(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヘパラン硫酸結合部位に変異を有し、ヘパラン硫酸に対する結合が減少しているか、又は損なわれており、かつ、他の細胞タイプと比較してより効率的に樹状細胞へ形質導入する修飾E2アルファウイルス糖タンパク質でシュードタイプ化した組換え複製欠損性レンチウイルスであって、
前記レンチウイルスは、疾患に関連する抗原をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、かつ、
前記レンチウイルスは、前記抗原に対する免疫反応を刺激できる、組換え複製欠損性レンチウイルス。
前記抗原は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原、寄生原虫抗原、蠕虫寄生虫抗原、又は外寄生生物抗原である、請求項1に記載の組換えレンチウイルス。
前記抗原は、Her−2受容体、MAGE、BAGE、RAGE、NY−ESO、MART−1/Melan−A、gp100、gp75、mda−7、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異的抗原(PSA)、ras、bcr/abl、Her2/neu、p53、チトクロームP450 1B1、N−アセチルグルコサミン転移酵素−V、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質E6、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質E7、癌胎児性抗原及びアルファフェトプロテイン、gp120、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリチウイルスポリペプチド、カリチウイルスカプシド抗原、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド、B型肝炎の核抗原、肝炎又は表面抗原、ヘルペスウイルスポリペプチド、単純疱疹ウイルス糖タンパク質、水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質、免疫不全ウイルスポリペプチド、ヒト免疫不全ウイルスエンベロープタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスプロテアーゼ、感染性の腹膜炎ウイルスポリペプチド、インフルエンザウイルスポリペプチド、インフルエンザA型ヘマグルチニン、インフルエンザA型ノイラミニダーゼ、インフルエンザA型核タンパク質、白血病ウイルスポリペプチド、マルブルクウイルスポリペプチド、オルトミクソウイルスポリペプチド、乳頭腫ウイルス属ポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスヘマグルチニン、パラインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド、ポリオウイルスカプシドポリペプチド、ポックスウイルスポリペプチド、ワクシニアウイルスポリペプチド、狂犬病ウイルスポリペプチド、狂犬病ウイルス糖タンパク質G、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、ロタウイルスポリペプチド、アブシディア属ポリペプチド、アクレモニウム属ポリペプチド、アルテルナリア属ポリペプチド、アスペルギルス属ポリペプチド、バシディオボールス属ポリペプチド、ビポラリス属ポリペプチド、ブラストミセス属ポリペプチド、カンジダ属ポリペプチド、コクシジオイデス属ポリペプチド、コニディオボルス属ポリペプチド、クリプトコックス属ポリペプチド、クルバラリア属ポリペプチド、表皮菌ポリペプチド、エキソフィアラ属ポリペプチド、ジオトリカム属ポリペプチド、ヒストプラズマ属ポリペプチド、マズレラ属ポリペプチド、マラセジア属ポリペプチド、小胞子菌ポリペプチド、モニリエラ属ポリペプチド、モルティエレラ属ポリペプチド、ケカビ属ポリペプチド、ペシロミセス属ポリペプチド、アオカビ属ポリペプチド、フィアレモニウム属ポリペプチド、フィアロフォラ属ポリペプチド、プロトセカ属ポリペプチド、シュードアレシェリア属ポリペプチド、シュードミクロドキウム属ポリペプチド、フハイカビ属ポリペプチド、リノスポリジウム属ポリペプチド、リゾープス属ポリペプチド、スコレコバシジウム属ポリペプチド、スポロトリクス属ポリペプチド、ストレムフィリウム属ポリペプチド、白癬菌ポリペプチド、トリコスポロン属ポリペプチド及びキシロヒファ属ポリペプチド、バベシア属ポリペプチド、バランチジウム属ポリペプチド、ベスノイチア属ポリペプチド、クリプトスポリジウム属ポリペプチド、アイメリア属ポリペプチド、脳炎性胞子虫ポリペプチド、エントアメーバ属ポリペプチド、ギアリダ属ポリペプチド、ハモニジア属ポリペプチド、ヘパトゾーン属ポリペプチド、イソスポラ属ポリペプチド、リーシュマニア属ポリペプチド、微胞子虫類ポリペプチド、ネオスポラ属ポリペプチド、ノセマ属ポリペプチド、ペンタトリコモナス属ポリペプチド、プラスモディウム属ポリペプチド、P.ファルシパルムサーカムスポロゾイト(PfCSP)、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓病抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1 c末端)、輸送されたタンパク質1(PfExp−1)、ニューモシスティス属ポリペプチド、肉胞子虫属ポリペプチド、住血吸虫ポリペプチド、タイレリア属ポリペプチド、トキソプラズマ属ポリペプチド、トリパノソーマ属ポリペプチド、アカントケイロネマ属ポリペプチド、円虫ポリペプチド、鉤虫属ポリペプチド、住血線虫属ポリペプチド、回虫属ポリペプチド、ブルギア属ポリペプチド、ブノストムム属ポリペプチド、毛細線虫属ポリペプチド、チャベルティア属ポリペプチド、クーペリア属ポリペプチド、クレノゾマ属ポリペプチド、ディクチオカウルス属ポリペプチド、ジオクトフィメ属ポリペプチド、ジペタロネーマ属ポリペプチド、広節裂頭条虫属ポリペプチド、ジプリジウム属ポリペプチド、イヌ糸状虫属ポリペプチド、ドラクンクルス属ポリペプチド、蟯虫属ポリペプチド、フィラロイデス属ポリペプチド、捻転胃虫属ポリペプチド、ラゴチラスカリス属ポリペプチド、ロア糸状虫属ポリペプチド、マンソネラ属ポリペプチド、ムエレリウス属ポリペプチド、ナノフィエタス属ポリペプチド、アメリカ鉤虫属ポリペプチド、ネマトディラス属ポリペプチド、腸結筋虫属ポリペプチド、オンコセルカ属ポリペプチド、オピストルキス属ポリペプチド、オステルタジア属ポリペプチド、パラフィラリア属ポリペプチド、肺臓ジストマ属ポリペプチド、パラスカリス属ポリペプチド、フィサロプテラ属ポリペプチド、プロストロンギラス属ポリペプチド、セタリア属ポリペプチド、スピロセルカ属ポリペプチド、スピロメトラ属ポリペプチド、ステファノフィラリア属ポリペプチド、糞線虫属ポリペプチド、ストロンギルス属ポリペプチド、テラジア属ポリペプチド、トキサスカリス属ポリペプチド、トキソカラ属ポリペプチド、旋毛虫属ポリペプチド、毛様線虫属ポリペプチド、鞭虫属ポリペプチド、ウンシナリア属ポリペプチド、ブケレリア属ポリペプチド、ノミのポリペプチド、マダニのポリペプチド、カタダニのポリペプチド、ヒメダニのポリペプチド、ハエのポリペプチド、ユスリカのポリペプチド、蚊のポリペプチド、スナバエのポリペプチド、ブヨのポリペプチド、ウシアブのポリペプチド、ノサシバエのポリペプチド、メクラアブのポリペプチド、ツェツェバエのポリペプチド、サシバエのポリペプチド、ハエウジ病を生じさせるハエのポリペプチド、ブヨのポリペプチド、アリのポリペプチド、クモのポリペプチド、シラミのポリペプチド、ダニのポリペプチド、ナンキンムシのポリペプチド、トコジラミのポリペプチド、又はサシガメのポリペプチドである、請求項10に記載の組換えレンチウイルス。
前記成熟因子は、GM−CSF、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−15、IL−21、IL−23、TNFα、B7.1、B7.2、4−1BB、CD40リガンド(CD40L)及び薬剤誘導性CD40(iCD40)からなる群から選択される、請求項12に記載の組換えレンチウイルス。
前記抗原は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原、寄生原虫抗原、蠕虫寄生虫抗原、又は外寄生生物抗原である、請求項14に記載の組換えレンチウイルス。
前記抗原は、Her−2受容体、MAGE、BAGE、RAGE、NY−ESO、MART−1/Melan−A、gp100、gp75、mda−7、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異的抗原(PSA)、ras、bcr/abl、Her2/neu、p53、チトクロームP450 1B1、N−アセチルグルコサミン転移酵素−V、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質E6、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質E7、癌胎児性抗原及びアルファフェトプロテイン、gp120、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリチウイルスポリペプチド、カリチウイルスカプシド抗原、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド、B型肝炎の核抗原、肝炎又は表面抗原、ヘルペスウイルスポリペプチド、単純疱疹ウイルス糖タンパク質、水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質、免疫不全ウイルスポリペプチド、ヒト免疫不全ウイルスエンベロープタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスプロテアーゼ、感染性の腹膜炎ウイルスポリペプチド、インフルエンザウイルスポリペプチド、インフルエンザA型ヘマグルチニン、インフルエンザA型ノイラミニダーゼ、インフルエンザA型核タンパク質、白血病ウイルスポリペプチド、マルブルクウイルスポリペプチド、オルトミクソウイルスポリペプチド、乳頭腫ウイルス属ポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスヘマグルチニン、パラインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド、ポリオウイルスカプシドポリペプチド、ポックスウイルスポリペプチド、ワクシニアウイルスポリペプチド、狂犬病ウイルスポリペプチド、狂犬病ウイルス糖タンパク質G、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、ロタウイルスポリペプチド、アブシディア属ポリペプチド、アクレモニウム属ポリペプチド、アルテルナリア属ポリペプチド、アスペルギルス属ポリペプチド、バシディオボールス属ポリペプチド、ビポラリス属ポリペプチド、ブラストミセス属ポリペプチド、カンジダ属ポリペプチド、コクシジオイデス属ポリペプチド、コニディオボルス属ポリペプチド、クリプトコックス属ポリペプチド、クルバラリア属ポリペプチド、表皮菌ポリペプチド、エキソフィアラ属ポリペプチド、ジオトリカム属ポリペプチド、ヒストプラズマ属ポリペプチド、マズレラ属ポリペプチド、マラセジア属ポリペプチド、小胞子菌ポリペプチド、モニリエラ属ポリペプチド、モルティエレラ属ポリペプチド、ケカビ属ポリペプチド、ペシロミセス属ポリペプチド、アオカビ属ポリペプチド、フィアレモニウム属ポリペプチド、フィアロフォラ属ポリペプチド、プロトセカ属ポリペプチド、シュードアレシェリア属ポリペプチド、シュードミクロドキウム属ポリペプチド、フハイカビ属ポリペプチド、リノスポリジウム属ポリペプチド、リゾープス属ポリペプチド、スコレコバシジウム属ポリペプチド、スポロトリクス属ポリペプチド、ストレムフィリウム属ポリペプチド、白癬菌ポリペプチド、トリコスポロン属ポリペプチド及びキシロヒファ属ポリペプチド、バベシア属ポリペプチド、バランチジウム属ポリペプチド、ベスノイチア属ポリペプチド、クリプトスポリジウム属ポリペプチド、アイメリア属ポリペプチド、脳炎性胞子虫ポリペプチド、エントアメーバ属ポリペプチド、ギアリダ属ポリペプチド、ハモニジア属ポリペプチド、ヘパトゾーン属ポリペプチド、イソスポラ属ポリペプチド、リーシュマニア属ポリペプチド、微胞子虫類ポリペプチド、ネオスポラ属ポリペプチド、ノセマ属ポリペプチド、ペンタトリコモナス属ポリペプチド、プラスモディウム属ポリペプチド、P.ファルシパルムサーカムスポロゾイト(PfCSP)、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓病抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1 c末端)、輸送されたタンパク質1(PfExp−1)、ニューモシスティス属ポリペプチド、肉胞子虫属ポリペプチド、住血吸虫ポリペプチド、タイレリア属ポリペプチド、トキソプラズマ属ポリペプチド、トリパノソーマ属ポリペプチド、アカントケイロネマ属ポリペプチド、円虫ポリペプチド、鉤虫属ポリペプチド、住血線虫属ポリペプチド、回虫属ポリペプチド、ブルギア属ポリペプチド、ブノストムム属ポリペプチド、毛細線虫属ポリペプチド、チャベルティア属ポリペプチド、クーペリア属ポリペプチド、クレノゾマ属ポリペプチド、ディクチオカウルス属ポリペプチド、ジオクトフィメ属ポリペプチド、ジペタロネーマ属ポリペプチド、広節裂頭条虫属ポリペプチド、ジプリジウム属ポリペプチド、イヌ糸状虫属ポリペプチド、ドラクンクルス属ポリペプチド、蟯虫属ポリペプチド、フィラロイデス属ポリペプチド、捻転胃虫属ポリペプチド、ラゴチラスカリス属ポリペプチド、ロア糸状虫属ポリペプチド、マンソネラ属ポリペプチド、ムエレリウス属ポリペプチド、ナノフィエタス属ポリペプチド、アメリカ鉤虫属ポリペプチド、ネマトディラス属ポリペプチド、腸結筋虫属ポリペプチド、オンコセルカ属ポリペプチド、オピストルキス属ポリペプチド、オステルタジア属ポリペプチド、パラフィラリア属ポリペプチド、肺臓ジストマ属ポリペプチド、パラスカリス属ポリペプチド、フィサロプテラ属ポリペプチド、プロストロンギラス属ポリペプチド、セタリア属ポリペプチド、スピロセルカ属ポリペプチド、スピロメトラ属ポリペプチド、ステファノフィラリア属ポリペプチド、糞線虫属ポリペプチド、ストロンギルス属ポリペプチド、テラジア属ポリペプチド、トキサスカリス属ポリペプチド、トキソカラ属ポリペプチド、旋毛虫属ポリペプチド、毛様線虫属ポリペプチド、鞭虫属ポリペプチド、ウンシナリア属ポリペプチド、ブケレリア属ポリペプチド、ノミのポリペプチド、マダニのポリペプチド、カタダニのポリペプチド、ヒメダニのポリペプチド、ハエのポリペプチド、ユスリカのポリペプチド、蚊のポリペプチド、スナバエのポリペプチド、ブヨのポリペプチド、ウシアブのポリペプチド、ノサシバエのポリペプチド、メクラアブのポリペプチド、ツェツェバエのポリペプチド、サシバエのポリペプチド、ハエウジ病を生じさせるハエのポリペプチド、ブヨのポリペプチド、アリのポリペプチド、クモのポリペプチド、シラミのポリペプチド、ダニのポリペプチド、ナンキンムシのポリペプチド、トコジラミのポリペプチド、又はサシガメのポリペプチドである、請求項17に記載の組換えレンチウイルス。
【発明を実施するための形態】
【0025】
遺伝子工学は、樹状細胞(DC)を特殊な免疫細胞に形質転換して、抗原特異性免疫反応を誘発する際に、効率的かつ有力な手段であることが示されている。また癌、HIV及び他の疾患のワクチン処理/免疫に用いられる、DCのin vitro操作などに関して、多くの検討が行われている。しかしながらこれまで、in vitro及びin vivoで、樹状細胞に対して目的の遺伝子(例えば抗原をコードする遺伝子)を特異的かつ能率的に輸送することが不可能であった。本発明者は、in vitro及びin vivoでの、DCの効率的かつ特異的なターゲッティングのための新規な方法及び組成物を見出した。方法及び組成物は、例えば免疫療法など、抗原特異的な免疫反応を誘発するために使用できる。
【0026】
本発明の一実施形態は、組換えウイルスを用いて樹状細胞(DC)をターゲッティングし、DCにポリヌクレオチドを輸送するための方法及び組成物の提供に関する。これは好ましくは、DCに特異的な表面分子であるDC−SIGN(樹状細胞特異的なICAM−3(細胞内接着分子3)−グラッビング非インテグリン、別名CD209)をターゲッティングすることによって可能となる。DC−SIGNは、異物と迅速に結合し、エンドサイトーシスを可能にする、C型レクチン様受容体である(Geijtenbeek,T.B.,ら、2004.Annu.Rev.Immunol.22:33−54、全開示内容を本発明に援用する)。他の好ましい実施形態では、組換えウイルスは、DC−SIGNによる特異的な認識がなされるよう設計されたターゲッティング分子で覆われている。上記ポリヌクレオチドは、限定されないが、目的遺伝子、1つ以上のsiRNA及び/又は1つ以上のマイクロRNAを含んでなってもよい。他の好ましい実施形態では、上記ポリヌクレオチドは抗原をコードする。幾つかの実施形態では、上記組換えウイルスはDCに1つ以上の遺伝子を輸送する。例えば、2個以上の抗原をコードする遺伝子を輸送させることもできる。上記1つ以上の遺伝子の輸送は、例えば、遺伝子を配列内リボソーム侵入部位(IRES)、及び/又は2A配列と連結し、単一のプロモータ/エンハンサを使用して発現を促進することにより実施できる。
【0027】
以下に詳述するように、本発明の実施幾つかの実施形態は、組換えウイルス(例えばレンチウイルス及びガンマレトロウイルス)の使用に基づく。なぜなら、これらのウイルスは、ウイルス産生細胞の表面に生じる多数のタンパク質を、それらのエンベロープ中に包含することができるからである。しかしながら、後述するように、他のタイプのウイルスを使用してもよく、またその方法もそれにより改変されてもよい。基本的には、パッケージング細胞株を、目的のポリヌクレオチドをコードする(典型的には抗原をコードする)ウイルスベクター、と、ウイルスパッケージング成分(例えばgag及びpol)と樹状細胞と結合しうるように設計したターゲッティング分子とをコードする、少なくとも1つのプラスミドと、でトランスフェクションする。他の好ましい実施形態では、上記ターゲッティング分子は、樹状細胞のDC−SIGN細胞表面マーカーーと特異的に結合しうるように、遺伝子工学的手法により設計される。ウイルスの出芽(budding)の間、ターゲッティング分子(パッケージング細胞膜において、発現する)は、ウイルスエンベロープに組み込まれる。その結果、上記レトロウイルス粒子は、目的のポリヌクレオチドを含んでなる核と、表面上にターゲッティング分子を有するエンベロープと、を含んでなる。
【0028】
上記ターゲッティング分子は樹状細胞上のDC−SIGNと結合でき、上記ウイルスは樹状細胞に目的遺伝子を輸送できる。理論に束縛されないが、上記の結合により、エンドサイトーシスが誘導され、エンドソーム内にウイルスが取り込まれ、膜融合が開始し、ウイルス核が細胞質ゾルに取り込まれるものと考えられる。逆転写及び核に対する生成物の移行の後に、ウイルスのゲノムが標的細胞ゲノムにインテグレートされ、標的細胞のゲノムに、目的のポリヌクレオチドが取り込まれる。DCは更に、目的の(典型的には抗原をコードする)ポリヌクレオチドを発現する。抗原は更にプロセシングを受け、DCによってT細胞及びB細胞に提示され、抗原特異的な免疫応答が生じる。樹状細胞が抗原特異的な免疫応答を刺激できる限り、上記した特定の経路が、必ずしも必要とは限らない。
【0029】
本発明の一実施形態は、in vitro及びin vivoでの、DCに対する目的遺伝子の直接ターゲッティングのための方法及び組成物の提供に関する。in vivoでの幾つかの好ましい実施形態では、目的遺伝子は、DCに対して、DCのin vitro培養を経ることなく輸送される。例えば、生きている患者にターゲッティングウイルスを直接投与することにより、DCに対して目的遺伝子を輸送することができる。上記目的遺伝子は、好ましくは免疫反応の対象となる抗原をコードする。典型的な抗原としては、腫瘍特異抗原、腫瘍関連抗原、組織特異抗原、細菌性抗原、ウイルス抗原、イースト抗原、真菌抗原、原生動物の抗原、寄生虫抗原、マイトジェンなどが挙げられる。他の抗原も当業者にとり自明であり、過度の実験を要さずに利用できる。
【0030】
本願明細書において開示される方法により、DCに特異的であるか、又は、所望の特異性を付与するために操作されうるターゲッティング分子を利用することができる。上記ターゲッティング分子は好ましくは、樹状細胞のDC−SIGNと結合し、樹状細胞への目的遺伝子の輸送を促進する改変型のウイルス糖タンパク質である。典型的なターゲッティング分子としては、限定はされないが、以下に由来する糖タンパク質が挙げられる:シンドビスウイルス、インフルエンザウイルス、ラッサ熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、デングウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、オーラウイルス、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス及びSARS−CoVウイルス。上記ターゲッティング分子は好ましくは膜結合型である。必要に応じて、組換えウイルス用に、ウイルス糖タンパク質から設計されたか又はそれに由来する、DC−SIGNに特異的なターゲッティング分子を、膜結合型となるように修飾してもよい。
【0031】
公知技術のいかなる方法を用いて、ターゲッティング分子を設計し、所望の特異性を付与してもよい。典型的な方法としては、限定されないが、理論的なタンパク質工学及びDNAシャフリングが挙げられる。通常、DCに特異的なターゲッティング分子を設計する際、樹状細胞に特異的な表面マーカーと相互作用するウイルス糖タンパク質を準備する。好ましくは、上記ウイルス糖タンパク質はDC−SIGNと相互作用する。上記ウイルス糖タンパク質は少なくとも1つの第二の細胞表面マーカー(例えばヘパリン硫酸(HS))と相互作用してもよい。なお、それはDC以外のタイプの細胞において発現する。上記ウイルス糖タンパク質は、DCに特異的な表面マーカーと相互作用する能力が維持されつつ、更なる細胞表面マーカーと相互作用する能力が減少又は除去されるように修飾される。上記の修飾は、ウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つの残基の変異であってもよい。上記変異は残基の欠失、付加又は置換であってもよく、公知の標準的な方法により実施できる。所望の特異性は容易に確認できる。例えば、ウイルス糖タンパク質を修飾した後、それを用いて、パッケージング細胞株を、リポーター遺伝子を含んでなるウイルスベクターと、ウイルスパッケージング要素をコードする少なくとも1つのプラスミドと、で同時トランスフェクションすることにより、組換えウイルスを調製することができる。上記糖タンパク質は、ウイルスでの出芽の間、ウイルスエンベロープに組み込まれる。上記ウイルスを用いて、純粋なDC集団と、DCを含んでなる細胞混合集団とのいずれをも、トランスフェクションすることができ、またウイルスによるDCへの形質導入の特異性は、細胞をアッセイして、リポーター遺伝子の発現が、DCにおいて見られ、一方、他のタイプの細胞で有意に見られないことにより、確認することができる。特異性が十分にストリンジェントでない場合(例えば、他の細胞タイプにおける感染が、好ましくないレベルで観察された場合)には、所望の特異性が得られるまで、ウイルス糖タンパク質を更に修飾し、上記したようにアッセイすることができる。
【0032】
本発明の一実施形態は、抗原との組み合わせでDC活性化剤及び/又は成熟因子をDCに輸送する方法の提供に関する。典型的なDC活性化剤及び成熟因子としては、限定されないが、刺激分子、サイトカイン、ケモカイン、抗体及びFlt−3リガンドなどの他の物質が挙げられる。例えば、DC成熟因子は、以下の少なくとも1つを含んでなってもよい:GM−CSF、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−15、IL−21、IL−23、TNFα、B7.1、B7.2、4−1BB、CD40リガンド(CD40L)及び薬剤誘導性CD40(iCD40)(Hanks,B.A.,ら、2005.Nat Med 11:130−137、全開示内容を本発明に援用する)。
【0033】
本発明の他の実施形態は、上記の組換えウイルス、又は組換えウイルスに感染させたDCを患者に投与して、抗原特異的な免疫応答、例えばT細胞応答(細胞性免疫)及びB細胞応答(液性免疫)を刺激するための方法及び組成物の提供に関する。例えば、活性化されたCD4 T細胞を、抗原特異的応答における、CD8
+細胞障害性T細胞及びB細胞の調整及び組織化に利用できる。他の好ましい実施形態では、組換えウイルス及び/又は組換えウイルスに感染させたDCを用いて免疫応答を刺激し、疾患(例えば癌及びエイズ/HIV)の予防及び治療を行う。限定されないが腫瘍性疾患、感染症及び免疫関連疾患などの、特定の抗原に対する免疫応答が有益である、あらゆる疾患の治療が可能となる。
【0034】
