお、補給用インクタンク23のインクの補給先は、上流タンク3であってもよい。
【0040】
開閉弁21は、開閉弁21を開弁させる条件(請求項中の補給開始条件に相当)の切替条件が成立していない通常時には、上流タンク3の液面センサ33と下流タンク7の液面センサ75とが共にオフになると開弁される(通常時の開弁条件、請求項中の第1条件に相当)。その後、上流タンク3の液面センサ31と下流タンク7の液面センサ73とのどちらかがオンになると、開閉弁21が閉弁される(通常時の閉弁条件)。
【0041】
また、上述した切替条件が成立している切替時には、開閉弁21は、上流タンク3の液面センサ33がオフになると、下流タンク7の液面センサ75がオフでなくても開弁される(切替時の開弁条件、請求項中の第2条件に相当)。その後、上流タンク3の液面センサ31がオンになると、下流タンク7の液面センサ73,75のオンオフ状態に関係なく開閉弁21が閉弁される(切替時の閉弁条件)。
【0042】
ここで、切替条件は、例えば、インクジェットヘッド5の温度センサ51が検出するインクの温度が、クールダウン動作に入る温度調整開始温度(例えば、45℃)よりも低い切替温度(例えば、40℃、請求項中の基準温度に相当)に上昇することで、成立するものとすることができる。あるいは、切替条件は、温度センサ51の検出するインク温度が切替温度以上である状態が所定期間連続した場合に、成立するものとすることができる。
【0043】
なお、所定期間を時間で定義する場合は、温度センサ51の検出温度の所定期間中における温度上昇率は、例えば、
図2(a)の温度上昇例1や温度上昇例2に示すように、温度センサ51の検出温度が印刷の実行に伴い切替温度に上昇した場合の、直前の所定期間における温度センサ51の検出温度の推移から求めることができる。
【0044】
また、所定期間を、温度センサ51の検出温度が一定度数上昇する期間で定義する場合は、例えば、
図2(b)に示すように、温度センサ51の検出温度が印刷の実行に伴い切替温度(例えば、40℃)よりも若干低い切替判定開始温度(例えば、39℃)に上昇した場合に、そこから切替温度まで温度センサ51の検出温度がさらに上昇するのに要した時間を測定し、測定した時間から求めることができる。
【0045】
ちなみに、
図2(a),(b)に示す適正温度の下限未満の温度から下限の温度まで温度センサ51の検出温度が上昇する部分は、上述したウォームアップ動作によって適正温度の下限までインクが加熱されて温度センサ51の検出温度が上昇したものである。このため、温度センサ51の検出温度が適正温度の下限以下である場合、その検出温度は、開閉弁21を開弁させる条件の切替条件の成立判定には用いない。
【0046】
さらに、切替条件は、(1)温度センサ51の検出するインク温度が切替温度(基準温度)に上昇してから所定期間内に、温度センサ51の検出するインク温度の温度上昇率が基準以上となると、成立するものとすることができる。この場合の切替温度は、(2)温度センサ51の検出するインク温度が所定期間中に基準以上の温度上昇率で切替温度に上昇することを切替条件の成立条件とする場合の切替温度と同じでも異なってもよい。
【0047】
次に、インクジェット記録装置1の電気的構成について、
図3を参照して説明する。本実施形態のインクジェット記録装置1は、全体制御用の制御ユニット29を有している。この制御ユニット29は、ROM29cに格納されたプログラムをCPU29aがRAM29bの作業領域を使用しながら実行することで、各種の制御処理を行う。
【0048】
前記制御ユニット29には、インクジェットヘッド5の温度センサ51、上流タンク3及び下流タンク7の各液面センサ31,33,73,75、圧力調整器71、循環ポンプ11、温度調整器25のヒータ251及びファン253、並びに、開閉弁21が接続されている。
【0049】
次に、制御ユニット29のCPU29aが実行するインク補給動作に関連する処理の概要を、
図4のフローチャートにより説明する。CPU29aは、
図4のフローチャートに示す一連の処理を、周期的に繰り返し実行する。
【0050】
そして、CPU29aは、まず、インクジェットヘッド5の温度センサの検出温度を読み込み(ステップS1)、開閉弁21を開弁させる条件の切替条件が成立しているか否かを確認する(ステップS3)。
【0051】
切替条件が成立していない場合は(ステップS3でNO)、開閉弁21を開弁させる条件を通常時の開弁条件に設定した後(ステップS5)、後述するステップS9に移行し、切替条件が成立している場合は(ステップS3でYES)、開閉弁21を開弁させる条件を切替時の開弁条件に設定した後(ステップS7)、ステップS9に移行する。
【0052】
ステップS9では、上流タンク3や下流タンク7の液面センサ31,33,73,75の検出状態を読み込み、開閉弁21の開弁条件が成立しているか否かを確認する(ステップS11)。開弁条件が成立していない場合は(ステップS11でNO)、一連の処理を終了し、開弁条件が成立している場合は(ステップS11でYES)、開閉弁21を開弁させて(ステップS13)、閉弁条件が成立したか否かを確認する(ステップS15)。
