特許第6282956号(P6282956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6282956ツイストケーブル製造装置及びツイストケーブル製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6282956
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ツイストケーブル製造装置及びツイストケーブル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/02 20060101AFI20180208BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20180208BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   H01B13/02 Z
   H01B13/00 551Z
   H01B13/012 A
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-159379(P2014-159379)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-38938(P2016-38938A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228257
【氏名又は名称】日本オートマチックマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 和則
(72)【発明者】
【氏名】國田 昌貴
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5400981(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/158527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/02
H01B 13/00
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する複数本の電線を送給する電線送給手段(100)と、
該電線のトップ部に処理を施すトップ端処理手段(210)と、
処理された前記トップ部を引き出すトップ引き出し手段(1300)と、
前記電線を任意の長さに切断する電線切断手段(230)と、
切断された前記電線のテール部に処理を施すテール端処理手段(260)と、
両端が処理された前記並列する複数本の電線を撚り合わせる下記A〜Dを有する電線撚り合わせ装置(1400)と、
A)前記複数本の電線のトップ部を把持するトップクランプ(1410)、
B)該複数本の電線のテール部を把持するテールクランプ(1410)、
C)前トップクランプ及び/又は前記テールクランプを回転させる回転手段(1400A・1400B)、及び、
D)前記トップクランプと前記テールクランプの相互間隔及び前記複数本の電線に付
加する張力を調整するクランプ間隔・張力調整機構(1510)、
前記複数本の電線のトップ部を、前記トップ引き出し手段(1300)から受け取って前記電線撚り合わせ装置のトップクランプ(1410)に渡すトップ受け渡し手段(2600)と、
前記複数本の電線のテール部を、前記テール端処理手段(260)から受け取って前記電線撚り合わせ装置のテールクランプ(1410)に渡すテール受け渡し手段(1700)と、
を具備するツイストケーブル製造装置であって、
前記トップ受け渡し手段(2600)が、前記トップ引き出し手段(1300)と前記電線撚り合わせ装置(1400)との間に配置されており、
前記トップ引き出し手段(1300)によって引き出された電線トップ部の位置まで、前記トップ受け渡し手段(2600)の電線クランプ(受け渡しクランプ(2610))が、前記電線の長手方向に交差する方向(−Y方向)に直線運動して張り出して前記電線を受け取り、
前記電線撚り合わせ装置(1400)の前記トップクランプ(1410)の位置まで、前記受け渡しクランプ(2610)が前記−Y方向の反対方向(+Y方向)に直線運動して張り出して前記電線を渡すものであり、
前記トップ受け渡し手段(2600)が、
前記受け渡しクランプを−Y方向及び+Y方向に張り出し移動させる張り出し移動機構(2710)と、
前記張り出し移動機構をY方向に移動させる主移動機構(2790)と、
を備え
前記張り出し移動機構(2710)が回動中心(GC)を有しており、該回動中心(GC)が、前記主移動機構(2790)によりY方向に移動されるものであり、
前記受け渡しクランプ(2610)のY方向移動ストロークが、前記主移動機構(2790)のY方向移動ストロークに、前記張り出し移動機構(2710)の−Y方向及び+Y方向の張り出し移動量ストロークを加えたものであることを特徴とするツイストケーブル製造装置。
【請求項2】
前記張り出し移動機構(2710)が、前記主移動機構(2790)のアクチュエータ(1627)により駆動されることを特徴とする請求項1記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項3】
前記張り出し移動機構(2710)として、
前記受け渡しクランプ(2610)をY方向に案内する上下一対のY方向リニアガイド(2630)と、
前記受け渡しクランプ(2610)に回動自在に連結された上下一対のガイドヘッド(2712)と、
該ガイドヘッド(2712)に連結された上下一対のガイドロッド(2711)と、
該ガイドロッド(2711)を進退自在に案内保持する上下一対のガイドハウジング(2720)と、
該ガイドハウジング(2720)の上下一対の回動支持部(2730)と、
前記上下一対のガイドハウジング(2720)の間をつなぐジョイント(2750)と、
該ジョイント(2750)又は前記ガイドハウジング(2720)の反ガイドヘッド側に連結されたカムフォロアー(2778)と、
該カムフォロアー(2778)の転動するカム溝(2781)を有するカム板(2780)と、
前記主移動機構(2790)の動きを前記回動支持部(2730)に伝える連動部(2793)と、
を有する請求項1又は2記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項4】
前記Y方向リニアガイド(2630)、前記ガイドハウジング(2720)、前記回動支持部(2730)、及び、前記ジョイント(2750)を支えるフレーム(2670)を備えることを特徴とする請求項記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項5】
前記フレーム(2670)に搭載された、前記受け渡しクランプ(2610)をクランプ開閉方向に駆動する一対のクランプシリンダ(2650)と、
前記受け渡しクランプ(2610)を前記クランプ開閉方向に案内する開閉方向リニアガイド(2649・2669)と、
を有する請求項記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項6】
前記Y方向リニアガイド(2630)が、前記開閉方向リニアガイド(2649・2669)に案内されつつ前記クランプシリンダ(2650)によって開閉方向に駆動され、
前記受け渡しクランプ(2610)が前記Y方向リニアガイド(2630)のスライダー(2631)に取り付けられていることを特徴とする請求項記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項7】
前記主移動機構(2790)が、ボールネジ(1625)、及び、該ボールネジによって直線駆動されるナットホルダー(2791)を有し、
前記主移動機構(2790)の動きを前記回動支持部(2730)に伝える連動部が、前記フレーム(2670)と前記ナットホルダー(2791)の連結部(2793)であることを特徴とする請求項4〜6いずれか1項記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項8】
前記トップ受け渡し手段(2600)が、前記複数本の電線のトップ部を、前記トップ引き出し手段(1300)から受け取った姿勢を維持したまま前記電線撚り合わせ装置(1400)のトップクランプ(1410)に渡すことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項9】
さらに、前記トップ受け渡し手段(2600)を搭載し前記電線の長手方向(X方向)に移動する移動テーブル(1401)と、
前記移動テーブル(1401)のテール側において処理・搬送される前記電線の下側に広がっているクッションベルト(660)と、を具備し、
前記トップ受け渡し手段(2600)と前記テール受け渡し手段(1700)との間で前記電線を弛ませ、弛んだ電線の一部を前記クッションベルト(660)上に置いた状態で前記電線を処理・搬送することを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載のツイストケーブル製造装置。
【請求項10】
電線を送給する工程と、
送給された電線のトップ部に端処理を施すトップ端処理工程と、
トップ部の端処理された電線を任意の長さに切断する電線切断工程と、
切断された電線のテール部に端処理を施すテール端処理工程と、
両端に端処理された複数本の電線を撚り合わせる撚り合わせ工程と、
を含むツイストケーブルの製造方法であって、
請求項1〜いずれか1項記載のツイストケーブル製造装置を用いることを特徴とするツイストケーブル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本(特には2本)の電線を撚り合わせたツイストケーブルを製造する装置等に関する。特には、横送り中の電線の姿勢変化を極力小さくして電線のクランプ外れなどのトラブルを防止できるように改良を加えたツイストケーブル製造装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ツイストケーブル(ツイストペア電線、撚り合わせ電線)は、両端が端処理(端子圧着など)された2本の電線を撚り合わせたもので、電磁波によるノイズを遮断するため等に主に使用される。同様の目的の同軸ケーブルよりも安価であるため、自動車に搭載される種々の信号線として広く使用されている。このようなツイストケーブルを製造する装置・方法として、本発明者らは、特許文献1記載の装置を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5400981号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1のツイストケーブル製造装置のトップ受け渡し装置に改良を加えたものであって、横送り中の電線の姿勢変化(電線の捩りや揺れなど)を極力小さくして、電線のクランプ外れや損傷などのトラブルを防止できるツイストケーブル製造装置・方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つのツイストケーブル製造装置は、並列する複数本の電線を送給する電線送給手段と、 該電線のトップ部に処理を施すトップ端処理手段と、 処理された前記トップ部を引き出すトップ引き出し手段と、 前記電線を任意の長さに切断する電線切断手段と、 切断された前記電線のテール部に処理を施すテール端処理手段と、 両端が処理された前記並列する複数本の電線を撚り合わせる下記A〜Dを有する電線撚り合わせ装置と、