本願明細書にて記載したように、鋭意研究の結果、組換えウイルスを用いて特異的な抗原をコードする遺伝子をDCに供給するための方法及び組成物を見出した。DCを遺伝子組換えし、免疫応答を積極的に引き出すことにより、疾患の予防及び治療が可能となり、また効果的なT細胞免疫を誘導し、更に強力な抗体産生を誘導する方法が提供される。本願明細書において記載される方法及び組成物の使用により、所望の抗原を用いた有力な免疫方法の提供が可能となる。かかる免疫により、疾患(例えば癌及びエイズ/HIV)の予防及び治療が可能となる。
【0035】
定義
特に明記しない限り、本願明細書において用いられる専門用語及び技術用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994)、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照のこと。本願明細書において記載されているいかなる方法、装置及び材料と、類似するか若しくは均等のそれらを、本発明の実施において使用できる。
【0036】
本発明の用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「ヌクレオチド」は同義的に用いられ、ホスホジエステル結合、又は例えばリン酸トリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロアミデート、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエート及びスルトン結合、並びにかかる結合の組合せなどの、修飾された結合を含んでなる、いかなる核酸をも指す。
【0037】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「ヌクレオチド」にはまた、生物学的に産生される5つの塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン及びウラシル)以外の塩基を含んでなる核酸も包含される。
【0038】
本発明の核酸分子は、その核酸分子が他のポリペプチドをコードする異なる核酸分子から実質的に分離されているとき、「分離された」と称される。
【0039】
「免疫」とは、宿主に対して抗原を供給することをいう。幾つかの実施形態では、抗原は、抗原提示細胞(例えば樹状細胞)に提供される。後述するように、抗原をコードする遺伝子を含んでなる組換えウイルスは、樹状細胞上のDC−SIGNに対する特異的な親和性分子により、樹状細胞を標的とすることができる。このように、免疫応答に供される抗原を、樹状細胞に輸送することができる。他の免疫方法は公知技術である。
【0040】
「免疫学的」若しくは「免疫」応答という用語は、受容者である患者における、アミロイドペプチドに対してなされる、有益な体液性(抗体により媒介)及び/又は細胞性(抗原特異性T細胞又はそれらの分泌物により媒介)応答が進行することを指す用語である。かかる反応は、免疫源の投与により誘導される能動的免疫反応であってもよく、又は抗体又は初回抗原刺激を受けたT細胞の投与により誘導される受動的免疫反応であってもよい。細胞免疫応答は、クラスI又はクラスII MHC分子と結合したポリペプチドエピトープの提示により誘導され、抗原特異性CD4
+Tヘルパー細胞及び/又はCD8
+細胞障害性T細胞を活性化する。上記の応答は、単球、マクロファージ、NK細胞、塩基好性、樹状細胞、神経膠星状細胞、小膠細胞、好酸球又は他の先天性の免疫成分の活性化を伴ってもよい。細胞性免疫による応答の存在は、増殖アッセイ(CD4
+T細胞)又はCTL(細胞障害性リンパ球)アッセイ(Burkeら、J.Inf.Dis.170,1110−19(1994)、抗原依存性の殺傷(細胞障害性リンパ球アッセイ、Tiggesら、J.Immunol.156、3901−3910)又はサイトカイン分泌によって測定できる。免疫源の体液性及び細胞性応答の、生体防御又は治療への効果に対する相対的な寄与は、免疫された同系の動物からIgG及びT細胞を別々に単離し、第2の患者における防御又は治療効果を測定することにより、区別することができる。
【0041】
「免疫物質」又は「免疫源」は、任意にアジュバントと組み合わせて、患者へ投与することにより、それ自体に対する免疫学的応答を誘導することができる物質である。
【0042】
用語「アジュバント」とは、抗原と組み合わせて投与することにより、抗原に対する免疫応答を増加させ、強化し及び/又は増幅するが、それ単独で投与しても抗原に対する免疫応答を生じさせない化合物のことを指す。アジュバントは、単一の組成物として本発明の組換えウイルスと共に投与してもよく、又は本発明の組換えウイルスの投与の前、投与と同時若しくは投与の後に投与してもよい。アジュバントは、リンパ球補充、B細胞及び/又はT細胞の刺激、及びマクロファージ刺激などの幾つかの機構によって免疫応答を強化できる。
【0043】
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、同様の構造特性を有する糖タンパク質である。抗体は、特異性抗原に対する結合特異性を示すが、一方免疫グロブリンは、抗原特異性を有さない抗体及び他の抗体様分子が包含される意味で、異なる。後者の種類のポリペプチドは例えば、リンパ系では低レベルで産生され、一方骨髄腫では高いレベルで産生される。
【0044】
用語「抗体」は、所望の生物的活性を示す限り、最も幅広い意味において用いられ、特に、ヒト、ヒト以外(例えばマウス)、キメラ、及びヒト化モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、単鎖抗体及び抗体断片などが包含される。典型的には、当該断片は、抗原に対する特異的結合に関して、その断片が由来する完全長抗体と競合する。
【0045】
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、B細胞及び/又はT細胞が反応する、抗原上の部位のことを意味する。B細胞エピトープは、連続するアミノ酸又はタンパク質の三次構造形成により近接する非隣接アミノ酸のいずれから形成されてもよい。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露を受けても保持されるが、三次構造形成により生じるエピトープの場合は典型的には、変性溶媒による処理により損なわれる。エピトープは典型的には、特有の三次元構造中に少なくとも3、より典型的には少なくとも5又は8〜10個のアミノ酸を含んでなる。エピトープの三次元構造の決定方法としては、例えばX線結晶解析及び2次元核磁気共鳴法などが挙げられる。Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照のこと。同じエピトープを認識する抗体は、ある1つの抗体の能力が、他の抗体の標的抗原に対する結合をブロッキングするか否かを解析する単純なイムノアッセイにおいて同定できる。T細胞は、CD8細胞では約9個のアミノ酸の連続エピトープを、又はCD4細胞では約13から15個のアミノ酸の連続エピトープを認識する。エピトープを認識するT細胞は、初回抗原刺激を受けたT細胞によるエピトープ応答性の
3H−チミジン取り込みによって測定できる、抗原依存性の増殖を測定するためのin vitroアッセイにより同定できる(Burke上記、Tigges上記を示す)。
【0046】
「標的細胞」は、ポリヌクレオチドが輸送された、又は目的遺伝子の発現が望まれるあらゆる細胞のことを指す。好ましくは、上記標的細胞は樹状細胞(特にDC−SIGNを発現する樹状細胞)である。
【0047】
用語「哺乳動物」は、哺乳動物門に属する個々の動物として定義され、限定されないが、ヒト、家畜及び牧畜用動物、動物園の動物、競技用動物及び愛玩動物(例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ及びウシ)などが挙げられる。
【0048】
「患者」又は「被験者」という用語には、予防的若しくは治療的処置を受ける、ヒト及び他の哺乳類の患者(若しくは被験者)などが包含される。
【0049】
本発明の「治療」とは、臨床的若しくは予防的な臨床的介入のことを指す。治療的な用途では、医薬組成物又は薬剤は、かかる疾患に罹患していると思われるか若しくは既に罹患している患者に、当該疾患の症状及びその合併症を、治療若しくは少なくとも部分的な抑制をなすのに十分な量で投与される。予防的な用途では、医薬組成物又は薬剤は、特定の疾患に罹患しやすい患者若しくはその危険のある患者に、その危険性を除去するか若しくは低下させ、又は疾患の開始を遅延させるのに十分な量で投与される。これらを達成するのに十分な量のことを、治療的有効量又は予防的有効量として定義する。かかる量は単回投与として投与されてもよく、又は効果的な投与計画に従い投与されてもよい。その量においても疾患を治療できるが、典型的には、疾患の症状を改善するか、又は疾患又は障害の進行を予防する程度の量において投与される。治療計画及び予防計画のいずれも場合も、充分な免疫応答が生じるまで、通常数回の投与に分けて投与される。典型的には、免疫応答をモニターし、免疫応答が弱まり始めた場合には反復投薬を行う。「治療」とは、必ずしも疾患を完全に排除するものでなくともよく、また患者が疾患又は障害に罹患するのを完全に予防するものでなくともよい。
【0050】
本明細書で用いられる用語「腫瘍」とは、いかなる腫瘍細胞の成長及び増殖のことを指し、悪性若しくは良好であってもよく、いかなる前癌及び癌の細胞及び組織であってもよい。
【0051】
「癌」という用語は、無秩序な細胞増殖を伴うことを特徴とする疾患又は障害を指す。癌の例としては、限定されないが癌腫、リンパ腫、芽球腫及び肉腫が挙げられる。具体的な癌の例としては、限定されないが肺癌、大腸癌、乳癌、精巣癌、胃癌、膵臓癌、卵嚢癌、肝癌、膀胱癌、結直腸癌及び前立腺癌などが挙げられる。それ以外の癌も当業者にとり周知であり、限定されないが、白血病、リンパ腫、子宮頸癌、神経膠腫腫瘍、腺癌及び皮膚癌などが挙げられる。典型的な癌としては、限定されないが膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及びCNS癌(例えば神経膠腫腫瘍)、子宮頸癌、絨毛上皮腫、結腸及び直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、目癌、頭部及び頚部の癌、胃癌、上皮細胞間の新生物、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝癌、肺癌(例えば小細胞及び非小細胞癌)、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫などを含むリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌(例えば唇、舌、口及び咽頭の癌)、卵嚢癌、膵臓癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、腎癌、呼吸器系癌、肉腫(皮膚癌)、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、泌尿器癌、並びに他の癌腫及び肉腫などが挙げられる。癌にはまた、公知の哺乳類の新形成及び悪性障害などが包含される。
【0052】
「ベクター」とは、他の核酸を輸送できる核酸のことを指す。ベクターは例えば、プラスミド、コスミド又はバクテリオファージであってもよい。「発現ベクター」とは、適当な条件下で、ベクターが担持する1つ以上の遺伝子によってコードされる1つ以上のタンパク質の発現を誘導できるベクターのことを指す。
【0053】
用語「調節因子」及び「発現調節因子」は同義的に用いられ、特定の条件下で、使用可能な状態で連結されたコード配列の転写及び/又は翻訳に影響を与えうる核酸分子のことを指す。これらの用語は、転写を促進又は制御する全ての因子を包含するものとして広義的に用いられ、例えば、RNAポリメラーゼと転写因子との基本的な相互作用に必要とされるプロモータ、コアエレメント、上流エレメント、エンハンサ及び反応エレメントなどが挙げられる(Lewin,”Genes V”(Oxford University Press,Oxford)p847−873を参照のこと)。典型的な原核生物の調節エレメントとしては、プロモータ、オペレータ配列及びリボソーム結合部位などが挙げられる。真核細胞において用いられる調節エレメントとしては、プロモータ、エンハンサ、スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
「トランスフェクション」という用語は、宿主細胞への核酸の導入のことを指す。
【0055】
「レトロウイルス」とは、RNAゲノムを有するウイルスのことを指す。
【0056】
「レンチウイルス」とは、分裂細胞及び非分裂細胞に感染できるレトロウイルス属のことを指す。レンチウイルスの幾つかの例としては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:HIV 1型及びHIV 2型を含む)(ヒト後天性免疫不全症候群(エイズ)の原因となるウイルス)、ビスナマエディ(ヒツジの脳炎(ビスナ)又は肺炎(マエディ)を生じさせる)、ヤギ関節炎−脳炎ウイルス(ヤギの免疫不全、関節炎及び脳症を生じさせる)、ウマ伝染性貧血ウイルス(ウマの自己免疫性溶血性貧血、及び脳症を生じさせる)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)(ネコの免疫不全を生じさせる)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)(ウシのリンパ節症、リンパ球増加症及びおそらく中枢神経系の感染を生じさせる)、並びに、サル免疫不全ウイルス(SIV)(ヒト以外の霊長類の免疫不全及び脳症を生じさせる)などが挙げられる。
【0057】
レンチウイルスゲノムは通常、5’末端反復配列(LTR)、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、アクセサリ遺伝子(nef、vif、vpr、vpu)及び3’LTRにより組織される。上記ウイルスのLTRは、U3、R及びU5と呼ばれる3つの領域に分けられる。U3領域はエンハンサ及びプロモーターエレメントを有する。U5領域はポリアデニル化シグナルを有する。R(リピート)領域はU3領域とU5領域とを分離させ、R領域の転写された配列はウイルスRNAの5’及び3’末端で生ずる。“RNA Viruses:A Practical Approach”(Alan J.Cann,Ed.,Oxford University Press,(2000))、O Narayan及びClements J.Gen.Virology 70:1617−1639(1989)、Fieldsら、Fundamental Virology Raven Press.(1990)、Miyoshi H,Blomer U,Takahashi M,Gage FH,Verma IM.J Virol.72(10):8150−7(1998)及び米国特許第6013516号を参照のこと。
【0058】
「ガンマレトロウイルス」とは、レトロウイルス科のファミリーの属のことを指す。典型的なガンマレトロウイルスとしては、限定されないがマウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス及び鳥類細網内皮症ウイルスなどが挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される「ハイブリッドウイルス」とは、1つ以上の他のウイルスベクター由来の構成要素(非レトロウイルスベクター由来の要素)を有するウイルス(例えばアデノウイルスレトロウイルスハイブリッドなど)のことを指す。本発明のレトロウイルス構成要素を有するハイブリッドベクターは、レトロウイルスの範囲内であるものとする。
【0060】
本願明細書における「ビリオン」、「ウイルス粒子」及び「レトロウイルス粒子」とは、RNAゲノム、pol遺伝子由来タンパク質、gag遺伝子由来タンパク質、及びエンベロープの(糖)タンパク質を提示する脂質二重層を含んでなる、単一のウイルスのことを指す。RNAゲノムは通常、組換えRNAゲノムであり、そのため、天然のウイルスのゲノムに元々存在しないRNA配列を含んでなってもよい。RNAゲノムは、不完全な内因性のウイルス配列を含んでなってもよい。
【0061】
「シュードタイプ化」したレトロウイルスとは、RNAゲノムが由来するウイルス以外のウイルスに由来するエンベロープタンパク質を有する、レトロウイルス粒子のことを指す。上記エンベロープタンパク質は、例えば、限定されないが、異なるレトロウイルス、又は非レトロウイルスに由来してもよい。上記エンベロープタンパク質は、天然のエンベロープタンパク質であってもよく、又は本願明細書に記載のように修飾、変異導入又は設計されたエンベロープタンパク質であってもよい。幾つかの実施形態では、上記エンベロープタンパク質は、以下のうちの1つが有する糖タンパク質に由来する、DC−SIGNに特異的なウイルス糖タンパク質である:シンドビスウイルス、インフルエンザウイルス、ラッサ熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、デングウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、オーラウイルス、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス及びSARS−CoVウイルス。
【0062】
本明細書で定義される「形質転換」とは、外因のDNAを標的細胞に導入する方法のことを指す。形質転換は、外因の核酸配列を原核生物若しくは真核生物の宿主細胞へ導入するためのいかなる周知の方法で行ってもよく、例えばウイルス感染、エレクトロポレーション、ヒートショック、リポフェクション及びパーティクルガンなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。「形質転換」細胞とは、挿入された核酸が、自律複製するプラスミドとして、又は宿主染色体の一部として複製されうる、安定な形質転換細胞のことを指す。目的遺伝子がトランジェントに発現される細胞も含まれる。
【0063】
本願明細書に記載の「融合性分子」とは、ウイルスの表面に存在するときに、膜融合を活性化し、ウイルス核を膜貫通させ、典型的には標的細胞の細胞質ゾルに導入させることができる、あらゆる分子のことを指す。融合性分子は、例えばウイルス糖タンパク質であってもよい。融合性の分子として挙げられる典型的なウイルス糖タンパク質としては、以下のウイルス由来のヘマグルチニン、変異ヘマグルチニン、SESf及びウイルス糖タンパク質が存在するが、これらに限定されない。シンドビスウイルス、インフルエンザウイルス、ラッサ熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、デングウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、オーラウイルス、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス及びSARS−CoVウイルス。糖タンパク質は、天然型であってもよく、又は所望の活性を有するように修飾してもよい。
【0064】
「導入遺伝子」とは、ヒトへの介入によって、例えば本発明の方法によって、宿主細胞の1つ以上の染色体に組み込まれる、あらゆるヌクレオチド配列(特にDNA塩基配列)のことを意味する。好ましくは、上記導入遺伝子には「目的遺伝子」が含まれている。
【0065】
「目的遺伝子」はいかなる形であっても、いかなる核酸でもあってもよく、標的細胞に輸送され、インテグレートされ、転写され、翻訳され、及び/又は発現する限り、特に限定されない。上記目的遺伝子は、機能性生成物(例えばタンパク質又はRNA分子)をコードしてもよい。好ましくは、上記目的遺伝子は、標的細胞において発現させようとするタンパク質又は他の分子をコードする。上記目的遺伝子は通常、目的遺伝子の所望の発現を可能とするため、有用な他の配列(例えば転写性制御配列)と機能的に連結される。幾つかの実施形態では、上記目的遺伝子は好ましくは、免疫応答を生じさせようとする抗原をコードする。幾つかの実施形態では、使用できる他の目的遺伝子は、樹状細胞の活性化物質及び/又は成熟因子をコードする遺伝子である。
【0066】
「機能的な関係」及び「機能的に連結」とは、目的遺伝子に関していえば、当該遺伝子がプロモータ及び/又はエンハンサに対して正しい位置及び方向において存在し、当該プロモータ及び/又はエンハンサが適当な分子と接触するとき、当該遺伝子の発現が影響を受けることを意味する。
【0067】
「2A配列」又はエレメントとは、2つのタンパク質間のリンカーとして導入される小分子のペプチドであり、その存在により、ポリタンパク質のリボソーム内部における自律的な自己プロセシングがなされる(de Felipe.Genetic Vaccines and Ther.2:13(2004)、deFelipeら、Traffic 5:616−626(2004))。当該短いペプチドの存在により、単一のベクターからの、複数のタンパク質の共発現(例えば同じベクターからの融合分子及び親和性分子の共発現)が可能となる。すなわち、幾つかの実施態様では、2Aエレメントをコードするポリヌクレオチドを、ベクター中の、発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの間に組み込む。
【0068】
「DC成熟因子」(別名「DC活性化物質」)とは、DCの活性化又は刺激を誘導しうる化合物のことを指し、その作用により、DCが細胞性及び体液性の免疫応答の惹起が促進される。典型的なDC成熟因子は、従来公知であり、刺激分子、サイトカイン、ケモカイン、抗体及び他の物質(例えばFlt−3リガンド)などが挙げられるが、これらに限定されない(Figdor,C.G.,ら、2004.Nat Med 10:475−480、Pulendran,B.,ら、2000.J Immunol 165:566−572、Maraskovsky,E.,ら、2000.Blood 96:878−884、全開示内容を本発明に援用する)。典型的なDC成熟因子としては、限定されないがGM−CSF、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−15、IL−21、IL−23、TNFα、B7.1、B7.2、4−1BB、CD40リガンド(CD40L)及び薬剤誘導性CD40(iCD40)などが挙げられる。
【0069】
ターゲッティング分子:
上記のように、ターゲッティング分子を組換えウイルスに組み込むことにより、DC−SIGNを発現する樹状細胞に対してウイルスをターゲッティングすることができる。上記ターゲッティング分子はまた、好ましくは、細胞膜の融合、及び樹状細胞への効率的な形質導入及び所望の1つ以上のポリヌクレオチドの輸送を媒介する。すなわち、上記ターゲッティング分子は典型的には、所望の結合特異性を有する融合性の分子(FM)である。必要に応じて、上記ターゲッティング分子を修飾して、樹状細胞上のDC−SIGNに結合させてもよい。幾つかの実施形態では、上記ターゲッティング分子はDC−SIGNに特異的に結合する。すなわち、上記ターゲッティング分子は、他のタイプの細胞よりも、DC−SIGNを発現する樹状細胞に対して優先的に上記組換えウイルスを導く。すなわち、幾つかの実施形態では、ターゲッティング分子は、他の標的(例えばヘマグルチニン)に結合するFMの特性を除去し、一方、DC−SIGNと結合する能力を維持させることにより作製される。他の実施形態では、上記ターゲッティング分子を修飾することにより、非DC−SIGN分子及びその構成要素に対する固有の結合特異性を除去し、DC−SIGNに対する結合特異性を付与又は改善することができる。ターゲッティング分子がDC−SIGNに特異的な場合であっても、他の分子及びすなわち他のタイプの細胞に対する若干の非特異的結合が生じうる。かかる場合には、充分な特異性を有するようにターゲッティング分子を適宜修飾し、好ましくない副作用(例えば所望の免疫応答を減少させうる副作用)を回避してもよい。
【0070】
ターゲッティング分子は通常、ウイルスをシュードタイプ化できる分子であり、それにより、組換えウイルスのエンベロープに取り込まれ、樹状細胞をターゲッティングし、適切な条件下で膜融合を誘導し、樹状細胞への目的遺伝子導入を可能にする。好ましいターゲッティング分子は、ウイルス糖タンパク質である。更に、ターゲッティング分子は好ましくは濃縮する際の超遠心分離への抵抗性を有する。in vivoでの遺伝子輸送にとり、それが重要であるからである。
【0071】
ターゲッティング分子は、結合とは無関係に、低pHで好ましくは膜融合を誘導する。すなわち、他の好ましい実施形態では、ターゲッティング分子により誘導される膜融合は、ターゲッティング分子を含んでなるウイルスが標的細胞のエンドソーム内部に存在し、ウイルスのコア成分(目的のポリヌクレオチドを含む)が細胞質ゾルに輸送された後に生じる。
【0072】
幾つかの実施形態では、タグ配列をターゲッティング分子に組み込むことにより、ターゲッティング分子の発現の検出、及びウイルス粒子中におけるターゲッティング分子の存在を検出することができる。
【0073】