【0053】
閉弁条件が成立していない場合は(ステップS15でNO)、成立するまでステップS15をリピートし、閉弁条件が成立した場合は(ステップS15でYES)、開閉弁21を閉弁させて(ステップS17)、一連の処理を終了する。
【0054】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図4のフローチャートにおけるステップS11及びステップS13が、請求項中のインク補給部に対応する処理となっている。したがって、本実施形態では、補給用インク流路19、開閉弁21、補給用インクタンク23、及び、制御ユニット29によって、請求項中のインク補給部が構成されている。
【0055】
また、本実施形態では、
図4中のステップS3及びステップS7が、請求項中の補給開始条件切替部に対応する処理となっている。したがって、本実施形態では、制御ユニット29が請求項中の補給開始条件切替部を構成している。
【0056】
なお、開閉弁21の開弁により下流タンク7に補給用インクタンク23からインクが補給される間、CPU29aは、上流タンク3や下流タンク7の液面センサ31,33,73,75の検出状態に応じて、下流タンク7から上流タンク3にインクを循環ポンプ11により環流させる。
【0057】
ここで、上流タンク3及び下流タンク7の液面センサ31,33,73,75が検出するインク液面の状態に応じた制御ユニット29による開閉弁21の開閉及び循環ポンプ11のオンオフの制御内容の一例を、
図5を参照して説明する。
【0058】
まず、開閉弁21の開弁条件の切替条件が成立していない通常時については、
図5(a)に示すように、上流タンク3の液面センサ31と下流タンク7の液面センサ73とが共にオンである状態(1)では、開閉弁21が閉弁(CLOSE)されると共に、循環ポンプ11がオフ(停止)される。
【0059】
また、通常時において、上流タンク3の液面センサ33がオフで下流タンク7の液面センサ73がオンである状態(2)では、開閉弁21が閉弁(CLOSE)されると共に、循環ポンプ11がオン(駆動)される。
【0060】
さらに、通常時において、上流タンク3の液面センサ31がオンで下流タンク7の液面センサ75がオフである状態(3)では、開閉弁21が閉弁(CLOSE)されると共に、循環ポンプ11がオフ(停止)される。また、上流タンク3の液面センサ33と下流タンク7の液面センサ75とが共にオフである状態(4)では、開閉弁21が開弁(OPEN)されると共に、循環ポンプ11がオフ(停止)される。
【0061】
したがって、通常時には、上流タンク3及び下流タンク7のインクが両方とも下限値まで減って状態(4)に至ると、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が開始される。そして、下流タンク7のインクが上限値まで増えて状態(2)に至ると、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が停止され、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が開始される。
【0062】
そして、インクの環流により上流タンク3のインクが上限値まで増えると、そのときに下流タンク7のインクが下限値まで減少して状態(3)に至っていても、下限値まで減少せず状態(1)に至っていても、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が停止される。このとき、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給は停止されたままである。
【0063】
その後、印刷に伴うインクジェットヘッド5によるインクの消費で上流タンク3のインクが下限値まで減少して状態(2)に至ると、再び、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が開始される。また、インクの環流により下流タンク7のインクの液面が下限値まで低下し、さらに、印刷に伴うインクの消費で上流タンク3のインクも下限値まで減少して状態(4)に至ると、再び、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が開始される。
【0064】
つまり、インクジェットヘッド5の温度センサ51が検出するインクの温度が、切替温度(例えば、40℃)に上昇しない限り、あるいは、所定期間中に基準以上の温度上昇率で温度センサ51の検出温度が切替温度に上昇しない限り、インク循環経路15上のインクは、上流タンク3のインクと下流タンク7のインクとが両方とも下限値に減るまで補給されない。