A)前記複数本の電線のトップ部を把持するトップクランプ、 B)該複数本の電線のテール部を把持するテールクランプ、 C)前トップクランプ及び/又は前記テールクランプを回転させる回転手段、及び、 D)前記トップクランプと前記テールクランプの相互間隔及び前記複数本の電線に付加する張力を調整するクランプ間隔・張力調整機構、 前記複数本の電線のトップ部を、前記トップ引き出し手段から受け取って前記電線撚り合わせ装置のトップクランプに渡すトップ受け渡し手段と、 前記複数本の電線のテール部を、前記テール端処理手段から受け取って前記電線撚り合わせ装置のテールクランプに渡すテール受け渡し手段と、を具備するツイストケーブル製造装置であって、 前記トップ受け渡し手段が、前記トップ引き出し手段と前記電線撚り合わせ装置との間に配置されており、 前記トップ引き出し手段によって引き出された電線トップ部の位置まで、前記トップ受け渡し手段の電線クランプ(受け渡しクランプ)が、前記電線長手方向に交差する方向(−Y方向)に直線運動して張り出して前記電線を受け取り、 前記電線撚り合わせ装置の前記トップクランプの位置まで、前記トップ受け渡し手段の電線クランプが、前記−Y方向の反対方向(+Y方向)に直線運動して張り出して前記電線を渡すことを特徴とする。
【0006】
トップ受け渡し装置の受け渡しクランプは、トップ引き出し装置のY方向位置、及び、電線撚り合わせ装置のY方向位置のそれぞれに重なる位置まで、すなわち−Y方向及び+Y方向にまで出っ張ることが求められる。本発明の上記構成により、トップ引き出し手段と電線撚り合わせ装置との間の限られたスペースで、前者から後者への電線の高速受け渡しを実現している。また、高加速度下で電線に回転力をかけることなく、Y方向送り(横送り)中の電線の姿勢変化を極力小さくしている。
【0007】
上記ツイストケーブル製造装置においては、前記トップ受け渡し手段が、 前記受け渡しクランプを前記−Y方向及び+Y方向に張り出し移動させる張り出し移動機構と、 前記張り出し移動機構を前記Y方向に移動させる主移動機構と、を備えることが好ましい。
【0008】
主移動機構は、トップ引き出し手段と電線撚り合わせ装置の間のY方向距離の相当部分について、受け渡しクランプを移動させる。張り出し移動機構は、上記+Y方向及び−Y方向への張り出し分、受け渡しクランプを移動させる。両方合わせて、トップ引き出し手段センターから電線撚り合わせ装置センターまでの距離(トップ引き出し手段と電線撚り合わせ装置の間のスペースよりも相当広い)を、受け渡しクランプを移動させる。
【0009】
後述の実施形態では、一例として、主移動機構のストロークは360mm、張り出し移動機構のストロークは200mmで、合計ストローク560mmを実現している。これにより、トップ引き出し手段と電線撚り合わせ装置との間の限られたスペースに配置するしかないトップ受け渡し装置において、前者から後者への電線の高速受け渡しを実現している。
【0010】
本発明の他のツイストケーブル製造装置は、 前記トップ引き出し手段によって引き出された電線トップ部の位置まで、前記トップ受け渡し手段の電線クランプ(受け渡しクランプ)が、前記電線の長手方向に交差する方向(−Y方向)に張り出して前記電線を受け取り、 前記電線撚り合わせ装置の前記トップクランプの位置まで、前記受け渡しクランプが、前記−Y方向の反対方向(+Y方向)に張り出して前記電線を渡し、 前記トップ受け渡し手段が、 前記受け渡しクランプを前記−Y方向及び+Y方向に張り出し移動させる張り出し移動機構と、 該張り出し移動機構をY方向に移動させる主移動機構と、を備え、 前記張り出し移動機構が、前記主移動機構のアクチュエータにより駆動されることを特徴とする。
この場合、受け渡しクランプY方向移動のアクチュエータが1台となるので、移動スピード変更・駆動制御が容易である。なお、トップ受け渡し装置がテール側の諸作業(皮むきや端子圧着など)のたびに停止する場合、その停止タイミングや移動スピードは、ツイストケーブル製品の仕様(電線径・端子種類など)によって異なることもあるので、移動の位置制御はきわめて複雑である。また、張り出し移動機構にアクチュエータ・減速機・ボールネジなど載せなくてすむので、移動慣性を小さくでき、省スペースを図れる。
【0011】
本発明の他のツイストケーブル製造装置は、 並列する複数本の電線を送給する電線送給手段と、 該電線のトップ部に処理を施すトップ端処理手段と、 処理された前記トップ部を引き出すトップ引き出し手段と、 前記電線を任意の長さに切断する電線切断手段と、 切断された前記電線のテール部に処理を施すテール端処理手段と、 両端が処理された前記並列する複数本の電線を撚り合わせる電線撚り合わせ装置と、 前記複数本の電線のトップ部を、前記トップ引き出し手段から受け取って前記電線撚り合わせ装置に渡すトップ受け渡し手段と、 前記複数本の電線のテール部を、前記テール端処理手段から受け取って前記電線撚り合わせ装置に渡すテール受け渡し手段と、を具備するツイストケーブル製造装置であって、 前記トップ受け渡し手段の電線クランプ(受け渡しクランプ)が、前記複数の電線のトップ部を把持するクランプ爪と、該爪を回動自在に保持するクランプピンと、前記クランプピンを保持するクランプブロックを有することを特徴とする。
【0012】
このような構造により、クランプ爪は、クランプブロックに対して、クランプピンの軸芯(電線の長手方向、X方向)回りに若干の角度回動可能である。このように構成することにより、一対のクランプ爪間に把持される二本の電線の寸法・姿勢に僅かの差があっても、両者をほぼ均等な力で把持(クランプ)することができ、クランプからの電線脱落や電線の表面傷を防止できる。
【0013】
本発明の他のツイストケーブル製造装置は、前記トップ受け渡し手段が、前記複数本の電線のトップ部を、前記トップ引き出し手段から受け取った姿勢を維持したまま前記トップクランプに渡すことを特徴とする。
電線トップ部の「姿勢を維持したまま」とは、「電線トップ部に回転などの相対位置変化を加えることなく」という意味である。これにより、Y方向送り(横送り)中の電線の姿勢変化を極力小さくしている。
【0014】
本発明の他のツイストケーブル製造装置は、前記移動テーブルのテール側において処理・搬送される前記電線の下側に広がっている樹脂製のクッションベルトをさらに具備し、 前記トップ受け渡し手段と前記テール受け渡し手段との間で前記電線を弛ませ、弛んだ電線の一部を前記クッションベルト上に置いた状態で前記電線を処理・搬送することを特徴とする。
電線の一部、通常は最も電線が下に弛んだ部分をクッションベルト上に置くことにより、テール端処理及びY方向搬送中の電線の振れを止めることができる。
【0015】
本発明のツイストケーブル製造方法は、 電線を送給する工程と、 送給された電線のトップ部に端処理を施すトップ端処理工程と、 トップ部の端処理された電線を任意の長さに切断する電線切断工程と、 切断された電線のテール部に端処理を施すテール端処理工程と、 両端に端処理された複数本の電線を撚り合わせる撚り合わせ工程と、を含むツイストケーブルの製造方法であって、前記のツイストケーブルケーブル製造装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、横送り中の電線の姿勢変化(電線の捩りや揺れなど)を極力小さくして、電線のクランプ外れや損傷などのトラブルを防止できるツイストケーブル製造装置・方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るツイストケーブル製造装置の全体構成を模式的に示す平面図である。
図2】トップ引き出し装置の側面図である。
図3】電線送給装置とトップ引き出し装置の位置関係を示す側面図である。
図4】トップ引き出し装置のクランプ部の側面図である。
図5】トップ引き出し装置のクランプ部の平面図である。
図6】トップ受け渡し装置、並びに、移動テーブルの構成を示す平面図である。
図7】トップ受け渡し装置の主要部の平面図である。
図8図7のトップ受け渡し装置の一部を拡大して示す平面図である。
図9】トップ受け渡し装置の構成を示す側面図である。
図10図9のトップ受け渡し装置におけるガイドハウジングの回動支持部の詳細構造を拡大して示す側面断面図である。
図11】トップ受け渡し装置をトップ側から見た正面図である。
図12図12(A)は、テーブル移動機構の側面図、図12(B)は正面図である。
【0018】
図13】テール受け渡し装置の排出側から見た側面図であり、主にクランプの上下機構が示されている。
図14】テール受け渡し装置のトップ側から見た正面図であり、主にクランプのクランプ間隔変更機構(電線ピッチ変更機構)が示されている。
図15】テール受け渡し装置の平面図である。
図16】トップ回転ユニットを排出側から見た側面図である。電線撚り合わせ作業開始前の状態である。
図17図16のトップ回転ユニットを排出側から見た側面図である。電線撚り合わせ作業終了後の状態である。付勢シリンダの空圧配管系統も、模式的に図示してある。
図18図16のトップ回転ユニットを下から見た底面図である。図16同様に電線撚り合わせ作業開始前の状態である。
図19図16のトップ回転ユニットをテール側から見た正面図である。
図20】テール側電線振れ止め、及び、X方向中央部電線振れ止めを示すための、電線撚り合わせ装置をトップ側からテール側を見た図である。
図21】ツイストケーブル製造工程を説明するための模式的平面図である。
図22】ツイストケーブル製造工程を説明するための模式的平面図である。
図23】ツイストケーブル製造工程を説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
【0019】
W1・W2;電線
1;ツイストケーブル製造装置、100;電線送給装置、120;左右のローラ対、
130;電線送りモータ、135;ノズル、148;シリンダ、
200;トップ皮むき装置、210;トップ端子圧着装置、230;切断装置
240;テールクランプ装置、250;テール皮むき装置、260;テール端子圧着装置
315;支持プレート、317;連結プレート、320;移動機構、321;リニアガイド、
322;スライダ、325;タイミングベルト、327;モータ、329;プーリ、
331;押さえローラ、
421・422;リンク、
513;ロッド側管路、514;ピストン側管路、
516;圧力調整弁、517・518;開閉切換弁、519;空圧源
659;タイミングベルト、655・656;プーリ、657;モータ、658;ベルト
660;クッションベルト、662;ベルト端部、663;プーリ、667;ベルト接続部、
1300;トップ引き出し装置、1310;クランプ部、1311;クランプ、
1313;クランプ開閉リンク機構、
1321;爪、1323;ピン、1324;クランプ本体、1325;アーム、
1327;ピン、1329;リンクA、
1330;枠、1331;ピン、1333;リンクB、1334;クレビス、1335;ピン、1338;ロッド、1339;クランプ開閉シリンダ、1347;ストローク調整ボルト、
1350;クランプ間隔変更機構、1351;プレート、1353;エアチャックスライダ、
1355;エアチャックレール、1357;エアチャック本体、
1361;リニアガイドスライダ、1363;リニアガイドレール、1371;移動台、
【0020】
1400;電線撚り合わせ装置、1400A;トップ回転ユニット、1400B;テール回転ユニット
1401;テーブル、1403;テール側電線振れ止め、1404;X方向中央部電線振れ止め、1406;ショックアブソーバー、1408;トップ側電線振れ止め
1410;クランプ部、1411;クランプ片、1413;本体、1414;根元部、1415;テーパ、
1420;開閉リンクハウジング、1427;シャフト、1429;カウンターウェイト
1430;ホルダー、1435;ベアリング
1443;ジョイント、1447;クランプ開閉シリンダ、1449;カップリング、
1450;クランプ回転モータ、1455;移動台、1456;取付部、1459;ショックアブソーバー
1460;ワイヤー弛み取り機構、1461;ロッド、1462;ストッパ移動シリンダ、
1463;ストッパ、1465;ストッパーガイドロッド、1468;プレート
1470;ベース、1473;ステイ、1474・1475; リニアガイドレール、
1476;リニアガイドスライダ
1510;付勢シリンダ、1511;ロッド、1512;ピストン、
【0021】
1621;レール、1622;スライダ、1625;ボールネジ、1626;ナットホルダー、
1627;モータ、
1640;X移動台、1642;リニアガイドスライダ、1644;ナットホルダー、
1647;ボールネジ、1650;ネジ駆動モータ、1651;リニアガイド、