ウイルスの融合性分子としては2種類が公知であり、両方ともターゲッティング分子として使用できる(D.S.Dimitrov,Nature Rev.Microbio.2,109(2004))。クラスIの融合性分子はらせん状のコイルドコイル構造を使用して膜融合を活性化するのに対し、クラスIIの融合性分子はβバレル構造により融合を活性化する。これらの2つの構造は、異なる機構及び動態により機能する(D.S.Dimitrov,Nature Rev.Microbio.2,109(2004))。幾つかの実施形態では、クラスIの融合性分子を用いる。他の実施形態では、クラスIIの融合性分子を用いる。更に他の実施形態では、クラスI及びクラスIIの融合性分子を用いる。
【0074】
ターゲッティング分子(又は、ウイルス結合機能と融合機能が別々である実施形態では、融合性分子)として使用できる表層糖タンパク質の幾つかの非限定的な例としては、野生型又は修飾型を含めて、アルファウイルス(例えばセムリキ森林ウイルス(SFV)、ロスリバーウイルス(RRV)及びオーラウイルス(AV))由来の糖タンパク質が挙げられ、それらは表層糖タンパク質(例えばE1、E2及びE3)を含んでなる。シンドビスウイルス(SIN)及びインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に由来するE2糖タンパク質は、細胞表面上の特定の分子(E2の場合はヘパリン硫酸グリコサミノグリカン、HAの場合はシアル酸)と特異的に結合する非レトロウイルス糖タンパク質であり、幾つかの実施形態では、ターゲッティング分子の作製に使用できる。それらの融合は比較的、受容体分子との結合からは独立に行われ、融合の活性化はエンドソームの酸性化によりなされる(Skehel及びWiley,Annu.Rev.Biochem.69,531−569(2000)、Smit,J.ら、J.Virol.73,8476−8484(1999))。更にそれらは、特定の遺伝子組換えを許容でき、レトロウイルス表層に効率的に形成されうる(Morizonoら、J.Virol.75,8016−8020)。
【0075】
本発明の他の実施形態では、ラッサ熱ウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス又はSARS−CoVウイルスの表層糖タンパク質を融合分子として利用できる。
【0076】
本発明の他の実施形態では、フラビウイルスをベースとする表層糖タンパク質を、ターゲッティング分子のベースとして使用できる。アルファウイルスと同様、フラビウイルスはクラスII組織融合分子を使用して感染を媒介する(Mukhopadhyayら、(2005) Rev.Microbio.3,13−22)。prM(約165のアミノ酸)及びE(約495のアミノ酸)は、フラビウイルスの糖タンパク質である。また、フラビウイルスの1種であるデングウイルス(DV)のリガンド結合ポケットの特性も公知である。興味深いことに、DC−SIGNは、DVのEタンパク質上の炭水化物残基と特異的に相互作用して、ウイルスの侵入を促進することが示唆されている(Mukhopadhyayら、(2005) Nat.Rev.Microbio.3,13−22)。すなわち、DVのEタンパク質のみ、又は修飾されたDVのEタンパク質のみで覆われたレンチウイルスを、DCのターゲッティングに使用できる。TBE及びDVのEタンパク質は、記載されている他の融合分子と同様に適宜設計し、所望の結合特異性を付与してもよく、又は必要に応じて、結合能を欠損させ、融合能を強化してもよい。
【0077】
幾つかの実施形態では、インフルエンザA/家禽ペストウイルス/Rostock/34(FPV)(クラスI融合性分子)からのヘマグルチニン(HA)の形成を使用する(T.Hatziioannou,S.Valsesia−Wittmann,S.J.Russell,F.L.Cosset,J.Virol.72,5313(1998))。幾つかの実施形態では、FPV HAの形成を使用する(A.H.Linら、Hum.Gene.Ther.12,323(2001))。HAにより媒介される融合は通常、受容体結合からは独立していると考えられる(D.Lavillette,S.J.Russell,F.L.Cosset,Curr.Opin.Biotech.12,461(2001))。
【0078】
他の実施形態では、クラスIIFMを使用する(好ましくは、本願明細書においてSVGと称する、アルファウイルス属のシンドビスウイルスの糖タンパク質(K.S.Wang,R.J.Kuhn,E.G.Strauss,S.Ou,J.H.Strauss,J.Virol.66,4992(1992)))。SVGは2つの膜貫通タンパク質、すなわち融合に関与する第1のタンパク質(E1)と、細胞結合に関与する第2のタンパク質(E2)(S.Mukhopadhyay,R.J.Kuhn,M.G.Rossmann,Nature Rev.Microbio.3,13(2005))とを含む。SVGは、腫瘍レトロウイルス及びレンチウイルスの両方をシュードタイプ化することが公知である。
【0079】
後述するように、幾つかの好ましい実施形態では、DC−SIGNと優先的に結合する修飾SVGを利用する。他の実施形態では、結合能を有さず、融合能が強化されたSVG(SVGmu)を融合性分子として使用し、別のターゲッティング分子(例えばDC−SIGNに対する抗体又は他の樹状細胞に特異的なタンパク質)と組み合わせてもよい。例えば、SVGの融合性分子を用いてもよく、その際プロテインAの免疫グロブリンG結合ドメイン(ZZドメイン)をE2タンパク質に組み込み、1つ以上の更なる変異を導入して受容体結合部位を不活性化してもよい(K.Morizonoら、Nature Med.11,346(2005))。
【0080】
ターゲッティング分子をコードする遺伝子は好ましくは、発現ベクター(例えばpcDNA3(Invitrogen社))にクローニングする。更にパッケージング細胞(293T細胞など)を、目的遺伝子をコードするウイルスベクター(典型的には抗原をコードする)と、ウイルスのパッケージング用コンポーネントをコードする少なくとも1つのプラスミドと、ターゲッティング分子の発現用のベクターと、でコトランスフェクションする。ターゲッティング機能が融合機能とは別である場合、親和性分子及び付随するコンポーネントをコードする1つ以上のベクターを準備してもよい。上記ターゲッティング分子はパッケージング細胞の膜上に発現され、組換えウイルスに組み込まれる。パッケージング細胞表面上におけるターゲッティング分子の発現は、例えばFACSにより分析できる。
【0081】
例えば構造解析及び分子モデリングから得られた情報に基づいて、変異誘導を実施して変異糖タンパク質を産生し、その融合能力を維持しつつ、結合能力に関しては所望の結合特異性及び/又はレベルを有する態様としてもよい。幾つかの変異を糖タンパク質ごとに導入し、後述する方法又は従来技術において公知の他の方法を使用してアッセイし、最も望ましい特性を有するFMを同定してもよい。例えば、ターゲッティング分子を、哺乳類において好ましくない副作用を生じさせることなく、免疫応答を刺激する能力を測定することにより、樹状細胞に対して抗原を特異的に輸送する能力に関する試験を行ってもよい。特に標的樹状細胞に対する能力を、後述するように、直接、例えば細胞培養において試験することもできる。
【0082】
適切なターゲッティング分子(野生型若しくは変異型)を選択する際、ターゲッティング分子(及び必要に応じて親和性分子)を有するウイルスを調製し、標的細胞の細胞膜の透過を促進する際の選択性及び/又は能力を試験する。野生型糖タンパク質を提示するウイルスをコントロール用いることにより、変異体のタイターに対する効果を検討することができる。ターゲッティング分子(又は必要に応じて親和性分子)の結合パートナーを発現する細胞を、標準的な感染アッセイを使用して、ウイルスで形質転換する。所定の時間の後(例えばポスト形質導入後48時間)、細胞を回収し、ターゲッティング分子(又は親和性分子及び融合性分子)を含んでなるウイルスで感染している細胞のパーセンテージを、例えばFACSで測定することができる。その選択性は、ウイルスで感染している細胞のパーセンテージを算出することにより記録することができる。同様に、ウイルスタイターに対する突然変異の影響を、対応する野生型ターゲッティング分子を含んでなるウイルスで感染している細胞のパーセンテージで、変異ターゲッティング分子を含んでなるウイルスで感染している細胞のパーセンテージを除算することによって定量化できる。好ましい変異体は、選択性と伝染性タイターとの最高の組合せを有するものである。ターゲッティング分子を選択した後、ウイルス濃度をアッセイし、FMで覆われたウイルスが濃縮されうることを確認してもよい。ウイルス上澄を回収し、超遠心分離によって濃縮する。ウイルスのタイターは、ウイルス保存溶液の限界希釈、及び親和性分子の結合パートナーを発現する細胞への形質転換により測定できる。
【0083】
幾つかの実施形態では、BlaM−Vpr融合タンパク質を利用して、ウイルスの透過及びその際の融合分子(野生型又は変異)の有効性を評価してもよい。ウイルスは、例えば、ウイルスエレメント、BlaM−Vpr及び目的のFM(及び適宜親和性分子)を含んでなる1つ以上のベクターによりパッケージング細胞をトランジェントにトランスフェクションすることにより調製できる。得られるウイルスを用いることにより、ターゲッティング分子(又は親和性分子)が、フリーの結合阻害剤(例えば抗体)の存在下若しくは非存在下で特異的に結合する分子を発現する細胞を、感染させることができる。細胞を更にCO
2非依存性培地で洗浄し、CCF2色素(Aurora Bioscience社)でロードすることができる。室温で培養して開裂反応を完了させた後、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、FACS及び顕微鏡検査により分析することができる。青色の細胞の存在は、細胞質へのウイルスの透過を示し、ブロッキング抗体を添加した場合には、細胞の青色化が少ないことが予想される。
【0084】
透過が低pHに依存するか否かを試験し、所望のpH依存性を有するターゲッティング分子(又は融合性分子)を選択する際、pHを変化させるNH
4Cl又は他の化合物を、感染ステップ(NH
4Clはエンドソーム内の酸性コンパートメントを中和する)において添加することができる。NH
4Clの場合には、青色の細胞の消失は、ウイルスの透過が低pHに依存することの指標となる。
【0085】
更に、活性がpH依存性であることを確認する際、リソソーム志向性(lysosomotropic)剤(例えば塩化アンモニウム、リン酸クロロキン、コンカナマイシン、バフィロマイシンA1、モネンシン、ナイジェリシンなど)をインキュベーションバッファに添加してもよい。これらの物質は、エンドソームコンパートメント内のpHを上昇させうる(例えばDrose及びAltendorf、J.Exp.Biol.200、1−8、1997)。これらの物質の阻害効果は、ウイルスの融合及び浸入におけるpHの役割を明らかにするものである。異なる融合性分子を提示するウイルス間における異なる浸入の動態を比較し、最適なものを特定の用途のために選択してもよい。
【0086】
PCRによる浸入のアッセイを利用して逆転写をモニターし、それにより、ウイルスDNA合成の動態を、ウイルス侵入の動態の指標として測定してもよい。例えば、特定のターゲッティング分子を含んでなるウイルス粒子を、ターゲッティング分子に対する適当な同族分子(又は幾つかの実施形態では別の親和性分子)を発現するパッケージング細胞(例えば293T細胞)と共にインキュベートしてもよい。インキュベーションと同時に又はインキュベーション後(感染させた後)に、未結合のウイルスを除去し、細胞のアリコートを分析する。DNAを更にこれらのアリコートから抽出し、LTRに特異的なプライマーを使用して半定量的測定を実施してもよい。LTRに特異的なDNA生成物の存在は、ウイルスの侵入及びアンコーティングが成功したことを示す。
【0087】
ターゲッティング分子は、ウイルスの結合能及び融合能を発揮させることができるにもかかわらず、本発明の別の態様では、ウイルスの結合能と融合能とを、2つの別個の構成要素として分離してもよい。典型的には、組換えウイルスは、(i)ウイルスの結合と、ウイルスの正確な樹状細胞へのターゲッティングを媒介する親和性分子、及び(ii)樹状細胞への所望のポリヌクレオチドの効率的な導入及び輸送を媒介する、別個の融合性分子(FM)、の両方を含んでなる。本願明細書において開示される方法を適宜用いることにより、様々な親和性分子及び融合性分子を利用することができる。本願明細書に記載されている以外の、他の典型的な融合性分子及び関連する方法は、例えば2005年3月2日に出願の米国特許出願第11/071785号(米国特許出願公開第2005/0238626号として公開)、及び2006年6月1日に出願の米国特許出願第11/446353号(米国特許出願公開第2007/0020238号として公開)に記載されており、それらの全開示内容を本発明に援用する。
【0088】
上記の親和性分子は、樹状細胞の表面マーカーと結合する。他の好ましい実施形態では、上記親和性分子はDC−SIGNと特異的に結合する。すなわち、DC−SIGNに対する親和性分子の結合は、他のタイプの細胞上のマーカーとの相互作用に起因する望ましくない副作用を回避するのに十分な程に特異的であるのが好ましい。上記親和性分子は例えば、DC−SIGNと特異的に結合する抗体であってもよい。
【0089】
幾つかの好ましい実施形態では、上記融合分子は、好ましくはエンドソーム内の低pH環境に応答して、融合を媒介又はさもなければ樹状細胞への目的遺伝子の輸送を促進する、ウイルス糖タンパク質である。上記融合分子は好ましくは、ウイルスの内包物が、ウイルス粒子の分解の前に細胞質ゾル内に十分移動できる程の迅速な動態を示す。更に、上記融合分子を修飾することにより、結合活性を減少させ又は除去し、それにより、いかなる非特異的結合を減少させ又は除去することができる。すなわち、融合分子の結合能力を減少させることによって、標的細胞に対するウイルスの結合は、主に又は完全に、親和性分子により決定付けられ、それにより高い標的特異性が得られ、また望ましくない影響を減少させることができる。典型的な融合分子としては、以下のウイルスのうちの1つに由来するウイルス糖タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない:シンドビスウイルス、インフルエンザウイルス、ラッサ熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、デングウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、オーラウイルス、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス及びSARS−CoVウイルス。
【0090】
本願明細書において開示される方法を用いて、ターゲッティング分子としての、又は親和性分子と組み合わせた融合性分子としての、様々な分子を利用することができる。本願明細書に記載されている以外の、他の典型的な分子及び関連する方法は、例えば、米国特許出願公開第2005/0238626号及び米国特許出願公開第2007/0020238号に記載されている。
【0091】
ベクター:
好ましい実施形態では、本願明細書に記載の1つ以上のベクターを用いて、ポリヌクレオチド配列をパッケージング細胞株に導入し、組換えウイルスの調製を実施する。ベクターは、DCに特異的なターゲッティング分子などの各種コンポーネントを含んでなる組換えウイルス、1つ以上の目的(典型的には抗原をコードする)遺伝子、及びパッケージング細胞により提供されない、ウイルスの調製に必要なあらゆるコンポーネントをコードするポリヌクレオチド配列を含んでなってもよい。幾つかの実施形態では、DC特異的な親和性分子と別の融合性分子とをコードするポリヌクレオチド配列を含んでなるベクターは、ウイルスの調製において、DCに特異的なターゲッティング分子をコードするベクターと置換される。真核細胞発現ベクターは公知であり、多くの市販品を入手できる。
【0092】
本発明の一態様では、DC成熟因子をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなるベクターもまた、ウイルスの調製において用いられる。これらのポリヌクレオチドは典型的には、必要に応じて、パッケージング細胞及び標的細胞においてコード配列の発現を誘導する1つ以上の調節エレメントの制御下に置かれる。DCのワクチン処理の成功が、DCの成熟状態に依存することを示す幾つかの証拠が開示されている(Banchereau,J及びPalucka,A.K.Nat.Rev.Immunol.5:296−306(2005)、Schuler,G.ら、Curr.Opin.Immunol.15:138−147(2003)、Figdor,CG.ら、Nat.Med.10:475−480(2004)、各々本願明細書に援用する)。DCは、成熟することにより、能動的に抗原捕捉に関与する細胞から、T細胞プライミングのために特殊化した細胞に変化しうる。本発明の一態様では、上記ベクターは、所望のDC成熟を生じさせるために、刺激分子をコードする遺伝子を含んでなる。かかる刺激分子は、成熟因子又は成熟刺激性因子と称することもある。
【0093】
幾つかの実施形態では、パッケージング細胞を、抗原をコードするウイルスベクターと、1つ以上の更なるベクターとで、コトランスフェクションする。例えば、抗原をコードするウイルスベクター以外の第2のベクターは、好ましくは、本願明細書の他の部分で記載されるように、樹状細胞と結合するターゲッティング分子(例えばSVGmu)をコードする遺伝子を有する。幾つかの好ましい実施例において、上記ターゲッティング分子は、DC−SIGNに特異的な修飾ウイルス糖タンパク質をコードする。上記修飾ウイルス糖タンパク質は好ましくは、以下の少なくとも1つに由来する:シンドビスウイルス、インフルエンザウイルス、ラッサ熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、デングウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、オーラウイルス、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス及びSARS−CoVウイルス。幾つかの実施形態では、抗原をコードするウイルスベクターはまた、DC成熟因子をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる。幾つかの実施形態では、抗原をコードするウイルスベクター及び1つ以上の更なるベクターと共にパッケージング細胞をコトランスフェクションするための、第3のベクター中に、DC成熟因子をコードするポリヌクレオチド配列が含まれる。
【0094】
他の実施形態では、パッケージング細胞における所望の組換えウイルスの製造に必要なエレメント(例えばウイルス遺伝子、1つ以上の目的遺伝子、ターゲッティング分子、DC成熟因子)を2つ以上含む、1つ以上のマルチシストロン発現ベクターを利用する。マルチシストロンベクターの使用により、必要なベクターの数を減少させ、それにより、複数のベクターからの発現を調整することに関連する諸問題が生じるのを回避することができる。マルチシストロンベクター中では、発現させる様々なエレメントを、1つ以上のプロモータ(また必要に応じて他の発現調節エレメント)に機能的に連結する。他の実施形態では、目的遺伝子、リポーター遺伝子及びウイルスエレメントを含んでなるマルチシストロンベクターを用いる。目的遺伝子は典型的には、抗原、及び任意にDC成熟因子をコードする。かかるベクターは例えば、ターゲッティング分子をコードするベクターとコトランスフェクションしてもよく、又は幾つかの実施形態では、FM及び親和性分子をコードするマルチシストロンベクターとコトランスフェクションしてもよい。幾つかの実施形態では、上記マルチシストロンベクターは、抗原をコードする遺伝子、DC成熟因子をコードする遺伝子及びウイルスエレメントを含んでなる。
【0095】
マルチシストロン発現ベクターにおいて発現する各コンポーネントを例えば、IRESエレメント又はウイルス2Aエレメントで分離させ、同じプロモータからの様々なタンパク質の別個の発現を可能にしてもよい。IRESエレメント及び2Aエレメントは公知である(米国特許第4937190号、de Felipeら、2004.Traffic 5:616−626、各々の全開示内容を本発明に援用する)。一実施形態では、口蹄病ウイルス(FMDV)に由来する、ヒューリン開裂部位の配列(RAKR)に連結する2A様配列(Fangら、2005.Nat.Biotech 23:584−590、全開示内容を本発明に援用する)、ウマの鼻炎Aウイルス(ERAV)、及びthosea asignaウイルス(TaV)(Szymczakら、2004.JVa/.Biotechnol.22:589−594、全開示内容を本発明に援用する)をコードするオリゴヌクレオチドを用いて、マルチシストロンベクター中の遺伝エレメントを分離する。所望の組換えウイルスの調製に用いられる特定のマルチシストロンベクターの有効性は、標準的なプロトコルを使用して、各々の遺伝子の発現を検出することによって、容易に試験することができる。
【0096】
1つ以上のベクターの調製は、例えば公知のいかなる適切な遺伝子工学的手法(制限エンドヌクレアーゼ処理、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製及びDNA塩基配列決定などの標準的技術を含むが、これらに限定されない)を使用して実施でき、かかる手法は、Sambrookら(1989.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.)、Coffinら(Retroviruses.Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.(1997))、及び”RNA Viruses:A Practical Approach”(Alan J.Cann,Ed.,Oxford University Press,(2000)などに記載されており、これらの全開示内容を本発明に援用する。
【0097】
上記の1つ以上のベクターには、いかなる周知の生物のゲノムに由来する配列を組み込まれていてもよい。上記の配列は、それらの天然型の状態で組み込まれてもよく、又は何らかの形で修飾されていてもよい。例えば、上記配列は挿入、欠失又は置換されていてもよい。
【0098】
コンポーネントの発現の調整に使用できる発現調節エレメントは、従来技術において公知であり、誘導性プロモータ、構成的プロモータ、分泌シグナル、エンハンサ及び他の調節エレメントなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
一実施形態では、ベクターは原核生物のレプリコン(すなわち当該ベクターで形質転換された原核生物宿主細胞中(細菌宿主細胞など)における自律的複製を可能とし、染色体外での、組換えDNA分子の保持を可能にするDNA塩基配列)を含んでなってもよい。かかるレプリコンは公知である。更に、原核生物のレプリコンを含むベクターは、発現の検出を可能にする標識(例えば薬剤耐性)を付与する遺伝子を含んでもよい。代表的な細菌の薬剤耐性遺伝子は、アンピシリン又はテトラサイクリン耐性を付与する遺伝子である。
【0100】
上記1つ以上のベクターは、真核細胞において効果的な選択マーカーをコードする1つ以上の遺伝子(例えば薬剤耐性選抜マーカー遺伝子)を含んでなってもよい。この遺伝子は、形質転換された宿主細胞が、選択培地において生存又は増殖するために必要となる因子をコードする。選抜遺伝子を含んでなるベクターで形質転換されない宿主細胞は、当該培地において生存できない。典型的な選抜遺伝子は抗生物質又は他の毒素(例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート又はテトラサイクリン)への耐性を付与するか、又は栄養要求性を補完するか、又は培地から除去された必須栄養分を供するためのタンパク質をコードする。選抜マーカーは、別のプラスミドに任意に存在させ、コトランスフェクションによって導入してもよい。
【0101】
ベクターは通常、パッケージング細胞により認識され、ターゲッティング分子、ウイルスコンポーネントなどをコードする1つ以上のポリヌクレオチドと機能的に連結するプロモータを含んでなる。プロモータは、RNAポリメラーゼを結合させ、転写を開始できる核酸配列により形成される発現調節エレメントである。プロモータは、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)(通常約100〜1000塩基対)に位置する非翻訳配列であり、それらに機能的に連結する抗原特異性ポリヌクレオチド配列の転写及び翻訳を制御する。プロモータは誘導的であってもよく、構成的であってもよい。誘導的プロモータの活性は、生物的若しくは非生物的な因子の有無により誘導される。誘導的プロモータは、それに機能的に連結する遺伝子の発現が、生物体の、又は特定の組織における特定の発達段階でオン又はオフにされうるため、遺伝子工学における有用なツールといえる。誘導的プロモータは、化学的に制御されるプロモータと、物理的に制御されるプロモータとに分類できる。典型的な化学的制御プロモータとしては、限定されないが、アルコール制御プロモータ(例えばアルコール脱水素酵素I(alcA)遺伝子プロモータ)、テトラサイクリン制御プロモータ(例えばテトラサイクリン感受性プロモータ)、ステロイド制御プロモータ(例えばマウス糖質コルチコイド受容体(GR)ベースのプロモータ、ヒトエストロゲン受容体(ER)ベースのプロモータ、ガエクジソン受容体プロモータ、並びにステロイド/レチノイド/チロイド受容体スーパーファミリーをベースとするプロモータ)、金属制御プロモータ(例えばメタロチオネイン遺伝子ベースのプロモータ)、並びに病原体関連プロモータ(例えばアラビドプシス属及びトウモロコシの病原体関連(PR)タンパク質ベースのプロモータ)などが挙げられる。典型的な物理的制御プロモータとしては、温度制御プロモータ(例えばヒートショックプロモータ)、及び光制御プロモータ(例えば大豆SSUプロモータ)などが挙げられるが、これらに限定されない。他の典型的なプロモータは、例えば、ハイパーテキスト転送プロトコル://www.patentlens.net/daisy/promoters/768/271.htmlなどに記載されており、その全開示内容を本発明に援用する。