【0065】
これに対し、開閉弁21の開弁条件の切替条件が成立している切替時については、
図5(b)に示すように、上流タンク3の液面センサ31と下流タンク7の液面センサ73とが共にオンである状態(5)では、開閉弁21が閉弁(CLOSE)されると共に、循環ポンプ11がオン(駆動)される。
【0066】
また、切替時において、上流タンク3の液面センサ33がオフで下流タンク7の液面センサ73がオンである状態(6)では、開閉弁21が開弁(OPEN)されると共に、循環ポンプ11がオン(駆動)される。
【0067】
さらに、切替時において、上流タンク3の液面センサ31がオンで下流タンク7の液面センサ75がオフである状態(7)では、開閉弁21が閉弁(CLOSE)されると共に、循環ポンプ11がオフ(停止)される。また、上流タンク3の液面センサ33と下流タンク7の液面センサ75とが共にオフである状態(8)では、開閉弁21が開弁(OPEN)されると共に、循環ポンプ11がオフ(停止)される。
【0068】
したがって、切替時には、上流タンク3のインクが下限値まで減ると、下流タンク7のインクが下限値まで減っておらず状態(6)に至っても、下流タンク7のインクが下限値まで減って状態(8)に至っても、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が開始される。そして、下流タンク7のインクが下限値まで減った状態(8)からインクの補給が開始されると、やがて、下流タンク7のインクが上限値まで増えて状態(6)に至る。
【0069】
上流タンク3のインクが下限値にある状態で下流タンク7のインクが上限値まで増えて状態(6)に至ると、インクの補給を継続したまま、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が開始される。
【0070】
やがて、インクの環流により上流タンク3のインクが上限値まで増えると、そのときに下流タンク7のインクが下限値まで減少して状態(7)に至っていても、下限値まで減少せず状態(5)に至っていても、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が停止される。
【0071】
このとき、下流タンク7のインクが下限値まで減少して状態(7)に至っていれば、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流は停止される。一方、下流タンク7のインクが下限値まで減少しておらず状態(5)に至っていれば、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流は継続される。
【0072】
つまり、インクジェットヘッド5の温度センサ51が検出するインクの温度が、切替温度(例えば、40℃)に上昇するか、あるいは、所定期間中に基準以上の温度上昇率で温度センサ51の検出温度が切替温度に上昇すると、インク循環経路15上のインクは、上流タンク3のインクが下限値に減るだけで補給されて増加する。
【0073】
このため、クールダウン動作に入る温度調整開始温度(例えば、45℃)よりも少し低い切替温度(例えば、40℃にインク温度が上昇すると、インク循環経路15にインクを補給する条件が緩くなり、インク循環経路15上のインク循環量が容易に補給されて増加されるようになる。
【0074】
そして、インク循環量の増加により、インク循環経路15上の例えばインク流路9,11において自身よりも低温の部分と接触するインク量が増えて、それによるインクの放熱効率が増し、インクの冷却効果が促進されるようになる。したがって、上流タンク3からインクジェットヘッド5に供給するインクの温度を温度調整器25のファン253等による冷却に極力依存せずに、インクの温度を適正温度内にコントロールすることができる。
【0075】
これにより、温度調調整器25によりインクを冷却するクールダウン動作が印刷を中断して実行されることを極力回避し、インク循環経路15のインク温度を適正温度にコントロールできるようにして、印刷の中断による印刷処理の効率低下や印刷所要時間の長時間化を抑制することができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す説明図である。なお、
図6中では、インク流路13の途中に設けた温度調整器25の図示を省略している。そして、
図6に示す本実施形態のインクジェット記録装置1Aは、上流タンク3及び下流タンク7をインクジェットヘッド5よりも下方に並べて配置している。
【0077】
各タンク3,7には1つずつ液面センサ34,76が設けられており、各液面センサ34,76は、各タンク3,7に貯留されたインクの液面を基準位置(請求項中の上流タンク下限貯留量及び下流タンク下限貯留量に相当)において検出する。各液面センサ34,76の出力は、対応する各タンク3,7のインクが下限値まで減ってインク液面が基準位置を割り込むと「オン」から「オフ」になり、対応する各タンク3,7のインクが下限値よりも増えてインク液面が基準位置以上に上がると「オフ」から「オン」になる。