1652;スライダ、1661・1662;レール、
1700;テール受け渡し装置、1706;カバー、1701;旋回機構、1711;吊下げ棒
1720;クランプ上下シリンダ、1721;シリンダ本体、1723;シリンダロッド、
1725;上下スライダ、1727;元部、1729;先部
1731;上下台、1733;シリンダ接続部、1735;上下プレート接続部、
1737;延長部、1739;エアチャック接続部
1740;エアチャック、1747;アーム、1749;位置固定クランプ、
1761;上下プレート、1763;下部
1770;電線間ピッチ変更シリンダ、1771;本体、1773;シリンダロッド、
1775;水平スライダ、1777;上部、1781;移動プレート
1790;エアチャック、1797;アーム、1799;位置可動クランプ
1800;排出トレイ
【0022】
2600;トップ受け渡し装置、2603;カバー、2610;クランプ部(受け渡しクランプ)、2611;クランプ、
2613;クランプ爪、2613b;面取り、2614;挿通孔、2615;クランプピン、2616;凹所、2617;クランプブロック、2619;ガイドピン
2630;張り出し移動案内機構(Y方向リニアガイド)、2631;スライダー、2633;レール、
2638;ストッパー、2639;ステー、
2641;上下ブラケット、2641b;短辺部、2641c;長辺部、2649;スライダー
2650;クランプシリンダ、2651;ロッド、
2660;ステー、2661;袖部、2669;リニアガイドレール、
2670;フレーム、2671;天板、2673;対向面・下面、2674;先部、2677;元部、2678;穴、
2681;底板、2683;対向面(上面)、2684;先部、2686;中部、
2687;元部、2689;元端部、
2710;張り出し移動機構、2711;ガイドロッド、2712;ガイドヘッド、2714;ピン孔、2716;ロッド部、
2720;ガイドハウジング、2721;蓋、2723;ロッド孔、2727;元部、2728;凹段部、
2729;凹部
2730;回動支持部、2731;コマ、2734;ネジ、2735;ベアリング、2739;ストップリング
2741;柱、2743;面取り
2750;ジョイント、2752;上連結部、2754;中央部、2755;スイングプレートレ連結部、2756;下連結部、
2760;スイングプレート、2762;テール側端部、2766;元部、2768;端面、
2769;ボルト、2775;脚、2777;転動体、2778;カムフォロアー、2779;ステー、
2780;カム板、2781;カム溝、2782;隅部、2783;ストレート部、2784;湾曲部、
2785;死点、2786;湾曲部、2787;ストレート部、2788;隅部、
2790;主移動機構、2791;ナットホルダー、2793;底板連結部
2821;ショックアブソーバー
【発明を実施するための良好な形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
ツイストケーブル製造装置の全体構成
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るツイストケーブル製造装置の全体構成を説明する。
【0024】
ツイストケーブル製造装置1は、図1に示すように、以下の主要部を備える。
本発明者らが提案した二線式圧着電線製造装置(特許第5060657号)と同様の、2つの電線束の各々から電線を送給するとともに該電線の先端部を挟持する電線送給装置(特許請求の範囲にいう電線供給手段)100。
該電線の先端(トップ)の被覆を皮むきする皮むき装置(トップ端処理手段)200。
皮むきされた電線の先端に端子を圧着する端子圧着装置(トップ端処理手段)210。
先端に端子が圧着された電線を任意の長さに切断する電線切断装置(電線切断手段)230。
切断された電線の後端(テール)部を挟持するクランプ装置(テール端処理手段)240。
切断された電線のテールの被覆を皮むきする皮むき装置(テール端処理手段)250。
皮むきされた後端に端子を圧着する端子圧着装置(テール端処理手段)260。
【0025】
さらに、ツイストケーブル製造装置1は、上記特許の二線式圧着電線製造装置には存在しない、以下の主要部も備える。
切断装置230で切断されて端子が圧着された電線の先端部を把持して任意の長さだけ引き出すトップ引き出し装置(トップ引き出し手段)1300。このトップ引き出し装置1300は、電線引き出し後に、二本の電線W1・W2の軸芯間距離(Y方向の寸法、電線間ピッチという)を、引き出し時の20mmから10mmに狭めることができる。
両端に端子が圧着された2本の電線を撚り合わせる電線撚り合わせ装置1400。
電線撚り合わせ装置1400は、切断された電線の先端部(トップ)を把持して回転するトップ回転ユニット(回転手段)1400Aと、同電線の後端部(テール)を把持して回転するテール回転ユニット1400Bとからなる。両ユニット間の下方には、製造されたツイストケーブルが収容される排出トレイ1800が配置されている。
【0026】
さらに、ツイストケーブル製造装置1は、以下の主要部も備える。
切断された電線のトップを、トップ引き出し装置1300から撚り合わせ装置のトップ回転ユニット1400Aに移行するトップ受け渡し装置(トップ受け渡し手段)2600。
切断された電線のテールを、テールクランプ装置240から撚り合わせ装置のテール回転ユニット1400Bに移行するテール受け渡し装置(テール受け渡し手段)1700。このテール受け渡し装置1700は、受け取った二本の電線W1・W2の軸芯間距離(Y方向の寸法、電線間ピッチという)を、引き出し時の20mmから10mmに狭めることができる。
【0027】
以降の説明において、切断装置230で切断された後に電線束側に残った電線を残留電線あるいは1次側電線といい、電線束から切断された先の電線を切断電線あるいは2次側電線という(図1参照)。また、電線送給装置100による電線送給方向(電線の長さ方向をX方向といい、X方向の先側(+側)をトップ側といい、後側(−X側)をテール側という。また、X方向と直交する、2次側電線が送られる方向をY方向といい、Y方向の元側(−側)を反排出側、先側(+側)を排出側という。
【0028】
ツイストケーブル製品を製造するために1次側電線を電線送給装置100に送り始める初期状態において、電線送給装置100、切断装置230、テールクランプ装置240、及び、トップ引き出し装置1300は、2個の電線束から繰り出された電線が送られる方向(X方向)に、所定の間隔を開けて直列に順に並んでいる。この初期状態の電線送給装置100などのY方向位置を電線送り位置Y0(原点ともいう)という。また、トップ引き出し装置1300の初期状態のX方向位置を初期位置X0という。
【0029】
電線送給装置100は、電線送り位置Y0から、−Y方向に移動可能である。トップ皮むき装置200は、電線送り位置Y0から−Y方向に所定の距離離れた位置Y1(トップ皮むき位置)に配置され、トップ端子圧着装置210は、トップ皮むき位置Y1からさらに−Y方向に離れた位置(トップ端子圧着位置)Y2に配置されている。
【0030】
テールクランプ装置240は、電線送り位置Y0から、+Y方向に移動可能である。テール皮むき装置250は、電線送り位置Y0から+Y方向に所定の距離離れた位置Y3(テール皮むき位置)に配置され、テール端子圧着装置260は、テール皮むき位置Y3からさらに+Y方向に離れた位置Y4(テール端子圧着位置)に配置されている。
【0031】
トップ引き出し装置1300のクランプ部1310は、原点位置X0からX方向に移動可能である。
電線撚り合わせ装置1400は、テール端子圧着位置Y4から+Y方向に所定の距離離れた位置Y5に配置されている。テール回転ユニット1400BはXY方向に固定されているが、トップ回転ユニット1400Aは、X方向に移動可能である(詳細後述)。
【0032】
次に、各装置について説明する。
電線送給装置100
電線送給装置100は、特許第5060657号の二線式圧着電線製造装置や、特許5400981号のツイストケーブル製造装置におけるものと同様の構成・作用を有するので、ここでは詳細説明は省略する。なお、電線送給装置100とトップ引き出し装置1300との関係については、図3を参照しつつ後述する。
【0033】
切断装置230や皮むき装置200等
切断装置230、トップ皮むき装置200、トップ端子圧着装置210、テール皮むき装置250、テール端子圧着装置260及びテールクランプ装置240は、特許第5060657号の二線式圧着電線製造装置や、特許5400981号のツイストケーブル製造装置におけるものと同様の構成・作用を有するので、ここでは詳細説明は省略する。
【0034】
次に、図2を参照して、トップ引き出し装置の全体構成を説明する。
トップ引き出し装置1300は、電線送給装置100(図1)から送り出された2本の電線の先端を把持するクランプ部1310と、クランプ部1310を、Y方向における原点位置Y0において、X方向に移動させる移動機構320とを備える。+X方向への移動長さは、ツイストケーブル製品のツイスト前の長さによって決定される(例えば3.5m程度)。
【0035】
クランプ部1310は、二本の電線W1・W2の各々を把持する計二セットで上下一対のクランプ1311と、このクランプ1311の開閉機構(後述)とを備える。クランプ部1310は、横長の支持プレート315のテール側端に取り付けられている。
【0036】
移動機構320は、固定ベース(図示されず)の上にX方向に延びるように敷設されたリニアガイド321、同ガイド321に係合する2個のスライダ322、タイミングベルト325、及び、タイミングベルト325を駆動するモータ327等を備える。リニアガイド321の長さは約4mである。リニアガイド321の両端付近にはプーリ329が配置されており、一方(トップ側)のプーリ329の回転軸には、モータ327の回転軸が連結している。両プーリ間にはタイミングベルト325が巻き回されている。タイミングベルト325は、複数箇所で押さえローラ331によってテンションが調節されている。モータ327は、エンコード付きのサーボモータである。
【0037】
クランプ部1310を支持する支持プレート315は、背面にリニアガイド321に係合するスライダ322が取り付けられているとともに、連結プレート317によってタイミングベルト325に固定されている。モータ327が駆動されると、タイミングベルト325は両プーリ329間を循環走行する。モータ327の回転方向を適宜に反転させることにより、タイミングベルト325とともに連結プレート317がリニアガイド321に沿って両プーリ329間をX方向の双方向に移動する。固定プレート317の両移動限は、センサ等により検出される。
【0038】
連結プレート317の移動によって、クランプ部1310も、Y方向における原点位置Y0において、X方向に移動可能である。詳細には、図3に示すように、クランプ部1310は、X方向における原点位置X0においては、電線装置給装置100のノズル135の先端から所定の距離(一例で160mm程度)+X方向に離れた位置に待機している。そして、−X方向に該距離だけ移動して電線送給装置100に接近し(クランプ位置、X1)、同装置100に挟持されている電線のトップを挟持した後、+X方向に移動して電線を電線送給装置100から引き出す。引き出し距離は、この例では最大で3500mmまでの任意の距離にできる。なお、モータ327にはエンコーダが内蔵されているので、モータ327の回転軸の回転数によって、クランプ部1310のクランプ位置(X1)からの移動距離(電線引き出し長さ)が算出される。
【0039】
ここで、電線送給装置100の各電線送りモータ130をサーボフリーとし、トップ引き出し装置1300で電線を引き出す(+X方向へ移動させる)と、引き出し長さ(クランプ部1310の移動距離)は、電線送給装置100の各モータ130のエンコーダで算出される電線毎の値(L1、L2)と、トップ引き出し装置1300のモータ327のエンコーダで算出される値(M)の三種類が存在しうることになる。これらの値が同じであることが理想的であるが、電線のスリップや電線の伸びの影響等によっては、L1とL2の値が異なる、あるいは、L1、L2の値が同じでもこの値がMと異なるようなこともありうる。このような場合、製造されるツイストケーブルの電気特性に不具合が生じることが懸念される。したがって、このような場合は、工程異常と判定することもできる。具体的には、L1とL2との差、MとL1との差、MとL2との差が、予め設定した閾値以下であれば問題ないと判定し、これ以上であれば工程異常と判定し、装置の点検や調整等を行うこともできる。