【0102】
当業者であれば、特定の状況に基づいて適当なプロモータを選択できる。多くのプロモータが公知であり、また、プロモータを、発現させる遺伝子に機能的に連結させる方法も公知である。天然型のプロモータ配列、及び様々な異種プロモータを用いて、パッケージング細胞及び標的細胞における発現を誘導することができる。しかしながら、通常、天然型のプロモータと比較し、転写及び所望のタンパク質の収率を増加させるために、異種プロモータの使用が好適である。
【0103】
上記のプロモータは、例えばウイルスのゲノム(例えばポリオーマウイルス属、鶏痘ウイルス、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、細胞拡大ウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)から得ることができる。上記プロモータはまた、例えば異種の哺乳類プロモータ(アクチンプロモータ又は免疫グロブリンプロモータ)であってもよく、ヒートショックプロモータであってもよく、通常天然型配列を伴う又はプロモータでもよいが、かかるプロモータは、標的細胞との適合性を有する必要がある。一実施形態では、上記プロモータは、ウイルス発現システムにおいて天然に生じるウイルスプロモータである。幾つかの実施形態では、上記プロモータは樹状細胞に特異的なプロモータである。樹状細胞に特異的なプロモータとしては、例えばCD11cプロモータが挙げられる。
【0104】
エンハンサ配列を1つ以上のベクターに挿入することにより、転写を増強できる。エンハンサは典型的にはDNAのシス作用性エレメントであり、通常10〜300塩基対であり、プロモータに作用してその転写を増強する。多くの哺乳動物の遺伝子由来のエンハンサ配列が現在公知である(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、αフェトプロテイン及びインシュリン)。好ましくは、真核細胞ウイルス由来のエンハンサを用いる。例としては、複製開始点の後期側(100−270塩基対)のSV40エンハンサ、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサ、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサ、及びアデノウイルスエンハンサなどが挙げられる。上記のエンハンサは、ベクター中の、抗原特異的ポリヌクレオチド配列の5’又は3’側の位置にスプライシングされてもよいが、プロモータの5’側の位置が好ましい。
【0105】
発現ベクターはまた、転写の終結、及びmRNAの安定化のために必要な配列も含む。これらの配列は、真核生物であるかウイルスDNA又はcDNAの5’、あるいは3’側の非翻訳領域にしばしば存在し、公知である。
【0106】
上記のコンポーネントの1つ以上を含んでなるプラスシドベクターは、公知の標準的な技術を使用して容易に構築できる。
【0107】
構築されるプラスミドが正しい配列を有するか否かを確認する分析では、当該プラスミドを大腸菌において複製させ、精製し、制限エンドヌクレアーゼ処理することにより分析し、及び/又は従来法に従いシーエンシングする。
【0108】
哺乳動物細胞中でのトランジェントな発現を行わせるベクターを使用してもよい。トランジェント発現では、宿主細胞において能率的に複製できる発現ベクターの使用を伴い、それにより、宿主細胞中に発現ベクターのコピーが蓄積し、次に、発現ベクター中の抗原特異的ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが高レベルで合成される。上記、Sambrookら、pp.16.17−16.22を参照のこと。
【0109】
ウイルスポリペプチドの発現の調節に適する他のベクター及び方法は公知で、特定の状況に応じて容易に調節できる。
【0110】
本発明において提供される教示から、当業者であれば、特定の発現システムの有効性を、リポータタンパク質をコードする遺伝子を含んでなるベクターを用いてパッケージング細胞を形質転換し、適切な技術(例えば緑色蛍光タンパク複合体からの蛍光の測定)を使用して発現を測定することにより試験できると認識するであろう。適切なリポーター遺伝子は公知である。
【0111】
本発明のベクターによるパッケージング細胞の形質転換は、周知の方法により実施でき、使用する方法は特に限定されない。多くの非ウイルスデリバリーシステムが従来公知であり、例えばエレクトロポレーション、リポソームを含んでなる脂質ベースのデリバリー系、「裸の」DNAの輸送及びポリシクロデキストリン化合物を使用した輸送(例えば、Schatzlein AG.(2001.Non−Viral Vectors in Cancer Gene Therapy:Principles and Progresses.Anticancer Drugsに記載、全開示内容を本発明に援用する)などが挙げられる。典型的にはカチオン脂質又は塩による処理方法が使用される(Grahamら、(1973.Virol.52:456、Wiglerら、(1979.Proc.Natl.Acad.ScL USA 76:1373−76参照)全開示内容を本発明に援用する)。リン酸カルシウム沈殿法が好ましい。しかしながら、ベクターを細胞に導入するための他の方法(核へのマイクロインジェクションや細菌プロトプラスト融合など)を用いてもよい。
【0112】
ウイルスベクター及びパッケージング細胞:
ベクターのうちの1つは、コアウイルス(「ウイルスベクター」)をコードする。例えばヒト遺伝子治療用途に用いられるものをはじめとする、本発明の用途への利用に適する多数のウイルスベクターが存在する(Pfeifer及びVerma(Pfeifer,A.and LM.Verma.2001.Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.2:177−211(全開示内容を本発明に援用する)に記載のものなど)。適切なウイルスベクターとしては、RNAウイルス(例えばレトロウイルス由来ベクター)ベースのベクター(例えばマローニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクター)や、より複雑なレトロウイルス由来ベクター(例えばレンチウイルスに由来するベクター)などが挙げられる。ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)由来ベクターはこのカテゴリに属する。他の例としては、HIV−2、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)及びヒツジ慢性進行性肺炎/ビスナウイルスに由来するレンチウイルスベクターなどが挙げられる。
【0113】
好ましくは、上記ウイルスベクターは、組換えウイルスのコンポーネントをコードする1つ以上の遺伝子、並びに、例えば1つ以上の目的遺伝子(例えば抗原及び/又はDC成熟因子)を含んでなる。上記ウイルスベクターは、標的細胞における目的遺伝子の発現を促進する遺伝因子(例えばプロモータ及びエンハンサ配列)を含んでなってもよい。標的細胞の複製を防止するために、複製のために必要な内因性のウイルス遺伝子を取り除き、パッケージング細胞株に別に提供してもよい。
【0114】
好ましい実施形態では、上記ウイルスベクターは、完全長レトロウイルス5’LTR及び自己不活性化3’LTRを含んでなる。
【0115】
公知のあらゆる方法を用いて、ウイルスベクターのRNAコピーを含むゲノムを有する感染性のレトロウイルス粒子を調製してもよい。この目的においては、好ましくは、ウイルスベクター(目的遺伝子、DC特異的なターゲッティング分子、その他をコードする他のベクターとともに)を、(ウイルスベクターをベースとするウイルスゲノムRNAをウイルス粒子にパッケージングする)パッケージング細胞株に導入する。
【0116】
パッケージング細胞株は、ウイルス粒子へのウイルスゲノムRNAのパッケージングにおいて必要とされるウイルスタンパクを、in transで提供する。パッケージング細胞株は、レトロウイルスタンパク質を発現できるいかなる細胞株であってもよい。好ましいパッケージング細胞株としては、293(ATCC CCL X)、HeLa(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL−10)、及びCf2Th(ATCC CRL 1430)が挙げられる。パッケージング細胞株は、必要なウイルスタンパクを安定的に発現できる。かかるパッケージング細胞株は例えば、米国特許第6218181号に記載されていおり、その全開示内容を本発明に援用する。あるいは、パッケージング細胞株を、1つ以上の必要なウイルスタンパク(DCに特異的なターゲッティング分子(又はDC−特異的な親和性分子及び融合性分子)を含む)をコードする核酸を含んでなるプラスミドで、目的遺伝子をコード(典型的には抗原をコードし、更にDC成熟因子をコードしてもよい)するウイルスベクターと共にトランジェントにトランスフェクションしてもよい。
【0117】
目的遺伝子を有するポリヌクレオチドと、樹状細胞に特異的であるターゲッティング分子とを含んでなるウイルス粒子を回収し、標的細胞を感染させることができる。幾つかの好ましい実施形態では、上記ウイルスをシュードタイプ化し、標的細胞特異性を付与する。シュードタイプ化の方法は、従来技術において公知であり、更に本願明細書においても記載されている。
【0118】
一実施形態では、目的遺伝子の輸送に用いる組換えウイルスは修飾されたレンチウイルスであり、当該ウイルスベクターはレンチウイルスをベースとする。レンチウイルスは、分裂細胞及び非分裂細胞に感染できるため、本実施形態では、標的細胞が分裂する細胞であること(又は標的細胞の分裂を促進すること)は必要ない。
【0119】
他の実施形態では、目的遺伝子の輸送に用いる組換えウイルスは修飾されたガンマレトロウイルスであり、当該ウイルスベクターはガンマレトロウイルスをベースとする。
【0120】
他の実施形態では、上記ベクターはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)をベースとする(Hawley,R.G.,ら、(1996) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:10297−10302、Keller,G.,ら、(1998) Blood 92:877−887、Hawley,R.G.,ら、(1994) Gene Ther.1 :136−138、各々の全開示内容を本発明に援用する)。MSCVベクターは、標的細胞、特に造血前駆細胞及びそれらの分化した後継細胞における、長期的かつ安定的な発現を提供する。
【0121】
他の実施形態では、上記ベクターは修飾されたマローニーウイルス(例えばマローニーマウス白血病ウイルス)をベースとする。上記ウイルスベクターはまた、Choi,J.K.,ら、(2001.Stem Cells 19,No.3,236−246、全開示内容を本発明に援用する)に記載のようなハイブリッドウイルスをベースとしてもよい。
【0122】
DNAウイルスベクターは、例えばアデノウイルスベースのベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターなどを使用してもよい。同様に、レトロウイルス−アデノウイルスベクターも、本発明の方法に使用できる。
【0123】
他のベクターとして、単純疱疹ウイルス(HSV)に由来するベクター(例えばアンプリコンベクター、複製不能HSV及び弱毒化HSVなど)も、ポリヌクレオチド輸送の際に使用できる。(Krisky DM,Marconi PC,Oligino TJ,Rouse RJ,Fink DJ,ら、1998.Development of herpes simplexウイルス replication−defective multigene vectors for combination gene therapy applications.Gene Ther.5:1517−30、全開示内容を本発明に援用する)。
【0124】
遺伝子治療用途のために最近開発された他のベクターを、本発明の方法に使用することもできる。かかるベクターとしては、バキュロウイルス及びα−ウイルスに由来するものが挙げられる(Jolly DJ.1999.Emerging viral vectors,pp 209−40 in Friedmann T,ed.1999.The development of human gene therapy.New York:Cold Spring Harbor Lab、全開示内容を本発明に援用する)。
【0125】
幾つかの好ましい実施形態では、上記ウイルス構築物は、レンチウイルスゲノム(例えばHIVゲノム又はSIVゲノム)由来の配列を含んでなる。上記ウイルス構築物は、レンチウイルスの5’及び3’LTR由来の配列を有するのが好ましい。好ましくは、上記ウイルス構築物は、レンチウイルスの5’LTRからのR及びU5配列、並びにレンチウイルスからの不活性化若しくは自己不活性化3’LTRを含んでなる。LTR配列は、いかなる種に由来するレンチウイルスのLTR配列でもあってもよい。例えば、それらはHIV、SIV、FIV又はBIVに由来するLTR配列でもよい。好ましくは、LTR配列はHIV LTR配列である。
【0126】
ウイルス構築物は好ましくは、不活性若しくは自己不活性化3’LTRを含んでなる。3’LTRは、公知のいかなる方法によって自己不活性化して作製してもよい。好ましい実施形態では、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサ配列(好ましくはTATAボックス、SpI及びNF−κB部位)が欠失している。3’LTRの自己不活性化の結果、宿主細胞ゲノムに組み込まれるプロウイルスは不活性5’LTRを含んでなる。
【0127】
任意に、ウイルス構築物中において、レンチウイルス5’LTRからのU3配列を、プロモータ配列と置換してもよい。これにより、パッケージング細胞株から回収されるウイルスのタイターを増加させることができる。エンハンサ配列を含ませてもよい。パッケージング細胞株におけるウイルスRNAゲノムの発現を増加させるいかなるエンハンサ/プロモータの組合せを使用してもよい。好ましい実施形態では、CMVエンハンサ/プロモータ配列を用いる。
【0128】
幾つかの好ましい実施形態では、ウイルス構築物は、ガンマレトロウイルスゲノム(例えばマウス幹細胞ウイルス(MSCV)ゲノム又はマウス白血病ウイルス(MLV)ゲノム)由来の配列を含んでなる。上記ウイルス構築物は、ガンマレトロウイルスの5’及び3’LTR由来の配列を有するのが好ましい。LTR配列は、いかなる種からのいかなるガンマレトロウイルスに由来するLTR配列であってもよい。例えば、それらはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、ネコ肉腫ウイルス(FAV)及び鳥類細網内皮症ウイルス(ARV)からのLTR配列でもよい。好ましくは、LTR配列はMSCV及びMLV LTR配列である。
【0129】
幾つかの実施形態では、ウイルス構築物は好ましくは不活性若しくは自己不活性化3’LTRを含んでなる。3’LTRは、公知のいかなる方法によって自己不活性化して作製してもよい。好ましい実施形態では、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサ配列(好ましくはTATAボックス、SpI及びNF−κB部位)が欠失している。3’LTRの自己不活性化の結果、宿主細胞ゲノムに組み込まれるプロウイルスは不活性5’LTRを含んでなる。
【0130】
任意に、ガンマレトロウイルスの5’LTRからU3配列を、ウイルス構築物のプロモータ配列と置換してもよい。これにより、パッケージング細胞株から回収されるウイルスのタイターを増加させることができる。エンハンサ配列を含ませてもよい。パッケージング細胞株におけるウイルスRNAゲノムの発現を増加させるいかなるエンハンサ/プロモータの組合せを使用してもよい。好ましい実施形態では、CMVエンハンサ/プロモータ配列を用いる。
【0131】
ウイルス構築物は一般に、1つ以上の標的細胞において所望どおりに発現する抗原をコードする遺伝子を含んでなる。好ましくは、当該目的遺伝子は5’LTR及び3’LTR配列の間に位置する。更に、目的遺伝子は、好ましくは他の遺伝因子、例えば転写制御配列、例えばプロモータ及び/又はエンハンサと機能的に連携しており、それにより、遺伝子が標的細胞に組み込まれた後、特定の方法で目的遺伝子の発現が調整される。ある種の実施形態では、有用な転写制御配列は活性に関して、時間的及び空間的に制御される。
【0132】
幾つかの実施形態では、上記目的遺伝子は、内部プロモータ/エンハンサ制御配列との機能的な関係を有する。「内部」プロモータ/エンハンサは、ウイルス構築物の5’LTRと3’LTR配列の間に位置し、望ましくは発現させる遺伝子に機能的に連結している。
【0133】
内部プロモータ/エンハンサは、機能的な関係を有する遺伝子の発現を増加させることが公知である、いかなるプロモータ、エンハンサ又はプロモータ/エンハンサの組合せでもあってもよい。「機能的な関係」及び「機能的に連結した」とは、限定されないが、遺伝子がプロモータ及び/又はエンハンサに対して適切な位置及び方向で存在し、プロモータ及び/又はエンハンサが適当な分子と接触したときに当該遺伝子の発現が影響を受けることを意味する。
【0134】
内部プロモータ/エンハンサは好ましくは、目的遺伝子の所望の発現パターン及び周知のプロモータ/エンハンサの特異性に基づいて選択される。すなわち、内部プロモータは構成的プロモータでもよい。使用できる構成的プロモータの例としては、限定されないが、ユビキチンプロモータ、CMV(Karasuyamaら、1989.J.Exp.Med.169:13、全開示内容を本発明に援用する)、ベータ−アクチン(Gunningら、1989.Proc.Natl.Acad.ScL USA 84:4831−4835、全開示内容を本発明に援用する)、及びpgk(Adraら、1987.Gene 60:65−74、Singer−Samら、1984.Gene 32:409−417、及びDobsonら、1982.Nucleic Acids Res.10:2635−2637を参照、各々の開示内容を本発明に援用する)。
【0135】
あるいは、プロモータは組織特異的プロモータでもよい。幾つかの好ましい実施形態では、上記プロモータは、標的細胞特異的なプロモータである。例えば、上記プロモータは樹状細胞特異的なプロモータCD11cであってもよい(Masood,R.,ら、2001.Int J MoI Med 8:335−343、 Somia,N.V.,ら、1995.Proc Acad Sci USA 92:7570−7574、各々の開示内容を本発明に援用する)。更に、プロモータは、遺伝子の誘導発現を考慮に入れて選択してもよい。誘導発現のための多くのシステムは従来技術において公知であり、テトラサイクリン応答システム及びlacオペレータ−リプレッサシステムなどが挙げられる。プロモータの組み合わせを用いて、目的遺伝子の所望の発現を得てもよいと考えられる。当業者であれば、生物体及び/又は目的の標的細胞の遺伝子の所望の発現パターンに基づいて、プロモータを選択できる。
【0136】
幾つかの実施形態では、ウイルス構築物は、好ましくは少なくとも1つのRNAポリメラーゼII又はIIIのプロモータを含んでなる。RNAポリメラーゼII又はIIIプロモータは、目的遺伝子に機能的に連結され、また終結配列に結合していてもよい。更に、1つ以上のRNAポリメラーゼII又はIIIプロモータを組み込んでもよい。
【0137】
RNAポリメラーゼII及びIIIプロモータは当業者に周知である。適切なRNAポリメラーゼIIIプロモータの種類は、例えばPaule及びWhite.Nucleic Acids Research.,Vol28,pp1283−1298(2000)に記載されており、その開示内容を本発明に援用する。RNAポリメラーゼII又はIIIプロモータの定義には、それぞれ、下流のRNAコード配列を転写するように、RNAポリメラーゼII又はIIIそれぞれに指示できる、いかなる合成若しくは設計されたDNA断片も包含される。更に、ウイルスベクターの一部として使用する1つ以上のRNAポリメラーゼII又はIII(PolII又はIII)プロモータは、誘導的であってもよい。いかなる適切な誘導的なPolII又はIIIプロモータも、本発明の方法に使用できる。特に適するPolII又はIIIプロモータとしては、Ohkawa及びTaira Human Gene Therapy,Vol.11,pp577−585(2000)、及びMeissnerら、Nucleic Acids Research,Vol.29,pp 1672−1682(2001)(各々の全開示内容を本発明に援用する)に記載のテトラサイクリン応答性プロモータなどが挙げられる。
【0138】
目的遺伝子の発現を増加させるために、内部エンハンサをウイルス構築物に存在させてもよい。例えばCMVエンハンサを使用できる(Karasuyamaら、1989.J.Exp.Med.169:13、全開示内容を本発明に援用する)。幾つかの実施形態では、CMVエンハンサを、チキンβ−アクチンプロモータと組み合わせて使用できる。当業者であれば、所望の発現パターンに基づいて、適切なエンハンサを選択できる。
【0139】
目的のポリヌクレオチド又は遺伝子はいかなる形にも限定されず、標的細胞において当業者がインテグレートさせ、転写させ、翻訳させ及び/又は発現させようとするいかなる核酸であってもよい。幾つかの実施形態では、上記ポリヌクレオチドは、免疫応答をさせようとする抗原をコードする遺伝子であってもよい。幾つかの実施形態では、上記ポリヌクレオチドは、小分子阻害RNA(siRNA)、又は分子の発現を下方制御する目的のマイクロRNA(miRNA)をコードする遺伝子であってもよい。例えば、siRNA又はマイクロRNAをコードする遺伝子を使用して、細胞内での負のレギュレータ(樹状細胞の活性化又は成熟を阻害するものを含む)の発現を下方制御することができる。siRNAs及びマイクロRNAは、従来技術において公知であり、多くの報告がなされている(Shen,L.ら、2004.Nat Biotech 22(12):1546−1553、Zhou,H.ら、2006.Biochemical and Biophysical Research Communications 347:200−207、Song,X−T.,ら、2006.PLoS Medicine 3(1):e11、Kobayashi,T.及びA.Yoshimura.2005.TRENDS in Immunology 26(4):177−179、Taganov,K.,ら、2007.Immunity 26:133−137、Dahlberg,I.E.及びE.Lund.2007.Sd.STKE 387:pe25、各々の全開示内容を本発明に援用する)。
【0140】
更に、幾つかの実施形態では、上記ポリヌクレオチドは1つ以上の目的遺伝子を含んでなってもよく、それはウイルスプロモータとの機能的な関係で配置されてもよい。上記目的遺伝子は、タンパク質、siRNA又はマイクロRNAをコードできる。幾つかの実施形態では、輸送されるポリヌクレオチドは、少なくとも1つのタンパク質、少なくとも1つのsiRNA、少なくとも1つのマイクロRNA又はそれらのあらゆる組み合わせをコードする多数の遺伝子を含んでなってもよい。例えば、輸送されるポリヌクレオチドは、免疫応答を生じさせようとする1つ以上の抗原をコードする1つ以上の遺伝子を含んでなってもよい。上記1つ以上抗原は、単一の疾患若しくは障害に関連してもよく、又は、多数の疾患及び/又は障害に関連してもよい。幾つかの実施形態では、免疫調節タンパクをコードする遺伝子を、免疫応答を生じさせようとする抗原をコードする主要な遺伝子と共に構築し、その組合せにより、免疫応答を所望の方向及び規模で生じさせ、制御することができる。幾つかの実施形態では、siRNA又はマイクロRNAをコードする遺伝子を、免疫応答を生じさせようとする抗原をコードする主要な遺伝子と共に構築し、その組合せにより、免疫応答の規模を調整できる。(配列番号9及び配列番号10の付随配列をそれぞれ有する、
図24c及び
図24dのポリヌクレオチドの実施形態を参照)。幾つかの実施形態では、マーカータンパク質をコードする遺伝子を、目的の主要な遺伝子の後に配置することにより、所望のタンパク質を発現する細胞を識別することができる。一実施形態では、蛍光マーカータンパク質、好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)を、目的(典型的には抗原をコードする)遺伝子に加えて、構築物に組み込む。1つ以上の遺伝子が含まれる場合、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列又は2Aエレメントを含ませ、リポーター遺伝子及び/又は目的の他のいかなる遺伝子から、目的の主要な遺伝子を分離するのも好ましい。IRES又は2A配列は、リポーター遺伝子又は他の遺伝子の発現を促進してもよい。