【0078】
本実施形態では、下流タンク7の内部に負圧をかけるために、第1実施形態の圧力調整器71に代えてエアポンプ77がエア配管27を介して接続されている。エア配管27には、エアポンプ77と並列に大気開放弁79が接続されている。大気開放弁79は、エアポンプ77により下流タンク7の内部に負圧をかける際には閉弁され、下流タンク7の内部を負圧から大気圧に戻す際には開弁される。
【0079】
また、本実施形態では、上流タンク3をインクジェットヘッド5の下方に配置していることから、第1実施形態のインクジェット記録装置1のように、上流タンク3のインクをその液面とノズルのインクメニスカスとの水頭差による圧力でインクジェットヘッド5にインクを供給することができない。
【0080】
そこで、本実施形態では、上流タンク3の内部に圧力を加えるために、エアポンプ35がエア配管28を介して接続されている。エア配管28には、エアポンプ35と並列に大気開放弁37が接続されている。大気開放弁37は、エアポンプ35により上流タンク3の内部に圧力を加える際には閉弁され、上流タンク3の内部を加圧された状態から大気圧に戻す際には開弁される。
【0081】
上述した本実施形態のインクジェット記録装置1Aでも、インクジェットヘッド5の温度センサ51が検出するインクの温度が適正温度の上限である温度調整開始温度(例えば、45℃)に上昇すると、インクジェットヘッド5からのインク液滴の吐出を印刷途中であっても中断して、クールダウン動作に入る。
【0082】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1Aでは、開閉弁21を開弁させる条件(請求項中の補給開始条件に相当)の切替条件が成立していない通常時には、上流タンク3の液面センサ34と下流タンク7の液面センサ76とが共にオフになると開弁される(通常時の開弁条件、請求項中の第1条件に相当)。その後、上流タンク3の液面センサ34と下流タンク7の液面センサ76とのどちらかがオンになると、開閉弁21が閉弁される(通常時の閉弁条件)。
【0083】
また、上述した切替条件が成立している切替時には、開閉弁21は、上流タンク3の液面センサ34がオフになると、下流タンク7の液面センサ76がオフでなくても開弁される(切替時の開弁条件、請求項中の第2条件に相当)。その後、上流タンク3の液面センサ34がオンになると、下流タンク7の液面センサ76のオンオフ状態に関係なく開閉弁21が閉弁される(切替時の閉弁条件)。
【0084】
なお、開閉弁21の開弁条件を切り替える際の切替条件は、第1実施形態において説明したのと同じである。
【0085】
本実施形態の制御ユニット29には、
図7のブロック図に示すように、インクジェットヘッド5の温度センサ51、上流タンク3及び下流タンク7の各液面センサ34,76や各エアポンプ35,77、各大気開放弁37,79の他、循環ポンプ11、温度調整器25のヒータ251及びファン253、並びに、開閉弁21が接続されている。
【0086】
そして、本実施形態の制御ユニット29のCPU29aが実行するインク補給動作に関連する処理の概要は、ステップS9で読み込むのが上流タンク3や下流タンク7の液面センサ34,76の検出状態である点を除いて、
図4のフローチャートに示す第1実施形態の処理の内容と同じである。
【0087】
本実施形態の制御ユニット29による、上流タンク3及び下流タンク7の液面センサ34,76が検出するインク液面の状態に応じた開閉弁21の開閉及び循環ポンプ11のオンオフの制御内容は、例えば、
図8に示すような内容である。
【0088】
詳しくは、開閉弁21の開弁条件の切替条件が成立していない通常時は、
図8(a)の状態(11)〜(14)に示すような制御内容となり、開閉弁21の開弁条件の切替条件が成立している切替時は、
図8(b)の状態(15)〜(18)に示すような制御内容となる。
【0089】
図5と
図8とを比較するとわかるように、通常時と切替時のどちらも、第1実施形態においては、上流タンク3の液面センサ31のオン及び液面センサ33のオフと、下流タンク7の液面センサ73のオン及び液面センサ75のオフとに基づいて制御内容を決定していた。これに対し、本実施形態では、上流タンク3の液面センサ34のオン及びオフと、下流タンク7の液面センサ76のオン及びオフとに基づいて制御内容を決定する。
【0090】
したがって、通常時には、上流タンク3及び下流タンク7のインクが両方とも下限値まで減って状態(14)に至ると、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が開始される。そして、下流タンク7のインクが下限値よりも増えて状態(12)に至ると、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が停止され、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が開始される。