【0040】
トップ引き出し装置1300のクランプ部1310
次に、図4図5を参照しつつ、トップ引き出し装置1300のクランプ部1310の具体的実施形態を説明する。この実施形態のクランプ部1310は、クランプ間隔(電線間ピッチ)変更機構1350を有するのが特徴である。
図4は、トップ引き出し装置1300のクランプ部1310の側面図である。
図5は、トップ引き出し装置1300のクランプ部1310の平面図である。
【0041】
このトップ引き出し装置1300のクランプ部1310は、図4の右下に示す移動台1371(図2の支持プレート315に対応)のテール側端部に搭載されている。図5に示すように、クランプ部1310は、Y方向に対向する一対のクランプ(反排出側クランプ1311・排出側クランプ1311´)を有する。各クランプ1311は、それぞれが二本の電線W1・W2の片方を把持する。各クランプ1311は個別にクランプ開閉リンク機構1313を有している。また、両クランプ1311のY方向の軸芯距離K(電線間ピッチにほぼ対応)を変更するクランプ間隔変更機構1350を有している。
【0042】
まずクランプ1311そのものを説明する。クランプ1311は、図4に示すように、鰐口状に開閉する上下一対の同様のものである。ここでは、上側のクランプ1311について説明する。クランプ本体1324、及び、その根元のアーム1325は、棒状のものであって、ピン1327の回りに回動する。クランプ本体1324の先端には、ピン1323を介して爪1321が付設されている。この爪1321は、クランプ閉時にワイヤーWの絶縁被覆の外面に押し当てられる。この際、爪1321がピン1323回りに回動自在であるので、爪1321はX方向の各部で均一に、またワイヤーW被覆外面に平行に当る。これにより、ワイヤーWの絶縁被覆の外面に爪1321のエッジが片辺りして絶縁被覆に傷を付けるようなことを防止している。
【0043】
アーム1325の根元には、ピン1327を介して、リンクA1329(アーム1325と一体物)・リンクB1333・ピン1331・ピン1335からなるクランプ開閉リンク機構1313が連結されている。ピン1335は、クレビス1334を介して、クランプ開閉シリンダ1339のロッド1338(図5)によりX方向に駆動される。そして、図4がクランプ1311が開の状態であり、ここからピン1335がトップ側(+X)に動くと、クランプ1311が閉じてワイヤーWが把持される。なお、上記リンク機構1313は、枠1330内に配置されている。
【0044】
次にクランプ間隔変更機構1350について、主に図4を参照しつつ説明する。同機構1350は、図4の下部に示されており、クランプ開閉リンク機構1313の枠1330及びクランプ開閉シリンダ1339の搭載されているプレート1351を、Y方向(図4の紙面前後方向)に動かすものである。同プレート1351の下面には、エアチャックスライダ1353とリニアガイドスライダ1361が取付けられている。エアチャックスライダ1353は、エアチャック本体1357に供給される空圧により、エアチャックレール1355上をY方向に駆動される。リニアガイドスライダ1361はリニアガイドレール1363上をスライドする。なお、エアチャックやリニアガイドは市販品を利用できる。なお、エアチャックとリニアガイドの両者を併用しているのは、X方向に長いクランプ部1310をスムーズに動かすためである。
【0045】
クランプ間隔変更機構1350は、二本の電線W1・W2用の各クランプ1311毎に一セット設けられている。同機構1350は、前述のように、電線トップ引き出し後に、両クランプ1311・1311´を、互いに近づく方向に夫々5mm動かして、二本の電線W1・W2のピッチを10mmに狭める。なお、動かすストロークは、図5の右寄り中段部分に示すストローク調節ボルト1347の、図の上側の頭の位置を調節することにより変えられる。すなわち、同ボルト1347の頭とその対向面との間の寸法K1の半分が各クランプ1311・1311´の動き寸法となる。
【0046】
トップ受け渡し装置2600
次に、トップ受け渡し装置2600、並びに、同装置2600及びトップ回転ユニット1400AをX方向に移動させる移動テーブル1401について、図6〜11を参照して説明する。
図6は、トップ受け渡し装置、並びに、移動テーブルの構成を示す平面図である。
図7は、トップ受け渡し装置の主要部の構成を示す平面図である。
図8は、図7のトップ受け渡し装置の一部を拡大して示す平面図である。
図9は、トップ受け渡し装置の主要部の構成を示す側面図である。
図10は、図9のトップ受け渡し装置における回動支持部の詳細構造を拡大して示す側面断面図である。
図11は、図7のトップ受け渡し装置をトップ側から見た正面図である。
【0047】
トップ受け渡し装置2600は、図6の左上に示す並列する二本の電線W1・W2のトップ部を、引き出し装置1300(図1・3参照)のクランプ部1310から受け取り、そこから図の想像線の矢印に沿って、排出(+Y)側に運び、その後トップ側に運んで、図の下部に想像線で示すトップ回転ユニット1400Aのクランプ部1410に渡すものである。
【0048】
トップ受け渡し装置2600は以下の各主要部を具備する。
電線を把持するクランプ部2610・クランプシリンダ2650(図9の左部)。
クランプ部2610などを保持するフレーム2670。
フレーム2670の主要部としての天板2671(図9参照)・柱2741・底板2681
クランプ部2610をY方向に移動させる主移動機構2790。
【0049】
主移動機構2790の主要部としてのボールネジ1625・ナットホルダー2791・スライダ1622(図9参照)・レール1621。
ボールネジ1625やレール1621を搭載してX方向に動くX移動台1640。
X移動台1640をX方向に駆動・案内するボールネジ1647(図6参照)・ネジ駆動モータ1650・レール1661・1662。
【0050】
クランプ部2610をY方向に移動させる張り出し移動案内機構2630(Y方向リニアガイド、図9の左端部中段参照)及び張り出し移動機構2710。
張り出し移動案内機構(Y方向リニアガイド)2630の主要部としてのレール2633・スライダー2631。
張り出し移動機構2710の主要部としてのガイドロッド2711・ガイドハウジング2720・ジョイント2750・スイングプレート2760・カムフォロアー2778・カム板2780。
各部を搭載して製品電線長さに応じてX方向に大きく移動する移動テーブル1401(図6参照)。
【0051】
クランプ部2610は、図9に分かり易く示すように、電線Wを把持する上下一対のクランプ2611(上クランプ2611U・下クランプ2611B)を備える。各クランプ2611は、電線を把持するクランプ爪2613と、該爪を回動自在に保持するクランプピン2615と、前記クランプ爪2613を収容する凹所2616及び前記クランプピン2615の挿通孔2614が形成されたクランプブロック2617とを有する。
【0052】
クランプ爪2613は、図9に示すように断面形状ほぼ正方形であって、図11に示すようにY方向に延びる棒状の部材である。図11に示すように、クランプ爪2613のY方向端部上下には大きい面取り2613bが施されている。クランプ爪2613のY方向中央部には、クランプピン2615がX方向に挿通されている。クランプ爪2613は、図9に示すように、クランプブロック2617の上下方向端部に形成された凹所2616に嵌め込まれている。ただし、クランプ爪2613の上又は下の端部(電線把持部)は、同凹所2616から出ている。同凹所2616の底とクランプ爪2613の底との間には少しスキマがある。
【0053】
このような構造により、クランプ爪2613は、クランプブロック2617に対して、クランプピン2615の軸芯(X方向)回りに若干の角度回動自在である。このように構成することにより、上下のクランプ爪2613間に把持される二本の電線W1・W2の寸法・姿勢に僅かの差があっても、両者をほぼ均等な力で把持(クランプ)することができ、電線の表面傷や電線脱落を防止できる。
【0054】
クランプブロック2617は、全体として、正面視(図11)略長方形の厚板状の部材である。この装置においては、上下一対のクランプブロック2617が、対向している。クランプブロック2617は、上述のクランプ爪2613収容凹所2616をその上下対向部に有する。クランプブロック2617は、張り出し移動案内機構としてのリニアガイドスライダー2631(図9)に固定されており、レール2633に沿ってY方向にスライド可能である。クランプブロック2617の上下端部(反対向側)には、ガイドピン2619が上下方向に延びるように接続されている。このガイドピン2619を介して、後述する張り出し移動機構2710によって、クランプブロック2617がY方向に移動(張り出し移動)する。
【0055】
図9に示すように、上記リニアガイド(張り出し移動案内機構)2630のレール2633は、クランプシリンダ2650によって上下駆動(クランプ開閉方向駆動)される上下ブラケット2641の+X側側面に固定されている。したがって、上下のリニアガイド2630、クランプブロック2617及びクランプ爪2613はクランプシリンダ2650によって上下駆動され、上下一式のクランプ爪2613の間隔が開閉される。これにより、電線Wの把持・開放がなされる。
【0056】
上下ブラケット2641は、図9の側面視で逆L状、図11の正面視で門状の部材である。上下ブラケット2641の短辺部(水平に延びる辺)2641bには、クランプシリンダ2650のロッド2651の先端部が固定されている。上下ブラケット2641の長辺部(鉛直に延びる辺)2641cには、リニアガイドレール2633が固定されている。なお、短辺部2641bは、図11に示すように、上下ブラケット2641のY方向中央部にのみ存在する。なお、下側のブラケット2641に付設されているカバー2603は、電線の引っ掛かりを防止するものである。
【0057】
クランプシリンダ2650は、後述する底板2681あるいは天板2671の互いの対向面2683・2673に固定されている。
【0058】
図9において上下ブラケット2641の長辺部2641cの−X側に対向するように、塀状のステー2660が、底板2681・天板2671の対向面2683・2673から上下に立設されている。図8に示すように、ステー2660のY方向両側の袖部2661の+X側側面には、上下方向に延びるリニアガイドレール2669が固定されている。このレール2669には、上下ブラケット2641の長辺部2641cの−X側に固定されたリニアガイドスライダー2649が、上下方向(クランプ開閉方向)スライド自在に係合している。このリニアガイド(クランプ開閉方向リニアガイド)によって、上下ブラケット2641やリニアガイドのレール2633が、上下方向に倒れ・揺れなく案内される。リニアガイドレール2633のY方向端部から少し出た部分には、L字型のステー2639を介してストッパー2638が配置されている。ストッパー2638は、ゴム製の部材であり、クランプブロック2617を止める保護部材である。
【0059】
次に、図9を参照しつつ、クランプ部2610の上下のクランプブロック2617やクランプシリンダ2650、リニアガイド(張り出し移動案内機構)2630などを支持するフレーム2670について説明する。このフレーム2670は、クランプ部2610の上下において水平に広がって対向する底板2681・天板2671と、両板をつなぐY方向に対向する二本の柱2741からなる。このフレーム2670は、主移動機構2790(ボールスクリュー1625・ナットホルダー2791・リニアガイドレール1621など)によってY方向に駆動される。
【0060】