【0141】
ウイルス構築物は、更なる遺伝因子を含んでもよい。構築物に含まれてもよいエレメントのタイプは、いかなる形であれ限定されず、特定の結果を生じさせるために当業者により適宜選択される。例えば、標的細胞のウイルスのゲノムの核内への侵入を促進するシグナルを含めてもよい。かかるシグナルの例は、HIV−1 flapシグナルである。
【0142】
更に、標的細胞のプロウイルスインテグレート部位の解析を促進するエレメントを含めてもよい。例えば、tRNAアンバーサプレッサ配列を構築物に含めてもよい。
【0143】
更に、上記構築物は、目的遺伝子の発現を強化するように設計された1つ以上の遺伝因子を含んでなってもよい。例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス応答エレメント(WRE)を構築物に配置してもよい(Zuffereyら、1999.J.Virol.74:3668−3681、Deglonら、2000.Hum.Gene Ther.11:179−190、全開示内容を本発明に援用する)。
【0144】
チキンβ−グロビンインスレータをウイルス構築物に含めてもよい。このエレメントは、メチル化及びヘテロクロマチン効果による、標的細胞中にインテグレートされたプロウイルスのサイレンシングを減少させることが示されている。更に、上記インスレータは、染色体上のインテグレート部位における、DNAの包囲によるポジティブ若しくはネガティブな位置的効果から、内部エンハンサ、プロモータ及び外因の遺伝子を保護することができる。
【0145】
他のあらゆる付加的な遺伝因子を、好ましくは目的遺伝子の3’側に挿入してもよい。
【0146】
特定の実施形態では、ウイルスベクターは以下を含んでなる:サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサ/プロモータ配列、HIV 5’LTR由来のR及びU5配列、HIV−I flapシグナル、内部エンハンサ、内部プロモータ、目的遺伝子、ウッドチャック肝炎ウイルス応答配列、転移RNAアンバーサプレッサ配列、エンハンサ配列が欠失したU3エレメント、チキンβグロビンインスレータ、並びに3’HIV LTRのR及びU5配列。
【0147】
好ましくはウイルス構築物を、パッケージング細胞株をトランスフェクションすることができるプラスミドにクローニングする。好適なプラスミドは、好ましくはバクテリアにおけるプラスミドの複製のために有用な配列を含んでなる。
【0148】
ウイルスの輸送:
目的のポリヌクレオチドを輸送しようとする標的樹状細胞(DC)とウイルスとを接触させることができるあらゆる方法により、ウイルスを標的細胞に輸送することができる。他の好ましい実施形態では、適当量のウイルスを直接(in vivoで)動物に、例えば生体への注射により導入する。幾つかの好ましい実施形態では、ウイルス粒子を哺乳類の抹消血流中に注入する。他の好ましい実施形態では、ウイルス粒子を、皮内注射、皮下注射、腹腔内注射又は静脈注射により哺乳類に注入する。ウイルスは、以下の文献で開示される装置のような皮下注射装置を使用して輸送することができる米国特許第7241275号、第7115108号、第7108679号、第7083599号、第7083592号、第7047070号、第6971999号、第6808506号、第6780171号、第6776776号、第6689118号、第6670349号、第6569143号、第6494865号、第5997501号、第5848991号、第5328483号、第5279552号、第4886499号(各々の全開示内容を本発明に援用する)。例えば直接標的細胞を含む器官などの、他の注入部位の使用も適切である。例えば、リンパ節内注入、脾臓内注入又は骨髄内注入を、それぞれリンパ節、脾臓及び骨髄へのウイルスの輸送に用いることができる。特定の事情及び標的細胞の性質に応じて、例えば吸入又は上皮組織(例えば目、口又は皮膚の当該組織)との直接接触などの、他の手段で導入を実施できる。
【0149】
他の実施形態では、標的細胞を、例えば培養組織プレートで準備し、in vitroでウイルスと接触させる。標的細胞は典型的には、治療を必要とする健常者又は患者から得られる樹状細胞である。好ましくは、標的細胞は、抗原に対する免疫応答を刺激することが望ましい患者から得られた樹状細胞である。患者から細胞を得る方法は公知技術である。ウイルスを培地中に懸濁させ、培養組織プレート、チューブ又は他の容器のウェルに添加してもよい。ウイルスを含んでなる培地は、細胞のプレーティングの前、又は細胞のプレーティングの後に添加してもよい。好ましくは、細胞を適当量の培地中でインキュベートして生存させ、培地中のウイルス濃度を適当なレベルにし、宿主細胞の感染を生じさせる。
【0150】
細胞を好ましくは、充分な時間ウイルスとインキュベートし、ウイルスを細胞に感染させる。好ましくは、細胞を少なくとも1時間ウイルスとインキュベートし、より好ましくは少なくとも5時間、更に好ましくは少なくとも10時間インキュベートする。
【0151】
in vivo及びin vitroでの輸送の実施形態では、所望の標的細胞を感染させるのに十分な、任意の濃度のウイルスを使用することができ、または当業者であれば容易に決定できる。標的細胞を培養するとき、ウイルス粒子の濃度は少なくとも1PFU/μl、好ましくは少なくとも10PFU/μl、更により好ましくは少なくとも400PFU/μl、及び更により好ましくは少なくとも1×10
4PFU/μlである。
【0152】
幾つかの実施形態では、in vitroでのウイルス感染の後、標的細胞を動物に導入(又は再導入)することができる。幾つかの実施形態では、細胞を真皮中、真皮下、又は末梢血流中に導入することができる。動物に導入される細胞は好ましくは、その動物に由来する細胞であり、望ましくない免疫応答を回避する。同様の免疫バックグラウンドを有するドナー動物に由来する細胞を使用してもよい。望ましくない免疫反応を回避するように設計された細胞などの、他の細胞を使用してもよい。
【0153】
標的細胞を、例えば1つ以上の目的のポリヌクレオチド又は遺伝子のインテグレート、転写及び/又は発現、インテグレートされた遺伝子のコポー数、及びインテグレートされた位置に関して分析してもよい。かかる分析は任意のタイミングで実施してもよく、公知のあらゆる方法で実施できる。
【0154】
組換えウイルス又はウイルス感染したDCが投与される患者を、感染した細胞の位置、ウイルスで輸送された目的のポリヌクレオチド又は遺伝子の発現、免疫応答の刺激に関して分析し、また公知のあらゆる方法で疾患又は障害に伴う症状をモニターしてもよい。
【0155】
上記で開示した、細胞を感染させる方法は、個々の細胞の具体的な特性には依存しない。それにより、それらの方法は全ての哺乳動物に対して広く適用できる。幾つかの実施形態では、組換えウイルスをヒトに、又はヒト樹状細胞に輸送する。他の実施形態では、組換えウイルスをマウスに、又はマウス樹状細胞に輸送する。更に他の実施形態では、組換えウイルスを、ヒト若しくはマウス以外の動物に、又はヒト若しくはマウス以外の動物由来の樹状細胞に輸送する。
【0156】
上記のように、標的細胞特異性のみならず広範囲の宿主にも適用できるよう、組換えウイルスをシュードタイプ化することができる。当業者であれば、特定の動物種における目的ポリヌクレオチド又は遺伝子の所望の発現を実施するため、適当な内部プロモータを使用することを想起するであろう。すなわち当業者であれば、いかなる種に由来する樹状細胞を感染させるために、上記の方法を改変できる。
【0157】
上記組換えウイルスを評価することにより、樹状細胞を標的とするウイルスに組み込んだターゲッティング分子の特異性を測定することができる。例えば、骨髄細胞の混合集団を患者から採取し、in vitroで培養する。更に上記組換えウイルスを骨髄細胞の混合集団に投与し、ウイルスに組み込まれたリポーター遺伝子の発現を、培養細胞においてアッセイすることができる。幾つかの実施形態では、混合細胞集団の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、70%、80%若しくは90%、更に好ましくは少なくとも95%の形質導入された細胞が、DC−SIGNを発現する樹状細胞である。
【0158】
治療:
本発明の方法は、多様な疾患又は障害(特に患者の免疫応答の活性化が有益である疾患又は障害)の予防若しくは治療に使用できる。かかる多数の疾患は、従来技術において公知である。例えば、本発明の方法によって治療若しくは予防できる疾患又は障害としては癌、自己免疫疾患及び感染が挙げられるが、これらに限定されず、その他ウイルス、細菌、菌類及び寄生虫による感染症も包含される。本発明の実施形態では、疾患は、組換えウイルスを用いて樹状細胞に目的遺伝子を輸送することにより治療され、その際、当該遺伝子の発現により疾患特異的な抗原を生じさせ、抗原特異的な細胞性免疫応答及び体液性免疫応答が刺激される。
【0159】
本発明の実施形態では、組換えウイルスを用いて、樹状細胞に対して、免疫応答を生じさせようとする抗原をコードするポリヌクレオチドを輸送する。幾つかの実施形態では、in vitroで組換えウイルスと樹状細胞とを接触させることにより輸送を実施することができ、その後で、形質転換した樹状細胞を患者に提供する。幾つかの実施形態では、ウイルスを患者に輸送し、in vivoでの樹状細胞との接触をさせる、輸送形態を実施することもできる。樹状細胞は更に、患者の抗原特異的なT細胞又はB細胞を刺激し、発現された抗原に対する細胞性及び体液性の免疫応答を誘導する。かかる実施形態では、疾患又は障害に罹患する患者を、所望の特異性を有する免疫細胞を生成させることにより治療する。
【0160】
疾患又は障害に関与するいかなる抗原も、本願明細書に記載の組換えウイルスを使用して、樹状細胞に輸送することができる。疾患又は障害に関与する抗原を同定し、樹状細胞をターゲッティングする組換えウイルスの調製に利用できる。疾患及び障害に関与する多くの抗原が公知である。抗原は、疾患又は障害に関与することが既に公知であるものであってもよく、又は公知技術の任意の方法で同定してもよい。例えば、腫瘍関連抗原などの、患者が罹患しているある種の癌の抗原については、公知になっているものもある。1つの態様では、本発明は、設計された組換えレンチウイルスを用いて、DCに対して、腫瘍抗原及び他の必要なタンパク質をコードする遺伝子をin vivoで輸送する方法の提供に関する。他の実施形態では、疾患又は障害に関連する抗原を、治療しようとする患者から同定する。例えば、腫瘍に関与する抗原を、公知の任意の方法により、腫瘍自体から同定してもよい。腫瘍関連抗原は、いかなる形であれ限定されず、例えば治療しようとする患者由来の癌細胞において同定された抗原などが挙げられる。
【0161】
腫瘍関連抗原は、例えば前立腺癌及び乳癌などの、様々な癌に関するものが知られている。幾つかの乳癌において、例えばHer−2受容体が、癌細胞の表面に過剰発現する。典型的な腫瘍抗原としては:MAGE、BAGE、RAGE及びNY−ESO(精巣の免疫特権的な領域において、及び様々な腫瘍細胞において発現する非変異抗原)、メラノサイト−黒色腫系統の抗原MART−1/Melan−A、gp100、gp75、mda−7、チロシナーゼ及びチロシナーゼ関連タンパク質、又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)のような系統特異的な腫瘍抗原、並びに前立腺特異的抗原(PSA)(同じ組織に由来する健常細胞及び腫瘍細胞において発現する抗原)、腫瘍細胞において突然変異した遺伝子か、又は腫瘍において、標準細胞と比較して格段のレベルで転写される遺伝子に由来する、エピトープタンパク質/ペプチド(例えば変異ras癌遺伝子、bcr/abl再編成、Her2/neu、変異又は野生型p53、チトクロームP450 1B1及び異常に発現されたイントロン配列(例えばN−V−アセチルグルコサミン転移酵素−V))、骨髄腫及びB細胞リンパ腫のユニークなイディオタイプを生成させている免疫グロブリン遺伝子のクローンの再編成、腫瘍ウイルスプロセスに由来するエピトープタンパク質/ペプチド(例えばヒト乳頭腫ウイルスタンパク質E6及びE7)、腫瘍選択的な発現による非変異癌胎児性タンパク(例えば胎児性癌抗原及びアルファフェトプロテイン)などが挙げられる。多くの腫瘍関連抗原がレビューされている(”Tumor−Antigens Recognized By T−Lymphocytes,”Boon T,Cerottini J C,Vandeneynde B,Vanderbruggen P,Vanpel A,Annual Review Of Immunology 12:337−365,1994、”A listing of human tumor antigens recognized by T cells,”Renkvist N,Castelli C,Robbins P F,Parmiani G.Cancer Immunology Immunotherapy 50:(1)3−15 MAR 2001を参照。全開示内容を本発明に援用する)。
【0162】
抗原は、感染症(例えばHIV/エイズ)に関連する抗原であってもよい。上記抗原は例えばgp120であってもよい(Klimstra,W.B.,ら、2003.J Virol 77:12022−12032、Bernard,K.A.,ら、2000.Virology 276:93−103、Byrnes,A.P.,ら、1998.J Virol 72:7349−7356、各々の全開示内容を本発明に援用する)。その他の抗原の例としては、限定されないが、gag、pol、env、tat、nef及びrevなどが挙げられる(Lieberman,J.ら、1997.AIDS Res Hum Retrotiruses 13(5):383−392、Menendez−Arias,L.ら、1998.Viral Immunol 11(4):167−181、全開示内容を本発明に援用する)。
【0163】
ウイルス抗原の例としては限定されないが、以下のものが挙げられる:アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、ネコカリチウイルスポリペプチド(例えばネコカリチウイルスカプシド抗原)、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド(例えばB型肝炎の核又は表面抗原)、ヘルペスウイルスポリペプチド(例えば単純疱疹ウイルス又は水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質)、免疫不全ウイルスポリペプチド(例えばヒト免疫不全ウイルスエンベロープ又はプロテアーゼ)、感染性の腹膜炎ウイルスポリペプチド、インフルエンザウイルスポリペプチド(例えばインフルエンザA型ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ又は核タンパク質)、白血病ウイルスポリペプチド、マルブルクウイルスポリペプチド、オルトミクソウイルスポリペプチド、乳頭腫ウイルス属ポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド(例えばヘマグルチニン/ノイラミニダーゼ)、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチドピコルナウイルスポリペプチド(例えばポリオウイルスカプシドポリペプチド)、ポックスウイルスポリペプチド(例えばワクシニアウイルスポリペプチド)、狂犬病ウイルスポリペプチド(例えば狂犬病ウイルス糖タンパク質G)、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド及びロタウイルスポリペプチド。
【0164】
細菌抗原の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:放線菌ポリペプチド、バシラス属ポリペプチド、バクテロイデスポリペプチド、ボルデテラ属ポリペプチド、バルトネラ属ポリペプチド、ボレリア属ポリペプチド(例えばB.ブルグドルフェリOspA)、ブルセラ属ポリペプチド、カンピロバクター属ポリペプチド、キャプノサイトファーガ属ポリペプチド、クラミジア属ポリペプチド、クロストリジウム属ポリペプチド、コリネバクテリウム属ポリペプチド、コクシエラ属ポリペプチド、デルマトフィルス属ポリペプチド、エンテロコッカス属ポリペプチド、エールリッヒア属ポリペプチド、エシェリヒア属ポリペプチド、フランキセラ属ポリペプチド、フゾバクテリウム属ポリペプチド、ヘモバルトネラ属ポリペプチド、ヘモフィルス属ポリペプチド(例えばインフルエンザ菌タイプb外膜タンパク質)、ヘリコバクター属ポリペプチド、クレブシエラ属ポリペプチド、L型バクテリアポリペプチド、レプトスピラ属ポリペプチド、リステリア属ポリペプチド、マイコバクテリウム属ポリペプチド、ミコプラスマ属ポリペプチド、ナイセリア属ポリペプチド、ネオリケッチア属ポリペプチド、ノカルジア属ポリペプチド、パスツレラ属ポリペプチド、ペプトコッカス属ポリペプチド、ペプトストレプトコッカス属ポリペプチド、ニューモコッカス属ポリペプチド、プロテウス属ポリペプチド、シュードモナス属ポリペプチド、リケッチア属ポリペプチド、ロシャリメア属ポリペプチド、サルモネラ属ポリペプチド、シゲラ属ポリペプチド、スタフィロコッカス属ポリペプチド、ストレプトコッカス属ポリペプチド(例えばS.パイロジェンのMタンパク質)、トレポネーマ属ポリペプチド及びエルシニア属ポリペプチド(例えばY.ペスティスのF1及びV抗原)。
【0165】
真菌抗原の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:アブシディア属ポリペプチド、アクレモニウム属ポリペプチド、アルテルナリア属ポリペプチド、アスペルギルス属ポリペプチド、バシディオボールス属ポリペプチド、ビポラリス属ポリペプチド、ブラストミセス属ポリペプチド、カンジダ属ポリペプチド、コクシジオイデス属ポリペプチド、コニディオボルス属ポリペプチド、クリプトコックス属ポリペプチド、クルバラリア属ポリペプチド、表皮菌ポリペプチド、エキソフィアラ属ポリペプチド、ジオトリカム属ポリペプチド、ヒストプラズマ属ポリペプチド、マズレラ属ポリペプチド、マラセジア属ポリペプチド、小胞子菌ポリペプチド、モニリエラ属ポリペプチド、モルティエレラ属ポリペプチド、ケカビ属ポリペプチド、ペシロミセス属ポリペプチド、アオカビ属ポリペプチド、フィアレモニウム属ポリペプチド、フィアロフォラ属ポリペプチド、プロトセカ属ポリペプチド、シュードアレシェリア属ポリペプチド、シュードミクロドキウム属ポリペプチド、フハイカビ属ポリペプチド、リノスポリジウム属ポリペプチド、リゾープス属ポリペプチド、スコレコバシジウム属ポリペプチド、スポロトリクス属ポリペプチド、ストレムフィリウム属ポリペプチド、白癬菌ポリペプチド、トリコスポロン属ポリペプチド及びキシロヒファ属ポリペプチド。
【0166】
原虫・寄生虫抗原の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:バベシア属ポリペプチド、バランチジウム属ポリペプチド、ベスノイチア属ポリペプチド、クリプトスポリジウム属ポリペプチド、アイメリア属ポリペプチド、脳炎性胞子虫ポリペプチド、エントアメーバ属ポリペプチド、ギアリダ属ポリペプチド、ハモニジア属ポリペプチド、ヘパトゾーン属ポリペプチド、イソスポラ属ポリペプチド、リーシュマニア属ポリペプチド、微胞子虫類ポリペプチド、ネオスポラ属ポリペプチド、ノセマ属ポリペプチド、ペンタトリコモナス属ポリペプチド、プラスモディウム属ポリペプチド(例えばP.ファルシパルムサーカムスポロゾイト(PfCSP)のスポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓病抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1 c末端)及び輸送されたタンパク質1(PfExp−1)、ニューモシスティス属ポリペプチド、肉胞子虫属ポリペプチド、住血吸虫ポリペプチド、タイレリア属ポリペプチド、トキソプラズマ属ポリペプチド及びトリパノソーマ属ポリペプチド。
【0167】
蠕虫寄生虫抗原の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:アカントケイロネマ属ポリペプチド、ネコ円虫ポリペプチド、鉤虫属ポリペプチド、住血線虫属ポリペプチド、回虫属ポリペプチド、ブルギア属ポリペプチド、ブノストムム属ポリペプチド、毛細線虫属ポリペプチド、チャベルティア属ポリペプチド、クーペリア属ポリペプチド、クレノゾマ属ポリペプチド、ディクチオカウルス属ポリペプチド、ジオクトフィメ属ポリペプチド、ジペタロネーマ属ポリペプチド、広節裂頭条虫属ポリペプチド、ジプリジウム属ポリペプチド、イヌ糸状虫属ポリペプチド、ドラクンクルス属ポリペプチド、蟯虫属ポリペプチド、フィラロイデス属ポリペプチド、捻転胃虫属ポリペプチド、ラゴチラスカリス属ポリペプチド、ロア糸状虫属ポリペプチド、マンソネラ属ポリペプチド、ムエレリウス属ポリペプチド、ナノフィエタス属ポリペプチド、アメリカ鉤虫属ポリペプチド、ネマトディラス属ポリペプチド、腸結筋虫属ポリペプチド、オンコセルカ属ポリペプチド、オピストルキス属ポリペプチド、オステルタジア属ポリペプチド、パラフィラリア属ポリペプチド、肺臓ジストマ属ポリペプチド、パラスカリス属ポリペプチド、フィサロプテラ属ポリペプチド、プロストロンギラス属ポリペプチド、セタリア属ポリペプチド、スピロセルカ属ポリペプチド、スピロメトラ属ポリペプチド、ステファノフィラリア属ポリペプチド、糞線虫属ポリペプチド、ストロンギルス属ポリペプチド、テラジア属ポリペプチド、トキサスカリス属ポリペプチド、トキソカラ属ポリペプチド、旋毛虫属ポリペプチド、毛様線虫属ポリペプチド、鞭虫属ポリペプチド、ウンシナリア属ポリペプチド及びブケレリア属ポリペプチド。
【0168】
外部寄生虫抗原の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:ノミのポリペプチド(アレルゲンと同様に感染防御抗原を含む)、ダニ(例えばマダニ及びヒメダニ)、ハエ(例えばユスリカ、蚊、サシチョウバエ、黒バエ、アブ、ツノサシバエ、アブ、ツェツェバエ、サシバエ、ハエウジ病を生じさせるハエ及びブヨ)、アリ、クモ、シラミ、コダニ及び昆虫(例えばトコジラミ及びサシガメ)。
【0169】
抗原を及び/又は選択した後、所望の抗原をコードするポリヌクレオチドを同定する。好ましくは、上記ポリヌクレオチドはcDNAを含んでなる。抗原をコードする上記ポリヌクレオチドは好ましくは、上記のDC−SIGNと結合するターゲッティング分子を含む、組換えウイルス、好ましくは組換えレンチウイルス又はガンマレトロウイルスを使用して標的樹状細胞に導入される。組換えウイルスはDC−SIGNターゲッティング分子を介して最初に樹状細胞膜に結合し、その後抗原をコードするポリヌクレオチドを含んでなるウイルス核が細胞質ゾルに入る。ポリヌクレオチド(例えば抗原をコードする)は更に、好ましくは細胞のゲノムにインテグレートされ、発現する。ex vivoで接触する場合、標的樹状細胞は更に、例えば注入により患者へ戻され、それにより、所望の抗原に対する免疫応答を生じさせることのできる免疫細胞と相互作用する。他の好ましい実施形態では、組換えウイルスを患者に注入し、in situで標的とされた樹状細胞を形質転換する。樹状細胞は更に、治療対象の疾患又は障害に関連する特定の抗原を発現し、患者において疾患又は障害に対して有効な免疫応答が生じる。
【0170】
幾つかの実施形態では、組換えウイルスは1つ以上の抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなり、標的の樹状細胞への導入により、細胞に輸送される複数の抗原に対する免疫応答が生じる。幾つかの実施形態では、上記抗原は単一の疾患又は障害に関連する。他の実施形態では、上記抗原は複数の疾患又は障害に関連する。
【0171】
本発明の実施形態では、DCの成熟を活性化及び/又は刺激するDC成熟因子を、目的のポリヌクレオチド又は遺伝子を担持する組換えウイルスと組み合わせて輸送する。幾つかの実施形態では、DCはウイルスの輸送の前に、DC成熟因子の輸送によって活性化される。幾つかの実施形態では、DCはウイルスの輸送の後、DC成熟因子の輸送によって活性化される。幾つかの実施形態では、DCはウイルスの輸送と同時に、DC成熟因子の輸送によって活性化される。幾つかの実施形態では、DC成熟因子はウイルスと共投与される。他の実施形態では、DC成熟因子はウイルスとは別に投与される。
【0172】
ある種の実施形態では、ウイルス中に含まれ、ウイルスが樹状細胞を形質転換した後で発現する、1つ以上のDC成熟因子をコードする1つ以上の遺伝子を用いてもよい。幾つかの実施形態では、DC成熟因子をコードする1つ以上の遺伝子を、抗原をコードするウイルスベクター中に含めてもよい。更なる実施形態では、DC成熟因子をコードする1つ以上の遺伝子を、1つ以上の抗原をコードするウイルスベクター中に含めてもよい。幾つかの実施形態では、DC成熟因子をコードする1つ以上の遺伝子を、1つ以上の抗原をコードしているウイルスベクターとは別々のベクターを用いて、パッケージング細胞株をコトランスフェクションして提供してもよい。