【0091】
そして、インクの環流により上流タンク3のインクが下限値よりも増えると、そのときに下流タンク7のインクが下限値まで減少して状態(13)に至っていても、下限値まで減少せず状態(11)に至っていても、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が停止される。このとき、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給は停止されたままである。
【0092】
その後、印刷に伴うインクジェットヘッド5によるインクの消費で上流タンク3のインクが下限値まで減少して状態(12)に至ると、再び、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が開始される。また、インクの環流により下流タンク7のインクの液面が下限値まで低下し、さらに、印刷に伴うインクの消費で上流タンク3のインクも下限値まで減少して状態(14)に至ると、再び、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が開始される。
【0093】
つまり、インクジェットヘッド5の温度センサ51が検出するインクの温度が、切替温度(例えば、40℃)に上昇しない限り、あるいは、所定期間中に基準以上の温度上昇率で温度センサ51の検出温度が切替温度に上昇しない限り、インク循環経路15上のインクは、上流タンク3のインクと下流タンク7のインクとが両方とも下限値に減るまで補給されない。
【0094】
これに対し、切替時には、上流タンク3のインクが下限値まで減ると、下流タンク7のインクが下限値まで減っておらず状態(16)に至っても、下流タンク7のインクが下限値まで減って状態(18)に至っても、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が開始される。そして、下流タンク7のインクが下限値まで減った状態(18)からインクの補給が開始されると、やがて、下流タンク7のインクが下限値よりも増えて状態(16)に至る。
【0095】
上流タンク3のインクが下限値にある状態で下流タンク7のインクが下限値よりも増えて状態(16)に至ると、インクの補給を継続したまま、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流が開始される。
【0096】
やがて、インクの環流により上流タンク3のインクが下限値よりも増えると、そのときに下流タンク7のインクが下限値まで減少して状態(17)に至っていても、下限値まで減少せず状態(15)に至っていても、補給用インクタンク23から下流タンク7へのインクの補給が停止される。
【0097】
このとき、下流タンク7のインクが下限値まで減少して状態(17)に至っていれば、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流は停止される。一方、下流タンク7のインクが下限値まで減少しておらず状態(15)に至っていれば、下流タンク7から上流タンク3へのインクの環流は継続される。
【0098】
つまり、インクジェットヘッド5の温度センサ51が検出するインクの温度が、切替温度(例えば、40℃)に上昇するか、あるいは、所定期間中に基準以上の温度上昇率で温度センサ51の検出温度が切替温度に上昇すると、インク循環経路15上のインクは、上流タンク3のインクが下限値に減るだけで補給されて増加する。
【0099】
このように構成された本実施形態のインクジェット記録装置1Aでも、第1実施形態のインクジェット記録装置1と同様の効果を得ることができる。
【0100】
なお、上流タンク3や下流タンク7の液面センサを基準位置のインク液面を検出する1つずつの液面センサ34,76とする構成は、第1実施形態のインクジェット記録装置1にも適用可能である。その場合、第1実施形態の制御ユニット29が行う開閉弁21の開閉及び循環ポンプ11のオンオフの制御は、
図8に示すような内容となる。
【0101】
反対に、第1実施形態のインクジェット記録装置1のように、上流タンク3や下流タンク7の液面センサをインクの上限値及び下限値をそれぞれ検出する液面センサ31,33,73,75とする構成は、第2実施形態のインクジェット記録装置1Aにも適用可能である。その場合、第2実施形態の制御ユニット29が行う開閉弁21の開閉及び循環ポンプ11のオンオフの制御は、
図5に示すような内容となる。
【0102】
また、本発明は、水性インクや溶剤インク、エマルションインク等の液体インクを用いるインクジェット記録装置に広く適用可能である。また、本発明は、カラープリンタとモノクロプリンタのどちらにも適用可能である。