底板2681は、図8に示す平面形状が、X方向に長い長方形である。底板2681は、図9に示すように、トップ側の端近辺の元部2687において、リニアガイドスライダー1622・レール1621上に搭載されていて、Y方向に案内されている。また、底板2681のトップ側の元端部2689は、ナットホルダー2791のテール側に突出した底板連結部2793に接続されている。底板2681は、元部2687が支持されて、テール側に片持ちで張り出している。元部2687の上面には、ガイドハウジング2720の回動支持部2730が設けられているが、これについては後述する。なお、底板2681の元部2687は、他の部分(中部2686や先部2684)よりも肉厚になっている。先部2684の上面2683には、前述のように、クランプシリンダ2650やステー2660が立設されている。
【0061】
一対の柱2741は、図9図11に示すように、底板2681の元部2687の両側面から上に立ち上がっている。柱2741の水平断面視で(図8)、その上下端部はX方向に長い長方形であるが、上下方向の端部を除く内側(両柱2741の対向する側)の−X方向側には、大きな面取り2743が施されている。この面取り2743は、後述するガイドハウジング2720の回動を妨げないようにするためのものである。
【0062】
天板2671は、柱2741の上端部に接続されており、図7に示す平面形状が、X方向に長い長方形であって、テール側に片持ちで張り出している。図9に示すように、天板2671の元部2677の下面には、ガイドハウジング2720の回動支持部2730が設けられているが、これについては後述する。天板2671の先部2674の下面2673には、前述のように、クランプシリンダ2650やステー2660が垂下するように設けられている。
【0063】
次に、フレーム2670のY方向の主移動機構2790について説明する。
図9の右下に示すように、また前述のように、底板2681のトップ側の元端部2689にはナットホルダー2791が接続されている。このナットホルダー2791は、ボールネジ1625と螺合するボールナットを内蔵しており、ボールネジ1625の回転に応じてY方向に駆動される。また、底板2681の元部2687の下面には、Y方向に延びるリニアガイドレール1621とその上をY方向にスライドするスライダー1622が設けられている。このリニアガイドレール1621はX移動台1640上に搭載されている。また、ボールネジ1625も軸受あるいはその駆動モータ1627(図6参照)を介してX移動台1640上に搭載されている。
【0064】
これらが、フレーム2670やクランプ部2610をY方向に移動させる主移動機構2790を構成する。なお、X移動台1640は、テーブル1401上に搭載されたX方向に延びるリニアガイドレール1661・1662とボールネジ1647に駆動されてX方向に動く。主移動機構2790及びX移動台1640の動作と、撚り合わせ電線製造工程との関係は、図21〜23を参照しつつ後述する。
【0065】
次に、張り出し移動機構2710について説明する。
張り出し移動機構2710は、主移動機構2790の動きをクランプ部2610に伝えクランプ部2610をY方向に張り出し移動させる機構である。このトップ受け渡し装置2600においては、Y方向送りのアクチュエータが前述のボールネジ1625・同駆動モータ1627のワンセットでありながら、ストローク360mmの主移動機構2790と、ストローク200mmの張り出し移動機構2710の二つの機構を駆動して、クランプ部2610のY方向合計ストローク560mmを実現している。これにより、トップ引き出し手段1300と電線撚り合わせ装置1400との間の限られたスペースで、両者との電線の高速受け渡しを実現している。なお、トップ受け渡し装置のクランプ部2610は、トップ引き出し装置1300やトップ回転ユニット1400AのクランプとY方向に重なる位置まで出っ張ることが求められるとともに、高加速度下で電線をしっかりと把持し、電線を正確に位置決めするという、極めて厳しい特性が求められる。
【0066】
張り出し移動機構2710は、以下の主要部を備える。
上下一対のガイドロッド2711;
スイングして、クランプブロック2617をY方向に動かす。
ガイドロッド2711の略テール側先端のガイドヘッド2712;
上下一対のクランプブロック2617の各々から上又は下に延びるガイドピン2619に対して、回動・上下摺動自在である。
ロッド部2716;
上記ガイドヘッド2712から略+X方向に延び下記ガイドハウジング2720に摺動自在に内嵌する。
【0067】
上下一対のガイドハウジング2720;
前記ガイドロッド2711を繰り出し・引き込み自在にガイドする。後述する回動支持部2730を中心としてスイング運動する。トップ受け渡し装置2600の反排出側に存在するのトップ引き出し手段1300に向けては、クランプ部2610を反排出側に張り出す。一方、トップ受け渡し装置2600の排出側に存在する電線撚り合わせ装置1400に向けては、クランプ部2610を排出側に張り出す。
【0068】
ジョイント2750;
上下二組のガイドハウジング2720のトップ側端部を上下につなぐ。上下方向中央部2754において下記スイングプレート2760がトップ側に突出するように接続されている。
スイングプレート2760;
前記ジョイント2750と下記カム板2780との間に介在する板状の部材である。トップ側の下面に、カム板2780のカム溝2781に嵌合して転がり運動するカムフォロアー2778が取付けられている。
【0069】
カム板2780; 上面にカムフォロアー2778を案内するカム溝2781を有する。
【0070】
ガイドヘッド2712は、平面視(図8)で先端側が大きく面取りされた四角形をしたブロック状の部材であり、ガイドロッド2711の先端に一体に設けられている。ガイドヘッド2712の平面視中心部には、図9に示すように、上下方向に貫通するピン孔2714が形成されている。このピン孔2714には、クランプブロック2617から上又は下に延びるガイドピン2619が、上下摺動自在(クランプ開閉時に作動)かつ相対回動自在(クランプの移動に伴い作動)に内嵌している。
【0071】
ガイドロッド2711は、ガイドヘッド2712から水平に延びるロッド部2716を有している。ロッド部2716は、ガイドハウジング2720の水平なロッド孔2723内に、軸方向摺動自在に内嵌している。
【0072】
ガイドハウジング2720は、水平に延びる筒状のものであり、軸方向に見ると(図11)四角い形である。ガイドハウジング2720の中には、先端側が開口したロッド孔2723が形成されている。同孔2723には、上述のように、ガイドロッド2711のロッド部2716がスライド自在に嵌合している。ガイドハウジング2720の先端側には、蓋2721が取り付けられている。
【0073】
上下一対のガイドハウジング2720の元部2727(図9におけるトップ側の根元)には、下側のハウジングではその下部に、上側のハウジングではその上部に、回動支持部2730が設けられている。また、この回動支持部2730と対向する側に(下側のハウジングではその上部に、上側のハウジングではその下部に)おける凹部2729において、ジョイント2750が連結されている。
【0074】
回動支持部2730の詳細を図10に示す。なお、図10は上側のガイドハウジング2720の回動支持部2730を示すが、下側のものは上下逆であるが同一の構造である。ガイドハウジング元部2727の上面には平面視で円形の凹段部2728が形成されている。この凹段部2728の中心部には、円筒ブッシング状のコマ2731がネジ2734で固定されている。このコマ2731の外周にはベアリング2735の内輪が外嵌している。ベアリング2735の外輪は、天板2671の穴2678の内面に嵌合している。これにより、天板2671に対してガイドハウジング2720が自由に回動できる。なお、符号2739はベアリング2735外輪抜け止め用のストップリングである。
【0075】
上下のガイドハウジング2720をつなぐジョイント2750は、平面視(図8)で略正方形の板状の上連結部2752(図9)と、その下方に延びる断面長方形の板状の中央部2754と、その下端に接続された略正方形の板状の下連結部2756からなる。上下連結部2742・2756は、それぞれ、天板2671・底板2681に連結されている。このジョイント2750によって、上下のガイドハウジング2720は連結されて、同一方向に向いてスイングする。ジョイント2750の中央部2754のトップ側側面(スイングプレート連結部2755)には、スイングプレート2760のテール側端部2762が連結されている。
【0076】
スイングプレート2760は、平面視(図8)長方形の板であり、そのテール側端部2762は上記のジョイント2750に連結されている(図9)。スイングプレート2760のトップ側の元部2766には、ボルト2769が上下に貫通するように取り付けられている。このボルト2769の下部は、スイングプレート2760から下に飛び出しており、そこにカムフォロアー2778が取付けられている。このカムフォロアー2778は、次述するカム板2780のカム溝2781に沿って転動する。スイングプレート2760の元部2766の端面2768は、図7に示すように、ガイドハウジング2720やスイングプレート2760がY方向の中央部に来たとき、カム溝2781のY方向中央部横に配置された転動体2777と接する。転動体2777は、ステー2779によってカム板2780に取付けられている。スイングプレート2760とカム板2780、転動体2777の作用については後述する。
【0077】
カム板2780は、図7に示すようにY方向に長く延びる板であり、その両端を脚2775を介して、X移動台1640上面に支えられている。カム板2780の上面には、Y方向に沿って、カム溝2781が切り込まれている。カム溝2781は、反排出側から排出側に向けて、隅部2782・ストレート部2783・湾曲部2784・死点2785・湾曲部2786・ストレート部2787・隅部2788が形成されている。両隅部2782・2788は、加工上の逃げのために幅広になっている。このカム溝2781の作用については後述する。カム溝2781の両端部にはショックアブソーバー2821が配置されており、カムフォロアー2778がカム溝2781端で停止する際の衝撃を吸収する。
【0078】
トップ受け渡し装置2600の動作
次に、このトップ受け渡し装置2600の主移動機構2790及び張り出し移動機構2710の総合的な作用について、図7図8を参照しつつ説明する。同図には、クランプ部2610・クランプブロック2617を駆動するガイドヘッド2712やガイドハウジング2720、スイングプレート2760、カムフォロアー2778の位置・姿勢が、ツイストケーブル製造装置の各工程に対応して、実線・一点鎖線で示されている。なお、クランプ部2610(クランプ2611)の中心位置は、ガイドヘッド2712の中心位置と同じである。
【0079】
図8図7に示す「ツイストケーブル製造装置の各工程に対応した各位置」は以下のとおりである。
Y0;トップ引き出し手段1300や電線供給装置100、切断装置230の中心と同じ位置である。ここで、トップ受け渡し装置2600のクランプ部2610が、トップ引き出し手段1300のクランプ部1310から二本の電線W1・W2を受け取る。具体的には、トップ引き出し装置1300が電線Wを引き出し完了してから、トップ受け渡し装置2600の開状態のクランプ部2610が反排出側に進んで、上下クランプ2611の間のスキマに電線を受け入れる。
この位置では、ナットホルダー2791はボールネジ1625上における制御上の反排出側端(−Y方向端)に位置し、カムフォロアー2778はカム溝2781の制御上の反排出側端に位置する。また、ガイドハウジング2720の回動中心GC(図9図10に示す回動支持部2730
の回動中心でもある)も反排出側端(0mm位置)にある。そして、ガイドハウジング2720やガイドロッド2711は、反排出側に最も倒れた姿勢である。このとき、ガイドハウジング2720回動中心GCとガイドヘッド2712(クランプ部2610)の中心とのY方向位置差は−100mm(張り出し移動機構2710の0mm位置)である。