【0173】
幾つかの実施形態では、本発明の方法が、患者の養子免疫療法に使用できる。上述の通り、免疫応答を生じさせようとする抗原を同定する。所望の上記抗原をコードするポリヌクレオチドを得、組換えウイルスにパッケージングする。標的樹状細胞を患者から得、所望の抗原をコードするポリヌクレオチドを含んでなる組換えウイルスで形質転換する。次に樹状細胞を患者に戻す。
【0174】
ワクチン処理:
上記のように、DC−SIGN表層樹状細胞マーカーと結合する様々な設計されたターゲッティング分子が、DCに抗原をコードする遺伝子を輸送する組換えウイルスの調製に使用される。上記ウイルスを用いてin vitro又はin vivodeDCを形質転換することにより、疾患又は障害の予防を実施できる。例えば、シンドビスウイルスエンベロープ糖タンパク質を設計することにより、優先的にDC−SIGNに結合させることができ、またそれを用いて組換えウイルスをシュードタイプ化できる。免疫応答を生じさせようとする抗原をコードする遺伝子(例えば癌(例えばMart−1)又は他の疾患/障害(例えばウイルス感染))を、本願明細書に記載されている方法を使用してDCに輸送できる。幾つかの実施形態では、多数の抗原をコードする多数の遺伝子を、複数のウイルスベクターを用いて、本願明細書に記載されている方法、又は好ましくはマルチシストロンベクター系を用いてDCに輸送できる。1つ以上の抗原に対応する1つ以上の遺伝子には、刺激性分子(例えばGM−CSF、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−15、IL−21、IL−23、TNFα、B7.1、B7.2、4−1BB、CD40リガンド(CD40L)、薬剤誘導性CD40(iCD40)など、及び/又はリポーター分子(例えばGFP、ルシフェラーゼなど)をコードする遺伝子を、複数のベクター、好ましくはマルチシストロンベクター系を使用して連結させてもよい。
【0175】
本発明の幾つかの実施形態では、CD34α+にヒト造血薬原種を得て、in vitroで培養することによって、ヒトDCを調製してもよい(例えばBanchereauら、Cell 106,271−274(2001)に記載の方法)。免疫応答をさせようとする抗原をコードする遺伝子を含み、DC−SIGNと結合するターゲッティング分子を有するウイルスを調製し、ヒトDCの形質転換に用いる。形質導入の特異性及び効率は、FACSによって定量化できる。DCの成熟は、表面マーカー(例えばMHC II)の上方制御のFACS分析によって解析できる。
【0176】
他の実施形態では、ウイルスをin vivoで注射してもよく、それにより、天然のDCと接触し、目的のポリヌクレオチド(典型的には抗原をコードする遺伝子)が輸送される。ウイルス粒子の量は、少なくとも50×10
6TU、少なくとも1×10
7TU、少なくとも2×10
7TU、少なくとも3×10
7、少なくとも4×10
7TU又は少なくとも5×10
7TUであってもよい。選択されたインターバルで、受容者のリンパ器官からのDCを用い、例えば発現マーカー(例えばGFP又はルシフェラーゼ)を観察することにより、発現を測定できる。ウイルス処置された受容者のリンパ節及び脾臓からのT細胞を、抗原刺激に対する反応の規模及び期間に関して測定してもよい。DC以外の組織の細胞(例えば上皮性細胞及びリンパ系細胞)を用いて、in vivoでの遺伝子輸送の特異性に関して分析してもよい。
【0177】
エイズ感染(及び他のウイルス病)を抑止する最も有効な方法がワクチンであることについては、一般的な同意が得られている。しかしながら現在まで、HIVに対するワクチン処置方法で、第3フェーズ試験を通過するものはなかった。ゆえに、新規かつ有効なワクチン処理ストラテジーに対する切実なニーズが存在する。本発明の幾つかの実施形態では、DCへのワクチン処理を行う。まず、ウイルスタンパク(例えば上記のそれら)をコードする遺伝子を、ウイルスベクターにクローニングする。DC中のDC−SIGNに(好ましくは特異的に)結合するターゲッティング分子を含んでなるウイルスを患者に投与して感染させ、好ましくは望ましくない副作用を回避する。上記ターゲッティング分子は、例えば設計されたシンドビスウイルスエンベロープ糖タンパク質であってもよく、上記ウイルスの投与は例えば注射により実施してもよい。動物モデルにおいては、分子的にクローニングされたHIVリポータウイルス(NFNSZ−r−HSAS、NL−r−HSAS)及び臨床的分離株を用いて、尾静脈注入によって動物に投与してもよい。感染しているか否かは、脾細胞、リンパ節及び末梢血を、一定時間にわたるモニターにより確認できる。HIV−gagタンパク質の場合はPCR、及びリポータウイルスにおけるHASの場合はFACSを使用して、ウイルスのインテグレート及び複製を試験できる。生産的なin situのDCワクチン処理により、HIVチャレンジに対する抵抗性を増強することができる。実施例17から20を参照。
【0178】
幾つかの実施形態では、本願明細書に記載の組換えウイルスによって形質転換した樹状細胞を、疾患又は障害の予防又は治療に用いる。他の好ましい実施形態では、樹状細胞は免疫応答の基となる抗原を発現する。上記抗原は典型的には、樹状細胞においては通常発現しないが、抗原をコードするポリヌクレオチドを含んでなる組換えウイルスにより標的細胞を形質転換した後で発現するものである。幾つかの実施形態では、樹状細胞は更に、本願明細書に記載の組換えウイルスによって樹状細胞に提供されるDC成熟因子を発現する。
【0179】
本発明の幾つかの態様では、アジュバントを、本発明の組換えウイルスと組み合わせて投与する。アジュバントは、組換えウイルスと共に、組換えウイルスの前、又は組換えウイルスの後に投与してもよい。
【0180】
様々なアジュバントを本発明の組換えウイルスと組み合わせて使用して、組換えウイルスにコードされる抗原に対する免疫応答を強化してもよい。好ましいアジュバントを使用により、免疫応答に質的に影響を及ぼすようや抗原の立体構造変化を生じさせることなく、抗原への固有の反応を強化できる。好ましいアジュバントとしては、ミョウバン、3De−O−アシル化モノホスホリルリピドA、(MPL)(GB2220211を参照)などが挙げられる。QS21は、南アメリカのキラジャ サポナリア モリナ木の樹皮から分離されるトリテルペン配糖体又はサポニンである(Kensilら、in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(eds.Powell&Newman,Plenum Press,NY,1995、米国特許第5057540号を参照)。他のアジュバントとしては水中油エマルジョン(例えばスクアレン又は落花生油)が挙げられ、任意に免疫刺激剤(例えばモノホスホリルリピドA)と組み合わせてもよい(Stouteら、N.Engl.J.Med.336,86−91(1997)を参照)。他のアジュバントはCpGである(Bioworld Today,Nov.15,1998)。あるいは、Aβをアジュバントと組み合わせてもよい。例えば、Aβのリポペプチドのバージョンは、HB抗原ワクチン処理に関する記載と同様(Livingston,J.Immunol.159,1383−1392(1997))、直接パルミチン酸又は他の脂質をAβのN末端基と結合することにより調製できる。しかしながら、かかるカップリングは、Aβのコンフォメーションを、免疫応答の特性に影響を及ぼす程に、実質的に変化させるべきではない。アジュバントは、活性薬剤を含んでなる治療組成物の成分として投与することもでき、又は治療薬とは別に、その投与の前、その投与と同時に、若しくはその投与の後に投与してもよい。
【0181】
好適なアジュバントの種類は、アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム)である。かかるアジュバントは、MPL又は3−DMPなどの他の特異的免疫賦活性化剤、QS21、ポリグルタミン酸又はポリリジンなどのポリマー若しくはモノマーアミノ酸の有無にかかわらず使用できる。他の種類のアジュバントは、水中油型エマルジョン製剤である。かかるアジュバントは、他の特定の免疫賦活性化剤(例えばムラミルペプチド)(例えばN−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(r−2’ジパルミトイル−ステーヌ−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−isoglu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド、DTP−DPP)テラミド(商標)、又は他の細菌細胞壁成分の有無にかかわらず、使用できる。水中油エマルジョンとしては、以下のものが挙げられる。(a)MF59(国際公開第90/14837号):5%のスクアレン、0.5%のツウィーン80及び0.5%のSpan 85(任意にMTP−PEを適当量)を含有。マイクロフリューダイザ(例えばモデルHOYマイクロフリューダイザ(Microfiuidics社、ニュートンMA)を使用してミクロン以下の粒子に調製。(b)SAF:10%のスクアレン、0.4%のツウィーン80、5%のプルロニックブロックされたポリマーL121及びthr−MDPを含有。サブミクロンサイズのエマルジョンにマイクロ流動化するか、又はボルテックスして大きな粒度のエマルジョンを調製。(c)Ribi(商標)アジュバントシステム(PvAS)(Ribi Immunochem社、ハミルトン、MT):2%のスクアレン、0.2%のツウィーン80及び1つ以上の細菌細胞壁成分(モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコール酸(TDM)及び細胞壁骨格(CWS)(好ましくはMPL+CWS、Detox
、商標))からなる群から選択される)。好ましい他の種類のアジュバントは、サポニンアジュバント(例えばStimulon
(商標)(QS21、Aquila社、ウスター、MA)、又はそこから発生する粒子(ISCOM(免疫賦活複合体)及びISCOMATRIX)である。他のアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(CFA)及び不完全フロイントアジュバント(IFA)が挙げられる。他のアジュバントとしては、サイトカイン(例えばインターロイキン(IL−1JL−2及びIL−12))、マクロファージコロニー形成刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などが挙げられる。
【0182】
アジュバントは、単一の組成物として本発明の組換えウイルスと共に投与してもよく、又は本発明の組換えウイルスの投与の前、同時又は後に投与してもよい。免疫源及びアジュバントをパッケージし、同じバイアル中に添加してもよく、又は別々のバイアルパッケージし、使用前に混合してもよい。典型的には免疫源及びアジュバントを、意図された治療的用途を示すラベルと共にパッケージする。免疫源及びアジュバントを別にパッケージする場合、当該パッケージは典型的には、使用前に混合する際の取り扱い説明書を含んでなる。アジュバント及び/又はキャリアの選択は、アジュバントを含んでなるワクチンの安定性、投与経路、投与計画、ワクチン接種を受ける種におけるアジュバントの有効性などに依存し、ヒトの場合、薬理学的に許容できるアジュバントは、関連する行政機関により、ヒトへの投与が承認された、又は承認されうるものである。例えば、完全フロイントアジュバントはヒト投与に適していない。ミョウバン、MPL及びQS21が好適である。任意に二種類以上のアジュバントを同時に使用してもよい。好ましい組合せとしては、ミョウバンとMPL、ミョウバンとQS21、MPLとQS21、ミョウバンとQS21とMPLなどが挙げられる。また、不完全フロイントアジュバントを、任意にミョウバン、QS21及びMPLのいずれか、及びそれらの全てと組み合わせと共に使用してもよい(Changら、Advanced Drug Delivery Reviews 32,173−186(1998))。
【0183】
医薬組成物及びキット:
また、本発明に係る医薬組成物及びキットは、本発明において提供される組換えウイルス及び1つ以上のコンポーネントを含んでなる。上記医薬組成物は、本発明において提供される組換えウイルス及び医薬用担体を含んでなってもよい。キットは、医薬組成物、及び/又は本発明において提供される組合せ、及び1つ以上のコンポーネント(例えば取扱説明書、患者に化合物を投与する装置)を含んでなってもよい。
【0184】
本発明は、本発明において提供されるウイルス及び適切な薬剤担体を含んでなる医薬組成物の提供に関する。本発明において提供される医薬組成物は、固体、液体、粉末などの様々な形態であってもよく、例えば水溶液、又は凍結乾燥品であってもよい。適切な薬剤担体の例は、従来技術において公知である。かかる担体及び/又は添加剤は従来公知の方法で、適切な投与量で患者に投与することができる。安定化剤(例えば脂質)、ヌクレアーゼ阻害剤、ポリマー及びキレート剤の使用により、生体内での組成物の分解を防止できる。
【0185】
本発明において提供される組換えウイルスを、キットとしてパッケージすることができる。キットは、取扱説明書、装置及び更なる試薬及び他のコンポーネント(例えば上記方法を実施するためのチューブ、容器及びシリンジ)など、1つ以上のコンポーネント任意に含んでなってもよい。典型的なキットは、本発明において提供されるウイルスを含んでなってもよく、任意に、取扱説明書、患者におけるウイルスの検出装置、患者へウイルスを投与する装置、及び患者に化合物を投与する装置を含んでなってもよい。
【0186】
本発明はまた、目的遺伝子(典型的には抗原)をコードするポリヌクレオチドを含んでなるキットの提供に関する。幾つかの実施形態では、上記キットは、ウイルスパッケージングコンポーネントをコードする少なくとも1つのプラスミドと、樹状細胞と好ましくは特異的に結合するために設計されたターゲッティング分子をコードするベクターとを含んでなる。幾つかの実施形態では、上記キットは、ウイルスパッケージングコンポーネントをコードする少なくとも1つのプラスミドと、樹状細胞との結合のために設計されたターゲッティング分子をコードするベクターと、少なくとも1つのDC成熟因子をコードするベクターと、を含んでなる。
【0187】
本発明はまた、目的遺伝子(典型的には抗原)をコードするウイルスベクターと、任意にDC成熟因子をコードするポリヌクレオチド配列と、を含んでなるキットの提供に関する。幾つかの実施形態では、上記キットは、ウイルスパッケージングコンポーネントをコードする少なくとも1つのプラスミドと、樹状細胞との結合のために設計されたターゲッティング分子をコードするベクターと、を含んでなる。
【0188】
1つの例として、キットは取り扱い説明書を含んでなってもよい。取り扱い説明書には典型的には、ウイルス、任意にキット中に含まれる他成分、及び投与方法に関する詳細な説明(患者の適当な状態を決定する方法、ウイルスを投与する際の適当な投与量及び適当な投与方法など)が記載されている。取り扱い説明書には、治療期間にわたり患者をモニターするためのガイダンスが含まれていてもよい。
【0189】
また、本発明において提供されるキットは、患者にウイルスを投与する装置を含んでなってもよい。薬剤又はワクチンを投与するための、公知のあらゆる装置を、本発明で提供されるキットに含めてもよい。典型的な装置としては、限定されないが、皮下注射用のニードル、静脈注射用のニードル、カテーテル、ニードルのないイ注入装置、吸入装置、及び点眼器などの液体ディスペンサなどが挙げられる。典型的には、キットのウイルスを投与する装置は、キットのウイルスとの適合性を有し、例えば、高圧注入装置などのニードルのないインジェクション装置を、高圧注入によって損傷を受けないウイルスと共にキット中に含めてもよいが、典型的には、高圧注入によって損傷を受けるウイルスと共にはキットには含めない。
【0190】
また、本発明において提供されるキットは、患者に化合物(例えばDC活性化物質又は刺激物質)を投与する装置を含んでなってもよい。患者に薬剤を投与するための、公知のあらゆる装置を、本発明で提供されるキットに含めてもよい。典型的な装置としては、皮下注射用のニードル、静脈注射用のニードル、カテーテル、ニードルのない注入装置が挙げられ、制限されないが、皮下注射用ニードル、静脈注射用ニードル、カテーテル、ニードルのないインジェクション装置、吸入装置及び液体ディスペンサ(例えば点眼器)などが挙げられる。典型的には、キット中の化合物投与用の装置は、化合物を投与する所望の方法との適合性を有する
【0191】
以下に実施例を示すが、それらは例示のみを目的とするものであり、いかなる形であれ本発明の範囲を限定するものではない。実際、本願明細書において開示・記載されるもの以外の、本発明の様々な修飾を、これらの説明から当業者が想起することは自明であり、本願明細書に添付した特許請求の範囲に含まれる。
【0192】
本願明細書中の全ての特許文献及び非特許文献は、それらの全開示内容を本願明細書に援用する。
【実施例】
【0193】
実施例1:DC特異的なターゲッティング分子の設計
レンチウイルスベクターを高利的に設計して、それらを細胞に導入することにより、特異的な態様でDCを形質転換することができる。DCの特定のサブセットがそれらの表面に産生される。すなわちDC−SIGNタンパク質(Geijtenbeek,T.B.,ら、2000、Geijtenbeek,T.B.,ら、2000,上記)、異物との迅速な結合及びエンドサイトーシスを生じさせることができるC型レクチン様受容体(Geijtenbeek,T.B.,ら、2004,上記。)であり、それらはDC上のターゲッティング受容体として使用できる。アルファウイルス属のシンドビスウイルス(SV)、及びトガウイルス科のファミリーは、DC−SIGNを介してDCに感染することができる(Klimstra,W.B.,ら、2003.J.Virol.77:12022−12032、全開示内容を本発明に援用する)。しかしながら、SVの実験室株に用いられる標準的なウイルス受容体は、細胞表面ヘパラン硫酸(HS)であり、それは多くのタイプの細胞において発現される(Strauss,J.H.,ら、1994.Arch.Virol.9:473−484、Byrnes,A.P.,and D.E.Griffin.1998.J.Virol.72:7349−7356、全開示内容を本発明に援用する)。SVエンベロープ糖タンパク質(以後SVGと称する)上の2つの受容体結合部位の物理的が分離を利用し、その標準的な標的HSに対する結合を損なわせ、またDC−SIGNと相互作用する能力は維持させるよう、受容体を設計した(
図1)。ウイルス表面上に組み込んだ場合、この変異糖タンパク質は、DCへの感染は媒介できるが、他の細胞への感染は媒介できない。
【0194】
野生型SVGのcDNAは、カリフォルニア工科大学のJ.H.シュトラウス博士の研究室から得、PCRによってpcDNA3ベクター(Invitrogen社)にクローニングして、プラスミドpSVGを得た。PCRを用いた変異導入によって、10残基のタグ配列(MYPYDVPDYA)を、E2タンパク質のアミノ酸71及び74の間に挿入し、HS結合部位を崩壊させた。(Karavans,G.,ら、1998.Crit Rev Oncol Hemat 28:7−30、Lavillete,D.,ら、2001.Curr Opin Biotech 12:461−466、Russell,SJ.and F.L.Cosset.1999.J Gene Med 1:300−311、 Sandrin,V.,ら、2003.Curr Top Microbiol 281:137−178、Verhoeyen,E.and F.L.Cosset.2004.J Gene Med 6:S83−S94、全開示内容を本発明に援用する)。挿入されたタグ配列に対する抗体を作製し、修飾されたSVGの発現のモニターを可能にした。更にHS特異的な感染を減少させるため、幾つかの重要な残基を、HS分子への結合に関与する残基として同定した(Coffin,J.M.,ら、1997.Retroviruses.New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、Battini,J.L.,ら、1998.J Virol 72:428−435、Valsesiawittmann,S.,ら、1994.J Virol 68:4609−4619、Wu,B.W.,ら、2000.Virology 269:7−17、Cosset,F.L.,ら、1995.J Virol 69:6314−6322、Kayman,S.C.,ら、1999.J.Virol 73:1802−1808、Lorimar,I.A.J.and SJ.Lavictoire.2000.J Immunol Methods 237:147−157、Barnett,A.L.,ら、2001.Proc Nat Acad Sci USA 98:4113−4118、Benedict,C.A.,ら、2002.Hum Gene Ther 10:545−557、Gollan,TJ.and M.R.Green.2002.J Virol 76:3558−3563,each、全開示内容を本発明に援用する)。かかる2つの残基をアラニン(157KE158→157AA158)に変異させた。
【0195】
SVGのE3糖タンパク質から、更にアミノ酸61−64を除去し、欠失変異体を作製した。この修飾SVGをSVGmu(配列番号11)と称する。SVGmuのcDNAを、pcDNA3ベクターのCMVプロモータの下流にクローニングした(pSVGmu(配列番号3)と称する)。
【0196】
実施例2:DC特異的ターゲッティング分子を含んでなる組み換えウイルスの調製
組換えSVGmuでシュードタイプ化されたレンチウイルスの調製は、レンチウイルスベクターFUGW(配列番号1)又はその誘導体を、gag、pol及びrev遺伝子をコードするパッケージング構築物、及びpSVGmu(例1)を用いて、293T細胞の標準的なリン酸カルシウムによるトランジェントなトランスフェクションにより実施した。FUGWは、GFPリポーター遺伝子の発現を促進するためのヒトユビキチン−Cプロモータを担持している自己不活性化レンチウイルスベクターである(Lois,C,ら、2002.Science 295:868−872,which、全開示内容を本発明に援用する)。これらの試験において使用するレンチウイルス導入ベクター(FUGW及びその誘導体)は第三世代のHIVベースのレンチウイルスベクターであり、3’LTRの大部分のU3領域が欠失し、その結果、自動不活性化3’−LTR(SIN)となる。
【0197】
293T細胞のトランジェントなトランスフェクションの場合、6cmの組織培養シャーレ(Corning社又はBD Biosciences社)で培養した293T細胞を、各々2.5μgのエンベローププラスミド(SVG、SVGmu、Eco又はVSVG)及びパッケージングプラスミド(pMDLg/pRRE及びpRSV−Rev)とともに、適当なレンチウイルス導入ベクタープラスミド(5μg)でトランスフェクションした。形質転換後48及び72時間においてウイルス上澄を回収し、0.45μmフィルター(Corning社)で濾過した。in vivoでの試験用の濃縮ウイルスベクターを調製するため、ウイルス上澄を50,000×gで90分間、超遠心分離した(Optima L−80K 分離用超遠心機、Beckman Coulter社)。次にペレットを、適当量の冷却したPBSで再懸濁した。
【0198】
SVGmuによってシュードタイプ化されるウイルスを、以下FUGW/SVGmuと記載する。野生型SVG糖タンパク質で覆われたコントロールウイルスを、以下FUGW/SVGと記載する。
【0199】
実施例3:パッケージングされた組み換えウイルスの共焦点イメージング
GFP−vprで標識されたレンチベクターを、FUWレンチベクター(GFPリポーター遺伝子を含まない)及び、GFP−vpr(2.5μg)をコードする別々のプラスミドを用いた以外は、実施例2にて説明したとおりに調製した。新鮮なウイルス上澄を、ポリリジンコートでコーティングした6ウェル培養ディッシュのカバースリップ上に重層し、Sorvall Legend RT遠心分離機を使用して4℃、3,700×gで2時間の遠心分離した。カバースリップを、冷却したPBSで二回洗浄し、抗−HA−ビオチン抗体(Miltenyi Biotec社)及びCy5−ストレプトアビジン(Invitrogen社)で免疫染色した。Zeiss LSM510 レーザースキャニング共焦点顕微鏡(フィルタ組を備えた)を用いて、フルオレセイン及びCy5に関する蛍光イメージを得た。プラン−アポクロマート油浸レンズ(63x/1.4)を、イメージングに使用した。
【0200】
図2は、上記プロトコルによって行った組換えウイルスの共焦点イメージングの結果を示す(スケールバーは2μmを示す)。「GFP」スライドの粒子は緑に染色され、「SVGmu」スライドの粒子は赤く染色され、「重なり」スライドの粒子は、GFPのみが発現するときは緑、SVGmuのみが発現するときは赤、並びにGFP及びSVGmu両方が発現するときは黄色/黄橙色である。GFPで標識された粒子の90%以上は、SVGmuを含んでいだ。すなわち、SVGmuを提示するレンチウイルス粒子の産生が、共焦点イメージングにより確認された。
【0201】
実施例4:DC−SIGN細胞株の調製
ターゲッティングによる形質導入の試験を容易にするため、ヒトDC−SIGN(以下293T.hDCSIGNと記載する)及びマウスDC−SIGN(以下293T.mDCSIGNと記載する)を発現するDC−SIGN細胞株を構築した。293T.hDCSIGN及び293T.mDCSIGN細胞株は、VSVGでシュードタイプ化されたレンチベクターを用いた、親293T細胞への安定形質導入によって作製した。ヒトDC−SIGN及びマウスのDC−SIGNのcDNAは、プラスミドpUNO−hDCSIGNIAa及びpUNO−mDCSIGN(InvivoGene)から増幅し、それぞれレンチウイルスプラスミドFUWのヒトユビキチン−Cプロモータの下流にクローニングし、FUW−hDCSIGN(配列番号5)及びFUW−mDCSIGN(配列番号6)として構築した。レンチベクターを更にVSVGでシュードタイプ化し、293T細胞を形質転換するために用いた。得られる細胞を、抗体染色(BD Biosciences社製の抗ヒトDC−SIGN抗体、及びeBioscience社製の抗マウスDC−SIGN)及び細胞選別に供し、DC−SIGN
+293T.hDCSIGN及びmDC−SIGN
+293T.mDCSIGN細胞株の均一な集団を得た。
【0202】
フローサイトメトリでは、DC−SIGNが実質的に全ての293T.hDCSIGN及び293T.mDCSIGN細胞株(
図3A)において発現することが示された。各ダイアグラムにおいて、実線(塗られていない領域)は293TDC−SIGN細胞株のDC−SIGNの発現を表し、陰影領域は非形質転換293T細胞のバックグラウンド染色を示す。
【0203】
実施例5:DC−SIGN細胞株の形質転換による、DC−SIGN特異的な組み換えウイルスの評価
FUGW/SVG又はFUGW/SVGmuの形質導入効率及び特異性を評価するため(例2)、上記ウイルスを用いて293T.hDCSIGN及び293T.mDCSIGN細胞株(例4)を形質転換した。形質導入効率は、細胞株内のGFP発現により測定した。
【0204】
標的細胞(293T.hDCSIGN、293T.mDCSIGN又は293T細胞、ウェルあたり0.2×10
6)を、24穴培養シャーレ(Corning社又はBD Biosciences社)に播き、Sorvall Legend遠心分離機を用いて30℃、2,500回転/分で90分間、ウイルス上澄(1ウェルにつき1ml)とスピンさせ、感染させた。その後、上澄を新しい培地と置換し、5%のCO
2、37℃で3日間インキュベートした。GFP
+細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリで測定した。形質導入タイターを希釈範囲で作成した結果、線形の反応を表していた。
【0205】
フローサイトメトリでは、FUGW/SVG(野生型SVGエンベロープ糖タンパク質を含む)が、3つの標的細胞株(293T、293T.hDCSIGN及び293T.mDCSIGN)に対して同程度の形質導入効率(11〜16%の形質導入)を有することが示された(
図3B)。これはすなわち、SVGが広い特異性を有することを示し、また細胞表面上のDC−SIGNの存在により、SVGでシュードタイプ化されたレンチウイルスベクターの形質導入能力が顕著に変化しないことを示す。対照的に、FUGW/SVGmuベクター(変異SVGエンベロープ糖タンパク質を含む)は実際、293T.hDCSIGN及び293T.mDCSIGN細胞に対してそれぞれ42%及び34%の形質導入効率での形質転換を示したが、293T細胞では示さなかった(
図3B)。これらの結果は、SVGmuを示しているシュードタイプ化レンチウイルスベクターが、ヒト若しくはマウスのDC−SIGNを発現する細胞を特異的に形質転換できることを証明するものである。更に、変異SVGは、野生型SVGよりDC−SIGNを発現する細胞において、より効率的な形質導入を示した。
【0206】
形質導入された細胞におけるFUGWレンチウイルスベクターの安定なインテグレートが、GFPリポーター遺伝子のゲノムインテグレートに関するPCR分析により確認された。特定の形質導入がDC−SIGNにより媒介されたことを証明するため、293T.hDCSIGN細胞に対する曝露前のFUGW/SVGmuウイルス上澄への可溶性抗ヒトDC−SIGN抗体を添加した。その結果、形質導入効率(データ示さず)が低下した。293T.mDCSIGNへのFUGW/SVGmuの特異的なタイターは、1×10
6TU(形質導入単位)/mlであると推定された。293T.hDCSIGNへのFUGW/SVGmuのタイターは、1〜2×10
6TU/mLであると推定された。
【0207】
実施例6:in vitroでの組み換えウイルスの評価
DC−SIGNを発現する樹状細胞(DC)の形質導入用に設計されたレンチベクターの特異性を解析するため、全骨髄(BM)細胞をマウスから分離し、FUGW/SVGmuウイルスベクター(実施例2)で直接形質転換した。BM培養液で増殖させた原種からマウスDCを得るプロトコルを、実験用にアレンジした(Buchholz,CJ.,ら、1998.Nat Biotech 16:951−954、全開示内容を本発明に援用する)。
【0208】
全骨髄細胞をB6メスマウス(Charles River Breeding Laboratories社)から回収し、以下の文献に記載のようにBMDCとして発生させた(Yang,L.and D.Baltimore.2005.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:4518−4523、全開示内容を本発明に援用する)。全BM細胞若しくはBMDCを24穴培養シャーレ(ウェルあたり2×10
6細胞)でプレーティングし、ウイルス上澄(1ウェルあたり1ml)と共に、Sorvall RT7を使用して、30℃、2,500回転/分で90分間遠心分離し、スピンにより感染させた。スピンの後、上澄を除去し、10%のFBS及びGM−CSFを含んでなる新しいRPMI培地(1:20 J558L調整培地)と置換した。細胞を3日間培養し、フローサイトメトリを用い、GFPの発現を分析した。
【0209】
マウスから分離したBM細胞を、FUGW/SVGmuウイルスベクター、又はコントロールベクターで直接形質転換した。コントロールの場合、同種志向性マウス白血病ウイルス糖タンパク質(Eco)で覆われたレンチベクター(FUGW/Eco)を用いた。Ecoで覆われたベクターは広い特異性でげっ歯類細胞に感染できる。感染後3日における形質導入効率を、フローサイトメトリ(
図4A)で分析した。混合BM培養液中の細胞の約9%はDC(CD11cの発現を指標とする)であり、そのほとんど(約80%)がDC−SIGN高発現の細胞(データ示さず)であった。観察の結果、全BM細胞に対する12%がFUGW/SVGmu形質導入(
図4A)によるGFP陽性(GFP
+)であった。GFP
+細胞に限った場合、観察の結果、形質導入された細胞の最高95%がDC−SIGN及びCD11cの二重陽性(DC−SIGN
+CD11c
+)であった。すなわちFUGW/SVGmuは特異的にDC−SIGNを発現するDCを形質転換し、骨髄の他のタイプの細胞は形質導入しないことを示す。対照的に、全BM細胞の68%が、FUGW/Ecoへの曝露の後GFP陽性であったにもかかわらず、形質導入された細胞のわずか9%がDCであり、その中では、6.5%がDC−SIGN
+であった。
【0210】
FUGW/SVGmuの安定な形質導入は、レンチベクターバックボーンのLTRの、ゲノムへのインテグレートに関する、Alu PCR分析により解析した(Butler,S.L.,ら、2001.Nat.Med.7:631−634、全開示内容を本発明に援用する)。更に、FUGW/SVGmuを使用して、マウス脾臓から回収した初代T細胞及びB細胞を形質導入した結果、実質的な形質導入が検出できず(
図4B)、すなわち顕著な形質導入特異性が示された。
【0211】
in vitroで培養した骨髄(BM)−由来DC(BMDCs)への、SVGmuを有するレンチベクターによる形質導入効率も試験した。顆粒白血球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の存在下で6日間培養することによって、骨髄(BM)由来DC(BMDCs)を、上記の通り調製した。細胞を更に、FUGW/SVGmu若しくはFUGW/Ecoレンチベクターに曝露させた。形質導入の3日後に実施したBMDCsのフローサイトメトリの結果、FUGW/EcoがCD11c
+ DC(33%)及びCD11c
−細胞(7.6%)の両方を形質転換しており、Ecoの広い向性と一致することを示していた(
図5)。逆に、FUGW/SGVmuはCD11c
+ DCs(32.7%)を形質転換するだけであり、GFP
+細胞はCD11c
−細胞(
図5)中で検出されなかった。すなわちFUGW/SVGmuがBMDCsを特異的に修飾できることが示された。
【0212】
これらの結果を総合すると、SVGmuを有する設計された組換えレンチベクターが、in vitroでDCを特異的に形質転換でき、標的特異的な形質導入が、DCの表面上におけるDC−SIGNの発現と相関していることが証明された。
【0213】
実施例7:in vitroでの、樹状細胞の活性化に対する組み換えウイルスの効果
組換えレンチウイルスを更に検討し、それが特異的にDCをターゲッティングし、形質転換し、成熟したDCに活性化できるか否かを解析した。細胞表面における、共刺激分子B7.2(CD86)及びMHCクラスII分子I−A
bの、上方制御(DC活性化の指標と考慮される)を、組換えウイルスで曝露したDCにおいて測定した(Steinman,R.M.,ら、2003.Annu.Rev.Immunol.21:685−711、全開示内容を本発明に援用する)。BMDCsを調製し、実施例6で説明したようにFUGW/SVGmuで感染させた。1μg/mLの濃度のLPSを添加して一晩インキュベートし、形質導入したBMDCを更に活性化させた。
【0214】
形質導入の3日後のBMDCのフローサイトメトリの結果、FUGW/SVGmuによる処理により、GFP陽性のDCでは、GFP陰性DCと比較して、DC活性化の標識であるCD86及びI−A
bの発現が上昇することが明らかとなった(
図6、上パネル)。陰影領域はGFP陰性細胞(形質転換されない)を示し、実線(陰影なし領域)はGFP陽性の細胞(形質転換される)を示す。BMDCの標的特異的な形質導入は更に、リポ多糖(LPS)による処理により、DCの成熟が相乗的に高められることが観察された(
図6、下パネル)。これは、標的特異的な形質導入は、DC活性化の誘導の際、単独でも機能し、又は他のDC成熟因子との組み合わせでも機能しうることを示す。
【0215】
実施例8:組み換えウイルスによるin vivoでの樹状細胞のターゲッティング
この方法論がワクチン処理に使用できるか否かは、in vivoでの実験により解析できる。設計されたSVGmuを有するレンチベクターがin vivoでDCをターゲッティングできるか否かを試験するため、組換え及び濃縮レンチベクターFUGW/SVGmu(200μl PBSの中に再懸濁、50×10
6TU)を、C57BL/6メスマウス(B6、Charles River Breeding Laboratories社)の左側鼠径リンパ節(1cmの範囲)の付近に皮下注射した。左鼠径リンパ節及び逆の同じリンパ節を分離し、注射後3日におけるサイズを試験した。これらのリンパ節から細胞を回収し、それらの合計数を計測した。GFP
+ DCsのパーセンテージは、抗CD11c抗体(BD Biosciences社)で染色した細胞のフローサイトメトリで分析した。
【0216】
3日目に、注射部位の近くの左鼠径リンパ節の顕著な肥大が観察され(
図7A、左イメージ)、反対側の同じリンパ節又は健常マウスのリンパ節と比較し、このリンパ節の細胞数は10倍以上増加していた(
図7B)。これは、ベクター投与により、輸送及び近くのリンパ節のリンパ球の激増を促進できることを示す。
【0217】
フローサイトメトリの結果、左鼠径リンパ節細胞中の全CD11c
+細胞の約3.8%がGFP
+ DCs(
図7C)であることが示され、すなわち注射部位から移動したものと考えられる。これにより、1回のベクターの皮下注射により、著しく大きい効果が生じると考えられ、すなわち組換えウイルスがin vivoでDCに効果的に感染することが証明された。
【0218】
実施例9:in vivo形質導入による、組み換えウイルスの特異性の評価
DCを標的とするレンチベクターのin vivoでの特異性を検討するため、ホタルルシフェラーゼをコードするレンチウイルスベクターを構築した。ホタルルシフェラーゼのcDNAを、pGL4.2LucP(Promega社)から増幅し、FUGW(Lois,C.ら、2002.上記.)にクローニングし、GFPに置換し、構築物Flueを得た(配列番号4)(
図22A)。ルシフェラーゼレポーター遺伝子を更に用いて、組織細胞へのin vivoの形質導入を、生物発光イメージング(BLI)に関する標準的なプロトコルを使用してイメージングした。
【0219】
組換えレンチベクター(以下Fluc/SVGmuと記載する)を、マウスの左脇腹の皮下に注射した。他のマウスでは、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(以下Fluc/VSVGと記載する)を有するシュードタイプレンチベクターを、非特異的ベクターコントロールとして注射した。ベクターを治療されたマウスを更に、BLIを使用して非侵襲的にイメージングした。Fluc/VSVG−処置マウスでは、注射部位で強力かつ長期にわたるシグナルを示し、非特異的に組織が形質導入され、ルシフェラーゼが発現することが示された(
図22B)。これは、VSVGで覆われたウイルスが広い特異性を有するという事実に合致する。対照的に、顕著なシグナルがFluc/SVGmu−処理されたマウス(
図22B)の注射部位では検出されず、SVGmuを含むレンチベクターが比較的ストリンジェントな標的特異性を有することが示された。目標とされたマウスにおいては、検出可能な発光シグナルがみられなかった。おそらくDCの分布が少なくまばらであり、現在のBLI法の感度以下では検出できなかったと考えられる。
【0220】
1ヵ月後に、Fluc/SVGmuを注射したマウスを用いて、定量的RT−PCRによる、体内分布に関するアッセイを行った。その結果、全ての単離された器官(心臓、肝臓、脾臓、腎、性腺、肺、皮膚、リンパ節)において、検出可能な程のレンチベクターのコピーが観察されなかった。すなわち動物において非特異的な感染が起こらず、DCを標的とするベクターの特異性を示唆するものであった。
【0221】
実施例10:組み換えウイルスによるin vitro抗原輸送
組換えレンチベクターによるDCの標的特異的な形質導入が、抗原特異的なCD8
+及びCD4
+T細胞の応答の刺激を目的とする、DCへの効果的な抗原遺伝子の輸送に使用できるか否かを解析するため、モデル抗原、チキンオボアルブミン(OVA)を発現するレンチベクターを構築した。C57BL/6J(B6)マウスにおいては、OVAは、CD8
+T細胞受容体OTl(OVA
257−269(OVApに指定される)と特異的に結合する)のための、並びにCD4
+T細胞受容体OT2(OVA
323−339(OVAp*に指定される)と特異的に結合する)のための、周知の標的抗原である(Yang,L.and D.Baltimore.2005.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:4518−4523、全開示内容を本発明に援用する)。レンチベクターを発現するOVA(FOVA(配列番号2)
図8、上部)は、FUGW(
図8、底部)から、GFPをチキンオボアルブミンのcDNAで置換することによって構築した。
【0222】
BMDCを、組換えレンチウイルスFOVA/SVGmu又はコントロールの組換えレンチウイルスFUGW/SVGmu(異なるリポーター遺伝子GFPをコードする)を用いて、培養6日目に形質転換した(実施例6)。6日目にBMDCをウイルス上澄と共にスピンして感染させ、更に3日間培養した。9日目に非接着細胞を回収し、10%のFBS、GM−CSF(1:20 J558L調整培地)及び1μg/mL LPS(シグマ)を含有するRPMI培地で再度培養した。10日目に細胞を回収し、T細胞刺激に用いた。修飾されたBMDCをDC/FOVA及びDC/FUGWとした(形質導入に使用したレンチベクターにより若干異なる)。並行して、非接着細胞を、9日目の非形質転換BMDC培養液から回収し、同じ培地(10%のFBS、GM−CSF及びLPSを含んでなるRPMI)で再度培養した。10日目に細胞を回収し、OVAp(OVA
2S7−269(以下DC/OVApと記載する、OTl T細胞受容体と特異的に結合する)若しくはOVAp*(OVA
323−339(以下DC/OVAp*と記載する、OT2 T細胞受容体と特異的に結合する)を添加し、T細胞刺激のための陽性コントロールとして用いた。ベクターで形質転換されたBMDCの、遺伝子移入されたOVA抗原をプロセシングし、提示する能力を試験するため、脾臓細胞をOT1及びOT2トランスジェニックマウスから回収し、レンチベクター形質転換したBMDCは、又は所定の比率でOVAp若しくはOVAp*をロードされたBMDCと共に培養した。3日後に、上澄を回収し、ELISAを用いたIFN−γ産生をアッセイし、細胞を回収し、フローサイトメトリを用いたそれらの表層の活性化マーカーの存在をアッセイした。T細胞増殖は、[
3H]チミジン取り込みを使用してアッセイした。
【0223】
遺伝子移入したT細胞と、様々な比率のDC/FOVAとを用いた3日間の共培養の後、IFN−γ(
図10A)の放出及びT細胞増殖(
図10B)を測定した結果、OT1 T細胞における顕著な応答が見られた。DC/FUGW(
図10A及び10B)を使用した場合、予想通り、明確なOVA反応が検出されなかった。遺伝子移入によるOVAの発現は、OT1 T細胞応答を刺激するためのペプチド−ローディングよりも効率的であることが明らかとなり、それはすなわち、MHCクラスIが内因的に産生されたペプチドの提示を促進するという理論に合致する。フローサイトメトリの結果、活性化されたOT1 T細胞がDC/FOVA又はDC/0VのAp(
図9)の刺激の後、典型的なエフェクタ細胞障害性のT細胞表現型(CD25
+CD69
+CD62L
IowCD44
high)を示した。
【0224】
DCをOT2 CD4
+T細胞と共培養するとき、表層マーカー(
図11)の変化及びIFN−γの産生(
図12)で示されるように、T細胞の活性化も観察された。しかしながら、おそらくMHCクラスII分子に対する内因性の抗原ペプチドの提示が効率的でなかったため、CD4
+細胞の刺激はCD8
+細胞のそれほど明白でなかった。OVA抗原の細胞局在化を改変して、それをMHCクラスII提示経路に向けることにより、CD4刺激の強化がなされ、ペプチドでパルスされたDC(データ示ず)の場合よりも強化されるに至った。
【0225】
これらの結果は、レンチベクター感染によるDCのターゲッティング方法が、DCへの効果的な抗原の輸送を可能にし、CD8
+及びCD4
+T細胞応答を刺激できることを示す。
【0226】
実施例11:組み換えウイルスによるin vivoでの抗原輸送
レンチベクターによって、標的とされるDCが、in vivoで抗原特異的なT細胞を活性化できるか否かを解析するため、以下の文献に記載のように、マウスの造血幹細胞(HSC)へのT細胞受容体(TCR)遺伝子の移入方法を用いて、マウスにおける抗原特異的かつTCR改変型のT細胞を作製した(Yang,L.and D.Baltimore,D.2005.上記.)。GFP標識(
図13A)に加えて、OT1 TCRα及びTCRβを共発現するトリシストロンレトロウイルスベクターMIG−OT1を構築した。
【0227】
簡潔には、B6メスマウス(Charles River Breedling Laboratories社)を、250μgの5−フルオロウラシル(Sigma社)で処理した。5日後に、HSCリッチな骨髄(BM)細胞を、脛骨及び大腿骨から回収し、BM培地(10%のFBS、20ng/mlのrmIL−3、50ng/mlのrmIL−6及び50ng/mlのrmSCF(PeproTech)を含有するRPMI)中で、24穴培養プレート(ウェルあたり2×10
6細胞)を用いて培養した。培養の1日目及び2日目に、Eco(ウェルあたり2mlのウイルス上澄)とシュードタイプMIG−OT1レトロウイルスベクターとで、30℃、2,500回転/分で90分、細胞をスピンさせて感染させた。各スピンの後、上澄を除去し、新しいBM培地と交換した。3日目に形質転換したBM細胞を回収し、1,200radsで全身照射したB6レシピエントマウスに導入した。導入後8週目に、マウスをin vivoでの免疫試験に供した。各マウスに、ターゲッティングレンチベクター10×10
6TUを、皮下注射により単回投与した。7日後に、脾臓及びリンパ節細胞を回収し、フローサイトメトリを使用して、OT1 T細胞及びその表層における活性化標識の存在に関してアッセイした。
【0228】
導入後8週目に、再作製したマウスのT細胞を分析した結果、CD8
+T細胞の約5%がGFP
+OT1
+(
図13B)であることが明らかとなった。再作製されたマウスの幾つかを、FOVA/SVGmu(実施例10)又はFUGW/SVGmu(実施例2)で、同じ投与量(10x10
6TU)で皮下注射により免疫した。7日後に末梢リンパ系器官から回収したGFP
+OT1
+T細胞の分析の結果、FOVA/SVGmuによるDCへの標的特異的な免疫により、コントロールマウス(免疫しなかったか又はFUGW/SVGmu(
図14B)で免疫しなかった)と比較してOT1 T細胞の数を2倍にすることが示された。FOVA/SVGmu−免疫マウスに由来するGFP
+OT1
+T細胞は、エフェクタ記憶表現型(CD69
lowCD62
highCD44
high)を示し、これらの細胞が積極的な免疫応答(
図14A)を行ったことが示された。
【0229】
これらの結果は、表面SVGmuを有する組換えレンチベクターが、in vivoでDCをターゲッティングし、効率的に抗原特異性T細胞を刺激し、強い免疫応答を誘導することを証明するものである。
【0230】
実施例12:組み換えウイルスの直接投与による、in vivoCTL及び抗体反応の誘導
天然型(野生型)マウスへのターゲッティングレンチベクターの投与に基づく、抗原特異的CD8
+細胞障害性リンパ球(CTL)の反応及び抗体の反応を誘導する際の、in vivoでのDCターゲッティングの有効性を試験した。
【0231】
野生型B6マウス(Charles River Breeding Laboratories社)を、所定の投与量で、右脇腹の皮下に、ターゲッティングレンチベクター(FUGW/SVG又はFOVA/SVGmuを50×10
6TU)を単回投与した。免疫後7日目及び14日目に、免疫マウスから血液を尾部出血により回収し、血清中の抗OVA IgGを、ELISAを使用して測定した。14日目に、脾臓及びリンパ節細胞を回収し、OVAに特異的なT細胞及びその表層における活性化標識の存在を、フローサイトメトリを使用して分析した。
【0232】
OVAに特異的なT細胞の存在を、サイトカイン分泌及び四量体染色を測定することにより測定した。注射後14日目に、末梢リンパ系器官から回収したT細胞を分析した。未変性DCに対するレンチベクターターゲッティングにより、リンパ節(データ示さず)及び脾臓(
図23)において、OVAに反応するCD8
+T細胞を誘導することが可能となった。組換えFOVA/SVGmuの単回投与は、CD8
+T細胞の産生にとり十分であり、それは初回抗原刺激を受けることにより、OVApによる再刺激でIFN−γを分泌することができる(
図23)。コントロールベクターFUGW/SVGmuの投与で、OVAp−特異的な反応が何ら生じなかった(
図23)。更に反応の規模を評価するため、OVApに特異的なCD8
+T細胞を、MHCクラスI四量体染色で測定した。OVApに特異的なT細胞(>6%)が単回投与(
図15)の後に頻繁に得られたが、四量体陽性の細胞は、FUGW/SVGmu(
図15)で処理したマウスにおいては検出されなかった。四量体測定によって得られるデータは、細胞内のIFN−γ染色によりアッセイによるCD8
+エフェクタ細胞の分析結果と相関していた(
図23)。これらのOVAp陽性のT細胞の表現型分析により、これらの細胞が、エフェクタ記憶T細胞(CD25
lowCD69
lowCD62L
highCD44
high)(
図17A)の表面特性を有することが示された。
【0233】
レンチベクター投与の用量応答性を試験するために、100×10
6TU〜3×10
6TUの範囲のFOVA/SVGmuを皮下注射し、脾臓におけるOVApに特異的なT細胞を、注射後14日目に測定した。100×10
6TU(
図16A)の投与量で、非常に高い頻度(12%)でOVApに特異的なCD8
+T細胞が検出された。OVApに特異的な細胞のパーセンテージは、投与される組換えベクターの量と比例していた(
図16B)。用量応答のプラトーは、試験した投与量では見られず、それはすなわち、注射する際のベクターの量及び/又は注入の頻度を増加させることによって、更なる強化が可能であることが示された。
【0234】
更に、マウスにおける、OVAに特異的な血清IgGレベルを、FOVA/SVGmu(50×10
6TU)による免疫の後、7日目及び14日目に試験した。IgG血清タイターは、7日目では1:10,000、及び14日目では1:30,000であった(
図17B)。これは追加的なアジュバント又は他の刺激のない単回注射ではむしろ意外な抗体反応であり、標的特異的なレンチベクターによる免疫処置が、顕著な抗原特異的抗体のB細胞からの分泌を誘導できることを示す。