【0080】
上記Y0の位置から、ボールネジ1625に送られてナットホルダー2791が排出側に進むと、カムフォロアー2778は、しばらくはカム溝2781のストレート部2783を排出側に進む。この間は、ガイドハウジング2720の傾きや、張り出し移動機構のレール2633とクランプ部2610との相対位置関係は変わらず(張り出し移動距離0mm)、ガイドハウジング2720の回動中心GCのY方向移動距離と、クランプ部2610(ガイドヘッド2712)中心のY方向移動距離とは同じである。また、張り出し移動案内機構のリニアガイドレール2633のY方向移動距離も同じである。
【0081】
Y01;二本の電線W1・W2のテールに防水ゴム栓を挿入する位置である(オプション工程)。
この位置では、ガイドハウジング2720の回動中心GCは、ほぼカム溝2781のストレート部2783の排出側の端近くにある。ナットホルダー2791のセンターもほぼ同じ位置にある。カムフォロアー2778は、カム溝2781の湾曲部2784に少し入った位置にある。そして、ガイドハウジング2720やガイドロッド2711の傾きは、反排出側に最も倒れた状態からやや起き上がった状態である。これに合わせて、ガイドロッド2711のロッド部は、少しガイドハウジング2720内に引き込まれて、短くなっている。このとき、張り出し移動機構2710の動作が始まっている。
なお、電線テール側に処理を施す各工程においては、電線テール側はY方向に動きを止めた状態で処理を施すが、それに合わせてトップ受け渡し装置2600のY方向送りも停止する。
【0082】
Y3;電線のテールを皮むき(ストリップ)する位置である。
この位置では、ガイドハウジング2720の回動中心GCは、ほぼカム溝2781の湾曲部2784の反排出側の端近くにある。ナットホルダー2791のセンターもほぼ同じ位置にある。カムフォロアー2778は、カム溝2781の反排出側の湾曲部2784の奥近くまで入った位置にある。そして、ガイドハウジング2720やガイドロッド2711の傾きは、相当起き上がった状態である。
【0083】
Y31(図7);
この位置では、ガイドハウジング2720の回動中心GCは、ほぼカム溝2781の湾曲部2784の底である死点2785と同じY方向位置(主移動距離約180mm)にある。ナットホルダー2791のセンターもほぼ同じ位置にある。カムフォロアー2778も、ほぼ湾曲部2784底の死点2785の位置にある。そして、ガイドハウジング2720やガイドロッド2711は、ほぼ直立した状態である。ガイドロッド2711のロッド部は、ほぼその全体がガイドハウジング2720内に引き込まれている。このときの張り出し移動距離は約100mmである。
【0084】
カムフォロアー2778がカム溝2781の死点2785を通過する際には、スイングプレート2760のトップ側の端面2768が、転動体2777と接触する。このとき、同スイングプレート端面2768は、カム溝2781の死点2785を越えて排出側に進むように案内される。
【0085】
Y32;テール受け渡し装置1700がクランプする位置(テール皮むき位置)である。
Y4;テールへの端子の圧着位置である(二本の電線を一台の圧着機で処理するため少し位置が変わる)。
これらの位置では、ガイドハウジング2720の回動中心GCは、カム溝2781の排出側の湾曲部2784のあたりのY方向位置にある。ナットホルダー2791のセンターもほぼ同じ位置にある。カムフォロアー2778も、排出側の湾曲部2786にある。そして、ガイドハウジング2720やガイドロッド2711は、先端が排出側に傾いている。ガイドロッド2711のロッド部は、傾きが増すにしたがって、ガイドハウジング2720外に繰り出される。
【0086】
Y5;トップ回転ユニット1400Aに二本の電線W1・W2を渡す位置である。
この位置では、ナットホルダー2791は排出側端(+Y方向端)に位置し、カムフォロアー2778はカム溝2781の排出側端に位置する。また、ガイドハウジング2720(図9・27に示す回動支持部2730)の回動中心GCも排出側端(主移動距離360mm位置)にある。そして、ガイドハウジング2720やガイドロッド2711は、排出側に最も倒れた姿勢である。このとき、ガイドハウジング2720回動中心とガイドヘッド2712の中心とのY方向位置差は+100mm(張り出し移動機構2710の200mm位置)である。
【0087】
以上説明したように、このトップ受け渡し装置2600においては、Y方向送りのアクチュエータが前述のボールネジ1625・同駆動モータ1627のワンセットでありながら、ストローク360mmの主移動機構2790と、ストローク200mmの張り出し移動機構2710の二つの機構を駆動して、合計ストローク560mmを実現している。これにより、トップ引き出し手段1300と電線撚り合わせ装置1400との間の限られたスペースで、両者との電線の高速受け渡しを実現している。
【0088】
移動テーブル1401
次に、移動テーブル1401について説明する。移動テーブル1401は、図6に示すように、XY面(水平面)大きく広がる略長方形の板である。この移動テーブル1401は、トップ受け渡し装置2600及びトップ回転ユニット1400Aを搭載し、次述するテーブル駆動装置に駆動されて、製品電線長さに応じてX方向に大きく移動する。
【0089】
図12を参照して、トップ受け渡し装置及びトップ回転ユニットが搭載される移動テーブル1401の移動機構について説明する。図12(A)は、テーブル移動機構の側面図、図12(B)は正面図である。
【0090】
図12(B)の際下部に示す台650上には、二列のリニアガイド651が、トップ引き出し装置のリニアガイド321に平行に(X方向に)敷設されている。テーブル1401の裏面には、上記リニアガイド651に沿ってスライドするスライダ652が取り付けられている。このリニアガイド651により、テーブル1401はX方向に直進するように案内される。
【0091】
移動テーブル1401の下には、ベルト接続部667が垂下している。同ベルト接続部667は、移動テーブル1401駆動用のタイミングベルト659に固定されており、このタイミングベルト659の駆動に伴い、ベルト接続部667と移動テーブル1401がX方向に駆動される。図12(A)に示すように、タイミングベルト659の両端部には、各々、プーリ655・656が配置されている。トップ側のプーリ655は、モータ657によってベルト658を介して正逆転に駆動される。両プーリ655間をX方向の双方向に移動する。テーブル1401の両移動限は、センサ等により検出される。なお、テーブル1401の移動に伴って下述のクッションベルト660もX方向に走行する。
【0092】
タイミングベルト659の外周には、樹脂製のクッションベルト660が周回するように配設されている。移動テーブル1401のX方向両端の下面に、クッションベル660の両端が固定されている。クッションベルト660は、タイミングベルト659の外側に、4個のプーリ663で回転自在に支持されている。
【0093】
クッションベルト660のY方向の幅は、図12(B)に示す移動テーブル1401の幅とほぼ等しい。この樹脂製のクッションベルト660は、図1あるいは図20に示すように、移動テーブル1401のテール側において、処理・搬送される電線の下側に広がっている。電線が電線送給位置から撚り合わせ位置に移行する間、電線の中間部はベルト660の上を搬送されるので、電線が他の部材・部品に引っ掛かったり、傷付くような事態を避けることができる。
なお、トップ受け渡し装置2600とテール受け渡し装置1700との間で電線を意図的に弛ませ、弛んだ電線の一部をクッションベルト660上に置いた状態で電線を処理・Y方向搬送することもできる。電線の一部、通常は最も電線が下に弛んだ部分をクッションベルト上に置くことにより、テール端処理及びY方向搬送中の電線の振れを止めることができる。この際、電線のクッションベルト660上に置いた(載っている)部分は、通常、電線のY方向送りに伴い引きずられるわけではない。電線の両端がY方向に送られるにつれて、弛みの寸法が変わり、電線撚り合わせ装置1400に電線が渡ってピンと張られたときに、電線の弛みが解消されるのが好ましい。こうなるように、電線の長さに対して弛みを調整することも好ましい。
【0094】
テール受け渡し装置1700
次に、テール受け渡し装置を説明する。
テール受け渡し装置1700は、図1に示すように、2次側電線のテール側端部を、テール端子圧着位置(Y4)においてテールクランプ装置240から受け取り、撚り合わせ位置(Y5)に搬送して、テール回転ユニット1400Bに渡すものである。この例では、クランプ部と、クランプ部を移動させる旋回アームを使用した機構を使用できる。
【0095】
図13は、テール受け渡し装置1700の排出側から見た側面図であり、主にクランプの上下機構が示されている。
図14は、テール受け渡し装置1700のトップ側から見た正面図であり、主にクランプのクランプ間隔変更機構(電線ピッチ変更機構)が示されている。
図15は、テール受け渡し装置1700の平面図である。
【0096】
このテール受け渡し装置1700は、図13図1に示すテールクランプ装置240(電線テールの皮むき・端子圧着時に電線のテール側端部を把持する)から電線Wのテール側端部を受け取って、電線間ピッチを狭めた(20mm→10mm)後に、電線撚り合わせ装置1400のテール回転ユニット1400Bのクランプ1410に渡すものである。このテール受け渡し装置1700は、主に以下の各部を備える(概ね図14の下部から上部に向けて配置されている順番に列挙)。
【0097】
位置固定クランプ1749;反排出側電線W1を把持する。
位置可動クランプ1799;排出側電線W2を把持する。二本の電線W1・W2の軸中心間距離(電線間ピッチ)を変更する際に反排出側に移動する。
電線間ピッチ変更シリンダ1770;上記架クランプ位置可動クランプ1799をY方向に移動させる。
クランプ上下シリンダ1720;両クランプ1749・1799を上下に移動させる。
吊下げ棒1711・旋回機構1701;両クランプ1749・1799及びその電線間ピッチ可変機構・上下機構全体を吊下げて水平面(XY面)で旋回する(図1参照)。
なお、図14に示す符号1706は、電線引っ掛かり防止用のカバーである。
【0098】
位置固定クランプ1749は、図14(正面図)の最下部や図15(平面図)の最上部に示すように、反排出側電線W1を把持するものであり、Y方向に対向する一対の爪からなる。クランプ1749の上部は、図13に示すように、エアチャック1740のアーム1747に接続されている。エアチャック1740に空圧を供給することにより、アーム1747を介してクランプ1749を開閉する。位置固定クランプ1749のエアチャック1740は、図15に示す上下台1731に固定されており上下方向に動く(詳細後述、吊下げ棒1711と共に旋回もする)。
【0099】
位置可動クランプ1799は、図14(正面図)の最下部や図15(平面図)の上部に示すように、排出側電線W2を把持するものであり、Y方向に対向する一対の爪からなる。位置可動クランプ1799の上部は、図13に示すように、トップ側の斜め上方向に曲がって延びており、その先はエアチャック1790のアーム1797に接続されている。エアチャック1790に空圧を供給することにより、アーム1797を介してクランプ1799を開閉する。位置固定クランプ1799のエアチャック1790は、図15に示す移動プレート1781に固定されておりY方向及び上下方向に動く(詳細後述、吊下げ棒1711と共に旋回もする)。
【0100】
次に、テール受け渡し装置1700におけるクランプ上下機構を説明する。このクランプ上下機構は、両クランプ1749・1799を上下させて、テールクランプ装置240のクランプから電線を外す際と、テール回転ユニット1400Bのクランプ部1410に電線を落とし込む際に作動する。
【0101】