【0235】
これらの結果は、DC−ターゲッティングレンチベクターのin vivoでの投与が、輸送された抗原に対する細胞性及び体液性の免疫応答を誘導できることを示す。
【0236】
実施例13:抗腫瘍性免疫の発生:抑止的防御
DCを標的とするレンチベクターのin vivo投与の後に発生する抗腫瘍性免疫を評価した。E.G7腫瘍モデル(Wang、L.及びD.Baltimore.2005、上記)(OVAが腫瘍抗原として機能する)を用いた。
【0237】
腫瘍株EL4(C57BL/6J、H−2
b、胸腺腫)及びE.G7(安定にチキンOVA cDNAを1コピー発現するEL4細胞)を使用し、マウス腫瘍に投与した。腫瘍防御試験において、B6マウス(Charles River Breeding Laboratories社)の右脇腹にターゲッティングレンチベクター(FOVA/SVGmu又はFUGW/SVGmu)を50×10
6TUで単回注射した。2週後に、5×10
6個のEL4又はE.G7細胞を、マウスの左脇腹に皮下注射した。腫瘍サイズを、精密なキャリパを使用して一日おきに測定し、2つの最も大きい垂直直径の積、a×b(mm
2)として示した。腫瘍が400mm
2に至ったとき、マウスは死んだ。
【0238】
50×10
6TU FOVA/SVGmuによるワクチン処理により、E.G7腫瘍による曝露から完全にマウスが保護され(
図18、左)、一方、腫瘍はOVA導入遺伝子、を欠くレンチベクターを有する擬ワクチン処理を受けたマウスにおいては急速に増殖した(
図18、左)。免疫に使用したレンチベクターに関係なく、ワクチン処理をされたマウスでは、OVAの発現がないコントロールEL4腫瘍の増殖が見られたため、この防御はOVAに特異的であったといえる(
図18、右)。
【0239】
実施例14:抗腫瘍性免疫の発生:腫瘍治療
腫瘍細胞がレンチベクターの投与前に導入された場合の、DCを標的とするレンチベクターのin vivoでの投与後に発生する抗腫瘍性免疫を評価した。腫瘍の注入及びレンチベクター投与のステップは、実施例13の場合とは逆の順序であり、確立した腫瘍が除去されうるか否かを解析するための「治療的ワクチン処理」の試験ということになる。この際、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(E.G7.1uc)を発現するE.G7腫瘍細胞を用いてマウスに投与することにより、生存する動物の腫瘍増殖の動態に関するモニタリングを、BLIを使用して行うことが可能となった。イメージングを容易にするため、B6マウス(The Jackson Laboratory)のアルビノ種を用いた。これらのマウスは色素沈着がないため、低いバックグラウンドの発光シグナルを吸収する。FOVA/SVGmuを100×10
6TUでこれらのマウスに注入(実施例10)した結果、標準的なB6マウス(
図21)において、同様の反応が観察された。E.G7.1uc腫瘍細胞(5×10
6)を、アルビノ種のB6マウスに皮下移植した。上記のマウスを、腫瘍の移植後3日目及び10日目に、FOVA/SVGmu(1回あたりマウスあたり50×10
6TU)を皮下注射により二回免疫した。同様の実験を、
図19及び20に例示される実験手法に従い3回繰り返した。
【0240】
DC−ターゲッティングレンチベクターで免疫されたマウスでは、9日目から腫瘍増殖の低下が示され、続いて11日目では、検出レベル以下にまで、腫瘍退縮及び発光の減少が見られた(
図19及び20)。FOVA/SVGmuで処理されたマウスでは、若干の腫瘍再発が12日目から16日目までに観察されたにもかかわらず、18日目の終わり、及びその後においても疾患が生じず、実験期間中(>60日)腫瘍再発は観察されなかった。対照的に、処置を受けないマウスにおいて腫瘍は次第に増殖し、腫瘍の大型化のため、16日目以降、マウスを実験から除外することを余儀なくされた。レンチベクター免疫の7日後に腫瘍退縮が開始されたことが観察できたのは興味深い。腫瘍退縮のタイミングは、ワクチン処理により誘導される抗原特異的な免疫応答の動態と相関している。
【0241】
実施例15:組み換えウイルスによる、抗原及び成熟因子のin vitro輸送
DCワクチン処理の成功は、DCの成熟状態に依存しうる(Banchereau,J.and A.K.Palucka.2005.Nat Rev Immunol 5:296−306、Schuler,G.,ら、2003.Curr Opin Immunol 15:138−147、Figdor,C.G.,ら、2004.Nat Med 10:475−480、各々の全開示内容を本発明に援用する)。ゆえに、所望のDC−成熟を活性化するために、刺激性分子をコードする遺伝子を、レンチウイルスベクターに含めることができる。使用できるサイトカインとしては、限定されないが、GM−CSF、IL−4、TNFα、IL−6などが挙げられる。幾つかの実施形態では、用いられる成熟因子はCD40リガンド(CD40L)であり、それはCD4 T細胞で典型的に発現し、DC上のCD40受容体のためのリガンドとして機能する(Matano,T.,ら、1995.J Gen Virol 76:3165−3169、Nguyen,T.H.,ら、1998.Hum Gene Ther 9:2469−2479、各々の全開示内容を本発明に援用する)。更に、DCを操作して治療にとり強力なワクチンとするため、薬剤誘導性CD40受容体(iCD40)を、幾つかの実施態様において、遺伝子輸送システムに導入した。以下の文献に記載のように、リガンド−結合ドメインと、膜ターゲッティング配列と融合するCD40の細胞質領域とからなる、iCD40を設計した(Hanks,B.A.,ら、2005.Nat Med 11:130−137、全開示態様を参照により本願明細書に援用する)。iCD40が発現するとき、DCの成熟及び活性化が、脂質透過性を有する二量化物質により制御される。
【0242】
DC成熟因子を含むことによる効果を検討するため、オボアルブミン(OVA、実施例10にて説明したように)、GM−CSF、IL−4、TNFα、IL−6及びCD40LのcDNAを得た。文献に記載のように、iCD40を構築した(Hanks,B.A.,ら、2005.上記)。IRES及び2A−様配列を使用し、能率的に最高4つのタンパク質を翻訳できるマルチシストロンレンチウイルスベクターを構築した。このシステムは、以下の遺伝子を共発現するレンチウイルスベクターの構築に適している:OVA及び成熟因子である分子(GM−CSF、IL−4、TNFa、IL−6、CD40L又はiCD40)(
図24a、「FUOIM」と表示する)。ベクターの典型的な配列を、配列番号7で示す。SVGmuで覆われたレンチウイルスを実施例2にて説明したように調製し、レンチウイルスを、培養したマウスBMDC(実施例6にて説明したように調製)にin vitroで導入し、これらの遺伝子を上記細胞に特異的に輸送した。T細胞刺激のプロセスで不可欠な役割を発揮する、幾つかの鍵となる分子の上方制御をFACS分析し、BMDCsの成熟を測定した。典型的なマーカーは、ICAM−I(CD54)、B7.1(CD80)、MHCクラスI、MHCクラスII及び内因性CD40であった。OVA及びGFP遺伝子のみをコードするレンチウイルスで形質転換したBMDCを、実験におけるコントロールとして用いた。iCD40で修飾されたDCを有効量のダイマー物質AP20187で曝露したとき、成熟マーカーの上方制御がなされた。
【0243】
更に、成熟DCの2つの特徴は、エンドサイトーシスの低いキャパシティ及び改良されたT細胞活性化能である。FITCタグを有するデキストランの取り込みにより、形質導入されたDCのエンドサイトーシスを定量化した。また成熟したDCを用いて、OT1 T細胞受容体(TCR)(実施例10にて説明)を発現するT細胞を刺激し、それにより免疫応答を生じさせるそれらの能力を評価した。iCD40で修飾されたDCを、有効量のダイマー物質AP20187に曝露したとき、FITCタグを有するデキストランの取り込みが、iCD40で修飾されないDCのそれよりも減少していることが観察された。更に、OTl T細胞を、遺伝子移入されたT細胞:iCD40修飾DC(ダイマー物質で処理)の様々な比率で調製して共培養したとき、iCD40修飾されないDCと共培養した場合と比較し、IFN−γの放出及びT細胞増殖での測定で、より顕著に反応したことが観察された。
【0244】
DCの寿命は、T細胞依存性の免疫性を決定する、もう1つのパラメータである。in vitroでの血清飢餓アッセイを使用した、DCの生存に対する刺激物質分子の効果を、ハンクスその他に記載の方法を使用して比較した(Hanks,B.A.,ら、2005.上記)。
【0245】
必要に応じて、標的とされたDCに、2つの成熟因子分子を、レンチウイルスベクターにより輸送できる。なぜなら、ベクターの構成が4つのタンパク質を発現する能力を有するからである。
【0246】
実施例16:組み換えウイルスによるin vivoでの抗原及び成熟因子の輸送
FUOIMレンチウイルスベクター(配列番号7)によりパッケージングされた組換えウイルスを、実施例15にて説明したように調製した。上記ウイルスを野生型のB6マウスに投与し、DCにOVA抗原及び成熟因子分子を輸送し、ウイルスの段階的投与量に対する、免疫応答の誘導を、実施例11にて説明したように評価した。
【0247】
iCD40含有レンチウイルスの標的とされたDC免疫では、免疫されない、OVAを含まないレンチウイルス(例えばFUGW/SVGmu)で免疫された、又はiCD40を含まないレンチウイルス(例えばFOVA/SVGmu)で免疫された、コントロールマウスと比較し、OVAに応答したT細胞数の増加が観察された。
【0248】
更に、実施例13にて説明したように、腫瘍曝露に対する動物の抵抗性を、iCD40含有レンチベクターにより評価した。腫瘍曝露実験において、マウスに以下のレンチベクターを注射した:FUOIM/SVGmu、FOVA/SVGmu又はFUGW/SVGmu。以下の細胞株を、腫瘍曝露に使用した:EL4(C57BL/6J、H−2
b、胸腺腫)、及びE.G7(安定にチキンOVA cDNAの1コピーを発現するEL4細胞)。DC−ターゲッティングレンチベクターFUOIM/SVGmu及びFOVA/SVGmuで免疫したマウスにおいて、腫瘍曝露に対する防御が観察された。対照的に、OVA導入遺伝子(FUGW/SVGmu)を欠くレンチベクターによる擬ワクチン処理を受けたマウスでは、腫瘍の急速な増殖が確認された。免疫の際に使用するレンチベクターに関係なく、ワクチン処理をされたマウスにおいてOVAの発現をしないコントロールEL4腫瘍が増殖するため、この保護はOVAに特異的であることが示された。
【0249】
最後に、実施例14にて説明したように、確立した腫瘍を排除するこの方法の能力を、iCD40含有レンチベクターを用いて評価した。当該試験において、以下のレンチベクターを免疫処理に用いた:FUOIM/SVGmu及びFOVA/SVGmu。以下の細胞株を、腫瘍治療に用いた:EL4及びE.G7.DC−ターゲッティングレンチベクター(FUOIM/SVGmu及びFOVA/SVGmu)で免疫した、腫瘍細胞を注射されたマウスにおいて、腫瘍増殖の低下が観察され、更に腫瘍退縮及び検出レベル以下への発光減少が観察された。更に、実験期間中(>60日)、腫瘍再発が観察されなかった。対照的に、処置を受けないマウスにおいては、腫瘍が次第に増殖した。
【0250】
実施例17:組み換えウイルスによる、in vitroでのHIV/エイズ抗原の提示
HIV/エイズを治療するため、上記の遺伝子輸送ストラテジーに基づいて「二重機能的」DCを作製した。「二重機能的」DCは、中和抗体(Nabs)を引き出す能力、及びT細胞免疫を誘導する能力を有する(
図25)。効率的にNAbsを引き出すため、キメラの膜結合型gp120(gp120m)をコードする遺伝子をDCに輸送した。Gp120はHIVのエンベロープ糖タンパク質であり、最も強力な免疫源であると考えられる(Klimstra,W.B.,ら、2003.J Virol 77:12022−12032、Bernard,K.A.,ら、2000.Virology 276:93−103、Byrnes,A.P.,ら、1998.J Virol 72:7349−7356、全開示内容を本発明に援用する)。文献に記載されるように、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質の膜貫通領域と融合するgp120を三量体の形で細胞表面に発現させることができ、HIVビリオン面上において成熟した三重体を模倣する(Klimstra,W.B.,ら、1998.J Virol 72:7357−7366、全開示内容を本発明に援用する)。この形の免疫源は、DC面に提示される。表面での発現に加え、DCはまた、MHCにより制限された態様で、gp120に由来するエピトープペプチドを、T細胞に提示できる。
【0251】
HIV感染は、CD4 T細胞の減少を介してDC機能を顕著に弱めるため、T細胞とは独立に機能するDCを設計するのが望ましい。CD40L又はiCD40の発現により、CD4 T細胞の非存在下で、DCの成熟及び活性化がもたらされる。ゆえに、設計されたCD40L又はiCD40(成熟及び刺激性分子として機能する)を、実施例16にて説明したようにDC−ターゲッティングウイルスに組み込む。
【0252】
遺伝的にDCを修飾するためのレンチウイルス構築物を
図24bに示し、FUGmID(配列番号8)として称する。NIH AIDS Research AND Reference Reagent Programから、コドンを最適化されたgp120のcDNAを得た。コドンを最適化された配列では、HIV−1ゲノムの外部で、例外的に高いレベルの遺伝子発現がなされた。水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質の膜貫通領域とgp120との融合により、構築物を調製した。
【0253】
in vitro分析を実施し、遺伝子修飾DCによる、NAbsを引き出す能力を評価した。抗CD19ミクロビーズ(MiHenyi Biotech社、オーバーン、CA)を使用してCD19
+B細胞を野生型B6マウスの脾臓から単離し、IL−4及びIL−6の存在下で、修飾DCと共培養した。レンチウイルスベクターFUmGIDを、細胞株にSVGmuと共にコトランスフェクションし、実施例2にて説明したようにFUmGID/SVGmuウイルスを調製した。得られるウイルスを、骨髄由来DC(BMDC)で形質導入した。形質導入したDCを照射し(3,000rad)、B細胞との共培養において、抗原提示細胞(APC)として使用した。形質導入したBMDCに応答するB細胞の増加を、時間経過と共に測定した。B細胞は、形質導入したBMDCとの共培養により、偽形質導入したBMDCとの共培養した場合よりも顕著に高い程度で増殖することが観察された。
【0254】
B細胞の、特定の免疫グロブリン分泌細胞への分化に対する、遺伝子組換えDCの効果を調査するために、DCを照射しなかったことを除き、上記と同様に共培養を行った。14日後に、培養上澄中のHIVに特異的な抗体の様々なアイソタイプのタイターを、抗原として組換えgp120(NIBから入手可能:AIDS Research AND Reference Reagent Program)を使用して、ELISAで測定した。形質導入したBMDCと共培養したB細胞における、HIVに特異的な抗体の様々なアイソタイプの発現は、で偽形質転換したBMDCsと共培養した場合よりもレベルが高かった。
【0255】
遺伝子組換えDCのin vitroでのT細胞の活性化能を評価するため、CD3
+T細胞を野生型B6マウスから単離し、レンチウイルスで感染させ、照射したDCと共培養した。時間経過に伴うT細胞増殖を測定した。形質導入され、照射を受けたDCと共培養したT細胞培養では、T細胞増殖は、偽形質導入されDCと共培養した場合よりも顕著にレベルが高かった。
【0256】
結果を総合すると、FUmGID/SVGmu レンチベクターで形質導入したBMDCは、B細胞を刺激し中和抗体(Nabs)を生じさせること、及びHIV/エイズに対するT細胞免疫を誘導することの両方において効果的であることが示されたと考えられる。
【0257】
実施例18:組み換えウイルスによる、in vivoでのHIV/エイズ抗原の提示
【0258】
in vivoでのB細胞の活性化を評価するため、実施例17にて説明したように調製した組換えレンチウイルスを、B6マウスに、皮下注射によってワクチン処理した。コントロールを、抗原をコードするレンチウイルス単独を注射したマウス、成熟分子をコードするレンチウイルス単独注射されるマウス、及び無処置の野生型マウスとした。ウイルス注入の2週後、HIVに対する血清中抗体をELISAで測定した。抗体のタイターは、レンチウイルスをコードする抗原を単独で注射した群と同様に、FUmGID/SVGmuウイルスを注射したマウスにおいて高かった。対照的に、抗体のタイターは、成熟分子を単独でコードするレンチウイルスでワクチン処理したマウス、及び野生型マウスにおいて比較的低かった。
【0259】
T細胞のin vivoでの活性化のため、上記の組換えウイルスをB6マウスに注射した。7日後にT細胞を単離し、遺伝子組換えDCによるin vitro再刺激の後、実施例12にて説明したように、それらの増殖及びサイトカイン分泌を測定した。エフェクタT細胞応答の期間もモニターした。野生型DCに対するレンチベクターのターゲッティングにより、リンパ節及び脾臓における、HIVに反応するT細胞を引き出すことが可能となる。組換えFUmGID/SVGmuの投与は、IFN−γを分泌するT細胞を生じさせるのに十分である。対照的に、モックコントロールベクター(例えばFUGW/SVGmu)の投与では、HIV−特異的な反応が引き出されなかった。
【0260】
実施例19:組み換えウイルスによる、in situのHIV/エイズワクチン処理:HIV曝露に対する防御
HIVに対処するためのin situのDCワクチン処理方法を試験するため、ヒト/マウスキメラを含んでなる新規なHIV疾患マウスモデルを開発した。文献に記載のように、RAG2
−/−γ
c−/−マウスをヒト適応免疫系によって再構成することができる(Strauss,J.H.,ら、1994.Archives of Virology 9:473−484、全開示内容を本発明に援用する)。RAG2
−/−γ
c−/−マウスは、B、T及びNK細胞を欠く(Morizono,K.,ら、2001.J Virol 75:8016−8020、全開示内容を本発明に援用する)。一日齢の、部分的に照射を受けたマウスの肝臓へのCD34
+ヒト臍帯血の注射により、多様な機能のヒトDC、B細胞及びヒトMHC拘束されたT細胞の生成及び成熟が生じた。更に、このモデルは、初代及び二次リンパ器官の発達を指示し、ウイルス曝露に対する機能的なCD8
+T細胞の免疫応答を生じさせた。更に、IgMからIgGへ切り替えているIgアイソタイプが観察されたことから、機能的なCD4
+T細胞免疫の存在が示唆された。
【0261】
DCを標的とする免疫による、HIVに対する抑制的防御の効果を測定するため、ヒト/マウスキメラに、SVGmuで覆われた投与された組換えウイルスを注射した。組換えウイルスは成熟刺激物質(例えば実施例15のようなCD40L又はICD40)との組み合わせでgp120m抗原(例17)をコードしており、それらを実施例2にて説明したように調製し濃縮した。免疫マウスを更に、例えば、腹腔内若しくは静脈ルートを介して、公知技術の方法に従いHIVを接種した。再構成されたマウスはヒトCD4 T細胞を維持するため、この動物を、分子的にクローニングしたHIVリポータウイルス、NFNSX−r−HSAS(CCR5向性)、NL−r−HSAS(CXCR4向性)及び臨床分離株で曝露した(Baenziger,ら、2006.Proc Natl Acad Sci USA 103:15951−15956、全開示内容を本発明に援用する)。複製能のあるリポータウイルスはまた、vpr領域に熱安定性の抗原(HSA)を有する。更に、接種前に生産的な感染を確立するため、感染させた同系の末梢血単核細胞(PBMC)を、再構成したヒト/マウスキメラの腹膜に注射した。
【0262】
HIV感染を、脾臓、リンパ節、PBMC及び末梢血の、時間経過に伴うモニタリングで確認した。HIVリポータウイルス中のHSAに関するFACSを用いて、HIVウイルスのインテグレート及び複製を試験した。またHIVウイルスのロードを、RT−PCRを使用して血漿から測定した。これらの方法によるHIV感染の評価によって、in situでの生産的なDCワクチン処理により、免疫マウスが、ワクチン処理を受けない群よりもHIV曝露に対する抵抗性を示すことが明らかとなった。
【0263】
実施例20:組み換えウイルスによるin situでのHIV/エイズワクチン処理:HIV感染のクリアランス
in situでのDCワクチン処理方法の、活性HIV感染をクリアする能力を試験するため、ヒト/マウスキメラを、実施例19にて説明したように、分子クローニングしたHIVリポータウイルス、NFNSX−r−HSAS(CCR5向性)で最初に曝露した。活性HIV感染を、ヒトCD4 T細胞におけるHSA発現のFACS分析によってモニターした。HIV感染の成功を確認した後、設計された組換えウイルス(実施例19)を、皮下注射により、又は当業者により決定される最適経路(例えばs.c、i.d.、i.v.又はi.p.)によって動物に注射した。HIVウイルスのロードを更に、RT−PCRによってモニターし、更に末梢CD4を計測した。DCワクチン処理がHIVウイルスのロードを低下させ、ワクチン接種を受けないコントロールと比較し、免疫マウスにおいて確立されたHIV感染をクリアすることが可能であることが示された。
【0264】
高活性抗レトロウイルス療法(HAART)(3薬剤ストラテジーを利用)により、エイズ罹患率及び死亡率が大幅に改善された。以上に概説したストラテジーを、設計された組換えウイルスを用いてin vivoでDC細胞を同時に形質転換することにより、この方法に適合させることができる。HAARTとの組み合わせにより、上記の試験を繰り返し、HIV曝露(実施例19)の後、感染を防御若しくは減少させ、また活性HIV感染をクリアする能力を評価することができる。
【0265】
実施例21:組み換えウイルスを用いた、ヒトにおける悪性腫瘍の治療
ヒト患者は、悪性腫瘍と診断された。腫瘍に特異的な抗原をコードする遺伝子を含み、DC−SIGN特異的なターゲッティング分子(例えばSVGmu)で覆われた組換えウイルスを、上記患者に適当量で投与した。実施例15にて説明したように、上記ウイルスは、任意にDC成熟因子をコードする遺伝子を含む。治療期間中、上記ウイルスを毎週、静脈内注射により投与した。治療計画の間及び後において、定期的に、腫瘍負担を磁気共鳴映像法(MRI)により評価した。腫瘍サイズの顕著な減少が、治療の進展として観察された。
【0266】
実施例22:組み換えウイルスを用いた、ヒトにおける腫瘍形成の予防
一グループのヒト患者に、腫瘍細胞に共通に、特異的に関連する抗原をコードする少なくとも1つの遺伝子と、任意に、実施例15にて説明したようなDC成熟因子をコードする遺伝子とを含む組換えウイルスを、適当量で投与した。上記ウイルスを、DC−SIGNに特異的なターゲッティング分子(例えばSVGmu)(実施例2)で覆わせた。試験群及び対照群の患者を、腫瘍成長に関して周期的にモニターした。ウイルス投与した患者においては、悪性腫瘍形成の発生率が、対照群よりも低いことが観察された。
【0267】
実施例23:組み換えウイルスを用いた、ヒトのAIDS/HIVの治療
ヒト患者は、HIV/エイズと診断された。上記患者に、Gp120(例17)をコードする遺伝子を含み、DC−SIGNに特異的なターゲッティング分子(例えばSVGmu、実施例2)で覆われた組換えウイルスを、適当量で投与した。実施例15にて説明したように、上記ウイルスは、任意にDC成熟因子をコードする遺伝子を含む。上記ウイルスを、治療期間中、毎週、静脈内注射により投与した。治療計画の間と後において、定期的に、HIVウイルスのロードを、ELISAを使用して、患者の血液中のHIVに対する抗体を測定することにより評価した。患者のT細胞数も評価した。HIVウイルスのロードの顕著な減少が、治療の進展として観察された。更に、患者のT細胞数の減少の抑止が、治療の進展として観察された。
【0268】
実施例24:組み換えウイルスを用いた、ヒトのHIV/エイズの予防
HIV感染の危険があるとみなされる一グループのヒト患者に、GP120をコードする遺伝子(実施例17)を含み、任意にDC成熟因子をコードする遺伝子を含む組換えウイルス(実施例15にて説明)を適当量で投与した。ウイルスを、DC−SIGNに特異的なターゲッティング分子(例えばSVGmu、実施例2)で覆わせた。試験群及び対照群の患者に、HIV感染に関して6ヵ月毎に検査を受けさせ、陽性の場合、HIVウイルスロード及びT細胞数をモニターした。ワクチン接種を受けたグループ内の、感染が陽性であった患者においては、対照群の感染陽性患者と比較し、HIVウイルスロードが低くとどまり、T細胞数は高いままであった。
【0269】
本発明の理解を容易にするために、上記において詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲内で特定の改変を実施できることは明白である。本願明細書において引用される全ての刊行物及び特許文献は、あたかも各々が実際に記載されているかのように、同じ範囲で、全ての目的において、それらの全開示内容が本願明細書に援用される。