図13に示すように、クランプ上下シリンダ1720のシリンダ本体1721は、吊下げ棒1711の下部に固定されている。このシリンダ本体1721の上には、シリンダロッド1723が出ている。シリンダ本体1721のトップ側側方及び上側には、上下スライダ1725が存在する。この上下スライダ1725は、シリンダロッド1723により上下に駆動されるとともに、シリンダ本体1721内のリニアガイドによって上下に案内される。上下スライダ1725はL字状の部材であって、シリンダ本体1725の側面に沿って上下に案内される元部1727と、その上端から直角に折れて、シリンダ本体1725の上面に沿う先部1729を有する。先部1729の下面にはシリンダロッド1723が接続されている。このようなスライダ付きエアシリンダは市販品を利用できる。
【0102】
上下スライダ1725の先部1729の上面には、上下台1731のシリンダ接続部1733が固定されている。上下台1731は、図15に示すように、その平面形状が逆Z型の台である。上下台1731の、上記シリンダ接続部1733の排出側には、上下プレート接続部1735が形成されている。同部1735のテール側には、延長部1737がテール側に延びるように形成されている。同延長部1737の先には、排出側に延びるエアチャック接続部1739が形成されている。同部1739には、前述のように、反排出側の位置固定クランプ1749を開閉するエアチャック1740が固定されている。
【0103】
次に、テール受け渡し装置1700における電線間ピッチ変更機構を説明する。
図14に示すように、前述の上下台1731の上下プレート接続部1735の下面には、上下プレート1761が下方に垂下するように固定されている。同上下プレート1761の下部1763のテール側(図15参照)には、下述するように位置可動クランプ1799の位置をY方向に動かす電線間ピッチ変更シリンダ1770の本体1771が、吊下げられるような形で固定されている。
【0104】
電線間ピッチ変更シリンダ1770は、図14に示すように、上述の本体1771やシリンダロッド1773、L字状に水平スライダ1775を有する。このシリンダ1770は、上述の上下シリンダ1720と同様の市販品である。水平スライダ1775の上部1777の上面には、水平移動プレート1781が固定されている。この水平移動プレート1781のテール側には、図15に示すように、位置可動クランプ1799の開閉エアチャック1790が固定されている。この開閉エアチャック1790は、上記電線間ピッチ変更シリンダ1770によって、図15に二点鎖線で示されている反排出側の位置(電線間ピッチが狭くなる位置)に、10mm移動可能である。
【0105】
このように、排出側のクランプ1799は、図15図14に示されている電線間ピッチの広い(20mm)状態と、両図に想像線(二点鎖線)で示した電線間ピッチの狭い(10mm)状態とに変位可能である。テールクランプ装置240から端子の付いた電線テール部を受け取るときは電線間ピッチの広い状態で受け取り、その後に電線間ピッチを狭め、その状態で、電線のテール側端部をテール回転ユニット1400Bのクランプ部1410に渡す。これにより、電線撚り合わせ時における二本の電線W1・W2の端部の距離を狭くして、撚り合わせ端部における電線の広がり角度(Y字の又の角度)を小さくできる。その結果、電線にかかる力・変形を小さくでき、電線の損傷の危険性を下げることができるとの効果がある。
【0106】
撚り合わせ装置1400
次に、撚り合わせ装置1400について説明する。撚り合わせ装置1400は、図1に示すように、切断された電線(2次側電線)のトップ部を把持して回転するトップ回転ユニット1400Aと、同電線のテール部を把持して回転するテール回転ユニット1400Bとを備える。両ユニットは、Y方向における撚り合わせ位置Y5上に、対向するように配置されている。なお、テール回転ユニット1400Bは固定されている(X方向・Y方向に不動)が、トップ回転ユニット1400Aは、図8に示すように、X方向に移動可能なテーブル1401上にトップ受け渡し装置1600とともに配置されている。両回転ユニット1400A・Bの電線把持機構・回転機構は共通である。
【0107】
トップ回転ユニット1400Aについて説明する。
図16は、本実施形態のトップ回転ユニット1400Aを排出側から見た側面図である。電線撚り合わせ作業開始前の状態である。
図17は、図16のトップ回転ユニット1400Aを排出側から見た側面図である。電線撚り合わせ作業終了後の状態である。付勢シリンダ1510の空圧配管系統も、模式的に図示してある。
図18は、図16のトップ回転ユニット1400Aを下から見た底面図である。図14同様に電線撚り合わせ作業開始前の状態である。
図19は、図16のトップ回転ユニット1400Aをテール側から見た正面図である。
【0108】
このトップ回転ユニット1400Aは以下の主要部分からなる。
撚り合わせる電線のトップ部を把持するクランプ部1410(開閉シリンダ1447などの開閉機構付き、併せてトップクランプともいう)。
クランプ回転モータ1450などのクランプ回転手段。
付勢シリンダ1510や移動台1455などの、クランプを付勢しながら移動させるクランプ間隔・張力調整機構。
ストッパー1463やその移動シリンダ1462などのワイヤー弛み取り機構1460。
【0109】
これらトップクランプ、クランプ回転手段、及び、クランプを付勢しながら移動させるクランプ間隔・張力調整機構、さらにワイヤー弛み取り機構1460は、図16図17に示すように、前述のテーブル1401に接続されたベース1470から吊下げ式に配設されている。これは、電線撚り合わせ後に、クランプを開放して製品を落下させる際に、シュート(排出トレイ)に落ちる製品が引っ掛かるような部位を極力なくすためである。
【0110】
まず、クランプ部1410及びその開閉機構を説明する。
クランプ部1410は、二本の電線W1・W2を把持して回転し、それらを撚り合わせるクランプ片1411を有する。クランプ片1411は、図19に示すように対向する一対のものであり、互いに近接(閉)して二本の電線W1・W2を把持し、離隔(開)して電線を解放する。クランプ片1411は、根元部1414の側が広く先側が狭い直角三角形状の本体1413を有する。このようなクランプ片1411の形状としたのは、強いクランプ力をかけても変形せずしっかりと電線を把持できるようにするためである。クランプ片1411の先側の対向部には、テーパ1415が形成されており、電線Wをクランプ片1411間に入れる際に引っ掛からないようになっている。
【0111】
クランプの開閉機構は、図18に示すように、クランプ片1411の根元に連結されたリンク421・422などからなるリンク機構、同機構を収容する開閉リンクハウジング1420、リンク機構を駆動するシャフト1427、それを回転自在に支持するベアリング1435、同ベアリング1435のホルダー1430、同ホルダー1430をX方向に移動させるクランプ開閉シリンダ1447・ジョイント1443などを含む。これらの詳細は、特願2013117153(日本特許第5400981号)に記載されている。なお、符号1408は、電線の振れ止め(詳細後述)である。
【0112】
次にクランプ回転手段について説明する。クランプ片1411やそれを開閉する開閉リンクハウジング1420は、シャフト1427と一体となって、モータ1450により回転駆動される。モータ1450とシャフト1427の間はカップリング1449により接続されている。これらの回転する物の回転中心軸は、二本の電線W1・W2のほぼ真ん中とされている。開閉リンクハウジング1420は、回転中心から大きくずれて配置されているのでアンバランスウェイトとなっているが、そのアンバランスを相殺するためのカウンターウェイト1429が、シャフト先端部において、開閉リンクハウジング1420と回転軸を挟んで対向する位置に設けられている。
【0113】
次に、クランプ間隔・張力調整機構について説明する。同機構は、図17に示すように、クランプ装置1410やその回転モータ1450を吊る移動台1455と、同移動台1455をトップ側に付勢する(引っ張る)付勢シリンダ1510とから主に構成されている。
【0114】
移動台1455の上面には、X方向に並ぶリニアガイドスライダ1476が取付けられている。同スライダ1476及び移動台1455は、ベース1470の下面にX方向に延びるリニアガイドレール1475に沿ってX方向に動く。なお、レール1475と平行にレール1474(図18参照)も設けられている。この移動台1455の前進限(テール側限)は、図17に示すように、ベース1470のテール側端部に接続されたL字型のステイ1473の先に固定されているショックアブソーバー1406と、移動台1455のテール側端の当接により定まる。一方、移動台1455の後退限(トップ側限)は、図16に示すように、移動台1455のトップ側端に固定されているショックアブソーバー1459とストッパ1463(移動可能、後述)との当接により定まる。
【0115】
移動台1455の付勢シリンダ1510は、図17に実線及び破線で示すように、ベース1470の下面に、X方向に延びるように吊下げ取付けられている。付勢シリンダ1510からは、ロッド1511がテール側に延び出している。ロッド1511の先端(テール側端)は、移動台1455上面の取付部1456に接続されている。
【0116】
付勢シリンダ1510は、この例では空圧シリンダである。図17に示すように、シリンダ1510のロッド側の室にはロッド側管路513が接続されており、反ロッド側の室にはピストン側管路514が接続されている。各管路は開閉切換弁517、518を介して空圧源519に接続されている。ロッド側管路513には圧力調整弁516も設けられている。
【0117】
この圧力調整弁516は、ピストン512のロッド側にかかる圧力を調整するものであり、所定圧以上でロッド側管路513からエアを抜き、所定圧以下でエアをロッド側管路513に込める。これにより、ピストン1512のロッド側の面にかかる空圧をほぼ一定に制御し、ロッド1511の引っ張り力すなわち撚り合わせ中に電線にかかる張力を、ほぼ一定に制御する。そして、電線の撚り合わせが進んで電線の長さが短くなるのに合わせて、付勢シリンダ1510のロッド1511はテール側に繰り出される(実際は、ロッド1511は撚り合わせ電線によって引っ張り出される)。
【0118】
ワイヤー弛み取り機構1460
次に、ストッパ1463やストッパ移動シリンダ1462などからなるワイヤー弛み取り機構1460を説明する。同シリンダ1462は、図16図17に示すように、ベース1470から垂下するプレート1468の排出側の面に固定されている。同シリンダ1462のロッド1461はテール側に繰り出し可能である。同ロッド1461の先端にはストッパ1463が接続されている。また、ストッパ1463の上下には、トップ側に延びるストッパーガイドロッド1465が設けられている。このガイドロッド1465は、ストッパ移動シリンダ1462の上下のガイド孔(図示されず)に案内される。
【0119】
ワイヤー弛み取り機構とクランプ間隔・張力調整機構の動作について説明する。図16の電線撚り合わせ開始前の状態においては、ストッパ1463はテール側限にある。このとき、付勢シリンダ1510は、ロッド側に空気圧がかかっており、ロッド1511には引き込み方向の力がかかっている。そして、移動台1455は、ストッパ1463とショックアブソーバー1459の当接により、待機位置(電線弛み位置)に位置する。なお、このとき、付勢シリンダ1510は、ロッド引き込み限に近い状態にあるが、電線弛み取りにための寸法(この例で30mm)だけはさらに引き込み可能である。
【0120】
この待機状態から、前述のトップ受け渡し装置2600から渡された電線トップ部を、クランプ部1410で把持する。しかし、このときは、シリンダロッド1511にかかっている力Fは、ショックアブソーバー1459がストッパ1463から受ける力F´と釣り合っており、同力Fはクランプ部1410や電線Wにはかかっていない。そして、クランプ回転を開始する前にストッパ移動シリンダ1462を駆動して、ストッパ1463を30mmだけトップ側に動かす(図17参照)。すると、付勢シリンダ1510に引かれて、移動台1455やクランプ部1410がトップ側に動き、電線Wの弛みを取って電線Wに張力がかかる。
【0121】
ここで、回転モータ1450によりクランプ部1410を回転させる。すると、二本の電線Wが撚り合わせされて、次第に短くなっていく。この短くなっていく電線Wに引かれて、付勢シリンダ1510のロッド1511は、ほぼ一定の引っ張り力を電線Wに付与しつつテール側に引き出されていく。なお、この例では、付勢シリンダ1510のストロークは250mmのものを使用している。図17は、シリンダロッド1511が繰り出された状態である。なお、次述するように、付勢シリンダ1510は、まだ繰り出し限に至っておらず、余裕のストロークを残している。
【0122】
次に、撚り合わせが終わった後について説明する。
両回転ユニット1400A、1400Bのクランプ部1410が所定の回数だけ回転した後、付勢シリンダ1510はロッド1511をさらに繰り出して、トップ回転ユニット1400Aは約50mmテール側に移動して、電線は少し弛む。その後、両ユニットのクランプ部1410は、クランプ1411が垂直方向となるように回動した後、クランプ1411が開き、電線が排出される。電線は緊張した状態で撚り合わされているため、この状態のままクランプ1411を開放すると、電線が跳ねて排出トレイ1800に収まらないおそれがある。このため、トップ回転ユニット1400Aを移動して電線の張力を緩めた後で電線の自重のみで排出トレイ1800に落下させる。
【0123】
この例の装置では、付勢シリンダ1510のストローク250mmは、概ね以下のように用いられる。
撚り合わせ開始時に電線の弛みを取る際に最大30mm。
撚り合わせ中に電線が短くなるのに合わせて、張力をかけつつ繰り出す分が最大170mm(製品長さによって変わる)。
撚り合わせ後に電線(ツイストケーブル)を弛ませるのに最大50mm。
【0124】
次に、この電線撚り合わせ装置における、電線振れ止め手段について説明する。
電線振れ止め手段として、この装置には、以下の三箇所の電線振れ止め部材が設けられている。
トップ側電線振れ止め1408;前述のトップ回転ユニット1400A(図17図19)のクランプ部1410のテール側・上方に、ぴんと張られた電線のほぼ上面直上にY方向に延びる形(図19)で設けられている。回転する電線の上方への振れを抑制し、クランプ部1410の振動を防止する。また、よりきれいな電線の撚り形を得る。
テール側電線振れ止め1403、及び、X方向中央部電線振れ止め1404;下述。
【0125】
図20は、テール側電線振れ止め1403、及び、X方向中央部電線振れ止め1404を示すための、電線撚り合わせ装置をトップ側からテール側を見た図である。同図においては、左上にテール側回転ユニット1400Bやそのクランプ部1410が示されている。一方、同図の右下にはトップ側回転ユニット1400Aの一部であるテール側のショックアブソーバー1406や、それを取り付けるステイ1473が見えている。両回転ユニットの中心を結ぶ線(電線回転中心線)が一点鎖線で描かれている。
【0126】
図20に示すように、テール側電線振れ止め1403は、テール回転ユニット1400B(図1)のクランプ部1410のトップ側・上方に、電線回転中心線のほぼ上面直上にY方向に延びる形で設けられている。同じく図20に示すように、中央部電線振れ止め1404は、撚り合わされる電線のX方向(長手方向)のほぼ中央部の上方に、電線回転中心線のほぼ上面直上のY方向、及び、排出側斜め上に延びる形で設けられている。これらの電線振れ止め1403・1404の作用効果は上述のとおりである。
【0127】
図20の下部には、製品排出トレイ1800も示されている。また、前述の樹脂製クッションベルト660も排出トレイ1800の反排出側に示されている。
【0128】
ツイストケーブル製造工程
次に、図21図23を参照して、ツイストケーブル製造装置でツイストケーブルを製造する工程の一例を説明する。
【0129】
図21(A)は、電線送給装置100により送給されて端子の圧着された並列する二本の電線W1・W2のトップ部を、トップ引き出し装置1300のクランプ1310が受け取った(把持した)状態である。二本の電線のうち反排出側電線W1は、クランプ部1310の反排出側クランプ1311に把持されており、排出側電線W2は、排出側クランプ1311´に把持されている。このとき、二本の電線W1・W2の中心間距離(ピッチ)は20mmである。このピッチ20mmは、電線送給装置100や皮むき装置200の構造上の制約から、これ以上狭くしにくいと考えられる寸法である。
【0130】
次に、図21(B)に示すように、引き出し装置1300のクランプ部1310を、トップ側に所定の長さ(ほぼ製品の長さに対応した長さ)引き出し、同時に、前述の方法で電線の側長を行う。次いで、図21(B´)に示すように、トップ引き出し装置1300のクランプ間隔変更機構1350(エアチャック)を駆動して、両クランプ1311・1311´を、互いに近づく方向に夫々5mm動かして、二本の電線W1・W2のピッチを10mmに狭める。なお、このように二本の電線W1・W2を均等に移動させているので、両電線の姿勢が等しい(どちらかの電線だけが斜めになっているということではない)。そのため、両電線にかかる負荷と、テール側の切断・皮むきなどの工程の環境を均一にできる。なお、図21(B´)のように図番に´の付いている図は、特許5400981号の図12図14により説明されているツイストケーブル製造工程に付加された工程である。
【0131】
そして、図21(C)に示すように、引き出された電線をテールクランプ装置240でクランプした後、切断装置230で電線を切断する。そして、引き出された電線(2次側電線)のテール側端部がテールクランプ装置240に移行する。ほぼ同じタイミングで、引き出された電線のトップ側端部が、引き出し装置1300のクランプ部1310からトップ受け渡し装置2600のクランプ部2610に渡される。この際、トップ受け渡し装置2600のクランプ部2610は、引き出し装置1300のクランプ部1310よりも内側(テール寄り)の位置で電線を挟持する。
【0132】
その後、図21(D)に示すように、トップ受け渡し装置2600が搭載されたX移動台1640(図6参照)がテール側に少し移動し、両クランプ240・2610間の電線が緩められる。これにより、テール側の処理(皮むき、端子圧着)時に、テールが電線軸方向及びその直交する方向へ移動しやすくなる。この図21Dの状態から、テールクランプ装置240及びトップ受け渡し装置2600のクランプ部2610が、排出側への移動を開始する。
この装置では、電線の弛みを電線Wの長さに応じて次のように変えている。
電線長さ1500mm〜1800mm程度未満では、X移動台1640の移動量を30mm〜50mm程度としている。この程度の電線長さ・弛みでは、通常の径・種類の電線では、電線Wの弛んだ部分はクッションベルト660(図1・12B・20、明細書段落0093参照)に着かず(接さず)、全体が空中に浮いた状態である。しかし、電線の長さが長くないため、電線の振れはそれほど問題とはならない。
電線長さ1500mm〜1800mm程度以上では、X移動台1640の移動量を60mm〜100mm程度としている。この程度の電線長さ・弛みだと、通常の径・種類の電線では、電線Wの弛みの大きい部分は、クッションベルト660(図1・12B・20、明細書段落0093参照)の上面に接する(横たわる)。これにより、テール端処理及びY方向搬送中の電線の振れを止めることができる。この際、電線のクッションベルト660上に置いた(載っている)部分は、通常、電線のY方向送りに伴いクッションベルト661上を引きずられるわけではない。電線の両端がY方向に送られるにつれて、弛みの寸法が変わり、電線撚り合わせ装置1400に電線が渡ってピンと張られたとき(図23GとHの間)に、電線の弛みが解消されて電線はクッションベルト661から離れる。なお、クッションベルト660と受け渡しクランプ(クランプ部2610)との高さ差は150mm〜160mm程度が一般的である。
【0133】
そして、図22(D´)に示すように、テールクランプ装置240はテール皮むき位置に移動し、皮むき装置250でテール側端部がストリップされる。続いて、図22(E)に示すように、テールクランプ装置240がテール端子圧着位置に移動し、端子圧着装置260で端子が圧着される。なお、図22においては、フレーム2670やナットホルダー2791の図示は省略してある。
【0134】
次に、図22(F)に示すように、テール受け渡し装置1700が、テール側端部をテールクランプ装置240から受け取り、各クランプ1749・1799が電線端部(テールクランプ装置240のクランプ部のややトップ側)をクランプする。
【0135】
次いで、図22(F´)に示すように、テール受け渡し装置1700の排出側クランプ1799が反排出側に10mmを移動して、二本の電線W1・W2のピッチを10mmに狭める。なお、テール受け渡し装置1700の電線間ピッチ変更機構においては片方のクランプ1799のみを動かしているのは、機構をよりシンプル・軽量にするためである。この図22(F´)の工程においては、二本の電線W1・W2の姿勢の均等性はあまり問題とならない。
【0136】
続いて、図23(G)に示すように、テール受け渡し装置1700及びトップ受け渡し装置2600が撚り合わせ位置まで移動する。そして、テール受け渡し装置1700のクランプ1749・1799から、電線のテール側端部がテール回転ユニット1400Bのクランプ部1410に移し替えられる。また、トップ受け渡し装置2600のクランプ部2610から、電線のトップ側端部がトップ回転ユニット1400Aのクランプ部1410に移し替えられる。なお、各回転ユニット1400の各クランプ部1410は、各受け渡し装置のクランプ部よりも外側(電線の端寄り)の位置で電線を挟持する。
【0137】
この図23(G)の回転ユニットの電線受け取り時には、付勢シリンダ1510のロッド1511は、引き込み限から少し繰り出した状態である。そして、クランプ装置1410やその開閉シリンダ1447・回転モータ1450などが搭載されている移動台1455を、トップ側に引っ張っている状態である。このとき、移動台1455は、ショックアブソーバー1459を介して、トップ側限ストッパ1463に当接して止まっている。この図23(G)の状態では、両回転ユニット1400A・1400B間で、電線は弛んでいる。
【0138】
その後、図23(H)に示すように、トップ回転ユニット1400Aの移動台1455のストッパ1463を、ストッパ移動シリンダ1462を駆動して、30mmトップ側に動かす。これにより、トップクランプの付勢シリンダ1510を引き込み可能とする。この結果、付勢シリンダ1510はトップクランプ部1410をトップ側に引き、電線のたるみが取れる。
【0139】
この電線の弛み取り後、両ユニット1400A・1400Bの回転を開始する。そして、図23(I)に示すように、クランプ部1410を適当に選択した速度・回転数だけ回転させて二本の電線を撚り合わせる。撚り合わせ時には、付勢シリンダ1510により所定の張力を電線にかけながら、撚り合わせによる縮み代の分だけシリンダロッド1511が繰り出される。両ユニット1400A・1400Bのモータが所定の回転数だけ回転終了した後、付勢シリンダ1510がさらのロッド1511を繰り出して(この例で50mm、電線をやや緩ませる。その後、両ユニットのクランプ部1410が開放され、撚り合わされた電線が跳ねずに排出トレイ1800上に排出される。
【0140】
このように、電線に適宜な張力を与えながら撚り合わせを行うので、撚り合わせのピッチがほぼ均一で電線間のスキマの小さいツイストケーブルを製造できる。また、横送り中の電線の姿勢変化や振れを極力小さくしたので、電線の踊りやクランプ外れなどを防止できる。
【0141】
上記の説明では、両端に端子が圧着された電線を用いたツイストケーブルについて説明したが、両端が半田付けされた電線や、一端が半田付けされてもう一方の端部が端子圧着された電線、あるいは、これらの組合せによるツイストケーブルを製造することもできる。この場合は、図1の装置において、端子圧着機の代わりに半田付け装置を設置する。
図1
図2
図3
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図11
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